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JinkoSolar|ペロブスカイト太陽電池 企業解説

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COMPANY PROFILE / ペロブスカイト太陽電池

JinkoSolar(晶科能源)
― TOPConの最大手が、その上にペロブスカイトを重ねる。研究予算は約2.1億元と開示されている

JinkoSolarは、シリコン太陽電池の主流になったN型TOPCon技術の最大手の1社です。 ペロブスカイトでは、自社のTOPConセルを下側に使うタンデムセルで効率を発表し続けており、2026年6月には34.82%に達したと公表しました。 この会社の特徴は、上場子会社の年次報告書にペロブスカイトの研究プロジェクトの予算額と投入額が項目として載っていることです。 「どれだけ本気か」を金額で確かめられる、数少ない既存大手です。本稿では、その金額と、まだ示されていないことを整理します。

構成:Jinko Solar Co., Ltd.(晶科能源、上海証券取引所)の2025年年次報告書・2026年半期報告書、JinkoSolar Holding(NYSE)の2025年12月期Form 20-F、公式プレスリリース、提携先XtalPiの発表を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるJinkoSolarと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(シリコン事業は簡潔に)
  5. ペロブスカイトにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
  9. ペロブスカイト分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるJinkoSolarと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置

正式名称晶科能源股份有限公司英文 Jinko Solar Co., Ltd.。親会社は JinkoSolar Holding Co., Ltd.
本社中国・江西省上饒市登記住所。事務所は上海市閔行区
上場上海 科創板 688223
親会社 NYSE: JKS
親会社の持分は約54.16%(20-F)
この分野での区分既存の太陽電池大手
(シリコン量産から参入)
ペロブスカイト専業ではない
製品の形TOPConとの
タンデム
下側セルに自社のN型TOPConを使う
セル効率の到達点34.82%中国科学院上海微系統所の認証と会社が発表(2026年6月)。面積は非公表
研究プロジェクト予算約2.11億元「高効率・安定な大面積ペロブスカイト電池」の予定総投資(2026年半期報告書)
量産の見通し会社自身は時期を未公表提携先XtalPiは「約3年以内の量産を見込む」とJinkoの見通しを紹介
まず押さえるべき1点

ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業は、大きく既存の太陽電池大手・専業スタートアップ・素材や電機の異業種の3種類に分かれます。 JinkoSolarは既存の太陽電池大手で、しかも下側に使うシリコンセルを、自社が量産している主力のN型TOPConにしている点が特徴です 事実。 会社はリリースのたびに「TOPConとペロブスカイト・タンデムの互換性を示した」と書いています。 つまりJinkoSolarにとってペロブスカイトは、すでに巨大な設備を持つTOPConの「次の上乗せ」であり、 TOPConを捨てて乗り換える技術ではありません。

2. ロゴと社名の表記について

JinkoSolarのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、公式サイトのロゴ画像を img/jinkosolar_logo.png として設置しています(公式サイト掲載の画像が146×59ピクセルと小さいため、表示が粗く見えることがあります)。

表記の注意:2つの上場会社があります。ニューヨーク証券取引所に上場する持株会社 JinkoSolar Holding Co., Ltd.(ケイマン諸島法人)と、 その子会社で上海の科創板に上場する事業会社 晶科能源股份有限公司(Jinko Solar Co., Ltd.)です。 20-Fは後者を「Jiangxi Jinko」と呼び、持分は約54.16%です。 ペロブスカイトの研究開発は事業会社側の年次報告書に詳しく載っているため、本稿の数値は主に事業会社の開示から取っています。

