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コヒーレンスとフィデリティ 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

コヒーレンスとフィデリティ
― 量子ビットの「ものさし」の読み方:T1・T2、誤り率、ランダム化ベンチマーキング

量子コンピュータの装置の発表には、「T1が○○マイクロ秒」「2量子ビットゲートの忠実度99.9%」といった数字が並びます。ところが、これらの数字は何を測り、何を測っていないのかを知らないと、正しく読めません。 この記事は、量子力学を知らない人にも読めるように、デコヒーレンスとは何か、T1 と T2 の意味、忠実度と誤り率の関係、ランダム化ベンチマーキング(RB)の仕組みを、図と小さな計算で順に説明します。 後半では、方式の違う装置の数字を並べて優劣をつけてはいけない理由と、素材技術者から見た「寿命を縮める材料の原因」を扱います。「量子コンピュータの基礎」「量子ゲートと量子回路」編の次に読む記事です。

構成:レビュー論文(Krantz ら)、査読論文(Nature、Science、Physical Review など)、arXiv の論文、ISO/IEC・IEEE の公式ページを使用/数値例は本稿で計算/確認日 2026年10月16日

量子ビットの寿命(減衰の曲線)を測って記録する場面のイメージです。実際の装置・測定結果を示すものではありません。
図1 概念画像(ImageGen生成)。量子ビットの寿命(減衰の曲線)を測って記録する場面のイメージです。実際の装置・測定結果を示すものではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
この記事の構成
  1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置
  2. ものさしの全体像:何を測る4つの指標があるか
  3. デコヒーレンスとは何か
  4. T1:エネルギー緩和時間
  5. T2:位相の保持時間(T2*・T2E・CPMG の違い)
  6. 時間と誤り:ゲートに時間がかかるほど、寿命による誤りが増える
  7. 忠実度と誤り率:「99.9%」の読み方
  8. 報告された値の例と、読み方の注意
  9. ランダム化ベンチマーキング(RB)と、その限界
  10. 素材技術者の視点:寿命を縮める材料の原因
  11. 評価・標準の読み方
  12. 用語集
  13. 参考資料(一次情報)
  14. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出・確認した値
未確定/将来=策定中の標準、企業の計画など、確定していない事項
このほか、素材分野への読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。たとえ話には、必ず「たとえの限界」を書きます。

この記事の数値の読み方

第3〜7章と第9章の曲線・表・模擬データは、本稿が計算した説明用の値(乱数の種を固定)で、実在の装置の測定結果ではありません。第5章・第8章の報告値は、各論文が個別の条件で報告した値で、方式の違う装置の優劣を示すものではありません。 規格(ISO/IEC・IEEE)は題名・適用範囲・状態の確認にとどめ、本文は確認していません。この分野は変化が速いため、標準の状態には確認日(2026年10月16日)を付けています。

1. 3行でわかる/読む前に知っておくこと/シリーズの中での位置

  • 寿命のものさし(T1・T2):T1 は、量子ビットがエネルギーを失って「1」から「0」へ落ちるまでの時間、T2 は、矢印の向き(位相)がそろっていられる時間です。T2 は2×T1 を超えられません。T2 は測り方(T2*・T2E・CPMG)で値が変わるので、種類を確認します事実[参考資料1]
  • 正確さのものさし(忠実度・誤り率):1回の操作が理想にどれだけ近いかを表します。「99.9%」は「1000回に1回の誤り」の目安です。ただし何の操作か、どう測ったか、平均か最良かを確認しないと読めません事実[参考資料2・3]
  • ものさしは、装置の方式ごとに条件が違います:超伝導の「マイクロ秒」とイオンの「分」、シリコンの「秒」を並べて優劣をつけることはできません。ゲートの誤りは、ゲートの時間と寿命の比でおおよその下限が決まります本稿の計算
この記事を読む前に知っておくこと

「量子コンピュータの基礎」編の矢印のたとえ(北極が0、南極が1、斜めが重ね合わせ)と干渉(波の足し算)、「量子ゲートと量子回路」編のゲート(矢印を回す操作)を使います。読んでいなくても分かるよう、必要な部分は短く説明し直します。式は最小限で、難しい話は「もっと詳しく」の折りたたみに入れています。

シリーズの中での位置

この記事は、「量子ゲートと量子回路」編の次に読む記事です。続いて「量子アルゴリズム」編に進むと、「ゲートを何回まで連続できるか」が、アルゴリズムにとってなぜ重要かが分かります。方式ごとの話、量子誤り訂正、極低温と制御は、本シリーズの各編で詳しく扱います。

2. ものさしの全体像:何を測る4つの指標があるか

量子コンピュータの装置の「質」を測るものさしは、1つではありません。大きく4つに分けて考えると整理しやすくなります。

量子ビットの「質」を測る4つのものさし ① 寿命 T1・T2(コヒーレンス時間) 矢印がぶれずにいられる時間 測り方:待ち時間を変えて測る 分からない:ゲート中の誤り ② 操作の正確さ 忠実度・誤り率 1回の操作が理想にどれだけ近いか 測り方:ランダム化ベンチマーキングなど 分からない:すべての種類の誤り ③ 準備と読み出し SPAM 誤り・読み出し誤り 0/1 を正しく読めるか 測り方:既知の状態を測る ゲートの誤りとは別 ④ 回路全体 量子ボリュームなど 長い回路を動かせるか 測り方:ランダムな回路を実行 分からない:用途ごとの優劣 つなぐ関係:ゲートの誤りの下限は、おおよそ「ゲートの時間 ÷ コヒーレンス時間」で決まる だから、②の数字は①と一緒に読みます(第6章)。③は、ゲートとは別に測り、④は全部を合わせた結果です。 ※ 「何を測り、何を測っていないか」を、ものさしごとに押さえておくことが、数字を読む第一歩です。 ※ 方式の違う装置の数字を並べて優劣をつけてはいけません(第8章・第9章)。
図2 概念図(ベクター作図)。量子ビットの質を測る4つのものさしの整理(概念図)。それぞれが測るもの・測らないものを示します。整理は本記事の解説で、規格や特定の文献の分類ではありません。

この記事は、主に①(寿命)と②(操作の正確さ)を扱います。③と④は、後の章と「評価・標準の読み方」で触れます。大切なのは、それぞれのものさしが「何を測っていないか」を知っておくことです。たとえば、寿命が長くても(①)、ゲートの制御が不正確なら、操作の正確さ(②)は低くなります。逆に、②の数字が良くても、準備と読み出しの誤り(③)が大きければ、計算結果は誤ります。

つまずきやすいところ:なぜ、1つの数字で「性能」を言えないのか

自動車に例えるなら、「最高速度」だけでは、車の良し悪しは分かりません(燃費、ブレーキ、乗り心地も必要)。同じように、量子コンピュータも、「量子ビットの数」や「T1」だけでは、使えるかどうかが分かりません。たとえの限界:自動車の性能は、ほぼ独立に測れますが、量子ビットの寿命・ゲートの誤り・読み出しの誤りは、お互いに関係します(第6章)(本記事による解説)。

3. デコヒーレンスとは何か

「量子コンピュータの基礎」編で見たとおり、量子ビットの矢印は、干渉のために、向き(位相)まで正しくそろっていることが大切です。ところが、現実の量子ビットは、周りの環境(熱、電磁場のゆらぎ、材料の中の欠陥、まわりの原子核など)から、少しずつ影響を受けます。その結果、矢印が崩れていくことをデコヒーレンスといいます。

