TECHNOLOGY EXPLAINER
量子ゲートと量子回路
― 矢印を回す操作と、その並べ方を、図と小さな数値例で
量子コンピュータの計算は、量子ビットの「矢印」を、量子ゲートという操作で回していくことです。ゲートを時間の順に並べて描いた図が量子回路です。 この記事は、量子力学を知らない人にも読めるように、代表的なゲート(X・Z・H・CNOT など)を「矢印の回転」と図で説明し、回路図の読み方、少数のゲートでどんな計算も組み立てられる理由(万能ゲート集合)、測定のしかたを順に扱います。 後半では、ゲートの誤りが積み重なる様子と、ゲートが実際には「物理のパルス」になること、素材技術者から見たゲートの精度の話をまとめます。「量子コンピュータの基礎」編の次に読む記事で、シリーズ全体の土台になります。
- 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
- ゲートとは何か:古典の論理ゲートとの違い
- 1量子ビットゲート:矢印を回す(X・Y・Z・H・S・T)
- ゲートの組み合わせ:H・Z・H で「見えない変化」が見える
- 量子回路図の読み方
- 2量子ビットゲート:CNOT と、もつれの作り方
- 測定:測る向きを変えるには
- 万能ゲート集合:少数のゲートで、どんな計算も
- 回路を実行するとは:深さ・幅・繰り返し、誤りの積み重なり
- ゲートは物理のパルス:素材技術者の視点
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出・確認した値
未確定/将来=策定中の標準、企業の計画など、確定していない事項
このほか、素材分野への読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。たとえ話には、必ず「たとえの限界」を書きます。
第3〜9章の行列・状態・確率・成功率の数値は、本稿が計算した説明用の値で、実在の装置の測定結果ではありません。第10章の表の数値は、各論文が報告した個別の条件での値で、方式の違う装置の優劣を示すものではありません。 規格(ISO/IEC・IEEE)は題名・適用範囲・状態の確認にとどめ、本文は確認していません。この分野は変化が速いため、装置・標準の状態には確認日(2026年10月16日)を付けています。
1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
- 量子ゲートは「矢印を回す操作」:X は北と南を入れ替え、H は北向きの矢印を赤道まで倒し、Z は赤道上の矢印を半回転させます。どのゲートも、元に戻せる操作です事実[参考資料1]
- 量子回路は、ゲートを時間順に並べた図:横線が1つの量子ビット、左から右へ時間が進み、四角や●⊕の記号がゲート、メーターの記号が測定です。CNOT と H の組み合わせで、2つの量子ビットを「ひとまとまり」(もつれ)にできます事実[参考資料1・14]
- 少数のゲートで、どんな計算も組み立てられる:「あらゆる1量子ビットゲート+CNOT」は厳密に万能で、H・T・CNOT のような有限個の組で任意の精度に近似できます。実機では、ゲートごとの誤りが積み重なるため、誤り率が回路の長さを決めます事実[参考資料2〜4]
「量子コンピュータの基礎」編で説明した矢印のたとえ(北極が0、南極が1、斜めが重ね合わせ)と、測定(測ると0か1に決まる)と干渉(波の足し算)の考え方を使います。読んでいなくても分かるよう、必要な部分は短く説明し直します。式は最小限で、難しい話は「もっと詳しく」の折りたたみに入れています。
この記事は「量子コンピュータの基礎」編の次に読む記事です。続いて「コヒーレンスとフィデリティ」編(ゲートの精度のものさし)、「量子アルゴリズム」編(ゲートを並べて何をするか)の順に読むと、つながりが分かりやすくなります。誤り訂正、方式ごとの話、ソフトウェアやクラウドは、本シリーズの各編で詳しく扱います。
2. ゲートとは何か:古典の論理ゲートとの違い
古典コンピュータの部品に、論理ゲート(AND、OR、NOT など)があります。2つの入力から1つの出力を作る AND ゲートは、「2つとも1のときだけ1を出す」ゲートです。ここで大切なのは、AND は元に戻せないことです。出力が0だったとき、入力が「00」「01」「10」のどれだったかは、もう分かりません。情報が捨てられています。
量子ゲートは違います。量子ゲートは、量子ビットの状態を変える操作で、必ず元に戻せます。入力と出力の量子ビットの数も同じです。量子ゲートの中身は、「球の中の矢印を、ある軸のまわりに回す」ことで、逆向きに回せば元の状態に戻るからです事実[参考資料1]。
古典の AND をそのまま量子ゲートにすることはできません(元に戻せないので)。量子の計算で AND のような計算が必要なときは、元に戻せるように入力の量子ビットを残しておく Toffoli ゲート(第6章)などを使います。たとえの限界:「ゲート」という名前は古典の回路から借りたもので、量子ゲートの中身は「矢印の回転」です(本記事による解説)。
3. 1量子ビットゲート:矢印を回す(X・Y・Z・H・S・T)
量子ビット1個に作用するゲートを、1量子ビットゲートといいます。「量子コンピュータの基礎」編と同じ約束で、北極を「0」、南極を「1」とした球の中の矢印として考えます。代表的な3つのゲートを、矢印の動きで見てみましょう。
| ゲート | 矢印の動き(回す軸と角度) | 北向き(0)の矢印は | 覚え方 |
|---|---|---|---|
| X | x 軸のまわりに 180° | 南向き(1)になる | 古典の NOT。0 と 1 の入れ替え |
| Y | y 軸のまわりに 180° | 南向き(1)になる(向きの位相も変わる) | X と似ているが、回す軸が違う |
| Z | z 軸のまわりに 180° | 北向きのまま(位相だけ変わる) | 赤道上の矢印を半回転させる |
| H(アダマール) | x と z の中間の軸のまわりに 180° | 赤道(+x 向き)になる | 重ね合わせを作る・解く |
| S | z 軸のまわりに 90° | 北向きのまま | Z の「半分」(S を2回で Z) |
| T | z 軸のまわりに 45° | 北向きのまま | S の「半分」(T を2回で S) |
本稿の計算。各ゲートを行列で表し、|0⟩ や |1⟩ や |+⟩(赤道の +x 向き)にかけて、矢印の向きが上の表のとおりになること、および S² = Z、T² = S、H·Z·H = X、H·X·H = Z が成り立つことを数値で確認しました。ゲートの定義は教科書[参考資料1]と Qiskit のゲート一覧[参考資料15]によります事実。
北向き(0)の矢印に Z をかけても、矢印は動かず、測っても結果は変わりません。そこで「Z は何もしない」と思われがちですが、赤道上の矢印には効きます(半回転)。位相は測定で直接見えないだけで、次の第4章のとおり、前後に別のゲートを置くと「0 か 1 か」の違いとして現れます。
