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Fujikura|光通信・フォトニクス 企業解説

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COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス

フジクラ
― 光を「出す」側ではなく「つなぐ」側で、AIデータセンタの配線を担う電線メーカー

フジクラは電線メーカーですが、2026年3月期には情報通信事業部門だけで売上高6,530億円・営業利益1,527億円を上げ、 会社全体の営業利益の約8割をこの部門が稼ぎました。 中身は、光ファイバ、細径・多心の光ファイバケーブル、多心光コネクタ、融着接続機、工事までの「光の配線一式」です。 光通信用のレーザや光トランシーバのように光を出したり電気と変換したりする部品ではなく、光をつなぐ側の会社だと理解すると全体像がつかめます。 本稿では電線・自動車部品などの事業は最小限にとどめ、光通信に何を投じ、誰と組み、どこへ向かっているかに絞ります。

構成:株式会社フジクラ 2026年3月期 有価証券報告書(2026年6月23日提出)、2028年中期経営計画資料(2026年5月19日)、同社の公式プレスリリース、NICTほかとの共同発表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるフジクラと、光通信・フォトニクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(全社は簡潔に)
  5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
  9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるフジクラと、光通信・フォトニクスでの立ち位置

正式名称株式会社フジクラ英文名 Fujikura Ltd.
本社東京都江東区木場木場一丁目5番1号
上場東証プライム 58031949年に東京証券取引所へ上場
この分野での区分光部品・光モジュール
(光ファイバ・ケーブル・接続部品)
光の「配線」を担う部品・材料側
情報通信事業部門の売上高6,530億円2026年3月期。前年度比44.7%増
同 営業利益1,527億円全社営業利益1,887億円の約8割
光ファイバケーブルの増産投資日米で最大3,000億円日本400億円/米国最大2,600億円
主な光の領域データセンタ内外の配線
DCI・通信網
CPO向けには偏波保持ファイバを出荷
まず押さえるべき1点

光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 フジクラはこのうち光部品の側ですが、同じ「光部品」でも光通信用のレーザや受光素子、光トランシーバを作る会社とは立場が違います 事実。 有価証券報告書が挙げる情報通信事業部門の主要品種は「光ファイバ、光ケーブル、通信部品、光部品、光関連機器、ネットワーク機器、工事等」で、 同社はこれを「光ファイバケーブル、融着接続機、光コネクタ、光コンポーネント、通信エンジニアリングに至るまで、通信ネットワーク布設に関わるトータルソリューション」と表現しています。 つまりフジクラは、データセンタの中と外、データセンタ同士をつなぐ光の「配線と接続」を一式で供給する会社です。 生成AI向けデータセンタの建設が増えると、まず光ファイバの本数と心数が増えるので、その恩恵を最も直接に受ける位置にいます。

2. ロゴと社名の表記について

フジクラのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトから取得した画像を img/fujikura_logo.png として設置しています。

表記の注意:法人名は「株式会社フジクラ」、英文では Fujikura Ltd. です。 1992年10月に「藤倉電線株式会社」から現在の商号に変更しました。 米国で光ファイバケーブルや接続部品、工事を手がける AFL Telecommunications LLC(AFL) は同社の100%子会社で、 2026年3月期の売上高は3,553億円と連結売上高の10%を超えています。本文で「AFL」と書くときはこの子会社を指します。

