COMPANY PROFILE / ペロブスカイト太陽電池
Tandem PV
― 「最初のペロブスカイト・シリコンタンデム」の研究者が、重ね合わせ型パネルで量産に挑む
Tandem PVは、スタンフォード大学でペロブスカイト・シリコンタンデムの最初のセルを作った研究者Colin Bailie氏が2016年に共同創業した、米国カリフォルニア州の会社です。 同社の特徴は、ペロブスカイトをシリコンセルの上に直接成膜する一体型(モノリシック)ではなく、別々に作った層を重ね合わせるパネル構造を選んでいることです。 2026年4月、カリフォルニア州フリーモントに年産約40MWの商業実証工場を開き、2026年中に最初の商業パネルを販売、2028年に大量生産という目標を掲げています。 同年8月には米国エネルギー省(DOE)のARPA-Eから約770万ドルの支援先に選ばれました。 本稿では、非上場のこの会社について、会社自身の発表と米国政府の公表資料だけで、何が確定していて何がまだ見えないのかを整理します。
- 30秒でわかるTandem PVと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(売上は非公表。調達額と工場で見る)
- ペロブスカイトにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
- ペロブスカイト分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるTandem PVと、ペロブスカイト太陽電池での立ち位置
フリーモント2025年までの発表ではサンノゼ
2016年創業財務諸表は公表されていない
専業スタートアップパネルを自社で製造する
(重ね合わせ型)一体型(モノリシック)ではないと会社が明言
年産 約40MW2026年4月開設の商業実証工場
ペロブスカイト太陽電池に取り組む企業は、大きく既存の太陽電池大手・専業スタートアップ・素材や電機などの異業種の3種類に分かれます。 Tandem PVは専業スタートアップで、しかも「自社でパネルを作って売る」側です。 そのうえで同社は、公式FAQで「当社の重ね合わせ(stacked)型の設計は、ペロブスカイトをシリコンセルに直接成膜して一体型のタンデムセルを作る大半の競合と異なる」と明言しています 事実。 同じ米国の専業スタートアップでも、2端子の一体型を選んだ会社と、ガラス部材だけを売る会社のあいだに位置する、 「別々に作って重ね、完成パネルとして売る」という選択です。
2. ロゴと社名の表記について
Tandem PVのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
公式サイトのヘッダーに表示されている画像を取得して img/tandem_pv_logo.png として設置しています。
表記の注意:法人名は Tandem PV, Inc. です。社名の「PV」は太陽光発電(Photovoltaic)の略だと会社がFAQで説明しています。 社名の「Tandem(タンデム)」は技術の一般名詞でもあるため、本稿では会社を指すときは必ず「Tandem PV」と書き、技術を指すときは「タンデム」と書き分けます。
公式サイト:https://www.tandempv.com/3. ペロブスカイト太陽電池の世界で、この会社はどこにいるか
製品の形でいえば、Tandem PVはシリコンとのタンデムですが、1枚のセルの中で上下を直列につなぐ2端子の一体型ではありません。 会社は「従来のシリコンセルと薄膜のペロブスカイト材料を重ね合わせて(stacks)タンデムパネルにする」と説明しています 事実。 一方で、上下の層を電気的にどうつないでいるか(4端子で別々に取り出すのか、パネル内で結線するのか)は公表されていません 未確定/将来。 2端子型と重ね合わせ型の違いは、本シリーズの技術解説『タンデム』で扱っています。
4. 会社の規模(売上は非公表。調達額と工場で見る)
Tandem PVは非上場で、売上・損益・手元資金・従業員数を公表していません 未確定/将来。 2026年4月時点で「2026年中に最初の商業パネルを販売する計画」としており、現時点で売上があるかどうかも公表されていません。 代わりに、会社がリリースの末尾で毎回更新している累計調達額と、工場の規模で見ます。
| 時期 | 会社の公表内容 | 金額 | 出所 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月 | シリーズAと借入。Eclipseが主導し、Constellation Energy、Planetary Technologies、Uncorrelated Ventures、Trellis Climate、元SunPower CEOのTom Werner氏、Stifel Bank、CSC Leasingなどが参加 | 5,000万ドル | 公式リリース |
| 2025年3〜6月 | VC・借入・政府資金の累計(リリース末尾の会社紹介) | 8,300万ドル | 公式リリース |
| 2025年7月〜2026年6月 | 同上 | 8,700万ドル | 公式リリース |
| 2026年8月 | 同上。出資者の列挙に8090 Industriesが加わる | 1億ドル | 公式リリース |
| 時点不明 | 公的資金の累計(DOE・NSF・カリフォルニア州エネルギー委員会など15件) | 1,300万ドル | 公式FAQ |
