TECHNOLOGY EXPLAINER
極低温と制御
― なぜ冷やすのか、どう冷やすのか、どう配線して動かすのか
超伝導量子ビットは、絶対零度(0 K)のすぐ近く、およそ0.01 K(10ミリケルビン)で動きます。宇宙空間よりも冷たい世界です。なぜそこまで冷やすのでしょうか。どうやって冷やすのでしょうか。 そして、その極低温の箱の中へ、室温の機械から何百本もの細い線をどう引き込み、熱を入れずに信号を送るのでしょうか。 この記事は、①熱が量子ビットを乱す仕組み、②希釈冷凍機のしくみ、③配線と熱の問題、④制御電子回路を冷やして中に置く試み(cryo-CMOS など)、⑤規模を大きくするときの壁を、身近な例・図・小さな計算で順に説明します。 特に素材技術者の方に向けて、冷凍機・配線・熱伝導・断熱に使われる材料の選び方を、公開データ(NIST の近似式)で計算して示します。
- 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置
- なぜ冷やすのか ― 熱は量子ビットを「揺らす」
- 希釈冷凍機のしくみ ― 5枚の板で、段々に冷やす
- 配線と熱の問題 ― 線1本が「熱の通り道」
- 制御電子回路 ― 室温から極低温へ
- スケールの壁 ― 数千量子ビットの先
- 素材技術者の視点 ― 冷凍機・配線・断熱の材料
- 確認できなかったこと/まとめ
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=企業の計画、目標、将来の見積もりなど、確定していない事項
このほか、読み取りや説明は「解説」として区別しています。推測は太字で示します。
冷凍機の温度・冷却能力・線1本の熱負荷は、Krinner らが2018年に報告した特定の冷凍機(Bluefors XLD400)と特定の線の測定値です[参考資料1]。現在の機種の値ではなく、メーカーの最新の仕様とも限りません。 「本稿の計算」とある線の本数や熱の流れは、条件を決めた単純な試算で、実機の性能ではありません。メーカーや企業の値は「メーカー公称」「企業の主張」として区別し、特定の製品の優劣は論じません。確認日は2026年10月16日です。
1. 3行でつかむ/前提/シリーズの中での位置
- 冷やす理由:超伝導量子ビットのエネルギーは、温度に直すと約0.24 K(5 GHz)にすぎません。室温(300 K)では、熱のエネルギーが量子ビットの約1250倍あり、矢印は熱で絶えず揺れます。そこで、約10〜20 mKまで冷やします。20 mKでは、量子ビットが熱で励起される確率は、5 GHz の場合でおよそ100万分の6です本稿の計算
- 冷やす方法:希釈冷凍機は、温度の違う5枚の板を重ねた構造で、一番下(混合室)で約6〜20 mKを作ります。ただし、そこで取り除ける熱は約19マイクロワット(20 mKで)しかなく[参考資料1]、線1本の熱の流入さえ、数が増えると限界に達します
- 配線と規模:量子ビットを増やすには、線の熱の流入を減らす材料(NbTi、ステンレス)、制御回路を冷やして中に置く工夫(cryo-CMOS など)、冷凍機を複数つなぐ設計が要ります。これらは素材と製造の課題でもあります
量子ビットは「矢印」で表せ、熱や周りの揺らぎで矢印がぶれて状態が崩れること(デコヒーレンス)が分かれば十分です。温度は絶対温度(ケルビン、K)で表します。0 K は−273.15℃で、1 mK は0.001 Kです。 くわしくは本シリーズ「量子コンピュータの基礎」「コヒーレンスとフィデリティ」編で説明します。
「量子誤り訂正と表面符号」「論理量子ビットと耐故障量子計算」で、多数の物理量子ビットが要ることを見ました。この記事は、その多数の量子ビットを実際に冷やし、配線し、動かす土台の話です。量子ビットの材料と製造は「量子コンピュータの材料と製造」編、超伝導量子ビットそのものは「超伝導量子ビット」編で扱います。
2. なぜ冷やすのか ― 熱は量子ビットを「揺らす」
(1) 身近な例:静かな湖面に、小さな波紋を見分ける
湖面に小石を1つ落としたときの、小さな波紋を見分けたいとします。風が強くて湖面がざわついていたら、波紋は見えません。風を止める必要があります。 量子ビットにとって、熱は「風」です。量子ビットの状態は、ごく小さなエネルギーの差で決まっているので、周りの熱の揺れが大きいと、矢印が勝手にぶれてしまいます。
(2) 数で見る:量子ビットのエネルギーは、温度に直すと約0.24 K
超伝導量子ビットの周波数は、典型的に5 GHz、読み出し用の共振器は7 GHz程度です[参考資料1]。量子ビットの2つの状態のエネルギー差は、周波数に比例して hν(h はプランク定数)です。これを温度に直すと、hν/kB ≈ 0.24 K(5 GHz)になります本稿の計算。 一方、室温(約300 K)の熱のエネルギー(kBT)は、これの約1250倍です(300÷0.24)。つまり、室温では、熱が量子ビットのエネルギー差よりずっと大きく、2つの状態はほぼ半々の確率で混ざってしまいます。
量子ビットが熱で励起される確率を、簡単な式で見てみましょう。2つの状態が熱平衡にあるとき、上の状態にいる確率は 1/(1+exp(hν/kBT)) です(本稿の計算。5 GHz とした場合)。
| 温度 | 熱で励起される確率(5 GHz) | 意味 |
|---|---|---|
| 300 K(室温) | 約50% | 2つの状態が半々。計算にならない |
| 2.85 K(4 Kステージ) | 約48% | まだ、ほぼ半々 |
| 100 mK | 約8.3% | 大きく減るが、まだ足りない |
| 50 mK | 約0.8% | 実用的な水準に近づく |
| 35 mK | 約0.1% | ある3D transmon で測られた有効温度(下記) |
| 20 mK | 約6×10−6 | 理想的な熱平衡なら、ほぼ基底状態 |
本稿の計算。量子ビットが冷凍機と同じ温度で熱平衡にあると仮定した値です。実際の量子ビットは、冷凍機より高い「有効温度」になりがちです。
実際の量子ビットでは、冷凍機の温度まで冷えきらないことがあります。Jin らは、冷凍機の温度を変えながら、3D transmon の励起状態の人口を測りました。35〜150 mKでは、冷凍機と熱平衡のマクスウェル・ボルツマン分布に合い、35 mK以下では約0.1%で飽和しました。この量子ビットの有効温度は35 mKと結論しています事実[参考資料3]。 冷凍機の混合室がもっと低い温度でも、量子ビットまで熱を届けているのは、配線から入る熱雑音などだ、と考えられています(本記事による解説)。
(3) 配線からも「熱」は入る ― 熱的な光子
熱は、冷凍機の板だけでなく、配線の中を伝わる電波(熱的な光子)としても入ってきます。室温の線に熱い電波がいて、それが量子ビットまで届くと、矢印をぶれさせます。 6 GHz の熱的な光子の平均数 n は、n=1/(exp(hν/kBT)-1) で、室温では約1040個、4 Kでは約9個、20 mKでは約5.6×10−7です(本稿の計算。式と周波数の取り方は Krinner らによる[参考資料1])。 そこで、線の途中に減衰器を置いて熱的な光子を減らします。室温の線が量子ビットに届いても、光子数を10−3程度にするには、合計約60 dB(100万分の1)の減衰が要る、と Krinner らは説明しています事実[参考資料1]。
dB は、信号の大きさの比を、対数で表す単位です。20 dB=100分の1、60 dB=100万分の1です(電力の比)。20 dB の減衰器は、入ってきた信号の1%だけを通し、残りの99%は熱に変えて捨てます[参考資料1]。 つまり、減衰器は「信号を弱める」と同時に、「その段に熱を出す」部品です。だから、減衰器は、熱を受け取れる各ステージに分けて置きます(第4章)。
(4) 量子コンピュータの方式ごとに、冷やし方は違う
| 方式 | 量子ビットを置く温度の目安 | 確認できたこと |
|---|---|---|
| 超伝導量子ビット | 約0.01〜0.02 K(10〜20 mK) | Krinner らは14 mK で50量子ビットを運転[参考資料1]事実 |
