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イオントラップ 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

イオントラップ
― 電気の力で浮かせた「原子1個」が量子ビットになる仕組みと、それを支える材料・光学

イオントラップ方式は、真空の中に電気の力で浮かせた原子(イオン)を、1個ずつ量子ビットにします。イオンは自然が作った原子なので、同じ種類ならすべてまったく同じ。そのため、レーザー光やマイクロ波で非常に精密に操作できます。その代わり、ゲートが遅く、大規模にするには電極・レーザー・配線の工夫が要ります。この記事では、①どうやってイオンを浮かせるのか、②なぜ原子の中の2つの状態が量子ビットになるのか、③どう操作し、読み出すのか、④長所と短所、⑤大規模化の工夫(QCCD 方式)、⑥それを支える材料・光学・真空を、図と小さな数値例で順番に説明します。後半では、確認日(2026年10月16日)時点の到達点と計画を、達成と計画を分けて整理します。

構成:査読論文(Nature、Phys. Rev. Lett.、Phys. Rev. X、Rev. Mod. Phys.、Appl. Phys. Rev. ほか)、arXiv の論文、企業ブログを使用/数値の一部は本稿で計算/確認日 2026年10月16日

イオントラップの装置は、真空容器の中のトラップに、何本ものレーザー光を当てて使います。実際の装置・企業の機器を示すものではありません。 ①真空容器内のトラップ、②光学部品、③集光系、④拡大したイオン列を見分けてください。
図1 概念画像(ImageGen生成)。イオントラップの装置は、真空容器の中のトラップに、何本ものレーザー光を当てて使います。実際の装置・企業の機器を示すものではありません。 ①真空容器内のトラップ、②光学部品、③集光系、④拡大したイオン列を見分けてください。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
この記事の構成
  1. 3行でわかる/前提/シリーズの中での位置
  2. 復習:量子ビットは「矢印」
  3. イオンをどうやって浮かせるのか(ポール型トラップ)
  4. 量子ビットは「原子の中の2つの状態」
  5. 操作:1量子ビットと2量子ビット
  6. 読み出し:光る/暗い
  7. 同じ型の「カード」で要点を整理し、他の3方式と並べる
  8. 大規模化:イオンを動かす QCCD と配線
  9. 材料・光学・真空
  10. 現在地(確認日 2026年10月16日)と計画
  11. 限界と、確認できなかったこと/まとめ
  12. 評価・標準の読み方
  13. 用語集
  14. 参考資料(一次情報)
  15. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標・草案など、確定していない事項
このほか、材料研究への読み取りやたとえ話は「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値の読み方

量子コンピュータの数字は、何を、どう測ったかとセットでないと意味が決まりません。この記事では、誤り率・忠実度・寿命に、方式・測定対象・平均か最良か・日付を添えます。企業の発表は「企業の主張」、計画や目標は未確定/将来として、達成した事実と分けて書きます。この記事の図の数値例(読み出しの計算)は、本稿が仮定した「感覚をつかむための例」で、実在の装置の性能を示すものではありません。規格(ISO/IEC・IEEE)の本文は有料のため確認しておらず、題名・状態の記載にとどめています。簡単に説明するために、嘘は書いていません。たとえ話には、必ず「たとえの限界」を添えます。

1. 3行でわかる/前提/シリーズの中での位置

  • イオントラップの量子ビットは、真空の中に電場で浮かせた、1個の原子イオンです。0と1は、その原子の内部の2つの状態(例:超微細準位)です[参考資料1・2]事実
  • 同じ種類のイオンはすべて同一で、レーザー光やマイクロ波で精密に操作できます。2量子ビットゲートの平均不忠実度7.9×10⁻⁴(98量子ビット機の全ゾーン平均)などの高い精度が報告されています。一方で、ゲートは遅い(約70 μs の例)[参考資料2・1]事実
  • 大きくするには、電極・レーザー・配線が増える難しさがあります。イオンを動かして使う QCCD 方式、チップに組み込んだ光学、電気信号による制御が、その答えとして進んでいます[参考資料3・4・5・6]事実
この記事でいちばん大事な一行

イオントラップは、「自然が作った同一の原子」を量子ビットに使うので、精度が高い。代わりに、ゲートが遅く、大きくするには「イオンを動かし、光と電極をチップに集積する」工夫が必要です。

この記事を読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置

前提:特になし。矢印のたとえは次章で復習します(量子力学の式は使いません)。

シリーズの中での位置:「量子コンピュータの基礎」「量子ゲートと量子回路」の次に読むと分かりやすい記事です。他の3つの方式(超伝導、中性原子、光量子コンピュータ)と並べて読むと、違いがよく分かります。誤り率と寿命の測り方は「コヒーレンスとフィデリティ」編、真空と極低温の技術は「極低温と制御」編、材料全般は「量子コンピュータの材料と製造」編、光学部品は本シリーズの「光ファイバー」「窒化シリコン導波路」「シリコンフォトニクス」「光検出器」「半導体レーザー」編で扱います。

2. 復習:量子ビットは「矢印」

このシリーズでは、量子ビットの状態を球の中心から表面に向かう矢印で表します。北極を向けば「0」、南極を向けば「1」、斜めを向いていれば重ね合わせです。矢印が斜めのとき、測ると必ず0か1のどちらかに決まり、どちらになるかの確率は矢印の傾きで決まります。測った後は、矢印は北極か南極に固定され、元の傾きは戻りません。

量子ビットの状態は「矢印」で表せる(復習) 0(北極) 1(南極) 斜め=重ね合わせ 測ると、0か1のどちらかに決まる 矢印が北極から θ だけ傾いているとき、0になる確率は cos²(θ/2)、 1になる確率は sin²(θ/2)。測ると矢印は北極か南極に決まり、元の傾 きは戻りません。 例:θ = 60° のとき(本稿の計算) P(0) = cos²(30°) = 0.75 P(1) = sin²(30°) = 0.25 合計は1(100%)。100回測れば、およそ75回が0、25回が1になります。 ※ シリーズ共通のたとえです。矢印の向きが量子ビットの状態を表します。コインの表裏が同時にある、という意味ではありません。
図2 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。矢印のたとえの復習です。θ = 60° の例の確率は、本稿が計算した値です(cos²(30°) = 0.75)。コインの表裏が同時にある、という意味ではありません。
よくある誤解:「量子ビットは0と1が同時に入ったコイン」

これは誤りです。矢印が斜めを向いている状態は、「0と1の両方が入っている」のではなく、「0と1のあいだの、ある決まった向き」です。測ると、0か1のどちらか一方になります。量子コンピュータの力は、この矢印の向きを「波」のように重ね、正しい答えが強め合うように設計することから生まれます(本シリーズ「量子アルゴリズム」編)。

3. イオンをどうやって浮かせるのか(ポール型トラップ)

① なぜ「イオン」なのか

原子は電気的に中性なので、電場ではつかめません。そこで、原子から電子を1個はぎ取ってプラスの電気を持つ「イオン」にします。電気を持つので、電場で押したり引いたりして、空中に留められます。量子ビットに使うイオンは、バリウム(Ba⁺)、イッテルビウム(Yb⁺)、カルシウム(Ca⁺)などです[参考資料1・2]事実。

② 静電気の力だけでは浮かない、だから電場を揺らす

電気の力だけでは、3つの方向すべてでイオンを閉じ込められません。どこかの向きに必ず「山」ができて、イオンは転がり落ちてしまいます(アーンショーの定理。解説)。そこで、電場の向きを、1秒に数千万回という速さで入れ替えます(高周波、RF)。すると、イオンは平均して中心へ押し戻され、電極のあいだに浮かびます。これがポール型トラップです。鞍の形をした面に玉を置いて、鞍をぐるぐる回すと、玉が落ちなくなる、というたとえで説明されます(たとえ。限界:玉は重力、イオンは電気の力の話で、共通するのは「向きによって谷と山が入れ替わる形」だけです)。量子計算用のトラップでは、イオンと電極の距離は30 μm〜1 mm、RFの電圧は10〜1,000 V、周波数は10〜100 MHz です。超高真空の中で、イオンは数時間、数日、場合によっては数か月も保持されます[参考資料1]事実。

