COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス
中際旭創(Zhongji InnoLight)
― 光モジュールの「組立と量産」に特化して、AIデータセンター向けで急成長した中国企業
中際旭創は、データセンターのスイッチやサーバーに挿す光トランシーバー(光モジュール)を専門に開発・製造する中国の会社です。 2025年の売上高は382億4,000万元(人民元)で前年から60%増え、その約91%が中国国外向けでした。 2026年上半期だけで売上は417億8,000万元に達し、2026年7月30日には香港証券取引所にも上場しています。 レーザーなどの光チップは外部から買い、設計・組立・試験と大量生産に経営資源を集中しているのが特徴です。 本稿では、深圳証券取引所に提出された年次報告・半期報告と公式の公告だけを使い、 この会社が光通信・フォトニクスに何を投じ、誰と組み、どこへ向かおうとしているかを整理します。
- 30秒でわかる中際旭創と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- 光通信・フォトニクスにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
- 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる中際旭創と、光通信・フォトニクスでの立ち位置
香港 3308H株は2026年7月30日に上場
光通信・フォトニクスに関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 中際旭創はこのうち光部品・光モジュールの会社ですが、LumentumやCoherentのようにレーザーチップを自社で作る会社ではありません 事実。 年次報告は、光モジュールの主な原材料を「光部品、集積回路チップ、構造部品」とし、それらは主に第三者の供給者から調達すると書いています。 さらに年次報告は業界の状況として「200G以上のEMLレーザーはなお輸入に頼る必要がある」とも記しています。 つまりこの会社の強みは光チップそのものではなく、多数のチップを組み合わせて、規格どおりの光モジュールを大量に・速く・安く作る力にあります。 2025年に売上の約98%を光モジュールが占めた、ほぼ光モジュール専業の会社です 本稿の計算。
2. ロゴと社名の表記について
中際旭創のロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
同社の公式サイト(年次報告に記載された会社のウェブサイト)から取得した画像を img/innolight_logo.svg として設置しています。
表記の注意:中国語の正式名称は中際旭創股份有限公司、英文名は ZHONGJI INNOLIGHT CO., LTD. です。 香港市場での英文略称は「ZJ INNOLIGHT」です。日本語では「中際旭創(ちゅうさいきょくそう)」と書かれることが多く、本稿もそれに従います。 なお「InnoLight」という名前は、台湾の子会社「InnoLight Taiwan」などグループ内の複数の法人名にも使われています。 主力の事業子会社は蘇州旭創科技有限公司で、上場会社とは別の法人です。 本稿の会社フォルダ名は、上場会社の英文名にあわせて「Zhongji InnoLight」としています。
公式サイト:https://www.zj-innolight.com/3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
光のどの領域に関わるかで見ると、中際旭創の製品は大部分がデータセンター内の光インターコネクト向けで、 一部が通信網(5G基地局の前方・中間・後方伝送、都市間・基幹網、光ファイバー接続)向けです 事実。 年次報告は主な事業を「高級な光通信送受信モジュールの研究開発・生産・販売」と定義しています。
| 領域 | 主な製品(年次報告の記載) | 位置づけ |
|---|---|---|
| データセンター内の光インターコネクト | 1.6T(OSFP)、800G(OSFP・QSFP-DD)、400G、200G、100Gの光モジュール | 売上の大部分。海外の大手クラウド事業者向けが中心 |
| データセンター間(DCI) | 400G ZR/ZR+、800G ZRなどのコヒーレント光モジュール | 展示会での発表を重ねている段階を含む |
| 通信網 | 5Gの前方・中間・後方伝送用モジュール、都市間・基幹網の伝送用モジュール、FTTX用の光部品 | 通信装置メーカー向け |
| 光通信以外 | 光部品・車載光電子などの「その他」事業 | 2025年の売上の2.05% |
4. 会社の規模
中際旭創は売上の約98%が光モジュールなので、会社全体の数字がほぼそのまま光通信の事業規模です 事実。
| 指標(億元) | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107.18 | 238.62 | 382.40 | 417.78 |
