COMPANY PROFILE / 細胞培養技術
Merck KGaA
― 培地・フィルター・樹脂の老舗が、ウイルスベクターと細胞治療の「道具」を買収で広げる(米国・カナダではMilliporeSigma)
ドイツ・ダルムシュタットのMerck KGaAは、医薬品・電子材料と並んでLife Science(ライフサイエンス)事業を持ち、 2025年にはその売上がグループの42%を占めました。細胞培養に直接関わるのは、培地・細胞株・フィルター・クロマトグラフィー樹脂・シングルユース製品を売るProcess Solutionsで、 2025年は為替などを除くオーガニックで10.7%成長し、会社は同事業を「主要な成長エンジン」と位置づけています。 2024年にはウイルスベクター用の遺伝子導入試薬のMirus Bioを6億ドルで買収し、2026年6月には細胞治療向けの材料・装置も持つ米Bio-Techneを企業価値約113億ドルで買収する契約を結びました。 本稿では会社全体の説明は最小限にとどめ、Life Science事業を中心に、細胞培養に何を投じ、誰と組み、何を目指しているかに絞ります。
- 30秒でわかるMerck KGaAと、細胞培養技術での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 細胞培養技術の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(Life Science事業を中心に)
- 細胞培養にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は細胞培養技術で何を目指しているか
- 細胞培養分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるMerck KGaAと、細胞培養技術での立ち位置
受託製造・受託試験(従)①バイオ医薬品生産と②細胞・遺伝子治療の両方に関与
細胞培養に関わる企業は、大きく受託開発製造(CDMO)・装置/消耗品/培地のサプライヤー・細胞治療/再生医療の開発企業の3種類に分かれます。 Merck KGaAの主たる立場はサプライヤーです。2026年上期報告書は、Process Solutionsの品ぞろえを「培地と細胞株、プロセス化学品と添加剤、フィルター、クロマトグラフィー樹脂と膜、シングルユースシステム、統合プラットフォーム、バリデーションサービス」と説明しています 事実。 一方で、年次報告書はLife Science Services(2026年からはAdvanced Solutionsに統合)が、ADCやウイルス・遺伝子治療製品などを受託開発・製造・試験していると書いており、 従たる類型としてCDMOの顔も持っています 事実。 「細胞培養」の2つの意味――①抗体などバイオ医薬品の生産に使う動物細胞培養、②細胞そのものが製品になる細胞治療――については、 ①が中心で、②にはウイルスベクター(遺伝子を細胞に運ぶ材料)の製造用品と受託製造・試験を通じて関わっています。
2. ロゴと社名の表記について
Merck KGaAのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
公式サイトのヘッダーに掲載されているロゴ(SVG)を img/merck_kgaa_logo.svg として設置しています(色は同サイトでの表示色)。
表記の注意:年次報告書によれば、同社は「Merck」の名称とブランドの世界的な権利を持っていますが、米国とカナダは例外です。 この2か国では、Life Science事業はMilliporeSigma、医薬品事業はEMD Serono、電子材料事業はEMD Electronicsの名称で事業をしています。 米国の製薬会社Merck & Co., Inc.とは別の会社なので、英語の資料を読むときは注意が必要です。 本稿では「Merck KGaA」または「Merck」と表記します。
https://www.merckgroup.com/en.html3. 細胞培養技術の世界で、この会社はどこにいるか
残りの51%はScience & Lab Solutionsで、年次報告書は「研究・生産・試験向けの試薬、消耗品、機器、ソフトウェア、サービス」に加え、ラボ用純水装置や微生物検査製品などを扱うと説明しています 事実。 生産工程向けの事業として独立しているProcess Solutionsは、Life Science事業の半分弱にとどまる点に注意してください。 「Life Science事業の売上約90億ユーロがすべて細胞培養関連」ではありません。
4. 会社の規模(Life Science事業を中心に)
| グループ全体 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 売上高(€百万) | 21,156 | 21,102 |
| 研究開発費(€十億) | 2.3 | 2.4 |
| 従業員数(12月31日) | 62,557 | 62,461 |
| Life Science事業(€百万) | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| Process Solutions | 3,782.9 | 3,522.3 | 3,785.1 | 2,082(前年同期1,863) |
