COMPANY PROFILE / 量子コンピュータ
インフレクション
― 同じ「中性原子」の技術で、量子コンピュータと、時計・電波・重力を測る量子センサーの両方を売る、NYSE上場の会社
Infleqtion(インフレクション)は、電気を帯びていない原子(中性原子)をレーザーで捕まえて使う技術を、量子コンピュータ「Sqale」と、光で時間を測る原子時計「Tiqker」、電波を検出する量子センサー「SqyWire」、加速度・重力を測る「Exaqt」の両方に使う米国の会社です。旧社名はColdQuanta。2026年2月13日に特別買収目的会社(SPAC)のChurchill Capital Corp Xとの合併を完了し、2026年2月17日からNYSE(INFQ)に上場しています。2026年9月24日には、80個の物理量子ビットで30個の論理量子ビットをもつれさせたと発表しました。一方、売上の約9割は政府関連で、2026年第2四半期は単一の顧客が売上の82%を占め、内部統制の「重大な不備」も報告されています。本稿では、量子コンピュータの話を中心に、上場の経緯、事業の数字、将来の目標を、米国SECの提出書類の範囲で整理します。「量子優位」などは会社の主張として扱います。確認日は2026年10月16日です。
- 30秒でわかるInfleqtionと、量子コンピュータでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 量子コンピュータにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は量子コンピュータで何を目指しているか
- 量子コンピュータ分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるインフレクションと、量子コンピュータでの立ち位置
ルイビル約2万平方フィート。ほかにボルダー、シカゴ、マディソン、英オックスフォード、豪メルボルン
(2026年2月17日〜)SPAC(Churchill Capital Corp X)との合併を2026年2月13日に完了
(物理80個を使用)2026年9月24日の会社の発表。もつれさせた個数
Infleqtionは、量子コンピュータだけの会社ではありません。中性原子を捕まえて操る同じ技術が、量子コンピュータ(Sqale)にも、原子時計(Tiqker)にも、電波センサー(SqyWire)にも使えると会社は説明しています 事実。売上の中心は、いまのところセンサーや研究開発の政府契約(NASAの重力センサー、米軍の原子時計など)で、量子コンピュータが売上のどれだけを占めるかは、提出書類(単一の事業セグメント)から確認できません。量子コンピュータの面では、2026年9月に「論理量子ビット30個」を発表し、2027年にはイリノイ州に設置する50論理量子ビット級の装置を契約しています 事実。その一方で、会計の訂正や内部統制の不備も開示されています。本稿は、技術の到達点と、財務面の注意点を分けて書きます。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:社名はInfleqtion。登記上の名称は Infleqtion, Inc. で、合併前の事業会社は ColdQuanta, Inc.(Infleqtionという名で営業)でした。Sqaleは量子コンピュータ、Superstaqは量子ソフトウェア、Tiqker/SqyWire/Exaqtはセンサーの製品名で、いずれも社名ではありません。合併の相手だったChurchill Capital Corp Xは、合併後にInfleqtion, Inc.へ社名を変更しており、別会社としては残っていません。
公式サイト:https://infleqtion.com/3. 量子コンピュータの世界で、この会社はどこにいるか
まず、量子ビットと方式です。量子ビットは量子コンピュータの最小の部品で、0と1の「重ね合わせ」の状態をとれます。Infleqtionは中性原子(電気を帯びていない原子)を量子ビットにします。
Infleqtionの大きな特徴は、同じ中性原子の技術を「計算」と「測定」の両方に使うことです。次の図解は、その関係を簡単にしたものです。
4. 会社の規模
Infleqtionは2026年2月に上場した会社で、SECに年次報告書(Form 10-K)と四半期報告書(Form 10-Q)を提出しています。ただし、2025年12月期のForm 10-Kは、合併前のSPAC(Churchill Capital Corp X)の財務諸表を含み、事業会社(旧ColdQuanta)の2025年12月期の決算は、同日提出のForm 8-K/Aに別途入っています。単位は百万US$です。2026年8月のForm 10-Qで、売上の計上時期などに関する「重要でない誤り」の訂正が行われたため、過去の数字は「訂正後」を示します 事実。