回す軸と角度で、すべてのゲートが決まる
1量子ビットのどんなゲートも、「z 軸まわりの回転」「y 軸まわりの回転」「z 軸まわりの回転」の3つを順に行う操作として表せることが知られています(全体にかかる位相を除く)事実[参考資料1・2]。つまり、1量子ビットゲートは「どの軸のまわりに何度回すか」で決まります。実際の装置では、この回転を、パルスの形と長さと位相で作ります(第10章)。
もっと詳しく:ゲートを行列で書くと(読み飛ばしても大丈夫です)
1量子ビットゲートは、2×2 の表(行列)で書けます。たとえば X は「0 と 1 の列を入れ替える」行列、H は 1/√2 を係数にして、(1, 1) と (1, −1) の2行を並べた行列です[参考資料1]。量子ビットの状態 (α, β) にこの行列をかけると、新しい状態が得られます。H を |0⟩ = (1, 0) にかけると (0.7071, 0.7071)、つまり 0 と 1 が 50% ずつの状態になります(本稿の計算)。量子ゲートが「元に戻せる」のは、これらの行列がユニタリ行列(逆行列が簡単に作れる行列)であるためです[参考資料1]。
4. ゲートの組み合わせ:H・Z・H で「見えない変化」が見える
第3章の「Z は位相だけを変える」ことの意味を、具体例で確かめます。北向き(0)の矢印に、H、Z、H の順にゲートをかけます。矢印を追うと、次のようになります。
- H のあと:北向きの矢印が赤道の +x 向きになる(測ると 0 と 1 が 50% ずつ)
- Z のあと:赤道の反対側(−x)に回る。測っても 0 と 1 が 50% ずつで、測定結果の確率は変わらない(位相だけが変わった)
- もう一度 H:−x 向きの矢印が南向き(1)になる。測ると、かならず 1 が出る
つまり、H・Z・H の組み合わせは、X(北と南の入れ替え)と同じ働きをします。Z の「見えない変化」が、最後の H で、干渉によって「0 か 1 か」の違いに変わったのです本稿の計算(行列で H·Z·H = X を数値で確認)。
「量子コンピュータの基礎」編の第5章で見たとおり、H を2回かけると、2つの経路の波が強め合ったり弱め合ったりします。間に Z を挟むと、片方の経路の波の符号だけが反転するので、強め合う側と弱め合う側が入れ替わります。これが干渉の力で、量子アルゴリズムは、この入れ替えをうまく使って、正解の波を強めています(「量子アルゴリズム」編)。
5. 量子回路図の読み方
量子の計算を表す標準的な図が、量子回路図です。1つの回路図は、次のように読みます事実[参考資料1・14]。
回路図の横線を、電気回路の配線と思いたくなりますが、量子回路図の線は、量子ビットが時間とともに進む様子を表しています。ゲートは、その線の上の「ある時刻の操作」です。CNOT の縦線は、2つの量子ビットが「その時刻に、同時に関わる」ことを表します。たとえの限界:実際の装置にも配線はありますが、それは回路図の線とは別のものです(第10章)。
量子ビットの番号の並び:ソフトによって逆に見えることがある
量子ビットが複数あるとき、結果の表し方(「01」など)が、教科書とソフトで左右逆になることがあります。たとえば Qiskit は、ビットの並びを文字列で表示するとき、0番のビットを右端に書く(リトルエンディアン)慣習を採っています[参考資料13]。本記事の図と式は、教科書の順(q0 を左端)で書いていますが、ソフトの出力と見比べるときは、順序の慣習を確認してください事実[参考資料13]。
6. 2量子ビットゲート:CNOT と、もつれの作り方
量子ビット1個ずつにゲートをかけるだけでは、量子ビットどうしは、いつまでもバラバラのままです。量子ビットどうしを関わらせるのが、2量子ビットゲートです。代表がCNOT(制御NOT)ゲートで、「制御」の量子ビットが1のときだけ、「標的」の量子ビットを反転(X をかける)します事実[参考資料1]。
上の図のとおり、H で量子ビットq0を重ね合わせにしてから CNOT をかけると、「00」と「11」だけが重なったもつれ状態(ベル状態)ができます。この状態を測ると、「00」か「11」が半々の確率で出ます(本稿の計算:行列計算で (|00⟩ + |11⟩)/√2 になることを確認)。
CNOT は、0 か 1 と分かっている状態(北か南)なら、別の量子ビットにコピーできます。しかし斜めの矢印にかけると、コピーではなく、もつれ状態ができます。本稿で |+⟩|0⟩ に CNOT をかけた結果は (|00⟩ + |11⟩)/√2 で、2つの |+⟩ を並べた状態(4つの成分がすべて 0.5)とは別の状態でした(本稿の計算)。これは、未知の量子状態をコピーできない、という複製不可能性定理[参考資料1]と整合します(「量子コンピュータの基礎」編・第7章)。
| ゲート | 量子ビット数 | 何をするか | 覚えておくこと |
|---|---|---|---|
| CNOT(CX) | 2 | 制御が1のとき、標的を反転する | もつれを作る基本ゲート。万能ゲート集合の要(第8章) |
| CZ | 2 | 両方が1のときだけ、位相を反転する(符号を−1にする) | CZ = H・CNOT・H の組(標的の前後に H)。多くの装置が直接実行できる |
| SWAP | 2 | 2つの量子ビットの状態を入れ替える | CNOT を3個で作れる。つながっていない量子ビットの間で使う |
| Toffoli(CCNOT) | 3 | 制御2つがどちらも1のとき、標的を反転する | 古典の AND を、元に戻せる形で実現できる |
本稿の計算。CZ = (I⊗H)·CNOT·(I⊗H)、SWAP = CNOT を向きを替えて3個、Toffoli の真理値表(8通りのうち、制御がどちらも1の2通りだけが変わる)を、行列と全入力で確認しました。定義は教科書[参考資料1]と Qiskit のゲート一覧[参考資料15]によります事実。
CNOT は、「制御が標的に命令する」ように見えますが、制御の量子ビットが重ね合わせのときは、両方がもつれます。制御だけが標的に影響するのではなく、2つが一緒に1つの状態になります。「制御」「標的」は、ゲートの表の見方(真理値表)に使う呼び名です(本記事による解説)。
7. 測定:測る向きを変えるには
回路の最後に、量子ビットを測定します。回路図の標準の測定は、「北か南か」(0か1か)を調べるもので、計算基底での測定といいます。結果は古典ビットになります。
では、赤道の向き(たとえば +x)で測りたいときは、どうするのでしょうか。測定の向きは通常、装置の都合で決まっているので、測る前にゲートで矢印を回し、北か南に変えてから測ります。たとえば H を測定の前に置くと、+x 向きの矢印は北向き、−x 向きの矢印は南向きになるので、x 方向の測定ができます事実[参考資料1]。