| Advanced Solutions | 2,481.2 | 2,464.3 | 2,365.4 | 1,179(前年同期1,181) |
| Discovery Solutions | 3,016.7 | 2,929.8 | 2,828.8 | 1,416(前年同期1,440) |
| Life Science 合計 | 9,280.6 | 8,916.2 | 8,979.6 | 4,677(前年同期4,485) |
| Life Scienceの調整後EBITDA(EBITDA pre) | ― | 2,589(29.0%) | 2,585(28.8%) | ― |
| Life Scienceの研究開発費 | ― | 388 | 401 | ― |
| Life Scienceの有形固定資産への投資 | ― | 858 | 745 | ― |
出典:Life Science事業の新区分別売上表(2023〜2025年、2026年1月からの新区分で組み替えた数字)、2025年年次報告書(セグメント情報)、2026年上期報告書。
Process Solutionsのオーガニック成長率は、2023年が−14.4%、2024年が−6.4%、2025年が+10.7%、2026年1〜6月が+15.5%でした 事実。 2年続けて落ち込んだあと、2025年から大きく持ち直しています。年次報告書は2025年の伸びを「新しい顧客プロジェクトからの需要増と市場の正常化」によると説明し、 2026年上期報告書は「下流工程(精製)とシングルユース製品の需要増」と「限定的な安全在庫の積み増しが続いていること」を挙げています 事実。
Process Solutionsの中で培地だけ、細胞治療向けだけの売上は開示されていません 未確定/将来。 研究開発費と設備投資もLife Science事業全体の数字で、培地や細胞培養向けの内訳は非公表です。 また、2026年から区分が変わったため、旧区分(Science & Lab Solutions/Process Solutions/Life Science Services)と新区分(Process Solutions/Advanced Solutions/Discovery Solutions)の数字を混ぜて比べないよう注意してください。 Process Solutionsは両区分でほぼ同じ範囲です(2025年:旧区分3,785百万ユーロ、新区分3,785.1百万ユーロ)。
5. 細胞培養にかけているリソース
| リソース | 一次情報で確認できた内容 | 確認状況 |
|---|---|---|
| 人 | Life Science事業の研究開発に1,700人超の科学者、12拠点。グループ全体では研究開発と関連支援に約6,500人。Life Science事業の総人員、Process Solutionsの人員 | 研究開発人員は確認できた。事業部の総人員は本稿では確認できなかった |
| 金(設備投資) | Life Scienceの有形固定資産投資7億4,500万ユーロ(2025年)。うちアイルランド・コークの膜・フィルター工場に1億2,000万ユーロ。韓国・大田(テジョン)のバイオプロセス生産センターに3億ユーロ超(粉末培地・プロセス液など)。米カンザス州レネクサの粉末培地工場拡張に2,300万ユーロ。中国・南通の培地GMPラインに約660万ユーロ | 確認できた(培地全体の投資総額は非公表) |
| 金(研究開発費) | Life Science事業で4億100万ユーロ(2025年) | 事業単位では確認できた。細胞培養分の内訳は非公表 |
| 外部への出資・買収 | Mirus Bio(遺伝子導入試薬、6億ドル、2024年8月完了)、HUB Organoids(オルガノイド、2025年1月完了)、JSRのクロマトグラフィー事業(プロテインA樹脂、暫定取得価額1億9,400万ユーロ、2026年3月完了)、Bio-Techne(企業価値約113億ドル、2026年6月契約、未完了) | 確認できた(HUB Organoidsの買収額は本稿では確認できなかった) |
| 大学・研究機関との連携 | 米ワシントン大学(セントルイス)と共同研究支援の覚書(2025年7月、同大学とは90年の関係)。ベルギーの研究機関imecと生体模倣システム(microphysiological systems)の共同開発(2025年5月)。韓国KAISTと覚書(2024年5月)、2026年3月に化学ハブを開設 | 確認できた(KAISTは化学分野が中心) |
金額で突出しているのはBio-Techneの買収です。企業価値約99億ユーロは、Life Science事業の2025年売上(約90億ユーロ)を上回る規模です 本稿の計算。 会社は、Bio-Techneが細胞治療の開発企業向けに材料・分析・工程技術を提供しており、さらに細胞培養装置「G-Rex」を作る米Wilson Wolfの株式19.9%を持ち、2027年末直後に残りを取得する予定だと説明しています 事実。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2023年4月 | シングルユースの培養・保管バッグ用フィルム「Ultimus」を発売(織ったナイロンを組み込んだ構造) | シングルユース製品の材料開発 |