公式サイト:https://www.fujikura.co.jp/

3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか

光通信・フォトニクスに関わる企業の3つの類型 同じ「光通信の会社」でも、どこで光を扱うかがまったく違う 光部品・光モジュール 半導体・ファウンドリ 通信装置・通信事業者 光を出す・送る・受ける部品を売る 電気と光をつなぐチップを作る 光でネットワークを作り運用する Lumentum/Coherent InnoLight/Ayar Labs ほか NVIDIA/Broadcom TSMC/Intel ほか NTT/Ciena Nokia/Cisco ほか レーザと光実装の量産力 スイッチ・GPUの出口を持つ 長距離伝送と網の運用知見 大口顧客への依存が大きい 光部品は外部に頼りがち データセンター内は変化が速い フジクラはこの左端にいるが、光を出す部品ではなく光ファイバ・ケーブル・コネクタで「つなぐ」側 光ファイバから融着接続機、工事までを一式で供給し、データセンタ内外とデータセンタ間(DCI)の配線を担う
図1 光通信・フォトニクスに関わる企業の3類型と、フジクラの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。フジクラの区分は、2026年3月期有価証券報告書に記載された情報通信事業部門の主要品種(光ファイバ、光ケーブル、通信部品、光部品、光関連機器、ネットワーク機器、工事等)に基づきます。

光のどの領域に関わるかで言えば、フジクラの主戦場はデータセンタの中の配線、データセンタ同士を結ぶDCI(Data Center Interconnect)、通信事業者の光ファイバ網です。 海底ケーブルの中継器に入る光ファイバカプラも開発しています 事実。 一方、データセンタ内の短距離で電気配線を光に置き換えるCPO(Co-Packaged Optics)には、光トランシーバやチップとしてではなく、 その内部で使う偏波保持ファイバの供給という形で関わっています。本シリーズの技術解説『Co-packaged Optics』で扱う「外部光源とチップを結ぶファイバ」が、ちょうどこの部分にあたります。

4. 会社の規模(全社は簡潔に)

全社の規模は表1つにとどめます 事実。

指標(百万円)2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高799,760979,3751,182,358
連結従業員数(人)50,25451,26250,586
連結研究開発費――約16,800(168億円)

光通信の数字は、同社が情報通信事業部門というセグメントで開示しているので、ここを見れば足ります。 全社の数字ではなく、この部門の数字が本稿の中心です 事実。

情報通信事業部門(百万円)2025年3月期2026年3月期
売上高(セグメント間取引を含む)451,415653,172
セグメント利益(営業利益ベース)92,167152,729
セグメント資産355,691481,414
減価償却費8,95611,207
有形・無形固定資産の増加額15,37318,263
従業員数(人、2026年3月31日)―15,199(ほかに臨時706)
本稿の計算:光の部門がどれだけ会社を支えているか

2026年3月期の情報通信事業部門は、外部顧客への売上高6,529億7,700万円で連結売上高の55.2%、 セグメント利益1,527億2,900万円で全社営業利益1,887億700万円の80.9%を占めました 本稿の計算。 部門の営業利益率は23.4%(前年度20.4%)で、電線メーカーの一般的な水準とはかけ離れた収益性です。 なお地域別では、顧客の所在地が米国である売上高が5,222億円で、連結売上高の44.2%にあたります 本稿の計算。これは全社の数字で、情報通信事業部門だけの地域内訳は開示されていません。