- 測定は元に戻せない:測ると矢印が0か1の向きに決まり、元の状態には戻りません(「量子コンピュータの基礎」編・第4章)
- 途中で測る場合がある:回路の最後だけでなく、途中の測定の結果で、次のゲートを変える使い方があります(量子誤り訂正で重要。本シリーズ『量子誤り訂正と表面符号』編)。OpenQASM 3 は、こうした実行中の古典の制御(制御フロー)を記述できる言語として設計されています事実[参考資料12]
- 結果は確率:1回の測定は0か1が出るだけなので、同じ回路を何度も実行(ショット)して、割合を調べます
8. 万能ゲート集合:少数のゲートで、どんな計算も
量子ゲートには、連続的な回転角を持つものが無数にあります。実際の装置では、そのすべてを用意することはできません。では、少数のゲートがあれば、あとは組み合わせで足りるのでしょうか。答えは「はい」で、それを万能ゲート集合といいます。
- 厳密に万能な組:Barenco らは、「あらゆる1量子ビットゲート」と「CNOT」の組が万能であることを示しました(任意の量子ビット数の、どんな操作も、この組の組み合わせで表せる)事実[参考資料2]。DiVincenzo は、2量子ビットゲートがあれば万能になるという結果を示しています事実[参考資料17]
- 有限個で近似する組:Boykin らは、H、T(π/8 ゲート)、CNOT の3つで、万能かつ誤り耐性のある組になることを示しました事実[参考資料3]。Dawson と Nielsen の解説によれば、Solovay–Kitaev のアルゴリズムは、任意の1量子ビットゲートを、有限個のゲートの列で精度 ε に近似する方法で、出力されるゲートの数は ε に対して O(log3.97(1/ε)) です事実[参考資料4]。つまり、精度を上げても、ゲートの数は桁数に応じた多項式でしか増えません
- クリフォード回路は古典で模擬できる:CNOT、H、位相ゲート(S)だけの回路(クリフォード回路)は、古典コンピュータで効率よく模擬できることが示されています(Gottesman–Knill の定理)事実[参考資料5・16]。T ゲートを加えると万能になります
万能とは、「どんな量子計算も、この組で組み立てられる」という意味で、「その組み立てが短い」「速い」という意味ではありません。必要なゲートの数は、問題ごとに大きく違います。また、誤り訂正をする装置では、T のような回転ゲートを作るのが特に重いことが知られています(本記事による解説。『論理量子ビットと耐故障量子計算』編)。
9. 回路を実行するとは:深さ・幅・繰り返し、誤りの積み重なり
(1) 回路の大きさを表す言葉
- 幅(width):使う量子ビットの数
- 深さ(depth):時間方向のゲートの段数(同時にできるゲートは1段と数える)
- ゲート数:全部のゲートの数。とくに2量子ビットゲートの数が重視される(2量子ビットゲートは、1量子ビットゲートより誤りが大きいことが多いため。報告例として、イオンの超微細準位で、1量子ビットゲート 99.9934%、2量子ビットゲート 99.9% が報告されている[参考資料19]事実)
- ショット(shot):同じ回路の実行・測定の繰り返しの回数
第5章のベル状態の回路は、幅2、深さ2(H と CNOT)です。
(2) ゲートごとの誤りが積み重なる
実際の装置では、ゲートを1回かけるたびに、わずかな誤りが入ります。1回あたりの誤り率を ε、ゲートの回数を N とするとき、1回も誤らずに回路が終わる確率の目安は (1 − ε)N です(誤りが独立だと仮定した単純な目安)。
| 1回あたりの誤り率 ε | N = 10 | N = 100 | N = 1,000 | N = 10,000 |
|---|---|---|---|---|
| 1%(10−2) | 90.4% | 36.6% | 約 0.004% | ほぼ 0 |
| 0.5%(5×10−3) | 95.1% | 60.6% | 0.7% | ほぼ 0 |
| 0.1%(10−3) | 99.0% | 90.5% | 36.8% | 約 0.005% |
本稿の計算。(1 − ε)N を計算しました。誤りが独立で、1回でも誤れば失敗とみなす単純な目安です。実際の装置の誤りは、種類(ビットの反転・位相の乱れ・状態の漏れなど)や相関があり、この通りにはなりません。N = 1/ε のとき、成功確率は約 37%(1/e)になります。
誤り率が 0.1% なら、約1000回のゲートで成功確率は 37% まで下がります。誤り率が1桁下がると、使える回路の長さが約1桁伸びる、という関係です。実用的な量子計算が必要とする、長い回路には、誤り率を下げるだけでは足りず、量子誤り訂正が必要になる、というのがこの分野の標準的な理解です(本記事による解説。本シリーズ『量子誤り訂正と表面符号』編)。ゲートの誤り率の測り方は「コヒーレンスとフィデリティ」編で扱います。
10. ゲートは物理のパルス:素材技術者の視点
ここまでの「ゲート」は、頭の中の抽象的な操作でした。実際の装置では、ゲートは電気や光の「パルス」として量子ビットに送られ、その結果として、矢印が回ります。抽象的な回路図から、実際のパルスまでの段階を、次の図に整理します。
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。ゲートが物理の操作になるまでの段階の概念図。各段の例は、総説[参考資料6〜10]と OpenQASM 3 の仕様[参考資料11]の説明にもとづく整理で、特定の装置の仕様ではありません。
量子回路を書くソフトの側では、H や CNOT のような抽象的なゲートで回路を書き、コンパイラ(トランスパイラ)が、実機が直接できるゲート(ネイティブゲート)に書き換えます。Qiskit の公式資料は、回路を、実装を決めない抽象的な操作で組み立て、コンパイラが最適な分解を選ぶ、と説明しています事実[参考資料15]。OpenQASM 3 の仕様にも、組み込みのゲートと、ハードウェアのネイティブゲートとの関係を説明する節があります事実[参考資料11]。
(1) 方式ごとの「ゲートの実体」と、報告されたゲート時間・精度の例
次の表は、各論文が報告した個別の条件での値を並べたものです。方式が違うと、ゲートの時間も、精度の測り方も違うので、優劣を比べるための表ではありません。
| 方式(報告) | ゲートの実体 | 報告されたゲートの時間 | 報告された精度(条件) |
|---|---|---|---|
| 超伝導 Google Quantum AI、105量子ビットのプロセッサ(2024)[18] | マイクロ波の XY 回転と、仮想的な Z 回転。2量子ビットは CZ ゲート | XY 回転 25 ns、CZ 42 ns。平均の T1 は 68 µs、T2,CPMG は 89 µs | 本文では数値でなく、誤り確率の分布の図で示している(本稿では数値を確認していない) |