公式サイト:https://www.jinkosolar.com/en

3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか

ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業の3つの類型 同じ「ペロブスカイトをやっている会社」でも、出自と狙いがまったく違う 既存の太陽電池大手 専業スタートアップ 素材・化学・電機 シリコンの量産から上乗せする ペロブスカイトだけで勝負する 異業種の技術で参入する LONGi/JinkoSolar Trina/Hanwha Qcells ほか Oxford PV/Swift Solar EneCoat/Renshine ほか 積水化学/パナソニック 東芝/カネカ ほか 販路と量産設備をすでに持つ 技術の尖りで先行できる フィルム・ガラス・封止の技術 主力のシリコンが本業 量産と資金の壁が高い 太陽電池の販路が細い JinkoSolarは左端の「既存大手」。主力のTOPConセルを下側に使うタンデムを開発している 研究プロジェクトの予算と投入額を年次報告書で開示しているが、量産の時期・場所・能力は会社自身は示していない
図1 ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業の3類型と、JinkoSolarの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。TOPConを下側セルに使うことは公式リリース、研究プロジェクトの予算は晶科能源の2025年年次報告書・2026年半期報告書に基づきます。

製品の形は、シリコン(TOPCon)とのタンデムです 事実。 リリースは下側にN型TOPConセルを使い、その上にペロブスカイトを重ねたと説明しており、 中間の再結合層の開発にも触れているので、1枚に積み上げる2端子型と読めます(端子数そのものは明記されていません)。 フィルム型・ガラス型のペロブスカイト単接合を製品化するという発表はありません。

4. 会社の規模(シリコン事業は簡潔に)

数値は上海上場の事業会社(晶科能源)の開示です。単位は百万CNY 事実。

指標(百万CNY)2023年12月期2024年12月期2025年12月期
営業収入118,68292,47165,492
親会社株主に帰属する純利益7,44099−6,882
研究開発投入(中試費用等を含む会社定義)―4,4072,535(売上比3.87%)

百万CNY未満は四捨五入 本稿の計算。2026年上期は営業収入24,727百万CNY、純損失3,076百万CNY。

項目数値時点・出典
従業員(母公司+主要子会社)26,388人2025年12月末(晶科能源の年次報告書)
研究開発人員2,158人(8.18%)同上。前年は1,981人(5.86%)
研究開発人員(グループ)2,184人2025年12月末(20-F)。拠点は海寧・上饒・西寧とベトナム
2026年のモジュール出荷目標60〜70GW2026年半期報告書で75〜85GWから下方修正
ここで注意

上の数字は会社全体のもので、ほぼすべてがシリコンのウェーハ・セル・モジュールと蓄電池です。 2025年は最終赤字に転じ、研究開発投入も前年から42.49%減っています(会社は研究用材料の価格低下を理由に挙げています) 事実。 ペロブスカイトの規模を知るには、次章の研究プロジェクト単位の数字を見る必要があります。

5. ペロブスカイトにかけているリソース

晶科能源の年次報告書には「在研項目情況(進行中の研究プロジェクト)」の表があり、 その5番目に「高効率・安定な大面積ペロブスカイト太陽電池の重要技術研究」が載っています。 既存大手でペロブスカイトの研究費をプロジェクト単位で開示している例は多くありません。

項目(CNY)2025年年次報告書2026年半期報告書
予定総投資規模231,031,924.15210,961,124.15
当期の投入額76,776,889.17(2025年)54,462,832.41(2026年上期)
累計の投入額125,668,742.58146,859,354.44
進捗の説明大面積のペロブスカイト層の高品質な作製などの一連の技術を開発。タンデム実験室最高34.76%同上。実験室最高34.82%
目標ペロブスカイト電池技術を実験室研究から、将来の製品量産の工程案の開発へ進める
本稿の計算:2億元は大きいか小さいか

2025年のこのプロジェクトの投入額7,678万元は、同年の研究開発投入合計25.35億元の約3.0%です 本稿の計算。 同じ表の「全背面電極(BC)」プロジェクトの2025年投入は3.25億元、「高効率N型両面モジュール」は5.40億元で、 ペロブスカイトはBCの約4分の1、両面モジュールの約7分の1の規模です。 主力のTOPConとその周辺技術に比べれば小さく、それでも1社の単独プロジェクトとしては億元単位、という位置づけです。

