理化学研究所 (RIKEN) プレスリリース 日本
概要
理化学研究所は、シリコン窒化膜(SiN)フォトニクス技術を活用し、既存のシリコンフォトニクスと比較して格段に低い光損失を持つ光導波路の開発に成功したと発表しました。この超低損失導波路は、長距離伝送や複雑な光回路の構築において信号の減衰を最小限に抑えることを可能にします。特に、量子フォトニクス、光周波数コム、LiDARなどの高精度センシング分野での応用が期待されています。SiNは、可視光から近赤外域まで幅広い波長に対応できるため、多岐にわたる光デバイスへの応用が見込まれます。
詳細
シリコン窒化膜(SiN)フォトニクスの可能性
シリコンフォトニクスは、半導体製造プロセスとの高い親和性から、光デバイスの集積化において重要なプラットフォームとなっています。しかし、従来のシリコン(SOI)ベースの導波路は、特に長距離伝送や複雑な光回路において、光損失が課題となることがありました。この課題を解決するため、シリコン窒化膜(SiN)フォトニクスが次世代の高性能フォトニックプラットフォームとして注目を集めています。
理化学研究所による超低損失光導波路の実現
理化学研究所は、SiNフォトニクス技術を駆使し、これまでのシリコンベースの導波路と比較して格段に低い光損失を実現する光導波路の開発に成功したと発表しました。この技術革新は、以下の点で極めて重要です。
- 超低伝搬損失: 0.1 dB/cm以下の極めて低い伝搬損失を実現し、光信号の減衰を最小限に抑え、より長い距離でのデータ伝送や複雑な光回路の構築を可能にします。
- 広範な透明窓: 可視光から近赤外域まで幅広い波長帯に対応できるため、多様な光デバイスやアプリケーションへの適用が可能です。
- 優れた非線形光学特性: 高度な信号処理機能や、新しい波長分割多重方式の実現に貢献します。
- 優れた熱安定性: シリコンと比較して熱光学係数が低く、温度変化による波長ドリフトが少ないため、データセンターなどの環境温度変動が大きい場所でも安定した動作が期待できます。
多様な分野への応用と産業化の展望
この超低損失SiN光導波路技術は、様々な最先端分野での応用が期待されています。
- 量子フォトニクス: 液晶と統合することで、低電力で再構成可能な量子干渉計が実現され、スケーラブルな量子フォトニック回路の基盤となります。
- 高精度センシング: 光周波数コムやLiDARシステムにおいて、高精度な測定と広視野角・低ノイズ動作を可能にします。
- 長距離光通信: 従来のSOIプラットフォームの限界を克服し、数百チャンネルを持つDWDMシステムや、より複雑な変調方式の実現を支援します。
- AIデータセンター: 熱的安定性が高く、AI駆動型プロセス最適化とロボティクスを組み合わせることで、複雑なSiNフォトニックチップの自動製造(初回パス歩留まり95%以上)も可能になり、高速データ伝送インフラの安定供給に貢献します。
SiNフォトニクスは、その卓越した特性とCMOSプロセス互換性から、光通信のさらなる大容量化・長距離化だけでなく、次世代の光コンピューティングやセンサー技術の発展にも大きく貢献すると考えられます。今後の課題は、製造プロセスのさらなる最適化と量産化におけるコスト削減ですが、理化学研究所の成果は、この分野の産業化を大きく加速させるものとなるでしょう。
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