崩れ方には、大きく2つあります。

デコヒーレンス=矢印が環境の影響で崩れること(T1 と T2) T1:エネルギーを失って、北へ落ちる |0⟩ |1⟩ x y t = 2·T1 点線(灰):t = 0(南向き=1) 点線(茶):t = T1 → 北向き成分 0.26 たとえ:回っているこまが、摩擦で傾きを失い、 倒れてしまう。最後は必ず北(エネルギーの低い向き) たとえの限界:実際は、量子ビットの確率が指数的に減る T2:向き(位相)がそろわなくなる |0⟩ |1⟩ x y 平均の矢印(短い) 灰:t = 0 の矢印。緑の細い点線:ずれた矢印たち たとえ:同じ速さの時計を何個も持って出発したが、 わずかに速さが違い、針がばらばらになる 平均の針(青)が短くなる=位相の情報が失われる たとえの限界:1個の量子ビットも、ゆらぎで同様に乱される ※ 完全に孤立した量子ビットは作れません(操作や読み出しのために、外とつなぐ必要があるため)。
図3 概念図(ベクター作図)。デコヒーレンスの2つの姿(T1:エネルギーの緩和、T2:位相のそろいの喪失)の概念図。T1 の曲線は 1 − 2e⁻ᵗ/T1 に従う本稿の作図で、実在の装置のデータではありません。
  • T1(エネルギーの緩和):量子ビットが「1」(エネルギーの高い状態)から、エネルギーを失って「0」(低い状態)へ落ちる。矢印が南から北へ傾いていく
  • T2(位相の緩和):矢印の傾きは変わらなくても、北極まわりの向き(位相)がそろわなくなる。赤道上の矢印が、ばらばらの方向を向き、平均の矢印が短くなる

この2つは、それぞれ別の時間(T1 と T2)で測られます。レビュー論文は、緩和を縦方向の緩和率(Γ1 = 1/T1)と横方向の緩和率(Γ2 = 1/T2)の2つで特徴づけ、横方向のほうに「純粋な位相の乱れ」の寄与が加わる、と説明しています事実[参考資料1]。

よくある誤解:「デコヒーレンスは、観測者が見たから起きる」は誤り

「量子の状態は、見られると崩れる」と言われますが、デコヒーレンスは、人が見ていなくても、周りの環境とのやりとりで起きます。測定(第4章の「測ると決まる」)は、人や装置が意図して状態を読み出す操作で、デコヒーレンスは、意図せず環境に状態の情報が漏れていく現象です。どちらも、矢印が元に戻らなくなる点は似ていますが、別のものです(本記事による解説)。

つまずきやすいところ:外界から完全に隔離すれば、デコヒーレンスはなくなる?

理屈では、環境から完全に孤立した量子ビットは崩れません。しかし、実際には、ゲートで操作し、結果を読み出すために、外とつなぐ必要があります。つなぎ口を作れば、そこから雑音も入ります。「孤立」と「操作・読み出し」のあいだの両立が、設計の難しいところです(本記事による解説。『極低温と制御』編)。

4. T1:エネルギー緩和時間

T1 は、量子ビットが「1」から「0」へ落ちていく速さを表す時間です。測り方は単純です。量子ビットを「1」にして、時間 τ だけ待ち、測ります。τ をいろいろ変えて、それぞれ何度もくり返し、「1のまま」の割合を調べます。この割合は、指数関数的に減ります。

T1 の測り方:南向き(1)にして、待ってから測る 手順(待ち時間 τ を変えてくり返す) π 1にする 待ち時間 τ 測定 τ ごとに、1000回ほどくり返して 「1のまま」の割合を調べる π=180°回すゲート(X ゲートに当たる) 「1のまま」の割合は指数的に減る 0% 50% 100% 0 1 2 3 4 5 待ち時間 τ(T1 の何倍か) τ = 1·T1:37% τ = 2·T1:14% τ = 3·T1:5% T1 = 「1のまま」の割合が 1/e ≒ 37% に減るまでの時間。 例:レビュー論文に載っている測定例では、あるトランズモン量子ビットの T1 は 85 µs でした[参考資料1]。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。T1 の測り方と、指数関数的な減衰の概念図。曲線は e⁻ᵗ/T1 を描いた本稿の作図で、特定の装置の測定データではありません。37%・14%・5% は本稿の計算(e⁻¹、e⁻²、e⁻³)です。

「1のまま」の割合が 1/e(約37%)になる時間が T1 です。待ち時間が T1 の2倍で約14%、3倍で約5%まで下がります本稿の計算(e−1 = 0.368、e−2 = 0.135、e−3 = 0.050)。レビュー論文には、あるトランズモン量子ビットの測定例として、T1 = 85 µs が示されています事実[参考資料1]。

待ち時間 τT1 に対する比「1のまま」の割合
0.1·T10.190.5%
0.5·T10.560.7%
1·T1136.8%
2·T1213.5%
5·T150.7%

本稿の計算。指数関数 e−τ/T1 を計算しました。

つまずきやすいところ:T1 が100 µs とは、100 µs 後に必ず崩れる、という意味ではない

T1 は「平均的な寿命」ではなく、割合が 1/e に減る時間です。T1 = 100 µs の量子ビットでも、10 µs で約10%は崩れ、100 µs でも約37%は残っています。個々の量子ビットは、いつ崩れるか分からない(確率的)という意味でも、「寿命」はたとえです(本記事による解説)。

5. T2:位相の保持時間(T2*・T2E・CPMG の違い)

T2 は、矢印の向き(位相)がそろっていられる時間です。位相は、1回の測定では見えないので、少し工夫して測ります。代表的な3つの測り方があり、それぞれ、測れる「ゆらぎ」の種類が違うため、値も変わります。

T2:位相が保たれる時間。測り方で値が変わる ラムゼー(T2*) 静的なゆらぎも含めて測る ハーンエコー(T2E) 途中に π を入れ、遅いゆらぎを打ち消す CPMG・動的デカップリング π を何個も入れ、さらに長くなる π/2 π/2 τ π/2 π π/2 τ/2 τ/2 π/2 π π π π/2 π をくり返す 「ずれ」を測る エコーで巻き戻す 測り方の条件で変わる 1個のトランズモン量子ビットの測定例(レビュー論文の図の値。1つの例にすぎない) T1(エネルギー緩和) 85 µs T2*(ラムゼー) 95 µs T2E(エコー) 120 µs 2×T1(T2 の上限) 170 µs 関係:1/T2 = 1/(2·T1) + 1/Tφ(Tφ は位相だけが乱れる時間)。そのため、T2 は 2·T1 を超えられません[参考資料1]。 ※ T2 と書いてあっても、T2* か T2E か CPMG かで値が変わります。種類を確認しないと比べられません。
図5 概念図(ベクター作図)。T2 の3つの測り方(ラムゼー、ハーンエコー、CPMG)のパルス列と、トランズモン量子ビット1個の測定例。数値はレビュー論文[参考資料1]の図5の例で、パルス列は概念図です。
名前手順測っているもの値の傾向
T2*(ラムゼー)π/2 パルス → 待つ → π/2 パルス → 測るゆっくりした(静的な)ゆらぎも含めた、位相のずれ最も短くなりやすい
T2E(ハーンエコー)π/2 → τ/2 待つ → π(反転)→ τ/2 待つ → π/2 → 測る遅いゆらぎは、途中の反転で打ち消される。速いゆらぎが残るT2* より長くなる
CPMG・動的デカップリングπ パルスを何個も入れるさらに多くの遅いゆらぎを打ち消す(打ち消せるゆらぎの範囲が測り方で決まる)さらに長くなる

各手順の説明は、レビュー論文[参考資料1]の説明にもとづきます事実。値の傾向(T2* < T2E < CPMG)は、遅いゆらぎを打ち消す効果から一般に言われる傾向で、個々の装置では必ずしもこの順にはなりません(本記事による解説)。