| 指標(百万US$) | 2024年(訂正後) | 2025年(訂正後) | 2026年上半期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 28.1 | 31.1 | 23.4(前年同期は13.5) |
| うち 第2四半期 | ― | ― | 13.5(当初の発表は12.6) |
| 研究開発費 | 22.3 | 24.1 | 22.6(前年同期は10.5) |
| 純損失 | (55.7) | (32.2) | (54.4) |
| 現金・同等物 | 47.9 | 11.7 | 59.3(ほかに売却可能証券522.5) |
2025年の売上は、訂正前は32.5百万US$、訂正後は31.1百万US$です。2024年は訂正前28.8、訂正後28.1。2024年の純損失には、資産・のれんの減損約13.5百万US$が含まれます。2025年の研究開発費は訂正前の値。
| その他の規模 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 従業員 | 205人(うち物理学者・技術者が160人超)。約55%がデンバー圏、約78%が高度な理工系の学位をもつ(2025年12月31日) | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm |
| 特許 | 登録125件、出願中108件(2025年12月31日) | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm |
| 発行済み株式 | 合併の直後に216,471,927株 | 出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026057508/infq-20260630.htm |
| 現金・有価証券 | 約5.82億US$(現金・同等物、制限付き現金、売却可能証券の合計。債務なし)。うち約2,740万US$は、ストックオプションの行使で預かった源泉税で、2026年第3四半期に納付する予定 | 出典4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026056222/infq-20260630xex991.htm |
| 2026年の売上見通し | 約4,510万US$(会社の見通し。当初の約4,300万US$から、会計上の売上計上時期の訂正で引き上げ) | 出典5 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026057510/infq-20260630xex9918x17x20.htm |
売上の約9割が政府関連、しかも単一の顧客に集中しています。2026年第2四半期は政府関連が売上の92%、最大の顧客(Customer A)が82%でした(上半期は政府関連89%、Customer Aが74%)事実。会社は、NASAの重力傾斜計の開発が売上増の主因だと説明しています。また、会社は財務報告の内部統制に「重大な不備」があったと開示しています(会計の人員不足、英国子会社の統制、株式記録の承認手順、IT統制など)。第2四半期の決算は、8月12日の発表後に売上の計上時期の調整が見つかり、8月17日に修正の発表をして、10-Qの提出も期限から1営業日遅れました。本稿は特定の会計処理の当否を判断しませんが、数字を読むときは訂正の経緯を知っておく必要があります。
5. 量子コンピュータにかけているリソース
4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、確認できたかを表にします。量子コンピュータだけの数字は分けて開示されていないため、会社全体(量子コンピュータ、センサー、ソフトウェア)の数字です。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 205人(2025年末)。うち160人超が物理学者・技術者。コロラド州、英国、豪州、イリノイ州、ウィスコンシン州に拠点。量子コンピュータ専任の人数は確認できず | 事実 |
| 金:研究開発費 | 2025年は約2,409万US$、2026年上半期は約2,263万US$(前年同期の約2.2倍)。量子コンピュータ向けの内訳は確認できず | 事実 |
| 金:資金調達 | 2026年2月の合併で、会社は約5.28億US$の総額を受け取った(信託口座と運転資金の約4.02億US$と、PIPE(私募の公開株式投資)約1.265億US$)。信託口座からの償還は0.09%にとどまった。直接の取引費用は約930万US$(資本から控除)、費用処理は約1,150万US$ | 事実 |
| 金:公的資金 | 米国商務省の「意向書」(最大1億US$、商務省が同社の株式を受け取る可能性を含む。最終契約・政府の承認が条件)。NASAの重力傾斜計の初期段階(2,000万US$の契約)、米軍の原子時計の調達(約1,100万US$のAPFIT)、DARPAのHARQ(200万US$)、DOEのARPA-E(530万US$の費用分担)、海軍(100万US$) | 事実(商務省分は未確定) |