| シリコンのスピン量子ビット | 20 mK のほか、1 K 以上での運転も報告 | 1 Kを超える温度で、2量子ビットの論理ゲートを含む操作[参考資料12]。約1.5 Kで、2つの量子ビットを持つ単位セルを運転(同位体を精製した28Siで、1量子ビットゲートの忠実度98.6%)[参考資料13]。cryo-CMOS の制御チップは3 Kで、20 mKの量子ビットを制御[参考資料5]事実 |
| トラップイオン・中性原子 | 冷凍機ではなく、真空中の原子・イオンをレーザーで冷やす | IonQ は、原子を3次元の空間に閉じ込め、初期化から読み出しまでレーザーを使うと説明[参考資料19]。Quantinuum は、イオンを電磁場で保持し、レーザーで操作すると説明[参考資料20]事実(企業の説明) |
| 光量子コンピュータ | 本稿では、一次情報で温度を確認できなかった | 確認できなかった |
表の整理は本記事の解説です。方式の間で温度の数字を並べて、優劣をつけないでください。
誤りです。極低温の冷凍機が必要なのは、おもに超伝導量子ビットとシリコンスピン量子ビットなどの固体の方式です。トラップイオンと中性原子は、真空の中の原子・イオンをレーザーで冷やします。 また、「冷たいほど良い」とも限りません。冷凍機の冷却能力は、温度が下がるほど急に小さくなります。10 mK 程度の最低温度は、量子ビットの周波数を上げるなどして、不要になる系も増えている、と指摘する研究もあります[参考資料2]。 正しくは、「量子ビットの周波数と、許される誤り率に合わせて、必要な温度を決める」です。
3. 希釈冷凍機のしくみ ― 5枚の板で、段々に冷やす
(1) 身近な例:入れ子になった5つの部屋
外の熱い空気から、奥の部屋を守るために、部屋を5つ入れ子にしたとします。外側の部屋は暖房のそばで、内側へ行くほど、外の熱が届きにくくなります。各部屋に冷房をつけ、外から入る熱を、その部屋で捨てれば、一番奥はとても冷たく保てます。 希釈冷凍機も同じです。温度の違う5枚の板(ステージ)を、細い棒でつないで積み重ね、各段で熱を捨てていきます。
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。希釈冷凍機の5つのステージを、断面の概念図で示したものです。温度と冷却能力は、Krinner らの報告(Bluefors XLD400、空の冷凍機)[参考資料1]の値で、現在の機種の値ではありません。
上の図は、Krinner らが報告した Bluefors XLD400 の、空の冷凍機での温度と、記載の温度での冷却能力です事実[参考資料1]。50 Kと4 Kステージは、パルス管冷凍機(圧縮したヘリウムガスの圧力変化で冷やす機械)が作ります。次のStill、コールドプレート、混合室の3段が、ヘリウム3とヘリウム4の混合液を使う「希釈」の部分で、混合室の約6 mK(空のとき)が最低温度です。
(2) 希釈の原理 ― 溶け込むときに熱を吸う
ヘリウムには、質量の違う2種類(ヘリウム3とヘリウム4)があります。両方を混ぜた液は、約872 mK以下で、ヘリウム3の濃い相と、ヘリウム4の濃い相の2つに分かれます(相分離が始まる点の3Heの濃度は67.3%)[参考資料2]事実。軽い3Heの濃い相が上に浮き、下の相との間に境界ができます。 冷たい混合室では、3Heが濃い相から、下の薄い相へ溶け込みます。このとき、周りから熱を吸い取ります。これが「希釈冷凍」です。希釈冷凍機は、連続して最低約2 mKまで冷やせると報告されています[参考資料2]。
薄い相に溶け込んだ3Heは、Stillという少し温かい部屋に運ばれ、ポンプで気体として吸い出されます。吸い出された3Heは、圧縮、予冷を経て、再び濃い相に戻されます。3Heは閉じた循環で使い回されるので、使うたびに減るわけではありません。 ただし、3Heは希少で高価な同位体です[参考資料2]。大型の冷凍機ほど多くの3Heが要るため、将来の規模拡大でも、重要な制約になりえます(本記事による解説)。
(3) 冷却能力は、とても小さい
混合室(20 mK)の冷却能力は、約19マイクロワットです[参考資料1]。1 W の電球の約5万分の1(1/0.000019≈52,600。本稿の計算)にすぎません。 温度が低いほど、冷却能力は小さくなります。コールドプレート(140 mK)で約200マイクロワット、Still(1.2 K)で約40ミリワット、4 Kステージで約1.5 W、50 Kステージで約30 Wです[参考資料1]。 このため、冷凍機の中に置ける発熱(配線を伝わる熱、減衰器の発熱、アンプ、制御回路)は、各段の冷却能力に収める必要があります。
現在の量子コンピュータ用の冷凍機の多くは、そうではありません。パルス管冷凍機などを使い、液体の冷媒を継ぎ足さない「ドライ」方式(クライオジェンフリー)が一般的です[参考資料2]。希釈ユニットの3He/4Heも、閉じた循環です。 電気(圧縮機)で冷やすので、冷凍機の消費電力と、床や配管、冷却水の設備が、実際の運用の重さになります(本記事による解説)。3Heの初期の仕込みの量は、別の制約です。
1つの冷凍機で、300 Kから10 mKまで一気に冷やすと、効率が悪くなります。段に分けると、熱が入る場所ごとに、その温度で最も効率よく熱を捨てられるようにできます。 たとえば、室温の線から入る熱の大半は、50 Kと4 Kのステージで受け止め、下の段には、ほとんど届かないようにします。図の下ほど冷却能力が小さいのは、下の段に熱を届けない設計が前提だからです。
4. 配線と熱の問題 ― 線1本が「熱の通り道」
(1) 身近な例:冬の家の壁に開けた、小さな穴
暖かい室内と、寒い外を分ける壁に、小さな穴を開けたとします。穴1つなら、入る隙間風は少しです。でも、穴が何百個もあれば、暖房は追いつきません。 極低温の冷凍機でも同じです。室温の機器からの線1本1本が、熱の通り道になります。1本の熱は小さくても、数が増えると、限りある冷却能力を食いつぶします。
(2) 配線の種類と、信号の道
超伝導量子ビットの実験では、おもに3種類の線を使います[参考資料1]事実。
- ドライブ線:量子ビットを操作するマイクロ波を送る線
- フラックス線:周波数可変の量子ビットの周波数を、磁束で調整する電流を送る線
- 出力(読み出し)線:量子ビットの状態を、読み出し共振器の信号として取り出す線
元のSVG・数値・出典を確認する
元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。制御線(下向き)と読み出し線(上向き)が通る、温度の段ごとの部品の並びを示した概念図です。構成は Krinner らの報告[参考資料1]によります。
図は、Krinner らが採用した構成です[参考資料1]。制御線(ドライブ線)には、4 K、コールドプレート、混合室の3か所に20 dBの減衰器を置き、合計60 dBにして、室温の熱的な光子を減らします。 読み出し線には、混合室にTWPA(進行波型ジョセフソンパラメトリック増幅器。量子限界に近い低雑音の増幅器[参考資料14])、4 KにHEMT アンプ(利得約40 dB)を置きます。サンプルの側へ戻る雑音を防ぐため、サーキュレータとアイソレータ(一方向にしか信号を通さない部品)で、合計60 dB以上の遮断をします[参考資料1]事実。 赤外線による「準粒子」(超伝導体中の壊れたペア)の発生を避けるため、吸収材(Eccosorb CR-124)を使った赤外線フィルタを選べるようにしています(混合室の手前で、6 GHz で6 dB の減衰)[参考資料1]。
(3) 受動的な熱:線を伝わって入ってくる熱
線は、金属でできているので、熱もよく伝えます。冷凍機の各段の間で、線1本が運ぶ熱は、「材料の熱伝導率 × 断面積 ÷ 長さ」を、温度の範囲で足し合わせたものです(Krinner らの式(1))[参考資料1]。 そのため、熱伝導率の低い材料(ステンレス、超伝導の NbTi)を使い、細く、長くします。ただし、電気を通しにくい材料は、信号が熱として失われやすい、という裏表の関係があります[参考資料1]。 Krinner らが測った、線1本あたりの熱の流入は、次のとおりです事実[参考資料1]。