イオンは電極そのものに乗るのではなく、電場で電極の上方に保持されます。レーザーで操作し、集めた蛍光から状態を読みます。電場と粒子は模式表現です。
図3 概念画像(ImageGen生成)。イオンは電極そのものに乗るのではなく、電場で電極の上方に保持されます。レーザーで操作し、集めた蛍光から状態を読みます。電場と粒子は模式表現です。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
元のSVG・数値・出典を確認する
イオンを電気の力で空中に浮かせる(概念図) (a) 静止した電場だけでは浮かない 横から見ると:谷(閉じ込め られる) 別の向きから見ると:山(転 がり落ちる) 鞍(くら)の形:ある向きでは谷、別の向きでは山 静電気の力だけでは、3方向すべてで閉じ込めることはできません(ア ーンショーの定理。教科書的な事実)。必ず、どこかの向きに「山」が できて、イオンは逃げてしまいます。 たとえの限界:鞍の上のボールは重力の話で、イオンは電気の力の話です。 「向きによって谷と山が混ざる」という形だけが共通です。 (b) 電場を高速に入れ替える(ポール型トラップ) RF(高周波)電極 RF(高周波)電極 レーザー光(冷やす・操作する・読む) RF電極に高周波の電圧をかけ、電場の向きを1秒間に数千万回入れ替えま す。すると、イオンは平均して中心に戻され、電極のあいだに浮かびま す。両端の電極(エンドキャップ)には直流の電圧をかけ、並んだイオ ンが横に逃げないようにします。 数値の例 量子計算用のトラップでは、イオンと電極の距離は30 μm〜1 mm、RF電圧は10〜1,000 V(周波数10〜100 MHz)。超高真空の中で、イオンは 数時間、数日、場合によっては数か月も保持されます(Bruzewicz らの総説、2019年)。 ※ 概念図です。電極の形・並べ方は装置ごとに違います。

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。イオンを電気の力で浮かせる仕組みの概念図。数値は Bruzewicz らの総説[参考資料1]によります。

③ 浮かせたあと、レーザーで「冷やす」

浮かせただけでは、イオンはまだ熱で揺れています。そこで、レーザー光でイオンを冷やします(レーザー冷却)。イオンが光を吸って放つ過程を使って、動きを止めていきます。最初の冷却の限界(ドップラー限界)は数百 μK とされます(IonQ の技術ブログの説明)[参考資料7]事実。ここで大事な点は、イオンは冷やされていても、チップ(トラップ)は極低温である必要はないことです。超伝導量子ビットの約20 mK の冷凍機に対し、イオントラップは室温でも動かせます(Ballance らは室温のトラップを使用)[参考資料8]事実。ただし、電極の表面のノイズを減らすために、トラップを約4 K に冷やすこともあります(第9章)。

つまずきやすいところ:「冷やす」には2種類ある

イオントラップには、装置(チップ)を冷やすことと、イオンの動きをレーザーで冷やすことの2つがあります。前者は室温でもよく、後者は必ず必要です。どちらも「温度」の話ですが、イオンの「温度」は、イオンの揺れの激しさのことです。

4. 量子ビットは「原子の中の2つの状態」

原子の中の電子は、決まったエネルギーの「段」にしか居られません(エネルギー準位)。イオントラップの量子ビットは、この段のうち、使いやすい2つを0と1にします。よく使われるのは、ごく近いエネルギーの2つの段(超微細準位。差は GHz 程度)で、マイクロ波や、2本のレーザー光(ラマン遷移)で行き来させます[参考資料1]事実。ほかに、数秒の寿命をもつ準位と基底状態の組(光学量子ビット)も使われます[参考資料1]事実。

ここで、超伝導量子ビットとの大きな違いが出ます。超伝導量子ビットは人が設計した回路で、作るたびに少しずつ違います。イオンは自然が作った原子で、同じ種類・同じ同位体なら、すべて同一です。どのイオンも、同じ周波数のマイクロ波やレーザーに反応し、同じコヒーレンス時間を持ちます。調整の手間が減り、再現性が高いことが、イオントラップの精度の高さを支えています[参考資料1]事実。

イオンの内部の「段」と、0・1の取り方(概念図) |0⟩ |1⟩ P 基底状態(S) 励起状態 GHz 程度の差(超微細準位) マイクロ波、または2本のレーザー光(ラマ ン遷移)で 0↔1 を操作 読み出し用のレーザー光は、|1⟩ にだけ強 く反応して蛍光(光の再放射)を出す。|0⟩ は暗いまま 0と1は、イオン1個の内部のエネルギーの段のうち、使いやすい2つです。上は概念図で、 実際のイオン(Yb⁺、Ba⁺、Ca⁺ など)では準位の構造がもう少し複雑です。 量子ビットが状態を保つ時間の例 171Yb⁺ の「時計状態」 秒のオーダー。動的デカップリングで最大600 s( Bruzewicz ら、2019年の総説) 9Be⁺(Gaebler ら、2016) メモリのコヒーレンス時間が1 s 以上 171Yb⁺(Wang ら、2021) 1時間を超えると「推定」(論文の題名にも estimated とある) 参考:超伝導量子ビットの寿命は ms 前後です(別編)。 方式が違い、測り方も違うので、優劣は決められません。 ※ 準位図は概念図。数値は参考資料の記載にもとづく。
図4 概念図(ベクター作図)。イオンの内部の準位と0・1の取り方の概念図(簡略化)。状態を保つ時間の例は Bruzewicz らの総説[参考資料1]、Gaebler ら[参考資料9]、Wang ら[参考資料10]によります。

状態を保つ時間は、ほかの方式と比べても非常に長い例があります。171Yb⁺ の「時計状態」(磁場の影響を受けにくい状態)の量子ビットは、秒のオーダー、動的デカップリング(パルスで乱れを打ち消す)で600秒に達した例があります[参考資料1]事実。Gaebler らの9Be⁺ では、メモリのコヒーレンス時間が1秒を超え、Wang らは171Yb⁺ で1時間を超えると推定される値を報告しました(論文の題名にも「推定」とあります)[参考資料9・10]事実。磁場の揺れを抑えるため、ミューメタルの磁気シールドと永久磁石を使って、300 ms(動的デカップリングで2.1 s)を得た例もあります[参考資料1]事実。これらは「何を、どう測ったか」が違う研究室ごとの値で、方式の違う量子ビットの値と並べて優劣をつけるものではありません。

よくある誤解:「イオンは同一だから、誤りが出ない」

これは誤りです。同一であることは、調整の手間が減り、再現性が高いことを意味しますが、誤りがゼロになるわけではありません。レーザーの揺らぎ、磁場の雑音、イオンの加熱、読み出しの誤りなどが残ります。Ballance らは、誤りの原因を調べて、2量子ビットゲートの誤りのおもな技術的な原因を特定しています[参考資料8]事実。「同一の原子」と「ゼロの誤り」は別の話です。

5. 操作:1量子ビットと2量子ビット

① 1量子ビットの操作:矢印を回す

0と1のあいだの段差に合わせたマイクロ波(または、2本のレーザー光の差の周波数)を当てると、矢印が回ります。パルスの長さと強さで、回る角度が決まります。これを個々のイオンに狙って行うには、レーザーを1個のイオンだけに絞るか、イオンごとに電気信号を変えます。Gaebler らは、9Be⁺ で1量子ビットゲートの誤りを3.8×10⁻⁵ まで下げ、Ballance らは43Ca⁺ で1量子ビットゲートの忠実度99.9934(3)% を示しました[参考資料9・8]事実。Helios の論文では、1量子ビットゲートの平均不忠実度が2.5×10⁻⁵ と報告されています[参考資料2]事実。

② 2量子ビットの操作:「共通の揺れ」を仲立ちにする

イオンどうしは同じ電気を持って反発し合うので、トラップの谷の中で、バネでつながれた数珠玉のように、全体で一緒に揺れます。この共通の揺れを仲立ちにして、2つのイオンの状態をつなぐのが、2量子ビットゲートです[参考資料1]事実。考え方は Cirac と Zoller が1995年に提案し[参考資料11]、熱の揺れが残っていても使える形(Mølmer–Sørensen ゲート)を Sørensen と Mølmer が1999年に示しました[参考資料12]事実。