| 外部への出資・買収・合弁 | Super.tech(量子ソフト、2022年に買収→Superstaq)、Oratomic(中性原子の新興企業、2026年第2四半期に約300万US$を出資。同社は量子コアの顧客)。2024年に資産・のれんの減損約1,354万US$を計上(対象の記載は本稿の資料で確認できず) | 事実 |
| 大学・研究機関との連携 | コロラド大学(独占・非独占の特許ライセンス)、ウィスコンシン大学のWARF(独占ライセンス)、SRI、英国国立量子コンピューティングセンター(NQCC)、日本の科学技術振興機構(JST)のムーンショット計画、DOEのGenesis Mission(3プロジェクト) | 事実 |
主要な装置・実験の状況を、提出書類と会社の発表で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月16日)。数値は会社の公称または会社の発表で、方式や条件が異なるため、他社と並べて優劣をつけません。
| 装置・実験 | 規模・内容(方式:中性原子、ゲート方式) | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Sqale(現行機) | 最大1,600個の原子の配列、2量子ビットのCZゲート99.73%(会社の公称。測定法・条件は10-Kに記載なし)、全結合、論理量子ビット12個を実証(2025年12月末)。会社は「研究機関以外で最大の中性原子配列」と説明 | 稼働(顧客設置を含む) | 2025年12月 | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm |
| 英国NQCC向けのSqale | 英国の国立量子コンピューティングセンターのテストベッドに納入。会社は「英国で最大の量子コンピュータ」と説明 | 納入 | 2025年12月期の10-K | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm |
| 日本向けのプロセッサー | 529個の物理量子ビットを扱えるプロセッサーを分子科学研究所に納入。JSTのムーンショット計画に参加する唯一の外国の量子コンピュータ企業と会社は説明 | 納入 | 2025年12月期の10-K | 出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm |
| 論理量子ビット30個 | 物理量子ビット80個を使い、30個の論理量子ビットを1つのもつれ状態にした。約1,000回の物理操作(1 KiloQuOp)。「ノイズの約1,000倍の強さの信号」で確認したと説明。AIの支援で、論理操作に必要な物理ゲートの数を半分にしたと説明(会社の発表。論文は未確認) | 実験(会社の発表) | 2026年9月24日 | 出典6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026063328/infq-20260924xexx991.htm |
| イリノイ州の耐故障装置 | Illinois Quantum & Microelectronics Park(IQMP)に設置する中性原子の量子コンピュータ。最初は50個の論理量子ビット級、モジュールの追加で100個を目指す。NVIDIAのNVQLinkと連携。納入は2027年の予定 | 契約済み・計画 未確定/将来 | 2026年7月 | 出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026057508/infq-20260630.htm |
| Tiqker/SqyWire/Exaqt | 光原子時計、量子RFセンサー、慣性・重力センサー。会社は、時計は従来の原子時計より100〜1,000倍の性能と説明(会社の主張)。Tiqkerは第3世代を販売中 | 販売・開発 | 2026年 | 出典1・4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026056222/infq-20260630xex991.htm |
「論理量子ビット12個」「30個」の物理量子ビット数や誤り率は、提出書類に記載が見当たらず(12個の場合)、または会社の発表のみ(30個の場合、80個)です。段階の「計画」は実現が確定したことを意味しません。
論理量子ビットの数は、どんな方法で作るかで、必要な物理量子ビット数が大きく変わります。Infleqtionの30個は80個の原子を使ったものですが、どの符号を使ったのか、誤りを直しているのか検出だけなのかは、会社の発表に詳しく書かれていません 未確定/将来。そのため、本稿は他社の論理量子ビットの数と並べず、割り算の比(80÷30=約2.7)も「本稿の計算」としてのみ示します。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2008年〜 | 中性原子を使う装置の販売を開始(会社の説明)。コロラド大学・ウィスコンシン大学などの研究成果を特許で利用 | 研究用の「量子コア」から事業を拡大 |