レビュー論文の測定例(あるトランズモン量子ビット1個)では、T1 = 85 µs、ラムゼーで測った T2* = 95 µs、ハーンエコーで測った T2E = 120 µs でした。T1 から決まる上限(2×T1 = 170 µs)には届いていません事実[参考資料1]。

T1 と T2 の関係:T2 は 2×T1 を超えられない

位相の緩和には、エネルギーの緩和(T1)による寄与が必ず含まれます。そのため、1/T2 = 1/(2·T1) + 1/Tφ の関係があります(Tφ は、位相だけが乱れる時間)。Tφ が無限に長くても、T2 = 2·T1 までです事実[参考資料1]。

T1Tφ(位相だけの乱れ)T2(計算値)読み方
100 µs無限(乱れなし)200 µsT2 の最大値(2×T1)
100 µs200 µs100 µs位相の乱れの分だけ短くなる
100 µs100 µs67 µs位相の乱れが大きいと、T1 より短くなる

本稿の計算。1/T2 = 1/(2·T1) + 1/Tφ を、説明用の値(T1 = 100 µs)で計算しました。実在の装置の値ではありません。実際の装置では、位相の乱れが、指数関数でなく別の形で減る場合もあり、この式は指数関数的な減衰を仮定します[参考資料1]。

よくある誤解:「T2 が長ければ、量子ビットは良い」は誤り

T2 は、測り方(T2*、T2E、CPMG)で値が大きく変わるので、種類が書かれていない T2 は、比べられません。また、動的デカップリング(π パルスをくり返す)を使った値は、「待機中の量子ビットを守る」ための値で、ゲートの最中の値ではありません。ゲートに使う量子ビットの質を知りたいなら、ゲートの誤り率(第7・9章)も確認する必要があります(本記事による解説)。

6. 時間と誤り:ゲートに時間がかかるほど、寿命による誤りが増える

寿命(T1・T2)が長いことの意味は、ゲートの時間と比べて初めて分かります。ゲートの最中にも、量子ビットは寿命に従って崩れていくからです。ゲートに t の時間がかかるとき、寿命だけで決まる誤り(下限の目安)は、おおよそ次の式で表せます。

式と、その意味

ε ≈ t/(3·T2) + t/(6·T1)(ゲートの時間 t が、T1・T2 より十分短いとき)。意味:「ゲートの時間が、寿命のどれだけの割合か」に、1/3 や 1/6 の係数をかけたものが、寿命による誤りです。T1 = T2 = 100 µs で、ゲートが 25 ns(寿命の 1/4000)なら、ε ≈ 1.3×10−4 です本稿の計算。

ゲートに時間がかかるほど、寿命による誤りが増える(本稿の計算) 10⁻⁵ 10⁻⁴ 10⁻³ 10⁻² 10⁻¹ 1 10 ns 100 ns 1 µs 10 µs 100 µs ゲートの時間 t 寿命による誤り ε(下限の目安) 誤り 1% 誤り 0.1% T1 = T2 = 100 µs T1 = 100 µs, T2 = 200 µs T1 = T2 = 1 ms 例:T1 = T2 = 100 µs のとき、ゲートが 25 ns なら ε ≈ 1.3×10⁻⁴、1 µs なら 5.0×10⁻³、10 µs なら 4.8×10⁻²。 ※ 式:ε = 1 − (3 + 2e^(−t/T2) + e^(−t/T1)) / 6 ≈ t/(3·T2) + t/(6·T1)。待機(何もしない)1回の平均誤りで、制御の誤りは含みません。 ※ 実際のゲートの誤りは、制御の不完全さ・漏れ・クロストークなども加わるので、ここより大きくなります。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。ゲート時間と、寿命(T1・T2)だけで決まる誤りの下限の目安(本稿の計算)。式は、振幅減衰と位相緩和を受ける量子ビットの平均ゲート忠実度(Nielsen の関係式[参考資料2]を使用)を、本稿が数値で確認したものです。特定の装置の値ではありません。
寿命(説明用の値)ゲート 25 nsゲート 100 nsゲート 1 µsゲート 10 µs
T1 = T2 = 100 µs1.3×10−45.0×10−45.0×10−34.8×10−2
T1 = 100 µs、T2 = 200 µs(T2 の最大)8.3×10−53.3×10−43.3×10−33.2×10−2
T1 = T2 = 1 ms1.3×10−55.0×10−55.0×10−45.0×10−3

本稿の計算。式 ε = 1 − (3 + 2e−t/T2 + e−t/T1)/6 を計算しました。これは、振幅減衰(T1)と位相緩和(T2)を受ける量子ビットが時間 t 待ったときの平均ゲート忠実度で、1量子ビットの平均ゲート忠実度とプロセス忠実度の関係式(Nielsen、2002)[参考資料2]を使い、数値シミュレーションで確認しました。制御の誤差、状態の漏れ、クロストークは含みません。実際の誤りは、これより大きくなります。

つまずきやすいところ:「寿命が長い」と「ゲートが速い」は、別の努力

誤りを減らすには、寿命を伸ばす(材料・環境の改善)か、ゲートを速くする(制御の改善)のどちらかです。上の表のとおり、寿命が10倍になれば、同じゲートの誤りは10分の1になります。逆に、ゲートを速くしすぎると、制御の誤りや、近くの状態への漏れが増えます。イオンの実験では、2量子ビットゲートの時間を 3.8 µs から 520 µs まで変えて、速さと忠実度の関係を調べた報告があります事実[参考資料4](本記事による解説)。

「T1 の限界に近い」とは:寿命が、ゲートの精度の天井になる

Sung らは、超伝導量子ビットの CZ ゲートと iSWAP ゲートの忠実度(99.76 ± 0.07%、99.87 ± 0.23%)が、T1 の限界に近いと述べています事実[参考資料5]。上の式でいえば、「ε がほとんど t/(3·T2) + t/(6·T1) だけで決まっている」状態です。こうなると、制御をどれだけ磨いても、それ以上は寿命(つまり材料)が決めることになります。

7. 忠実度と誤り率:「99.9%」の読み方

忠実度(フィデリティ、F)は、実際にできたものが、理想にどれだけ近いかを表す、0から1の数(%で書くことも多い)です。1に近いほど良く、誤り率 ε = 1 − F です。忠実度99.9%は、誤り率0.1%(1000回に1回)の目安になります。

忠実度 F と誤り率 ε(= 1 − F):「何回に1回、誤るか」 忠実度 F 誤り率 ε だいたい… 99% 1×10⁻² 100回に1回 99.9% 1×10⁻³ 1,000回に1回 99.99% 1×10⁻⁴ 10,000回に1回 99.999% 1×10⁻⁵ 10万回に1回 棒の長さ=「何回に1回」の桁(目安) 「忠実度」は3種類ある 状態忠実度 できた状態が目標の状態にどれだけ近いか プロセス忠実度 操作全体が理想の操作にどれだけ近いか 平均ゲート忠実度 あらゆる入力状態で平均した忠実度(RB はこれ) F平均 = (d·Fプロセス + 1) ÷ (d + 1) 1量子ビット(d=2):F_プロセス 0.9985 → F_平均 0.9990 「忠実度 99.9%」と聞いたら、次の4点を確認する ① 何の操作か(1量子ビットゲート/2量子ビットゲート/読み出し/待機) ② 何量子ビットの値か ③ 平均か、最良か(最悪の値か) ④ どう測ったか(ランダム化ベンチマーキング、トモグラフィ、状態の測定など)
図7 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。忠実度と誤り率の関係(本稿の計算)と、3種類の忠実度。平均ゲート忠実度とプロセス忠実度の関係式は Nielsen(2002)[参考資料2]によります。右の数値例は本稿の計算です。

