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ハンミ半導体|半導体後工程 企業解説

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COMPANY PROFILE / 半導体後工程

ハンミ半導体
― 737人の会社が、HBMを積む装置を握っている

Hanmi Semiconductor(한미반도체)は韓国・仁川にある後工程装置メーカーです。 1980年の設立以来、半導体を切る・並べる・検査する装置を作ってきましたが、 いま同社の名前が出るのはほぼ一つの製品のためです。 HBM(広帯域メモリ)をDRAMを積み重ねて作るときの「TCボンダー」。 従業員737人、売上5,767億ウォンという規模の会社が、 AI半導体の供給の一角を握るに至った経緯を、法定開示書類だけで追います。

構成:한미반도체(Hanmi Semiconductor)が韓国の電子公示システムDARTに提出した2025年度事業報告書、2026年上半期の半期報告書、および個別の公示資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるHanmi Semiconductor(基本データ)
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 何をしている会社か ― 装置の垂直統合
  4. 企業規模 ― 過去5年の売上高
  5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置
  6. 拠点と工場のある国
  7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア
  8. 直近の投資計画
  9. 提携している大手企業と顧客
  10. 今後のこの分野における存在感
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるハンミ半導体

正式名称한미반도체 주식회사英文名 HANMI Semiconductor Co., Ltd./日本語では「ハンミ半導体」
本社の所在国韓国仁川広域市 西区 佳佐路30番ギル14(佳佐洞)。本社と工場が同じ敷地にある
設立1980年12月24日半導体自動化装置の製造・販売を目的として設立
上場韓国取引所 有価証券市場
042700
2005年7月22日上場。KOSDAQではなく本則市場
2025年 連結売上高5,767億ウォン前年比 +3.2%。営業利益2,514億ウォン(利益率43.6%)
従業員数737人2025年12月31日時点(登記役員を除く)。うち約30%が研究開発人員
企業カテゴリーメーカー
(半導体後工程装置)
半導体は作らず、半導体を組み立てる装置を作る
直近の投資計画第7工場 578億ウォン
第8工場 560億ウォン
第7工場は2026年11月まで、第8工場は2027年2月取得予定
まず押さえるべき1点

この会社の異様さは規模と影響力の比にあります。 従業員は737人しかいませんが、2025年の売上は5,767億ウォン、 1人あたり約7.8億ウォンを売っている計算になります 本稿の計算。 営業利益率は43.6%で、装置メーカーとしてもかなり高い水準です。 これはごく限られた種類の装置を、ごく限られた顧客に、高い単価で売っていることの裏返しです。 実際、2026年6月にはSK hynix1社から 442億ウォン(2025年売上の7.66%相当)の装置を1件の契約で受注したと公示しています 事実。 数件の受注で年間売上の数%が動く、という構造の会社です。

2. ロゴと社名の表記について

Hanmi Semiconductorのロゴは同社の商標です。

表記の注意:韓国語の正式名称は 한미반도체 주식회사、 英文は HANMI Semiconductor Co., Ltd. です。 日本語では「ハンミ半導体」「韓美半導体」の両方が使われますが、 同社自身は英文表記で HANMI(全て大文字)を用いています。 製薬の「韓美薬品(Hanmi Pharmaceutical)」とは無関係の別会社で、 韓国語の表記が同じ「한미」であるため混同されやすい点に注意してください。 なお持株会社の「곽신홀딩스(クァクシン・ホールディングス)」は最大株主の関連会社です。

公式サイト:https://www.hanmisemi.com

3. 何をしている会社か ― 装置の垂直統合

Hanmi Semiconductorは半導体製造用の装置を作って売る会社です。 半導体そのものは作りません。顧客は、メモリメーカーとOSAT(後工程の受託企業)です。

