TECHNOLOGY EXPLAINER
バンドギャップと組成設計
― 「混ぜれば好きな値にできる」の、その先にある壁
ペロブスカイトの強みのひとつは、ハロゲンや金属の比率を変えるだけで、吸収端を連続的に動かせることです。 ところが、臭素を増やしてバンドギャップを広げると、光を当てただけで組成が分かれる現象が見つかりました。 本稿は、理論上の最適値を自分で計算するところから始め、組成設計の「つまみ」と、その限界を素材の言葉で整理します。
- バンドギャップとは何か(3行でつかむ)
- 本稿の計算:理論上の最適値は何 eV か
- バンドギャップを決めているもの ― 鉛とヨウ素の軌道
- 組成設計の3つのつまみ ― X・B・A
- 素材技術者の視点①:Sn と Pb を混ぜると、両端より狭くなる
- 広げる側の壁 ― 光で分かれるハロゲン
- 本稿の計算:1.74 eV のセルは電圧をどれだけ失っているか
- 素材技術者の視点②:「組成」だけでなく「混ざったままでいる力」を設計する
- タンデムが求める値
- 強みと弱み/課題
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料・査読論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
1. バンドギャップとは何か(3行でつかむ)
- 何を決めるか:半導体が吸収できる光の長波長側の限界です。バンドギャップ Eg(eV)より小さいエネルギーの光子は吸収されません。波長に直すと λ(nm)≒ 1240 ÷ Eg です(本記事による解説)
- なぜ最適値があるか:Eg を狭くすると多くの光子を拾えて電流が増えますが、1個の光子から取り出せる電圧は下がります。Shockley と Queisser は、放射再結合だけを許す理想条件での限界効率を、Eg の関数として求めました事実
- ペロブスカイトで何ができるか:ハロゲンの比率で MAPb(BrxI1−x)3 のバンドギャップは1.6〜2.3 eV、FA系では1.48〜2.23 eVの範囲で連続的に変えられると報告されています事実
ペロブスカイトのバンドギャップは「混ぜ方」で決まりますが、その混ぜ方は、光を当てたあとも保たれるとは限りません。 Hoke らは、臭素を混ぜた膜に1 sun 相当の光を当てると1分もたたずにヨウ素の多い領域が生まれ、発光が1.68 eV に固定されることを報告しました事実。 組成設計は、「狙いの値をつくる」ことと「その値を保つ」ことの二つの問題です(本記事による解説)。
2. 本稿の計算:理論上の最適値は何 eV か
理想的な単接合太陽電池の上限効率を、標準の太陽光スペクトルから計算してみます。 スペクトルは NLR(米国立再生可能エネルギー研究所から改称した National Laboratory of the Rockies)が配布しているASTM G173-03 の AM1.5G(全天、37°傾斜面)を使います事実。
- 前提:Eg より大きいエネルギーの光子はすべて吸収し、1個につき電子1個を取り出す(階段状の吸収)
- 前提:再結合は放射再結合のみ(Shockley–Queisser の理想条件)。セル温度25℃(298.15 K)。暗電流は同じ温度の黒体放射から求める
- 前提:入射は ASTM G173 の AM1.5G スペクトル(積分すると約1,000 W/m²)
- 電流 Jsc は Eg 以上の光子数を積分し、電圧を掃引して出力が最大になる点を探す
結果:限界効率が最大になるのはEg = 1.34 eV 付近で約33.7%でした本稿の計算。 Shockley と Queisser の1961年の原論文は、太陽と電池を6000 K と300 K の黒体とみなし、1.1 eV で30%という最大値を示しています事実。 値が違うのは、本稿が大気を通った実際のスペクトル(AM1.5G)を使っているためです。
前提と限界:実際のセルでは非放射再結合、反射、寄生吸収、抵抗損失が加わるため、この値には届きません。 「どのバンドギャップを狙うと上限が高いか」の目安として使ってください。
| Eg(eV) | 吸収端の波長(nm) | 電流の上限 Jsc(mA/cm²) | 限界効率 | 本文との対応 |
|---|---|---|---|---|
| 1.25 | 992 | 37.6 | 33.1% | Sn–Pb 混合系(第5章) |
| 1.34 | 925 | 35.0 | 33.7% | 本稿の計算での最適値 |
| 1.48 | 838 | 29.7 | 32.4% | FAPbI3(Eperon ら) |
| 1.55 | 800 | 27.3 | 31.5% | MAPbI3 付近(Eperon ら・Hao ら) |