| 線の種類 | 50 K | 4 K | Still | コールドプレート | 混合室 |
|---|---|---|---|---|---|
| ドライブ線(ステンレス同軸 UT085 SS-SS) | 45(23) mW | 1.0(2) mW | 4(3) μW | 0.4(2) μW | 0.013(6) μW |
| フラックス線(同上) | 56(27) mW | 1.2(2) mW | 2(1) μW | 0.29(3) μW | 0.025(5) μW |
| 出力線(NbTi同軸 UT085 NbTi) | ― | ― | ― | 0.29(12) μW | 0.020(16) μW |
値は測定値(括弧は不確かさ)。冷凍機は Bluefors XLD400、線の長さは各段の間で140〜290 mm(Krinner らの Table 1・2)[参考資料1]。出力線の NbTi は、4 K 以下で超伝導になる部分の値。
この値と、各段の冷却能力から、「線は何本まで引けるか」を計算してみます。ステージの冷却能力を、線1本の熱の流入で割ると、ドライブ線の数の目安になります(本稿の計算。受動的な熱だけで、減衰器の発熱や他の線は含まない)。
コールドプレート(200 μW ÷ 0.4 μW ≒ 500本)と50 Kステージ(30 W ÷ 45 mW ≒ 670本)が先に限界になります。1量子ビットあたり数本の線が要るので、この冷凍機・この線の組み合わせでは、数百量子ビットが目安です。Krinner らも、「空間の制約を無視すれば、少なくとも150量子ビットを運転できる」と書いています[参考資料1]。
(4) 能動的な熱:減衰器が出す熱
減衰器は、入ってきた信号の大半を熱に変えます(20 dB なら99%)[参考資料1]。量子ビットに届く信号は非常に小さく(30 ns の π パルスで、ピーク -66 dBm)、平均で混合室に -78 dBm 程度が必要です[参考資料1]。それでも、室温では桁違いに大きい信号を送るので、減衰器の位置と量が、熱の配分を決めます。 Krinner らの例では、減衰の配分を {0, 10, 0, 20, 30} dB(50 K、4 K、Still、コールドプレート、混合室の順)にすると、25本のドライブ線の発熱が、コールドプレートの冷却能力の35%を占めました。 コールドプレートの減衰を10 dB減らし、4 Kに10 dB足して {0, 20, 0, 10, 30} dB にすると、コールドプレートの熱は10分の1になります。その代わり、量子ビット側の熱的な光子数は、約0.0012から0.002へ、約2倍弱に増えます[参考資料1]事実。 つまり、減衰器の配置は、「熱」と「雑音」のトレードオフです。
量子ビットが1個増えるごとに、線も数本増えます。線の数が増えれば、熱の流入が増えます。冷却能力は、下の段ほど小さいので、下の段に届く熱を、1本あたりできるだけ小さくする必要があります。 たとえば混合室の冷却能力は19マイクロワットです[参考資料1]。もし1本あたりの熱の流入を10倍にすると、引ける線の数は10分の1になります。熱伝導率の低い材料、細い線、熱を逃がす固定(熱アンカー)が、すべて効いてきます(第7章)。
5. 制御電子回路 ― 室温から極低温へ
(1) 現状:制御の機器は室温に置く
量子ビットを動かす信号は、波形発生器、ミキサー、アンプ、デジタイザなどの電子機器が作ります。現在は、これらを室温のラックに置き、同軸の線で冷凍機へ送るのが主流です。 IBM の研究者は、「従来のラック型の室温の制御電子回路は、配線の密度、コスト、システムの設置面積に、厳しい制約を課し、大規模な耐故障量子計算への障壁になっている」と書いています[参考資料11]事実(2026年のプレプリント)。
(2) 配線を減らす4つの考え方
| 考え方 | 確認できた例と数値 | 課題 |
|---|---|---|
| B 極低温CMOS(cryo-CMOS) | 3 Kで動く制御チップが、20 mKのシリコン量子ビットを、室温の市販機器と同じ忠実度で制御[参考資料5]。100 mKで動く別のチップは、1つの制御セルあたり18 nWの発熱で、1000セルでも市販の希釈冷凍機で冷やせると見積もる[参考資料7]。IBM の2026年のプレプリントは、7〜20 Kで動く cryo-CMOS 回路で、156量子ビットの2量子ビットゲートの磁束制御を行い、ゲート誤りが10−3台(最良の RB 誤り8.4×10−4)、設置面積は約10分の1と報告[参考資料11]事実 | 発熱が冷却能力に収まるか。1量子ビットあたりの許容電力は、4 Kステージの1.5 W÷1000量子ビット=約1.5 mW(本稿の計算)。Underwood の例は、1量子ビット制御と読み出しは室温のままのハイブリッド |
| C 光ファイバー(フォトニックリンク) | 光ファイバーで、変調したレーザー光を極低温の光検出器へ送り、ミリケルビンで量子ノイズ限界のマイクロ波信号を作る。超伝導量子ビットの制御と読み出しを実演[参考資料8]。同軸の線の熱と数は、プロセッサを数千量子ビットに制限する、と同論文は述べる事実 | 光検出器の発熱、光の損失、多数の線への配分 |
| D 超伝導の論理回路(SFQ) | 単一磁束量子(SFQ)という超伝導のデジタル論理を、混合室付近の補助プロセッサとして置く提案[参考資料9]。SFQ 回路と量子ビットを別のチップにして、インジウム(In)のバンプで接合した多チップモジュールで、クリフォードゲート1つあたり1.2(1)%の誤り(準粒子の発生を抑える工夫)[参考資料10]事実 | 回路の発熱で準粒子(壊れたペア)が増え、量子ビットを乱す |
各行の数値は、論文の要旨に記載の値です。方式ごとに、対象の量子ビット(超伝導・シリコン)も異なります。優劣を比べるものではありません。
(3) なぜ「発熱」が最大の問題か
CMOS の回路は、電気を使えば必ず熱を出します。冷凍機の中の温度が下がるほど、取れる熱は小さいので、どの段に置くかが決まります。 Pauka らは、多くの人が「CMOSは消費電力が大きくて、量子ビットを温めてしまう」と考えてきたことを指摘し、100 mKで動くチップの発熱を、1セルあたり18 nWまで下げて見せました[参考資料7]事実。 本稿の計算で、コールドプレートの冷却能力200 μW(140 mKで。第3章)を18 nWで割ると、約1万セルです(回路の静的な電力や配線の熱を含まない上限)。Xue らの3 K のチップは、冷凍機の4 K 付近のステージに置く形です(Krinner らの冷凍機の4 Kステージの冷却能力は約1.5 W[参考資料1]。冷凍機は別)[参考資料5]。
解決する部分と、残る部分があります。冷却した CMOS 回路を置けば、室温から冷凍機へ引く高周波の線は減らせます。でも、回路自体の発熱、デジタル信号の配線、電源線、回路を冷凍機の中でどう冷やして固定するか、という新しい問題が生じます。 IBM のプレプリントも、2量子ビットゲートの磁束制御だけを cryo-CMOS にし、1量子ビットの制御と読み出しは室温の高周波回路のままのハイブリッド構成です[参考資料11]。 正しくは、「線の本数を減らせるが、発熱と実装の別の壁がある」です。
6. スケールの壁 ― 数千量子ビットの先
ここまでの話を、規模の目安にまとめます。次の表は、確認できた冷凍機の例です。メーカー公称や企業の計画は、達成済みの事実ではありません。
| 例 | 冷却能力・線・大きさ | 量子ビット数 | 区分 |
|---|---|---|---|
| Bluefors XLD400(2018年の報告) | コールドプレート 200 μW(140 mK)、混合室 19 μW(20 mK)[参考資料1] | 14 mK で50量子ビットを運転。少なくとも150量子ビットは可能と見積もる | 測定 事実 |
| Bluefors KIDE(メーカー公称) | 3台の希釈ユニット、100 mKで3000 μW超の見込み、9台のパルス管、1.6 m²の底面、荷重500 kg、4000本超のRF線[参考資料15] | 1000量子ビット超を支える設計(メーカーの説明) | メーカー公称 事実 |
