背景とパワーエレクトロニクスの進化
電気自動車(EV)、産業用電源、再生可能エネルギーシステムなどの分野で、パワーエレクトロニクスは急速に高性能化、高効率化、そして小型化が進んでいます。特に、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といったワイドバンドギャップ(WBG)半導体の採用が拡大するにつれて、これらのデバイスが生成する熱量が大幅に増加しており、極めて効率的かつ信頼性の高い熱管理と接合技術が不可欠となっています。従来の接合材料では、高温での動作安定性や熱サイクルによる疲労耐性に限界があり、次世代のパワー半導体モジュールの性能を最大限に引き出すことが困難でした。
主要な内容とHeraeus Electronicsの革新
Heraeus Electronicsは、PCIM Europe 2026において、これらの進化する要求に対応するための画期的なパワーエレクトロニクス材料のポートフォリオを発表しました。同社の展示のハイライトは以下の通りです。
- mAgic® PE340 銀圧焼結ペースト(新製品): この新開発の銀圧焼結ペーストは、高密度パッケージング向けに設計されており、精密な印刷特性と複数のプロセスとの互換性を持っています。低圧で焼結可能なため、製造プロセスにおけるデバイスへのダメージを最小限に抑えつつ、SiCやIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワー半導体ダイを高い信頼性で接合します。優れた熱伝導性と長期信頼性を提供します。
- Microbond® はんだプリフォーム(新製品): この新しいはんだプリフォームは、Heraeus独自の低温溶融Innolot®テクノロジーを利用しています。これにより、最大150°Cの動作温度を持つIGBTアプリケーションにおいて、高い接合信頼性を実現します。プリフォーム形式であるため、精密な量と位置での塗布が可能となり、歩留まり向上と製造プロセスの簡素化に貢献します。
- mAgic® PE360 焼結ペースト: 2025年グローバル技術賞を受賞したこの焼結ペーストは、200 W/mKを超える極めて高い熱伝導率を誇り、150°Cを超えるSiCモジュールアタッチアプリケーションをサポートします。すでに自動車プロジェクトで認定されており、高出力密度と高温動作が求められる厳しい環境下での信頼性を保証します。
これらのソリューションは、ますます複雑化するパワーエレクトロニクスデバイス向けに、高い熱性能、接合信頼性、および製造プロセスの柔軟性を提供することを目的としています。
影響と将来展望
Heraeus Electronicsが発表したこれらの先進的なダイアタッチ材料は、パワー半導体、特にSiCおよびIGBTモジュールの性能と信頼性を大きく向上させる可能性を秘めています。mAgic® PE340とMicrobond® はんだプリフォームは、高電力密度アプリケーションにおける熱管理の課題を解決し、デバイスの長寿命化と安定動作に貢献します。mAgic® PE360は、既に自動車分野での実績を持ち、その高い熱伝導性と信頼性は、EVやHEVの電力変換システムの効率向上に不可欠です。これらの材料は、パワーエレクトロニクス部品の小型化、高出力化、そして長期信頼性を可能にし、次世代のEV、再生可能エネルギーインバーター、産業用ドライブの開発を加速させるでしょう。Heraeus Electronicsは、材料技術の革新を通じて、持続可能で高性能なパワーエレクトロニクス社会の実現に貢献していくと期待されます。

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