リリース末尾の累計額は、2026年6月1日の発表で8,700万ドル、8月3日の発表で1億ドルになっています。 この2か月で約1,300万ドル増えた計算です 本稿の計算。 同じ時期に出資者として8090 Industriesの名前が加わっていますが、この増加分の内訳(新規出資か借入か)を説明する発表は見つかりませんでした 未確定/将来。 8月25日に選定が発表されたARPA-Eの約770万ドルは、1億ドルの発表より後の出来事です。
規模のもう一つの目安は工場です。フリーモントの商業実証工場は延床6万5,000平方フィート(約6,000平方メートル)、 ラインの定格能力は年約40MWで、パネルは研究開発用の素子の約60倍の大きさだと会社は説明しています 事実。 平方フィートの換算は1平方フィート=0.0929平方メートルによる本稿の計算です 本稿の計算。
5. ペロブスカイトにかけているリソース
Tandem PVはペロブスカイトとシリコンのタンデムパネルだけを事業にしている会社なので、会社の支出はほぼそのままペロブスカイトへの投入です。 金額は非公表ですが、何に投じているかは公表資料から具体的に読み取れます。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(技術) | 共同創業者・CTOのColin Bailie氏(スタンフォード大学で最初のペロブスカイト・シリコンタンデムセルを開発)。共同創業者のChris Eberspacher氏(Hanwha Solar・SoloPower・Nanosolar・Applied Materialsで太陽電池の技術開発を率いた) | 事実 |
| 人(製造・品質) | 製造担当VPのClemens Hofbauer氏(元SunPowerのオレゴン州モジュール工場長、2025年5月就任)、運用担当VPのFrank Blohm氏(2025年6月就任)、品質担当VPのRobert Meagley氏(元DOE太陽エネルギー技術局、2025年11月就任) | 事実 |
| 人(経営・取締役) | CEOのScott Wharton氏(元Logitech for Business責任者)。2026年6月、元米エネルギー長官のJennifer Granholm氏が取締役に就任 | 事実 |
| 人(人数) | 従業員数 | 非公表 |
| 金(調達) | 累計1億ドル(VC・借入・政府資金、2026年8月)。うちシリーズAと借入で5,000万ドル(2025年3月) | 事実 |
| 金(工場) | フリーモントの商業実証工場(約40MW)。投資額は非公表 | 事実/非公表 |
| 外部の買収 | nexTC Corporation(オレゴン州、溶液法の透明酸化物コーティング)を買収(2026年8月)。技術・知的財産・創業者が合流。買収額は非公表 | 事実 |
| 公的資金 | DOE太陽エネルギー技術局「STACKED」470万ドル(2024年5月選定)、カリフォルニア州エネルギー委員会400万ドル(2025年7月)、ARPA-E「SCALEUP Ready」約770万ドル(2026年8月選定)。公式FAQは公的資金を計1,300万ドル・15件と記載 | 事実 |
| 大学・研究機関 | 創業はDOEのスタートアップ支援制度Activate(ローレンス・バークレー国立研究所のCyclotron Road)から。公式サイトはDOE・NSF・CEC・同研究所との連携を挙げる。CEC資金で独立した試験機関・技術機関と組んで第三者試験を行う | 事実 |
DOEが2024年に選定したTandem PVのプロジェクト「STACKED」の説明には、 「太陽光の紫外線はペロブスカイト素子に大きな損傷を与えうるが、現在の屋外耐久性の模擬試験はその影響を十分に考慮していない」と書かれています 事実。 プロジェクトの狙いは、素子の正孔輸送層などの重要な層に紫外線への強さを作り込み、あわせて高温での耐久性も上げることです。 ペロブスカイトの劣化は吸収層そのものだけでなく、上下を挟む電荷輸送層と、その界面で起きることが多く、 同社が2026年に透明酸化物コーティングのnexTCを買収したのも、この「挟む層」を自社で管理したいという同じ問題意識の延長にあると読めます 推測。
nexTCの買収リリースは、この極薄の酸化物層が「電荷の輸送を調整しつつ、光を下のシリコンセルまで通す」役割を持ち、 モジュールの効率・耐久性・製造しやすさに重要だと説明しています 事実。 封止と層構成の論点は本シリーズの技術解説『封止とバリア層』も参照してください。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 創業前 | Bailie氏がスタンフォード大学の博士課程で、最初のペロブスカイト・シリコンタンデムセルを開発 | 技術の出自 |
| 2016年 | Bailie氏とEberspacher氏が、DOEの支援制度(Cyclotron Road/Activate)のもとで創業 | 国立研究所の起業支援から生まれた |
| 2024年5月 | DOEがSTACKED(紫外線に強い正孔輸送層)に470万ドルを選定(研究責任者はBailie氏) | 耐久性の研究に公的資金 |
| 2025年3月 | シリーズAと借入で5,000万ドル(Eclipse主導)。米国に商業規模の製造施設を建てると発表。パネル効率28% | 工場建設の資金を確保 |
| 2025年5〜6月 | 製造担当VP・運用担当VPが就任 | 量産に向けた体制づくり |
| 2025年7月 | カリフォルニア州エネルギー委員会から400万ドル。独立機関による性能・耐久性の第三者試験に充てる | 外部検証の資金 |