「忠実度」には、少なくとも3種類があります。状態忠実度(できた状態が目標の状態にどれだけ近いか)、プロセス忠実度(操作全体が理想の操作にどれだけ近いか)、平均ゲート忠実度(あらゆる入力状態で平均した忠実度)です。Nielsen は、d 次元の系での平均ゲート忠実度とプロセス忠実度の関係を、簡単な式(F平均 = (d·Fプロセス + 1)/(d + 1))で示しました事実[参考資料2]。1量子ビット(d = 2)で Fプロセス = 0.9985 なら、F平均 = (2×0.9985 + 1)/3 = 0.9990 です本稿の計算。

よくある誤解:「忠実度99.9%どうしは、同じ品質」は誤り

同じ「99.9%」でも、何の操作の値か(1量子ビットゲートは2量子ビットゲートより良い値が出やすい)、何量子ビットの値か(量子ビットが増えると悪化しやすい)、平均か最良か最悪か、どう測ったか(RB、トモグラフィ、状態の測定)で、意味が違います。第9章で見るとおり、平均ゲート忠実度は、誤り耐性のしきい値と直接比べられません事実[参考資料6・7]。

この計算が教えること:誤り率の「桁」が、使える回路の長さを決める

「量子ゲートと量子回路」編で見たとおり、1回あたりの誤り率が ε なら、約 1/ε 回のゲートで、回路全体の成功確率は約37%まで下がります。誤り率が 10−2 なら約100回、10−3 なら約1000回、10−4 なら約1万回です本稿の計算。1桁の改善は、使える回路の長さの1桁の改善です。

8. 報告された値の例と、読み方の注意

ここでは、論文で報告された値の例を、測定条件とともに示します。どれも、方式・用途・条件が違う個別の報告で、方式の優劣を示すものではありません。

これまでに報告された「長い時間」の例(対数目盛。条件が違うので比べない) 1 µs 10 µs 100 µs 1 ms 10 ms 100 ms 1 s 10 s 100 s 1000 s 10⁴ s 超伝導:Google 105量子ビット機の平均 誤り訂正実験機の平均 T1 68 µs・T2(CPMG) 89 µs 超伝導:タンタル膜(Place ら 2021) 寿命と動的デカップリング付き 0.3 ms 超 超伝導:Ta/高抵抗Si(Bland ら 2025) 最良の1個の量子ビット T1 最大 1.68 ms ダイヤモンド NV:室温(2009) 13C 0.3% に低減した結晶 T2 1.8 ms ダイヤモンド NV:単一スピン(2018) 周囲の核スピンに合わせたデカップリング 1 s 超 28Si 中のドナー電子スピン(2012) 多数のスピン(アンサンブル) T2 最大 2 s 28Si 中の 31P 核スピン(2014) 単一量子ビット、CPMG 30 s 超 イオン 171Yb+(2017) 単一量子ビット、動的デカップリング 10 分超 28Si 中のイオン化ドナー核スピン(2013) 多数のスピン(アンサンブル) 39 分(室温) 青=T1または寿命、灰=T2(CPMG)、茶=ダイヤモンド NV、緑=シリコン中のスピン、紫=イオン。 ※ 測定条件(単一かアンサンブルか、動的デカップリングの有無、温度、ゲート用かメモリ用か)が違います。方式の優劣を示す図ではありません。 ※ 出典:参考資料8・9・10・11・12・13・14・15・16
図8 概念図(ベクター作図)。これまでに論文で報告された長いコヒーレンス時間の例(対数目盛)。測定条件が大きく違い、ゲートに使える量子ビットの値ではないものも含みます。特に長い値は、多数のスピンの平均(アンサンブル)や、動的デカップリングを使ったメモリ用途のものです。優劣を示す図ではありません。
系(報告)報告された値何の値か・条件
超伝導トランズモン
Google Quantum AI、105量子ビット機(2024)[8]
T1 の平均 68 µs、T2,CPMG の平均 89 µs誤り訂正の実験に使った装置の量子ビットの平均値
超伝導トランズモン、タンタル膜
Place ら(2021)[9]
寿命とコヒーレンス時間(動的デカップリング使用)が0.3 ms 超ニオブをタンタルに替えた2次元トランズモン。17個のデバイスで寿命が伸びた
超伝導トランズモン、タンタル/高抵抗シリコン
Bland ら(2025)[10]
T1 が最大 1.68 ms。T2E が T1 を超える最良の1個の量子ビット。45個の量子ビットの平均の品質因子は 9.7×106
ダイヤモンド中の NV 電子スピン
Balasubramanian ら(2009)[11]
T2 = 1.8 ms室温。13C を0.3% に減らした同位体制御の CVD ダイヤモンド
ダイヤモンド中の NV 電子スピン
Abobeih ら(2018)[12]
1 s 超単一の電子スピン。周囲の核スピンの環境に合わせたデカップリング
28Si 中のドナー電子スピン
Tyryshkin ら(2012)[13]
T2 が最大 2 s(外挿で 1.8 K・磁場勾配のもとで 10 s)残留 29Si が50 ppm 未満の高純度シリコン。多数のスピン(ドナー密度 1014〜1015 cm−3)
28Si 基板上の 31P 核スピン
Muhonen ら(2014)[14]
CPMG 系列で30秒超。制御の忠実度が99.99% 超同位体制御した 28Si 基板上のゲート電極つきナノ構造。単一の量子ビット
イオン 171Yb+
Wang ら(2017)[15]
10分超単一量子ビット。138Ba+ で冷却し、数千個の動的デカップリングのパルスを使用(メモリ用途)
28Si 中のイオン化ドナーの核スピン
Saeedi ら(2013)[16]
室温で39分(極低温で3時間)動的デカップリングを使い、光で操作した、多数のスピンの値

事実(各論文の要旨・本文の記載)。表の整理は本稿の解説です。

系(報告)報告された操作の正確さ何の値か・条件
イオン 43Ca+
Ballance ら(2016)[4]
1量子ビット 99.9934(3)%、2量子ビット 99.9(1)%超微細準位の量子ビット。室温の trap。2量子ビットゲートの時間は 3.8〜520 µs の範囲で検討
イオン 9Be+
Gaebler ら(2016)[17]
1量子ビットゲートの誤りが1ゲートあたり 3.8(1)×10−5、2量子ビットゲートの誤りが 8(4)×10−4メモリのコヒーレンス時間が1 s 超の量子ビット。2量子ビットはベル状態の生成から推定
イオン 40Ca+
Clark ら(2021)[18]
ベル状態の生成の非忠実度 6(3)×10−4光周波数の量子ビット。35 µs。実験の誤りを差し引かずに直接測った値
超伝導
Sung ら(2021)[5]
CZ 99.76 ± 0.07%、iSWAP 99.87 ± 0.23%(2量子ビットの相互作用の忠実度)チューナブルカプラ。T1 の限界に近いと報告
超伝導
Bland ら(2025)[10]
1量子ビットゲート 99.994%タンタル/高抵抗シリコンのトランズモン
中性原子
Evered ら(2023)[20]
2量子ビット 99.5%最大60原子を並列。繰り返しゲートに基づく複数の手法で評価
シリコンスピン
Xue ら(2022)[19]
1量子ビット・2量子ビットともに 99.5% 超ゲートセット・トモグラフィで抽出。隣の量子ビットのクロストークと待機の誤りを含めた1量子ビットの平均忠実度は99% 超