| うち光通信送受信モジュール | ― | 228.86 | 374.57 | ― |
| 上場会社株主に帰属する純利益 | 21.74 | 51.71 | 107.97 | 136.51 |
| 営業活動によるキャッシュフロー | 18.97 | 31.65 | 108.96 | 18.00 |
| 研究開発投入 | 8.09 | 13.33 | 16.76 | ― |
| 光モジュールの数量(万個) | 生産能力 | 生産量 | 販売量 | 売上総利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 2024年 | 2,088 | 1,536 | 1,459 | 34.65% |
| 2025年 | 2,806 | 2,376 | 2,109 | 42.61% |
2025年の光モジュールの売上374億5,700万元を販売量2,109万個で割ると、1個あたり約1,776元になります 本稿の計算。2024年は同じ計算で約1,569元でした。 800Gや1.6Tといった高速品の比率が上がったことが単価の上昇に表れていると読めます。 ただしこれは低速品から1.6Tまでをすべて混ぜた平均で、製品ごとの価格ではありません。 生産量(2,376万個)が販売量を上回り、在庫が254万個から521万個へ倍増した点も、年次報告に書かれています 事実。
| 人員(2025年末) | 人数 | 研究開発人員の内訳 | 人数 |
|---|---|---|---|
| 生産 | 8,090 | 博士 | 39 |
| 技術 | 2,341 | 修士 | 394 |
| 販売 | 135 | 学士 | 1,017 |
| 合計(在職) | 11,625 | 研究開発人員の合計 | 2,169(全体の18.66%) |
5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
本稿で扱う4つの観点(人/金/外部への出資・買収・合弁/大学・研究機関・公的資金)について、 確認できたことと、できなかったことを分けて示します。
| 観点 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 研究開発人員2,169人(前年1,453人から49.28%増)。研究開発部門は光電技術部・製品開発部・プロジェクト運営部・総合管理部の4部門 | 事実 |
| 金(研究開発) | 研究開発投入16億7,593万元(2025年、売上高の4.38%)。資金は「製品の高度化と光電産業チェーンの関連製品・技術の蓄積」に向けると説明。2026年上半期の研究開発費は11億5,300万元(前年同期比96.9%増) | 事実 |
| 金(設備投資) | 固定資産等の取得に27億6,000万元(2025年、前年28億6,616万元)。2021年の第三者割当増資の資金で進めた「銅陵旭創 高級光モジュール産業園 第三期」が完了 | 事実 |
| 金(外部からの資金) | 香港でH株を発行。1株980香港ドル×5,450万株で総額約534億1,000万香港ドル。超過配当権の全量行使で817万5,000株を追加発行し、追加の手取り約79億3,870万香港ドル | 事実 |
| 海外の生産拠点 | 生産拠点は蘇州・銅陵・成都・台湾・タイ。シンガポールの孫会社TeraHop Pte. Ltd.のほか、タイ(TeraHop (Thailand))と米国(TeraHop US)にも同じ名を持つ法人があり、タイの法人は投資委員会(BOI)の税制優遇を受けている | 事実 |
| 外部からの出資(子会社) | アブダビ投資庁が間接保有する会社と、テマセクが間接保有する2社が、TeraHop Pte. Ltd.に合計5億1,700万米ドルを出資。出資後も中際旭創グループの持分は67.71%で変わらず | 事実 |
| 外部への出資・買収・合弁 | 2025年に新たに連結した子会社は9社で、いずれも新設または合併と記載。光チップ会社などへの出資の具体名は年次報告の該当箇所に記載なし。投資活動の支出は9億8,270万元 | 出資先の詳細は確認できず |
| 公的資金 | 損益に計上した政府補助金は1億4,593万元(2025年)。どの事業・技術に対する補助かの内訳は記載なし | 金額は事実/内訳は確認できず |
| 大学・研究機関 | 独立取締役に大学教授がいるが、光通信での大学との共同研究契約は年次報告に記載なし | 確認できず |
| 標準化団体 | 子会社の蘇州旭創が、OSFP・QSFP-DDの業界団体、IEEE 802.3の関連作業、中国通信標準化協会(CCSA)の作業部会に参加 | 事実(会社の記載) |
年次報告によれば、中際旭創の1.6T製品はEMLを使う方式とシリコンフォトニクスを使う方式の2つの設計基盤を持っています 事実。 EML方式は、1チャネルごとにInP製のEMLレーザーを使います。 シリコンフォトニクス方式では、光の変調はシリコンのチップが担い、光源は連続発振(CW)のレーザーで済むため、 高価で供給の限られる高速EMLを使わずに済むという特徴があります(一般的な解説)。