なお2026年半期報告書では、予定総投資が約2,007万元減り、累計の増加分(約2,119万元)が上期の投入額(約5,446万元)と一致していません。 年次報告書は「子プロジェクトの調整により投資額が前期の開示と変わる」と注記しており、範囲の組み替えがあったと考えられます 未確定/将来。本稿では数字を補正せず、開示どおりに示します。

リソースの種類内容区分
人(専任組織)ペロブスカイト専任チームの人数は非公表。研究開発人員は全体で2,158人、2025年には「中試線(パイロットライン)プラットフォームの改造を支えるため、実務経験のある技術者を補充した」と説明事実(専任人数は非公表)
人(責任者)リリースでコメントしているのはCTOの金浩(Jin Hao)博士事実
金(研究費)上記プロジェクトの予定総投資約2.11億元、累計約1.47億元(2026年6月末)事実
金(量産ライン)ペロブスカイト・タンデムの量産ラインへの投資額は開示なし確認できず
外部との合弁XtalPi(晶泰科技)と戦略協力協定を結び、AIとロボットによる高スループット研究の合弁会社を設立(2026年1月。20-Fと提携先の発表)事実
大学・研究機関効率の認証は中国科学院上海微系統与信息技術研究所と国家光伏産業計量測試中心(NPVM)。共同研究契約の開示は見当たらない事実(共同研究は確認できず)
公的資金ペロブスカイトを対象とする政府プロジェクトの採択額は開示なし。「高効率ペロブスカイト/TOPConタンデム太陽電池」が中国可再生能源学会の「2024年光伏分野の重大科技進展」に収録(表彰であって資金ではない)事実(資金は確認できず)

6. これまでの取り組み

JinkoSolarのリリースは、どれもセルの面積を書いていません。 研究用の小さなセル(1cm²前後)である可能性が高いものの、本稿では面積を「非公表」として扱います。

時期できごと認証・面積
2024年5月以前TOPConベースのタンデムで32.33%2024年5月のリリースでの振り返り(会社発表)
2024年5月31日33.24%。超薄ポリシリコンのパッシベーション接触、光閉じ込め、高透過・高移動度の中間再結合層などを採用中国科学院上海微系統所の測定(会社発表)/面積非公表
2025年1月6日33.84%。全面パッシベーション接触、界面・バルク欠陥パッシベーション同上(会社発表)/面積非公表
2025年34.22%を達成(2025年11月のリリースが「従来記録」として言及)会社発表
2025年11月27日34.76%。CTOが「タンデムはTOPConの次の破壊的な方向」「次の段階は実験室から大規模応用へ」と発言NPVM(会社発表)/面積非公表
2026年1月XtalPiと戦略協力、AI高スループット研究の合弁会社を設立20-F・提携先の発表
2026年6月34.82%。二層複合パッシベーション接触、多次元界面パッシベーション、勾配結晶化制御、光学結合の強化中国科学院上海微系統所(会社発表)/面積非公表
記録の数字を読むときの注意

NLR(旧NREL)のセル効率データ表とチャンピオンモジュール効率チャートには、本稿の確認時点でJinkoSolarのペロブスカイト・タンデムは載っていません 事実。 同じ表には、LONGiのペロブスカイト/シリコン・タンデム35.2%(JRC-ESTI、約1cm²)が載っています。 JinkoSolarの34.82%は中国の研究機関が測定したと会社が発表した値で、面積も書かれていないため、 「TOPCon下地のタンデムとしての記録」という会社の主張の範囲で読むのが妥当です 未確定/将来。

7. 今後の計画

2026年の研究方針AI研究基盤で開発と産業化を推進2025年年次報告書「発展戦略」の記載
研究プロジェクトの目標量産工程案の開発へ在研項目表の「目標」欄
AI実験ライン1,000m²・1日1,000サンプルXtalPiの発表。完成時期は記載なし
量産の時期約3年以内(提携先の説明)XtalPiが「Jinkoは約3年以内の量産を見込む」と記載。Jinko自身の開示にはない