| IBM のモジュール型の低温「セル」(2026年8月) | 1セルあたり、配線の面積約0.53 m²、真空室の体積約2.75 m³。2つのセルを結合して運転したと説明。アルミのパネルとフレームで構成[参考資料16] | 将来、1セルで数千量子ビットを支える見込み(計画) | 企業の説明 事実。数千量子ビットは 未確定/将来 |
KIDE の冷却能力は、メーカーのページによれば、KIDE のインサートのフランジで測った値です。各社の数字は条件が違うので、並べて優劣をつけないでください。
KIDE のような大型機でも、線の熱が効いてきます。仮に、Krinner らが測ったステンレス同軸(コールドプレートで1本0.4 μW)と同じ線を4000本引くと、コールドプレートの受動的な熱は1.6 mWです(本稿の計算)。KIDE のページは、100 mKで3 mW超の冷却能力を示しているので、受動的な熱だけで約半分を使う計算になります。ただし、高密度配線の線は、材料や構造が違うので、この計算は、桁を見るための例にとどまります。
規模を拡大する道すじ
- 冷凍機を大きく・複数にする:IBM は、箱形の「セル」を並べて、冷凍機どうしをつなぐモジュール型の設計を示しています。セルを並べると、量子ケーブルを隣のセルへ通し、熱の遮蔽をつないだ「冷たいトンネル」でプロセッサを結べます。「l カプラ」(冷凍機の内部で動く、1メートル規模の接続ケーブル)の試験にも使う、と説明しています[参考資料16]未確定/将来(企業の計画)
- 線を減らす:cryo-CMOS、SFQ、光ファイバー(第5章)
- 熱の少ない線にする:NbTi、細い線、熱アンカー(第7章)
- 放射線・宇宙線への対策:放射線は準粒子を増やし、量子ビットの寿命を制限します。遮蔽でコヒーレンスが伸びることが報告されています[参考資料18]事実。冷凍機の外側の材料や、設置場所も、規模を大きくするときの課題です
- 3Heの確保:3Heは希少で高価です[参考資料2]。大型の冷凍機を増やすと、供給の制約が現れうる、というのが本稿の見立てです(推測。供給量の統計は確認していません)
7. 素材技術者の視点 ― 冷凍機・配線・断熱の材料
極低温の装置は、素材技術者の出番の宝庫です。ここでは、公開されている物性データ(NIST の近似式)で、材料を選ぶと熱の流れがどれだけ変わるかを計算して見ます。
(1) 材料で、熱の通りやすさは5桁違う
熱の流れやすさは熱伝導率 k(単位 W/(m·K))で表します。次の図は、NIST の近似式[参考資料6]で描いた、4〜300 Kの熱伝導率です(本稿の計算)。
図から分かることは、次のとおりです(本稿の計算)。
- 銅(無酸素銅、RRR 100)は、4〜50 Kで熱伝導率が非常に大きく、10 Kで約1540 W/(m·K)と最大になります。Krinner らも、銅は4〜50 Kで「異常に大きな熱伝導率」をもつと書いています[参考資料1]。熱を逃がす部品(熱アンカー、板)に向き、熱を止めたい部品には使えません
- ステンレス304は、4 Kで約0.27、300 Kで約15 W/(m·K)で、銅の1000分の1から数十分の1です。金属としては熱を通しにくく、線の外側の導体や支持の棒に使われます
- G-10、PTFE、ポリイミドは、さらに1桁〜2桁小さく(4 Kで0.01〜0.07 W/(m·K)程度)、支持・絶縁・断熱のスペーサに向きます
同じ形の棒で比べてみます。断面積1 mm²、長さ100 mmの棒を、室温(300 K)から4 Kまでつないだときに流れる熱は、次のとおりです(NIST の近似式を温度で積分。本稿の計算)。
| 材料 | 熱の流れ(300 K→4 K) | 銅に対する比 |
|---|---|---|
| 銅(RRR 100) | 約1.9 W | 1 |
| アルミ合金 6061-T6 | 約0.32 W | 約1/6 |
| ステンレス 304 | 約30 mW | 約1/64 |
| G-10(ガラスエポキシ) | 約1.1 mW | 約1/1700 |
| PTFE(テフロン) | 約0.71 mW | 約1/2700 |
| ポリイミド(Kapton) | 約0.43 mW | 約1/4500 |
本稿の計算。実際には、途中の50 Kステージなどで熱を受け止めるので、4 Kに届く熱はこれより小さくなります。比較のための例です。G-10 は垂直方向(normal direction)の式で、式の適用範囲は10 K以上です。
4 Kステージの冷却能力は約1.5 Wでした[参考資料1]。同じ形の銅の棒を室温から4 Kへ直接つなぐと、それだけで冷却能力を超える計算になります。材料の選び方で、冷凍機が成り立つかどうかが変わることが分かります。
(2) 銅の「RRR」 ― 純度と欠陥が、低温の熱伝導を決める
銅の熱伝導率は、RRR(残留抵抗比)で大きく変わります。RRRは、室温の電気抵抗を、極低温の電気抵抗で割った値で、不純物や結晶の欠陥が少ないほど大きくなります(一般的な定義。本記事による解説)。NIST の近似式で、4 Kの熱伝導率は、RRR 100で約640、RRR 500で約3180 W/(m·K)です(本稿の計算)[参考資料6]。 つまり、同じ「銅」でも、純度と加工・熱処理で、低温の性能が5倍違うことがあります。冷却板や熱アンカーの材料を選ぶとき、材料の等級と履歴が効きます。
(3) どの部位に、どの材料を使うか
| 部位 | 求められること | 確認できた材料・部品 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 同軸線(RF 線) | 電気は通し、熱は通さない | ステンレスの同軸(UT085 SS-SS)。4 K以下では超伝導の NbTi の同軸。CuNi は SS-SS より20〜30%大きい熱負荷。銅の線は熱負荷が大きい[参考資料1]事実 | NbTi は4 K以下で超伝導になるので、室温〜4 Kの区間はステンレスを使う。電気を通しにくい材料は、信号が熱になりやすい[参考資料1] |
| DC 線 | 細く、熱を通さない | 室温〜4 Kは銅またはリン青銅のより対線、4 K〜混合室は NbTi のより対線[参考資料1]事実 | 銅のより対線は、熱負荷が同軸並みに大きい |
| 減衰器・フィルタ | 熱雑音を落とし、熱を逃がす | 各段に20 dBの減衰器。赤外線吸収材 Eccosorb CR-124 を使ったフィルタ[参考資料1]事実 | 減衰器は発熱する(第4章)。熱アンカーの接触が要る |
| 赤外線の遮蔽 | 4 Kの黒体放射を、量子ビットに届かせない | 多段の遮蔽で、素子を放射環境から隔離すると、準粒子密度の寄与を完全に除けると報告[参考資料4]事実 | 赤外線を吸収するフィルタ(Eccosorb CR-124)の設計は Krinner らの Appendix C に記載[参考資料1] |
| 冷却板・熱アンカー | 熱をよく通す | 銅(RRR で性能が変わる)[参考資料6]本稿の計算 | 表面の仕上げと接触の仕方で、接触の熱抵抗が変わる(本稿では数値を確認できなかった) |
| 支持体・スペーサ | 強く、熱を通さない | G-10、PTFE、ポリイミドなど[参考資料6]本稿の計算 | 熱収縮の違いで、冷やすと隙間や応力が生じる(本記事による解説) |
| 冷凍機の筐体(IBM のセル) | 大きく、軽く、加工しやすい | アルミのパネルとフレーム[参考資料16]事実(企業の説明) | アルミは熱伝導率が高い(図参照)。遮蔽の熱の設計が要る |
「本稿の計算」の行は、NIST の近似式による本稿の計算で、「事実」の行は、各資料の記載です。部位の整理は本記事の解説です。
