🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

NEDO|全固体電池 機関解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

INSTITUTION PROFILE / 全固体電池

NEDO
― 日本の全固体電池研究に「お金を配る」実行部隊

NEDOは経済産業省が所管する国立研究開発法人で、自分では電池を作りません。 役割は国の研究開発予算を企業や研究機関に配り、進み具合を管理することです。 トヨタ・ホンダ・日産の企業解説に繰り返し名前が出てくるのは、 各社の全固体電池の研究開発の一部がNEDOの事業として進められているからです。 本稿では、NEDOが全固体電池にどこまで影響を持つのかに絞って整理します。

構成:NEDOの機構概要・事業紹介ページ、グリーンイノベーション基金の特設サイト、NEDOのニュースリリース、採択企業がNEDOに提出した事業戦略ビジョンを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるNEDO
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 全固体電池で何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. お金の流れと支援先
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるNEDO

正式名称国立研究開発法人
新エネルギー・産業技術総合開発機構
英文 New Energy and Industrial Technology Development Organization
国日本本部は神奈川県川崎市
機関の種類国立研究開発法人主務大臣は経済産業大臣。政府の省庁ではない
設立2003年10月前身の特殊法人は1980年10月設立
職員数1,640名2026年4月1日現在
予算(基金を除く)5,052億円2026年4月時点
基金事業予算11兆3,668億円8つの基金の合計。2026年4月時点
全固体電池への関与研究開発資金の配分規制や規格を決める権限はない
まず押さえるべき1点

NEDOは何を研究するかを決める側ではなく、決まった計画を実行する側です。 全固体電池を含む「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」について、NEDOのニュースリリースは 「経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画に基づき」公募を行ったと書いています 事実。 つまり方向を決めるのは経済産業省で、NEDOはその計画にそって公募し、採択し、進み具合を管理し、評価する役割です。 それでも影響力が大きいのは、日本の全固体電池の研究費のかなりの部分がNEDOを通って企業に流れるからです。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

全固体電池の記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では電池を作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

全固体電池を動かす「機関」の4つの型 機関は自分では電池を作らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 戦略・補助金・法律 試験方法・安全要求 展示会・業界団体 NEDO/DOE 経済産業省/DOE IEC InterBattery 何を研究させるか 何を国内で作らせるか どう測り、どう比べるか 誰が誰に会うか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の領域 届く範囲=加盟国 届く範囲=参加者 NEDOは左端の「資金を出す」型。何を作るかを決めるのは経済産業省で、NEDOはその計画を実行する 同じ全固体電池でも、どの型の機関かによって影響の届き方がまったく違う
図1 全固体電池に関わる機関の4つの型と、NEDOの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う5機関から例示しています 本稿の計算。米国エネルギー省(DOE)は研究資金と政策の両方を持つため2つの型に入れています。

3. 全固体電池で何をしているか

NEDOの全固体電池への関わり方は、大きく2つの系統に分かれます 事実。

事業期間・予算中身主な担い手
先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)
通称 SOLiD-EV
2018〜2022年度
2022年度予算 21.49億円
全固体リチウムイオン電池のボトルネック課題を解く要素技術と、新材料・量産プロセス・EV搭載への適合性を評価する技術。日本主導の国際規格化を念頭に置いた安全性・耐久性の試験評価法も開発LIBTEC(技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター)を中心に、自動車・電池・材料メーカーと大学・公的研究機関
次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発
通称 SOLiD-Next
2023〜2027年度
2026年度予算 18.5億円
(1) 材料を評価する物差しとなる標準電池モデル、(2) 固体どうしの界面・劣化など全固体電池特有の現象の解明、(3) 電極・セルの要素技術LIBTECが中心
グリーンイノベーション基金
「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」
2022年4月に着手
予算総額 1,510億円(上限)
エネルギー密度が現在の2倍以上(700〜800Wh/L以上)の高容量系蓄電池(例として全固体電池)や、その材料の研究開発。蓄電池リサイクル、モーターも対象18テーマを採択。全固体電池に関わる採択先は第5章
素材技術者の視点:2つの系統の違い

SOLiD-EVとSOLiD-Nextは業界共通の土台をつくる事業です。 特に「標準電池モデル」は、材料メーカーが新しい固体電解質や正極材を作ったときに 同じ条件で性能を比べるための物差しで、個々の企業の製品開発ではありません。 一方、グリーンイノベーション基金は個々の企業の開発に資金を出す事業で、 ホンダや日産はこの枠で自社の全固体電池を開発しています。 材料を供給する立場から見ると、前者は「評価の土俵」、後者は「採用先の開発資金」にあたります。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点NEDOが持っているもの持っていないもの
権限研究開発資金を公募し、採択し、進捗を管理し、評価する権限。採択先の研究計画を確認し、事業戦略ビジョンの提出を求める規制・安全基準・国際規格を決める権限。何を研究するかの大枠を決める権限(経済産業省の計画に基づく)
地域日本の予算による事業。採択先は日本の企業・研究機関が中心海外の企業や他国の政策に直接影響する権限
期間グリーンイノベーション基金は最長10年の継続支援を前提とする仕組み量産や販売を義務づける権限
規模職員1,640名。予算5,052億円+基金11兆3,668億円(全分野の合計)全固体電池だけに使える予算の総額は公表されていない
数字の読み方の注意