2量子ビットゲートのしくみ:イオンの「共通の揺れ」を使う(概念図) ① イオンはバネでつながった数珠玉 共通の揺れ イオンどうしは同じ電気を持ち、反発し合う。 電場の谷の中で、まるでバネでつながった玉の ように、全体で一緒に揺れる(共通の揺れ)。 ② レーザーで、状態に応じた力を加える |0⟩ or |1⟩ |0⟩ or |1⟩ レーザー光 2つのイオンにレーザー光を当てる。内部の状 態が0か1かで、押される強さが変わる。する と、共通の揺れが、2つの状態の組み合わせご とに違うふうに動く。 ③ 揺れが元に戻ると、「もつれ」だけが 残る もつれ ゲートの終わりに、共通の揺れはちょうど元に 戻る。揺れは何も覚えていないが、2つのイオ ンの状態には組み合わせごとの位相のずれが残 り、これが量子もつれになる。 数値の例 提案は Cirac と Zoller(1995年)。熱の揺れが残っていても使える形は Sørensen と Mølmer(1999年)。Ballance らは、カルシウム43イオン の室温のトラップで、2量子ビットゲートの忠実度99.9(1)%、1量子ビットゲートの忠実度99.9934(3)% を示し、2量子ビットゲートの時間を3.8 μs〜 520 μs の範囲で調べました。Helios の2量子ビットゲートは約70 μs です。 ※ 概念図です。実際のゲートは、レーザーの周波数・強さ・位相を精密に整えて行います。
図5 概念図(ベクター作図)。2量子ビットゲートの3段階の概念図。数値は Ballance ら[参考資料8]、Helios の論文[参考資料2]によります。

精度の例(定義と条件がそれぞれ違います):Ballance らは、43Ca⁺ の室温トラップで、2量子ビットゲートの忠実度99.9(1)% を、ゲート時間3.8 μs〜520 μs の範囲で調べました。速くすると忠実度が下がる関係(速さと精度のトレードオフ)を示しています[参考資料8]事実。Gaebler らは、9Be⁺ の2量子ビットゲートの誤りを 8(4)×10⁻⁴ と推定しました[参考資料9]事実。Quantinuum の Helios(98量子ビット)の論文は、2量子ビットゲートの平均不忠実度7.9(2)×10⁻⁴(全ゾーンの平均)、状態準備と測定(SPAM)の平均不忠実度4.8(6)×10⁻⁴ を報告しています(プレプリントの記載。査読を経て2026年6月17日に Nature に掲載)[参考資料2]事実。

つまずきやすいところ:「ゲートが遅い」とは?

超伝導量子ビットの2量子ビットゲートは数十〜数百 ns ですが、イオンは数十 μs(Helios の例で約70 μs)と、約千倍遅いのが普通です(本稿の計算:70 μs ÷ 70 ns = 1,000 倍。それぞれ別の装置の例)。Bruzewicz らは、高い忠実度の2量子ビットゲートは最速で1.6 μs まで示されている一方、1 μs を切るゲートの忠実度は76%を超えていない(2019年時点)と整理しています[参考資料1]事実。ただし、イオンは状態を保つ時間が非常に長いので、「状態を保つ時間÷ゲート時間」の比は大きくなります。遅くても、その間に量子ビットが壊れにくい、という見方です(解説)。

6. 読み出し:光る/暗い

イオントラップの読み出しは、とても分かりやすい方法です。読み出し用のレーザー光を当てると、片方の状態(例:|1⟩)のイオンだけが光を吸って、蛍光(光の再放射)を出し続けます。もう片方の状態(|0⟩)のイオンは光らず、暗いままです。出てきた光子(光の粒)を、カメラや光検出器で数えれば、光る(1)か暗い(0)かが分かります[参考資料1]事実。高い忠実度の状態準備と読み出しが、1 ms 未満でできる例があります[参考資料1]事実。

読み出し:光子を数えて「光る」か「暗い」かを決める(本稿の計算例) 0 5 10 15 20 25 数えた光子の個数 しきい値 3 暗い(|0⟩)の分布 光る(|1⟩)の分布 計算例(仮定した数) 光る場合の平均光子数を12個、暗い場合を0.5個(背景 の光など)と仮定し、ポアソン分布で計算しました。3 個以上数えたら「光る」と判定します。 暗いのに「光る」と誤る確率:1.4% 光るのに「暗い」と誤る確率:0.05% 実際の装置は、より多くの光子を集め、状態準備・読み 出しの誤りを合わせて 10⁻³ 台以下にしています( Helios:4.8×10⁻⁴[プレプリント])。 光の集まりにくさが、読み出し時間を決める一因です。 イオンの蛍光を集める全体の効率は、2019年の総説で約 2〜4% と整理されています。 読み出しは1ミリ秒未満でできる例がある(Bruzewicz ら)。図は説明のための計算例で、実際の装置の測定結果ではありません。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。光子を数えて、しきい値で「光る/暗い」を決める読み出しの計算例(本稿が仮定した数。ポアソン分布)。実際の装置の測定結果ではありません。

一度に集められる光は、ごくわずかです。2019年の総説は、イオンの蛍光を集める全体の効率が、およそ2〜4% と整理しています。超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(極低温でのみ動作)は、紫外の光子に対して約0.8 の効率が報告されています[参考資料1]事実。それでも、数個の光子で判定できれば足りるので、1 ms 未満で読み出せます。Helios の SPAM(状態準備と測定をあわせた誤り)は、平均で4.8×10⁻⁴ です[参考資料2]事実。ほかの方式が、共振器の微弱な信号を増幅して測る(超伝導)、写真を撮る(中性原子)、光を数える(光量子)のに対して、イオンは「光る・暗い」を直接見る点が特徴です。

7. 同じ型の「カード」で要点を整理し、他の3方式と並べる

ここまでを、シリーズで共通の5つの問い(何で作る・0と1は・どう操作・どう読む・長所と短所)に答える「カード」にまとめます。他の3つの記事も、同じ型のカードを使います。

イオントラップの「カード」(5つの問い+材料) ① 何で作る? 電場で真空中に浮かせた、1個の原子イオン(Ba⁺、Yb⁺、Ca⁺ など)。同じ種類はすべて同一。 ② 0と1は? 原子内部の2つの状態。超微細準位(差は GHz 程度)が多い。状態を保つ時間は秒〜(例によっては分・ 時間)。 ③ どう操作? レーザー光(またはマイクロ波・電気信号)。2量子ビットは、イオンの共通の揺れを仲立ちにする(約70 μs の例)。 ④ どう読む? 読み出し用レーザーを当て、蛍光が出るか(光る/暗い)を光検出器で見る。1 ms 未満の例。 ⑤ 長所と短所 長所:同一の原子で再現性が高い、操作の精度が高い、イオンを動かして全結合にできる。短所:ゲート が遅い、大規模化で電極・レーザー・配線が増える、電極の表面ノイズで加熱する。 + 材料 トラップ基板(サファイア・石英・シリコン)、金属電極、表面処理、導波路、真空、磁気シールド(第9 章)。 ※ 数値は本記事の各章(出典つき)にもとづきます。
図7 概念図(ベクター作図)。5つの問いに答えるカード。数値の出典は各章の参考資料によります。