5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース

人・金・外部への出資・公的機関との連携の4点を、有価証券報告書と公式発表で確認できた範囲で整理します。

リソースの種類内容区分
人(専任組織・人員)情報通信事業部門の従業員は15,199人(ほかに平均臨時従業員706人、2026年3月31日)。うち提出会社(単体)は890人。光ファイバ製造設備を持つ佐倉事業所に677人、鈴鹿事業所に95人。研究開発は「新事業創生・研究開発部門」と各事業部門内の開発部が担う事実
金(研究開発費)情報通信事業部門の研究開発費は115億円(2026年3月期)。連結研究開発費168億円の68.5%にあたる(割合は本稿の計算)事実
金(設備投資)佐倉事業所で約450億円の光ファイバ・SWR®次世代工場を建設中。2026年3月に日米で最大3,000億円(日本400億円・米国最大2,600億円)を投じる方針を決定。2025年2月には約100億円のSWR®新工場が稼働済み。MTフェルールは2024年度比で約1.7倍の能力増強投資を実施事実
外部への出資・合弁多心光コネクタ部品のUS Conec Ltd.(米国)が持分法適用会社。同社はCorning、フジクラ、NTTアドバンステクノロジの3社による合弁と公式リリースに明記。ほかに中国の藤倉烽火光電材料科技有限公司(議決権60%の連結子会社)、南京華信藤倉光通信有限公司(持分法適用会社)事実
公的機関との合意2025年10月28日に米国商務省と枠組み合意書を締結し、米国の生成AIインフラ強化分野で光ファイバケーブル(SWR®/WTC®)の供給者に選定された、と中期経営計画資料に記載事実
公的研究機関との共同研究NICT(情報通信研究機構)・アストロデザインと、4コアのマルチコアファイバ8本を収めた直径3mmのケーブルを開発し、非圧縮8K映像の実システムに実装(2025年3月発表)事実
光通信分野での買収2026年3月期の有価証券報告書に、光通信分野での新たな企業買収の記載はない確認できず
光通信分野の公的資金(NEDO等)光通信・フォトニクスを対象とする補助金・委託事業の採択は、今回確認した一次資料には見当たらない(2025年8月のNEDO採択は量子コンピュータ関連で、本稿の対象外)確認できず
金額を読むときの注意

「最大3,000億円」は決定した投資の上限であって、2026年3月期に支出した額ではありません。 同期に情報通信事業部門で実際に増えた固定資産は182億6,300万円です 事実。 中期経営計画資料によれば、日本400億円・米国最大2,600億円の案件は2030年から段階的に立ち上げる計画で、 支出の大半は2027年度以降になると読めます 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1910年3月藤倉電線株式会社を設立(1992年10月に株式会社フジクラへ商号変更)電線メーカーとしての出発点
2005年3月米国に情報通信関連製品の製造販売会社 AFL Telecommunications LLC を設立(有価証券報告書の沿革による)現在の米国事業の中核。2026年3月期の売上高は3,553億円
2009年5月中国に藤倉烽火光電材料科技有限公司を設立光ファイバ関連の中国拠点
2025年2月佐倉事業所でSWR®新工場が稼働(投資額約100億円、建屋約3,000㎡)。SWR®の生産量は光ファイバ長ベースで約30%増える見込み細径多心ケーブル用リボンの増産
2025年3月Corningと共同開発したTitaniaBend PANDA PM Fiberを発表し、2025年度からサンプル出荷。800Gbit/秒以上の光トランシーバ向け光トランシーバ内部で使う偏波保持ファイバ
2025年3月NICT・アストロデザインと、4コア標準外径マルチコアファイバの伝送ユニットを非圧縮8K映像の実システムに実装(3社は「世界で初めて」と表現)マルチコアファイバの実システム適用
2025年7月13,824心SWR®/WTC®の販売開始。外径40mm以下で従来最多(6,912心)の2倍。国外のハイパースケールデータセンタで布設済み同社は「世界初」「世界最高の超多心」と表現
2025年10月情報通信事業部門が一橋大学大学院主催のポーター賞を受賞従来構造の光ケーブルから撤退し、間欠固定型リボンに特化した戦略が評価された
2025年10月28日米国商務省と枠組み合意書を締結し、米国の生成AIインフラ向け光ファイバケーブル供給者に選定日米間の「戦略的投資に関する覚書」に基づく
2025年度CPO向けに偏波保持ファイバの出荷が増加(有価証券報告書の研究開発の記述)CPOに部材で関わる接点
2026年3月日米で最大3,000億円を投じ、光ファイバとSWR®/WTC®の生産能力を現状の最大3倍に拡大する方針を決定同社史上でも最大級の設備投資計画
2026年3月国内データセンタ向けに外径23mmの4,000心SWR®/WTC®を製品化。US ConecとPRIZM® TMT拡張ビームフェルールとMMCコネクタの製造・販売強化で合意超小型多心光コネクタの規格統一に参加
2026年4月最大16心の新型多心光ファイバ融着接続機「100R」を販売開始接続工事の時間短縮を狙う
2026年5月空気圧送用の1,728心 Air Blown WTC®を販売開始(従来最多864心の2倍)。2028年中期経営計画を公表DCI向けの製品追加と、次の3か年計画

