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材料データベースとFAIR原則 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

材料データベースとFAIR原則
― 公開されたデータを「使ってよいか・信じてよいか」を確かめる

材料のデータベースは、MIの「燃料」です。Materials Project、AFLOW、OQMD、NOMAD、JARVIS、NIMS の MDR や PoLyInfo など、無料で使えるものも多くあります。ただし、データベースの数字はそのまま実測値として使えるとは限りません。計算の条件が違えば値が違い、利用条件(ライセンス)もデータベースごとに違います。 この記事は、素材技術者が、公開データベースを使ってよいか(利用条件)と信じてよいか(値の質)を確かめる手順と、データを見つけやすく再利用しやすくする国際的な原則(FAIR原則)の考え方を、確認日つきの一次情報で説明します。

構成:各データベースの公式サイト・公式ドキュメント・論文、FAIR原則の原論文、Creative Commons・ISO の公式ページを使用/数値例は本稿で計算/確認日 2026年10月22日

計算、実験、測定の生データでは意味が違います。データベースを選ぶ際は、値だけでなく由来と条件を確認します。
図1 概念画像(ImageGen生成)。計算、実験、測定の生データでは意味が違います。データベースを選ぶ際は、値だけでなく由来と条件を確認します。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。
この記事の構成
  1. 3行でわかる/読む前に/シリーズの中での位置
  2. 材料データベースの地図 ― 主なものを一覧する
  3. 利用条件(ライセンス)の読み方
  4. データベースの値は、どれくらい信じてよいか
  5. FAIR原則 ― データを見つけやすく、再利用しやすくする
  6. 自社のデータを、FAIRに近づける
  7. 公開データベースを使う前の6つの確認
  8. 限界と、確認できなかったこと/まとめ
  9. 評価・標準の読み方
  10. 用語集
  11. 参考資料(一次情報)
  12. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・改訂中など、まだ確定していない事項
このほか、材料研究への読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。

この記事の数値・記述の読み方

データベースの規模・版・利用条件は変わります。本稿の記載は、確認日(2026年10月22日)に、公式サイトや公式ドキュメントで確認できた内容です。確認できなかった項目は「確認できなかった」と書き、推測で埋めていません。ライセンスの記述は、公式の記載を紹介するもので、法的な助言ではありません。自社での利用(研究開発、製品化、社外への公開)が条件に当たるかは、知財・法務の担当部署に確認してください。有料のデータベース(ICSD など)の中身は、引用していません。第4章の合成データの計算は、実在のデータベースの値ではありません。

1. 3行でわかる/読む前に/シリーズの中での位置

  • データベースは便利だが、「そのまま」は危ない:計算で作られた値は、条件(汎関数、擬ポテンシャル、補正)が違えば値が違います。同じ材料でも、データベースの間で、生成エネルギーに最大0.105 eV/原子、バンドギャップに最大0.21 eV の差が報告されています事実
  • 利用条件はデータベースごとに違う:出典を示せば商用も可(CC BY 4.0)のものも、非商用のみ(BY-NC など)のものも、登録制で大量取得が禁止のものもあります。「公開されている=自由に使える」ではありません
  • FAIR原則は、データの「見つけやすさ・アクセス・つなぎやすさ・再利用しやすさ」の15の原則:公開を求める原則ではなく、データを機械でも人でも使えるように整える考え方です。自社データの整え方にも役立ちます
この記事を読む前に知っておくこと

DFT(密度汎関数理論)は、電子の振る舞いから材料の性質を計算する物理シミュレーションで、近似を含み、実測と一致するとは限りません。データベースの多くは、DFT で計算した値を集めたものです。記述子は、材料を数字で表した「名刺」です。機械学習は、過去のデータから傾向を学ぶ近似器です。これらは、本シリーズ「マテリアルインフォマティクス概論」編と「材料データと記述子」編で説明しています。

シリーズの中での位置

これは、本シリーズの3番目の記事です。前の編で、データを表に整える方法を扱いました。この編では、他の人が作ったデータ(公開データベース)を、どう使うかを扱います。次の編「小データ機械学習」は、集めたデータが少ないときの工夫を、さらに次の「不確かさと適用範囲」は、予測がどれくらい信頼できるかを扱います。

2. 材料データベースの地図 ― 主なものを一覧する

たとえ:材料探索を「広大な地図から宝のありかを探す」ことにたとえると、データベースは、先人が掘った場所の記録です。記録を使えば、同じ場所を掘り直さずに済みます。ただし、記録には「誰が、どんな道具で、いつ掘ったか」が書かれていないと、信用してよいか分かりません。この章では、主な材料データベースを、「何を提供するか」で整理します。

