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Broadcom|光通信・フォトニクス 企業解説

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COMPANY PROFILE / 光通信・フォトニクス

Broadcom
― スイッチのチップとレーザーの工場を両方持ち、CPOを3世代続けてきた会社

BroadcomはAI向けのカスタムチップやEthernetスイッチで知られる半導体会社ですが、光通信の世界では CPO(Co-packaged Optics)を2021年から世代を重ねて出してきた会社として名前が出ます。 2025年10月には第3世代のTomahawk 6 – Davisson(102.4Tb/s)を発表しました。 もう1つの顔は、レーザーを自社の工場で作る光部品メーカーでもあることです。 米国SECへの年次報告書は、ペンシルベニア州の自社工場を「光ファイバー製品向けのInP(インジウムリン)ウェーハの唯一の供給源」と書いています。 本稿ではソフトウェア事業を含む会社全体の規模は最小限にとどめ、CPO・光DSP・レーザーの3つで何をしてきたかを、同社の公式リリースとSEC提出書類だけで整理します。

構成:Broadcom Form 10-K(2025年11月2日終了年度、2025年12月18日提出)、Form 10-Q(2026年8月2日終了四半期、2026年9月10日提出)、公式プレスリリース(2022年8月〜2026年3月)、CPO紹介ページを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるBroadcomと、光通信・フォトニクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(ソフトウェア事業を含むため簡潔に)
  5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか
  9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるBroadcomと、光通信・フォトニクスでの立ち位置

正式名称Broadcom Inc.デラウェア州法人。AT&T/ベル研究所、HPなどを源流に持つ
本社米国カリフォルニア州
パロアルト
3421 Hillview Ave
上場Nasdaq: AVGO会計年度は10月31日に最も近い日曜日に終わる
この分野での区分半導体
(レーザー工場も自社保有)
光の領域はデータセンター内の光インターコネクトが中心
CPOの最新世代第3世代
TH6-Davisson
102.4Tb/s、1チャネル200Gb/s。2025年10月発表
CPOの始まり2021年
第1世代TH4-Humboldt
第2世代TH5-Baillyを会社は「業界初の量産CPO」と説明
自社の光工場米国ペンシルベニア州
Breinigsville
光ファイバー製品向けInPウェーハの唯一の供給源
次の世代第4世代CPO
(1チャネル400Gb/s)
開発中と2025年10月に公表。時期は非公表
まず押さえるべき1点

光通信に関わる企業は、大きく光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者の3種類に分かれます。 Broadcomは半導体の会社ですが、この分野では珍しく光部品の側にも足をかけています 事実。 10-Kによれば、同社は製造の大半を外部に委託する一方、光ファイバー通信用のVCSEL(面発光レーザー)や、GaAs・InPを使った端面発光レーザーは自社の工場で作っています。 つまり、スイッチのチップ(Tomahawk)、光の信号を処理するDSP、光のエンジン、そしてレーザーまで、CPOとプラガブル光モジュールの両方に必要な主要部品を1社で持っているのが特徴です。 同じ半導体会社でも、レーザーを外部から買うNVIDIAとは、ここが決定的に違います。

2. ロゴと社名の表記について

Broadcomのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 Broadcom公式サイトで使われているロゴ画像を img/broadcom_logo.svg として設置しています。

表記の注意:法定開示上の社名は Broadcom Inc. です。日本語では「ブロードコム」と読まれます。 CPOの製品名は「スイッチのチップ名+光エンジンの名前」で、たとえば Tomahawk 6 – Davisson はスイッチチップ Tomahawk 6 と光エンジン Davisson の組み合わせを指します。 会社自身も「TH6-Davisson」「TH5-Bailly」と略記しており、本稿もそれに合わせます。