7. 今後の計画

情報通信の売上高目標2028年度 1兆500億円2026年度7,194億円→2027年度8,800億円
情報通信の営業利益目標2028年度 2,850億円全社目標3,150億円の約9割
光ファイバケーブルの能力2022年度比 約4倍日本400億円+米国最大2,600億円。2030年から段階的に立ち上げ
佐倉の次世代工場約450億円2022年度比 約2倍の能力(中期経営計画資料の表)

2028年中期経営計画は、情報通信事業を「情報ストレージ」「情報インフラ」の成長を牽引する事業と位置づけ、 人的リソースと資金リソースを集中投下すると書いています 事実。 3年間の累計では、成長投資3,000億円・戦略投資1,000億円・その他投資1,300億円を配分する計画です。 製品面では、MT/MMCフェルールとMMC付きトランクケーブルの増産、ベトナム・メキシコ・ポーランド工場での配線部品の能力強化、 モロッコ工場でのWTC®生産設備(2026年度上期の稼働を目指す)が挙げられています。 計画の為替前提は、2026年度が1ドル150円、2027年度以降が145円です。

確認できなかったこと

次はいずれも一次資料に記載がありません 未確定/将来。

米国最大2,600億円の投資の工場所在地/情報通信事業部門の製品別売上高(ケーブル・コネクタ・融着接続機・工事の内訳。中期経営計画資料は伸び率のグラフのみで金額目盛りがない)/ CPO向け偏波保持ファイバの出荷量と顧客名/主要顧客の社名(連結売上高の10%以上を占める相手先はないと有価証券報告書に記載)。 「フジクラの光ファイバ世界シェア○%」といった数字は調査会社の推計に基づくものが多く、本稿では採用しません。

8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
光を「出す・変換する」部品ではなく、光の配線・接続の総合供給者であり続ける有価証券報告書が強みを「光ファイバケーブル、融着接続機、光コネクタ、光コンポーネント、通信エンジニアリングに至るトータルソリューション」と書き、光通信用のレーザや光トランシーバの量産計画は書いていない(同社のファイバレーザは加工用)推測
会社全体を情報通信の会社へ作り替える2028年度計画で情報通信が売上の65.6%、営業利益の90.5%を占める(割合は本稿の計算)。「人的・資金リソースを集中投下」と明記推測
米国ハイパースケールデータセンタへの依存を、承知の上で深める米国向け売上が連結の44.2%。米国商務省との枠組み合意と、米国最大2,600億円の投資計画推測
CPO・光電融合にはファイバ側の部材で入るCPO向け偏波保持ファイバの出荷増、研究開発の重点に「PANDAファイバやイメージファイバの技術応用を通じてCPO等の光電融合技術の発展に貢献」と記載推測
多心光コネクタは規格を他社と共有して市場を広げる道を選んだUS Conecとの合意で、Corning、Sumitomo Electric Lightwaveも同様の合意を個別に結び「各社が同技術の普及と標準化を図っていく」と書いている事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

2025年10月のポーター賞の受賞理由として、同社のリリースは主催者の講評を引用しています。 そこには「日本における光ファイバ市場の飽和を機に、従来からの構造(スロット型、ルーズチューブ型)の光ケーブルの生産・販売から完全に撤退」し、 「自社開発した間欠固定型リボンファイバを用いた光ファイバケーブルに特化」、 さらに「光ファイバ素線、光部品・コンポーネント、融着接続機、光応用製品などの関連製品を全て提供」していると書かれています 事実。 つまりフジクラの強さは1つの製品ではなく、ケーブル構造・接続機・部品・工事を組み合わせて顧客の総費用を下げる点にあります。 光トランシーバのような「消耗の速い高速部品」の競争に入らず、データセンタが増えるほど必ず本数が増える配線に集中する、というのが本稿の読みです 未確定/将来。