| 1.74 | 713 | 21.4 | 28.4% | Si タンデム上部セル(McMeekin ら) |
| 2.00 | 620 | 14.6 | 22.9% | 臭素の多い組成 |
波長・電流・効率はすべて本稿の計算(前提は上の囲み)。右端の列の組成とバンドギャップの対応は各論文[参考資料5・7・8]の報告値です。
3. バンドギャップを決めているもの ― 鉛とヨウ素の軌道
Umebayashi らは光電子分光と計算から、CH3NH3PbI3 の価電子帯の上端は主に Pb 6s と I 5p のσ反結合性の状態、伝導帯の下端は主に Pb 6p と I 5s のσ反結合性の状態でできていると報告しました事実。 つまり、バンド端をつくっているのは B サイト(鉛)と X サイト(ヨウ素)で、A サイトの有機陽イオンは直接にはバンド端に寄与していません(本記事による解説)。
4. 組成設計の3つのつまみ ― X・B・A
| つまみ | 変えるもの | 報告されている効果 | 出典 |
|---|---|---|---|
| X(ハロゲン) | I と Br の比 | MAPb(BrxI1−x)3 で 1.6〜2.3 eV を連続的に調整。Br を増やすと吸収端が短波長側へ移る | Hoke ら |
| X(ハロゲン) | FA 系での I と Br の比 | FA 鉛トリハライドで 1.48〜2.23 eV。1.48 eV の FAPbI3 で平面型セル14.2% | Eperon ら |
| X(ハロゲン) | MA 系での I と Br の比 | 可視域のほぼ全体をカバーする色の変化。セル効率12.3% | Noh ら |
| B(金属) | Sn と Pb の比 | 両端(MAPbI3 1.55 eV、MASnI3 1.35 eV)の間を直線的に結ばず、混合系は1.3 eV より狭い。吸収は約1,050 nm まで伸びる | Hao ら |
| A(陽イオン) | MA・FA の選択と、Cs の混合 | MA→FA で FA 系の最小値1.48 eV まで狭まる(Eperon ら)。FA0.83Cs0.17Pb(I0.6Br0.4)3 で約1.74 eV、組成の光安定性を確保 | Eperon ら/McMeekin ら |
| A と B | MA・FA × Sn・Pb のヨウ化物4種 | 直接遷移型で 1.25〜1.75 eV に分布。Sn–Pb の固溶体は全組成範囲で得られる | Stoumpos ら |
すべて事実(Hoke ら[参考資料6]、Eperon ら[参考資料5]、Noh ら[参考資料9]、Hao ら[参考資料7]、McMeekin ら[参考資料8]、Stoumpos ら[参考資料4])。
5. 素材技術者の視点①:Sn と Pb を混ぜると、両端より狭くなる
合金や固溶体の設計では、「2成分を混ぜると、性質は両端の間を直線的に動く」という経験則(ベガード則)がまず頭に浮かびます。 Hao らは、CH3NH3Sn1−xPbxI3 のバンドギャップが両端の1.55 eV(Pb)と1.35 eV(Sn)の間を直線的に結ばず、混合系では1.3 eV より狭くなることを報告しました事実。 吸収は約1,050 nmの近赤外まで伸び、Sn と Pb を半分ずつにした組成で最も広い吸収と約20 mA/cm² の短絡電流が得られています事実。
「どちらの端よりも狭い」というのは、直線補間では絶対に出てこない値です。 第2章の計算に当てはめると、1.25 eV の限界効率は約33.1%で、1.55 eV の約31.5%より高く本稿の計算、 しかも第9章で見るペロブスカイト同士のタンデムでは、下側のセルに狭いバンドギャップが要るため、この「たわみ(ボーイング)」が効いてきます(本記事による解説)。
一方で、Sn を入れると別の問題を抱えます。Stoumpos らは、Sn 化合物は酸化しやすく、Sn⁴⁺ がドープされて p 型化し、金属的な導電性を示すと報告しています事実。 バンドギャップの自由度と引き換えに、化学的な安定性を失うという交換条件です。詳しくは本シリーズ「スズ系ペロブスカイト」編で扱います。
6. 広げる側の壁 ― 光で分かれるハロゲン
バンドギャップを広げたいときは、臭素を増やすのがいちばん素直な方法です。 ところが Hoke らは、臭素を混ぜた膜では、バンドギャップが広がっても開放電圧が上がらないという先行報告(x > 0.25 での電圧低下)を出発点に、その原因を調べました事実。
- 何が起きたか:0.2 < x < 1 の MAPb(BrxI1−x)3 膜に光を当て続けると、組成によらず約1.68 eV に新しい発光ピークが現れ、1 sun 未満の光でも1分以内に強まりました事実