公式サイト:https://www.broadcom.com/

3. 光通信・フォトニクスの世界で、この会社はどこにいるか

光通信・フォトニクスに関わる企業の3つの類型 同じ「光通信の会社」でも、どこで光を扱うかがまったく違う 光部品・光モジュール 半導体・ファウンドリ 通信装置・通信事業者 光を出す・送る・受ける部品を売る 電気と光をつなぐチップを作る 光でネットワークを作り運用する Lumentum/Coherent InnoLight/Ayar Labs ほか NVIDIA/Broadcom TSMC/Intel ほか NTT/Ciena Nokia/Cisco ほか レーザーと光実装の量産力 スイッチ・GPUの出口を持つ 長距離伝送と網の運用知見 大口顧客への依存が大きい 光部品は外部に頼りがち データセンター内は変化が速い Broadcomはこの中央にいるが、レーザーの自社工場も持ち左の枠にも足をかける スイッチのチップ・光DSP・レーザーを1社で持ち、CPOとプラガブルの両方に部品を出す
図1 光通信・フォトニクスに関わる企業の3類型と、Broadcomの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。Broadcomがレーザーを自社工場で作っていることは同社のForm 10-K、CPOとプラガブル向け部品の両方を出していることは同社の公式リリースの記載に基づきます。

光のどの領域に関わるかでいえば、中心はデータセンターの中の光インターコネクトです 事実。 ただし10-Kは、光部品の用途としてEthernetネットワーク、ストレージ、アクセス網に加え、メトロ網・長距離の通信網も挙げており、 さらに産業向けの光ファイバー部品やフォトカプラも扱っています。 本稿は、このうち一次資料で具体的な製品と数値が追えるデータセンター向け(CPO・光DSP・レーザー)を中心に扱います。

4. 会社の規模(ソフトウェア事業を含むため簡潔に)

Broadcomは半導体事業のほかにVMwareなどのソフトウェア事業を持つため、会社全体の数字は光の規模とは大きくかけ離れています。規模だけを押さえます 事実。

指標(百万ドル)2024年10月期2025年10月期
売上高(全社)51,57463,887
うち半導体ソリューション部門30,09636,858
うちインフラストラクチャー・ソフトウェア部門21,47827,029
研究開発費(全社)9,31010,977

会計年度は10月31日に最も近い日曜日に終わります(2025年度は2025年11月2日まで)。表の「2025年10月期」はこの年度を指します。

従業員は2025年11月2日時点で約33,000人、うち約57%が研究開発職です。特許は約19,000件を保有しています 事実。 半導体部門の売上が伸びた理由として、10-Kは「カスタムAIアクセラレータとAIネットワーク製品への強い需要」を挙げています。

ここで注意

上の数字は会社全体と部門全体のものです。 Broadcomは光部品、CPO、光DSPの売上を個別に開示していません 未確定/将来。 半導体ソリューション部門には、カスタムAIチップ、Ethernetスイッチ、無線通信用の部品、ブロードバンド、産業用製品などがすべて含まれます。 「Broadcomの光事業は○億ドル」という数字は調査会社の推計や報道によるもので、本稿では採用しません。

5. 光通信・フォトニクスにかけているリソース

金額と人数は非公表ですが、何をリソースとして持っているかは10-Kと公式リリースから具体的に読み取れます。

リソースの種類内容確認
人(専任組織・人員)光の製品はOptical Systems Division(光システム事業部)が担当している(リリースの発言者の肩書き)。人員数は非公表。全社では約33,000人のうち約57%が研究開発職組織は確認。人数は非公表
金(研究開発費・設備)全社の研究開発費は2025年10月期に109億7,700万ドル。光関連の研究開発費・設備投資額は非公表非公表
自社の光工場米国ペンシルベニア州Breinigsvilleの工場が、光ファイバー製品向けInPウェーハの唯一の供給源。III-V族(化合物半導体)ウェーハの自社製造の大半は米国とシンガポールで行う。VCSELとGaAs・InPのレーザーは自社工場、標準的なCMOSは外部委託確認できた
外部への出資・買収光関連の出資・買収は、本稿の調査範囲の一次資料では確認できなかった確認できず
製造・製品の協業先TSMC(Davissonの光エンジンにCOUPE技術)、Corning(ファイバー・コネクタ)、Foxconn Interconnect Technology(CPO用ソケット・着脱式レーザー光源の部材)、Twinstar(CPO用ファイバーケーブル)など確認できた
顧客・評価の協業先Tencent(2022年にCPOスイッチを共同開発)、Meta(CPOの信頼性試験)、Micas Networks・Delta Electronics・Celestica・HPE・Nexthop AI(CPOスイッチのシステム化)確認できた
規格づくり他社とともにOCI MSA(Optical Compute Interconnect Multi-Source Agreement)を設立したと2026年3月に公表確認できた
大学・研究機関・公的資金光関連で大学との共同研究、CHIPS法などの公的資金の採択は、10-K・リリースに記載なし確認できず
素材技術者の視点:「InPウェーハの唯一の供給源」という一文の重さ