| 2025年11月 | 品質担当VP(元DOE)が就任。パネル効率29%と発表 | 試作から商業規模への移行期 |
| 2026年4月 | フリーモントに商業実証工場を開設(約40MW)。社内測定で効率29.7%、加速寿命試験で年平均出力低下1%未満(1年前比で約10倍の改善) | 研究開発から量産の検証段階へ |
| 2026年6月 | 元米エネルギー長官のGranholm氏が取締役に就任。最新世代のミニモジュールが社内測定で30.4%、外部認証の手続き中と発表 | 効率は依然として社内測定 |
| 2026年8月3日 | nexTCを買収。透明酸化物コーティングの技術・知的財産を取り込む | 中核工程の内製化 |
| 2026年8月25日 | ARPA-EのSCALEUP Readyに選定(約770万ドル、プロジェクト名「TANDEM」) | 大規模商業生産への移行を公的資金が後押し |
7. 今後の計画
(IPP)大規模発電所向けに集中すると会社が説明
会社は2026年4月の工場開設リリースで「年内に顧客検証試験向けの出荷を行い、2026年に最初の商業パネルを販売、2028年に大量生産を目指す」と書きました 事実。 公式サイトは、完成パネルを大規模発電所向けに売るだけでなく、既存のシリコンパネルの設計にペロブスカイト層を組み込みたい太陽電池メーカーとも組むとしています 事実。
次はいずれも会社の公表資料に記載がありません 未確定/将来。
2028年の大量生産を行う工場の所在地・生産能力・投資額/顧客の社名と出荷数量/パネルの販売価格/ 提携を検討している太陽電池メーカーの社名/nexTCの買収額/30.4%の外部認証の結果と認証機関名/ 上下の層の電気的な接続方式。 「Tandem PVが○GWの工場を建設」といった数字は報道ベースのものがあり、本稿では採用しません。
8. この会社はペロブスカイト太陽電池で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 一体型より作りやすさと歩留まりを優先した構造を選んでいる | FAQで重ね合わせ型を競合の一体型との違いとして強調し、ペロブスカイトの製造を「窓ガラスやテレビを作るのに近い。1枚の面を低温でコーティングする」と説明している | 推測 |
| 当面の売り物は効率より「効率と耐久性の組み合わせ」 | 2025年11月以降のリリース末尾で「効率と耐久性の最良の組み合わせ」を掲げ、加速試験の年1%未満の劣化を効率と並べて示している | 推測 |
| 中核の工程を内製化し、ライン上で直接最適化しようとしている | nexTC買収のリリースで、CEOが「製造工程の中核部分をより自社で管理でき、ライン上で直接最適化できる」と述べている | 事実 |
| 完成パネルの販売と技術供与の両方を選択肢に残している | 公式サイトが顧客としてIPPと並べて「既存のシリコンパネルにペロブスカイト層を組み込みたい太陽電池メーカー」を挙げている | 推測 |
| 米国内の製造と政策の後押しを重視している | 元米エネルギー長官を取締役に迎え、DOE・ARPA-E・カリフォルニア州の資金を継続して受けている。リリースは一貫して「米国の太陽電池製造の主導権回復」を掲げる | 推測 |
公式FAQの効率・耐久性の回答には、「最新で最高性能のパネルはまだ試験中で、効率と耐久性の独立した業界標準の検証を2024年中に提供する予定」と書かれたままになっています 事実。 ところが2026年6月のリリースでも、最新のミニモジュールの30.4%は「社内測定で、現在外部認証の手続き中」とされています 事実。 本稿はここから、第三者による効率の認証が、会社が当初見込んだ時期より遅れていると読みます 未確定/将来。 同社がカリフォルニア州の資金を「独立した機関による第三者試験」に充てると明言していることも、外部検証が次の関門であることを示しています。 ただし、FAQの記述が更新されていないだけの可能性もあり、遅れの理由を会社は説明していません。これは本稿の解釈にとどまります。
9. ペロブスカイト分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 項目 | 会社の公表内容 |
|---|---|
| パネル構造 | 従来のシリコンセルと薄膜のペロブスカイトを重ね合わせたタンデムパネル。ペロブスカイトをシリコンセルに直接成膜する一体型ではない |
| ペロブスカイト層 | 厚さ約1マイクロメートル(シリコンウェーハの100〜150マイクロメートルに対し約200分の1)。パネル全体で数グラムの材料 |
| 製造工程 | 1枚の面を低温でコーティングする工程で、窓ガラスやテレビの製造に近いと説明。工程温度は約150℃(シリコンは約1,500℃まで加熱)で、製造に要するエネルギーは約10分の1 |
| 鉛の使用量 | 従来のシリコンパネルの約15分の1と主張。鉛のリサイクルに関する特許を持つと説明 |
| 製品の寸法 | 大規模発電所の既存インフラに組み込める標準サイズのパネル |
| 保証 | 業界標準の保証を付ける予定 |
| 効率・耐久性の主張 | セル/モジュール・面積 | 認証の有無 |
|---|---|---|
| パネル効率28%(2025年3月・7月)、29%(2025年11月) | パネル。面積の記載なし | 会社発表 |
| 29.7%(2026年4月、研究開発の成果として) | 記載なし(製品パネルへ移行中と説明) | 会社発表(社内測定) |
| 最新世代のミニモジュールで30.4%(2026年6月) | ミニモジュール。面積の記載なし | 社内測定。外部認証の手続き中と会社が説明 |