- 構造では:X線回折のピークが分裂し、ヨウ素の多い少数領域(x ≈ 0.2)と、臭素がやや多い多数領域に分かれたことが示唆されました事実
- 可逆性:暗所に数分置くと、発光・吸収・回折パターンは元に戻りました事実
- 意味:著者らは、光でハロゲン化物イオンが動き、バンドギャップの狭いヨウ素リッチ領域が再結合の中心となって、発光と開放電圧を低い値に固定するという仮説を示しています事実
7. 本稿の計算:1.74 eV のセルは電圧をどれだけ失っているか
McMeekin らは、FA0.83Cs0.17Pb(I0.6Br0.4)3 で光学的バンドギャップ約1.74 eV、開放電圧1.2 V、小面積で17%超、0.715 cm²で14.7%のセルを報告しました事実。 この電圧を、第2章と同じ理想モデルの開放電圧と比べます。
- 理想モデルの開放電圧:Eg = 1.74 eV、AM1.5G、25℃、放射再結合のみで計算すると 約1.46 V本稿の計算
- 報告値との差:1.46 − 1.2 = 約0.26 V。理想値の 約82%(1.2 ÷ 1.46)本稿の計算
- バンドギャップとの差:1.74 − 1.2 = 0.54 V本稿の計算
前提と限界:理想モデルの開放電圧は第2章と同じ前提で計算しています。 報告値の1.2 V は論文の要旨に記載された値で、偏析の有無やその寄与は本稿では切り分けていません。 この差のうち、どれだけがハロゲン偏析によるものかは、この計算からはわかりません。
8. 素材技術者の視点②:「組成」だけでなく「混ざったままでいる力」を設計する
固溶体の相分離は、普通は熱処理や長時間の保持で起きるものです。 ところがハロゲン化物ペロブスカイトでは、室温で、光を当てるだけで、1分以内に組成が分かれ、暗所で数分置くと元に戻ります事実(Hoke ら)。 拡散がこれほど速いのは、ハロゲン化物イオンが格子の中を動きやすいことを示しています(本記事による解説)。
この現象は、組成設計の考え方を二段構えにします。
- 一段目:狙いのバンドギャップになる組成を選ぶ(第4章のつまみ)
- 二段目:その組成が動作中も混ざったままでいるようにする(結晶性、A サイトの組成、欠陥や粒界の処理)
McMeekin らは、FA と Cs を混ぜた系で「高結晶性で、組成的に光安定な」1.74 eV の材料を示しました事実。 臭素の比率は0.4で、Hoke らが偏析を観察した範囲(0.2 < x < 1)に入っています事実。 つまり「臭素を0.2以下に抑える」だけが解ではなく、同じ臭素比でも結晶の質や A サイトで振る舞いが変わりうる、と読めます(本記事による解説)。
素材メーカーにとっての示唆は、組成表(何を何%)だけでは材料仕様にならないということです。 同じ仕込み組成でも、原料純度・結晶化条件・添加剤で「混ざったままでいる力」が変わりうるなら、 光照射下の発光スペクトルや回折の安定性を受け入れ検査の指標に含める発想が必要になります(本記事による解説)。 イオンが動く仕組みそのものは本シリーズ「イオン移動と劣化」編で扱います。
9. タンデムが求める値
単接合の最適値(第2章で約1.34 eV)とは別に、2つのセルを重ねるタンデムでは、上下のセルにそれぞれ違うバンドギャップが求められます。
- シリコンとのタンデム:McMeekin らは、シリコンと組み合わせる上部のペロブスカイトセルの最適な光学的バンドギャップを約1.75 eVとしています事実。 効率表 Version 68 では、面積約1 cm²のペロブスカイト/シリコン2端子タンデムセルで35.2%(LONGi、ESTI 測定)が掲載されています事実
- ペロブスカイト同士のタンデム:下部セルには狭いバンドギャップが要り、第5章の Sn–Pb 混合系がその候補になります(本記事による解説)。 同じ効率表では、ペロブスカイト/ペロブスカイト2端子で面積1.038 cm²で28.2%、面積0.0493 cm²の小面積で30.1%が掲載されています事実
タンデムの詳細は、本シリーズ「シリコンペロブスカイトタンデム」編と「全ペロブスカイトタンデム」編で扱います。
10. 強みと弱み/課題
| 観点 | 強み(一次情報で確認できたこと) | 弱み・課題 |
|---|---|---|
| 調整幅 | ハロゲン比で1.48〜2.3 eV 程度まで連続的に調整(Eperon ら・Hoke ら) | 臭素の多い側で光照射による偏析(Hoke ら) |
| 狭い側 | Sn–Pb 混合で1.3 eV より狭くでき、約1,050 nm まで吸収(Hao ら) | Sn の酸化で p 型化しやすい(Stoumpos ら) |