2026年半期報告は、シリコンフォトニクスとEMLという複数の解決方式を持つことで原材料の調達体制を改善し、供給不足のリスクを下げたと明記しています 事実。 同じ報告で「1.6Tのシリコンフォトニクス・モジュールが本格的な量産段階に入り、出荷量が四半期ごとに増えている」とも書いています。 自前でレーザーを作らない会社にとって、特定の光チップに依存しない設計を持つこと自体が競争力になる、という構図です。 本シリーズの技術解説「シリコンフォトニクス」「半導体レーザー」もあわせて参照してください。
6. これまでの取り組み
年次報告は、主要な展示会での発表の歴史を自ら列挙しています。「業界初」は会社自身の表現です。
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2020年12月 | ECOC 2020(オンライン)で、会社が「業界初」とする800Gのプラガブル光モジュール(OSFP・QSFP-DD800)を発表 | 800G世代への早い参入 |
| 2022年 | OFC 2022で800Gのシリコンフォトニクス型モジュールを展示 | シリコンフォトニクス方式の立ち上げ |
| 2023年 | OFC 2023で1.6T OSFP-XDモジュール、5nm DSPの第2世代800G、400G ZR/ZR+コヒーレントを実演 | 1.6Tとコヒーレントへの布石 |
| 2024年 | OFC 2024で1.6T LPOモジュール、シリコンフォトニクス型800G ZRを展示 | DSPを省く低消費電力方式にも対応 |
| 2025年 | OFC 2025で3nm DSPの1.6T 2xFR4、800G LR2の簡易コヒーレントを展示。売上382億4,000万元(60.25%増) | 1.6Tの量産準備 |
| 2025年 | アブダビ投資庁系・テマセク系の投資会社がシンガポールの孫会社TeraHopに5億1,700万米ドルを出資 | 海外事業の資金を外部から調達 |
| 2026年3月 | OFC 2026で12.8T(8xDR8)のXPOモジュール、6.4T(4xDR8)のNPOモジュール、薄膜ニオブ酸リチウム(TFLN)変調器による1.6T 2xLR4、800G LR2簡易コヒーレントを実演 | プラガブルの次(XPO・NPO)を見せ始めた |
| 2026年1〜6月 | 売上417億8,000万元(前年同期比182.49%増)。1.6Tシリコンフォトニクス・モジュールが本格量産段階に入り収入増の中核に | 半年で前年1年分を上回った |
| 2026年7月30日 | 香港証券取引所メインボードに上場(株式コード3308)。8月26日に超過配当権を全量行使し、H株は6,267万5,000株に | 国際的な資金調達の窓口を確保 |
7. 今後の計画
光モジュールシリコンフォトニクスとコヒーレントを核に
CPO・OCS2026年半期報告の記載。時期は非公表
データセンター電源「基礎的な接続以外」への拡大方針
産業投資次世代技術への投資を明記。対象は非公表
2025年年度報告の「2026年の業務計画」は、(1) 1.6T・800Gなど高級品の供給能力と出荷量の拡大、 (2) 海外の重点顧客に海外で量産供給できる体制の整備、(3) 研究開発の強化と次世代光接続技術への注力、 (4) 産業チェーンの上下流への投資と事業統合、の4点を挙げています 事実。 2026年半期報告では、これに「熱管理、液冷、データセンター電源」への展開が加わりました。
次はいずれも年次報告・半期報告・公告に記載がありません 未確定/将来。
主要顧客・主要仕入先の社名/製品別(800G・1.6Tなど)の売上内訳/タイなど海外拠点の生産能力/ NPO・XPO・CPO・OCSの量産開始時期/H株の調達資金の具体的な投資先と金額(本稿は目論見書を確認していない)/ 光チップを内製する計画の有無。 年次報告には調査会社(LightCounting)による光モジュール企業の順位の図が引用されていますが、会社自身の数値ではないため本稿では採用しません。
8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 「光モジュールメーカー」から「光接続の総合ソリューション企業」への転換 | 年次報告が目標を「国際的な影響力を持つ光互連の総合ソリューション提供者」と明記し、半期報告で熱管理・液冷・電源まで範囲を広げた | 事実(会社の目標) |
| 中国国外での生産比率を上げることを最優先している | 年次報告の2026年計画が「海外の重点顧客への海外での量産供給能力」を挙げ、タイの法人やシンガポールのTeraHopに外部資金を入れている。関税政策の変化をリスクに挙げている | 推測 |
| CPOの時代にもモジュール会社として生き残る道を複数用意している | OFC 2026でXPO(12.8T)とNPO(6.4T)のモジュールを実演し、半期報告でNPO・XPO・CPO・OCSを並べて開発対象に挙げている | 推測 |