極低温の装置は、1つの装置の中に、熱伝導率が5桁違う材料が同居しています(銅が板と熱アンカー、ステンレス・NbTi が線、G-10・ポリイミドが支持)。材料の選択は、「何をどれだけ冷やすか」という熱の設計と一体です。 さらに、電気の通りやすさと、熱の通りやすさは、金属では連動する(ウィーデマン・フランツ則に近い性質。本記事による解説)ため、「電気は通すが、熱は通さない」線を得るには、超伝導体(NbTi)が特別に有利です。Krinner らも、熱を通しにくい材料は一般に電気も通しにくいが、超伝導体は例外だと述べています[参考資料1]。 ここに、材料の選び方の余地があります。たとえば、4 K以下で超伝導になり、かつ加工しやすく、はんだ付けや接続がしやすい細線の材料は、配線の規模を決める実用的な課題です(推測)。
冷凍機の中に入ってくるのは、熱だけではありません。4 Kの黒体放射(赤外線)は、超伝導体の準粒子を増やし、量子ビットの寿命を縮めます。Barends らは、準粒子密度が約200 μm−3に達し、素子を多段の遮蔽で隔てると、その影響を完全に除けると報告しました[参考資料4]事実。 磁場の揺らぎや、磁束の渦も、散逸の原因です。Krinner らは、フィルタと磁気遮蔽で軽減できると述べています[参考資料1]。 放射線(環境の放射性物質や宇宙線)は、準粒子を増やし、量子ビットのコヒーレンスを制限します。遮蔽を入れると、コヒーレンスが長くなる方向に相関したと報告されています[参考資料18]。 素材の側では、吸収層の材料(赤外線を吸う樹脂とフィラー)、磁気遮蔽の合金、放射線の遮蔽材の選択と、冷凍機の中での固定のしかたが、量子ビットの寿命に直結します。
シリコンのスピン量子ビットを1.5 K で運転した実験は、同位体を精製した28Si(核スピンをもたない同位体)を使い、コヒーレンス時間は2マイクロ秒でした[参考資料13]事実。材料の同位体の純度が、「温かい」量子ビットの鍵の1つです。 SFQ の制御回路と量子ビットを、別のチップに作ってインジウム(In)のバンプで接合した多チップモジュールは、回路の発熱で起きる準粒子の影響を抑え、ゲート誤りを約1桁減らしました[参考資料10]事実。チップの分離、接合材料、熱の通り道が、性能を左右した例です。 また、cryo-CMOS は、シリコンの半導体製造の技術を、そのまま極低温へ持ち込む試みです[参考資料5・11]。半導体プロセスの材料・プロセスが、3 K や20 K で、どう振る舞うかの理解(トランジスタの特性の変化など)が、設計の前提になります(本記事による解説)。
8. 確認できなかったこと/まとめ
確認できなかったこと
- 光量子コンピュータの動作温度:一次情報で数値を確認できなかったため、第2章の表には書いていません。
- 現在の冷凍機の最新の仕様:温度と冷却能力は、2018年の報告(XLD400)の値です。最新機種の値は、メーカーの公式資料での確認が要ります。KIDE はメーカーの公称値です。
- NbTi の熱伝導率の数値:NIST の表にないため、線の熱流入は Krinner らの測定値を使い、材料の曲線は描いていません。
- 熱アンカー・接触の熱抵抗の数値:重要な点ですが、確認できた一次情報の範囲では、数値を示していません。
- 3Heの供給量・価格の統計:「希少で高価」という記述は確認しましたが、供給の数字は確認していません。
- IBM の cryo-CMOS(2026年)と、モジュール型の冷凍機の第三者検証:前者は査読前のプレプリント、後者は企業のブログで、第三者による検証は確認できませんでした。
- 希釈冷凍機の性能を定めた標準:確認できませんでした(温度目盛の標準は第9章)。
- 冷やす理由:5 GHzの量子ビットは温度に直すと約0.24 Kで、室温の熱は約1250倍。熱で励起される確率は、20 mKで約6×10−6、100 mKで約8%です本稿の計算
- 希釈冷凍機:5枚の板で段々に冷やし、混合室でヘリウム3が薄い相に溶け込むときの吸熱で、約6〜20 mKを作ります。20 mKでの冷却能力は約19 μWにすぎません事実
- 配線:線1本が熱の通り道です。ステンレス・NbTi の同軸で、冷凍機のコールドプレートでは約500本が目安になり、減衰器の配置は熱と雑音のトレードオフです事実/本稿の計算
- 制御電子回路:cryo-CMOS(3〜20 K)、光ファイバー、SFQ で、線を減らす試みが進んでいます。ただし、発熱と実装の別の壁があります事実
- 素材技術者へ:熱伝導率は、材料で5桁違います。銅(RRR)、ステンレス、NbTi、ポリマー、吸収・遮蔽材、同位体精製シリコン、接合材料が、規模拡大の鍵を握ります本稿の計算
9. 評価・標準の読み方
極低温と制御の「ものさし」は、到達温度(ベース温度)、その温度での冷却能力、線1本あたりの熱負荷、量子ビットの有効温度(励起状態の人口)、熱的な光子の数です。 どれも、温度や場所(どのステージで測ったか)を添えないと意味が決まりません。冷凍機の性能を定めた規格は、本稿では確認できませんでした。ただし、極低温の温度そのものの目盛には、国際的な標準があります。確認日は2026年10月16日です。
| 評価項目 | 代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典) | 標準・指針(ISO/IEC・BIPM など) | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 到達温度(ベース温度) | 空の冷凍機の混合室:6 mK、運転中:14 mK(Krinner ら)[参考資料1]事実 | PLTS-2000(暫定低温温度目盛):CIPM が2000年10月に採択した、ITS-90 を低温側へ延ばす目盛。3Heの融解圧に基づき、0.902 mK〜1 K(BIPM の実現手引き)[参考資料17]事実 | 「空」か「負荷あり」か、どの温度計で測ったか。温度計の校正は、PLTS-2000 などの目盛に結びつく |
| 冷却能力 | 温度を指定した値。コールドプレート200 μW(140 mK)、混合室19 μW(20 mK)[参考資料1]。KIDE:100 mKで3000 μW超の見込み(メーカー公称)[参考資料15]事実 | 確認できなかった | 測る位置(インサートのフランジなど)と温度を必ず確認。温度が違う値を並べて比べない |
| 線1本あたりの熱負荷 | 各ステージでの受動的な熱流入の測定(ステンレス同軸:混合室 0.013 μW、コールドプレート 0.4 μW など)[参考資料1]事実 | 確認できなかった(材料の物性データは NIST の「Cryogenic Material Properties」。標準ではなく参照データ)[参考資料6] | 線の種類・長さ・熱アンカーの方法で変わる |
| 量子ビットの有効温度 | 励起状態の人口の温度依存の測定。3D transmon:有効温度35 mK、人口約0.1%で飽和(Jin ら)[参考資料3]事実 | 確認できなかった | 冷凍機の温度とは別物。配線の熱雑音や準粒子で上がる |
| 熱的な光子の数 | 線の減衰の設計の指標。6 GHz・20 mKで 6×10−7、室温の線を60 dB減衰で10−3程度(Krinner ら)[参考資料1]事実 | 確認できなかった | 周波数と温度を添える。減衰器が各段の温度で熱雑音を足す点に注意 |
| 用語 | ―(評価ではなく用語の標準) | ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(2024年5月発行。本文は有料)[参考資料21]事実 | 用語の定義を揃える標準。冷凍機の性能の測り方を定めるものではない。本文は未確認 |
| 性能指標・ベンチマークの標準 | ― | IEEE P7131(標準案)の作業グループのサイト[参考資料22]未確定/将来 | 標準案の段階。発行状況は確認できなかった |
表の整理は本稿の計算(整理)。規格の番号・題名・採択年月は、各機関のページで確認しました(確認日 2026年10月16日)。規格本文は有料のため、題名・適用範囲にとどめています。
読み方の注意(素材技術者向け)
- 「冷凍機の最低温度」と「量子ビットの温度」は別です:混合室が6 mKでも、量子ビットの有効温度は35 mKかもしれません。冷却能力は、温度とセットで読みます
- メーカー公称は、測定の位置と条件が違います:KIDE の値は「インサートのフランジで測った」と明記されています。他社・他機種と並べて優劣をつけません