9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング

フジクラを中心とした光通信分野の提携関係 有価証券報告書・中期経営計画資料・公式リリースに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 共同開発・共同実証 公的機関との合意・研究 出資・グループ会社(点線) 顧客への供給 フジクラ 光部品 US Conec(持分法適用) Corning・NTT-ATとの合弁 Corning PANDAファイバ共同開発(2025年) 米国商務省 枠組み合意書(2025年10月) 光ケーブル供給者に選定 AFL(100%子会社) 米国の製造・販売・工事 売上高3,553億円 NICT・アストロデザイン マルチコアファイバ実装(2025年) ハイパースケールDC・CPO顧客 社名は開示されていない
図2 フジクラを中心とした光通信分野の提携関係。出典:2026年3月期 有価証券報告書、2028年中期経営計画資料(2026年5月19日)、公式リリース(2025年3月4日・2025年3月27日・2026年3月11日)。US ConecはCorning、フジクラ、NTTアドバンステクノロジの3社合弁で、フジクラの持分法適用会社です。2026年3月のPRIZM® TMTに関する合意は、Corning、Sumitomo Electric Lightwaveも同様の合意を個別に結んでいます。13,824心ケーブルの納入先やCPO向けファイバの出荷先は社名が開示されていないため、枠だけを置いています。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品・サービス一次資料での記述光の領域
SWR®/WTC®単心の光ファイバを間欠的に接着したリボン(SWR®)を、押え巻きテープで覆った細径高密度ケーブル(WTC®)に収めたもの。13,824心(外径40mm以下)、国内向け4,000心(外径23mm)、空気圧送用1,728心などを量産品として販売DC内・DCI・通信網
多心光コネクタ部品MTフェルール、MMC用フェルール、MMC付きトランクケーブル。PRIZM® TMTフェルールは樹脂一体成形のレンズを先端に持つ拡張ビーム方式で、嵌合力を約70%低減DC内
偏波保持ファイバPANDAファイバ。CPO向け出荷が2025年度に増加。TitaniaBend PANDA PM Fiberは曲げ半径5mm以下に対応し、曲げ損失を従来品比で最大約9割低減(サンプル出荷段階)光トランシーバ・CPO内部
融着接続機工事用に加え、データセンタ用光機器の製造工場向けも販売。「100R」は最大16心まで一括接続し、自動整列・端面間隔補正を搭載(2026年4月発売)布設・製造工程
光デバイス海底ケーブルの中継器に内蔵される光ファイバカプラを、複数部品を一体化した複合モジュールとして開発中海底・長距離
次世代光ファイバ(研究段階)マルチコアファイバ、ホローコアファイバ。細径化・低損失化・低遅延化を狙う。マルチコアファイバはNICTらと実システムに実装済み(8K映像、300m)通信網・DC
通信エンジニアリング米国を中心に、データセンタ屋外・屋内の光布設・接続工事を提供。中期経営計画資料は「End to End」のソリューション提供力と表現DC内外

性能の数値について補足します。上の表のうち、13,824心・4,000心・1,728心のケーブル、MMC用フェルール、100Rは量産品として販売されています。 TitaniaBend PANDA PM Fiberは2025年度からのサンプル出荷で、量産品ではありません。 マルチコアファイバは実システムへの実装例(伝送距離300m)で、一般販売の製品ではありません 事実。 「世界初」「世界最高」は、いずれも会社自身の表現です。