| 加速寿命試験で年平均出力低下1%未満 | 最新世代のパネル | 会社発表(加速試験の条件は非公表) |
| 2025年末までに30%超を見込む(2025年3月) | パネル | 見通しの表現 |
| NRELの研究セル効率表とチャンピオンモジュール効率表(いずれも2026年7月17日改訂版) | ― | Tandem PVの名前は掲載されていない |
会社は「効率29%のパネルは平均的なシリコンパネルより約30%強力」(2025年11月)、「効率30%で同じ大きさなら約40%多い電力」(公式サイト)と書いています。 逆算すると、比較相手の「平均的なシリコンパネル」の効率は、前者で29÷1.3≒22.3%、後者で30÷1.4≒21.4%と置かれていることになります 本稿の計算。 比較の基準が発表ごとに少しずつ違う点は、数字を読むときに注意が必要です。 効率の読み方は本シリーズの技術解説『変換効率と評価指標』で扱っています。
一体型(2端子)のタンデムは、シリコンセルの凹凸のある表面に直接ペロブスカイトを積むため、シリコン側の工程とペロブスカイト側の工程が1枚のウェーハの上で絡み合います。 片方の不良がもう片方を道連れにし、上下の電流もそろえなければなりません。 重ね合わせ型は、ペロブスカイトを平らな基板の上で別に作り、あとからシリコンと組み合わせるので、 Tandem PVのFAQが言うとおり「1枚の面を低温でコーティングする」工程で済み、シリコンセルは既存品を使えます 推測。
その代わりに、層が1枚増えるぶん透明電極や基板での光の損失が加わり、部材点数も増える、というのが一般的な得失です 推測。 同社がnexTCの透明酸化物コーティングを買収したのは、まさにこの「光を通しながら電気を運ぶ層」が重ね合わせ型の効率と耐久性を左右するからだと読めます。 買収リリースが、この層を「光を下のシリコンセルまで通す」ものと説明している点も、この読みと整合します 事実。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 財務が見えない | 非上場で売上・損益・手元資金を公表していない。累計額の増加(2026年6〜8月に約1,300万ドル)の内訳も説明されていない | 未確定/将来 |
| 効率が第三者認証されていない | 30.4%は社内測定で外部認証の手続き中。NRELの効率表にも掲載がない | 事実 |
| 検証の遅れ | FAQは「2024年中に独立した業界標準の検証を提供する予定」と書いているが、2026年6月時点でも認証の手続き中 | 事実 |
| 実証工場から大量生産への距離 | 現在の工場は約40MW。2028年の大量生産を行う工場の所在地・規模・資金は公表されていない | 事実 |
| 主流と違う構造を選んだ | 会社自身が「大半の競合は一体型」と書いている。部材点数の多さがコストで不利に働く可能性 | 推測 |
| 公表数値の揺れ | DOEの採択一覧はSTACKEDのDOE負担を470万ドルとするが、会社のリリースは「2024年後半にDOEから520万ドル」と書いている。公的資金の件数もFAQは15件、トップページは16件で、累計調達額もリリースによって8,300万・8,700万・1億ドルと推移している | 事実 |
12. 用語集
- ペロブスカイト太陽電池
- ペロブスカイト型の結晶構造を持つ金属ハライド材料を光吸収層に使う太陽電池。薄く作れ、光の吸収が強い。
- 一体型(モノリシック)タンデム
- 1枚のシリコンセルの上に直接ペロブスカイトを積み、上下を直列に一体化したセル。2端子型とも呼ぶ。
- 重ね合わせ型(stacked)
- ペロブスカイトとシリコンを別々に作ってから重ねる方式。Tandem PVが自社の構造をこう呼んでいる。
- 正孔輸送層
- 光で生まれたプラスの電荷(正孔)を電極へ運ぶ層。ペロブスカイト層に接し、劣化の起点になりやすい。
- 透明酸化物コーティング
- 光を通しながら電気を運ぶ酸化物の薄膜。タンデムでは上の層と下のシリコンをつなぐ要所に使う。
- 加速寿命試験
- 高温・高湿・強い光などの厳しい条件で劣化を早め、長期の寿命を短期間で推定する試験。
- IPP
- 独立系発電事業者(Independent Power Producer)。発電所を建てて電力を売る事業者。
- ARPA-E
- 米国エネルギー省の高等研究計画局。実用化の手前にある革新的なエネルギー技術に資金を出す。
13. 出典
- Tandem PV, Inc. 公式サイト トップページ。効率30%・約40%多い電力・加速試験で年1%未満の劣化、調達額8,700万ドル・政府助成16件、最初の顧客がIPPであること、太陽電池メーカーとの提携方針、社名表記(著作権表示)、ロゴ画像の取得元。 https://www.tandempv.com/
- Tandem PV, Inc. 公式サイト「About」。2016年創業、創業者と経営陣の経歴、1億ドルの資金、DOE・NSF・CEC・ローレンス・バークレー国立研究所との連携。 https://www.tandempv.com/about
- Tandem PV, Inc. 公式サイト「FAQ」。重ね合わせ型と一体型の違い、効率29%、2024年中の独立検証の予定、約150℃の工程、ペロブスカイト層の厚さ、鉛の使用量、最初の顧客、保証、社名の由来、公的資金1,300万ドル・15件、調達額8,700万ドル。 https://www.tandempv.com/faq
- Tandem PV, Inc. 公式サイト「Technology」。ペロブスカイト層の薄さ、30%以上を目指す設計。 https://www.tandempv.com/technology
