TECHNOLOGY EXPLAINER
光回路スイッチ(OCS)
― 光を電気に戻さず、鏡や液晶で「つなぎ替える」
ふつうのネットワークスイッチは、届いた光をいったん電気に戻し、宛先を読んでから、また光にして送り出します。 光回路スイッチ(OCS)は、光のまま、入口のファイバを出口のファイバへ物理的につなぎ替える装置です。 Google は、MEMS の微小な鏡で光を曲げる自社開発の OCS を数万台製造・導入したと報告しています。 中身は、金をコーティングした鏡、光を通す窓、磁気光学結晶——光学材料のかたまりです。
- 光回路スイッチとは何か(3行でつかむ)
- 電気のスイッチとの違い ― 「読む」か「つなぐ」か
- 方式の比較 ― MEMS・液晶・ロボット・圧電
- MEMS 型の中身 ― 2枚の鏡の配列と、カメラによる制御
- データセンターでの使われ方 ― Apollo と TPU v4
- 本稿の計算:ポートの勘定と、鏡の歩留まり
- 素材技術者の視点①:OCS は光学材料のかたまり
- 素材技術者の視点②:サーキュレータとガーネット ― ポートを倍にする結晶
- 課題
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=論文・企業の公式発表に記載のある内容(出典リンクあり)。企業の性能・優位性の主張は「〇〇社の主張」として扱います
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通しであり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
1. 光回路スイッチとは何か(3行でつかむ)
- 何をするか:入力ポートのファイバから来た光を、指定した出力ポートのファイバへ、光のまま導きます。Google の Apollo 論文は、MEMS 型の OCS を「simply deflects light from the input port to the desired output port」(入力ポートの光を目的の出力ポートへ単に偏向させる)と説明しています事実
- 何がうれしいか:光のまま通すので、通信速度や波長に依存せず、光トランシーバーが世代交代しても同じ OCS を使い続けられる、と同論文は述べています事実
- 何が弱いか:つなぎ替えにかかる時間がミリ秒単位と遅く、パケットごとの切り替えはできません。同論文は、市販 OCS の切り替え時間が典型的に10〜20 msだとしています事実
OCS の両端につながる光モジュールは「光トランシーバー」編、 1本のファイバに複数の波長を載せる WDM は「波長多重とマイクロリング」編、 ファイバと部品の接続は「光コネクタとファイバー実装」編で詳しく扱います。 GPU をラック内で結ぶ電気のスケールアップ網は「光インターコネクトとSerDes」編で扱いました。
2. 電気のスイッチとの違い ― 「読む」か「つなぐ」か
Apollo 論文は、OCS の利点を次のように整理しています事実。
- 速度・波長に依存しない:光路が広帯域で受動的なので、通信速度や多重する波長数を上げても同じ OCS を使える。光のファブリックは、電源や冷却と同じように建物の一部になり、費用を数年ではなく数十年で償却できる
- 低電力:パケットごとの処理がないので、1ビットあたりのエネルギーは電気スイッチより桁違いに小さくなりうる。MEMS の鏡は電気的には容量性の負荷で、駆動電圧は1〜数百 Vと高いが、位置を保つ電力はきわめて小さい。よく設計された高電圧ドライバは鏡・ポートあたり数十 mW程度
- 低遅延:遅延は光の伝搬時間で決まり、ファイバ中で約5 ns/m、自由空間で約3.3 ns/m。同等のスループットの電気スイッチは1ホップあたり数十〜数百 nsを加える
3. 方式の比較 ― MEMS・液晶・ロボット・圧電
光の向きを変える方法はいくつもあります。Apollo 論文は、OCS の技術を次のように比較しています事実。
| 方式 | 相対コスト | ポート数(例) | 切り替え時間 | 挿入損失 | 駆動電圧 | 電源断で状態保持 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| MEMS | 中 | 320×320 | ms | <3 dB | 数百 V | しない |
| ロボット | 中 | 1008×1008 | 分(1接続あたり) | <1 dB | — | する |