同社の説明で特徴的なのは、鋳物(주물)から設計・製作・組立・検査・テストまでを自社で行う 垂直統合製造(Vertical Integration Manufacture)の体制を構築している、という記述です 事実。 装置メーカーは一般に構造部材を外注しますが、同社は装置の土台となる鋳造部品から内製していると述べています。

主力装置何をする装置か会社の位置づけ
HBM TCボンダーメモリチップに精密な熱と圧力を加え、12段・16段といった高積層のHBMを作る現在の主力。AIサーバ・データセンター投資の拡大で需要が急増したと説明
6-SIDE INSPECTIONTCボンディングの前後で、個々のダイの6面と積層後のHBMの外観・接合状態を検査する歩留まり管理に必須の検査装置と位置づけ
BOC COB ボンダーBOC(Board On Chip)とCOB(Chip On Board)の2つの工程を1台で処理する会社は「世界初のツーインワン装置」と表現。GDDRや企業向けSSD向けに展開
micro SAW & VISION
PLACEMENT(MSVP)
パッケージの切断→洗浄→乾燥→2D/3D画像検査→選別→積載までを一括処理する会社は「2000年代半ば以降、世界シェア1位を維持」と記載
EMI SHIELD半導体から出る電磁波が他のチップを誤動作させないよう遮蔽する工程の装置2016年に初号機を発売。会社は「シェア1位を維持」と記載
素材技術者の視点:TCボンダーは「材料の条件を決める側」にいる

TCボンディングは、チップを積みながらヘッドで加圧し、同時に加熱して接合する工程です。 ここで装置が決めるのは、荷重の立ち上がり方、加熱と冷却の時間プロファイル、ヘッドの平行度。 材料側はこの3つに合わせ込む立場になります。

具体的に効いてくるのは、チップの間に挟むNCF(ノンコンダクティブフィルム)や アンダーフィル材の溶融粘度と硬化開始温度、はんだバンプの融点と濡れ性、 そして積層が進むほど効いてくる基板とチップの反りです。 HBMは段数が増えるほど1回の熱履歴が下層に何度も重ねてかかるので、 下の層の材料は上の層を積むあいだ、何度も再加熱されることになります。 装置が「何段まで」「どの温度で」積めるかを決めると、 そこから材料の耐熱回数の要求仕様が逆算されます。

同社は事業報告書で、 「ハイブリッドボンダーが技術的な難題で開発が遅れているため、 20段以上のHBM積層ではより広いHBMチップを積める新装置の必要性が浮上している」と述べ、 Wide Die ボンディングが可能な『WIDE TC ボンダー』の発売を控えているとしています 事実。 これは材料側から見れば、接合面積が広がる=反りと応力の条件が一段厳しくなるという予告です。

4. 企業規模 ― 過去5年の売上高

Hanmi Semiconductor(한미반도체)年間売上高の推移(億ウォン) 連結売上高。1億ウォン=100,000,000ウォン。2023年はメモリ市況の底、2024年からHBM向けで急拡大 6,000 4,500 3,000 1,500 0 3,732 3,276 1,590 5,589 5,767 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年上半期は3,021億ウォン。第1四半期が509億、第2四半期が2,512億と偏りが大きい
図1 Hanmi Semiconductorの年間連結売上高(2021〜2025年)。出典:2023年度および2025年度の事業報告書の要約財務情報。2023年に3分の1以下まで落ち、翌2024年に3.5倍に戻るという、装置メーカーらしい極端な振れ方をしています。
年売上高(百万ウォン)営業利益(百万ウォン)当期純利益(百万ウォン)営業利益率
2021年373,169122,419104,43832.8% 本稿の計算
2022年327,592111,85992,25934.1% 本稿の計算
2023年159,00934,571267,16821.7% 本稿の計算
2024年558,917255,392152,61445.7% 本稿の計算
2025年576,685251,390214,00843.6%

※すべて連結ベース。2023年の当期純利益が売上を上回っているのは、営業外の損益(関係会社株式などの評価・処分)が大きく効いたためで、本業の利益ではありません。2025年の営業利益率43.6%は会社自身が事業報告書に記載した数値です。2025年のROEは31.0%と会社が記載しています。