| 2022年 | Super.techを買収(現在のSuperstaq) | 量子ソフトを取り込んだ |
| 2023年12月 | L3Harrisと、SqyWireを研究室から実運用へ移す共同の取り組みを発表 | 防衛向けの電波センサー |
| 2025年6月〜12月 | SAICとの共同販売(6月)、NVIDIAとの提携(10月)、Voyager Technologiesとの宇宙向けの提携(11月)、Safranとの精密時刻の提携(12月) | 防衛・宇宙・計算基盤の企業との連携 |
| 2026年2月13日〜17日 | SPAC(Churchill Capital Corp X)との合併を完了(13日)、NYSEで取引開始(17日)。会社は約5.28億US$を受け取った | 上場会社になった |
| 2026年1月〜2月 | DOEのARPA-Eから530万US$の費用分担(1月)、DARPAのHARQから200万US$、海軍から100万US$(2月) | 政府の小型契約が続いた |
| 2026年3月31日 | Form 10-K(SPAC側の財務)と、事業会社の財務を含むForm 8-K/Aを提出。「重大な不備」を開示 | 初めての年次の提出書類 |
| 2026年4月〜7月 | NVIDIAのIsingモデルをSqaleの調整・復号に統合(4月)。商務省の意向書(5月〜)。DOEのGenesis Missionで3プロジェクトに選定、イリノイ州の耐故障装置の契約(7月) | 応用・政府案件の拡大 |
| 2026年8月 | 第2四半期の決算(8月12日)の後に会計の調整が見つかり、8月17日に修正。10-Qを提出(期限から1営業日遅れ)。Eatonとの関係を発表 | 数字の訂正が発生 |
| 2026年9月24日 | 論理量子ビット30個(物理80個)を発表 | 2026年の目標としていた30個に到達と会社は説明 |
7. 今後の計画
最初は50論理量子ビット級モジュールの追加で100個を目指す。NVIDIAのNVQLinkと連携(10-Q)
会社はこれらを「目標」「見通し」「計画」として述べており、達成の事実ではありません 未確定/将来。2026年の目標だった論理量子ビット30個は、2026年9月24日に「達成」と発表されました。ただし、これはもつれさせた個数で、実用規模の計算の成果ではありません。
次はいずれも提出書類・会社の発表で確認できませんでした 未確定/将来。量子コンピュータ事業だけの売上・利益(単一の事業セグメントとして報告)/論理量子ビット30個の技術報告書(論文)(会社のブログに掲載としているが本稿は未確認)/12個・30個の実験の誤り率の数値/イリノイ州の装置の価格と、商務省の最終契約の条件/「量子センサーが古典の最先端を上回る」という会社の主張の第三者による検証/設立年。10-Kに引用された第三者の市場予測(2040年に量子センシング約300億US$、量子コンピュータ約1,300億US$)は調査会社の推計のため、本稿では採用しません。
8. この会社は量子コンピュータで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 量子コンピュータを、センサーの事業と並べた「二本立て」で進める | 10-Kが「100論理量子ビット級の開発と、すでに優位性を出しているセンサーの商用化を並行する」と記載 | 事実 |
| 主な買い手は政府・防衛で、量産市場は「小型・軽量・低消費電力・低コスト」が実現した先 | 10-Kが「政府機関と公的プログラムが最大の買い手」と書き、SWaP-C(大きさ・重さ・電力・費用)の削減が高価値・高数量の企業市場を開くと記載 | 事実 |
| 量子コンピュータはGPU(NVIDIA)との接続を前提に設計している | NVQLinkをイリノイ州の装置に採用、NVIDIAのIsingモデルをSqaleの調整・復号に統合(2026年4月) | 事実 |
| 当面の売上の伸びは、製品の販売より政府の開発契約が支えている | 2026年第2四半期の製品売上は約317万US$(前年同期は約356万US$)、サービス売上は約1,037万US$(約172万US$)。サービス売上は主に政府契約 | 推測 |
| 資金面の余力は大きく、論理量子ビットの数を急いで増やす方針 | 現金・有価証券約5.8億US$、債務なし。論理量子ビットは2025年12月の12個から2026年9月の30個へ。2028年に100個を目標 | 推測 |
2026年第2四半期の売上は約1,354万US$で、このうちサービス売上が約1,037万US$、製品売上が約317万US$でした。前年同期は、サービスが約172万US$、製品が約356万US$です 事実。10-Qは、サービス売上は主に政府契約の研究開発から生じ、増加の主因は米国政府契約(NASAの重力傾斜計の開発など)だと説明します。ここから本稿は、「Infleqtionの足元の売上の伸びは、量産した製品の販売(Tiqkerなど)ではなく、政府の開発・実証の契約に支えられている」と読みます。同じ10-Qは、英国政府の契約が終了して売上が減った一方、米国政府の契約が増えたと書いており、契約の更新次第で売上が大きく動く構造も読み取れます。ただし、量子コンピュータの売上がこのうちどれだけかは、提出書類では確認できません 未確定/将来。