11兆円を超える基金はNEDOの全分野の合計で、半導体やポスト5Gの基金が大半を占めます (ポスト5G 3兆5,887億円、グリーンイノベーション 2兆7,564億円、特定半導体 2兆1,706億円など) 事実。 全固体電池に関係するのは、そのうちグリーンイノベーション基金の1プロジェクト(上限1,510億円)と、 SOLiD-Nextのような個別事業です。しかも1,510億円には蓄電池リサイクルとモーターも含まれるので、 全固体電池だけに使われる金額はこれより小さく、総額は公表されていません 未確定/将来。

5. お金の流れと支援先

全固体電池の研究資金はどう流れるか(日本) 経済産業省が計画と基金をつくり、NEDOが公募・採択・進捗管理を担う 経済産業省 研究開発計画を策定・基金を造成 NEDO 公募・採択・進捗管理・評価 グリーンイノベーション基金 次世代蓄電池・次世代モーター 総額1,510億円 SOLiD-Next(LIBTECが中心) 2023〜2027年度・2026年度予算18.5億円 全固体電池に関わる採択先(抜粋) ホンダ・本田技術研究所/日産自動車 GSユアサ/パナソニック エナジー 出光興産/住友金属鉱山/アルバック/大阪ソーダ やっていること 材料を評価する物差し(標準電池モデル) 固体どうしの界面・劣化の仕組みの解明 電極・セルの要素技術
図2 全固体電池の研究資金の流れ。出典:NEDOのニュースリリース(2022年4月19日)、グリーンイノベーション基金の特設サイト、SOLiD-Nextの事業紹介ページ。採択先はグリーンイノベーション基金の「高性能蓄電池・材料の研究開発」のうち、テーマ名から全固体電池との関係が読み取れるものを本稿が抜粋しました 本稿の計算。

全固体電池に関わるグリーンイノベーション基金の採択テーマ

採択先テーマ名(NEDOの表記)このシリーズとの関係
本田技研工業・本田技術研究所次世代全固体電池の開発ホンダの企業解説。ホンダはこの助成を約200億円(2022〜2026年度)と自社資料で公表
日産自動車ASSBパイロットラインによる高性能・低LCAバッテリ生産のプロセス確立日産の企業解説。日産の事業戦略ビジョンでは総事業費約153億円、うち国費約114億円
GSユアサ先進固体電池開発本シリーズでは扱っていない
パナソニック エナジー次世代蓄電池の開発パナソニックの企業解説。テーマ名に「全固体」は入っていない
出光興産硫化物系固体電解質の量産技術開発トヨタの固体電解質の提携先(トヨタの企業解説)
住友金属鉱山次世代蓄電池用高性能正極材料の開発と実証トヨタの正極材の提携先(トヨタの企業解説)
アルバック次世代蓄電池向けリチウム金属負極生産技術開発本シリーズでは扱っていない
大阪ソーダ全固体電池用超高イオン伝導性ポリマーの開発本シリーズでは扱っていない

※NEDOのプロジェクトページには採択先ごとの配分額が載っていません。ホンダと日産の金額は、各社が公表・提出した資料に基づきます。トヨタ自動車は、このプロジェクトの採択先一覧に名前がありません(提携先の出光興産と住友金属鉱山は採択されています)事実。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
NEDOの影響力は2027〜2028年ごろの量産判断の前後で一区切りを迎えるSOLiD-Nextは2027年度まで。ホンダのNEDO助成は2022〜2026年度で、日産の事業戦略ビジョンは搭載をFY28としている推測
量産段階の支援は、研究開発型のNEDO事業から経済産業省の設備投資支援へ移っていくNEDOの事業は研究開発・実証が対象で、量産を義務づける権限はない。量産設備の支援は経済産業省の所管事項推測
標準電池モデルが業界で使われれば、材料メーカーの評価の土俵として長く残るSOLiD-Nextは「物差し」をつくることを目的に掲げ、前身のSOLiD-EVは国際規格化を念頭に置いた試験評価法を開発していた推測