| 圧電 | 高 | 384×384 | ms | <2.5 dB | 数十 V | しない |
| 導波路型 | 低 | 16×16 | ms | <6 dB | 数 V | しない |
| 波長切り替え | 未定 | 100×100 | ns | <6 dB | 0 | する |
すべて事実(Google Apollo 論文 Table 1[参考資料1])。コストと挿入損失は表示したポート数での値で、挿入損失はコネクタ損失を含みます。「—」は表に記載のない欄です。液晶方式はこの表に含まれていません。
同論文は、データセンターに必要な大きなポート数を許容できるコストで実現するうえで、MEMS 方式が最も有望で、1000×1000 を超える接続も実現されていたとしています事実。 ロボット方式は大きなポート数とあらゆるファイバに対応できる一方で切り替えが遅く、圧電方式は組立の複雑さからコストが高く、導波路型は安価で小型だが規模が小さく損失が大きい、と整理しています事実。
液晶方式と MEMS 方式 ― 各社の主張
| 項目 | Coherent(液晶方式)の発表 | Lumentum(MEMS 方式)の発表 |
|---|---|---|
| 製品・ポート数 | 300×300 ポートの OCS。2024年3月発表、OFC 2024 で実演 | R300、300×300 ポート。2025年3月時点で複数の顧客がサンプル評価中 |
| 方式 | 波長選択スイッチ(WSS)で18年以上使ってきたデジタル液晶技術を応用 | 通信用途で数十年の実績を持つMEMS ミラー |
| 同社が主張する利点 | 液晶セルの駆動電圧は10 V 未満。競合する電気機械式は内部の非常に高い電圧のため信頼性が低くなりがち | 液晶方式と異なり O・C・L 帯にわたって動作。閉ループ制御が不要。現場での鏡の稼働時間は延べ1兆時間超 |
| 出荷の見通し | 量産出荷は2025年に開始の見込み(発表時点) | 一般提供は2025年後半の見込み(発表時点) |
すべて各社の公式発表に記載された事実ですが、利点の欄は各社の主張であり、本稿では検証していません(Coherent[参考資料3]、Lumentum[参考資料4])。出荷の見通しは発表時点の計画です。
興味深いのは、両社が互いの方式の弱点を指摘していることです。 Coherent は MEMS などの電気機械式の高電圧を、Lumentum は液晶方式の波長帯域を挙げています。 Apollo 論文も、MEMS 方式では高電圧動作が品質管理の不十分な場合に信頼性の制約になりうると書いています事実。 どちらの弱点も、材料の物性から来ている点が素材技術者にとっての読みどころです(第7章)。
4. MEMS 型の中身 ― 2枚の鏡の配列と、カメラによる制御
Google が自社開発した Palomar OCS の光学コアは、次のように説明されています事実。
- 信号光は、2次元のファイバ・コリメータ配列(N×N のファイバ配列と2次元レンズ配列)から入り、2組の2次元 MEMS 鏡配列で2回反射して、出口のコリメータへ入る
- 任意の入口から任意の出口へ光を最適に結合するため、2つの MEMS 鏡パッケージで4つの自由度を持たせている
- 各 MEMS 配列に850 nm の監視光を注入し、反射をカメラで受けて、カメラ画像をもとに損失が最小になるよう鏡を制御する。鏡ごとに受光素子を置く従来方式より、制御が大幅に簡素になった
- その結果、136×136 の非ブロッキング OCS を実現し、切り替え時間はミリ秒単位、最悪値の挿入損失は2 dB、反射減衰量は−38 dB
- 装置全体の最大消費電力は108 Wで、同じ容量の電気スイッチの電力のごく一部。この136×136(予備8ポートを含む)の OCS を、過去10年で数万台製造・導入した
5. データセンターでの使われ方 ― Apollo と TPU v4
(1) データセンター網の中核層(Apollo)
Apollo 論文は、Apollo を「the world's first large-scale production deployment of optical circuit switches (OCSes) for datacenter networking」 (同社の知る限り、データセンターネットワークにおける世界初の大規模な OCS の実運用)と位置づけています事実(同社の主張)。 OCS を使うことで、従来のスパイン層を実装していた電気スイッチと光インターフェースをなくし、コストと電力を削減するとしています事実。 OCS の導入にあたっては、ネットワーク費用の15%を光スイッチングに充てる予算を置いた、とも述べています事実。