| 光チップの調達リスクを設計の多様化で下げようとしている | 半期報告がシリコンフォトニクスとEMLの両方式で調達体制を改善したと記載し、光電チップの新規供給者の開拓と供給能力の事前確保を明記 | 事実 |
| 将来は上流(光チップなど)への投資もありうる | 年次報告が「産業チェーンの縦方向・横方向の投資布局を加速する」と書いている。ただし対象は明示していない | 推測 |
2025年の売上の90.58%は中国国外向けで、年次報告は主な市場を「北米、欧州など」と書いています 事実。 同じ報告は、リスクとして「中米の貿易摩擦が激化し制裁が深まれば、光モジュールの需要が減り、重要原材料の調達が難しくなる」 「2025年4月以降の追加関税・相互関税などで、サプライチェーンの再編と地政学的リスクに直面する」と明記しています。 そのうえで2026年の計画の2番目に「海外の重点顧客に対する海外での量産供給能力」を置き、 タイに税制優遇を受ける生産法人を持ち、シンガポールの持株会社には中東とシンガポールの政府系投資家から5億1,700万米ドルを受け入れています。 ここから、同社にとって海外生産は単なるコスト対策ではなく、最大の顧客群である米国市場への供給を途切れさせないための条件になっていると本稿は読みます 未確定/将来。
9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
年次報告の製品一覧と、2026年半期報告の研究開発の記述から整理します。 性能の数値は、量産品か展示・デモかを明記しています。規格への準拠は会社の記載によるものです。
| 製品 | 内容(会社の記載) | 状態 |
|---|---|---|
| 1.6T OSFP | OSFP224 DR8・2xFR4など。光側は8×200G。EML方式とシリコンフォトニクス方式の2つの設計基盤。IEEE 802.3dfとOSFP1600 MSAに準拠、CMIS 5.xに対応と記載。会社は「1.6T-DR8 OSFP224 LPOを業界に先駆けて投入」と主張 | 量産(シリコンフォトニクス型は2026年上半期に本格量産段階) |
| 800G OSFP/QSFP-DD | 8×100Gと4×200Gの2構成。EML方式に加え、10km以内はシリコンフォトニクス方式も用意。IEEE 802.3ckと各MSAに準拠と記載 | 量産 |
| 400G・200G・100G | QSFP-DD、OSFP、QSFP28(SR4・CWDM4・LR4など)。IEEE 802.3bs/bm/cdなどに準拠と記載 | 量産 |
| コヒーレント | 400G ZR/ZR+(QSFP-DD)、シリコンフォトニクス型800G ZR(OSFP)、800G LR2の簡易コヒーレント | 展示会で順次発表。量産規模は非開示 |
| XPO・NPO | 12.8T(8xDR8)のXPOモジュール、6.4T(4xDR8)のNPOモジュール | OFC 2026での実演。「顧客向けの個別開発中または研究開発中」 |
| TFLN変調器 | 薄膜ニオブ酸リチウムのマッハツェンダー変調器を使った1.6T OSFP 2xLR4 | OFC 2026での実演 |
| 通信網向け | 5Gの前方・中間・後方伝送、都市間・基幹網の伝送、FTTX用の光部品 | 量産 |
| 製造技術 | 単一モード・多モードの並列光学設計と精密製造、COB(チップ・オン・ボード)実装、全自動の組立・試験プラットフォーム | 会社が挙げる中核技術 |
年次報告は、中際旭創が業界で早くからCOB(Chip on Board)の光電子部品設計・実装技術を使ってきたこと、 生産は1万級(ISOクラス7相当)のクリーンルームと自動化ラインで行っていることを書いています 事実。 COBは、レーザーや受光素子のチップを気密パッケージに入れずに基板へ直接載せ、光ファイバーやレンズと位置合わせする実装方式です(一般的な解説)。 部品点数と工程が減る代わりに、むき出しのチップを湿気や粒子から守る封止材の選択と、 サブミクロンの位置合わせを大量に繰り返す装置の精度が品質を決めます。
光チップを外部から買う会社にとって、差がつくのはまさにこの実装と歩留まりです。 2026年半期報告も「生産工程の自動化改造を進め、生産効率と製品の歩留まりを高めた」と書いています。 光モジュールの売上が年374億元を超える規模では、その1%だけでも約3億7,000万元にあたり、 実装工程のわずかな歩留まりの差が大きな金額の差になります 本稿の計算。 本シリーズの技術解説「光トランシーバー」「光コネクタとファイバー実装」もあわせて参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 顧客の集中 | 上位5社で売上の75.98%、最大顧客だけで24.06%(2025年)。社名は非開示 | 事実 |
| 仕入先の集中 | 最大の仕入先1社で年間仕入額の35.76%。上位5社で51.50% | 事実 |