| 超伝導 Sung ら、チューナブルカプラ(2021)[32] | CZ ゲートと、ZZ のない iSWAP ゲート | 本稿では確認していない | 2量子ビットの相互作用の忠実度:CZ 99.76 ± 0.07%、iSWAP 99.87 ± 0.23%。論文は、これらが T1 の限界に近いとしている |
| イオン Ballance ら(2016)、43Ca+ の超微細準位、室温の trap[19] | レーザー駆動の1量子ビット・2量子ビットゲート | 2量子ビットゲートの時間を 3.8 µs〜520 µs の範囲で変えて、速さと忠実度の関係を調べた | 1量子ビット 99.9934(3)%、2量子ビット 99.9(1)% |
| 中性原子 Evered ら(2023)、87Rb の光ピンセット配列[21] | レーザーによるライドベルグ励起を使った2量子ビットゲート | 本稿では確認していない | 2量子ビット 99.5%(最大60原子を並列。繰り返しゲートに基づく複数の手法で評価) |
| シリコンスピン Xue ら(2022)、同位体濃縮した 28Si/SiGe の二重量子ドット[20] | 1量子ビットはマイクロ波、2量子ビットは電気パルスによる CPHASE。Z 回転は基準位相の更新(仮想 Z) | ゲート列の I と CPHASE は 100 ns に設定 | 1量子ビット・2量子ビットとも 99.5% 超(ゲートセット・トモグラフィ) |
事実(各論文の記載。参考資料18〜21・32)。表の整理は本稿の解説です。「確認していない」の欄は、本稿の調査範囲で、論文の記載から数値を確認できなかったものです。
超伝導の2量子ビットゲート(42 ns)と、イオンの2量子ビットゲート(数 µs〜数百 µs)を見比べて、「超伝導のほうが1000倍速い」と読むのは早計です。ゲートの時間は、量子ビットのコヒーレンス時間(「コヒーレンスとフィデリティ」編)と比べて初めて意味を持ち、同じ方式の中でも、速さと精度を交換できます。Ballance らは、2量子ビットゲートの時間を 3.8〜520 µs で変えて、速さと忠実度の関係を調べています[参考資料19]。数字は、条件とセットで読んでください(本記事による解説)。
ゲートは、量子ビットが壊れる(寿命が尽きる)より前に終わらなければなりません。ゲートに時間がかかるほど、その間の寿命による誤りが増えます。Sung らは、超伝導量子ビットの CZ ゲートと iSWAP ゲートの忠実度(99.76 ± 0.07%、99.87 ± 0.23%)が、量子ビットの T1 が決める限界に近いと述べています事実[参考資料32]。こうなると、制御をどれだけ磨いても、それ以上は材料(量子ビットの寿命)が決めることになります。「量子ビットを作る材料の質」が、そのままゲートの精度の上限になる、ということです(本記事による解説。「コヒーレンスとフィデリティ」編で、時間と誤りの関係を扱います)。
固定周波数の超伝導量子ビットは、ジョセフソン接合の絶縁膜の厚さや面積で、周波数が決まります。ところが量子ビットが増えると、周波数が近すぎる組が出てきて、ゲートが干渉してしまう周波数の衝突(frequency crowding)が問題になります。Hertzberg らは、作製後に量子ビットの周波数をレーザーで調整する方法で、周波数を合わせる精度をほぼ10倍に改善し、統計モデルで、調整なしでは衝突のない量子ビットの格子を見つけられる確率が急速に0へ近づくことを示しました事実[参考資料30]。ウェハーの面内の接合の抵抗のばらつきを小さくする取り組みも報告されています[参考資料31]。
素材から見ると、極薄の酸化膜の厚さと面積を、ウェハー全面で再現よくそろえるプロセスが、量子ビットを増やしたときのゲートの質を決める、ということです(本記事による解説。原子層堆積や成膜の話は、本シリーズ『原子層堆積』編と『量子コンピュータの材料と製造』編)。
ゲートのパルスは、室温の電子機器から、極低温の量子ビットまで、ケーブル、減衰器、コネクタ、基板、パッケージを通って届きます。パルスの形が崩れたり、雑音が入ったり、熱が流れ込んだりすれば、ゲートの精度が落ちます。超伝導の量子ビットのレビューは、冷凍機の中で、制御の配線や、読み出しの増幅器、チップ上の配線が必要で、量子ビットの数を増やすには、これらの工学が課題になると述べています[参考資料6]。シリコンスピンでは、28Si を濃縮した基板の上に、ゲート電極を作り、電気パルスでゲートを動かす例があります[参考資料20]。量子ビットの周りの金属・誘電体・基板・接合材料が、そのままゲートの質に効いてくる、と考えられます(推測を含む本記事による解説。「極低温と制御」編、「量子コンピュータの材料と製造」編)。
11. 評価・標準の読み方
量子ゲートの良し悪しは、1回のゲートがどれだけ正確か(誤り率・忠実度)と、回路全体がどれだけうまく動くか、の2つの「ものさし」で見ます。前者は、ランダム化ベンチマーキングやゲートセット・トモグラフィで測り、後者は、量子ボリュームやアプリケーション指向のベンチマークで測ります。回路を書くための言語(OpenQASM 3 など)と、用語や性能指標の標準も、あわせて表にします(確認日 2026年10月16日)。
| 評価項目 | 代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典) | 標準・指針(ISO/IEC・IEEE など) | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| ゲートの正確さ(誤り率・忠実度) | ランダム化ベンチマーキング(Magesan ら、2011)[22]。ゲートセット・トモグラフィ(Blume-Kohout ら、2017:トラップイオンの量子ビットで、誤り耐性のしきい値をダイヤモンドノルムで満たすことを示した)[29]事実 | 確認できなかった(IEEE P7131 は性能指標・ベンチマークの標準化を扱う作業部会が活動中で、発行済みの標準は確認できなかった)[26]未確定/将来 | Blume-Kohout らは、ランダム化ベンチマーキングの「誤り率」は、すべての誤りに敏感ではなく、ダイヤモンドノルムのしきい値と直接比べられない、と述べている[29]。何の操作の値か、どう測ったかを確認する |
| 回路全体の性能 | 量子ボリューム(Cross ら、2019)[23]、ミラー回路によるランダム化ベンチマーキング(Proctor ら、2022)[27]、アプリケーション指向のベンチマーク(Lubinski ら、2023)[28]事実 | 確認できなかった(同上) | 1つの指標が、あらゆる用途の優劣を表すわけではない。指標ごとに、測っているものが違う |
| 回路の記述(言語) | OpenQASM 3(Cross ら、2022)。実行中の古典の制御(制御フロー)や、タイミング、ゲートの修飾子などを記述できる言語として提案された[12]事実 | OpenQASM 3 の仕様(openqasm.com)[11]。ISO/IEC・IEEE の標準としては確認できなかった事実 | 仕様は公開されているが、国際標準ではない。ソフトによって、ゲート名やビットの並びの慣習が違うことがある[13] |