営業利益と営業利益率の推移(億ウォン) 2024年・2025年は営業利益率が40%台。2023年の落ち込みからの回復幅が大きい 2,700 1,800 900 0 1,224 1,119 346 2,554 2,514 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年 営業利益率 32.8% 34.1% 21.7% 45.7% 43.6% 出典:各年度の事業報告書。2025年の営業利益率43.6%は会社自身が記載した数値
図2 営業利益と営業利益率の推移。2021〜2024年の利益率は会社が開示した売上高と営業利益から算出したもの 本稿の計算。売上が3分の1になった2023年でも営業赤字にはなっていません。

従業員737人という規模

区分正社員有期合計平均勤続年数
男性679106899年12か月
女性3513485年10か月
合計714237379年9か月

※2025年12月31日時点、登記役員を除く。このほか所属外労働者が18人。年間給与総額は510億87百万ウォン、1人平均給与額は6,481万ウォンと会社が記載しています。会社は「総職員の約30%が研究開発人員」としています。

項目(百万ウォン)2023年2024年2025年
研究開発費(合計)18,05222,13523,938
うち人件費11,55413,42514,642
売上高に対する比率11.5%4.0%4.3%

※比率は会社が個別財務諸表の売上高を基準に算出した数値です。2023年の比率が高いのは、研究開発費が増えたのではなく売上が落ちたためです。

5. 企業カテゴリーと、後工程業界での立ち位置

カテゴリーはメーカー(半導体後工程装置)です。 大学でも政府機関でもOSATでもありません。韓国の区分では「中堅企業」に該当し、 中小企業でもベンチャー企業でもないと会社が記載しています 事実。

後工程の産業構造での位置は装置を納める側です。ASMPTやBesiと同じ層にいて、 メモリメーカーとOSATが顧客になります。 ただし製品の幅は狭く、ボンディングと切断・検査という特定の工程に集中しています。

売上の中身 ― 製品別の内訳と、輸出・内需の入れ替わり 装置本体が8割強、残りがコンバージョンキット(既存装置の仕様変更部品)など 2025年の製品別売上(合計 5,767億ウォン) 半導体製造装置 84.62% Conversion Kit 等 15.38% 輸出と内需の内訳(億ウォン) 輸出 内需 2023年 1,167 423 2024年 2,306 3,283 2025年 4,653 1,114 2024年は内需が上回り、2025年は輸出が上回った。装置の納入先が年によって入れ替わる
図3 2025年の製品別売上構成と、2023〜2025年の輸出・内需の推移。出典:2025年度事業報告書。輸出と内需の比率が年ごとに大きく入れ替わるのは、装置の納入先が特定の顧客の投資サイクルに依存するためです。

6. 拠点と工場のある国

生産と研究開発は韓国・仁川の1か所に集中しています 事実。 海外にあるのは販売・サービスの現地法人だけです。

拠点所在地役割設立
本社・工場・付設研究所仁川広域市 西区 佳佐路30番ギル14(佳佐洞)本社機能、装置の製造、研究開発のすべて。2021年に「micro SAW専用工場」、2023年に「ボンダーファクトリー」を開設1980年
HANMI Taiwan Co., Ltd.台湾 桃園市 蘆竹区装置と部品・資材の開発および販売。持株比率100%2015年10月19日
HANMI Vietnam Co., Ltd.ベトナム バクニン省 バクニン市同上。持株比率100%2023年4月24日
HANMI SINGAPORE Pte. Ltd.シンガポール Woodlands Industrial Park同上。「AI半導体産業の成長にともなうグローバル顧客への現地対応」のため設立2025年10月23日

※このほか、世界16社の協力会社(現地エージェント)を通じて販売とサービスを行っていると会社が記載しています。関係会社には非上場の곽신홀딩스(クァクシン・ホールディングス)があり、会社は2025年1月にその持分9%を代表理事に譲渡し、持分を40%に引き下げています。

