主要成果
自動車廃プラスチック(APW)の熱分解において、鉄修飾粘土触媒を用いることで、液体油の収率を大幅に向上させ、商用ディーゼルに近い特性を持つオイルを生成できることが実証されました。触媒を用いた熱分解では平均約68%のオイル収率を記録し、条件を最適化した最大値では78.6%(温度約416°C、触媒添加量約24%)に達しました。これは、触媒を使用しない熱分解の平均収率41%を大きく上回る数値です。
技術・詳細
本研究では、自動車のダッシュボード、バンパー、ヘッドランプなどから直接回収されたプラスチックを原料として使用しました。原料にはABS、HDPE、LDPE、PP、PS、およびガラス繊維が含まれており、特に前後バンパーが重量比で86.6%を占めています。触媒には、安価なベントナイト粘土に鉄を導入して表面酸性度や細孔構造を変化させた「鉄修飾粘土」を採用しました。
実験では温度を約350°Cから521°C、触媒量を約6%から34%の範囲で検証しました。その結果、触媒はオイルの収量を劇的に増加させるものの、生成物の組成(C8-C24の炭化水素比率)には大きな影響を与えないことが分かりました。組成に最も影響を与えたのは温度であり、低温域ではディーゼル相当の有機物が得られ、450°Cを超えるとより重いワックス状のオイルが生成される傾向が確認されました。
得られたオイルの特性は以下の通りです。
- 発熱量:49.85 MJ/kg
- 引火点:113°C
- 全芳香族化合物:3.55%(面積比)
これらの数値は従来の燃料規格と同等または近似していますが、密度と粘度はディーゼル燃料の規定値を超えており、これは長鎖炭化水素が残存しているためと考えられています。
背景・業界の文脈
使用済み車両(ELV)からのプラスチックリサイクルは、資源回収の向上と循環型社会の実現において重要な課題です。従来の研究の多くは、プラスチック、金属、繊維などが混在する「自動車シュレッダー残渣(ASR)」に焦点を当ててきました。しかし、実際の自動車部品に含まれる鉱物充填剤、難燃剤、ガラス繊維などの添加剤が熱分解挙動にどう影響するかという点については、十分な情報が得られていませんでした。本研究は、部品から直接回収したプラスチックを対象とすることで、この知見の空白を埋めるものです。
今後の展望
本プロセスを商用化レベルに引き上げるには、得られたオイルの密度と粘度を改善する追加処理が必要です。研究チームは、蒸留や遠心分離の導入、あるいは反応温度の低下と滞留時間の延長といった条件最適化により、重質分を削減し燃料特性を向上させることができると示唆しています。自動車プラスチックから価値ある燃料を回収するルートとして、技術的な有望性が示されました。
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