(2) AI 計算機の相互接続(TPU v4)
Google の TPU v4 論文(ISCA 2023)は、4,096個の TPU v4 チップを OCS で結ぶスーパーコンピューターを報告しています事実。
- 64個のチップ(4×4×4)を1ラックの中は受動的な電気ケーブルで結び、この塊を64個、48台の OCS で結ぶ
- 各塊は6つの面に16本ずつ、計96本の光リンクを持つ。向かい合う面のリンクを同じ OCS につなぐので、各塊は 6 × 16 ÷ 2 = 48台の OCS につながる
- OCS は用途に応じて接続の形(トポロジー)を動的に組み替え、規模・可用性・利用率・電力・性能などを改善する
- OCS と光部品(光モジュール、ファイバ、OCS 設備を含む光ファブリック全体)の費用は、システム全体の設備費の5%未満、電力の3%未満
TPU v4 では、ラックの中は受動的な電気ケーブル、ラックとラックの間は光と OCS、という分担になっています事実。 「光インターコネクトとSerDes」編で見た GB200 NVL72 の「ラックの中は銅」と同じ構図が、ここにも表れています(本記事による解説)。
6. 本稿の計算:ポートの勘定と、鏡の歩留まり
- 1ポートあたりの電力:108 W ÷ 136ポート ≒ 約0.8 W本稿の計算。「光トランシーバー」編で見た 800G〜1.6T の光モジュール(仕様上限30〜40 W 超)と比べると、桁が違います。ただし OCS 自体は信号を送受信しないので、両端の光モジュールの電力は別に必要です
- サーキュレータの効果:1本のファイバで双方向に通信するので、必要な OCS ポートとファイバは半分になる、と論文は述べています事実。136ポートの OCS が、実効的に 272 本の片方向接続を扱う計算です本稿の計算
7. 素材技術者の視点①:OCS は光学材料のかたまり
Apollo 論文は、Palomar の MEMS 鏡パッケージについて、次のように書いています事実。
- セラミックパッケージの中に、176枚の個別に制御できる鏡を持つ大きな MEMS ダイがあり、校正を経て最終的に136枚を使う
- パッケージの上に窓を置いて MEMS ダイを封止し、製品寿命のあいだほこりと湿気から微小鏡を守る
- 窓を傾けて、ゼロ電圧状態での結合とコリメータへの戻り反射を防ぐ
- 窓のコーティングは、監視用の850 nm と通信波長の両方を最小の損失で通すよう設計されている。各データ経路は窓のコーティングを合計8回(上下の面)通るので、これはきわめて重要
- 各微小鏡は、光損失を最小にするため反射率の高い金のコーティングを持つ。鏡は DRIE(深掘り反応性イオンエッチング)ベースの工程で、大口径で平らな、反射率の高い微小鏡として作られる
論文が求める挿入損失は理想的には2 dB 未満で、光リンクの予算は「a very precious commodity」(非常に貴重な資源)だとしています事実。 その 2 dB の中に、ファイバとレンズの結合、金の鏡での反射2回、窓のコーティングの通過8回が入ります(本記事による整理)。
前提(本稿の仮定):2 dB のうち、仮に窓のコーティング全体に割ける損失を 0.1 dB とする。
0.1 dB ÷ 8回 = 1面あたり 0.0125 dB。パワーに直すと 1 − 10^(−0.00125) ≒ 約0.29%の損失に相当します本稿の計算。
しかもそれを、850 nm と通信波長(O 帯など)という離れた波長で同時に満たす必要があります。
0.1 dB という配分は説明のための仮定で、論文には記載がありません。
ここから読めるのは、OCS の性能を決めるのがMEMS の機械設計だけではないということです。 2つの離れた波長帯で低反射な多層膜コーティング、長期に反射率が落ちない金属反射膜、湿気を遮る封止構造、 そして数百 V を長期にかけ続けても絶縁が劣化しない電極・配線まわりの材料—— Apollo 論文も、高電圧の IC と動作が MEMS 光スイッチの最大の信頼性課題のひとつだと書いています事実。 第3章で見た「液晶は低電圧、MEMS は広帯域」という各社の主張の対立は、突き詰めれば液晶材料の波長特性と、MEMS の高電圧に耐える材料の信頼性のどちらを取るか、という材料の選択です(本記事による解説)。