4つの方式を同じ型で読み比べる

項目超伝導イオントラップ中性原子光量子
量子ビットの実体超伝導体の回路(トランズモンなど)。チップ上に描いた、大きさ約1 mm の「人工原子」[参考資料13]高周波の電場で真空中に浮かせた1個の原子イオン(例:Ba⁺、Yb⁺)[参考資料1・2]光ピンセット(細く絞ったレーザー光)で真空中に捕まえた1個の中性原子(例:Rb、Cs、Yb)[参考資料14・15・16]光子(光の粒)。導波路(光の通り道)や光ファイバーを進む[参考資料17・18]
0と1の区別回路のエネルギーの、いちばん低い2つの段[参考資料13]原子内部の2つの状態(例:Ba⁺ の超微細準位の2つ)[参考資料2]原子内部の2つの状態(例:Rb の超微細準位の2つ)[参考資料14]光子が通る道(例:2本の導波路のどちらか)。時間の早い・遅いでも表せる[参考資料17・19]
操作の方法マイクロ波パルス。2量子ビットゲートは、結合器やクロス共鳴で作る[参考資料13・20]レーザー光(またはマイクロ波・電気信号)。2量子ビットゲートは、イオン全体の共通の揺れを仲立ちにする[参考資料1・12・6]レーザー光。2量子ビットゲートは、原子を高く励起したリュードベリ状態にして、近くの原子に影響を与える[参考資料21・14]光回路での干渉と、光子の検出(測定)。光子どうしは素通りするので、測定で相互作用を作る[参考資料19・22]
読み出しの方法共振器のマイクロ波の応答のずれを測る(分散読み出し)[参考資料23・24]光を当てて、蛍光が出るか(明るい/暗い)を見る[参考資料1]蛍光を撮像し、原子ごとの明るい/暗いを見る[参考資料25]光検出器で、どの道に光子が来たかを数える(超伝導ナノワイヤ検出器を約2 K で使う例)[参考資料17]
動作の環境希釈冷凍機で約20 mK[参考資料13]超高真空。トラップは室温のものも、冷やしたものもある[参考資料8・5]超高真空の容器にレーザーと光学部品。原子は約10 μK、装置は室温[参考資料14・25]光回路の多くは室温で動く。検出器は冷やす構成が多い[参考資料18・17]
2量子ビットゲートの時間の例43 ns(Barends らの例)や約200 ns(クロス共鳴の例)[参考資料13]約70 μs(Helios の例)。3.8 μs〜520 μs の範囲を調べた例もある[参考資料2・8]ゲートのパルスは数百 ns の規模(Evered らの較正値の例:275 ns)。再配置や撮像には、これより長い時間がかかる[参考資料14・26]本稿では代表値を確認できなかった
2量子ビットの操作の質の例(定義が違う)IBM 公式ページの表示値 EPLG 3.7×10⁻³(測定条件は確認できなかった)[参考資料20・27]平均不忠実度 7.9×10⁻⁴(Helios、98量子ビット機の全ゾーンの平均)[参考資料2]忠実度 99.5%(最大60原子を並列、Evered ら)[参考資料14]「融合」の忠実度 99.22%(検出に成功した場合のみ。損失は含まない)[参考資料17]
強み速い。半導体の微細加工が使える[参考資料13]同じ種類のイオンはすべて同一。操作の精度が高い[参考資料1・2]同じ原子を大量に並べられる(6,100個)。配置を変えられる[参考資料25・28]光ファイバーでつなぎやすい。光回路を半導体工場で作る構想[参考資料17・18]
弱み量子ビットの寿命が比較的短い。配線と冷却、作りのばらつき[参考資料29・30・31・32]ゲートが遅い。大規模化には電極・レーザー・配線が増える[参考資料2・1]原子が逃げる(損失)。サイクルが遅い[参考資料33・26]光子の損失が最大の課題。光子どうしが相互作用しにくい[参考資料18・19]

整理は解説、各セルの数値・事実は出典(参考資料)によります(確認日 2026年10月16日)。数字は定義も条件も違う別々の量なので、方式どうしの優劣をつけないでください。

4つの方式を、同じ5つの問いで並べる(概念図) 超伝導 イオントラップ 中性原子 光量子 ① 何で作る? チップ上の超伝導回路(人 工原子) 電場で浮かせた1個のイオン 光ピンセットで捕まえた1個 の原子 導波路や光ファイバーを進 む1個の光子 ② 0と1は? 回路のエネルギーの最も低 い2段 原子内部の2つの状態(超微 細準位など) 原子内部の2つの状態(超微 細準位など) 光子の通り道(2本の導波路) や時間の早い遅い ③ どう操作? マイクロ波パルス レーザー光(またはマイク ロ波・電気信号) レーザー光(2原子はリュー ドベリ状態で相互作用) 光の干渉と、光子の検出( 測定) ④ どう読む? 共振器の音程のずれをマイ クロ波で測る 蛍光が出るか(光る/暗い) を見る 蛍光を撮像し、光る/暗い を見る 光検出器で光子が来たかを 数える ⑤ 環境は? 約20 mK(希釈冷凍機) 超高真空の中。室温の装置 も、冷やした装置もある 超高真空の中。装置は室温 回路の多くは室温。検出器 は冷やすことが多い ※ 各セルの内容は本記事の各章(出典つき)の要約です。物理的な実体と操作の違いを並べるための概念図で、性能の優劣を示すものではありません。
図8 概念図(ベクター作図)。4つの方式の「量子ビットの正体」を同じ5つの問いで並べた概念図。この記事で扱った方式を枠で強調しています。性能の優劣を示すものではありません。他の3方式は、本シリーズの各編でくわしく扱います。
つまずきやすいところ:どれが一番いいの?

答えは「まだ決まっていない」です。速さ(超伝導)、精度と全結合(イオン)、数の多さと配置の自由(中性原子)、通信との相性(光)と、得意なことが違います。どの方式も、「量子ビットを増やしても質を保つ」という同じ難問に、別の道から挑んでいます。この記事の表の数字は、定義も条件も違うので、並べて比べないでください。

8. 大規模化:イオンを動かす QCCD と配線

イオンを1列に並べて量子ビットを増やすと、ある限界にぶつかります。1列のイオンが増えるほど、2量子ビットゲートの速さは一般に落ちていくからです(イオンどうしの距離が離れ、共通の揺れとの結びつきが弱まるため)[参考資料1]事実。そこで考えられたのが、イオンを少数ずつ動かして使う方式です。Kielpinski らが2002年に「量子電荷結合素子(QCCD)」として提案し[参考資料3]、Pino らが2021年に、冷却したトラップチップで、必要な要素をすべて組み合わせた形で実証しました[参考資料4]事実。ゲートをかけるイオンだけを演算領域へ運び、使わないイオンはメモリ領域に置き、分かれ道(ジャンクション)で行き先を振り分けます。

分割電極でイオンを保持し、保存・演算・読み出しの領域の間を移動させる考え方です。経路と領域は説明用で、実製品の配置ではありません。
図9 概念画像(ImageGen生成)。分割電極でイオンを保持し、保存・演算・読み出しの領域の間を移動させる考え方です。経路と領域は説明用で、実製品の配置ではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
元のSVG・数値・出典を確認する
大規模化の考え方:イオンを動かして使う QCCD(概念図) メモリ領域 ゲートを使わないイオンを置 いておく。電極の電圧を「順 番に」変えて動かす。 ジャンクション 分かれ道。イオンを行き先の 領域へ振り分ける。 演算領域 レーザー光を当てて、ゲート をかける。ここでは少数のイ オンだけを扱う。 レーザー 移動 移動 なぜ動かすのか 1列に並べるイオンが増えると、2量子ビットゲートの速さは一般に落ちていきます(Bruzewicz ら)。そこで、ゲートをかけるイオンを少数ず つ演算領域へ運び、終わったらメモリへ戻します(Kielpinski ら、2002年の提案。Pino らが2021年に実証)。 代償:動かすたびにイオンが少し熱を持つので、冷やし直す(同時に冷やす別種のイオンを混ぜる方法もある)時間がかかります(Bruzewicz ら、Helios)。 ※ 概念図です。実際の配置は装置ごとに違います。

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。QCCD 方式の概念図。提案と実証は Kielpinski ら[参考資料3]、Pino ら[参考資料4]によります。