10-Kのリスク要因の欄に、Breinigsvilleの工場が光ファイバー製品向けのInPウェーハの唯一の供給源だと書かれています 事実。 InP(インジウムリン)は、光ファイバー通信で使う波長のレーザーを作るための化合物半導体で、シリコンのように大口径のウェーハで大量に作ることができません。 結晶の成長、エピタキシャル層の積み重ね、端面の加工と保護膜の形成まで、材料とプロセスのノウハウが工場の中に閉じている分野です。

Broadcomは標準的なCMOSを外部に委託しながら、この部分だけは自社で持ち続けています。 10-Kはその理由を「IPを守り、製品化までの時間を短くするため」と説明しています。 裏を返せば、この1つの工場に問題が起きると、光ファイバー製品のレーザーの供給が止まりうるということであり、会社自身もそれをリスクとして書いています。 材料の側から見れば、「作れる工場が1つしかない」ことが強みであると同時に最大の弱点でもある、という構図です 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2021年第1世代CPO TH4-Humboldtを投入(2025年5月のリリースの記述)。高密度の光エンジン、端面結合、着脱式ファイバーコネクタを導入CPOの供給網全体で「早い学習サイクル」を回し始めた
2022年8月22日Tencentと戦略的提携。25.6Tb/sのHumboldt(Tomahawk 4+3.2Tb/sの光エンジン4個)を提供し、Ruijie Networksがスイッチを製造・試験してTencentに納入。1310nmの非冷却CWレーザーを採用中国の大手クラウドが最初の実運用の相手になった
2024年3月14日第2世代 TH5-Bailly(51.2Tb/s)を顧客に出荷。6.4Tb/sの光エンジン8個。光インターコネクトの消費電力を70%削減、シリコン面積の効率は8倍と主張容量を倍にし、量産の工程を作り込んだ
2025年5月15日第3世代(1チャネル200Gb/s)CPOの製品ラインを発表。Baillyを「業界初の量産CPO」と位置づけ、第4世代(400Gb/s)の開発も約束。Corning、Delta、Foxconn Interconnect、Micas、Twinstarが量産や出荷の節目を公表部品と装置の供給網が揃ってきたことを示した
2025年10月1日Metaでの試験で、400G換算で累計100万ポート時間、リンク断(link flap)ゼロを達成したと発表。プラガブルに比べ光の消費電力を65%削減「壊れにくいか」という最大の疑問に、顧客側のデータで答えた
2025年10月8日第3世代 TH6-Davisson(102.4Tb/s)を発表。TSMCのCOUPEで作った6.4Tb/sの光エンジン16個。レーザーは交換式のELSFPモジュール。第4世代(400Gb/s)を開発中と公表CPOの容量で最大級に並んだ
2026年3月12日OFC 2026に向けて、1レーン400Gb/sの光DSP「Taurus」と400GのEML・受光素子を発表。200GのVCSEL・EML・CWレーザー、3.2TのVCSEL型NPOも展示。OCI MSAを他社と設立CPOだけでなくプラガブル向けの部品も次の速度へ進めた

7. 今後の計画

第4世代CPO1チャネル400Gb/s開発中(2025年10月)。提供時期は非公表
光モジュール向け1.6T→3.2T400G/レーンのDSPとEMLで、204.8Tスイッチ世代の3.2T光モジュールの土台に
スイッチの容量「200Tへのロードマップ」会社の表現。製品名・時期は非公表
CPOの用途スケールアウト+
スケールアップ
XPU(AIチップ)同士の接続にもCPOを提供すると製品ページに記載

2025年5月のリリースは、第3世代CPOの狙いを「銅配線並みの信頼性と電力効率が求められる、512ノードを超えるスケールアップ」と書いています 事実。 つまり、今はGPUやAIチップ同士を銅のケーブルでつないでいる領域(スケールアップ)まで、光で置き換えることを視野に入れています。