| 用語(ゲート・回路の言葉) | —(評価ではなく用語) | ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3)[24]事実/IEEE P7130 "Standard for Quantum Technologies Definitions"(IEEE のページでは策定中の Active PAR。PAR 承認は2021年9月23日)[25]未確定/将来 | 用語集で、ゲートの性能の合否を決める規格ではない。規格の本文は未確認で、定義の中身は書いていない |
| ゲートの時間・速さ | 各論文が個別に報告(本記事第10章の表) | 確認できなかった(標準的な報告様式は確認していない) | 方式が違うと条件が違う。時間は、コヒーレンス時間と比べて読む |
表の整理は本稿の計算(整理)。ISO の番号・題名・発行年月は ISO の委員会ページで、IEEE の状態は IEEE SA のページで確認(確認日 2026年10月16日)。OpenQASM 3 の仕様と Qiskit の資料は、公開ページの記載の範囲で確認しました。規格の本文は有料または未確認のため、題名・適用範囲の記載にとどめています。
読み方の注意(素材技術者向け)
- 「忠実度99.9%」だけでは、何のことか分かりません:1量子ビットゲートか2量子ビットゲートか、何量子ビットの値か、平均か最良か、どう測ったか(ランダム化ベンチマーキング、トモグラフィなど)を確認してください
- ランダム化ベンチマーキングの数字は、すべての誤りを反映するわけではありません:Blume-Kohout らは、その「誤り率」が誤り耐性のしきい値(ダイヤモンドノルム)と直接比べられないことを指摘しています[参考資料29]
- 方式の違う装置のゲート時間・精度を、並べて優劣をつけないでください:条件が違い、速さと精度の交換も方式ごとに違います(第10章の表)
- 標準は、推奨か要求かを確認してください:ISO/IEC 4879 は用語集、OpenQASM 3 は公開仕様、IEEE P7130・P7131 は策定中です。「規格に準拠」という表現は、どの規格のどの項かを確認してください
12. 用語集
- 量子ゲート
- 量子ビットの矢印を回す操作。元に戻せる。
- 量子回路
- 量子ゲートと測定を、時間の順に並べた図(または、その計算の手順)。
- 論理ゲート
- 古典コンピュータの AND・OR・NOT など。多くは元に戻せない。
- X ゲート
- 0 と 1 を入れ替える。北と南の入れ替え(x 軸まわりに180°)。
- Z ゲート
- 位相を反転する。z 軸まわりに180°。北向き・南向きの矢印は動かさない。
- H(アダマール)ゲート
- 北向きの矢印を赤道まで倒す。重ね合わせを作る・解く。
- S ゲート・T ゲート
- z 軸まわりに90°・45°回す。S を2回で Z、T を2回で S。
- CNOT(制御NOT)
- 制御が1のとき、標的を反転する2量子ビットゲート。もつれを作る。
- CZ
- 両方が1のときだけ位相を反転する2量子ビットゲート。
- SWAP
- 2つの量子ビットの状態を入れ替えるゲート。
- Toffoli(CCNOT)
- 制御2つがともに1のとき標的を反転する3量子ビットゲート。
- ユニタリ
- 元に戻せる変換(確率の合計を変えない)。量子ゲートはユニタリ。
- ベル状態
- 2つの量子ビットが「00」と「11」の重ね合わせになった、代表的なもつれ状態。
- 万能ゲート集合
- その組み合わせで、どんな量子計算も(近似を含め)組み立てられるゲートの組。
- クリフォードゲート
- H、S、CNOT など。これだけの回路は古典コンピュータで効率よく模擬できる。
- Solovay–Kitaev
- 任意のゲートを、有限個のゲートの列で精度よく近似する手法。
- ネイティブゲート
- その装置が1回の操作で直接実行できるゲート。
- トランスパイル(コンパイル)
- 抽象的な回路を、装置のネイティブゲートの列に書き換えること。
- 深さ・幅
- 回路の時間方向の段数・使う量子ビットの数。
- ショット
- 同じ回路を実行して測定することの繰り返し1回。
- 忠実度(フィデリティ)
- 実際の操作が理想の操作にどれだけ近いかを表す数(1に近いほど良い)。
- ランダム化ベンチマーキング
- ランダムな操作列で、1回あたりの操作の誤り率を調べる方法。
- ゲートセット・トモグラフィ
- ゲート全体の振る舞いを詳しく調べる測定法。
- OpenQASM
- 量子回路を書くための公開された言語(仕様)。
13. 参考資料(一次情報)
- Nielsen M. A., Chuang I. L. Quantum Computation and Quantum Information, Cambridge University Press (10th anniversary edition, 2010) (10周年記念版、2010。書籍ページ) — cambridge.org
- Barenco A. ほか "Elementary gates for quantum computation", Phys. Rev. A 52, 3457–3467 (1995), DOI 10.1103/PhysRevA.52.3457 — doi.org/10.1103/PhysRevA.52.3457
- Boykin P. O. ほか "On Universal and Fault-Tolerant Quantum Computing", arXiv:quant-ph/9906054 (1999) — arxiv.org/abs/quant-ph/9906054
- Dawson C. M., Nielsen M. A. "The Solovay-Kitaev algorithm", Quantum Inf. Comput. 6, 81–95 (2006), arXiv:quant-ph/0505030 — arxiv.org/abs/quant-ph/0505030
- Aaronson S., Gottesman D. "Improved simulation of stabilizer circuits", Phys. Rev. A 70, 052328 (2004), DOI 10.1103/PhysRevA.70.052328 — doi.org/10.1103/PhysRevA.70.052328
- Krantz P. ほか "A quantum engineer's guide to superconducting qubits", Appl. Phys. Rev. 6, 021318 (2019), DOI 10.1063/1.5089550 — doi.org/10.1063/1.5089550