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Raises $50M to Take Back U.S. Leadership With New Perovskite Solar Manufacturing」(2025年3月4日)。シリーズAと借入5,000万ドル、Eclipse主導と参加者、米国での製造施設の建設、効率28%と2025年末30%超の見込み、累計8,300万ドル。 https://www.prnewswire.com/news-releases/tandem-pv-raises-50m-to-take-back-us-leadership-with-new-perovskite-solar-manufacturing-302390991.html
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Appoints Clemens Hofbauer as VP of Manufacturing」(2025年5月12日)。製造担当VPの就任と経歴。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-appoints-clemens-hofbauer-as-vp-of-manufacturing-to-scale-u.s.-production-of-high-efficiency-perovskite-solar-panels
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Names Frank Blohm as Vice President of Operations」(2025年6月17日)。運用担当VPの就任、累計8,300万ドル。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-names-frank-blohm-as-vice-president-of-operations-to-drive-scale-and-strengthen-u.s.-solar-leadership
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Awarded $4M California Energy Commission Grant」(2025年7月17日)。CECの400万ドル、独立機関による第三者試験、効率28%、2024年後半のDOE 520万ドルという記述、累計8,700万ドル。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-awarded-%244m-california-energy-commission-grant-to-accelerate-commercial-readiness-of-next-gen-solar-panels
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Strengthens Executive Team With Appointment of Leading Materials Scientist Dr. Robert Meagley as Vice President of Quality」(2025年11月18日)。品質担当VPの就任と経歴、効率29%。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-strengthens-executive-team-with-appointment-of-leading-materials-scientist-dr.-robert-meagley-as-vice-president-of-quality
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Opens California Factory for Next-Generation Solar Manufacturing」(2026年4月20日)。フリーモントの商業実証工場(6万5,000平方フィート、約40MW、研究開発素子の約60倍の大きさ)、社内測定29.7%、年1%未満の劣化、2026年の最初の商業販売と2028年の大量生産。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-opens-california-factory-for-next-generation-solar-manufacturing
- Tandem PV プレスリリース「Former U.S. Energy Secretary Jennifer Granholm Joins Tandem PV Board of Directors」(2026年6月1日)。取締役就任、ミニモジュール30.4%(社内測定・外部認証の手続き中)、累計8,700万ドル。 https://www.tandempv.com/news/former-u.s.-energy-secretary-jennifer-granholm-joins-tandem-pv-board-of-directors