- 企業の発表と、第三者の検証は別です:IBM の cryo-CMOS は査読前のプレプリント、モジュール型の冷凍機は企業のブログです。「企業の主張」として扱いました
- 標準は、温度目盛と用語の段階です:PLTS-2000 は温度の測り方の国際的な目盛で、冷凍機の性能や安全の合否を決めるものではありません。ISO/IEC 4879 は用語の標準で、法的拘束力はありません(一般に、規格は法令や契約で引用されて初めて拘束力を持ちます。本記事による解説)
10. 用語集
- ケルビン(K)
- 絶対温度の単位。0 K=−273.15℃。1 mK=0.001 K。
- 希釈冷凍機
- ヘリウム3とヘリウム4の混合液を使って、ミリケルビンまで冷やす装置。
- パルス管冷凍機
- ヘリウムガスの圧力変化で、50 Kと4 K付近を作る機械。
- ステージ
- 冷凍機の中の、温度の違う板。50 K、4 K、Still、コールドプレート、混合室。
- 混合室
- 最も冷たい部分。3Heが薄い相へ溶け込んで冷やす。
- 3He/4He
- ヘリウムの2つの同位体。3Heは希少で高価。
- 相分離
- 混合液が約872 mK以下で、3Heの濃い相と薄い相に分かれること。
- 冷却能力
- その温度で、取り除ける熱の量(W)。低温ほど小さい。
- 受動的な熱
- 線や支持を伝わって、上の段から流れ込む熱。
- 能動的な熱
- 信号や電子回路が出す熱(減衰器、アンプ、制御回路)。
- 熱的な光子
- 熱で生まれる電波の粒。多いと量子ビットが乱れる。
- 減衰器
- 信号を弱める部品。熱雑音も落とすが、熱を出す。
- dB(デシベル)
- 比の対数。20 dB=100分の1、60 dB=100万分の1。
- HEMT
- 高電子移動度トランジスタ。4 Kで使う低雑音アンプ。
- TWPA
- 進行波型ジョセフソンパラメトリック増幅器。混合室で使う低雑音アンプ。
- サーキュレータ/アイソレータ
- 信号を一方向にだけ通す部品。
- NbTi
- ニオブとチタンの合金。4 K以下で超伝導になり、熱を通しにくい線に使う。
- 熱伝導率
- 材料が熱を通す度合い(W/(m·K))。
- RRR
- 残留抵抗比。銅の純度と欠陥の少なさの目安。大きいほど低温で熱を通す。
- 熱アンカー
- 線や部品を冷却板に熱的に固定して、熱を逃がすこと。
- 準粒子
- 超伝導体で壊れたペア。赤外線や放射線で増え、量子ビットを乱す。
- cryo-CMOS
- 極低温で動かす CMOS 回路。制御を冷凍機の中に置く試み。
- SFQ
- 単一磁束量子。超伝導体でできたデジタル論理。
- PLTS-2000
- 3Heの融解圧に基づく、0.902 mK〜1 Kの暫定的な温度目盛。
11. 参考資料(一次情報)
- Krinner S. ほか "Engineering cryogenic setups for 100-qubit scale superconducting circuit systems", EPJ Quantum Technology 6, 2 (2019), DOI 10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0(arXiv:1806.07862) — doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0
- Kim P. H. ほか "A continuously-cooled 3He/4He phase separation refrigerator", arXiv:2503.10754 (2025)(プレプリント) — arxiv.org/abs/2503.10754
- Jin X. Y. ほか "Thermal and residual excited-state population in a 3D transmon qubit", Phys. Rev. Lett. 114, 240501 (2015), DOI 10.1103/PhysRevLett.114.240501 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.114.240501
- Barends R. ほか "Minimizing quasiparticle generation from stray infrared light in superconducting quantum circuits", Appl. Phys. Lett. 99, 113507 (2011), DOI 10.1063/1.3638063 — doi.org/10.1063/1.3638063
- Xue X. ほか "CMOS-based cryogenic control of silicon quantum circuits", Nature 593, 205–210 (2021), DOI 10.1038/s41586-021-03469-4 — doi.org/10.1038/s41586-021-03469-4
- NIST "Cryogenic Material Properties"(熱伝導率などの近似式。確認日 2026年10月16日) — trc.nist.gov/cryogenics/materials/materialproperties.htm
- Pauka S. J. ほか "A cryogenic CMOS chip for generating control signals for multiple qubits", Nature Electronics 4, 64–70 (2021), DOI 10.1038/s41928-020-00528-y — doi.org/10.1038/s41928-020-00528-y
- Lecocq F. ほか "Control and readout of a superconducting qubit using a photonic link", Nature 591, 575–579 (2021), DOI 10.1038/s41586-021-03268-x — doi.org/10.1038/s41586-021-03268-x
- McDermott R. ほか "Quantum–classical interface based on single flux quantum digital logic", Quantum Sci. Technol. 3, 024004 (2018), DOI 10.1088/2058-9565/aaa3a0 — doi.org/10.1088/2058-9565/aaa3a0
- Liu C.-H. ほか "Single flux quantum-based digital control of superconducting qubits in a multichip module", PRX Quantum 4, 030310 (2023), DOI 10.1103/PRXQuantum.4.030310 — doi.org/10.1103/PRXQuantum.4.030310
- Underwood D. ほか(IBM Quantum) "Transistors to transmons: large-scale cryogenic CMOS control of superconducting qubits", Research Square プレプリント (2026年7月3日)(査読前) — doi.org/10.21203/rs.3.rs-10095152/v1
- Petit L. ほか "Universal quantum logic in hot silicon qubits", Nature 580, 355–359 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2170-7 — doi.org/10.1038/s41586-020-2170-7