| 広い側 | FA–Cs 混合で光安定な約1.74 eV(McMeekin ら) | 開放電圧は理想モデルの約82%本稿の計算 |
| 吸収端 | 急峻で、バンドギャップの0.1 eV 上で吸収係数1×10⁴ cm⁻¹ 超(Hoke ら) | x = 0.5 では吸収の立ち上がりがなだらか(Hoke ら) |
各項目は事実(出典は括弧内)。ただし「約82%」は本稿の計算です。「強み・弱み」に振り分けたのは本記事による整理です。
(1) 長期の組成安定性は、本稿の範囲では評価していない
ここで紹介した偏析の報告は、数分〜数十分のスケールの観察です。 屋外で何年も光を受け続けたときに組成がどう変わるかについて、一般化できる一次情報は本稿の調査範囲では確認できませんでした。
(2) 組成と色は1対1ではない
膜の色はバンドギャップだけでなく、膜厚や散乱にも左右されます。 外観の色から組成やバンドギャップを判定することはできません(本記事による解説)。
- 単接合の理論上の最適値は約1.34 eV・約33.7%です本稿の計算
- バンド端は鉛とハロゲンの軌道でできているので、X と B を変えるとバンドギャップが動きます事実
- Sn と Pb を混ぜると、両端より狭い1.3 eV 未満になります事実
- 臭素を混ぜると、光で1分以内にハロゲンが分かれ、発光が1.68 eV に固定されます事実
- 1.74 eV のセルの開放電圧1.2 V は、理想値の約82%です本稿の計算
- 組成設計は「値をつくる」と「値を保つ」の二段構えです(本記事による解説)
11. 用語集
- バンドギャップ(Eg)
- 価電子帯の上端と伝導帯の下端のエネルギー差。これより小さいエネルギーの光は吸収されない。
- Shockley–Queisser 限界
- 放射再結合だけを許す理想条件での単接合太陽電池の効率の上限。バンドギャップの関数になる。
- AM1.5G
- 大気を1.5倍の厚さ分通過した太陽光の標準スペクトル(全天)。ASTM G173 で定められている。
- 短絡電流密度(Jsc)
- 電極を短絡したときに流れる電流。吸収できる光子の数で上限が決まる。
- 開放電圧(Voc)
- 電流を流さないときの電圧。再結合が少ないほど高い。
- ベガード則
- 固溶体の格子定数などの性質が、成分比に対して直線的に変わるという経験則。
- ボーイング
- 固溶体のバンドギャップが直線から外れてたわむこと。Sn–Pb 系では両端より狭くなる。
- ハロゲン偏析
- 混合ハロゲン化物で、光照射などによりヨウ素の多い領域と臭素の多い領域に分かれる現象。
- 光学的バンドギャップ
- 吸収スペクトルの立ち上がりから求めたバンドギャップ。
- σ反結合性の状態
- 2つの原子軌道が逆位相で重なってできる、エネルギーの高い軌道の状態。
- タンデム
- バンドギャップの異なるセルを重ね、短波長と長波長の光を分担して変換する構造。
- 2端子
- 上下のセルを直列につなぎ、電極を2つだけ持つタンデムの形式。
12. 参考資料(一次情報)
- Shockley, Queisser「Detailed Balance Limit of Efficiency of p-n Junction Solar Cells」J. Appl. Phys. 32, 510 (1961) https://doi.org/10.1063/1.1736034
- NLR(National Laboratory of the Rockies、旧NREL)「Reference Air Mass 1.5 Spectra」(ASTM G173-03 の表を配布) https://www.nlr.gov/grid/solar-resource/spectra-am1.5
- Umebayashi ほか「Electronic structures of lead iodide based low-dimensional crystals」Phys. Rev. B 67, 155405 (2003) https://doi.org/10.1103/PhysRevB.67.155405
- Stoumpos, Malliakas, Kanatzidis「Semiconducting Tin and Lead Iodide Perovskites with Organic Cations: Phase Transitions, High Mobilities, and Near-Infrared Photoluminescent Properties」Inorg. Chem. 52, 9019 (2013) https://doi.org/10.1021/ic401215x