確認できなかったこと

次はいずれも、本稿の調査範囲の一次資料に記載がありません 未確定/将来。

CPOの出荷台数・売上・価格/TH6-Davissonの量産出荷の開始時期(2025年10月のリリースは見出しで「出荷中」と書く一方、本文では「早期アクセス顧客へサンプル出荷中」としている)/ 第4世代CPOと3.2T光モジュールの提供時期/Metaなど試験先が実際に大規模導入したかどうか/光関連の設備投資額。 2024年3月のリリースには「プラガブル光モジュールがスイッチシステムの電力の約50%、コストの50%超を占める」という記述がありますが、 同じリリースで調査会社のアナリストが同趣旨の見通しを述べており、会社自身の実測か市場推計か区別できないため、本稿では採用しません。

8. この会社は光通信・フォトニクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
CPOとプラガブルの両方で勝つことを狙っているCPOスイッチを世代ごとに出す一方、2026年3月にはプラガブル光モジュール向けの400G/レーンDSPとEMLを発表。TH6-DavissonもDR型のトランシーバーやLPOとの相互接続を明記している推測
CPOを複数社で作れる「開かれた」技術にしたいOCI MSAの設立、IEEE 802.3準拠の明記、TSMC・Corning・Foxconn Interconnectなど外部の供給網を前面に出す発表の構成推測
次の主戦場はスケールアップ(AIチップ同士の接続)の光化第3世代を「512ノード超のスケールアップ」向けと説明し、製品ページで「XPU向けのCPO」を掲げている事実
レーザーは今後も自社で作り続ける10-Kが、IPの保護と製品化の速さを理由にレーザーを自社工場で作ると説明。400G EMLも「自社初」として発表推測
CPOの普及の鍵は信頼性の証明だと考えている2025年10月にMetaの試験結果(リンク断ゼロ)を単独のリリースとして出し、TH6-Davissonの発表でもリンクの安定性を主な利点に挙げている推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

2026年3月のOFC向けリリースで、Broadcomが最初に大きく扱ったのはCPOではなく、プラガブル光モジュール向けの400G/レーンの光DSP「Taurus」と400G EMLでした 事実。 リリースは、これらを使えば光モジュールメーカーが低消費電力の1.6T光モジュールを作れ、将来は3.2Tにつながると書いています。 CPOが普及すればプラガブル光モジュールは減るはずで、CPOの旗振り役がプラガブル向けの部品を強化するのは一見矛盾しています。 本稿はこれを、どちらが主流になっても、スイッチのチップ・DSP・レーザーのいずれかで売上が立つようにする両面作戦と読みます 未確定/将来。 レーザーを自社で作っている会社だからこそ取れる戦略ですが、会社自身がこの意図を説明したわけではなく、これは本稿の解釈にとどまります。

9. 光通信・フォトニクス分野の提携マッピング

Broadcomを中心とした光通信・フォトニクスの提携関係 公式リリースとSEC提出書類に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 製造・部材の協業 顧客・導入と評価 CPOスイッチのシステム化 規格づくり(点線) Broadcom チップ・レーザー TSMC Davissonの光エンジン(COUPE) Corning CPO用ファイバー・コネクタ Foxconn Interconnect ソケット・レーザー光源の部材 Tencent(+Ruijie) 2022年 CPOスイッチを共同開発 Meta CPOの信頼性試験(2025年) Micas Networks Bailly搭載スイッチを量産 Delta/Celestica ほか HPE・Nexthop AIも含む OCI MSA 他社と設立した光I/Oの共通仕様 ほかにTwinstar Technologies(CPO用ファイバーケーブル)が2025年5月のリリースに登場
図2 Broadcomを中心とした光通信・フォトニクスの提携関係。出典:2022年8月22日・2024年3月14日・2025年5月15日・2025年10月1日・2025年10月8日・2026年3月12日の公式リリース。濃紺が製造・部材の協業、橙が顧客としての導入や評価、緑がCPOスイッチを製品化したシステムメーカー、灰色の点線が規格づくりです。Metaとの関係は「Metaでの試験結果」の公表であり、Metaが大規模に導入したことを示すものではありません。Broadcomから他社への出資は、光の分野では一次資料で確認できなかったため、図に出資の線はありません。