| 光チップの海外依存 | 年次報告は業界状況として「200G以上のEMLはなお輸入が必要」「200G以上の電気チップの供給者は主に海外」と記載。会社自身も重要原材料の多くを海外から調達と明記 | 事実 |
| 米中の貿易摩擦・関税 | 主な輸出先が北米で、制裁の強化や関税政策の変化を会社自身がリスクとして挙げている | 事実 |
| 技術の世代交代 | 光モジュールは世代交代が速く、研究開発の方向を誤れば製品が置き換えられるリスクがあると会社が記載。CPOの普及でプラガブル型の需要構造が変わる可能性もある | 事実/CPOの影響は推測 |
| 運転資金の膨張 | 2026年上半期は売上が182%増えた一方、営業キャッシュフローは44.08%減の18億元。在庫も2025年末に前年の約2倍 | 事実 |
| 関連当事者との取引 | 上位5社への売上のうち、年間売上の8.10%にあたる分が関連当事者向けと記載。取引条件の透明性に注意が要る | 事実/評価は推測 |
12. 用語集
- 光モジュール(光トランシーバー)
- 電気信号を光に変えて送り、受けた光を電気に戻す部品。スイッチやサーバーに挿して使う。
- OSFP/QSFP-DD
- 光モジュールの形と寸法を決めた業界の取り決め(MSA)。800Gや1.6Tの主流の形。
- EML
- 電界吸収型変調器集積レーザー。InPで作る高速のレーザーチップ。
- シリコンフォトニクス
- シリコンのチップの上に光の導波路や変調器を作る技術。光源は外付けのレーザーを使う。
- LPO
- Linear Pluggable Optics。信号処理用のDSPを省き、消費電力と遅延を下げたプラガブル光モジュール。
- NPO/XPO
- NPOは光エンジンをスイッチの近くに置く方式。XPOは中際旭創が12.8Tモジュールで使った方式名で、報告書に定義の説明はない。
- TFLN
- 薄膜ニオブ酸リチウム。高速・低電圧で動く光変調器の材料。
- H株
- 中国本土の会社が香港証券取引所に上場する株式。本土のA株とは別に売買される。
13. 出典
- 中際旭創股份有限公司 『中際旭創股份有限公司2025年年度報告』(中国語、深圳証券取引所の指定開示サイト巨潮資訊網で2026年3月31日公表)。会社情報、売上・利益・キャッシュフロー(2023〜2025年)、製品一覧と規格、生産能力・生産量・販売量、地域別売上、上位5社の顧客・仕入先、研究開発投入と人員、従業員数、特許数、TeraHopへの出資、子会社、政府補助金、2026年の業務計画とリスク。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF
- 中際旭創股份有限公司 『中際旭創股份有限公司2026年半年度報告』(中国語、2026年8月22日公表)。2026年上半期の売上・利益・キャッシュフロー、海外売上、1.6Tシリコンフォトニクス・モジュールの量産、OFC 2026の実演内容、生産拠点、供給網の多様化、今後の展望、H株上場(2026年7月30日、発行価格980香港ドル、総額約534億1,000万香港ドル)。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF
- 中際旭創股份有限公司 「超過配当権の全量行使、価格安定化行為および安定化期間の終了に関する公告」(中国語、公告番号2026-084、2026年8月27日公表)。超過配当株817万5,000株の発行、H株総数6,267万5,000株、追加の手取り約79億3,870万香港ドル。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225515675.PDF
- 中際旭創股份有限公司 公式サイト(年次報告に記載された会社のウェブサイト。社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.zj-innolight.com/
14. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 正式名称・英文名・登記上の本社・株式コード・会社のウェブサイト | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 主な事業の定義、主要原材料を第三者から調達すること、200G以上のEMLは輸入が必要という業界状況の記述 | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 売上高・純利益・営業キャッシュフロー・研究開発投入(2023〜2025年)、光モジュールの売上と売上総利益率、海外売上比率90.58% | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 光モジュールの生産能力・生産量・販売量・在庫(2024・2025年) | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 光モジュールが売上の約98%、1個あたり平均売上約1,776元(2024年は約1,569元)、歩留まり差の影響の規模感 | 本稿の計算 | 出典1の数値から本稿が算出した平均値。製品別の価格ではない |
