東レ・アドバンスト・コンポジットが航空機エンジンパイロン用熱可塑性複合材料製アッパー スパーを開発:軽量化とリサイクル性を実現

概要
東レ・アドバンスト・コンポジット(Toray Advanced Composites)は、オランダ航空宇宙センター(NLR)およびフォッカー(Fokker)との協力により、航空機エンジンパイロン向けに熱可塑性複合材料製アッパー スパーの開発に成功しました。TenCate Cetex® TC1320 C/PEKK単方向テープと先進繊維配置(AFP)技術を用いることで、従来の鋼製部品と比較して製造コストと重量を大幅に削減し、燃料効率とリサイクル性を向上させます。この技術は、航空宇宙産業における軽量化と持続可能性への貢献が期待されます。
詳細

航空宇宙産業における軽量化と持続可能性の追求

航空宇宙産業は、燃費効率の向上と炭素排出量の削減という二つの大きな課題に直面しており、これらを解決するために軽量で高性能な材料が不可欠です。従来の航空機部品では金属が多用されてきましたが、より軽量で、かつ強度や耐久性を損なわない新しい材料ソリューションが求められています。また、環境意識の高まりとともに、材料のリサイクル性も重要な要素となってきました。

熱可塑性複合材料製アッパー スパーの開発

東レ・アドバンスト・コンポジットは、オランダ航空宇宙センター(NLR)およびフォッカー(Fokker)と協力し、航空機エンジンパイロンのアッパー スパーに熱可塑性複合材料を適用する画期的なプロジェクトを成功させました。このプロジェクトでは、以下の材料と技術が採用されました。

  • 材料: TenCate Cetex® TC1320 C/PEKK単方向テープを使用。PEKK(ポリエーテルケトンケトン)は、高温性能、耐薬品性、機械的特性に優れた高性能熱可塑性ポリマーです。
  • 製造技術: 先進繊維配置(AFP: Advanced Fiber Placement)技術を適用。AFPは、自動化されたプロセスで複合材料テープを精密に積層し、複雑な形状の大型部品を製造できる技術です。これにより、製造時間の短縮と材料の無駄の削減が実現します。

この複合材料製アッパー スパーは、長さ6メートル、厚さ28ミリメートルという大型部品でありながら、従来の鋼製部品と比較して製造コストと重量の両方を大幅に削減することに成功しました。重量削減は航空機の燃費効率に直接寄与し、ひいては運用コストの低減と排出ガス削減につながります。

技術的意義と産業応用上の展望

本開発の技術的意義は、熱可塑性複合材料が航空機の主要な構造部品にも適用可能であることを実証した点にあります。熱硬化性複合材料と比較して、熱可塑性複合材料は以下の利点を提供します。

  • リサイクル性: 再加熱して再成形が可能なため、製造工程でのスクラップを減らし、使用済みの部品をリサイクルできる可能性が高まります。これは循環型経済への貢献として極めて重要です。
  • 優れた耐損傷性: 高い衝撃強度と疲労特性を持ち、厳しい運用環境下での耐久性を向上させます。
  • 高速製造性: 熱可塑性材料は硬化プロセスが短く、AFPなどの自動化技術との組み合わせにより、生産サイクルタイムを短縮できます。

この技術は、航空機エンジンパイロンだけでなく、翼桁、安定板、床梁など、他の航空機構造部品への広範な応用が期待されます。さらに、自動車産業や風力発電など、軽量化と高強度、そして持続可能性が求められる他の分野にも波及効果をもたらす可能性があります。

今後の課題としては、新しい材料と製造プロセスの航空業界における厳格な認証プロセスをクリアすること、そして大規模な量産体制を確立し、コスト競争力をさらに高めることが挙げられます。しかし、本研究は、航空宇宙産業の未来を形作る上で不可欠な軽量化と持続可能性の目標達成に向けた重要な一歩となるでしょう。

元記事: https://www.toraytac.com/knowledge-hub/cases/thermoplastic-upper-spar-for-an-aircraft-engine-pylon

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