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U.S. Department of Energy|ペロブスカイト太陽電池 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / ペロブスカイト太陽電池

U.S. Department of Energy
― 米国のペロブスカイト太陽電池の研究と起業に資金を出す省

米国エネルギー省(DOE)は米国の連邦政府の省で、自分では太陽電池を作りません。 ペロブスカイト太陽電池では、大学・国立研究所・スタートアップの研究開発に資金を出し、性能検証センターや賞金コンテストで商用化を後押ししてきたのが中心の役割です。 First Solar、Swift Solar、Tandem PV のタンデム開発も、DOEの公募で選定されています。 本稿では、DOEがペロブスカイト太陽電池にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:DOEの2025年度財務報告書、2027年度予算概要(Budget in Brief)、ペロブスカイト関連の事業・資金プログラム・賞金コンテストの公式ページ、公募説明資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるDOE
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. ペロブスカイト太陽電池で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている企業・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるDOE

正式名称United States
Department of Energy
米国エネルギー省。略称 DOE
国・地域米国連邦政府の機関。ペロブスカイトの担当はCMEI傘下のIESO
機関の種類連邦政府の省国立研究所の多くは契約者が運営する
設立1977年エネルギー省組織法により発足
人数規模連邦職員 15,705人2025年中に3,500人超が減少。契約者は10万人超
予算(裁量経費)539.1億ドル(FY2027要求)FY2026成立額より48.1億ドル多い
ペロブスカイト太陽電池への関与の形研究開発資金・検証センター・賞金公募・選定・交付をDOE自身が行う
影響が及ぶ範囲米国内の研究機関と企業FY2027要求では担当部署IESOの予算がゼロ
まず押さえるべき1点

DOEは資金の出し手であると同時に、国の研究開発の方向を決める政策の担い手でもあります。 ペロブスカイト太陽電池では、効率・耐久性・量産性・バンカビリティ(金融機関が融資できるだけの信頼性)の4つを課題に挙げ、それぞれに資金を振り向けてきました 事実。 ただし2025年以降、組織は再編され、太陽光の研究開発は重要鉱物・エネルギー革新局(CMEI)の統合エネルギーシステム局(IESO)が担当しています。 さらにFY2027の予算要求では、IESOの予算がゼロとされました。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

ペロブスカイト太陽電池の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では太陽電池を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

ペロブスカイト太陽電池を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では太陽電池を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 目標・補助金・税制 試験方法・効率の測定 展示会・業界団体 NEDO/DOE 経済産業省/DOE IEC/NREL Intersolar Europe 何を研究させるか 何を国内で作らせるか どう測り、どう比べるか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国 届く範囲=参加者 DOEは「資金」と「政策」の2つの型。研究課題を決め、公募・選定・交付まで自分で行う 予算の額を最終的に決めるのは議会。国際規格はIECの領域で、DOEの権限の外にある
図1 ペロブスカイト太陽電池に関わる機関の4つの型と、DOEの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う機関から例示しています 本稿の計算。DOEは研究資金を配るだけでなく、研究開発の優先課題を自ら定めるため2つの型を強調しています。表中のNRELは現在の名称がNational Laboratory of the Rockies(NLR)です。

3. ペロブスカイト太陽電池で何をしているか

DOEのペロブスカイト太陽電池への資金は、研究開発の公募・性能検証センター・賞金コンテストの3本立てでした 事実。金額はいずれも選定時の額で、交渉により変わりうると注記されています。