事実(各論文の要旨の記載)。表の整理は本稿の解説です。測り方(RB、トモグラフィ、ベル状態からの推定など)は論文ごとに違い、直接比べられません。

注意:方式の違う装置の数字を、並べて優劣をつけてはいけない

上の表で、「イオンは分」「シリコンは秒」「超伝導はミリ秒」と並べると、優劣があるように見えます。しかし、次の理由で比べられません。(1)用途が違う:長い値は、ゲートに使わない待機用(メモリ)や、動的デカップリングを使った値のことがある。(2)個数が違う:多数のスピンの平均(アンサンブル)と、単一の量子ビット。(3)測り方が違う:T1・T2*・T2E・CPMG・RB・トモグラフィ。(4)ゲートの速さが違う:ゲートの時間とセットで初めて意味がある(第6章)。(5)最良と平均が違う:最良の1個と、全量子ビットの平均。 比べるなら、同じ方式・同じ測り方・同じ条件でです(本記事による解説)。

9. ランダム化ベンチマーキング(RB)と、その限界

(1) なぜ RB が必要か

ゲートの誤り率を知るには、ゲートをかけた結果の状態を細かく調べる「トモグラフィ」が考えられます。しかし、この方法には、準備と測定の誤りが混ざってしまう、量子ビットが増えると手間が急増する、といった問題があります。Knill らは、ランダム化ベンチマーキングを、準備と測定の正確さに頼らずに、計算に関係する誤りを見積もる方法として提案し、トラップイオンで、ランダムな π/2 パルス1回あたりの誤り確率 0.00482(17) を報告しました事実[参考資料21]。Emerson らは、ランダムなユニタリ操作を使う、スケールする雑音の推定法を示しています事実[参考資料22]。

(2) 仕組み:ランダムな操作と、それを打ち消す操作

ランダム化ベンチマーキング(RB):ランダムな操作をくり返し、どれだけ崩れるかを見る ① 準備 北向き(0)から始める ② m 個の乱数ゲート ランダムに選んだ操作を m 個 ③ 戻すゲート 1 個 全体が「何もしない」になる ④ 測定 0 が出れば「成功」 m を変えて、それぞれ何度もくり返し、「成功」の割合を調べる 50% 75% 100% 1 10 100 1000 乱数ゲートの個数 m 成功の割合 p = 0.998 ⇒ r = 0.1% p = 0.990 ⇒ r = 0.5% 点=模擬データ(各 m で 2万回の測定、乱数の種0)。線= A·pᵐ + 0.5 のあてはめ 読み方の3点 ① 減る速さ p が大事 m が増えるほど成功が減る。その速 さから、1操作あたりの誤りが分かる ② 準備・読み出しの誤りに強い それらは曲線の高さ A に入り、速 さ p には影響しない ③ 誤り率 r の式 r = (1 − p)(d − 1 )/d。1量子ビットは d=2、2 量子ビットは d=4
図9 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。ランダム化ベンチマーキングの手順と、減衰の読み方(本稿の計算)。点は本稿の模擬データ(乱数の種0)で、実在の装置の測定ではありません。式は Magesan ら(2011)[参考資料3]によります。
  1. 北向き(0)から始めて、ランダムに選んだゲートを m 個かける
  2. 最後に、全体を打ち消す1個のゲートをかける(理想なら、全体で「何もしない」になり、北向きに戻る)
  3. 測って、0 が出れば「成功」。m を変えて、それぞれ多数回くり返し、成功の割合を調べる
  4. m が増えるほど成功の割合は、A·pm + B の形で減る。減る速さ p から、1操作あたりの平均の誤り率 r が分かる

誤り率は、次の式で求めます:r = (1 − p)(d − 1)/d(d は 2量子ビット数。1量子ビットなら d = 2、2量子ビットなら d = 4)事実[参考資料3]。たとえば、1量子ビットで p = 0.998 なら、r = (1 − 0.998)/2 = 0.1% です。本稿の模擬データでは、真の誤り率 0.1% と 0.5% の2つの場合に、あてはめで求めた誤り率は、0.1003% と 0.5046% でした本稿の計算(各 m で2万回の測定、乱数の種0)。

準備と測定の誤りは、曲線の高さ(A、B)に入るだけで、減る速さ p には影響しません。これが、RB が準備と測定の誤りに強い、と言われる理由です事実[参考資料23]。

(3) RB の仲間たち

手法何を測るか出典
標準の RBゲート全体の平均の誤り率。準備と測定の誤りを考慮Emerson ら(2005)[22]、Knill ら(2008)[21]、Magesan ら(2011・2012)[3・23]
インターリーブ RB特定の1つのゲートの誤り率(ランダムなゲートの間に、調べたいゲートをはさむ)Magesan ら(2012)[24]
同時 RB近くの量子ビットを同時に動かしたときの、影響(クロストーク)Gambetta ら(2012)[25]
ミラー回路による RB多数の量子ビットでの、スケールする RBProctor ら(2022)[26]
ゲートセット・トモグラフィ(GST)ゲート全体の振る舞いを詳しく特徴づける(誤り耐性のしきい値を、ダイヤモンドノルムで評価する)Blume-Kohout ら(2017)[7]

事実(各論文の要旨の記載)。表の整理は本稿の解説です。

(4) RB の限界:誤り耐性のしきい値とは直接比べられない

  • Blume-Kohout らは、RB が報告する「誤り率」は、すべての誤りに敏感ではなく、誤り耐性のしきい値を表すダイヤモンドノルムと直接比べられない、と述べています事実[参考資料7]。同じ論文は、ゲートセット・トモグラフィで、トラップイオンの量子ビットの操作が、ダイヤモンドノルム 6.7×10−4 以下というしきい値を95%超の信頼度で満たすことを示しています
  • Sanders らは、報告された平均ゲート忠実度から、誤り耐性に関係する誤り率の上限を求める方法を示し、報告された平均忠実度と真の誤り率に、現実的なずれがありうることを示しています事実[参考資料6]
  • Proctor らは、12のプロセッサで測り、現在のハードウェアでは、構造をもつプログラムが、ランダムなプログラムより最大で1桁早く失敗すること、したがって、ランダムなプログラムの挙動から求めた標準的な誤りの指標は、有用なプログラムの性能を正確には予測しない、と報告しています事実[参考資料27]
つまずきやすいところ:RB の「99.9%」は、すべての誤りを数えた数字ではない

RB は、「ランダムな操作を平均して見たときの、平均的な誤り」を測ります。ある向きに少しずつ傾く(コヒーレントな)誤りや、特定の操作にだけ出る誤りは、平均に埋もれて、小さく見えることがあります。ゲートセット・トモグラフィは、それらも調べますが、手間がかかります。「RB で99.9%」と書かれていたら、「平均的な誤りの指標」として読み、誤り訂正に必要な水準との比較には、別の指標が必要になることに注意してください(本記事による解説)。

10. 素材技術者の視点:寿命を縮める材料の原因

量子ビットの寿命(T1・T2)は、材料の欠陥や不純物、界面の汚れ、周囲の環境で決まります。ここまでの数字を、素材の側から読み直します。

量子ビットの材料や界面の品質を確かめる現場のイメージです。寿命は、材料の欠陥や界面の汚れに左右されます(素材技術者の視点①〜④)。実際の施設・製品を示すものではありません。
図10 概念画像(ImageGen生成)。量子ビットの材料や界面の品質を確かめる現場のイメージです。寿命は、材料の欠陥や界面の汚れに左右されます(素材技術者の視点①〜④)。実際の施設・製品を示すものではありません。 実際の製品・施設・寸法・測定結果ではありません。拡大模型と実物スケールの場面は区別してください。
素材技術者の視点①:二準位系(TLS)と誘電損失:酸化膜や界面の欠陥が、エネルギーを吸う