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Acquires nexTC to Bring Critical Coating Technology In-House」(2026年8月3日)。nexTCの買収、透明酸化物コーティングの役割、CEOのコメント、累計1億ドルと8090 Industries。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-acquires-nextc-to-bring-critical-coating-technology-in-house
- Tandem PV プレスリリース「Tandem PV Selected for ARPA-E SCALEUP Ready Award to Accelerate American Solar Manufacturing」(2026年8月25日)。約770万ドル、プロジェクト名「TANDEM」。 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-selected-for-arpa-e-scaleup-ready-award-to-accelerate-american-solar-manufacturing
- 米国エネルギー省(DOE) Advancing U.S. Thin-Film Solar Photovoltaics Funding Program(2024年5月16日選定発表)。Tandem PVのプロジェクト「STACKED」、DOE負担470万ドル、自己負担200万ドル、研究責任者Colin Bailie氏、紫外線に強い正孔輸送層の開発。 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program
- Tandem PV, Inc. 公式サイト「Investors」。1億ドルの資金、最大50%高い効率の可能性という主張。 https://www.tandempv.com/investors
- NREL(現 National Laboratory of the Rockies) Best Research-Cell Efficiency Chart(2026年7月17日改訂)。Tandem PVの記録が掲載されていないことの確認。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/best-research-cell-efficiencies.pdf
- NREL(現 National Laboratory of the Rockies) Champion Module Efficiencies(2026年7月17日改訂)。Tandem PVの記録が掲載されていないことの確認。 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/champion-module-chart.pdf
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 法人名がTandem PV, Inc.であること、本社所在地(フリーモント)、公式ロゴ | 事実 | 出典1 https://www.tandempv.com/ |
| 2016年創業、創業者2名の経歴、Cyclotron Road/Activateでの創業、経営陣の経歴 | 事実 | 出典2・3 https://www.tandempv.com/about |
| 重ね合わせ型で一体型ではないこと、低温コーティングの工程、約150℃、層の厚さ、鉛の使用量、2024年中の独立検証の予定、公的資金1,300万ドル・15件、社名の由来 | 事実 | 出典3 https://www.tandempv.com/faq |
| シリーズAと借入5,000万ドル、Eclipse主導と参加者、米国の製造施設建設、効率28%、累計8,300万ドル(2025年3月) | 事実 | 出典5 https://www.prnewswire.com/news-releases/tandem-pv-raises-50m-to-take-back-us-leadership-with-new-perovskite-solar-manufacturing-302390991.html |
| 製造担当VP・運用担当VPの就任(2025年5・6月) | 事実 | 出典6・7 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-names-frank-blohm-as-vice-president-of-operations-to-drive-scale-and-strengthen-u.s.-solar-leadership |
| CECの400万ドルと第三者試験、「2024年後半にDOEから520万ドル」という会社の記述 | 事実 | 出典8 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-awarded-%244m-california-energy-commission-grant-to-accelerate-commercial-readiness-of-next-gen-solar-panels |
| 品質担当VPの就任と経歴、効率29%(2025年11月) | 事実 | 出典9 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-strengthens-executive-team-with-appointment-of-leading-materials-scientist-dr.-robert-meagley-as-vice-president-of-quality |