- Yang C. H. ほか "Operation of a silicon quantum processor unit cell above one kelvin", Nature 580, 350–354 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2171-6 — doi.org/10.1038/s41586-020-2171-6
- Macklin C. ほか "A near–quantum-limited Josephson traveling-wave parametric amplifier", Science 350, 307–310 (2015), DOI 10.1126/science.aaa8525 — doi.org/10.1126/science.aaa8525
- Bluefors "KIDE Cryogenic Platform"(メーカーの製品ページ。確認日 2026年10月16日) — bluefors.com/products/kide-cryogenic-platform/
- IBM "IBM's new modular architecture for cryogenic systems", IBM Quantum ブログ (2026年8月19日)(企業の説明) — ibm.com/quantum/blog/modular-cryogenics
- BIPM "Supplementary Information for the Realization of the PLTS-2000"(CCT の実現手引き) — bipm.org/…/Guide-PLTS-2000.pdf
- Vepsäläinen A. P. ほか "Impact of ionizing radiation on superconducting qubit coherence", Nature 584, 551–556 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2619-8 — doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8
- IonQ "IonQ roadmap"(公式ページ。確認日 2026年10月16日) — ionq.com/roadmap
- Quantinuum "Technical perspective: By the end of the decade, we will deliver universal, fully fault-tolerant quantum computing", 公式ブログ (2024年9月) — quantinuum.com/blog/technical-perspective…
- ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(2024年5月発行)。セルビア規格協会(ISS)の掲載ページで、番号・題名・発行日・「Published」を確認 — iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432(ISO の公式ページは https://www.iso.org/standard/80432.html。当方の環境では自動取得できず、検索結果の記載で確認)
- IEEE P7131 作業グループ "Quantum Benchmarking Working Group P7131"(量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を扱う作業グループのサイト) — sagroups.ieee.org/7131
12. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| Bluefors XLD400 の各ステージの温度(35 K、2.85 K、0.882 K、82 mK、6 mK)と冷却能力(30 W、1.5 W、40 mW、200 μW、19 μW。それぞれ45 K、4.2 K、1.2 K、140 mK、20 mK で)。14 mK で50量子ビットを運転、少なくとも150量子ビットは可能 | Krinner ら(2019)の Table 1 と本文 出典1 https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0 | 事実 |
| 量子ビット5 GHz・読み出し7 GHz。熱的な光子の式、室温の線に対する約60 dBの減衰で光子数10−3、20 mK・6 GHzで6×10−7。20 dBの減衰器は信号の99%を熱にする | Krinner ら(2019)の第2章 出典1 https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0 | 事実 |
| ドライブ線・フラックス線・出力線の構成(20 dB×3、Eccosorb CR-124フィルタ、TWPA、HEMT 約40 dB、サーキュレータ・アイソレータで60 dB以上)。減衰の配分 C1 と C2 のトレードオフ(コールドプレートの負荷35%→約1/10、光子数0.0012→0.002) | Krinner ら(2019)の第3章 出典1 https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0 | 事実 |
| 線1本の受動的な熱負荷の測定値(ステンレス同軸:50 K 45(23) mW、4 K 1.0(2) mW、Still 4(3) μW、コールドプレート0.4(2) μW、混合室0.013(6) μW。NbTi 出力線:0.29(12) μW、0.020(16) μW)。CuNi は SS-SS より20〜30%大きい。銅は4〜50 Kで大きな熱伝導率 | Krinner ら(2019)の Table 2 と第2章 出典1 https://doi.org/10.1140/epjqt/s40507-019-0072-0 | 事実 |
| 3He/4He の相分離は約872 mK以下(3He 67.3%)、希釈冷凍機は連続して最低約2 mKまで冷やせる、3Heは希少で高価、ドライ(パルス管)方式、ドライ希釈冷凍機の最低温度は約10 mKで、一部の系には過剰 | Kim ら(プレプリント、2025)の序論と第2章 出典2 https://arxiv.org/abs/2503.10754 | 事実 |
| 3D transmon の励起状態人口:35〜150 mKで熱平衡、35 mK以下で約0.1%に飽和、有効温度35 mK | Jin ら(2015)の要旨 出典3 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.114.240501 | 事実 |
| 4 Kの黒体放射による準粒子密度(約200 μm−3)、多段の遮蔽で影響を完全に除けること | Barends ら(2011)の要旨 出典4 https://doi.org/10.1063/1.3638063 | 事実 |
| 3 Kの cryo-CMOS 制御チップが20 mKのシリコン量子ビットを、室温の市販機器と同じ忠実度で制御 | Xue ら(2021)の要旨 出典5 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03469-4 | 事実 |
| 100 mKの CMOS チップ、1セル18 nW、1000セルでも市販の希釈冷凍機で冷やせる見積もり | Pauka ら(2021)の要旨 出典7 https://doi.org/10.1038/s41928-020-00528-y | 事実 |
| IBM の cryo-CMOS(7〜20 K、156量子ビット、誤り10−3台、最良8.4×10−4、設置面積約10分の1、ハイブリッド構成)(企業のプレプリント) | Underwood(2026年7月、査読前)の要旨 出典11 https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-10095152/v1 | 事実 |