Helios:98個のイオンを動かす

Quantinuum の Helios は、98量子ビットの QCCD 型の装置です。バリウム(137Ba⁺)の超微細準位を量子ビットに使い、4方向の「X字」ジャンクションで、回転できるイオンの貯蔵リングと、2つの演算領域をつなぎます。演算領域は8つのゾーンで、一度に最大16量子ビットを扱います。動かして熱を持ったイオンは、同時に閉じ込めたイッテルビウム(171Yb⁺)のイオンを369 nm のレーザー光で冷やし、その熱を奪って冷やし直します(共同冷却)[参考資料2]事実。2量子ビットゲートそのものは約70 μs ですが、動かしたあとに約300 μs の冷却を加える、と書かれています[参考資料2]事実。

1量子ビットあたりの制御信号の数(Quantinuum の3世代の装置) 0 2 4 6 8 10 H1 9.9 信号/量子ビット 電極 198・独立の信号 198 H2 4.8 信号/量子ビット 電極 376・独立の信号 268 Helios 2.8 信号/量子ビット 電極 1228・独立の信号 273 1量子ビットあたりの独立した制御信号の数 Helios の論文の表より。電極の数は198→376→1,228 と6倍以上に増えても、独立に制御する信号は198→268→273 と、ほとんど増えていません。 電極に同じ電圧を「分け与える」設計の効果です。
図10 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。Quantinuum の3世代の装置の、電極数と独立した制御信号の数(Helios の論文の表1)[参考資料2]。1量子ビットあたりの信号数は表の値です。

規模が増えても配線が増え過ぎないよう、同じ電圧を多くの電極に「分け与える」設計が使われています(Helios の論文)。1量子ビットあたりの独立した制御信号は、H1 の9.9、H2 の4.8 から、Helios の2.8 に減りました[参考資料2]事実。別の道として、Oxford Ionics(現在は IonQ の一部)のチームは、レーザーの代わりに、チップ上の電流を流す配線による電気信号でイオンを制御する方法を示しました。7ゾーンのトラップで最大10量子ビットを制御でき、1量子ビットゲートの忠実度99.99916(7)%、2量子ビットの最大もつれ状態の生成99.97(1)% を報告しています[参考資料6]事実。さらに、2025年10月にIonQ のチームは、イオンを基底状態まで冷やさずに、電気制御の2量子ビットゲートの誤りを8.4(7)×10⁻⁵ と推定した、と arXiv で発表しました(プレプリント)[参考資料34]事実。IonQ は、これを「99.99%」の2量子ビットゲート忠実度として企業ブログで発表し、同じ技術を2026年に実証予定の256量子ビット機の基礎にする、と述べています(企業の主張。256量子ビット機の完成は、本稿では確認できませんでした)[参考資料7]未確定/将来。

よくある誤解:「量子ビット数が多いほど高性能」

これは誤りです。イオントラップでは、1列のイオンを増やすと、ゲートが遅くなるのが一般的です[参考資料1]。Helios が98量子ビットでありながら、2量子ビットゲートの平均不忠実度が7.9×10⁻⁴ に保たれているのは、イオンを動かして、少数ずつゲートをかける設計のためです[参考資料2]事実。量子ビットは、数と質(誤り率)、接続の形、速度、そして物理か論理かの全体で見ます。

9. 材料・光学・真空

イオンは電極から30 μm〜1 mm 離れて浮かんでいるだけなので、電極の「表面」の状態が、イオンに直接響きます。素材技術者に関係する論点を、図の番号ごとに整理します。

トラップチップの断面と、材料・光学・真空の論点(概念図) 基板(サファイア、石英、シリコンなど) 金属の電極(パターン) 40〜80 μm 程度 導波路 超高真空 1 2 3 4 概念図です。寸法・形は実際のチップと違います。イオンと電極の距離は、 Bruzewicz らの総説に出てくる典型的な値(40〜80 μm)。 1 電極と基板 表面型トラップは、サファイア・石英・シリコンな どの基板に金属電極を作る。12インチまでのウェハ ーで作れ、小さなチップをタイル状に並べる案もあ る(Bruzewicz ら)。 2 表面の電場ノイズ 電極表面の電場ノイズでイオンが熱を持つ(異常加 熱)。電極を室温から約4 K に冷やすと約2桁減る。 レーザー・プラズマ・イオンミリングによる表面処 理でも減る(Bruzewicz ら、Brownnutt ら)。 3 光学 チップ上の導波路と回折格子で、光ファイバーから 光を届ける例がある(Mehta ら、Niffenegger ら)。 4 真空と磁場 超高真空が要る。磁場の揺れを抑えるため、ミュー メタルの磁気シールドと永久磁石で、コヒーレンス 時間300 ms(動的デカップリングで2.1 s)を得た 例がある(Bruzewicz ら)。 ※ 各項目の数値は、Bruzewicz らの総説(2019年)と各論文の記載です。
図11 概念図(ベクター作図)。トラップチップの断面と、材料・光学・真空の論点の概念図。数値は Bruzewicz ら[参考資料1]、Brownnutt ら[参考資料35]、Mehta ら[参考資料5]、Niffenegger ら[参考資料36]によります。

① 電極と基板:半導体の技術で作る

現在のトラップの主流は、基板の上に金属の電極をパターンで作る表面型トラップです。基板にはサファイア、石英、シリコンなどが使われ、12インチのウェハーまで製造でき、小さなチップをタイル状に並べる案もあります[参考資料1]事実。古い型の、機械加工した金属部品を組み合わせたトラップに比べ、微細な電極の形を、再現性よく大量に作れることが利点です(解説)。

② 電極の表面ノイズ:いちばん素材らしい課題

電極の表面には、わずかな電場のノイズがあります。イオンはこれに非常に敏感で、勝手に熱を持ちます(異常加熱)。Brownnutt らは、イオントラップでの電場ノイズの測定を総括し、原因が複数あり、よく分かっていない点が多いと整理しています[参考資料35]事実。Bruzewicz らの総説によると、電極を室温から約4 K に冷やすと、材料によらず、異常加熱が約2桁減ります。また、室温でも、レーザー照射、プラズマ処理、イオンミリング(イオンで表面を削る)で電場ノイズを減らせ、表面の汚れや形状が原因として疑われています。イオンと電極の距離が40〜80 μm の場合、これらの処置で、高いしきい値の誤り訂正に十分な低さにできる、とされています[参考資料1]事実。

素材技術者の視点①:イオンは「世界でいちばん敏感な表面分析器」

イオンは、電極表面の電場ノイズを、30 μm〜1 mm 離れた場所から感じ取ります。つまり、イオンそのものが、表面の汚れや欠陥の敏感なセンサーになります(解説)。そのため、「どの材料の電極を、どう洗浄・処理すれば静かな表面になるか」は、量子計算の性能に直結する材料の研究課題です。実際、イオンミリングのあとで、材料ごとに温度による異常加熱の大きさが違うことが現れた、と報告されています[参考資料1]事実。推測:超伝導量子ビット(表面・界面の2準位欠陥)と、イオントラップ(表面の電場ノイズ)は、どちらも「表面の化学と欠陥」が性能を決めており、表面分析・洗浄・成膜の知識がそのまま生きる分野だと考えられます。

③ 光学:チップに組み込む

イオンには、紫外から赤外まで、複数の波長のレーザー光が要ります(Helios は、イッテルビウムの冷却に369 nm を使用)[参考資料2]事実。従来は、空中に組んだ光学部品でビームを届けていましたが、振動や位置ずれに弱く、大きくなると組み切れません。そこで、チップの中に光の通り道(導波路)と、光を空中のイオンへ向ける回折格子を作る研究が進みました。Mehta らは、冷却したトラップに光ファイバーを直接つなぎ、複数のイオンの高い忠実度のゲートを示し[参考資料5]事実、Niffenegger らは、ストロンチウムイオン(Sr⁺)の電離・冷却・操作・読み出しに必要な紫から赤外までのすべての波長を、チップ上の導波路で届けました(CMOS 互換の製造)[参考資料36]事実。光学部品の材料・製造は、本シリーズの「窒化シリコン導波路」「シリコンフォトニクス」編で扱います。