事業時期金額中身・選定先
FY2020 ペロブスカイト資金プログラム2020年8月発表
2021年3月選定
22件・4,000万ドルデバイスの効率と安定性、モジュール製造、性能検証とバンカビリティの3分野。大学・国立研究所・企業が対象
性能検証センター PACT2021年3月選定900万ドル+500万ドルサンディア国立研究所(PACT、900万ドル)とNREL(CHEETA、500万ドル)が1つのセンターとして運営。加速寿命試験の手順づくり、屋外での検証、投資家向けの客観的な情報提供
American-Made Challenges:Perovskite Startup Prize2021年3月〜2024年7月総額300万ドル新しく設立した米国の営利企業が対象の賞金コンテスト。2024年1月に最終段階の優勝1社(Verde Technologies)を発表
Advancing U.S. Thin-Film Solar Photovoltaics(うちペロブスカイト・タンデム)2023年9月公募
2024年5月選定
全体4,400万ドル
うち4件 計2,370万ドル
Cubic PV・First Solar・Swift Solar・Tandem PV。2026年末までに、500cm²超のモジュールで変換効率27%、IEC 61215の試験項目などの合格を目指す
素材技術者の視点:DOEが資金を出してきたのは「耐久性」と「検証」

DOEは、ペロブスカイト太陽電池が商用技術と競うには屋外で少なくとも20年もつ必要があるとし、水と酸素による劣化を課題の筆頭に挙げています 事実。 FY2020プログラムの選定テーマには、鉛を封じ込めるバリアフィルムや、封止・防湿の技術を使って20年後に初期出力の80%を保つことを目指すものが含まれます。 2024年のタンデム公募も、効率だけでなくIEC 61215の試験項目の合格を条件に掲げました。 封止材・バリアフィルム・正孔輸送材料を扱う立場から見ると、米国の公的資金は「効率の記録」より「長くもつことの証明」に向いていたと言えます。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点DOEが持っているもの持っていないもの
権限研究開発の課題と性能目標を定め、公募・選定・交付を自ら行う権限。賞金コンテストを運営し、国立研究所に検証センターをつくらせる予算の最終決定(議会が成立させる)。国際規格を決める権限(IEC)
地域米国の予算で、米国の大学・国立研究所・企業を支援。2024年のタンデム公募は、米国内で製造するタンデムの市場受容を目標に掲げた海外企業や他国の市場への直接の権限
波及PACTは、公平な試験手順をつくり、投資・金融の関係者に客観的な情報を提供することを役割に掲げるその試験手順を他国や他社に守らせる権限
規模連邦職員15,705人(2025年初め)から3,500人超が減少、契約者10万人超。担当部署IESOのFY2026成立額は3億2,000万ドル(太陽光以外の業務も含む)ペロブスカイト太陽電池だけに使われる年間予算額は、予算概要には示されていない
数字の読み方の注意

FY2027の「IESOの予算ゼロ」は、政府が議会に出した予算要求で、成立した額ではありません。 予算概要の表では、IESOはFY2025成立額1億8,171万ドル、FY2026成立額3億2,000万ドル、FY2027要求額はゼロ(前年比−100%)です 事実。 また、第3章の金額は選定時点の額で、その後の交渉・契約や、2025年以降の見直しで変わった可能性があります。 個々の案件が現在も続いているかは、本稿では確認できていません 未確定/将来。

5. 関わっている企業・組織

DOEのペロブスカイト太陽電池への資金はどう流れたか(米国) 担当は旧SETO(太陽光技術局)で、現在はCMEI傘下のIESOがページを引き継いでいる DOE(CMEI → IESO) 課題の設定・公募・選定・交付 米国議会 予算を成立させる FY2020プログラム 2021年3月選定 大学・国立研究所 企業など22件 効率と安定性 モジュール製造 4,000万ドル 検証センター PACT 2021年3月選定 サンディア国立研究所 NREL(現NLR) 加速寿命試験の手順 屋外での性能検証 900万+500万ドル Startup Prize 2021年3月〜2024年7月 新設の米国企業が対象 優勝:Verde Technologies 総額300万ドル タンデム公募 2024年5月選定 Swift Solar 700万 First Solar 600万 Cubic PV 600万 Tandem PV 470万 2026年末に効率27% 計2,370万ドル
図2 DOEのペロブスカイト太陽電池への資金の流れ。金額は選定時のDOE負担額(ドル)。出典:DOEの各プログラム・賞金コンテストの公式ページ。タンデム公募の4件の合計は本稿が足し合わせました 本稿の計算。