| 光ファイバーのフォトニックリンクによる制御・読み出し、同軸の線の熱と数がプロセッサを数千量子ビットに制限するとの記述 | Lecocq ら(2021)の要旨 出典8 https://doi.org/10.1038/s41586-021-03268-x | 事実 |
| SFQ 論理を混合室付近のコプロセッサに置く提案。多チップモジュール(In バンプ)で準粒子の影響を抑え、クリフォードゲートあたり1.2(1)%の誤り | McDermott ら(2018)、Liu ら(2023)の要旨 出典9 https://doi.org/10.1088/2058-9565/aaa3a0 出典10 https://doi.org/10.1103/PRXQuantum.4.030310 | 事実 |
| シリコン量子ドットで、1 Kを超える温度での2量子ビットを含む操作。約1.5 K で、28Si を使い、1量子ビットゲート忠実度98.6%、コヒーレンス時間2マイクロ秒 | Petit ら(2020)、Yang ら(2020)の要旨 出典12 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2170-7 出典13 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2171-6 | 事実 |
| TWPA が、量子限界に近い進行波型ジョセフソンパラメトリック増幅器であること | Macklin ら(2015)の題名 出典14 https://doi.org/10.1126/science.aaa8525 | 事実 |
| Bluefors KIDE:3台の希釈ユニット、100 mKで3000 μW超の見込み、4000本超のRF線、1.6 m²、500 kg、1000量子ビット超(メーカー公称) | Bluefors の製品ページ 出典15 https://bluefors.com/products/kide-cryogenic-platform/ | 事実 |
| IBM のモジュール型の低温セル(配線面積約0.53 m²、真空室約2.75 m³、アルミのパネル、2つのセルの結合運転、将来は1セルで数千量子ビット、l カプラ) | IBM Quantum ブログ(2026年8月19日) 出典16 https://www.ibm.com/quantum/blog/modular-cryogenics | 未確定/将来 |
| PLTS-2000:CIPM が2000年10月に採択、3Heの融解圧、0.902 mK〜1 K | BIPM の実現手引き 出典17 https://www.bipm.org/documents/20126/41773843/Guide-PLTS-2000.pdf/43f543da-0a62-2677-fc38-c8ab70d0539a?version=1.3&t=1593071972719&download=true | 事実 |
| 環境の放射性物質と宇宙線による準粒子の増加、遮蔽でコヒーレンスが伸びる相関 | Vepsäläinen ら(2020)の要旨 出典18 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8 | 事実 |
| IonQ、Quantinuum の、レーザーで原子・イオンを操作するという説明 | 各社の公式資料 出典19 https://www.ionq.com/roadmap 出典20 https://www.quantinuum.com/blog/technical-perspective-by-the-end-of-the-decade-we-will-deliver-universal-fault-tolerant-quantum-computing | 事実 |
| 材料の熱伝導率の近似式(銅 RRR 50〜500、アルミ6061-T6、ステンレス304、G-10、PTFE、ポリイミド)。近似の範囲は4〜300 K(G-10は10 K以上) | NIST の Cryogenic Material Properties 出典6 https://trc.nist.gov/cryogenics/materials/materialproperties.htm | 事実 |
| ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary" が2024年5月に発行(Published)されたこと | セルビア規格協会(ISS)の掲載ページ 出典21 https://iss.rs/en/project/show/iso:proj:80432 | 事実 |
| IEEE P7131 の作業グループが、量子コンピューティングの性能指標とベンチマークの標準案を技術範囲としていること。発行状況は確認できなかった | 作業グループのサイト 出典22 https://sagroups.ieee.org/7131 | 未確定/将来 |
| hν/kB=約0.24 K(5 GHz)、熱励起確率の表(300 K で約50%、20 mK で約6×10−6)、熱的な光子数(室温約1040、4 K 約9.4、82 mK 約0.03、20 mK 約5.6×10−7)、19 μW は1 W の約5万分の1、線の本数の目安(コールドプレート約500、50 K 約670、4 K 約1500、混合室約1460、Still 約1万)、コールドプレートの200 μW÷18 nW=約1万セル、4 K の1.5 W÷1000=約1.5 mW、4000本×0.4 μW=1.6 mW、棒の熱の流れ(銅1.9 W、アルミ0.32 W、ステンレス30 mW、G-10 1.1 mW、PTFE 0.71 mW、ポリイミド0.43 mW)と銅の比、RRR 100・500 の4 K の熱伝導率(約640・3180 W/(m·K)) | 本稿の計算(Python。NIST の近似式、Krinner らの値と式を使用。仮定は本文に明記)。実機の結果ではない | 本稿の計算 |
| 光量子方式の動作温度、現在の冷凍機の最新の仕様、NbTi の熱伝導率の数値、熱アンカー・接触の熱抵抗の数値、3Heの供給の統計、cryo-CMOS とモジュール型冷凍機の第三者検証、冷凍機の性能を定めた標準、ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況 | 本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 「湖面の波紋」「壁の穴」「入れ子の5つの部屋」というたとえ、「銅の等級で低温の性能が変わる」「電気を通しにくい材料は信号が熱になる」「超伝導の線の材料が規模を決める」「半導体プロセスの材料が極低温でどう振る舞うかの理解が要る」という読み取り | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1と図6がImageGen生成の概念画像であること。他の図が実データの観察ではなく説明のための作図であること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(査読論文、arXiv の論文、NIST・BIPM の公式ページ、冷凍機メーカー・IBM・IonQ・Quantinuum の公式資料、ISO 規格の掲載ページ)に限定しています。メーカー公称・企業の説明・計画は区別しました。 温度・冷却能力の多くは、2018年に報告された特定の冷凍機の値で、現在の機種の値ではありません。数値の試算は本稿の計算で、実機の結果ではありません。 光量子方式の動作温度、最新の冷凍機の仕様、NbTi の熱伝導率の数値、熱アンカーの熱抵抗、3Heの供給の統計、cryo-CMOS とモジュール型冷凍機の第三者検証、冷凍機の性能を定めた標準、ISO/IEC 4879 の本文、IEEE P7131 の発行状況については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図6はImageGen生成の概念画像です。