Martinis らは、二準位の欠陥(2つのエネルギー状態をもつ原子スケールの欠陥)による誘電損失が、超伝導量子ビットのデコヒーレンスの主要な原因であり、より良い誘電体と、面積の小さい接合(約10 µm2 以下)を使うと、損失を大幅に減らせることを示しました。位相量子ビットで、エネルギー緩和率が20倍改善した、と報告しています事実[参考資料28]。Müller らの総説は、アルミニウムやニオブで作った超伝導回路が、それらを覆うアモルファスの酸化膜の中の二準位の欠陥による損失で、根本的に制限される、と述べています事実[参考資料29]。

この流れで、Place らは、ニオブをタンタルに替えて、寿命とコヒーレンス時間を0.3 ms 超にし事実[参考資料9]、Bland らは、基板を高抵抗シリコンに替えて、最大 T1 = 1.68 ms に達しました事実[参考資料10]。素材から見ると、量子ビットは、材料の損失を測る、非常に敏感な「検出器」でもあります(Müller らの総説は、超伝導回路で個々の欠陥まで調べられるとしている[参考資料29])。Bland らが品質因子 Q で寿命を表していることからも、損失の考え方が、材料の誘電損失と同じ言葉に翻訳できることが分かります(本記事による解説)。

素材技術者の視点②:準粒子と放射線:環境の放射性物質や宇宙線も、寿命を縮める

超伝導量子ビットの寿命は、超伝導体の中で対を壊された電子(準粒子)の影響を受けます。Vepsäläinen らは、環境の放射性物質や宇宙線による電離放射線が、観測されている準粒子の過剰な密度に寄与しているという証拠を示し、この影響が、この種の超伝導量子ビットのコヒーレンス時間を、最終的にミリ秒程度に制限すると予測しました。また、放射線の遮蔽が、その影響を減らすことを示しています(今の量子ビットでは小さな効果で、誤り耐性のある超伝導の装置を実現するには、影響を減らす工夫が重要になる、と述べています)事実[参考資料30]。素材から見ると、「装置を置く場所の放射線環境」や、「周りの材料に含まれる放射性元素」まで、寿命に関わることになります(本記事による解説)。

素材技術者の視点③:同位体と純度:結晶の中の「核スピン」と「不純物」をそろえる

スピン量子ビットの寿命は、結晶中の核スピンを持つ同位体と不純物で決まります。Balasubramanian らは、13C を0.3% に減らし、他の常磁性の欠陥を 1013 cm−3 未満にした CVD ダイヤモンドで、室温での電子スピンの T2 = 1.8 ms を報告しました事実[参考資料11]。Tyryshkin らは、残留 29Si が50 ppm 未満の 28Si で、ドナー電子スピンの T2 が最大 2 s に達したと報告しました事実[参考資料13]。同位体制御の総説に Itoh と Watanabe があります[参考資料31]。素材から見ると、結晶成長で、同位体の比率と不純物の濃度を制御することが、そのまま量子ビットの寿命の改善になります(本記事による解説)。

素材技術者の視点④:イオントラップの電極表面:表面の電場雑音と、「見えない」原因

イオントラップでは、イオンが電極の表面に近い位置に置かれるため、電極表面の電場の雑音が、イオンの加熱などの原因になります。Brownnutt らの総説は、イオンの加熱率の測定から推定された電場雑音の実験結果をまとめ、複数の雑音源の存在と、距離による変化の違いが、解釈を難しくしており、その多くの機構は、よく分かっていないと述べています事実[参考資料32]。素材から見ると、電極の材料・表面の清浄度・加工が、ゲートの誤りに関係する、ということですが、どの要因が支配的かは、まだ整理されていません(本記事による解説。材料課題の全体像の総説に de Leon らがある[参考資料33])。

11. 評価・標準の読み方

量子ビットの質は、寿命(T1・T2)と操作の正確さ(忠実度・誤り率)、そして、回路全体の性能の3つのものさしで読みます。それぞれの測り方(RB、トモグラフィ、量子ボリュームなど)と、用語や性能指標の標準の状況を、確認できた範囲で表にします(確認日 2026年10月16日)。

評価項目代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典)標準・指針(ISO/IEC・IEEE など)読み方の注意
寿命(T1・T2)T1 の減衰測定、ラムゼー(T2*)、ハーンエコー(T2E)、CPMG。手順はレビュー論文[1]の説明事実確認できなかった(用語の標準として ISO/IEC 4879:2024 があるが、T1・T2 の定義を含むかは本文未確認)[34]事実T2 は種類(T2*・T2E・CPMG)で値が変わる。単一かアンサンブルか、メモリ用途か、条件を確認する
操作の正確さ(誤り率・忠実度)標準の RB(Emerson ら、Knill ら、Magesan ら)[22・21・3]、インターリーブ RB[24]、同時 RB[25]、ゲートセット・トモグラフィ[7]事実確認できなかった(IEEE P7131 は性能指標・ベンチマークの標準化を扱う作業部会が活動中で、発行済みの標準は確認できなかった)[35]未確定/将来何の操作か、何量子ビットか、平均か最良か、測り方を確認する。RB の誤り率は誤り耐性のしきい値と直接比べられない[7・6]
忠実度の定義平均ゲート忠実度とプロセス忠実度の関係式(Nielsen、2002)[2]事実確認できなかった状態・プロセス・平均ゲートの3種類を区別する
回路全体の性能量子ボリューム(Cross ら、2019)[36]、ミラー回路による RB[26]、層あたりの誤り(EPLG)を測る層忠実度(McKay ら、2023)[37]、速さの指標 CLOPS(Wack ら、2021)[38]、アプリケーション指向ベンチマーク[39]、能力の測定(Proctor ら)[27]事実確認できなかった(同上)McKay らは、量子ボリュームは最良の部分集合に注目し、多数の量子ビットの平均性能を示せないと述べて、層忠実度を提案している。指標ごとに、測っているものが違う
ベンチマーク全体の整理Lorenz ら(2025)の総説。量子ビット・ゲート、プロセッサ、ソフトウェア、応用の各レベルを整理し、標準化の必要性を述べている[40]事実確認できなかった総説の推奨は、標準そのものではない
用語—(評価ではなく用語)ISO/IEC 4879:2024 "Information technology — Quantum computing — Vocabulary"(第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3)[34]事実/IEEE P7130 "Standard for Quantum Technologies Definitions"(IEEE のページでは策定中の Active PAR。PAR 承認は2021年9月23日)[41]未確定/将来用語集で、性能の合否を決める規格ではない。規格の本文は未確認で、定義の中身は書いていない

表の整理は本稿の計算(整理)。ISO の番号・題名・発行年月は ISO の委員会ページで、IEEE の状態は IEEE SA のページで確認(確認日 2026年10月16日)。規格の本文は有料または未確認のため、題名・適用範囲の記載にとどめています。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • T1・T2 の数字は、種類と条件とセットで読みます:T1 か T2 か、T2* か T2E か CPMG か、単一かアンサンブルか、ゲート用かメモリ用か、温度はいくつか。条件の違う数字を並べて優劣をつけないでください
  • 「忠実度」は、何の忠実度かを確認します:1量子ビット/2量子ビット、平均/最良、RB/トモグラフィ。RB の数字は、誤り耐性のしきい値と直接比べられません[参考資料7・6]
  • 寿命とゲート時間は、セットで読みます:寿命が長くても、ゲートが遅ければ誤りは減りません(第6章)
  • 標準は、推奨か要求かを確認します:ISO/IEC 4879 は用語集で、性能の合否を決める規格ではありません。IEEE P7130・P7131 は策定中です。「規格に準拠」という表現は、どの規格のどの項かを確認してください