| 上位5社の顧客(75.98%、最大24.06%、関連当事者8.10%)と上位5社の仕入先(51.50%、最大35.76%) | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 研究開発人員2,169人と学歴内訳、従業員11,625人と職種別内訳、特許411件 | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| TeraHop Pte. Ltd.への5億1,700万米ドルの出資と持分67.71%、タイ法人のBOI税制優遇、新規連結子会社、設備投資額、政府補助金額 | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 製品一覧と規格準拠の記載、EML・シリコンフォトニクスの2基盤、COB実装とクリーンルーム、2020〜2025年の展示会での発表 | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 標準化団体・業界団体への参加 | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 2026年の業務計画、「光互連の総合ソリューション提供者」という目標、リスク要因(貿易摩擦・関税・供給網・技術) | 事実 | 出典1 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 2026年上半期の売上417億8,000万元・純利益・営業キャッシュフロー・研究開発費 | 事実 | 出典2 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF |
| 1.6Tシリコンフォトニクス・モジュールの本格量産、OFC 2026の実演(XPO・NPO・TFLN・LR2)、複数方式による調達体制の改善 | 事実 | 出典2 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF |
| 生産拠点(蘇州・銅陵・成都・台湾・タイ)、今後の展望(NPO・XPO・CPO・OCS、熱管理・液冷・電源、戦略的買収) | 事実 | 出典2 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF |
| H株の上場日・株式コード・発行株数・発行価格・調達総額 | 事実 | 出典2 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF |
| 超過配当権の全量行使とH株総数、追加の手取り | 事実 | 出典3 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-27/1225515675.PDF |
| 光通信・フォトニクスの3類型の区分 | 本稿の計算 | 本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示 |
| 顧客・仕入先の社名、製品別売上、海外拠点の生産能力、次世代品の量産時期、H株資金の具体的な使途、光チップ内製の計画 | 未確定/将来 | 出典1〜3に記載なし(目論見書は本稿で未確認)。報道ベースの情報は採用しない https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-22/1225491753.PDF |
| 調査会社による光モジュール企業の順位 | 未確定/将来 | 出典1に引用があるが会社自身の数値ではないため採用しない https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-03-31/1225056459.PDF |
| 海外生産を最優先している、CPO時代の生き残り策を複数用意している、上流への投資もありうるという読み | 推測 | 出典1・2の計画・リスク記載と出資関係からの本稿の解釈 |
| CPOによる需要構造の変化、関連当事者取引の透明性という評価 | 推測 | 出典1・2からの本稿の解釈 |
| 光モジュール売上の1%が約3億7,000万元にあたること | 本稿の計算 | 出典1の374億5,700万元の1%として本稿が算出 |
| COB実装・EMLとシリコンフォトニクスの一般的な性質 | 推測 | 一般的な技術の解説にもとづく本稿の説明。会社固有の数値ではない |
最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべて中際旭創股份有限公司が深圳証券取引所の指定開示サイトで公表した年次報告・半期報告・公告(いずれも中国語)に基づきます。金額の「元」は人民元です。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。