素材技術者の視点:曲げに強いファイバは「ガラスの表面」で決まる

光トランシーバやCPOの筐体内では、ファイバを半径数mmで折り返して収めるしかありません。 このとき問題は2つあり、1つは曲げで光が漏れる(曲げ損失)こと、もう1つはガラスの表面にある微小な傷から割れる(機械的信頼性)ことです。 フジクラとCorningのTitaniaBendは、後者に対してガラス表面にチタン添加層を設けると説明しています 事実。 チタンを添加したシリカ層を外側に置くと、表層に圧縮応力が残る設計が知られており、傷が開く方向の応力を打ち消す働きが期待できます 未確定/将来。 前者の曲げ損失については、短い長さでシングルモード動作させるファイバ設計で対処した、というのが会社の説明です。

SWR®の側も同じく材料の話です。単心ファイバを全長ではなく間欠的に接着したリボンは、まとめて一括融着できる「リボン」の利点と、 丸めて細いケーブルに詰め込める「単心」の利点を両立させます。接着点の間隔と接着樹脂の柔らかさの設計が、 13,824心を外径40mm以下に収められるかどうかを左右していると考えられます 未確定/将来。 光ファイバの細径化・高密度化の考え方は、本シリーズの技術解説『光インターコネクトとSerDes』とあわせて読むと位置づけがわかりやすくなります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
需要の変動有価証券報告書は、製品がインフラ用であるため設備投資の動向や顧客の購買政策の変化の影響を受け、需要が短期的に大きく変動すると業績に影響すると書いている事実
米国市場への集中顧客の所在地が米国の売上が連結売上高の44.2%。子会社AFLだけで連結売上高の約3割本稿の計算
大型投資の回収日米で最大3,000億円の投資は2030年から段階的に立ち上げる計画。立ち上がる頃にデータセンタ投資の勢いが続いているかは、現時点で誰にも確かめられない推測
利益の偏り全社営業利益の80.9%を情報通信事業部門が稼いでおり、2028年度計画ではさらに約9割へ高まる。1部門の不調がそのまま全社に効く本稿の計算
為替中期経営計画の為替前提は1ドル150円(2026年度)・145円(2027年度以降)。円高は円換算の売上・利益を押し下げる事実
政策・通商有価証券報告書は米国の関税政策や地政学リスクを挙げている。米国商務省との枠組み合意も、政策の継続が前提になる推測
品質管理2018〜2019年に公表したグループ製品の品質管理不適切事案(152件・顧客99社)について、2025年10月に最終報告を公表。光製品に限った事案ではないが、再発すれば信頼に直結する事実