8. 素材技術者の視点②:サーキュレータとガーネット ― ポートを倍にする結晶
Apollo 論文によれば、光サーキュレータは3ポートの非相反素子で、ポート1への入力はポート2へ、ポート2への入力はポート3へ向かいます。 これを複屈折結晶、磁気光学のファラデー回転子(典型的にはガーネット製)、偏光子で実現します事実。 送信と受信を1本のファイバにまとめることで、OCS のポートとファイバの必要数を半分にします事実。
論文はさらに、データセンターで大量に使う前、サーキュレータは主にエルビウム添加ファイバ増幅器で C 帯向けに限られた数量で使われていたこと、 適切な光学コーティングと光学設計の見直しによって O 帯(CWDM4)へ拡張したことを述べています事実。 また、反射の低減と方向性(ポート1から3への漏れの抑制)が決定的に重要で、漏れた光は実質的にリンク内の反射と同じになる、としています事実。
ここに素材の話が凝縮されています。
- ファラデー回転子:磁場の中で偏光を回す磁気光学結晶。回転の大きさと透明性は波長によって変わるため、使う波長帯が変われば材料と厚みの設計も変わる
- コーティング:ここでも、反射を抑える多層膜が「C 帯の部品を O 帯で使えるようにする」鍵になった
- 数量の変化:海底ケーブルや長距離通信の増幅器向けだった部品が、データセンターの OCS とともに大量生産品になった
通信用の特殊な結晶部品が、データセンターの量で求められるようになった—— これは、光通信の材料メーカーにとって、既存の結晶育成・薄膜技術の新しい出口ができたことを意味します(本記事による解説)。
9. 課題
(1) 切り替えの速さ
Apollo 論文は、市販 OCS の切り替え時間は典型的に10〜20 msで、制御ソフトと鏡の設定時間が律速し、光トランシーバーの受信側の初期化も速い切り替えを妨げるとしています事実。 現在の用途ではミリ秒で十分だが、マイクロ秒単位で切り替えられる大規模 OCSには将来の大きな機会がある、とも述べています未確定/将来。
(2) ポート数・切り替え時間・損失の三すくみ
同論文は、現在の OCS 設計ではポート数・切り替え時間・挿入損失の間に固定的なトレードオフがあり、別の方式の探索が重要な研究領域であり続けるとしています事実。 第3章の表の数字は、まさにこの三すくみを示しています。
(3) 広い波長帯域への対応
Apollo 論文は、将来のデータセンターでは O・S・C・L 帯にまたがる多数の波長を使う可能性があり、その広い帯域で反射を低く保つことが難しくなると指摘しています事実。 第7章の窓のコーティングの問題は、帯域が広がるほど厳しくなります(本記事による解説)。
(4) 商用品の普及
Coherent と Lumentum の 300×300 ポート製品は、それぞれの発表時点で2025年の量産出荷・一般提供を見込んでいました事実。 その後の出荷実績や採用規模は、本稿の調査範囲では一次情報で確認できていません未確定/将来。 なお、OCS の市場規模の推計は、本シリーズの方針により使用していません。
- OCS は、光を電気に戻さずに、入口のファイバを出口のファイバへつなぎ替える装置です事実
- 速度・波長に依存せず、低電力・低遅延。弱点は10〜20 ms 程度の切り替え時間です事実
- Google の Palomar は 136×136 の MEMS 型、最悪値の損失2 dB、最大108 W で、数万台が導入されました事実
- TPU v4 では48台の OCS が 4,096 チップを結び、光ファブリック全体で設備費の5%未満・電力の3%未満でした事実
- 液晶方式(Coherent:低電圧)と MEMS 方式(Lumentum:広帯域)は、互いの材料由来の弱点を指摘しています(各社の主張)
- 中身は金の鏡、8回通る窓のコーティング、封止、ガーネットのファラデー回転子——光学材料のかたまりです(本記事による解説)
10. 用語集
- 光回路スイッチ(OCS)
- 光を電気に変換せず、入力ファイバを出力ファイバへ物理的につなぎ替えるスイッチ。
- 電気パケットスイッチ(EPS)
- 光を電気に戻し、パケットの宛先を読んで振り分ける通常のネットワークスイッチ。
- OEO 変換
- 光→電気→光の変換。電気スイッチを通るたびに発生する。
- MEMS
- 微小電気機械システム。シリコンの微細加工で作る可動構造。OCS では微小な鏡。
- DRIE