- Bruzewicz C. D. ほか "Trapped-ion quantum computing: Progress and challenges", Appl. Phys. Rev. 6, 021314 (2019), DOI 10.1063/1.5088164 — doi.org/10.1063/1.5088164
- Henriet L. ほか "Quantum computing with neutral atoms", Quantum 4, 327 (2020), DOI 10.22331/q-2020-09-21-327 — doi.org/10.22331/q-2020-09-21-327
- Slussarenko S., Pryde G. J. "Photonic quantum information processing: A concise review", Appl. Phys. Rev. 6, 041303 (2019), DOI 10.1063/1.5115814 — doi.org/10.1063/1.5115814
- Burkard G. ほか "Semiconductor spin qubits", Rev. Mod. Phys. 95, 025003 (2023), DOI 10.1103/RevModPhys.95.025003 — doi.org/10.1103/RevModPhys.95.025003
- OpenQASM "OpenQASM 3.0 Specification" (仕様書のページ。確認日 2026年10月16日) — openqasm.com/versions/3.0/index.html
- Cross A. ほか "OpenQASM 3: A Broader and Deeper Quantum Assembly Language", ACM Trans. Quantum Comput. 3, 12 (2022), DOI 10.1145/3505636 — doi.org/10.1145/3505636
- IBM Quantum "Bit-ordering in the Qiskit SDK" (documentation) (確認日 2026年10月16日) — quantum.cloud.ibm.com/docs/en/guides/bit-ordering
- IBM Quantum Learning "Basics of quantum information" (course) (入門コース。矢印・回路図の説明の参考として確認) — quantum.cloud.ibm.com/learning/en/courses/basics-of-quantum-information
- IBM Quantum "Circuit library" (Qiskit SDK documentation) (確認日 2026年10月16日) — quantum.cloud.ibm.com/docs/en/api/qiskit/circuit_library
- Gottesman D. "The Heisenberg Representation of Quantum Computers", arXiv:quant-ph/9807006 (1998) — arxiv.org/abs/quant-ph/9807006
- DiVincenzo D. P. "Two-bit gates are universal for quantum computation", Phys. Rev. A 51, 1015–1022 (1995), DOI 10.1103/PhysRevA.51.1015 — doi.org/10.1103/PhysRevA.51.1015
- Google Quantum AI "Quantum error correction below the surface code threshold", Nature 638, 920–926 (2025), DOI 10.1038/s41586-024-08449-y (arXiv:2408.13687) — doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
- Ballance C. J. ほか "High-Fidelity Quantum Logic Gates Using Trapped-Ion Hyperfine Qubits", Phys. Rev. Lett. 117, 060504 (2016), DOI 10.1103/PhysRevLett.117.060504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
- Xue X. ほか "Quantum logic with spin qubits crossing the surface code threshold", Nature 601, 343–347 (2022), DOI 10.1038/s41586-021-04273-w — doi.org/10.1038/s41586-021-04273-w
- Evered S. J. ほか "High-fidelity parallel entangling gates on a neutral-atom quantum computer", Nature 622, 268–272 (2023), DOI 10.1038/s41586-023-06481-y — doi.org/10.1038/s41586-023-06481-y
- Magesan E., Gambetta J. M., Emerson J. "Scalable and Robust Randomized Benchmarking of Quantum Processes", Phys. Rev. Lett. 106, 180504 (2011), DOI 10.1103/PhysRevLett.106.180504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.106.180504
- Cross A. W. ほか "Validating quantum computers using randomized model circuits", Phys. Rev. A 100, 032328 (2019), DOI 10.1103/PhysRevA.100.032328 — doi.org/10.1103/PhysRevA.100.032328
- ISO/IEC "ISO/IEC 4879:2024 Information technology — Quantum computing — Vocabulary" (第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3。ISO の委員会ページで確認) — iso.org/standard/80432.html