| 2023年7月 | 米カンザス州レネクサの培地工場を拡張(9,100平方メートル、2,300万ユーロ)。北米最大の粉末培地拠点に | 米州向けの培地供給 |
| 2024年3月 | 韓国・大田に3億ユーロ超のバイオプロセス生産センターを建設すると発表。Life Science事業のアジア太平洋で過去最大の投資。2028年末までに約300人を雇用予定 | アジアでの培地・プロセス液の現地生産 |
| 2024年7月 | 中国・南通で、中国初となる同社の培地GMP製造ラインの商業生産を開始 | 中国の顧客向けのカスタム培地 |
| 2024年8月 | Mirus Bio(米)の買収を完了(約6億ドル)。ウイルスベクター製造用の遺伝子導入試薬 | 「ウイルスベクター製造の全工程に製品を出す」という目標に向けた一手 |
| 2024年9月 | 独・英・中・米の培地工場が、医薬品補助材料の製造基準EXCiPACTの認証を取得(会社は「業界初」と表現) | 培地を医薬品原料並みに品質管理 |
| 2025年1月 | HUB Organoids(オランダ)の買収を完了 | 研究用の3Dヒト組織モデル |
| 2025年9月 | アイルランド・コークのフィルター工場を開所(約1億5,000万ユーロ。アイルランドへの総額4億4,000万ユーロ投資の一部)。CHOZN Elite細胞株を発売 | 下流(ろ過)の供給能力と、上流(細胞株)の新製品 |
| 2025年10月 | JSRのクロマトグラフィー事業の買収で合意。遺伝子導入を安定させる試薬VirusGenスタビライザーを発売 | 抗体精製の中核材料(プロテインA)の強化 |
| 2026年1月 | Life Science事業を、Process Solutions/Discovery Solutions/Advanced Solutionsの3事業単位に再編 | 生産向けと研究向け、受託・規制対応向けを分ける |
| 2026年3〜5月 | JSRのクロマトグラフィー事業の買収を完了(ベルギーの50人超のチーム)。Genetix Biotherapeuticsと、FDA承認済みの遺伝子治療3製品の出荷試験を担う5年契約(同社リリースの記載) | 精製材料の自前化と、受託試験の拡大 |
| 2026年6月 | Bio-Techne(米)を企業価値約113億ドルで買収する契約。完了は2026年末〜2027年初めの見込み | 細胞治療向けの材料・装置と、研究用ツールを一気に拡充 |
7. 今後の計画
オーガニック増収伸びの中心はProcess Solutions(上期報告書)
3本柱の1つ3本柱で中期の成長の最大80%を生むと会社は説明
2027年初めに完了予定年約1.4億ユーロのコスト削減効果を3年目までに見込む
残り株式を取得予定Bio-Techneの先渡し契約による
CEO書簡は、中期的にProcess Solutions(Life Science)、希少疾患(医薬品)、半導体材料(電子材料)の3つを成長ドライバーとし、「中期の成長の最大80%をこの3事業が生む」と書いています 事実。 また、過去5年の集中投資を経て、設備投資の売上比率は今後徐々に通常水準に戻す方針も示しています。 つまり、生産能力の増強は一段落し、今後の拡大は買収(Bio-Techne)が中心になる局面だと読めます 未確定/将来。
次はいずれも、本稿が読んだ年次報告書・上期報告書・リリースに記載がありません 未確定/将来。
Process Solutions単独の中期売上目標/培地の生産能力/細胞治療向け製品の売上/Bio-Techne買収後にG-Rexなど細胞治療製品をどの事業単位に入れるか/HUB Organoidsの買収額。 なお、年次報告書やリリースには「細胞・遺伝子治療の開発企業の約7割が製造を外部委託している」といった業界の数字も出てきますが、出所が示されていないため本稿では採用しません。
8. この会社は細胞培養技術で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| Life Science事業の重心を研究用試薬から「生産用」へ移している | CEO書簡がProcess Solutionsを主要な成長エンジンとし、2026年の再編で生産向けを独立した事業単位として維持。Process Solutionsの構成比は2024年40%→2025年42%→2026年上期45% | 推測 |
| ウイルスベクター製造の全工程に製品を出す | Mirus Bio買収時に会社自身が「ウイルスベクター製造のあらゆる工程にソリューションを提供する」ことを目標と明言 | 事実 |
| 細胞治療では、自社に薄かった培養装置・材料を買収で補う | Bio-Techneが細胞治療の開発企業向けに材料・分析・工程技術を提供し、G-Rexを作るWilson Wolfの取得も予定されている | 推測 |
| 抗体医薬では精製の中核材料(プロテインA)を自前化する | JSRのクロマトグラフィー事業の買収。会社は「抗体医薬の生産技術への長期投資」と説明 | 推測 |
| 培地は「地域で作って地域に売る」体制にする | 米レネクサ、中国・南通、韓国・大田での培地工場の新設・拡張。コークの工場は「in-region-for-region」の供給強化と説明 | 事実 |