10. 提供している技術・製品・サービス

製品・技術公表されている仕様段階
TH6-Davisson(BCM78919)102.4Tb/s。6.4Tb/sのDR型光エンジン16個。1リンク200Gb/s。交換式のELSFPレーザーモジュール。スケールアップで512個のXPU、2段のネットワークで10万個超のXPUに対応。IEEE 802.3準拠をうたう早期アクセス顧客にサンプル出荷(2025年10月時点)
TH5-Bailly51.2Tb/s。6.4Tb/sの光エンジン8個。400G FR4×128ポート。Broadcom Fiber Connector(BFC)を採用し、現場で交換できる複数のリモートレーザーモジュールに対応会社は「業界初の量産CPO」と説明
TH4-Humboldt25.6Tb/s。3.2Tb/sの光エンジン4個。1310nmの非冷却CWレーザー第1世代(2021年〜)
Taurus(光DSP)1レーン400Gb/sの光DSP。400G EML・受光素子と組み合わせ1.6T光モジュールを実現し、3.2Tへの土台とする2026年3月に初公開
レーザー・受光素子200G/レーンのVCSEL・EML・CWレーザー、400G EML。VCSELとGaAs・InPのレーザーは自社工場で製造製品群として提供(個別の出荷状況は非公表)
VCSEL型NPO3.2TのNear-Packaged Optics(チップの近くに光部品を置く方式)2026年3月に展示
光ファイバー部品(従来型)Ethernet、ストレージ、アクセス網、メトロ・長距離通信向けの光部品。産業向けの光ファイバー部品・フォトカプラ販売中(売上は非開示)
性能の数字は「会社の主張」

CPOの省電力効果について、Broadcomは「光インターコネクトの消費電力を70%削減(プラガブルの3.5分の1以下)」(2024年3月・2025年10月)、 「Metaの試験データではプラガブルに比べ65%削減」(2025年10月)と、文書によって異なる数字を示しています 事実。 CPO紹介ページには「光のコストをビットあたり40%削減」「帯域密度は1mmあたり1Tb/s超」とも書かれていますが、比較の条件は示されていません。 「業界初」「業界唯一」も会社自身の表現です。 IEEE 802.3への準拠は、TH6-Davissonのリリースで会社が主張しているもので、規格団体の認定を本稿が確認したものではありません 未確定/将来。

素材技術者の視点:光を「横から入れる」か「上から入れる」か

Broadcomは第1世代から端面結合(edge coupling)と着脱式のファイバーコネクタを採用し、2024年のBaillyでは「高度に自動化された高密度の端面結合によるファイバー接続」を量産の決め手に挙げています 事実。 端面結合は、光のチップの側面(端面)から光ファイバーの光を入れる方式で、結合の損失を小さくしやすい一方、端面の研磨や保護、ファイバーを固定する接着剤の位置精度と長期の安定性が効いてきます。 一方、NVIDIAはSpectrum-X Ethernet Photonicsでチップの表面から光を出し入れする方式(surface-normal I/O)を採ったと自社の技術ブログで説明しています(出典11)。

どちらの方式でも、光ファイバーとシリコンの導波路の位置合わせはμm以下の精度が必要で、 温度サイクルで接着剤が伸び縮みすれば、その分だけ光が漏れます。 CPOの信頼性試験で「リンク断ゼロ」が大きく扱われるのは、電気の接続よりも光の接続のほうが、材料の経時変化に敏感だからです 未確定/将来。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
レーザー工場が1か所Breinigsvilleの工場が光ファイバー製品向けInPウェーハの唯一の供給源であることを、10-Kと2026年の10-Qがリスクとして記載事実
製造の大半は外部委託10-Kは「主に外部委託の製造モデル」と記載。Davissonの光エンジンもTSMCの技術に依存している事実
顧客の集中2025年10月期に売上の32%を1社が占め、上位5社で約40%。光の製品に限った内訳は非公表事実
出荷段階の読みにくさTH6-Davissonのリリースは見出しで「出荷中」、本文で「サンプル出荷中」と書いており、量産の段階が外から判断しにくい事実
CPOが主流になるかは未確定会社自身がプラガブル向けの部品を強化しており、CPOとプラガブルのどちらが主流になるかは会社の資料からも読み取れない推測
競合NVIDIAもCPOスイッチを量産段階に入れており、NVIDIAは10-KでBroadcomをネットワーク製品の競合に挙げている。Broadcomの10-Kは競合の社名を挙げていない事実