- IEEE SA "IEEE P7130 Draft Standard for Quantum Technologies Definitions" (project page) (Active PAR、PAR 承認 2021年9月23日。確認日 2026年10月16日) — standards.ieee.org/ieee/7130/10680/
- IEEE SA "Quantum Benchmarking Working Group P7131" (量子コンピューティングの性能指標の標準化の作業部会のページ。確認日 2026年10月16日) — sagroups.ieee.org/7131
- Proctor T. ほか "Scalable Randomized Benchmarking of Quantum Computers Using Mirror Circuits", Phys. Rev. Lett. 129, 150502 (2022), DOI 10.1103/PhysRevLett.129.150502 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.150502
- Lubinski T. ほか "Application-Oriented Performance Benchmarks for Quantum Computing", IEEE Trans. Quantum Eng. 4, 1–32 (2023), DOI 10.1109/TQE.2023.3253761 — doi.org/10.1109/TQE.2023.3253761
- Blume-Kohout R. ほか "Demonstration of qubit operations below a rigorous fault tolerance threshold with gate set tomography", Nat. Commun. 8, 14485 (2017), DOI 10.1038/ncomms14485 — doi.org/10.1038/ncomms14485
- Hertzberg J. B. ほか "Laser-annealing Josephson junctions for yielding scaled-up superconducting quantum processors", npj Quantum Inf. 7, 129 (2021), DOI 10.1038/s41534-021-00464-5 — doi.org/10.1038/s41534-021-00464-5
- Kreikebaum J. M. ほか "Improving wafer-scale Josephson junction resistance variation in superconducting quantum coherent circuits", Supercond. Sci. Technol. 33, 06LT02 (2020), DOI 10.1088/1361-6668/ab8617 (題名のみ確認。本文は未確認) — doi.org/10.1088/1361-6668/ab8617
- Sung Y. ほか "Realization of High-Fidelity CZ and ZZ-Free iSWAP Gates with a Tunable Coupler", Phys. Rev. X 11, 021058 (2021), DOI 10.1103/PhysRevX.11.021058 — doi.org/10.1103/PhysRevX.11.021058
14. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| 量子ゲートが矢印の回転であり元に戻せること。X・Y・Z・H・S・T、CNOT・CZ・SWAP・Toffoli の定義。回路図の読み方。測定の向きを変えるために H を前に置くこと | 教科書(Nielsen と Chuang)、IBM Quantum Learning、Qiskit のゲート一覧 出典1 https://www.cambridge.org/highereducation/books/quantum-computation-and-quantum-information/01E10196D0A682A6AEFFEA52D53BE9AE 出典14 https://quantum.cloud.ibm.com/learning/en/courses/basics-of-quantum-information 出典15 https://quantum.cloud.ibm.com/docs/en/api/qiskit/circuit_library | 事実 |
| 任意の1量子ビットゲート+CNOT が厳密に万能であること。2量子ビットゲートが万能であること | Barenco ら(1995)、DiVincenzo(1995)の要旨・題名 出典2 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.52.3457 出典17 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.51.1015 | 事実 |
| H・T・CNOT が万能かつ誤り耐性のある組であること。Solovay–Kitaev のアルゴリズムの出力が O(log^3.97(1/ε)) 個のゲートであること | Boykin ら、Dawson と Nielsen の要旨 出典3 https://arxiv.org/abs/quant-ph/9906054 出典4 https://arxiv.org/abs/quant-ph/0505030 | 事実 |
| クリフォード回路(CNOT・H・位相ゲート)が古典コンピュータで効率よく模擬できること(Gottesman–Knill の定理) | Aaronson と Gottesman(2004)、Gottesman(1998)の要旨 出典5 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.70.052328 出典16 https://arxiv.org/abs/quant-ph/9807006 | 事実 |
| Qiskit が、文字列表示でビットの0番を右端に書く(リトルエンディアン)慣習を採ること | Qiskit の公式資料「Bit-ordering in the Qiskit SDK」 出典13 https://quantum.cloud.ibm.com/docs/en/guides/bit-ordering | 事実 |