Merckの細胞治療への関わり方は、これまで「遺伝子を運ぶ側」が中心でした。Mirus Bioの遺伝子導入試薬、ウイルスベクターの受託製造、遺伝子治療の出荷試験は、 いずれも細胞に入れるベクターや遺伝子に関する事業です 事実。 一方、CAR-T細胞などの製造では、ベクターのほかに細胞を増やす培養装置、サイトカインなどの培地添加物、工程の分析が必要になります。 Bio-Techneの買収リリースは、同社を「細胞治療の開発企業に材料・分析・工程技術を提供する有力企業」と説明し、G-Rex(細胞培養装置)を作るWilson Wolfの取得予定にも触れています。 本稿はこれを、ベクター側に偏っていた細胞・遺伝子治療の品ぞろえを、細胞の培養側にまで広げる買収だと読みます 未確定/将来。ただし、買収はまだ完了しておらず、会社は統合後の事業配置を公表していません。
9. 細胞培養分野の提携マッピング
Merckの関係先は、研究用の細胞モデル(オルガノイド・3D培養)の共同開発と、生産用材料の買収の2系統に分かれます。 左側の共同開発はDiscovery/研究向け、右側の買収のうちMirus BioとJSRは生産向け(Process Solutions)で、Bio-Techneは両方にまたがります 事実。
10. 提供している技術・製品・サービス
| 領域 | 主な製品・サービス(年次報告書・上期報告書・リリースの記載) | ①バイオ医薬品/②細胞・遺伝子治療 |
|---|---|---|
| 培地・細胞株 | 培地(粉末培地をレネクサ、南通などで製造。カスタム培地の設計も)、培地・化学品の構成を顧客が自分で依頼できるデジタルツール mConfig、CHO細胞株 CHOZN Elite(化学的組成既知・動物由来成分不含の培地で浮遊培養) | ①(培地は②にも) |
| シングルユース | Mobius シングルユース製品、Ultimus フィルム、ADC製造用のMobius ADCリアクター | ① |
| ろ過・精製 | フィルター(Millipore Express Ace 0.2 µm、Viresolve Pro-S)、クロマトグラフィー樹脂・膜(Natrix CH、JSR由来のAmsphere プロテインA樹脂)、Pellicon Capsule(ウイルス・遺伝子治療用のシングルユース限外ろ過) | ①(一部②) |
| ウイルスベクターの上流 | 遺伝子導入試薬 TransIT-VirusGEN(旧Mirus Bio)、VirusGen スタビライザー、AAV製造プラットフォーム AAViator | ② |
| 受託製造・受託試験 | ADC、高活性原薬、ウイルス・遺伝子治療製品の受託開発・製造。BioReliance ブランドの受託試験(生物学的安全性試験、ウイルスクリアランス試験、セルバンク)。AAV Express Platform | ①② |
| 研究用の細胞モデル | オルガノイド(旧HUB Organoids)、Promegaとの3D細胞培養の評価技術 | 創薬研究(生産用ではない) |
2023年4月に発売したシングルユース容器用フィルム「Ultimus」について、Merckは 独自の「織ったナイロン」構造を組み込み、バッグの強度・耐久性・破れにくさを高めたと説明しています。 漏れ、擦り傷、裂け、材料疲労を防ぐことが目的で、健全な細胞増殖を支えるとしています 事実。
シングルユースの培養バッグは、何百リットルもの培養液を入れて持ち上げたり揺らしたりする薄い多層フィルムです。 フィルムだけで強度を出そうとすると厚くなり、柔軟性や透明性が落ちます。そこに織物を補強材として入れるのは、 繊維強化プラスチックやタイヤのコード層と同じ「複合材料」の考え方です。 ただし、補強層が接液面に影響しない層構成になっているか、どのポリマーで挟んでいるかといった詳細はリリースでは開示されていません 未確定/将来。本シリーズの技術解説「シングルユースシステム」でも、バッグ用フィルムの構造を説明しています。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 需要の波が大きい | Process Solutionsのオーガニック成長率は2023年−14.4%、2024年−6.4%から、2025年+10.7%、2026年上期+15.5%へと大きく振れている | 事実 |
| 在庫の積み増しの反動 | 2026年上期報告書は「限定的な安全在庫の積み増しが続いている」と記載。積み増しが止まれば伸びが鈍る可能性 | 推測 |
| 大型買収の統合と負債 | Bio-Techneの企業価値約99億ユーロはLife Science事業の年間売上を上回る。2025年末の純有利子負債は約86億ユーロ(SpringWorks買収で増加) | 事実 |
| 為替 | 2025年のLife Science事業は為替で−3.4%の影響を受け、オーガニック4.0%増でも報告ベースでは0.7%増にとどまった | 事実 |
| 研究予算の削減 | 米国の政策変更で学術・政府系研究機関の支出が減り、研究向け事業が伸び悩んだと年次報告書に記載 | 事実 |
| 受託事業の不安定さ | Life Science Services(受託製造・試験)は2025年にオーガニック4.5%減。前年の一時的な案件がなくなったことが主因 | 事実 |