本シリーズの企業解説との関係

企業DOEの事業との関係(一次資料の記載)本シリーズとの関係
First SolarワイドギャップのペロブスカイトとCI(G)Sボトムセルを組み合わせたタンデムモジュール(600万ドル、変換効率27%が目標)企業解説(作成中)
Swift Solar蒸着でペロブスカイト層をつくるペロブスカイト-Siタンデム「PIPPIN」(700万ドル)企業解説(作成中)
Tandem PV正孔輸送層の安定性と屋外耐久性の研究「STACKED」(470万ドル)企業解説(作成中)
Cubic PV・Verde TechnologiesCubic PVは4端子のペロブスカイト-Siタンデム(600万ドル)、Verde TechnologiesはStartup Prizeの優勝本シリーズでは扱っていない

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
FY2027の要求どおりになれば、ペロブスカイトを含む地上用太陽光の新しい公募はDOEから出にくくなる予算概要はIESOのFY2027要求額をゼロとし、CMEIは重要鉱物・水力・先端製造を優先するとしている推測
2024年選定のタンデム4件は、2026年末が成果を測る節目になる公募説明資料は、2026年末までに変換効率27%・500cm²超・IEC 61215の試験項目の合格などを目標に掲げた推測
DOEの影響は、新しい資金よりも、PACTの試験手順や国立研究所のデータといった「測り方」の蓄積を通じて残るPACTは加速寿命試験の手順づくりと、投資家向けの客観的な情報提供を役割に掲げている推測

7. 用語集

CMEI
Office of Critical Minerals and Energy Innovation。旧エネルギー効率・再生可能エネルギー局(EERE)の業務を引き継いだDOEの部局。
IESO
Integrated Energy Systems Office。CMEIの中で、太陽光・風力・電力網などの研究開発を担う部署。
バンカビリティ
金融機関が融資を判断できるだけの、性能と寿命の裏づけがあること。
PACT
Perovskite PV Accelerator for Commercial Technologies。ペロブスカイト太陽電池の性能と寿命を中立の立場で検証するセンター。
IEC 61215
地上設置の太陽電池モジュールの設計適格性と型式認証の国際規格。温湿度などの試験項目を定める。

8. 出典

  1. U.S. Department of Energy FY 2025 Agency Financial Report(1977年のエネルギー省組織法、連邦職員約1万5,000人と契約者10万人超、2025年の15,705人から3,500人超の減少)。 https://www.energy.gov/sites/default/files/2025-12/fy-2025-doe-agency-financial-report.pdf
  2. U.S. Department of Energy FY 2027 Budget in Brief(2026年4月)。裁量経費539.1億ドル、CMEI(旧EERE)の予算、Integrated Energy SystemsのFY2025・FY2026成立額とFY2027要求額、National Laboratory of the Rockies。 https://www.energy.gov/documents/doe-fy-2027-budget-brief
  3. U.S. Department of Energy Integrated Energy Systems Office(IESOの役割、CMEIの次官補室の下にあること)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/integrated-energy-systems-office
  4. U.S. Department of Energy Perovskite Solar Cells(IESOによる研究開発支援、4つの課題、NLRの効率チャート)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/perovskite-solar-cells
  5. U.S. Department of Energy Four Ways DOE is Helping Clear the Path to Commercialization of Perovskite Solar Cells(耐久性・大面積での効率・量産・バンカビリティ、屋外20年)。 https://www.energy.gov/cmei/articles/four-ways-doe-helping-clear-path-commercialization-perovskite-solar-cells
  6. U.S. Department of Energy Solar Energy Technologies Office Fiscal Year 2020 Perovskite Funding Program(2020年8月の発表、2021年3月に22件・4,000万ドルを選定、3分野、各テーマの概要)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/solar-energy-technologies-office-fiscal-year-2020-perovskite-funding-program-0
  7. U.S. Department of Energy FY2020 Perovskite Funding Program Validation and Bankability Center(PACTとCHEETA、サンディア900万ドル、NREL 500万ドル、センターの役割)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/solar-energy-technologies-office-fiscal-year-2020-perovskite-funding-program
  8. U.S. Department of Energy American-Made Challenges: Perovskite Startup Prize(総額300万ドル、2021年3月〜2024年7月、2024年1月30日にVerde Technologiesが優勝)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/american-made-challenges-perovskite-startup-prize
  9. U.S. Department of Energy Advancing U.S. Thin-Film Solar Photovoltaics Funding Program(4,400万ドル、2023年9月公募・2024年5月選定、ペロブスカイト・タンデム4件の選定先と金額)。 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program
  10. U.S. Department of Energy Thin-Film PV FOA 3058 説明会資料(2023年9月)。2026年末までの性能目標(変換効率27%、500cm²超、IEC 61215の試験項目)、米国内で製造するタンデムの市場受容という目標。 https://www.energy.gov/sites/default/files/2023-09/SETO%20Thin-Film%20PV%20FOA%203058%20-%20Webinar.pdf