| フリーモント工場の開設と規模、29.7%(社内測定)、年1%未満の劣化、2026年の商業販売・2028年の大量生産 | 事実 | 出典10 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-opens-california-factory-for-next-generation-solar-manufacturing |
| Granholm氏の取締役就任、ミニモジュール30.4%が社内測定で外部認証の手続き中、累計8,700万ドル | 事実 | 出典11 https://www.tandempv.com/news/former-u.s.-energy-secretary-jennifer-granholm-joins-tandem-pv-board-of-directors |
| nexTCの買収、透明酸化物コーティングの役割、CEOのコメント、累計1億ドルと8090 Industries | 事実 | 出典12 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-acquires-nextc-to-bring-critical-coating-technology-in-house |
| ARPA-E SCALEUP Readyへの選定(約770万ドル、TANDEM) | 事実 | 出典13 https://www.tandempv.com/news/tandem-pv-selected-for-arpa-e-scaleup-ready-award-to-accelerate-american-solar-manufacturing |
| DOEのSTACKED(470万ドル、自己負担200万ドル、紫外線に強い正孔輸送層、2024年5月選定) | 事実 | 出典14 https://www.energy.gov/cmei/systems/advancing-us-thin-film-solar-photovoltaics-funding-program |
| 効率30%・約40%多い電力、政府助成16件、最初の顧客がIPP、太陽電池メーカーとの提携方針 | 事実 | 出典1 https://www.tandempv.com/ |
| 30%以上を目指す設計、1億ドルの資金、最大50%高い効率の可能性という主張 | 事実 | 出典4・15 https://www.tandempv.com/investors |
| NRELの研究セル効率表・チャンピオンモジュール効率表にTandem PVの名前がないこと | 事実 | 出典16・17 https://www.nlr.gov/docs/libraries/pv/best-research-cell-efficiencies.pdf |
| 2026年6〜8月に累計額が約1,300万ドル増えたこと | 本稿の計算 | 出典11と出典12の累計額の差による本稿の計算 |
| 工場の延床を約6,000平方メートルに換算 | 本稿の計算 | 出典10の6万5,000平方フィートに0.0929を掛けた本稿の計算 |
| 比較相手の平均的なシリコンパネルの効率が22.3%・21.4%と置かれていること | 本稿の計算 | 出典9と出典1の数値から本稿が逆算したもの |
| ペロブスカイト太陽電池の3類型の区分 | 本稿の計算 | 本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示 |
| 売上・損益・手元資金・従業員数、工場の投資額 | 未確定/将来 | 非上場のため未公表。本稿では推計もしない |
| 大量生産の工場の所在地・能力・投資額、顧客名と数量、価格、提携先の社名、nexTCの買収額、30.4%の認証結果、層の接続方式、累計額の増加分の内訳 | 未確定/将来 | いずれも会社の公表資料に記載なし。本稿では報道ベースの数値を採用しない |
| 効率と耐久性の組み合わせを当面の売り物にしているという読み | 推測 | 出典9〜13の会社紹介文と数値の示し方からの本稿の解釈 |
| 一体型より作りやすさと歩留まりを優先した構造という読み | 推測 | 出典3の記述からの本稿の解釈 |
| 完成パネルの販売と技術供与の両方を選択肢に残しているという読み | 推測 | 出典1の顧客の記述からの本稿の解釈 |
| 米国内の製造と政策の後押しを重視しているという読み | 推測 | 出典8・11・13・14からの本稿の解釈 |
| 第三者による効率認証が当初の見込みより遅れているという読み | 推測 | 出典3と出典11の記述の比較からの本稿の解釈。FAQが更新されていないだけの可能性もある |
| nexTC買収が電荷輸送層・界面の管理と同じ問題意識によるという読み、重ね合わせ型の得失 | 推測 | 出典12・14の記述と一般的な素子構造の理解に基づく本稿の解説 |
| 主流と違う構造を選んだことによるコスト上のリスク | 推測 | 出典3の記述からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべてTandem PVの公式プレスリリース・公式サイトと、米国エネルギー省・NRELの公表資料に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません(会社の技術ページが引用している調査会社の市場予測も採用していません)。効率・耐久性の数値は、認証機関の確認がないものを「会社発表」「社内測定」と明記しています。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。