| 抽象ゲートで書いた回路をコンパイラがネイティブゲートに書き換えること。OpenQASM 3 の仕様と提案 | Qiskit の資料、OpenQASM 3 の仕様、Cross ら(2022)の要旨 出典15 https://quantum.cloud.ibm.com/docs/en/api/qiskit/circuit_library 出典11 https://openqasm.com/versions/3.0/index.html 出典12 https://doi.org/10.1145/3505636 | 事実 |
| 第10章の表の数値:超伝導(XY 回転 25 ns、CZ 42 ns、T1 68 µs、T2,CPMG 89 µs)、CZ 99.76 ± 0.07%、イオン(3.8〜520 µs、99.9934%、99.9%)、中性原子 99.5%、シリコンスピン(100 ns、99.5% 超) | 各論文の本文・要旨・補足(Google Quantum AI、Sung ら、Ballance ら、Evered ら、Xue ら) 出典18 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y 出典32 https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.021058 出典19 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504 出典21 https://doi.org/10.1038/s41586-023-06481-y 出典20 https://doi.org/10.1038/s41586-021-04273-w | 事実 |
| 各方式(超伝導・イオン・中性原子・光・シリコンスピン)の量子ビットとゲートの概要 | 各方式の総説 出典6 https://doi.org/10.1063/1.5089550 出典7 https://doi.org/10.1063/1.5088164 出典8 https://doi.org/10.22331/q-2020-09-21-327 出典9 https://doi.org/10.1063/1.5115814 出典10 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.95.025003 | 事実 |
| 周波数の衝突への対策として、作製後のレーザー調整で周波数の精度がほぼ10倍に改善したこと。接合の抵抗ばらつきを改善する取り組みの題名 | Hertzberg ら(2021)の要旨、Kreikebaum ら(2020)の題名のみ 出典30 https://doi.org/10.1038/s41534-021-00464-5 出典31 https://doi.org/10.1088/1361-6668/ab8617 | 事実 |
| ランダム化ベンチマーキング、ゲートセット・トモグラフィ、量子ボリューム、ミラー回路、アプリケーション指向ベンチマークの提案。RB の「誤り率」がダイヤモンドノルムのしきい値と直接比べられないこと | Magesan ら、Blume-Kohout ら、Cross ら、Proctor ら、Lubinski ら 出典22 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.106.180504 出典29 https://doi.org/10.1038/ncomms14485 出典23 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.100.032328 出典27 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.150502 出典28 https://doi.org/10.1109/TQE.2023.3253761 | 事実 |
| ISO/IEC 4879:2024「Information technology — Quantum computing — Vocabulary」(第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3)の番号・題名・発行年月 | ISO の委員会ページ 出典24 https://www.iso.org/standard/80432.html | 事実 |
| IEEE P7130 が策定中(Active PAR、2021年9月23日承認)であること。IEEE P7131 の作業部会が活動し、発行済みの標準は確認できなかったこと | IEEE SA のページ 出典25 https://standards.ieee.org/ieee/7130/10680/ 出典26 https://sagroups.ieee.org/7131 | 未確定/将来 |
| 行列の確認(S²=Z、T²=S、H·Z·H=X、H·X·H=Z、CZ=(I⊗H)·CNOT·(I⊗H)、SWAP=CNOT3個、Toffoli の真理値表、ベル状態、|+⟩|0⟩ への CNOT)と、成功確率 (1−ε)^N の表 | 本稿の計算(Python・NumPy)。誤りが独立で1回でも誤れば失敗とみなす単純な目安。実在の装置の結果ではない | 本稿の計算 |
| ISO/IEC 4879 の定義の本文、IEEE P7131 の発行状態、中性原子の2量子ビットゲートの時間、Sung らの CZ の時間、方式の違う装置のゲート性能の比較 | 本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 「Z は何もしないは誤り」「ns と µs の差は優劣ではない」「万能は速いという意味ではない」「ゲートの精度の上限は材料が決める」などの読み取りと、たとえ話・その限界 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1〜図11が実データの観察ではなく説明のための作図であること。図1と図11がImageGen生成の概念画像であること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(教科書、査読論文、arXiv の論文、OpenQASM 3 と Qiskit の公式資料、ISO・IEEE の公式ページ)に限定しています。企業・研究室の報告値は、各論文の条件での値として示し、方式の違う装置の優劣は論じていません。 数値例(行列の確認、成功確率の表)は本稿が作った説明用の計算で、実在の装置の結果ではありません。 規格の本文、IEEE P7131 の発行状態、一部の論文のゲート時間や精度の数値については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図11はImageGen生成の概念画像です。