- Eperon ほか「Formamidinium lead trihalide: a broadly tunable perovskite for efficient planar heterojunction solar cells」Energy Environ. Sci. 7, 982 (2014) https://doi.org/10.1039/C3EE43822H
- Hoke ほか「Reversible photo-induced trap formation in mixed-halide hybrid perovskites for photovoltaics」Chem. Sci. 6, 613 (2015) https://doi.org/10.1039/C4SC03141E
- Hao ほか「Anomalous Band Gap Behavior in Mixed Sn and Pb Perovskites Enables Broadening of Absorption Spectrum in Solar Cells」J. Am. Chem. Soc. 136, 8094 (2014) https://doi.org/10.1021/ja5033259
- McMeekin ほか「A mixed-cation lead mixed-halide perovskite absorber for tandem solar cells」Science 351, 151 (2016) https://doi.org/10.1126/science.aad5845
- Noh ほか「Chemical Management for Colorful, Efficient, and Stable Inorganic–Organic Hybrid Nanostructured Solar Cells」Nano Lett. 13, 1764 (2013) https://doi.org/10.1021/nl400349b
- Green ほか「Solar cell efficiency tables: Version 68」Joule 10, 102494 (2026) https://doi.org/10.1016/j.joule.2026.102494
13. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 放射再結合のみを許す理想条件での限界効率(詳細平衡限界)を、バンドギャップの関数として求めたこと。太陽と電池を6000 K と300 K の黒体とみなし、1.1 eV で最大30%としたこと | J. Appl. Phys. 論文(要旨) 出典1 https://doi.org/10.1063/1.1736034 | 事実 |
| ASTM G173-03 の AM1.5G(全天、37°傾斜面)スペクトルが NLR から配布されていること。NREL から NLR への名称変更 | NLR「Reference Air Mass 1.5 Spectra」ページと配布データ 出典2 https://www.nlr.gov/grid/solar-resource/spectra-am1.5 | 事実 |
| CH3NH3PbI3 の価電子帯上端が主に Pb 6s と I 5p のσ反結合性状態、伝導帯下端が主に Pb 6p と I 5s のσ反結合性状態でできていること | Phys. Rev. B 論文(要旨) 出典3 https://doi.org/10.1103/PhysRevB.67.155405 | 事実 |
| MA・FA と Sn・Pb のヨウ化物4種が直接遷移型でバンドギャップ1.25〜1.75 eV に分布すること。Sn–Pb 固溶体が全組成範囲で得られること。Sn 化合物が酸化しやすく Sn⁴⁺ ドープで p 型化し金属的導電性を示すこと | Inorg. Chem. 論文(要旨) 出典4 https://doi.org/10.1021/ic401215x | 事実 |
| FA 鉛トリハライドのバンドギャップが1.48〜2.23 eV で調整可能であること。1.48 eV の材料で平面型セル14.2%。MA 系のバンドギャップが約1.55 eV 以上であること | Energy Environ. Sci. 論文(要旨) 出典5 https://doi.org/10.1039/C3EE43822H | 事実 |