晶科能源の2025年年次報告書は、2026年の方針として「AI科研プラットフォームを活用してペロブスカイト・タンデム電池の研究開発と産業化プロセスを推進し、変換効率のさらなる突破を目指す」と書いています 事実。 経営計画の欄でも「ペロブスカイト・タンデムの研究開発を加速し、今後の産業化応用の基礎を固める」とあり、 量産そのものではなく、その前段階にあることを会社自身が示しています。

確認できなかったこと

次はいずれも晶科能源の報告書・20-F・公式リリースに記載がありません 未確定/将来。

タンデムの量産開始時期(「約3年以内」は提携先XtalPiの発表にだけある)/量産ラインの場所・能力・投資額/ 記録セルの面積/大面積セル・モジュールの効率/XtalPiとの合弁会社の出資比率・資本金/屋外での信頼性データ。

8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
既存のTOPConラインを生かしたタンデムが本命すべてのリリースが「TOPConとペロブスカイト・タンデムの互換性」を強調。20-FもTOPConの特許数とタンデムを並べて記載推測
研究段階から量産工程の設計段階へ移ろうとしている在研項目の目標が「実験室研究から量産工程案の開発へ」。2025年に中試線プラットフォームの改造を支える技術者を補充事実(目標の記載)
材料探索の速度をAIとロボットで買うXtalPiとの合弁、1日1,000サンプルの実験ライン、2026年の研究方針に「AI科研プラットフォーム」推測
地上用に加えて宇宙用も視野XtalPiの発表が衛星の太陽電池翼の面積削減に触れる。晶科能源の年次報告書も商業宇宙による用途拡大に言及推測
当面の稼ぎ頭はあくまでTOPCon2026年の研究・生産計画はTOPConの効率向上とコスト削減、新型モジュールの量産が中心事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

TOPConの下側セルにこだわる理由は、JinkoSolarが持つ設備と特許の大半がTOPConだからだと本稿は読みます。 20-Fは2025年末時点でTOPCon関連の登録特許を1,484件持つと書き、晶科能源の年次報告書も「N型TOPCon関連特許の数は世界最多」としています 事実。 LONGiのタンデムが下側にHJT(ヘテロ接合)を使うのに対し、JinkoSolarは量産中のTOPConをそのまま下側に使うことで、 既存のセル工場をタンデムの前工程として使い続けられる道を探していると考えられます 未確定/将来。 ただしTOPConは高温工程を含むセルなので、表面の状態や上側に重ねる層との相性はHJTと異なり、 会社が「二層複合パッシベーション接触」「中間再結合層」の開発を繰り返し挙げているのは、その接合部分が難所であることを示しています。

9. ペロブスカイト分野の提携マッピング

JinkoSolarを中心としたペロブスカイト(タンデム)の関係 晶科能源の報告書、20-F、公式リリース、XtalPiの発表に記載のある関係のみ 合弁・共同開発(実線・濃紺) 資本関係・効率の認証(点線)。認証は提携ではない 晶科能源 Jinko Solar XtalPi(晶泰科技) AI高スループット研究の合弁 (2026年1月) JinkoSolar Holding NYSE上場の親会社 持分 約54.16% 中国科学院 上海微系統所 33.24%・33.84%・34.82% を測定(認証機関) 国家光伏産業計量測試中心 NPVM:34.76%を認証 (認証機関)
図2 JinkoSolar(晶科能源)を中心としたペロブスカイト(タンデム)の関係。出典:JinkoSolar HoldingのForm 20-F(2025年12月期)、公式リリース(2024年5月、2025年1月・11月、2026年6月)、XtalPiの発表。濃紺の実線は合弁・共同開発、点線は資本関係と効率の測定・認証です。認証機関は測定を請け負う第三者で、提携先ではありません。XtalPiの発表では、協定の相手は「晶科能源の子会社」とされています。材料・装置メーカーとの提携は一次資料で確認できなかったため含めていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