- 深掘り反応性イオンエッチング。シリコンを深く垂直に削る加工。
- コリメータ
- ファイバから出た光を平行な光線にするレンズ部品。
- 非ブロッキング
- どの入力もどの出力にも、他の接続を妨げずにつなげること。
- 挿入損失
- 部品を通ることで失われる光の量(dB)。2 dB で約63%が残る。
- 反射減衰量
- 入射した光のうち戻ってくる反射の少なさ(dB)。
- 液晶方式
- 電圧で液晶の配向を変え、光の偏光や向きを制御して切り替える方式。
- 光サーキュレータ
- 光を決まった順番のポートへだけ送る非相反の3ポート素子。
- ファラデー回転子
- 磁場の中で光の偏光面を回転させる磁気光学素子。ガーネットなどを使う。
- WDM
- 波長分割多重。1本のファイバに複数の波長を載せる方式。
11. 参考資料(一次情報)
- Urata R. ほか(Google, arXiv, 2022)「Mission Apollo: Landing Optical Circuit Switching at Datacenter Scale」arXiv:2208.10041 — arxiv.org
- Jouppi N. P. ほか(Google, ISCA 2023)「TPU v4: An Optically Reconfigurable Supercomputer for Machine Learning with Hardware Support for Embeddings」arXiv:2304.01433 — arxiv.org
- Coherent「Coherent Announces Optical Circuit Switch for Data Centers」2024年3月25日 — coherent.com
- Lumentum「Lumentum Optical Circuit Switch to Improve Next-Generation AI Data Center Scalability」2025年3月26日(PDF) — q4cdn.com(Lumentum IR)
12. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| MEMS 型 OCS が入力ポートの光を目的の出力ポートへ偏向させること。速度・波長に依存せず複数世代で再利用でき、光ファブリックが建物の一部として数十年で償却されること。パケット処理がなく低電力、鏡は容量性負荷で駆動電圧1〜数百 V、ドライバは鏡・ポートあたり数十 mW 程度。遅延はファイバ約5 ns/m・自由空間約3.3 ns/m、EPS は1ホップ数十〜数百 ns。市販 OCS の切り替え時間が典型的に10〜20 ms、マイクロ秒級の大規模 OCS に将来の機会があること。挿入損失を理想的には2 dB 未満、光リンク予算が「a very precious commodity」。O・S・C・L 帯で反射を低く保つのが難しくなること。ポート数・切り替え時間・挿入損失の固定的なトレードオフ。Table 1 の方式比較と MEMS が最も有望(1000×1000 超の実績)との評価、各方式の長短、高電圧が信頼性の制約になりうること。Palomar の光学コア(2次元コリメータ配列、2組の2次元 MEMS 鏡配列、4自由度、850 nm 監視光とカメラ制御)、136×136 非ブロッキング、ms 単位の切り替え、最悪値の挿入損失2 dB・反射減衰量−38 dB、最大108 W、数万台の製造・導入(予備8ポート)。セラミックパッケージ内の176枚の鏡から136枚を使うこと、窓による封止(ほこり・湿気)、傾けた窓、850 nm と通信波長を通すコーティングを各経路が8回通ること、金コーティング、DRIE、1枚4本の配線、高電圧が最大の信頼性課題のひとつであること。Apollo を世界初の大規模な OCS 実運用と位置づけていること、スパイン層の電気スイッチを除いたこと、ネットワーク費用の15%の予算。サーキュレータの働き(3ポート非相反、複屈折結晶・ガーネット製ファラデー回転子・偏光子)、ポートとファイバを半分にすること、EDFA での用途から O 帯へ拡張したこと、反射と方向性の重要性 | Google Apollo 論文(arXiv:2208.10041)出典1 https://arxiv.org/abs/2208.10041 | 事実 |