12. 用語集

コヒーレンス
量子の状態の、波としてのそろい(位相がそろっていること)。
デコヒーレンス
周りの環境の影響で、量子の状態が崩れていくこと(矢印がぶれてしまう)。
T1(エネルギー緩和時間)
「1」の割合が 1/e(約37%)に減るまでの時間。
T2(位相緩和時間)
位相がそろっていられる時間。測り方で値が変わる。T2 ≦ 2×T1。
Tφ(純粋位相緩和時間)
エネルギーの緩和以外で、位相だけが乱れる時間。1/T2 = 1/(2T1) + 1/Tφ。
T2*(ラムゼー)
ラムゼー干渉で測る T2。ゆっくりしたゆらぎも含み、短くなりやすい。
T2E(ハーンエコー)
途中に反転(π パルス)を入れて測る T2。遅いゆらぎを打ち消す。
CPMG・動的デカップリング
π パルスを何個も入れて、ゆらぎを打ち消し、位相を長く保つ方法。
忠実度(フィデリティ)
実際のものが、理想にどれだけ近いかを表す数。1に近いほど良い。
誤り率
1 − 忠実度。1回の操作で誤る確率の目安。
平均ゲート忠実度
あらゆる入力状態で平均した、ゲートの忠実度。RB が報告する。
プロセス忠実度
操作全体が理想の操作にどれだけ近いかを表す忠実度。
ダイヤモンドノルム
最悪の入力も含めて、操作の誤りの大きさを測る尺度。誤り耐性のしきい値は、これで表される。
SPAM 誤り
状態の準備(State Preparation)と測定(Measurement)の誤り。
ランダム化ベンチマーキング(RB)
ランダムな操作列で、1回あたりの平均の誤り率を調べる方法。
インターリーブ RB
特定の1つのゲートの誤り率を調べる RB。
ゲートセット・トモグラフィ(GST)
ゲート全体を詳しく特徴づける測定。しきい値との比較ができる。
二準位系(TLS)
材料中の、2つのエネルギー状態をもつ原子スケールの欠陥。エネルギーを吸って寿命を縮める。
準粒子
超伝導体の中で、対が壊れてできた電子。量子ビットの寿命を縮める。
トランズモン
超伝導の量子ビットの代表的な形。
量子ボリューム
ランダムな回路をどれだけ正しく実行できるかで、装置全体の性能を表す指標。
層忠実度(EPLG)
多数の量子ビットの層の忠実度を、同時の RB で測る指標。

13. 参考資料(一次情報)

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  2. Nielsen M. A. "A simple formula for the average gate fidelity of a quantum dynamical operation", Phys. Lett. A 303, 249–252 (2002), DOI 10.1016/S0375-9601(02)01272-0 — doi.org/10.1016/S0375-9601(02)01272-0
  3. Magesan E., Gambetta J. M., Emerson J. "Scalable and Robust Randomized Benchmarking of Quantum Processes", Phys. Rev. Lett. 106, 180504 (2011), DOI 10.1103/PhysRevLett.106.180504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.106.180504
  4. Ballance C. J. ほか "High-Fidelity Quantum Logic Gates Using Trapped-Ion Hyperfine Qubits", Phys. Rev. Lett. 117, 060504 (2016), DOI 10.1103/PhysRevLett.117.060504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
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  24. Magesan E. ほか "Efficient Measurement of Quantum Gate Error by Interleaved Randomized Benchmarking", Phys. Rev. Lett. 109, 080505 (2012), DOI 10.1103/PhysRevLett.109.080505 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.109.080505
  25. Gambetta J. M. ほか "Characterization of Addressability by Simultaneous Randomized Benchmarking", Phys. Rev. Lett. 109, 240504 (2012), DOI 10.1103/PhysRevLett.109.240504 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.109.240504
  26. Proctor T. ほか "Scalable Randomized Benchmarking of Quantum Computers Using Mirror Circuits", Phys. Rev. Lett. 129, 150502 (2022), DOI 10.1103/PhysRevLett.129.150502 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.150502
  27. Proctor T. ほか "Measuring the capabilities of quantum computers", Nat. Phys. 18, 75–79 (2022), DOI 10.1038/s41567-021-01409-7 — doi.org/10.1038/s41567-021-01409-7
  28. Martinis J. M. ほか "Decoherence in Josephson Qubits from Dielectric Loss", Phys. Rev. Lett. 95, 210503 (2005), DOI 10.1103/PhysRevLett.95.210503 — doi.org/10.1103/PhysRevLett.95.210503
  29. Müller C., Cole J. H., Lisenfeld J. "Towards understanding two-level-systems in amorphous solids: insights from quantum circuits", Rep. Prog. Phys. 82, 124501 (2019), DOI 10.1088/1361-6633/ab3a7e — doi.org/10.1088/1361-6633/ab3a7e
  30. Vepsäläinen A. P. ほか "Impact of ionizing radiation on superconducting qubit coherence", Nature 584, 551–556 (2020), DOI 10.1038/s41586-020-2619-8 — doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8
  31. Itoh K. M., Watanabe H. "Isotope engineering of silicon and diamond for quantum computing and sensing applications", MRS Commun. 4, 143–157 (2014), DOI 10.1557/mrc.2014.32 — doi.org/10.1557/mrc.2014.32
  32. Brownnutt M. ほか "Ion-trap measurements of electric-field noise near surfaces", Rev. Mod. Phys. 87, 1419–1482 (2015), DOI 10.1103/RevModPhys.87.1419 — doi.org/10.1103/RevModPhys.87.1419
  33. de Leon N. P. ほか "Materials challenges and opportunities for quantum computing hardware", Science 372, eabb2823 (2021), DOI 10.1126/science.abb2823 — doi.org/10.1126/science.abb2823
  34. ISO/IEC "ISO/IEC 4879:2024 Information technology — Quantum computing — Vocabulary" (第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3。ISO の委員会ページで確認) — iso.org/standard/80432.html
  35. IEEE SA "Quantum Benchmarking Working Group P7131" (量子コンピューティングの性能指標の標準化の作業部会のページ。確認日 2026年10月16日) — sagroups.ieee.org/7131
  36. Cross A. W. ほか "Validating quantum computers using randomized model circuits", Phys. Rev. A 100, 032328 (2019), DOI 10.1103/PhysRevA.100.032328 — doi.org/10.1103/PhysRevA.100.032328
  37. McKay D. C. ほか "Benchmarking Quantum Processor Performance at Scale", arXiv:2311.05933 (2023) — arxiv.org/abs/2311.05933
  38. Wack A. ほか "Quality, Speed, and Scale: three key attributes to measure the performance of near-term quantum computers", arXiv:2110.14108 (2021) — arxiv.org/abs/2110.14108
  39. Lubinski T. ほか "Application-Oriented Performance Benchmarks for Quantum Computing", IEEE Trans. Quantum Eng. 4, 1–32 (2023), DOI 10.1109/TQE.2023.3253761 — doi.org/10.1109/TQE.2023.3253761
  40. Lorenz J. M. ほか "Systematic benchmarking of quantum computers: status and recommendations", arXiv:2503.04905 (2025) — arxiv.org/abs/2503.04905
  41. IEEE SA "IEEE P7130 Draft Standard for Quantum Technologies Definitions" (project page) (Active PAR、PAR 承認 2021年9月23日。確認日 2026年10月16日) — standards.ieee.org/ieee/7130/10680/

14. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
デコヒーレンスの2つの姿(T1 の緩和、T2 の位相緩和)。T1・T2 の測り方(T1 の減衰、ラムゼー、ハーンエコー、CPMG)。1/T2 = 1/(2T1) + 1/Tφ と T2 ≦ 2T1。測定例 T1 = 85 µs、T2* = 95 µs、T2E = 120 µsレビュー論文(Krantz ら、2019)の本文と図5
出典1 https://doi.org/10.1063/1.5089550
事実
平均ゲート忠実度とプロセス忠実度の関係 F平均 = (d·Fプロセス + 1)/(d + 1)Nielsen(2002)の要旨
出典2 https://doi.org/10.1016/S0375-9601(02)01272-0
事実
ランダム化ベンチマーキングの提案と性質(準備・測定の誤りの考慮、平均の誤り率、ダイヤモンドノルムとの関係)。インターリーブ RB、同時 RB、ミラー回路 RBEmerson ら、Knill ら、Magesan ら、Gambetta ら、Proctor ら の要旨
出典22 https://doi.org/10.1088/1464-4266/7/10/021
出典21 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.77.012307
出典3 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.106.180504
出典23 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.85.042311
出典24 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.109.080505
出典25 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.109.240504
出典26 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.129.150502
事実
RB の誤り率が誤り耐性のしきい値(ダイヤモンドノルム)と直接比べられないこと。GST でトラップイオンの量子ビットが 6.7×10⁻⁴ のしきい値を満たしたこと。平均忠実度から誤り率の上限を求める方法。構造をもつプログラムが最大1桁早く失敗することBlume-Kohout ら(2017)、Sanders ら、Proctor ら(2022)の要旨
出典7 https://doi.org/10.1038/ncomms14485
出典6 https://doi.org/10.1088/1367-2630/18/1/012002
出典27 https://doi.org/10.1038/s41567-021-01409-7
事実
第8章の表の報告値(超伝導 T1 68 µs・T2,CPMG 89 µs、タンタル 0.3 ms 超、Ta/Si T1 最大 1.68 ms、NV 1.8 ms・1 s 超、28Si ドナー T2 最大 2 s、31P 核スピン 30 s 超、イオン 10 分超、イオン化ドナー 39 分)各論文の本文・要旨
出典8 https://doi.org/10.1038/s41586-024-08449-y
出典9 https://doi.org/10.1038/s41467-021-22030-5
出典10 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09687-4
出典11 https://doi.org/10.1038/nmat2420
出典12 https://doi.org/10.1038/s41467-018-04916-z
出典13 https://doi.org/10.1038/nmat3182
出典14 https://doi.org/10.1038/nnano.2014.211
出典15 https://doi.org/10.1038/s41566-017-0007-1
出典16 https://doi.org/10.1126/science.1239584
事実
第8章の表の操作の正確さ(イオン 99.9934%・99.9%・3.8×10⁻⁵・8×10⁻⁴・6×10⁻⁴、超伝導 CZ 99.76%・iSWAP 99.87%・1量子ビット 99.994%、中性原子 99.5%、シリコンスピン 99.5% 超)各論文の要旨
出典4 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
出典17 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060505
出典18 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.127.130505
出典5 https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.021058
出典10 https://doi.org/10.1038/s41586-025-09687-4
出典20 https://doi.org/10.1038/s41586-023-06481-y
出典19 https://doi.org/10.1038/s41586-021-04273-w
事実
二準位系(TLS)による誘電損失が超伝導量子ビットの主要なデコヒーレンス源であること(緩和率が20倍改善)。酸化膜中の二準位の欠陥による根本的な制限Martinis ら(2005)、Müller ら(2019)の要旨
出典28 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.95.210503
出典29 https://doi.org/10.1088/1361-6633/ab3a7e
事実
電離放射線が準粒子密度を高め、コヒーレンスをミリ秒に制限しうること。遮蔽で緩和時間が伸びることVepsäläinen ら(2020)の要旨
出典30 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2619-8
事実
同位体と純度:13C 0.3% のダイヤモンドで T2 = 1.8 ms、28Si(29Si 50 ppm 未満)で T2 最大 2 s。同位体制御の総説。材料課題の総説Balasubramanian ら、Tyryshkin ら、Itoh と Watanabe、de Leon ら
出典11 https://doi.org/10.1038/nmat2420
出典13 https://doi.org/10.1038/nmat3182
出典31 https://doi.org/10.1557/mrc.2014.32
出典33 https://doi.org/10.1126/science.abb2823
事実
イオントラップの電極表面の電場雑音の測定の総説(雑音源が複数あり、機構の多くがよく分かっていない)Brownnutt ら(2015)の要旨
出典32 https://doi.org/10.1103/RevModPhys.87.1419
事実
ゲート時間による寿命の誤り(Sung らの CZ・iSWAP が T1 の限界に近いこと)。イオンの2量子ビットゲートの時間 3.8〜520 µs での速さと忠実度の検討Sung ら(2021)、Ballance ら(2016)の要旨
出典5 https://doi.org/10.1103/PhysRevX.11.021058
出典4 https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.117.060504
事実
量子ボリューム、層忠実度(EPLG)、CLOPS、アプリケーション指向ベンチマークの提案。ベンチマーク全体の総説Cross ら、McKay ら、Wack ら、Lubinski ら、Lorenz ら
出典36 https://doi.org/10.1103/PhysRevA.100.032328
出典37 https://arxiv.org/abs/2311.05933
出典38 https://arxiv.org/abs/2110.14108
出典39 https://doi.org/10.1109/TQE.2023.3253761
出典40 https://arxiv.org/abs/2503.04905
事実
ISO/IEC 4879:2024「Information technology — Quantum computing — Vocabulary」(第1版、2024年5月、IEC/ISO JTC 3)の番号・題名・発行年月。T1・T2 の定義を含むかは本文未確認ISO の委員会ページ
出典34 https://www.iso.org/standard/80432.html
事実
IEEE P7130 が策定中(Active PAR、2021年9月23日承認)であること。IEEE P7131 の作業部会が活動し、発行済みの標準は確認できなかったことIEEE SA のページ
出典41 https://standards.ieee.org/ieee/7130/10680/
出典35 https://sagroups.ieee.org/7131
未確定/将来
T1 の減衰表(e^−1 など)、T2 と Tφ の表、寿命による誤りの式と表(ε = 1 − (3 + 2e^(−t/T2) + e^(−t/T1))/6 の数値確認)、F平均の数値例、RB の模擬データとあてはめ(0.1003%・0.5046%)本稿の計算(Python・NumPy。乱数の種0)。実在の装置の結果ではない本稿の計算
方式の違う装置の数字の優劣、ISO/IEC 4879 の定義の本文、IEEE P7131 の発行状態、各装置の T1・T2 の平均と最良の全比較本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない解説
「デコヒーレンスは観測者が見たから起きる、は誤り」「T2 が長ければ良い、は誤り」「寿命が長いこととゲートが速いことは別」「RB の 99.9% は平均の指標」「方式の優劣は条件が違うので比べない」などの読み取りと、たとえ話・その限界公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図1〜図10が実データの観察ではなく説明のための作図であること。図1と図10がImageGen生成の概念画像であること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月16日/出典は一次情報(レビュー論文、査読論文、arXiv の論文、ISO・IEEE の公式ページ)に限定しています。各論文の報告値は、個別の測定条件での値として示し、方式の違う装置の優劣は論じていません。 数値例(減衰、寿命による誤り、RB の模擬データ)は本稿が作った説明用の計算で、実在の装置の結果ではありません。 規格の本文、IEEE P7131 の発行状態、各装置の値の網羅的な比較については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図10はImageGen生成の概念画像です。

図版更新:2026年10月17日。本文・出典整理表のベクター作図という表記は、保存した元SVGの由来を示します。現在の主図の形式と読み方は各図下の説明を参照してください。ImageGen画像は実測や実在製品の写真ではなく、元SVG・数値・出典は展開して確認できます。