素材技術者の視点②:真空・磁場・検出器の材料

イオンを数時間〜数か月保持するには、超高真空が要ります[参考資料1]事実。真空容器の材料、チップの実装、ガスを出さない部品の選び方が効いてきます(解説)。磁場の揺れは、状態を保つ時間を縮めるので、ミューメタルの磁気シールドと永久磁石が使われます[参考資料1]事実。蛍光を検出する光検出器には、超伝導ナノワイヤ(極低温で動作)などが使われ、紫外の光子に約0.8 の効率が報告されています[参考資料1]事実(本シリーズ「光検出器」編)。イオントラップは、超伝導量子ビットのような大型の冷凍機を必須としない代わりに、真空、光学、磁気シールドという別の材料の課題を持つ方式です(解説)。

イオントラップのチップは、セラミックのパッケージに載せ、細い金線で電気的につなぎます。実際の工場・企業の装置を示すものではありません。
図12 概念画像(ImageGen生成)。イオントラップのチップは、セラミックのパッケージに載せ、細い金線で電気的につなぎます。実際の工場・企業の装置を示すものではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。

10. 現在地(確認日 2026年10月16日)と計画

① クオンティニュアム Helios(企業の研究チームによる査読論文)

Helios は、98個のバリウムイオンを量子ビットに使う QCCD 型の装置で、全量子ビットが全結合(任意の2つが直接ゲートできる)です。全ゾーンの平均で、1量子ビットゲート 2.5(1)×10⁻⁵、2量子ビットゲート 7.9(2)×10⁻⁴、状態準備と測定 4.8(6)×10⁻⁴ の不忠実度を報告しています。著者らは、ランダム回路サンプリングで、この装置が古典計算機でのシミュレーションの及ぶ範囲を超えて動作していると述べています(著者らの主張)[参考資料2]事実。論文は2026年6月17日に Nature に掲載されました[参考資料2]事実。他の研究室による同じ性能の再現は、本稿では確認できませんでした。

② 前の世代と、電気制御の流れ

Moses らが2023年に報告した H2(レーストラック型トラップ、最初は32量子ビット)は、状態準備と測定の平均不忠実度1.6(1)×10⁻³、1量子ビットゲート 2.5(3)×10⁻⁵、2量子ビットゲート 1.84(5)×10⁻³ で、量子ボリューム QV = 2¹⁶ を測定しました[参考資料37]事実。第8章で見たとおり、Oxford Ionics と IonQ のチームは、電気信号による制御と、基底状態まで冷やさない2量子ビットゲートを報告しています(プレプリントと企業ブログ)[参考資料6・34・7]事実。

③ 計画(未確定/将来)

IonQ は、公式ブログで、2030年までに数百万量子ビットへ向かうロードマップと、2026年に実証予定の256量子ビット機に触れています(企業の計画)[参考資料7]未確定/将来。確認日までに、256量子ビット機の完成を示す公式発表と、他社の計画の達成状況は、本稿では確認できませんでした。計画の数字は、物理量子ビットか論理量子ビットか、どの条件の誤り率かを確認してください。

11. 限界と、確認できなかったこと/まとめ

(1) 規格の本文

ISO/IEC 4879:2024 の本文は有料のため確認していません。IEEE P7130・P7131 は、IEEE の公式ページを取得できず、StandICT.eu の記載で案件の存在を確認したにとどまります。

(2) 企業の主張

IonQ の99.99% は、arXiv の論文の「推定」値にもとづく企業ブログの主張です。Helios の結果は査読論文ですが、他の研究室による再現は確認していません。

(3) 総説の時点

Bruzewicz らの総説は2019年のもので、そこに書かれた「最高の値」「最速のゲート」などは、その後に更新されている可能性があります。本稿は、可能な範囲で2023〜2026年の論文で補っています。

(4) 扱っていない方式

ペニング・トラップ、分子イオン、光学量子ビットの詳しい運用、ネットワーク化(イオン間の光子による結合)は扱っていません。

(5) 計画の達成度

IonQ の256量子ビット機など、計画の達成は、公式の達成報告を確認できた範囲でしか書いていません。

この記事のまとめ
  • イオントラップは、電場で浮かせた1個の原子イオンを量子ビットにします。0と1は、原子の内部の2つの状態です事実
  • 同じ種類のイオンはすべて同一で、精度が高い。ただし、誤りがゼロなのではありません事実
  • 操作は、レーザー光(またはマイクロ波・電気信号)。2量子ビットゲートは、イオンの共通の揺れを仲立ちにします。約70 μs と、超伝導より約千倍遅い例です事実本稿の計算
  • 読み出しは、蛍光の「光る/暗い」。1 ms 未満の例があります事実
  • 大規模化は、イオンを動かす QCCD、チップに組み込む光学、電気信号による制御が進みます。電極の表面ノイズ、真空、磁場、光学が、素材技術者の課題です事実

12. 評価・標準の読み方

イオントラップの性能は、ゲートの誤り率(1・2量子ビット)、状態準備と測定の誤り、状態を保つ時間、装置全体の質で見ます。高い精度が特長ですが、数字は「どのペアで、何の平均で、どう測ったか」で変わります。標準は、いまのところ「用語」が先行していて、性能の測り方の標準は案件の段階です(確認日 2026年10月16日)。

評価項目代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典)標準・指針(NIST・ISO/IEC・IEEE・ETSI・ITU-T・IETF など)読み方の注意
ゲートの精度(1・2量子ビット)ランダム化ベンチマーキング(RB)で、ゲートの平均不忠実度を報告する。例:Helios の2量子ビットゲート 7.9(2)×10⁻⁴(全ゾーンの平均)[参考資料2・38]事実。Ballance らは忠実度99.9(1)% を、ゲート時間3.8〜520 μs の範囲で報告[参考資料8]事実確認できなかった2量子ビットの1つのペアの値か、全ペアの平均か、ゲート時間はどれだけか、を確認する(条件つきの数字)
状態準備と測定(SPAM)状態準備と測定をまとめた平均不忠実度。Helios:4.8(6)×10⁻⁴、H2:1.6(1)×10⁻³[参考資料2・37]事実確認できなかった検出のしきい値の置き方、何個のイオンの平均か、で数字が変わる
状態を保つ時間コヒーレンス時間(T2 など)を、測り方(ラムゼー、エコー、動的デカップリング)つきで報告。例:171Yb⁺ で最大600 s(動的デカップリング)[参考資料1]事実。1時間超は「推定」[参考資料10]事実確認できなかった動的デカップリングを使った値と、使わない値は別物。方式の違う量子ビットの値と並べて優劣をつけない
装置全体の質量子ボリューム:H2 で QV = 2¹⁶、ミラーベンチマーク、線形クロスエントロピーベンチマーク[参考資料37・39]事実確認できなかったQV は2の冪で表す離散値。量子ビット数が多い装置の質を、必ずしも反映しない(Helios の論文はランダム回路サンプリングも用いる)
計画と達成IonQ のロードマップ(2026年に256量子ビット機を実証予定、など)。企業ブログの記載[参考資料7]未確定/将来確認できなかった目標は達成した事実ではない。物理か論理かの区別を確認する
物理系が量子コンピュータの材料として足りているかDiVincenzo の7項目(5つの要件+通信の2つ)。①量子ビットを多数そろえられる、②初期化できる、③ゲートより十分長いデコヒーレンス時間、④万能のゲート、⑤量子ビットごとの測定、⑥⑦通信に関する2つ[参考資料41]事実確認できなかった(標準ではなく、論文の整理)チェックリストであり、点数ではない。4方式とも、満たし方と弱点が違う
ゲートの精度(1量子ビット・2量子ビット)ランダム化ベンチマーキング(RB)。ランダムなゲート列を繰り返し、成功の減り方から平均の誤りを推定する(Knill ら、2008/Magesan ら、2011)[参考資料42・38]事実IEEE P7131(量子コンピュータの性能指標・ベンチマーク)は案件段階[参考資料43]未確定/将来「忠実度99.9%」は、何の操作を、どう測ったかとセットで読む。RB は測定のしかたで数字が変わる
装置全体の質量子ボリューム(Cross ら、2019)、EPLG(McKay ら、2023)、CLOPS(Wack ら、2021)、能力を測る手法(Proctor ら、2022)[参考資料39・27・44・45]事実確認できなかった(IEEE P7131 は案件段階)[参考資料43]未確定/将来指標ごとに測るものが違う。1つの数字で装置の優劣を決めない(ベンチマーク全般の整理:Acuaviva ら、2026[参考資料46])
用語・定義—(評価ではなく用語の標準)ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(第1版、2024年5月、発行済み)[参考資料40]事実。IEEE P7130(量子技術の用語。案件段階)[参考資料47]未確定/将来規格の本文は有料のため未確認。要求事項や定義の中身は書いていない