| 細胞治療での実績が見えない | 細胞治療向け製品の売上は非公表。Bio-Techne買収後の事業配置も未公表 | 未確定/将来 |
12. 用語集
- Process Solutions
- Merck KGaAのLife Science事業の事業単位。医薬品の生産工程で使う培地・フィルター・樹脂・シングルユース製品などを扱う。
- MilliporeSigma
- 米国・カナダでMerck KGaAのLife Science事業が使う名称。
- 培地
- 細胞の栄養となる液体(または溶かして使う粉末)。本シリーズの技術解説「培地」で詳しく説明しています。
- CHO細胞
- チャイニーズハムスター卵巣由来の細胞。抗体医薬の生産に最も広く使われる。
- プロテインA
- 抗体に選択的に結合するタンパク質。これを固定した樹脂で抗体を精製する。
- 遺伝子導入試薬
- DNAを細胞に取り込ませる試薬。ウイルスベクターの製造で使う。
- ウイルスベクター
- 遺伝子を細胞に運ぶために改変したウイルス。遺伝子治療やCAR-T細胞の製造に使う。
- オルガノイド
- 幹細胞などから作る小さな立体的な組織モデル。創薬研究で動物実験の一部を置き換える目的で使われる。
- CDMO
- 医薬品の開発・製造を受託する企業。本シリーズの技術解説「CDMO」も参照。
- オーガニック成長率
- 為替と買収・売却の影響を除いた売上成長率。

13. 出典
- Merck KGaA Annual Report 2025。会社概要(所有構造、米国・カナダでの名称)、グループの売上・研究開発費・従業員、Life Science事業の事業単位別売上・EBITDA pre・研究開発費・設備投資、事業単位の説明、研究開発と製品、投資、CEO書簡、リスク。 https://www.merckgroup.com/content/dam/web/corporate/non-images/investors/reports-and-financials/earnings-materials/2025-q4/en/2025-Q4-Report-EN.pdf
- Merck KGaA Half-yearly Financial Report as of June 30, 2026。新区分別の売上、Process Solutionsの製品説明と増収要因、JSR買収の完了と暫定取得価額、Bio-Techne買収契約、2026年見通し、KAIST。 https://www.merckgroup.com/content/dam/web/corporate/non-images/investors/reports-and-financials/earnings-materials/2026-q2/en/2026-Q2-Report-EN.pdf
- Merck KGaA Net Sales Life Science 2023–2025, New Structure(投資家向け資料、Excel)。Process Solutions/Advanced Solutions/Discovery Solutionsの売上と成長率。 https://www.merckgroup.com/content/dam/web/corporate/non-images/investors/reports-and-financials/earnings-materials/2025-q4/en/Net%20Sales%20LS_2023-2025_New%20Structure.xlsx
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Agrees to Acquire Bio-Techne, Strengthening Leadership Position in Fast-Growing Life Sciences Markets」(2026年6月25日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/merck-agrees-to-acquire-bio-techne-25-06-2026.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck to Acquire the Chromatography Business of JSR Life Sciences」(2025年10月15日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/acquisition-jsr-chromatography-15-10-2025.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Completes Acquisition of JSR Life Sciences’ Chromatography Business」(2026年4月1日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/jsr-closing-01-04-2026.