9. 量子コンピュータ分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 層 | 主な製品 | 提出書類・公式資料の記述 |
|---|---|---|
| 土台 | 量子コア(Quantum Core) | 真空・蒸気セル、レーザー、制御電子機器を一体にした中性原子の部品。単体の商品としても販売(研究者向け)し、すべての製品の土台に使う |
| 量子コンピュータ | Sqale | 最大1,600原子の配列、全結合、原子の再配置。オンプレミスでの設置、またはクラウド経由の利用。「ショット」(繰り返しの回数)に応じた従量課金。サービスは「非常に初期の商用化段階」 |
| ソフト | Superstaq、CML | Superstaqは、量子回路をハードに合わせて最適化するコンパイラ・ミドルウェア(他社のハードにも対応)。CMLは「量子に着想を得た」AI向けソフトで、GPU上で動き、会社の試験では長い文脈の処理で従来のTransformerより10倍超のメモリ節約(会社の評価) |
| センサー | Tiqker、SqyWire、Exaqt | 光原子時計、量子RFセンサー、慣性・重力センサー。道路・海・空・宇宙の環境で検証したと会社が説明 |
ガラスの真空セル:中性原子の装置の心臓部は、真空または蒸気のセルです。会社は、10-Kで「低圧で孤立したガラスのセルに原子を入れ、外部との相互作用を減らしてコヒーレンスを保つ」と説明します 事実。セルのガラスの材質・封止の方法・脱ガスの少なさは、原子の寿命と装置の信頼性に直結しますが、本稿の資料に具体的な記載はありません 未確定/将来。
室温で動く:Infleqtionは、量子ビットを極低温に冷やす必要がない(原子はレーザーで冷やす)と説明します。これは超伝導方式と大きく違う点で、会社は「冷凍機が不要で、小型・低消費電力にしやすい」と主張します 事実。
垂直統合の製造:会社は、真空・蒸気セル、制御電子機器、光学アセンブリ、校正システム、ファームウェアを社内で開発・製造し、コロラド州とオックスフォードの工場で組み立てると説明します 事実。小型・軽量・低電力(SWaP)にして、道路・海・空・宇宙で使える堅牢さを出すことが、センサー事業の中心の課題として書かれています。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 売上が政府に集中 | 2026年第2四半期は政府関連が売上の92%、単一の顧客が82%。政府契約は段階ごとに条件があり、期限や更新の影響を受ける | 事実 |
| 財務報告の内部統制の不備 | 会社は「重大な不備」を開示(会計の人員、英国子会社の統制、株式記録の手順、IT統制)。2026年8月に売上計上と損失引当の「重要でない誤り」を訂正し、第2四半期の売上の発表(12.6百万US$)を13.5百万US$に修正、10-Qの提出も1営業日遅れた | 事実 |
| 赤字の継続 | 2026年上半期の営業損失は約6,289万US$、純損失は約5,441万US$(利息収入約822万US$を含む) | 事実 |
| 大学ライセンスの条件 | ウィスコンシン大学WARFの独占ライセンスは、2026年12月31日までに量子コンピュータの製品が市場で購入できる状態になっていない場合、WARFが非独占に変更・解約できる | 事実 |
| 「量子優位」の主張の検証 | 会社は、時計とRFセンサーは「すでに古典の最先端を上回る」と述べる。第三者による検証は確認できない。量子コンピュータでの優位性は将来の目標 | 未確定/将来 |
| 商務省の資金は未確定 | 意向書は最終契約と政府の承認が条件で、商務省が株式を受け取る想定を含む | 未確定/将来 |
| 技術・競合の変化 | 会社は、他の方式(超伝導、イオン、光)や他の中性原子の企業との競争を挙げる。量子センサーでは既存の原子時計メーカーとも競う | 事実 |
| 輸出管理・規制 | 量子センサーは、用途によって米国の国際武器取引規則(ITAR)や輸出管理規則(EAR)の対象になりうる。Tiqkerは米国食品医薬品局(FDA)への電子製品の届出が必要 | 事実 |
12. 用語集
- 量子ビット
- 量子コンピュータの最小の部品。0と1の「重ね合わせ」をとれる。
- 中性原子
- 電気を帯びていない原子。レーザー光で捕まえて並べ、量子ビットやセンサーとして使う。
- 論理量子ビット
- 複数の物理量子ビットを組み合わせ、間違いに強くした量子ビット。
- CZゲート
- 2個の量子ビットを結びつける基本の操作(controlled-Z)。99.73%はその正確さ(会社の公称)。
- 全結合
- どの2個の量子ビットも直接結べること。
- 光原子時計