| TPU v4 の 4,096 チップを OCS で結ぶこと。64チップ(4×4×4)の塊をラック内は受動的な電気ケーブルで結ぶこと。各塊が96本の光リンクを持ち48台の OCS につながること。Palomar が136×136(128+予備8)であること。OCS がトポロジーを動的に組み替えること。光ファブリック全体(光モジュール・ファイバ・OCS 設備)の費用が設備費の5%未満・電力の3%未満であること | Google TPU v4 論文(ISCA 2023, arXiv:2304.01433)出典2 https://arxiv.org/abs/2304.01433 | 事実 |
| Coherent が2024年3月25日にデジタル液晶技術ベースの300×300ポート OCS を発表し、OFC 2024 で実演したこと。WSS で18年以上液晶技術を使い16万台超を出荷してきたこと。液晶セルの駆動電圧10 V 未満、電気機械式は高電圧のため信頼性が低くなりがちとの主張。量産出荷は2025年開始見込み(発表時点) | Coherent プレスリリース(2024年3月25日)出典3 https://www.coherent.com/news/press-releases/optical-circuit-switch-for-data-centers-live-demo-at-ofc-2024-based-on-ultrareliable-dlx-technology | 事実 |
| Lumentum の R300(300×300 ポート、MEMS)が2025年3月時点で複数の顧客にサンプル出荷中、一般提供は2025年後半見込み。液晶方式と異なり O・C・L 帯で動作する、閉ループ制御が不要、鏡の現場稼働時間延べ1兆時間超との主張 | Lumentum ニュースリリース(2025年3月26日)出典4 https://s21.q4cdn.com/377324469/files/doc_news/Lumentum-Optical-Circuit-Switch-to-Improve-Next-Generation-AI-Data-Center-Scalability-2025.pdf | 事実 |
| 64×96=6,144、48×128=6,144 の一致。136÷176≒77%。10^(−0.2)≒0.63。108 W÷136≒0.8 W/ポート。136ポートで実効272本の片方向接続。窓のコーティングに0.1 dB を割くと仮定した場合の1面あたり0.0125 dB(約0.29%) | 本稿の計算。0.1 dB の配分は本稿の仮定であり論文に記載はない。77% は鏡の不良率ではない | 本稿の計算 |
| マイクロ秒級の大規模 OCS の実現。Coherent・Lumentum 製品の出荷実績と採用規模 | 論文の将来展望と、各社の発表時点の計画であり、実績は本稿の調査範囲で確認できない見通しの事項 | 未確定/将来 |
| EPS と OCS の対比の整理。液晶と MEMS の対立を材料の選択として読む解釈。2 dB の予算を鏡・窓・結合が分け合うという整理。多層膜コーティング・金属反射膜・封止・高電圧絶縁材料が性能を決めるという読み取り。ファラデー回転子の材料設計が波長帯で変わること、通信用の結晶部品がデータセンターの量で求められるようになったという読み取り。TPU v4 と NVL72 の「ラックの中は電気」という共通点の整理 | 公開資料にもとづく本記事の整理・解説。各社・研究者が表明した見解ではない | 解説 |
| OCS の市場規模の推計(Lumentum の発表に調査会社の予測が引用されている) | 本シリーズの方針により、調査会社の推計は使用していない | 解説 |
| 図1・図2・図4・図5が説明のための作図であること、図3が本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年9月26日/出典は一次情報(Google の論文2本、Coherent・Lumentum の公式発表)に限定しています。 企業の発表に含まれる優位性の記述は、各社の主張として扱い、本稿では検証していません。 構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 商用 OCS の出荷実績と採用規模、市場規模は記載していません。 図はすべて説明用の図です。図1・図2・図4・図5はベクター作図、図3は本稿の計算を含むベクター作図、ヒーロー画像はAI生成イメージであり、いずれも実際の装置の構造・光路・寸法を示すものではありません。