表の整理は本稿の計算(整理)。規格の本文は有料のため、題名・状態にとどめています(確認日 2026年10月16日)。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • 「何量子ビット」だけでは性能は分かりません。イオンでは、1列を増やすとゲートが遅くなり、QCCD で動かす時間も加わります[参考資料1・2]
  • 平均か最良か、1組か全組かを確認してください。Helios の7.9×10⁻⁴ は全ゾーンの平均、Ballance らの99.9% は1組の条件つきの値です[参考資料2・8]
  • 企業の発表と第三者の検証は別です。IonQ の99.99% は「推定」値にもとづく企業の主張で、他の研究室による再現は本稿で確認していません[参考資料34・7]
  • 標準は、推奨か要求か、法的拘束力があるかを確認してください。ISO/IEC 4879 は用語の規格で、性能を保証するものではありません[参考資料40]。計画は未確定/将来です

13. 用語集

量子ビット(qubit)
量子コンピュータの情報の単位。0と1のあいだの向きを持てる。シリーズ共通のたとえでは「矢印」。
イオン
電子を取り去って電気を持たせた原子。電場で空中に留められる。
ポール型トラップ
高周波の電場を高速に入れ替えて、イオンを浮かせる装置。
アーンショーの定理
静電気の力だけでは、電荷を3方向すべてで安定に閉じ込められないという定理。
RF(高周波)
電場の向きを1秒に数千万回入れ替えること。
レーザー冷却
光の吸収と放出を使って、イオンの動きを止めていく方法。
ドップラー限界
最初の段階のレーザー冷却で届く、温度の下限。数百μK。
超微細準位
原子の基底状態のうち、ごく近いエネルギーの2つの段。差は GHz 程度。
時計状態
磁場の影響を受けにくい2つの状態。状態を保つ時間が長い。
ラマン遷移
2本のレーザー光の差の周波数で、0と1のあいだを行き来させる方法。
共通の揺れ(運動モード)
並んだイオン全体が一緒に揺れる運動。2量子ビットゲートの仲立ち。
Mølmer–Sørensen ゲート
共通の揺れを使う2量子ビットゲート。熱の揺れが残っていても使える。
蛍光
光を吸った原子が、光を再放射する現象。光る/暗いで0と1を読む。
SPAM
状態準備と測定(State Preparation And Measurement)の誤りをまとめた指標。
QCCD
イオンを演算領域とメモリ領域のあいだで動かして使う、大規模化の方式(量子電荷結合素子)。
ジャンクション
イオンの行き先を振り分ける、トラップ上の分かれ道。
共同冷却
別種のイオンを混ぜ、それを冷やして量子ビットの熱を奪う方法。
異常加熱
電極の表面の電場ノイズで、イオンが勝手に熱を持つこと。
イオンミリング
イオンで表面を削って、汚れを取り除く処理。
導波路・回折格子
チップの中に光の通り道を作る部品と、光をチップの外へ向ける部品。
ランダム化ベンチマーキング(RB)
ランダムなゲート列を繰り返し、成功の減り方から平均の誤りを推定する方法。
量子ボリューム(QV)
装置の総合的な質を1つの数(2の冪)で表す指標。

14. 参考資料(一次情報)

  1. Bruzewicz C. D. ほか "Trapped-ion quantum computing: Progress and challenges", Appl. Phys. Rev. 6, 021314 (2019), DOI 10.1063/1.5088164 — doi.org/10.1063/1.5088164
  2. Ransford A. ほか (Quantinuum) "A 98-qubit trapped-ion quantum computer with all-to-all connectivity", Nature 655, 81–86 (2026), DOI 10.1038/s41586-026-10676-4(本稿はプレプリント arXiv:2511.05465 "Helios: A 98-qubit trapped-ion quantum computer" の本文を確認) — doi.org/10.1038/s41586-026-10676-4
  3. Kielpinski D., Monroe C., Wineland D. J. "Architecture for a large-scale ion-trap quantum computer", Nature 417, 709–711 (2002), DOI 10.1038/nature00784 — doi.org/10.1038/nature00784
  4. Pino J. M. ほか "Demonstration of the trapped-ion quantum CCD computer architecture", Nature 592, 209–213 (2021), DOI 10.1038/s41586-021-03318-4 — doi.org/10.1038/s41586-021-03318-4
  5. Mehta K. K. ほか "Integrated optical multi-ion quantum logic", Nature 586, 533–537 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2823-6 — doi.org/10.1038/s41586-020-2823-6
  6. Löschnauer C. M. ほか (Oxford Ionics) "Scalable, high-fidelity all-electronic control of trapped-ion qubits", PRX Quantum 6, 040313 (2025), DOI 10.1103/h4wk-v31j — doi.org/10.1103/h4wk-v31j
  7. IonQ "Accelerating Towards Fault Tolerance: Unlocking 99.99% Two-Qubit Gate Fidelities"(企業ブログ、2025年10月21日) — ionq.com/blog/accelerating-towards-fault-tolerance-unlocking-99-99-two-qubit-gate
  8. Ballance C. J. ほか "High-fidelity quantum logic gates using trapped-ion hyperfine qubits", Phys. Rev. Lett. 117, 060504 (2016), DOI 10.1103/PhysRevLett.117.060504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
  9. Gaebler J. P. ほか "High-fidelity universal gate set for 9Be+ ion qubits", Phys. Rev. Lett. 117, 060505 (2016), DOI 10.1103/PhysRevLett.117.060505 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060505
  10. Wang P. ほか "Single ion qubit with estimated coherence time exceeding one hour", Nat. Commun. 12, 233 (2021), DOI 10.1038/s41467-020-20330-w — doi.org/10.1038/s41467-020-20330-w
  11. Cirac J. I., Zoller P. "Quantum computations with cold trapped ions", Phys. Rev. Lett. 74, 4091–4094 (1995), DOI 10.1103/PhysRevLett.74.4091 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.74.4091
  12. Sørensen A., Mølmer K. "Quantum computation with ions in thermal motion", Phys. Rev. Lett. 82, 1971–1974 (1999), DOI 10.1103/PhysRevLett.82.1971 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.82.1971
  13. Krantz P. ほか "A quantum engineer's guide to superconducting qubits", Appl. Phys. Rev. 6, 021318 (2019), DOI 10.1063/1.5089550 — doi.org/10.1063/1.5089550
  14. Evered S. J. ほか "High-fidelity parallel entangling gates on a neutral-atom quantum computer", Nature 622, 268–272 (2023), DOI 10.1038/s41586-023-06481-y(本稿は arXiv:2304.05420 版の本文も確認) — doi.org/10.1038/s41586-023-06481-y
  15. Ma S. ほか "High-fidelity gates and mid-circuit erasure conversion in an atomic qubit", Nature 622, 279–284 (2023), DOI 10.1038/s41586-023-06438-1 — doi.org/10.1038/s41586-023-06438-1
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  17. Alexander K. ほか (PsiQuantum) "A manufacturable platform for photonic quantum computing", Nature 641, 876–883 (2025), DOI 10.1038/s41586-025-08820-7(本稿は arXiv:2404.17570 版の本文も確認) — doi.org/10.1038/s41586-025-08820-7
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  43. StandICT.eu "P7131 - Standard for Quantum Computing Performance Metrics & Performance Benchmarking"(IEEE の案件。StandICT.eu の標準リポジトリの記載。IEEE の公式ページは取得できなかった) — standict.eu/standards-repository/p7131-standard-quantum-computing-performance-metrics-performance-benchmarking
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  47. StandICT.eu "P7130 - Standard for Quantum Technologies Definitions"(IEEE の案件。標準化情報サイト StandICT.eu の標準リポジトリの記載。IEEE の公式ページは取得できなかった) — standict.eu/standards-repository/p7130-standard-quantum-technologies-definitions

15. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
イオントラップの特徴(トラップの種類、電極距離30 μm〜1 mm、RF 10〜1,000 V・10〜100 MHz、保持時間が数時間〜数か月、超微細準位の差が GHz 程度、マイクロ波・ラマン遷移、全イオンが同一、読み出し1 ms 未満、効率2〜4%、SNSPD約0.8、ゲート最速1.6 μs・sub-μs は76%以下、列が長いとゲートが遅くなる、時計状態の秒〜600 s、300 ms・2.1 s、基板(サファイア・石英・シリコン)・12インチ・タイル、異常加熱の2桁減(約4 K)・表面処理・40〜80 μm)Bruzewicz らの総説(2019年)の本文
出典1 https://doi.org/10.1063/1.5088164
事実
2量子ビットゲートの提案(Cirac と Zoller、1995年)と Mølmer–Sørensen ゲート(1999年)、QCCD の提案(2002年)と実証(2021年)各論文の書誌・要旨
出典11 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.74.4091
出典12 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.82.1971
出典3 https://doi.org/10.1038/nature00784
出典4 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03318-4
事実
Ballance ら:2量子ビット99.9(1)%、1量子ビット99.9934(3)%、43Ca⁺、室温トラップ、ゲート時間3.8〜520 μs。Gaebler ら:1量子ビットの誤り3.8×10⁻⁵、2量子ビット8(4)×10⁻⁴、メモリのコヒーレンス時間1 s 超。Wang ら:1時間超(推定)各論文の要旨
出典8 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
出典9 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060505
出典10 https://doi.org/10.1038/s41467-020-20330-w
事実
Helios:98量子ビット、137Ba⁺、X字ジャンクション、8ゾーン・最大16量子ビット、171Yb⁺ による共同冷却(369 nm)、約70 μs・約300 μs、平均不忠実度(2.5×10⁻⁵、7.9×10⁻⁴、4.8×10⁻⁴)、表1の電極数・信号数、Nature 掲載(2026年6月17日)Helios のプレプリント(arXiv:2511.05465)の本文と、Nature の書誌
出典2 https://doi.org/10.1038/s41586-026-10676-4
事実
H2:平均不忠実度(SPAM 1.6×10⁻³、1量子ビット 2.5×10⁻⁵、2量子ビット 1.84×10⁻³)、QV = 2¹⁶、初期32量子ビットMoses らの要旨
出典37 https://doi.org/10.1103/PhysRevX.13.041052
事実
電気信号による制御(7ゾーン・最大10量子ビット、1量子ビット99.99916(7)%、2量子ビットの最大もつれ生成99.97(1)%)、基底状態まで冷やさない2量子ビットゲートの推定誤り8.4(7)×10⁻⁵(プレプリント)各論文の要旨
出典6 https://doi.org/10.1103/h4wk-v31j
出典34 https://arxiv.org/abs/2510.17286
事実
IonQ の企業ブログ:99.99%(推定)の主張、ドップラー限界が数百 μK、2026年に実証予定の256量子ビット機、2030年までに数百万量子ビットへのロードマップ(企業の計画)IonQ の企業ブログ(2025年10月21日)
出典7 https://ionq.com/blog/accelerating-towards-fault-tolerance-unlocking-99-99-two-qubit-gate
未確定/将来
Mehta ら:冷却したトラップに光ファイバーを直接つないだ複数イオンの高忠実度ゲート。Niffenegger ら:Sr⁺ の全波長を導波路で供給(CMOS 互換)。Brownnutt ら:電場ノイズの総括各論文の要旨
出典5 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2823-6
出典36 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2811-x
出典35 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.87.1419
事実
DiVincenzo の「5つ(+通信の2つ)の要件」の枠組みDiVincenzo(2000)の要旨と本文
出典41 https://arxiv.org/abs/quant-ph/0002077
事実
ランダム化ベンチマーキングの原論文(Knill ら、Magesan ら)の存在と題名論文の書誌(Crossref/出版社ページで確認)
出典42 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.77.012307
出典38 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.106.180504
事実
量子ボリューム、EPLG、CLOPS、能力を測る手法、ベンチマークの総説の題名・要旨各論文の要旨
出典39 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.100.032328
出典27 https://arxiv.org/abs/2311.05933
出典44 https://arxiv.org/abs/2110.14108
出典45 https://doi.org/10.1038/s41567-021-01409-7
出典46 https://doi.org/10.1088/2058-9565/ae4269
事実
ISO/IEC 4879:2024 の番号・題名・発行年月(第1版、2024年5月、発行済み)ISO のページ
出典40 https://www.iso.org/standard/80432.html
事実
IEEE P7130・P7131 が IEEE の案件として存在すること(状態は案件段階として扱い、確定した規格とは書いていない)StandICT.eu の標準リポジトリの記載(IEEE の公式ページは取得できなかった)
出典47 https://standict.eu/standards-repository/p7130-standard-quantum-technologies-definitions
出典43 https://standict.eu/standards-repository/p7131-standard-quantum-computing-performance-metrics-performance-benchmarking
未確定/将来
他方式の事実(4方式の比較表):Krantz らの総説、Evered ら、Manetsch ら、Alexander ら、Aghaee Rad ら ほか各論文の要旨・本文
出典13 https://doi.org/10.1063/1.5089550
出典29 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
出典30 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09687-4
出典31 https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0
出典32 https://arxiv.org/abs/2012.08475
出典20 https://www.ibm.com/quantum/technology
出典14 https://doi.org/10.1038/s41586-023-06481-y
出典15 https://doi.org/10.1038/s41586-023-06438-1
出典16 https://doi.org/10.1103/66s8-jj18
出典21 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.82.2313
出典25 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09641-4
出典28 https://doi.org/10.1038/s41586-022-04592-6
出典26 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09848-5
出典33 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09596-6
出典17 https://doi.org/10.1038/s41586-025-08820-7
出典18 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08406-9
出典19 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.79.135
出典22 https://doi.org/10.1038/s41467-023-36493-1
出典23 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.93.025005
出典24 https://doi.org/10.1038/nature02851
出典27 https://arxiv.org/abs/2311.05933
事実
読み出しの計算例(平均12個・0.5個、しきい値3、誤り1.4%と0.05%)、ゲート時間の比(70 μs ÷ 70 ns = 1,000倍)、1量子ビットあたりの信号数の比較本稿の計算(Python。ポアソン分布。入力値は仮定または上記の出典の数値)本稿の計算
「電場を揺らすと浮かぶ」「鞍のたとえ」「イオンは敏感な表面センサー」「真空・磁場・光学の材料の論点」などの説明・たとえ・素材技術者の視点、および『3行でわかる』『よくある誤解』ボックス公表内容にもとづく本記事の整理・解説(本稿の説明)。各機関が表明した見解ではない解説
図1・図12 がImageGen生成の概念画像であること。それ以外の図が実データの観察ではなく説明のための作図であること本記事による注記(本稿)解説
確認できなかった点:ISO/IEC・IEEE の規格の本文、IEEE の公式ページ、他の研究室による Helios・IonQ の結果の再現、IonQ の256量子ビット機の完成、2019年以降の総説の更新本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため、記載していない(本稿)解説

最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(査読論文、arXiv の論文、ISO の公式ページ、企業ブログ〔企業の主張として〕)に限定しています。規格の本文は有料のため確認できていません。読み出しの数値例は本稿が仮定した計算で、実在の装置の性能ではありません。他の研究室による再現、IEEE の公式ページ、IonQ の256量子ビット機の完成については、確認できなかったため記載していません。図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図12 は ImageGen生成の概念画像です。

図版更新:2026年10月17日。本文・出典整理表のベクター作図という表記は、保存した元SVGの由来を示します。現在の主図の形式と読み方は各図下の説明を参照してください。ImageGen画像は実測や実在製品の写真ではなく、元SVG・数値・出典は展開して確認できます。