素材技術者の視点:工場が1か所しかないことの意味

売上5,767億ウォンの装置メーカーが、製造拠点を仁川の1か所だけに置いているのは、 供給網の観点では明確な集中リスクです。 しかし同時に、それが「装置1台ごとの作り込み」を可能にしている面もあります。 鋳物から自社で作り、同じ敷地で組み立てて検査して出荷する。 顧客立ち会いの受入検査(Buy-Off)を経てから出荷するという商流も、 拠点が分かれていない前提で成り立っています 事実。

装置に組み込まれる部材(ボンディングツール、ヒータ、セラミック部品、 精密ステージ用の材料)を納める立場からは、 窓口も認定試験も仁川に一本化されていることになります。 分散していない分、認定は取りやすい一方で、この1拠点が止まると代替がありません。 会社が2026年11月完成予定の第7工場、2027年2月取得予定の第8工場と、 立て続けに仁川で用地・建屋を確保しているのは、 この一点集中をさらに厚くする方向の投資です。

7. 半導体後工程における主力製品とそのシェア

TCボンダーという製品

TCボンダー(Thermal Compression Bonder)は、HBMを作る工程で使われます。 DRAMのダイを何段も重ねるとき、上から加圧しながら加熱して一気に接合する装置です。 同社は、AIサーバとデータセンターへの投資拡大でHBM需要が急増し、 積層段数が高くなるほどTCボンダーの重要性が増すと説明しています 事実。

製品ラインは世代で分かれており、2026年時点で公表されているものだけでも TCボンダー4、WIDE TCボンダー、ハイブリッドボンダーの開発を並行して進めているとしています。 2026年6月にSK hynixから受注した装置の名称は 「HBM4製造用 TC BONDER 4.5 GRIFFIN」です 事実。

シェアについて ― 切り分けて書きます

会社が引用しているシェア数値の扱い

Hanmi Semiconductorは2025年度の事業報告書で、 「市場調査機関テックインサイツが発表したグローバルTCボンダー市場で71.2%のシェアで1位を記録した」と記載しています。 また micro SAW & VISION PLACEMENT と EMI SHIELD についても「世界シェア1位を維持」と記載しています。

ただしこれらは同社が引用した第三者の調査会社による推計であり、同社が算出した実績値ではありません。 本稿は調査会社の推計値を採用しない方針のため、 「会社がそう記載している」という事実としてのみ紹介し、シェアの数値そのものは確定した事実として扱いません 未確定/将来。 同社の法定開示書類には、自社で算出したシェアの数値は見当たりませんでした。

シェアの代わりに、一次情報として確実に言えるのは次の3点です。

  1. 2025年の売上5,767億ウォンのうち84.62%が装置本体、15.38%がコンバージョンキット等 事実
  2. 2026年6月8日、SK hynixからHBM4製造用TCボンダーを442億ウォンで受注(2025年売上の7.66%相当、納期2026年9月2日) 事実
  3. 2025年11月に「HBM TC BONDER」が韓国の世界一流商品に選定された 事実
受注残は公表されていません

会社は受注状況について、 「当社が営む半導体装置産業は、当社と顧客の相互協議を経てP/O(発注書)によって注文と生産を進めるもので、 契約内容は顧客の投資情報が露出しうるため、公示した内容以外は記載しない」と明記しています 事実。 したがって受注残高は分かりません 未確定/将来。 半期報告書の受注表に載るのは、単一販売・供給契約として個別に公示した案件だけです。

8. 直近の投資計画

第7工場578億2,400万ウォンハイブリッドボンダー専用工場の建築。2026年11月30日までの投資期間
第8工場560億ウォン2026年8月18日の取締役会で決議。2027年2月17日に取得予定
工場用地の取得293億4,400万ウォン2024年7月に契約、2025年2月に残金支払い
2025年度の配当1株800ウォン2024年度は720ウォン、2023年度は420ウォン