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Signs Definitive Agreement to Acquire Life Science Company Mirus Bio for US$ 600 million」(2024年5月22日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/definite-agreement-mirus-bio-22-05-2024.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Closes Mirus Bio Acquisition, Bolstering Viral Vector Bioprocessing Offering」(2024年8月1日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/mirus-close-01-08-2024.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Invests More Than € 300 Million in New Life Science Production Site in South Korea」(2024年3月20日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/bioprocessing-production-center-daejong-20-03-2024.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Invests € 23 Million to Expand Cell Culture Media Production in Kansas, USA」(2023年7月12日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/lenexa-expansion-12-07-2023.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Begins Commercial Production of First GMP-Compliant Manufacturing Line for Cell Culture Media in China」(2024年7月16日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/china-ccm-16-07-2024.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Receives Industry First EXCiPACT Certification for Cell Culture Media Manufacturing」(2024年9月5日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/excipact-05-09-2024.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Launches Ultimus Film to Offer Superior Strength and Leak Resistance in Single-use Assemblies」(2023年4月24日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/mk-ultimus-24-04-2023.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Becomes Sole Testing Provider for Genetix Biotherapeutics' Gene Therapies」(2026年5月7日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/genetix-bioreliance-agreement-07-05-2026.html
- Merck KGaA プレスリリース「Merck Partners with Promega to Advance 3-D Cell Drug Discovery Technologies」(2025年10月28日)。 https://www.merckgroup.com/en/news/promegapartnership-28-10-2025.html
- Merck KGaA 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://www.merckgroup.com/en.html
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月24日/Troy Technical
本稿の数値は、Merck KGaAの年次報告書・上期報告書・投資家向け資料と公式プレスリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値、出所の示されていない業界統計は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。