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
1977年の設立、連邦職員15,705人から3,500人超の減少、契約者10万人超事実出典1 https://www.energy.gov/sites/default/files/2025-12/fy-2025-doe-agency-financial-report.pdf
FY2027要求539.1億ドル、FY2026より48.1億ドル増、CMEIは旧EERE、IESOのFY2025・FY2026成立額とFY2027要求ゼロ、CMEIの優先分野、NRELの現在名NLR事実出典2 https://www.energy.gov/documents/doe-fy-2027-budget-brief
IESOの役割とCMEIの下にあること事実出典3 https://www.energy.gov/cmei/systems/integrated-energy-systems-office
IESOがペロブスカイトの研究開発を支援、4つの課題、旧SETOのページが現在IESOのページとして公開事実出典4 https://www.energy.gov/cmei/systems/perovskite-solar-cells
屋外で少なくとも20年、水と酸素による劣化、バンカビリティ事実出典5 https://www.energy.gov/cmei/articles/four-ways-doe-helping-clear-path-commercialization-perovskite-solar-cells
FY2020プログラムの22件・4,000万ドル、3分野、鉛封止のバリアフィルムや20年後80%を目指すテーマ事実出典6 https://www.energy.gov/cmei/systems/solar-energy-technologies-office-fiscal-year-2020-perovskite-funding-program-0
PACTとCHEETAの金額・実施機関・役割事実出典7 https://www.energy.gov/cmei/systems/solar-energy-technologies-office-fiscal-year-2020-perovskite-funding-program
Startup Prizeの総額・期間・対象・優勝企業事実出典8 https://www.energy.gov/cmei/systems/american-made-challenges-perovskite-startup-prize
薄膜PVプログラムの4,400万ドル、時期、ペロブスカイト・タンデム4件の選定先・内容・金額事実出典9 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program
2026年末までの性能目標、IEC 61215の試験項目、米国内で製造するタンデムという目標事実出典10 https://www.energy.gov/sites/default/files/2023-09/SETO%20Thin-Film%20PV%20FOA%203058%20-%20Webinar.pdf
機関の4つの型の区分本稿の計算本稿による整理
タンデム4件の合計2,370万ドル本稿の計算出典9の4件の金額を本稿が合計
ペロブスカイトだけの年間予算額、個々の案件の継続状況未確定/将来出典2・6〜9に記載なし。本稿では推計しない
第6章の見通し3項目推測出典2・7・10の記載からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はDOEの財務報告書・予算概要・公式ページ・公募説明資料に基づきます。金額は選定時点の額です。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。