7. 用語集

国立研究開発法人
国の研究開発を担う法人。省庁そのものではなく、主務大臣の監督のもとで業務を行う。
グリーンイノベーション基金
経済産業省がNEDOに造成した総額2兆円(当初)の基金。企業の研究開発から社会実装までを最長10年支援する。
LIBTEC
技術研究組合リチウムイオン電池材料評価研究センター。電池・材料メーカーなどが参加し、材料評価技術を共同で開発する組織。
標準電池モデル
新しい材料の性能を同じ条件で比べるための基準となる電池の仕様。
事業戦略ビジョン
グリーンイノベーション基金の採択企業が、経営者のコミットメントとして事業戦略や研究開発計画を示す資料。NEDOのサイトで公開される。
公的研究資金が研究機関と企業の全固体電池開発に流れる様子の概念図AI生成の概念図
図3 NEDOが公的資金を研究・材料評価・パイロット製造へつなぐ実行機関であることを示す概念図(AI生成による概念図。実際の施設、装置、製品を写したものではありません)。

8. 出典

  1. NEDO 機構概要(名称・本部所在地・設立・沿革・主務大臣・根拠法・職員数・予算・基金事業予算の内訳。2026年4月15日更新)。 https://www.nedo.go.jp/introducing/kihon.html
  2. NEDO 事業紹介「次世代全固体蓄電池材料の評価・基盤技術開発」(事業期間・2026年度予算・研究開発内容・プロジェクトコードP23005)。 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100257.html
  3. NEDO 事業紹介「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」(事業期間・2022年度予算・PL・国際規格化を念頭に置いた試験評価法)。 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100146.html
  4. NEDO ニュースリリース「グリーンイノベーション基金事業、『次世代蓄電池・次世代モーターの開発』に着手」(2022年4月19日)。予算総額1,510億円、18テーマ採択、経済産業省の研究開発・社会実装計画に基づく公募、経済産業省による総額2兆円の基金造成と10年間の継続支援。 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101535.html
  5. NEDO グリーンイノベーション基金 特設サイト「次世代蓄電池・次世代モーターの開発」(予算上限、プロジェクトの特徴、研究開発項目ごとの実施者一覧)。 https://green-innovation.nedo.go.jp/project/next-generation-storage-batteries-motors/scheme/
  6. 本田技研工業 IR資料「Honda 全固体電池 パイロットライン説明見学会」(NEDO助成金 約200億円、2022〜2026年度)。 https://global.honda/jp/investors/library/road_show/main/00/teaserItems3/01/linkList/03/link/FYE202503_Honda_Demonstration_Production_Line_for_All-Solid-State_Batteries_j.pdf
  7. 日産自動車(NEDO公開) グリーンイノベーション基金 事業戦略ビジョン(2026年5月時点)。総事業費約153億円、うち国費約114億円、FY28の市場投入。 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-storage-batteries-motors/item-001-1/vision-nissan-004.pdf

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本部所在地、設立、主務大臣、職員数1,640名、予算5,052億円、基金事業予算11兆3,668億円とその内訳事実出典1 https://www.nedo.go.jp/introducing/kihon.html
SOLiD-Nextの事業期間・2026年度予算18.5億円・研究開発内容事実出典2 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100257.html
SOLiD-EVの事業期間・2022年度予算21.49億円・国際規格化を念頭に置いた試験評価法の開発事実出典3 https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100146.html
グリーンイノベーション基金の蓄電池プロジェクトの予算総額1,510億円・18テーマ採択・経済産業省の計画に基づく公募・最長10年の支援事実出典4 https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101535.html
エネルギー密度2倍以上(700〜800Wh/L以上)の目標、採択先とテーマ名、トヨタが採択先一覧にないこと事実出典5 https://green-innovation.nedo.go.jp/project/next-generation-storage-batteries-motors/scheme/
ホンダの助成 約200億円(2022〜2026年度)事実出典6 https://global.honda/jp/investors/library/road_show/main/00/teaserItems3/01/linkList/03/link/FYE202503_Honda_Demonstration_Production_Line_for_All-Solid-State_Batteries_j.pdf
日産の総事業費 約153億円・国費 約114億円・FY28の市場投入事実出典7 https://green-innovation.nedo.go.jp/resources/pdf/next-generation-storage-batteries-motors/item-001-1/vision-nissan-004.pdf
機関の4つの型の区分本稿の計算本稿による整理
全固体電池に関わる採択テーマの抜粋本稿の計算出典5のテーマ名から本稿が選んだもの
全固体電池だけに使われる予算の総額未確定/将来出典1〜5に記載なし。本稿では推計しない
採択先ごとの配分額(ホンダ・日産以外)未確定/将来出典5に記載なし。本稿では推計しない
第6章の見通し3項目推測出典2・3・6・7の期間と目的からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月23日/Troy Technical
本稿の数値はNEDOの公式サイトとニュースリリース、および採択企業が公表・提出した資料に基づきます。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。