- 原子が出す光の振動を目盛りにして時刻を測る時計。従来の原子時計より精密とされる。
- 量子RFセンサー
- 特別な状態の原子で電波を検出するセンサー。
- SWaP-C
- 大きさ(Size)、重さ(Weight)、電力(Power)、費用(Cost)の頭文字。
- KiloQuOp/MegaQuOp
- 連続して正しく行える論理操作の回数の目安。1,000回/100万回。
- SPAC/PIPE
- SPAC:特別買収目的会社。PIPE:上場企業への私募の株式投資。合併に合わせて調達する。
- 内部統制の重大な不備
- 財務報告で、重要な誤りが防げない・見つからない合理的な可能性がある状態。
- 意向書(LOI)
- 最終契約の前に出す、支援や取引の意思表示。法的な拘束力は限られる。
13. 出典
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Annual Report on Form 10-K(2025年12月期、2026年3月31日提出)。事業の説明、技術、顧客、規制、競争、知財、従業員、リスク、合併の経緯。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134544/d94946d10k.htm
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Form 8-K/A Exhibit 99.1(2026年3月31日提出)。事業会社(旧ColdQuanta)の2025年・2024年12月期の財務諸表。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000119312526134690/d104197dex991.htm
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Quarterly Report on Form 10-Q(2026年6月30日、2026年8月17日提出)。上半期の財務、合併の収入、売上の誤りの訂正、内部統制の不備、契約・提携。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026057508/infq-20260630.htm
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Form 8-K Exhibit 99.1(2026年8月12日)。第2四半期の発表(当初)、現金、商務省の意向書、イリノイ州の契約。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026056222/infq-20260630xex991.htm
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Form 8-K/A Exhibit 99.1(2026年8月17日)。第2四半期の売上と通期見通しの修正。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026057510/infq-20260630xex9918x17x20.htm
- Infleqtion, Inc.(米国SEC) Form 8-K Exhibit 99.1(2026年9月24日)。論理量子ビット30個の発表。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/2007825/000162828026063328/infq-20260924xexx991.htm
- 米国SEC EDGARのInfleqtion, Inc.の提出書類一覧(確認日2026年10月16日)。 https://www.sec.gov/cgi-bin/browse-edgar?action=getcompany&CIK=0002007825&type=&dateb=&owner=include&count=40
- Infleqtion 公式サイト(確認日2026年10月16日)。ロゴ、製品。 https://infleqtion.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月16日/Troy Technical
本稿の数値は、Infleqtion, Inc.が米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類(Form 10-K、10-Q、8-K)に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません(提出書類に引用された第三者の市場予測も採用していません)。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。装置の性能値は会社の公称または会社の発表で、方式・測定条件が異なる他社の値と並べて優劣をつけていません。株価・評価額には触れていません。