JinkoSolarは2026年9月時点で、ペロブスカイトを使った製品を販売していません 未確定/将来。 公表されている技術要素は次のとおりです。

要素一次資料の記述
下側セル自社開発の高効率N型TOPCon(パッシベーション接触)セル。超薄ポリシリコン、全面パッシベーション接触、二層複合パッシベーション接触と改良を重ねている
中間層光の透過率とキャリア移動度の高い中間再結合層、新型の中間複合層材料
ペロブスカイト層下面界面の欠陥パッシベーション、バルク欠陥パッシベーション、新しい結晶化手法(勾配結晶化の動力学制御)、垂直方向の電荷輸送の最適化
光学新しい光閉じ込め技術、光学結合・光マネジメントの強化
大面積化大面積のペロブスカイト層の高品質な作製など一連の技術を開発済み(在研項目の進捗欄)。大面積の効率値は非公表
研究手法XtalPiとのAI・ロボットによる閉ループ実験ライン(配合・工程・評価結果をデータ化してモデルに戻す)
素材技術者の視点:TOPCon下地の難しさは「つなぎ目」にある

2端子タンデムでは、下のシリコンセルで生まれた電子と、上のペロブスカイトで生まれた正孔が、中間の再結合層で出会って消えることで電流が流れます。 この層は、光をできるだけ吸収せずに下へ通し、同時に電気的には抵抗なくつなぐ、という相反する要求を満たさなければなりません。 JinkoSolarが2024年のリリースで「高透過・高移動度の中間再結合層」を挙げたのはこのためです 事実。

TOPConは表面にポリシリコンの薄膜を持つ構造で、HJTのような透明導電膜の層が最初からあるわけではありません。 その上にペロブスカイトを載せるには、ポリシリコン側の接触を薄く・透明にし、その上に再結合層を新しく作り込む必要があります。 「超薄ポリシリコン」「二層複合パッシベーション接触」という言葉が繰り返されるのは、TOPConをタンデム用に作り替えている過程と読めます 未確定/将来。 電荷輸送層とセル構造の考え方は、本シリーズの技術解説『タンデム』も参照してください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
本業の赤字と研究費の縮小2025年は68.8億元の純損失、2026年上期も30.8億元の純損失。研究開発投入は2025年に前年比42.49%減事実
出荷目標の下方修正2026年のモジュール出荷目標を75〜85GWから60〜70GWへ引き下げ事実
記録の検証範囲セル面積が非公表で、NLRの表にも載っていない。大面積・モジュールの効率が示されていない事実
量産時期の不透明さ「約3年以内」は提携先の発表にあるだけで、Jinko自身の開示には時期がない未確定/将来
TOPCon投資との綱引き赤字の中で、既存TOPConの改良(新型モジュール、コスト削減)とタンデムの量産投資が資金を奪い合う推測
合弁の中身が見えないXtalPiとの合弁の出資比率・資本金・知的財産の配分の詳細が開示されていない(XtalPiは「Jinko主導で共同事業化」とだけ説明)未確定/将来