| MAPb(BrxI1−x)3 のバンドギャップが1.6〜2.3 eV で調整可能であること。x > 0.25 で開放電圧が低下する先行報告。0.2 < x < 1 で光照射下に約1.68 eV の発光ピークが1分以内に現れ組成によらないこと。X線回折ピークの分裂とヨウ素リッチ(x ≈ 0.2)領域の示唆。暗所数分で可逆に戻ること。ヨウ素リッチ領域が発光と開放電圧を固定するという仮説。バンドギャップの0.1 eV 上で吸収係数1×10⁴ cm⁻¹ を超えること、x = 0.5 では立ち上がりがなだらかなこと。正孔がヨウ素リッチ領域に集まることを駆動力とする仮説 | Chem. Sci. 論文(本文) 出典6 https://doi.org/10.1039/C4SC03141E | 事実 |
| CH3NH3Sn1−xPbxI3 のバンドギャップが両端(1.55 eV と1.35 eV)の間でベガード則に従わず、混合系で1.3 eV より狭くなること。吸収が約1,050 nm まで伸びること。Sn0.5Pb0.5 で最も広い吸収と約20 mA/cm² の短絡電流 | J. Am. Chem. Soc. 論文(要旨) 出典7 https://doi.org/10.1021/ja5033259 | 事実 |
| シリコンとのタンデムで上部セルの最適な光学的バンドギャップが約1.75 eV であること。FA0.83Cs0.17Pb(I0.6Br0.4)3 が高結晶性で組成的に光安定であり、光学的バンドギャップ約1.74 eV、開放電圧1.2 V、小面積で17%超、0.715 cm² で14.7% | Science 論文(要旨) 出典8 https://doi.org/10.1126/science.aad5845 | 事実 |
| MAPb(I1−xBrx)3 の組成制御で可視域のほぼ全体をカバーする色の変化が得られ、最も効率の高いセルが12.3%であること | Nano Lett. 論文(要旨) 出典9 https://doi.org/10.1021/nl400349b | 事実 |
| ペロブスカイト/シリコン2端子タンデム 35.2%(0.9994 cm²、LONGi、ESTI 測定)。ペロブスカイト/ペロブスカイト2端子 28.2%(1.038 cm²)と小面積 30.1%(0.0493 cm²) | Joule 掲載「Solar cell efficiency tables: Version 68」 出典10 https://doi.org/10.1016/j.joule.2026.102494 | 事実 |
| AM1.5G・25℃・放射再結合のみでの限界効率(1.34 eV で最大約33.7%、1.25 eV 33.1%、1.48 eV 32.4%、1.55 eV 31.5%、1.74 eV 28.4%、2.00 eV 22.9%)、電流の上限、吸収端の波長。1.74 eV での理想的な開放電圧約1.46 V、報告値1.2 V との差約0.26 V・比約82%、バンドギャップとの差0.54 V | 本稿の計算。ASTM G173 の AM1.5G スペクトル(出典2)を用い、階段状の吸収、放射再結合のみ、298.15 K の黒体放射による暗電流を前提とした。図1・図5の数値部分と第2章の表を含む | 本稿の計算 |
| バンド端が B と X の軌道でできているので A は直接寄与しないという整理。ベガード則の破れを設計の武器とみる読み取り。「値をつくる」と「値を保つ」の二段構え。同じ臭素比でも結晶の質や A サイトで振る舞いが変わりうるという読み取り。受け入れ検査に光照射下の安定性を含める発想。色から組成を判定できないこと。強み・弱みの振り分け | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各論文が表明した見解ではない | 解説 |
| 屋外で長期に光を受けたときの組成安定性。開放電圧の差のうちハロゲン偏析が占める割合 | 本稿の調査範囲では一般化できる一次情報を確認できず、本稿の計算でも切り分けられないため記載していない(本記事による注記) | 解説 |
| 図1〜図5が説明のための作図であり、実際の測定データ・エネルギー準位・顕微鏡像ではないこと。ヒーロー画像と図6が AI 生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年9月25日/出典は一次情報(査読論文、NLR 配布の標準スペクトル、効率表)に限定しています。 理論限界効率・開放電圧の比較は、明示した前提にもとづく本稿の計算です。 屋外での長期的な組成安定性と、開放電圧の損失のうちハロゲン偏析が占める割合については、確認できる一次情報がなかったため記載していません。 論文の内容は、要旨または公開されている本文で確認できた範囲に限っています。 図はすべて説明用の概念図です。図1〜図5はベクター作図、ヒーロー画像と図6はAI生成イメージであり、いずれも実際の測定データ・試料の外観を示すものではありません。