投資はすべて仁川での工場増設に向いています。 2つの工場計画の中身は、会社の公示によれば次のとおりです 事実。

項目第7工場第8工場
金額578億2,400万ウォン560億ウォン(諸税・付帯費用を除く契約金額)
目的次世代プレミアムHBM生産に対応するための最新式ハイブリッドボンダー専用工場の建築グローバル半導体企業の設備投資拡大にともなう装置供給不足への先行対応のための新工場確保
時期2026年11月30日まで(今後の企業状況により調整の可能性)2027年2月17日に残金支払い予定
規模公表されていない土地20,582.1㎡、建物25,694.3㎡。会社は「創業以来最大規模の工場用地取得」と記載
相手方公表されていない(株)マーキュリー
この2つの工場計画の読み方

注目すべきは、第7工場がハイブリッドボンダー専用として計画されている点です 事実。 同社は事業報告書の本文で「ハイブリッドボンダーは技術的な難題で開発が遅れている」と述べており、 まだ主力になっていない装置のために専用工場を建てていることになります。 これは「TCボンダーで稼いでいるうちに次の方式の受け皿を用意する」という、 かなり先行した投資の姿です。

一方、2026年8月に決議した第8工場の取得目的は 「装置供給不足(ショーテージ)への先行対応」と明記されています。 いま作れる量が足りていないという会社の認識が、公示文書に残っている形です。 ただしどちらの工場も、稼働後の生産能力は公表されていません 未確定/将来。

9. 提携している大手企業と顧客

この会社は珍しく、顧客名を実名で列挙しています。 2025年度の事業報告書と2026年上半期の半期報告書に、同じリストが載っています 事実。

区分会社が挙げている企業名
海外の顧客SK hynix、Micron Technology、ASE、Amkor、JCET、Huatian Technology、TFME、Infineon、STMicroelectronics、PTI(力成科技)、Skyworks、Luxshare
韓国国内の顧客JCETステーツチップパックコリア、ASEコリア、Amkorコリア、サムスン電機、LGイノテック、コリアサーキット、SFA半導体、シグネティクス
SK hynixとの関係について、公表資料で確認できたこと

読者が最も知りたいであろうSK hynixとの関係について、 同社の公表資料で確認できたのは次の2点だけです。

① 事業報告書と半期報告書の「主要販売先」欄に、SK하이닉스(SK hynix)が顧客として実名で記載されている 事実。

② 2026年6月8日付の「単一販売・供給契約締結」の公示で、 契約相手がSK하이닉스(SK Hynix Inc.)、契約名が「HBM4製造用 TC BONDER 4.5 GRIFFIN 装置の受注」、 契約金額が442億ウォン(VAT別)、2025年連結売上高に対して7.66%、契約期間が2026年6月8日〜2026年9月2日と明記されている 事実。

逆に言えば、それ以外は確認できません。 SK hynix向けの売上が年間でいくらか、供給比率が何%か、独占供給なのか複数購買なのか、 長期契約があるのかといった点は、同社の公表資料には一切記載がありません 未確定/将来。 報道で語られる「HBM用TCボンダーの独占供給」「取引解消」といった話は、 本稿では一次情報として扱いません。

種類相手内容
最大株主郭東信(곽동신)代表理事会長31,937,861株、持分33.51%(2025年12月31日時点)。特殊関係人を含めると55.70%
関係会社곽신홀딩스(クァクシン・ホールディングス)非上場。2025年1月に同社保有分9%を代表理事へ譲渡し、会社の持分は40%に低下
連結子会社HANMI Taiwan/HANMI Vietnam/HANMI SINGAPOREいずれも持分100%。装置・部品・資材の開発および販売
主要な機関投資家ミレアセット資産運用2026年2月・4月・7月に大量保有状況報告書(略式)を提出

