背景
従来の創薬アプローチは、主にタンパク質をターゲットとしてきましたが、ヒトゲノムの約80%がタンパク質に翻訳されない「非コード領域」であることが明らかになるにつれ、mRNAなどのRNA分子が新たな創薬ターゲットとして注目されています。RNAは、タンパク質の前駆体であるだけでなく、それ自体が多様な機能を持つため、タンパク質では解決困難な疾患に対して、新たな治療アプローチを提供する可能性を秘めています。しかし、RNA分子の複雑な立体構造は、コンピュータ上での解析や、それに結合する低分子化合物の設計を非常に難しくしていました。日本のバイオテック企業であるVeritas In Silico(VIS)は、この課題をAI技術で克服しようとしています。
主要内容
Veritas In Silico(VIS)は、同社独自のAI創薬プラットフォーム「aibVIS」を基盤として、mRNA標的低分子創薬の推進に注力しています。この「aibVIS」プラットフォームは、先進的なin silico RNA構造解析技術と、複数のルールベースAIおよびその他の創薬技術を高度に統合しています。これにより、製薬企業は、既存の創薬インフラストラクチャや化合物ライブラリを活用しながら、幅広い疾患領域においてmRNAを標的とする低分子医薬品を効率的に発見することが可能となります。aibVISの技術的強みは、複雑なRNA構造に対して、これまで困難だった低分子の結合部位を正確に予測し、結合親和性の高い化合物を設計できる点にあります。
VISは、プラットフォーム提供型のパートナーシップビジネスモデルと並行して、自社パイプラインの開発も積極的に進めています。2025年には、同社初の核酸薬候補の発表を行いました。さらに、国際的なコラボレーションも強化しており、2026年1月には、スイスを拠点とする創薬化学のスペシャリスト企業であるSpiroChem AGと、mRNA標的化合物の共同研究に関する覚書を締結しました。この提携は、欧州におけるVISの研究開発ネットワークを拡大し、mRNAを標的とした新規治療薬候補の創出を加速させることを目指しています。
影響と展望
Veritas In SilicoのAI創薬プラットフォーム「aibVIS」は、RNAを新たな創薬ターゲットとして本格的に活用する道を切り拓くものです。これにより、これまで治療が困難であった疾患、特にタンパク質標的ではアプローチできなかった病態に対して、低分子医薬品による治療選択肢が生まれる可能性が高まります。製薬企業は、既存の設備投資を有効活用しつつ、より効率的かつ短期間で新規リード化合物を獲得できるため、開発リスクとコストの削減が期待されます。SpiroChem AGとの欧州での提携は、グローバル市場におけるVISの存在感を高め、技術と知識の国際的な交流を促進するでしょう。
VISのハイブリッドなビジネスモデル(プラットフォーム提供と自社パイプライン開発)は、同社が研究、開発、販売をカバーするスペシャリティファーマへと進化していく戦略を示しています。今後の課題は、AIが設計した化合物の臨床での成功を実証し、その有効性と安全性を確立することです。mRNA標的低分子医薬品は、核酸医薬(siRNA、ASOなど)とは異なるアプローチであり、経口投与可能などの利点を持つ可能性があり、次世代の創薬フロンティアとしてその動向が注目されます。
元記事: https://jp.investing.com/news/stock-market-news/article-1525378

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