12. 用語集

TOPCon
トンネル酸化膜パッシベーション接触。薄い酸化膜とポリシリコン膜で表面の再結合を抑えるN型シリコンセル。現在の量産の主流。
タンデム太陽電池
吸収する光の波長帯が違う2種類の電池を重ねたもの。JinkoSolarはTOPConの上にペロブスカイトを重ねる。
中間再結合層
2端子タンデムで上下のセルをつなぐ層。光を通しつつ、電子と正孔をここで再結合させて電流を流す。
パッシベーション
表面や界面の欠陥を不活性化し、キャリアが無駄に消えるのを防ぐこと。
NPVM
国家光伏産業計量測試中心。中国の太陽電池の効率測定機関の1つ。
在研項目
中国の上場企業が年次報告書で開示する「進行中の研究開発プロジェクト」。予定総投資と投入額を記載する。
高スループット実験
ロボットで大量の試料を自動で作り評価する研究手法。AIと組み合わせて材料探索を速める。
Form 20-F
米国上場の外国企業が米国SECに提出する年次報告書。
概念図:量産シリコンセルの上に薄いペロブスカイト層を重ね、中間層でつなぐタンデムセルの断面
図3 JinkoSolarが開発するTOPCon下地のペロブスカイト・タンデムの概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. 晶科能源股份有限公司 「晶科能源2025年年度报告」(2025年年次報告書)(中国語)(上海証券取引所開示、2026年4月30日)。会社基本情報、営業収入・純利益・研究開発投入、従業員・研究開発人員、在研項目(高効率・安定な大面積ペロブスカイト太陽電池)の予算と投入額、ペロブスカイト/TOPConタンデム技術の説明、2026年の発展戦略と経営計画。 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
  2. 晶科能源股份有限公司 「晶科能源2026年半年度报告」(2026年半期報告書)(中国語)(上海証券取引所開示、2026年8月27日)。2026年上期の業績、出荷目標の修正、34.82%(中国科学院上海微系統所)、在研項目の予算と投入額の更新。 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225513196.PDF
  3. JinkoSolar Holding Co., Ltd. Form 20-F for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年4月29日)。Jiangxi Jinkoへの持分約54.16%、研究開発人員2,184人と拠点、TOPCon特許1,484件、34.76%、XtalPiとの戦略提携(2026年1月)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1481513/000110465926050737/jks-20251231x20f.htm
  4. JinkoSolar プレスリリース「33rd World Record! JinkoSolar Sets New Efficiency Benchmark for Perovskite/TOPCon Tandem Cells at 34.82%」(2026年6月16日)。34.82%(中国科学院上海微系統所)と技術要素。 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2952
  5. JinkoSolar プレスリリース「JinkoSolar Breaks World Record Again with 34.76% Efficiency for Perovskite/TOPCon Tandem Cell」(2025年11月27日)。34.76%(NPVM)、従来記録34.22%、CTO金浩氏のコメント。 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2789
  6. JinkoSolar プレスリリース「JinkoSolar's Perovskite Tandem Solar Cell Based on N-type TOPCon Sets New Record with Conversion Efficiency of 33.84%」(2025年1月6日)。33.84%(中国科学院上海微系統所)と技術要素。 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2502
  7. JinkoSolar Holding Co., Ltd. プレスリリース「JinkoSolar's Perovskite Tandem Solar Cell Based on N-type TOPCon Sets New Record with Conversion Efficiency of 33.24%」(2024年5月31日)。33.24%、従来記録32.33%、中間再結合層などの技術要素。 https://ir.jinkosolar.com/news-releases/news-release-details/jinkosolars-perovskite-tandem-solar-cell-based-n-type-topcon
  8. XtalPi(晶泰科技) 発表「Powerhouse Collaboration: XtalPi and JinkoSolar Form Joint Venture to Push Photovoltaic Efficiency Limits with AI」(2026年1月)。晶科能源の子会社との戦略協力協定、合弁会社、1,000m²・1日1,000サンプルの実験ライン、知的財産の事業化方針、「Jinkoは約3年以内の量産を見込む」との記載。 https://en.xtalpi.com/powerhouse-collaboration-xtalpi-and-jinkosolar-form-joint-venture-to-push-photovoltaic-efficiency-limits-with-ai/
  9. NLR(米国立研究所、旧NREL) Cell efficiency data table(セル効率データ表)。本稿の確認時点でJinkoSolarのペロブスカイト・タンデムの登録がないこと、LONGiの35.2%の登録。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/cell-efficiency-data-table.xlsx
  10. NLR(米国立研究所、旧NREL) Champion Module Efficiencies chart(チャンピオンモジュール効率チャート)。本稿の確認時点でJinkoSolarのペロブスカイト系モジュールの記載がないこと。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/champion-module-chart.pdf
  11. JinkoSolar 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.jinkosolar.com/en