10. 今後のこの分野における存在感

ここは予測になるので、判断の根拠となる事実と、そこから導かれる見通しを分けて書きます。

事実として確定していること

事実後工程への含意
2025年の売上5,767億ウォン、営業利益率43.6%で創業以来最高の実績TCボンダーが収益の柱として確立した
2026年第2四半期の売上が2,512億ウォン、前年同期比+39.5%四半期ベースでは増勢が続いている
2026年上半期累計は3,021億ウォンで前年同期比−7.7%第1四半期(509億ウォン)が落ち込み、通期では見通しが読みにくい
2026年6月にSK hynixからHBM4製造用TCボンダーを442億ウォンで受注HBM4世代でも装置の採用が続いている
ハイブリッドボンダー専用の第7工場を2026年11月までに建築次世代方式への備えを進めている
2026年8月に創業以来最大規模の工場用地(第8工場)取得を決議会社は供給不足を前提に置いている
従業員737人、製造拠点は仁川の1か所能力の伸びは建屋と人の確保に律速される

見通し

未確定/将来 後工程に限れば、Hanmi Semiconductorの位置は「HBMの積層段数が増え続けるかどうか」にほぼ全面的に依存します。 段数が増えるほど1台あたりの処理時間が延び、必要な装置台数が増えるためです。 会社自身が「20段以上のHBM積層では、より広いHBMチップを積める新装置の必要性が浮上している」と述べ、 WIDE TCボンダーの発売を予告しているのは、この方向を見ているからです。

未確定/将来 ただし、この構図が崩れる方向も同じ資料から読めます。 ひとつはハイブリッドボンディングへの移行です。 はんだを使わず銅面を直接接合する方式が量産に乗れば、TCボンダーの役割は縮みます。 会社はその可能性を見越してハイブリッドボンダーを開発中で、専用工場まで建てていますが、 量産採用が決まったという公表はありません。 もうひとつは顧客の設備投資サイクルです。 2026年第1四半期の売上が509億ウォンまで落ち、第2四半期に2,512億ウォンへ跳ねた振れ幅は、 この会社の売上が数件の納入時期で決まることを端的に示しています。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容裏づけとなる数字
売上の振れ幅2022年から2023年に売上が51.5%減り、2024年に3.5倍に戻った。四半期でも2026年第1四半期509億→第2四半期2,512億と大きく振れる327,592→159,009→558,917百万ウォン 本稿の計算
製品の集中売上の84.62%が装置本体で、その中心はHBM向けのボンダー。製品の幅が狭い2025年の製品別売上構成 事実
拠点の集中製造拠点が仁川の1か所のみ。海外法人は販売・サービス機能に限られる事業報告書の事業所・子会社一覧
技術の置き換え会社自身が「ハイブリッドボンダーの開発が遅れている」と述べる一方、その専用工場を建設中。方式が切り替われば既存装置の需要は減る第7工場への578億ウォン投資 事実
為替会社が市場リスクとして挙げているのは為替のみ。売上の80.7%が輸出で、米ドル・日本円建ての取引が中心2025年の輸出4,653億/総額5,767億 本稿の計算
売掛金の膨張2026年6月末の売掛金が2,583億ウォンで、2025年末(624億ウォン)の4.1倍。出荷が期末に寄っている半期報告書の要約財務情報 本稿の計算
支配構造最大株主と特殊関係人で発行済株式の55.70%を保有。少数株主の影響力は限定的2025年12月31日時点の株式所有状況
受注残が見えない会社は顧客の投資情報が露出するとして、個別公示した案件以外の受注状況を開示していない事業報告書の記述 未確定/将来
素材技術者の視点:売掛金の膨らみは「これから動く材料の量」を映す

この会社の財務で最も目を引くのは売掛金の動きです。 2025年末に624億ウォンだった売掛金が、2026年6月末には2,583億ウォンへ4.1倍に膨らんでいます 本稿の計算。 同時に現金は2,762億ウォンから886億ウォンへ減っています。