12. 用語集

CPO(Co-packaged Optics)
光の送受信部をスイッチのチップと同じパッケージに載せる方式。電気の配線を短くして電力を減らす。
光DSP
光モジュールの中で、ゆがんだ信号を整えるデジタル信号処理のチップ。電力を多く使う。
EML
電界吸収型変調器つきレーザー。レーザーと変調器を1チップにし、高速で光をオン・オフする。
VCSEL
面発光レーザー。基板に垂直に光を出す。安価で、短距離の多モード光ファイバーに使う。
InP(インジウムリン)
光ファイバー通信の波長のレーザーを作るための化合物半導体。
端面結合
光のチップの側面から光ファイバーの光を入れる方式。
リンク断(link flap)
通信の接続が一瞬切れて、つながり直すこと。AIの学習を止める原因になる。
NPO(Near-Packaged Optics)
光部品をチップと同じパッケージではなく、そのすぐ近くの基板上に置く方式。
MSA
Multi-Source Agreement。複数の会社が互換性のある製品を作るために合意する共通仕様。
スケールアップ
AIチップ同士を1つの大きな計算機のように密につなぐこと。今は主に銅の配線を使う。
概念図:スイッチのチップと光エンジン、レーザーを作る化合物半導体ウェーハが1本の流れでつながる様子
図3 Broadcomの光通信の事業構造の概念図(AI生成による概念図。実際の製品や工場を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Broadcom Inc. Form 10-K for the fiscal year ended November 2, 2025(米国SEC提出、2025年12月18日)。本社・沿革、事業内容(光部品・PHY・AI向け製品)、自社工場(Breinigsville・Fort Collins・シンガポール)とレーザーの内製、売上高・部門別売上・研究開発費、従業員数、特許数、顧客集中、競合の記述。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
  2. Broadcom Inc. Form 10-Q for the quarterly period ended August 2, 2026(米国SEC提出、2026年9月10日)。Breinigsvilleの工場がInPウェーハの唯一の供給源であるというリスク記載(2026年時点でも継続)、半導体部門の伸びの理由。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000080/avgo-20260802.htm
  3. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom and Tencent Partner to Accelerate Commercialization of Co-Packaged Optics Network Switch」(2022年8月22日)。Tencentとの提携、25.6Tb/sのHumboldt、Ruijie Networksの役割、1310nmの非冷却CWレーザー。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/60461
  4. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom Delivers Industry's First 51.2-Tbps Co-Packaged Optics Ethernet Switch Platform for Scalable AI Systems」(2024年3月14日)。Baillyの出荷、光エンジン8個、消費電力70%削減・面積効率8倍の主張、端面結合によるファイバー接続、製品仕様。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/61946
  5. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom Announces Third-Generation Co-Packaged Optics (CPO) Technology with 200G/lane Capability」(2025年5月15日)。第1〜第3世代の経緯、第4世代の開発の約束、協業先の節目、スケールアップ向けの位置づけ。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63126
  6. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom Showcases Industry-Leading Quality and Reliability of Co-Packaged Optics」(2025年10月1日)。Metaでの試験(400G換算で累計100万ポート時間のリンク断ゼロ)、光の消費電力65%削減。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63616
  7. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom Announces Tomahawk® 6 – Davisson, the Industry's First 102.4-Tbps Ethernet Switch with Co-Packaged Optics」(2025年10月8日)。TH6-Davissonの仕様、TSMCのCOUPE、ELSFP、IEEE 802.3準拠の主張、サンプル出荷、第4世代の開発、協業先のコメント。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63626
  8. Broadcom Inc. プレスリリース「Broadcom Showcases Industry-Leading Solutions for Scaling AI Infrastructure at OFC 2026」(2026年3月12日)。400G/レーン光DSP「Taurus」、400G EML・受光素子、200G VCSEL・EML・CW、3.2T VCSEL NPO、OCI MSAの設立、200Tへのロードマップ。 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/64036
  9. Broadcom Inc. CPO紹介ページ「Here. Now. Leading the future of Co-Packaged Optics (CPO)」(2026年9月閲覧)。CPOの利点の主張(消費電力3.5倍超の削減、ビットあたり40%のコスト削減、1Tb/s/mm超の帯域密度)、スイッチ向けとXPU向けのCPO。 https://www.broadcom.com/info/optics/cpo
  10. Broadcom Inc. 公式サイト(社名表記の確認)およびロゴ画像の取得元。 https://www.broadcom.com/