12. 用語集

SWR®/WTC®
フジクラの登録商標。単心ファイバを間欠的に接着したリボン(SWR®)と、それを収めた細径高密度ケーブル(WTC®)。
DCI
Data Center Interconnect。データセンタ同士を結ぶ光回線。
MTフェルール
多心の光ファイバを一括で位置決めして接続するための精密部品。多心光コネクタの心臓部。
MMC
US Conec が開発した超小型(VSFF)多心光コネクタの名称。MTフェルールをさらに小型化したフェルールを使う。
偏波保持ファイバ(PANDA)
光の偏光状態を保ったまま伝えるファイバ。PANDAはフジクラが用いる構造の名称。
CPO
Co-Packaged Optics。光部品と半導体チップを同じパッケージ内に高密度に実装する技術。
融着接続
光ファイバの端面同士を放電で溶かしてつなぐ方法。接続損失が小さい。
マルチコアファイバ
1本のファイバの中に複数のコア(光の通り道)を持つファイバ。同じ太さで伝送容量を増やせる。
概念図:データセンタの建屋の中と外、建屋同士を、細く多心の光ファイバケーブルがつないでいる様子
図3 フジクラが担う「光の配線」の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. 株式会社フジクラ 有価証券報告書 第178期(2025年4月1日〜2026年3月31日、2026年6月23日提出)。沿革、事業の内容、関係会社、経営方針、事業等のリスク、セグメント別業績、研究開発活動、設備投資、従業員数、セグメント情報、地域別売上高。 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
  2. 株式会社フジクラ 2028中期経営計画(2026年5月19日)。情報通信事業へのリソース集中、日米最大3,000億円の戦略的投資、米国商務省との枠組み合意書、事業部門別の売上高・営業利益目標、キャピタルアロケーション、製品別の投資額と生産能力。 https://www.fujikura.co.jp/newsrelease/management/__icsFiles/afieldfile/2026/05/19/260519.pdf
  3. 株式会社フジクラ プレスリリース「PRIZM® TMT拡張ビームフェルールおよびMMCコネクタの製造・販売強化に関しUS Conec社と合意」(2026年3月11日)。US Conecの合弁構成、Corning・Sumitomo Electric Lightwaveの個別合意、嵌合力約70%低減。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20260311prizm_tmtmmcus_conec.html
  4. 株式会社フジクラ プレスリリース「世界初『13824心SWR®/WTC®』の販売開始」(2025年7月18日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/2025071813824swrwtc.html
  5. 株式会社フジクラ プレスリリース「『TitaniaBend PANDA PM Fiber』のサンプル出荷開始」(2025年3月4日)。Corningとの共同開発、曲げ損失の低減、チタン添加層。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20250304titaniabend_panda_pm_fiber.html
  6. 株式会社フジクラ プレスリリース「佐倉事業所 SWR®新工場が稼働開始」(2025年2月18日)。投資額約100億円、生産量約30%増の見込み。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20250218swr.html
  7. NICT・アストロデザイン・フジクラ 共同発表「非圧縮8K映像を扱う実システムに、4コア標準外径マルチコアファイバ伝送ユニットを世界で初めて実装」(2025年3月27日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/newsrelease/products/__icsFiles/afieldfile/2025/03/26/release20250327.pdf
  8. 株式会社フジクラ プレスリリース「4000心SWR®/WTC®ラインナップの製品化」(2026年3月9日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/2026030913824swr_wtc.html
  9. 株式会社フジクラ プレスリリース「新型多心光ファイバ融着接続機の販売開始」(2026年3月23日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20260323post_118.html
  10. 株式会社フジクラ プレスリリース「『1728心Air Blown WTC®』の開発および販売開始」(2026年5月8日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/202605084000swr_wtc.html
  11. 株式会社フジクラ プレスリリース「情報通信事業部門が2025年度『ポーター賞』を受賞」(2025年10月9日)。主催者による受賞理由の引用。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/202510092025_10.html
  12. 株式会社フジクラ プレスリリース「当社製品の一部における品質管理不適切事案に関する再発防止策及び対象製品の安全性確認の進捗状況について(最終報告)」(2025年10月31日)。 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20251031post_104.html
  13. 株式会社フジクラ 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.fujikura.co.jp/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、英文名、本社所在地、上場年、1910年設立・1992年の商号変更事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
連結売上高・従業員数の推移、連結研究開発費168億円事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
情報通信事業部門の売上高・セグメント利益・資産・減価償却費・固定資産増加額(2025・2026年3月期)事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
情報通信事業部門の主要品種、トータルソリューションという表現事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
情報通信事業部門の従業員15,199人、佐倉677人・鈴鹿95人、研究開発費115億円事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