装置メーカーの代金回収条件は、同社の説明によれば 「発注書受領後30日に30%、納品30日前に60%、検収後30日に10%」です 事実。 つまり売掛金の山は、すでに出荷済みか出荷直前の装置を意味します。 装置が据え付けられれば、その先に消耗部材と接合材料の消費が始まる。 材料を出す立場からは、装置メーカーの売掛金は数か月先の自社の需要の先行指標として読めます。 この規模の膨らみは、2026年後半から2027年にかけてHBM向けの材料が動くことを示唆しています。

12. 用語集

TCボンダー
Thermal Compression Bonder。チップを加圧しながら加熱して接合する装置。HBMの積層に使われる。
HBM
High Bandwidth Memory。DRAMを縦に積んで帯域を稼いだメモリ。AIアクセラレータの隣に置かれる。
ハイブリッドボンディング
はんだを使わず、銅電極と絶縁膜の面を直接接合する方式。接合ピッチをさらに細かくできる次世代方式。
BOC/COB
Board On Chip と Chip On Board。基板とチップの上下関係が逆の2つの実装方式。
EMIシールド
半導体パッケージを金属膜などで覆い、電磁波が周囲のチップを誤動作させないようにする工程。
コンバージョンキット
既に納入した装置の仕様を別の製品向けに変えるための部品一式。装置メーカーの安定収益源になる。
Buy-Off
出荷前に顧客が立ち会って装置の性能を確認する検査。合格後に出荷し、代金の一部が支払われる。
DART
韓国金融監督院の電子公示システム。韓国の上場企業が事業報告書などの法定開示を行う公式サイト。
概念図:加圧ヘッドが積み重なったメモリチップを上から押さえて接合している様子(AI生成による概念図)AI生成・概念図
図4 TCボンディングによるメモリ積層の概念図(AI生成による概念図。実際のHanmi Semiconductorの装置や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 2025年度 事業報告書(DART提出、2026年3月12日)。正式名称・設立日・本社所在地・上場日、主要製品の説明、製品別売上構成、輸出/内需の売上実績、主要販売先の一覧、研究開発費、従業員数と勤続年数・給与、第7工場の施設投資、最大株主と特殊関係人の持株、配当、子会社と関係会社、要約財務情報(2023〜2025年)、経営陣の分析意見。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
  2. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 2026年上半期 半期報告書(DART提出、2026年8月14日)。2026年上半期の売上・営業利益・純利益、売掛金と現金の残高、輸出/内需の内訳、主要販売先、受注表(TC BONDER 4.5 GRIFFIN)、第7工場の施設投資の進捗。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003665
  3. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 2023年度 事業報告書(DART提出、2024年3月14日)。2021年・2022年・2023年の売上高・営業利益・当期純利益(要約財務情報)。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20240314001257
  4. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 公示「単一販売・供給契約締結」(2026年6月8日)。契約相手SK하이닉스(SK Hynix Inc.)、HBM4製造用「TC BONDER 4.5 GRIFFIN」装置の受注、契約金額442億ウォン(VAT別)、2025年連結売上高比7.66%、契約期間2026年6月8日〜2026年9月2日。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260608800436
  5. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 公示「有形資産取得決定」(2026年8月18日)。第8工場としての仁川市西区佳佐洞の土地・建物の取得、取得価額560億ウォン、土地20,582.1㎡・建物25,694.3㎡、取得予定日2027年2月17日、取引相手(株)マーキュリー、取得目的(装置供給不足への先行対応)。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260818800167
  6. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 公示「連結財務諸表基準営業(暫定)実績(公正公示)」(2026年7月14日)。2026年第2四半期の売上2,512億ウォン(前年同期比+39.5%)、営業利益1,303億ウォン(同+51.0%)、上半期累計の売上3,021億ウォン(同−7.7%)。 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260714800204
  7. 한미반도체(Hanmi Semiconductor) 公式サイト(会社概要・ブランド表記の確認用)。 https://www.hanmisemi.com

