天津大学、わずか25秒で550℃に到達する新型高温相変化材料を開発:太陽光熱発電と廃熱回収を革新

概要
天津大学の封偉教授の研究チームは、高貯熱密度と優れたサイクル安定性を持つ新型高温複合相変化材料を開発しました。グラフェンエアロゲルと三元共晶塩(LiF–NaCl–Li2CO3)の複合体であるこの材料は、界面制御戦略により溶融塩の漏洩と不均一な分布を防ぎます。集光太陽光照射下でわずか25秒で550℃に達し、91.6%の光熱変換効率を実現。太陽エネルギーの間欠性問題を緩和し、産業廃熱の有効利用に貢献する画期的な成果です。
詳細

背景:高温熱貯蔵の重要性と既存材料の課題

太陽光熱発電や産業廃熱回収など、高温域でのエネルギー利用は、エネルギー効率の向上と持続可能な社会の実現に不可欠です。特に、太陽エネルギーは間欠性という課題を抱えており、安定した電力供給には効率的な熱貯蔵システムが不可欠です。相変化材料(PCM)は、固液相変化に伴う潜熱を利用して大量の熱を貯蔵できるため、高温熱貯蔵材料として有望視されています。しかし、高温PCMの実用化には、高い貯熱密度、優れた熱伝導率、長期的なサイクル安定性、そして溶融時の材料漏洩や相分離の抑制といった技術的な課題が残されていました。

グラフェンエアロゲルと共晶塩複合体による新材料開発

天津大学の封偉教授の研究チームは、これらの課題を解決するため、グラフェンエアロゲルと三元共晶塩(LiF–NaCl–Li2CO3)を組み合わせた新型高温複合相変化材料を開発しました。この材料は、以下の革新的な技術的特徴を備えています。

  • グラフェンエアロゲルの構造: グラフェンエアロゲルは、その優れた多孔質構造と高い表面積により、溶融塩を効果的に保持し、漏洩を防止する「骨格」として機能します。また、グラフェンの高い熱伝導率が、複合材料全体の熱輸送特性を向上させます。
  • 三元共晶塩(LiF–NaCl–Li2CO3): この共晶塩は、比較的低い融点でありながら、高い潜熱を持つ特性があります。共晶組成であるため、特定の融点でシャープな相変化を示し、効率的な熱貯蔵が可能です。
  • 界面制御戦略: 溶融塩とグラフェンエアロゲルの界面における濡れ性を改善する戦略を導入しました。これにより、溶融塩がエアロゲル骨格内に均一に分布し、相分離や漏洩の問題が抑制され、長期的な安定性が確保されます。

性能テストの結果、この複合材料は以下の優れた特性を示しました。

  • 初期融解エンタルピー: 531.1 J/gという非常に高い貯熱密度を達成。これは、単位質量あたりで大量の熱エネルギーを貯蔵できることを意味します。
  • サイクル安定性: 50回の高温熱サイクル後も、初期貯熱能力の約93%を維持。長期使用における信頼性の高さを示しています。
  • 高速加熱性能: 集光太陽光照射下において、わずか25秒で550℃まで昇温。これは、太陽エネルギーを迅速に捕捉し、貯蔵する能力の高さを示しています。
  • 高光熱変換効率: 全スペクトル平均吸収率92.7%、光熱変換効率最大91.6%を達成。太陽光エネルギーを非常に効率良く熱に変換できることを実証しています。

技術的意義と産業応用上の展望

この新型高温複合相変化材料の開発は、再生可能エネルギーの利用効率を劇的に向上させるための重要な技術的ブレークスルーです。その意義は以下の点に集約されます。

  • 太陽光熱発電の安定化: 太陽エネルギーの間欠性という課題に対し、効率的な熱貯蔵ソリューションを提供することで、昼夜を問わない安定した電力供給に貢献します。
  • 産業廃熱の有効利用: 工場などから排出される高温廃熱を効果的に回収・貯蔵し、再利用することで、産業全体のエネルギー効率を向上させ、運用コストとCO2排出量を削減します。
  • 持続可能なエネルギーシステムへの貢献: 高貯熱密度と高効率な光熱変換能力は、エネルギー貯蔵技術のコストを低減し、クリーンエネルギーシステムへの移行を加速させます。

今後の課題としては、材料の大規模生産技術の確立、さらなる長期耐久性評価、そして実際の発電プラントや産業プロセスへの統合における実証試験が挙げられます。しかし、本研究は、高温熱貯蔵技術の新たな道を切り開き、持続可能な未来社会の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。

元記事: https://news.qq.com/rain/a/20260509A01Z4N00

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