AFL Telecommunications LLCの売上高3,553億円、US Conec等の持分法適用会社、藤倉烽火光電材料科技の議決権60%事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
佐倉の約450億円の次世代工場、日米最大3,000億円・最大3倍の方針、MTフェルール約1.7倍、モロッコのWTC®設備事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
CPO向け偏波保持ファイバの出荷増、海底中継器向け光ファイバカプラ、次世代光ファイバの研究方針事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
地域別売上高(米国5,222億円)、10%以上の主要顧客がないこと、需要変動・政治経済情勢のリスク記載事実出典1 https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
2028年度の情報通信売上高1兆500億円・営業利益2,850億円ほかの計画値、為替前提事実出典2 https://www.fujikura.co.jp/newsrelease/management/__icsFiles/afieldfile/2026/05/19/260519.pdf
日本400億円・米国最大2,600億円、22年度比約4倍、2030年から段階的立ち上げ、キャピタルアロケーション事実出典2 https://www.fujikura.co.jp/newsrelease/management/__icsFiles/afieldfile/2026/05/19/260519.pdf
2025年10月28日の米国商務省との枠組み合意書と供給者への選定事実出典2 https://www.fujikura.co.jp/newsrelease/management/__icsFiles/afieldfile/2026/05/19/260519.pdf
US ConecとのPRIZM® TMT合意、US Conecの合弁構成、嵌合力約70%低減事実出典3 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20260311prizm_tmtmmcus_conec.html
13,824心SWR®/WTC®の販売開始と仕様事実出典4 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/2025071813824swrwtc.html
TitaniaBend PANDA PM FiberのCorning共同開発、曲げ損失最大約9割低減、チタン添加層、サンプル出荷段階事実出典5 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20250304titaniabend_panda_pm_fiber.html
SWR®新工場の稼働、約100億円、生産量約30%増の見込み事実出典6 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20250218swr.html
NICT・アストロデザインとのマルチコアファイバ実装(直径3mm、8本、300m)事実出典7 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/newsrelease/products/__icsFiles/afieldfile/2025/03/26/release20250327.pdf
4,000心SWR®/WTC®(外径23mm)の製品化事実出典8 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/2026030913824swr_wtc.html
融着接続機「100R」の機能と2026年4月の発売事実出典9 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20260323post_118.html
1,728心 Air Blown WTC®の販売開始(864心の2倍)事実出典10 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/202605084000swr_wtc.html
ポーター賞の受賞と、従来構造の光ケーブルからの撤退・間欠固定型リボンへの特化という講評事実出典11 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/202510092025_10.html
品質管理不適切事案の最終報告(152件・顧客99社)事実出典12 https://www.fujikura.co.jp/news/pressrelease/20251031post_104.html
売上高比55.2%・営業利益比80.9%・営業利益率23.4%/20.4%・米国比率44.2%・研究開発費の68.5%・2028年度計画の65.6%/90.5%本稿の計算出典1・2の数値を本稿が割り算したもの
光通信企業の3類型の区分(光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの企業から例示
米国最大2,600億円の投資の工場所在地、製品別売上高、CPO向けファイバの出荷量と顧客名、主要顧客の社名未確定/将来出典1・2に記載なし。報道ベースの数値は採用しない https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
光通信分野の新規買収、光通信分野での公的資金の採択未確定/将来今回確認した一次資料に記載なし。本稿では存在しないとも断定しない https://ssl4.eir-parts.net/doc/5803/yuho_pdf/S100YGP3/00.pdf
支出の大半が2027年度以降になるという読み未確定/将来出典2の「2030年から段階的に立ち上げ」からの本稿の見通し
光の配線・接続の総合供給者であり続けるという読み推測出典1のトータルソリューションの記述と出典11の講評からの本稿の解釈
会社全体を情報通信の会社へ作り替えるという読み推測出典2の部門別計画からの本稿の解釈
米国ハイパースケールへの依存を承知の上で深めるという読み推測出典1の地域別売上と出典2の米国投資計画からの本稿の解釈
CPO・光電融合にファイバ側の部材で入るという読み推測出典1の研究開発の記述からの本稿の解釈
チタン添加層が表層の圧縮応力として働くという説明、SWR®の接着設計が多心化を左右するという説明未確定/将来一般的な材料知見に基づく本稿の解説。会社はこの機構を説明していない
大型投資の回収、政策継続への依存というリスク推測出典1・2からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべて株式会社フジクラが公表した有価証券報告書・中期経営計画資料・プレスリリース、およびNICTほかとの共同発表資料に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。