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、設立日(1980年12月24日)、本社所在地、上場市場と上場日(2005年7月22日)、銘柄コード042700事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
2023年・2024年・2025年の売上高・営業利益・当期純利益事実出典1の要約財務情報 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
2021年・2022年の売上高・営業利益・当期純利益事実出典3の要約財務情報 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20240314001257
2021〜2024年の営業利益率、2025年の前年比+3.2%、2022→2023年の減収率51.5%本稿の計算出典1・3の開示値から算出 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20240314001257
2025年の営業利益率43.6%、ROE 31.0%、創業以来最高の実績という表現事実出典1の経営陣の分析意見 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
従業員737人、勤続年数、給与総額、研究開発人員が約30%であること事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
1人あたり売上 約7.8億ウォン本稿の計算出典1の売上高を従業員数で割った値 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
2023〜2025年の研究開発費と売上高比率事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
2025年の製品別売上構成(装置84.62%、コンバージョンキット等15.38%)事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
2023〜2025年の輸出・内需の売上内訳、2025年の輸出比率80.7%本稿の計算出典1の売上実績表の金額から算出 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
主力装置(TCボンダー、6-SIDE INSPECTION、BOC COBボンダー、MSVP、EMI SHIELD)の説明とWIDE TCボンダーの予告事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
垂直統合製造体制、協力会社16社、Buy-Offと代金回収条件事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
顧客名の一覧(SK hynix、Micron、ASE、Amkor、PTIほか)事実出典1・2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003665
SK hynixからのTC BONDER 4.5 GRIFFIN受注(442億ウォン、売上比7.66%、納期2026年9月2日)事実出典4 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260608800436
子会社3社(台湾・ベトナム・シンガポール)の設立日と所在地、곽신홀딩스の持分変更事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
第7工場(578億2,400万ウォン、ハイブリッドボンダー専用、2026年11月30日まで)事実出典1・2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003665
第8工場(560億ウォン、土地20,582.1㎡・建物25,694.3㎡、2027年2月17日取得予定、(株)マーキュリー)事実出典5 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260818800167
2026年第2四半期の売上2,512億ウォン(+39.5%)、上半期累計3,021億ウォン(−7.7%)事実出典6・2 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260714800204
2026年6月末の売掛金2,583億ウォンが2025年末の4.1倍であること本稿の計算出典2の要約財務情報から算出 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260814003665
最大株主の持分33.51%、特殊関係人を含めて55.70%、配当(2025年度800ウォン)事実出典1 https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
会社が引用するTCボンダー市場シェア71.2%、MSVPとEMI SHIELDの「世界1位」未確定/将来出典1に記載はあるが、いずれも第三者調査会社の推計。本稿では数値を事実として扱わない https://dart.fss.or.kr/dsaf001/main.do?rcpNo=20260312001230
SK hynix向けの年間売上額・供給比率・独占供給の有無・長期契約の有無未確定/将来公表資料に記載なし。本稿では報道を根拠にしない
受注残高未確定/将来会社は顧客の投資情報が露出するとして非開示。個別公示した案件のみ判明しており、本稿では総額を示さない
第7工場・第8工場の稼働後の生産能力未確定/将来公表資料に記載なし。本稿では推定しない
ハイブリッドボンダーの量産採用の可否と時期未確定/将来開発中であることのみ公表。採用の公表はなく、本稿でも時期を推定しない
今後の存在感に関する見通し(第10節「見通し」)未確定/将来本稿による解釈。事実欄の7項目から導出

最終更新:2026年9月21日/Troy Technical
本稿の数値はすべて한미반도체(Hanmi Semiconductor)が韓国の電子公示システムDARTに提出した法定開示書類に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は、会社自身が引用したものを除き使用していません。