  11. NVIDIA Corporation 技術ブログ「Scaling Power-Efficient AI Factories with NVIDIA Spectrum-X Ethernet Photonics」(2026年1月6日)。比較のために参照した、NVIDIAのCPOの光の入出力方式(surface-normal I/O)。 https://developer.nvidia.com/blog/scaling-power-efficient-ai-factories-with-nvidia-spectrum-x-ethernet-photonics/
  12. NVIDIA Corporation Form 10-K for the fiscal year ended January 25, 2026(米国SEC提出、2026年2月25日)。比較のために参照した、NVIDIAがネットワーク製品の競合としてBroadcomを挙げている記述。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、沿革、会計年度事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
売上高・部門別売上・研究開発費(2024〜2025年10月期)、従業員約33,000人と研究開発職約57%、特許約19,000件事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
光部品の用途(Ethernet・ストレージ・アクセス・メトロ・長距離)、産業向け光ファイバー部品事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
VCSELとGaAs・InPレーザーの自社製造、III-V族ウェーハの製造拠点、Breinigsvilleが唯一の供給源事実出典1・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000080/avgo-20260802.htm
顧客集中(1社32%、上位5社約40%)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
Tencentとの提携(2022年)、Humboldtの仕様、Ruijieの役割事実出典3 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/60461
Baillyの出荷(2024年3月)、仕様、消費電力70%削減・面積効率8倍の主張、端面結合事実出典4 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/61946
第1世代(2021年)からの経緯、Baillyが業界初の量産CPOという会社の説明、第3世代の狙い、協業先の節目事実出典5 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63126
Metaでの試験結果(リンク断ゼロ)と65%削減事実出典6 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63616
TH6-Davissonの仕様、TSMCのCOUPE、サンプル出荷、第4世代の開発、IEEE 802.3準拠の主張、協業先事実出典7 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63626
Taurus、400G EML・受光素子、200Gレーザー群、NPO、OCI MSAの設立、200Tへのロードマップ事実出典8 https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/64036
CPO紹介ページの利点の主張、XPU向けCPO事実出典9 https://www.broadcom.com/info/optics/cpo
光通信企業の3類型の区分(光部品・光モジュール/半導体・ファウンドリ/通信装置・通信事業者)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
光部品・CPO・光DSPの売上、光関連の研究開発費・設備投資・人員数未確定/将来いずれも非公表。本稿では推計もしない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
TH6-Davissonの量産出荷時期、第4世代・3.2Tの提供時期、Metaでの大規模導入の有無未確定/将来出典3〜9に記載なし。報道ベースの情報は採用しない https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/63626
プラガブルがスイッチ電力の約50%・コストの50%超という記述未確定/将来出典4に記載があるが、調査会社の見通しと区別できないため本稿では採用しない https://www.broadcom.com/company/news/product-releases/61946
光関連の出資・買収、大学との共同研究、公的資金未確定/将来出典1〜9に記載なし。本稿では存在しないとも断定しない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
CPOとプラガブルの両方で勝つ両面作戦という読み推測出典7・8の製品構成からの本稿の解釈。会社は意図を説明していない
CPOを複数社で作れる開かれた技術にしたいという読み推測出典7・8のOCI MSA・規格準拠・供給網の記述からの本稿の解釈
レーザーを今後も自社で作り続けるという読み推測出典1の内製の理由と出典8の400G EMLからの本稿の解釈
普及の鍵を信頼性の証明と見ているという読み推測出典6・7の発表の構成からの本稿の解釈
InP工場が強みであり弱点でもあるという読み、光の接続が材料の経時変化に敏感という解説推測出典1・2・4の記述に基づく本稿の解説
NVIDIAがBroadcomを競合に挙げていること、NVIDIAのCPOが表面から光を出し入れする方式であること事実出典11・12 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1045810/000104581026000021/nvda-20260125.htm

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値は、Broadcom Inc.が米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類と、同社の公式プレスリリース・製品紹介ページに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。性能の数値は会社の主張であり、第三者が検証したものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。