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、登記住所・事務所、科創板688223事実出典1 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
親会社JinkoSolar Holding(NYSE: JKS)の持分約54.16%事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1481513/000110465926050737/jks-20251231x20f.htm
営業収入・純利益(2023〜2025年)、研究開発投入と前年比42.49%減、従業員26,388人、研究開発人員2,158人事実出典1 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
2026年上期の営業収入・純損失、出荷目標の60〜70GWへの修正事実出典2 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225513196.PDF
在研項目「高効率・安定な大面積ペロブスカイト太陽電池」の予定総投資・当期投入・累計投入(2025年)と目標事実出典1 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
同プロジェクトの2026年上期時点の予定総投資・投入額事実出典2 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225513196.PDF
BCプロジェクト3.25億元、両面モジュール5.40億元(2025年の投入)事実出典1 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
ペロブスカイト投入額が研究開発投入の約3.0%、BCの約4分の1、両面モジュールの約7分の1本稿の計算出典1の数値を本稿が割り算したもの
2026年の方針(AI科研プラットフォームで研究開発と産業化を推進)と経営計画の記述、中試線改造を支える技術者の補充、2024年重大科技進展への収録事実出典1 http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
研究開発人員2,184人(グループ)、TOPCon特許1,484件、XtalPiとの提携(2026年1月)事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1481513/000110465926050737/jks-20251231x20f.htm
34.82%(中国科学院上海微系統所)と技術要素事実出典4・2 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2952
34.76%(NPVM)、従来記録34.22%、CTOのコメント事実出典5 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2789
33.84%(中国科学院上海微系統所)と技術要素事実出典6 https://www.jinkosolar.com/en/site/newsdetail/2502
33.24%、従来記録32.33%、中間再結合層などの技術要素事実出典7 https://ir.jinkosolar.com/news-releases/news-release-details/jinkosolars-perovskite-tandem-solar-cell-based-n-type-topcon
XtalPiとの合弁、実験ラインの規模、知的財産の事業化方針、「約3年以内の量産」の見通し(提携先の記載)事実出典8 https://en.xtalpi.com/powerhouse-collaboration-xtalpi-and-jinkosolar-form-joint-venture-to-push-photovoltaic-efficiency-limits-with-ai/
NLRのセル効率データ表・モジュールチャートにJinkoSolarのペロブスカイト系の記載がないこと事実出典9・10 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/cell-efficiency-data-table.xlsx
ペロブスカイト太陽電池の3類型の区分本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
2026年上期の在研項目の数字の不整合(範囲の組み替えの可能性)未確定/将来出典1・2の数値の比較からの本稿の指摘。会社は個別の説明をしていない http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225513196.PDF
記録セルの面積、大面積・モジュールの効率、量産時期・ライン・投資額、合弁の出資比率、屋外信頼性データ未確定/将来出典1〜7に記載なし。報道・調査会社の数値は採用しない http://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-04-30/1225261496.PDF
2端子型と読めること(端子数は明記なし)未確定/将来出典7の中間再結合層の記述からの本稿の解説
既存TOPConラインを生かすタンデムが本命という読み推測出典3〜7の記述からの本稿の解釈
材料探索の速度をAIとロボットで買うという読み推測出典1・8の記述からの本稿の解釈
宇宙用も視野に入れているという読み推測出典8と出典1の業界動向の記述からの本稿の解釈
TOPConをタンデム用に作り替えているという読み、TOPCon投資との綱引きというリスク推測出典1・4・7の技術要素と業績からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値は、晶科能源が上海証券取引所に開示した法定開示書類、JinkoSolar Holdingが米国SECに提出した20-F、同社の公式プレスリリース、提携先XtalPiの発表、NLR(旧NREL)の公開資料に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。