材料データベースの地図(本稿が確認できたもの) DFTで計算したデータを公開 計算データの共有・保管の基盤 文献・研究データを集める Materials Project 米国エネルギー省の取り組み AFLOW 高スループット計算の枠組みとデータ OQMD Northwestern 大学のグループ JARVIS NIST の基盤(DFT・力場・AI) NOMAD 計算結果をアップロードして共有 公開エントリ 約1,942万件 (2026年10月22日、API) エントリ=計算1件の記録 材料の種類の数ではない PoLyInfo (NIMS) 学術文献から高分子の物性を収集 MDR (NIMS) 研究データ・論文の登録と公開 ※ 有料のデータベース(ICSD など)は、中身を引用しないため、本稿では扱いません。 ※ 各データベースの規模・利用条件は、表(第2章)に、確認日つきで示します。
図2 概念図(ベクター作図)。本稿が確認できた材料データベースを、「何を提供するか」で3つに分けた整理です。優劣や網羅性を示すものではありません。

図2の3つの分類のうち、DFTで計算したデータを提供するものが、MIで最もよく使われます(本記事による解説)。次の表は、各データベースについて、公式サイトや論文で確認できた範囲を並べたものです。空欄にせず、確認できなかった項目は「確認できなかった」と書いています。

データベース何を提供するか計算・収集の条件(確認できた範囲)規模(確認日 2026年10月22日)利用条件(確認できた範囲)
Materials Project(MP)DFT で計算した無機結晶などの材料データ。米国エネルギー省(DOE)の取り組みで、特性を事前に計算して公開する[参考資料3・4]事実PAW 法、カットオフエネルギー 520 eV、k 点は逆格子の原子あたり1000点、GGA/GGA+U[参考資料9]。2022年10月版から r2SCAN(メタGGA)の計算も追加[参考資料10]事実総数は確認できなかった。版履歴は、GNoME 由来の r2SCAN データを、累計11.7万件まで追加したと記す(2026年4月版)[参考資料5]。最新版は v2026.09.28(2026年10月19日に公開)[参考資料5]データ製品ごとに条件が違う。GNoME 由来のデータは BY-NC(非商用)[参考資料5・6]。旧利用規約ページは CC BY 4.0 を記載[参考資料7]。現行の利用規約ページは、自動アクセスの確認画面が出て開けず、確認できなかった
AFLOW高スループット DFT の枠組み(AFLOW)と、計算結果のリポジトリ(AFLOWLIB)[参考資料11・12]事実。結晶構造の型のライブラリは、1,783 種のプロトタイプに拡張されている[参考資料14]事実確認できなかった(データベース間の差の要因として、擬ポテンシャルや +U の選び方が論文で指摘されている[参考資料26])確認できなかったREST API のページに、「リポジトリのデータは、科学・学術・非商用の目的に限り無料。それ以外の使用は禁止」と記載[参考資料13]事実。このページの記載の日付は確認できなかった
OQMDDFT で計算した化合物の全エネルギーと、安定性の評価[参考資料15・16]事実確認できなかった(論文は、ICSD の化合物と、よくある結晶構造への置き換えを計算対象にしたと記す)2015年の論文で、約30万件の DFT 全エネルギー計算[参考資料16]。現在の件数は、確認日にサイトが応答せず(サーバーエラー)、確認できなかった論文は、データベース全体を「制限なしに」ダウンロード公開すると記す[参考資料16]。現行のライセンス表記は、確認できなかった
JARVIS(NIST)DFT、力場、機械学習、量子計算、実験を扱う基盤。JARVIS-DFT、JARVIS-FF、JARVIS-Leaderboard など[参考資料20・21]事実JARVIS-DFT は OptB88vdW と TBmBJ の方法(スピン軌道相互作用の有無を含む)[参考資料21]事実2020年の論文:JARVIS-DFT に約4万材料・約100万の計算特性[参考資料20]。公式サイト:JARVIS-DFT は 80,000 以上の材料[参考資料21]ユーザー登録は無料で、データベースと Web アプリの利用には認証が必要[参考資料21]。ソフトウェア(JARVIS-tools)は NIST の利用条項[参考資料22]。データのライセンスは、確認できなかった
NOMAD計算材料科学のデータを、アップロードして共有・検索するプラットフォーム。コード非依存の正規化された形で保管[参考資料17・18]事実多様な計算コードの出力を、正規化して保管[参考資料17]事実公開エントリ 19,419,360 件(API が返した件数)[参考資料19]。「エントリ」は計算1件の記録で、材料の種類の数ではない確認できなかった(データごとの利用条件の記載を、本稿では確認していない)
PoLyInfo(NIMS)学術文献から集めた高分子の物性データ。物性は約100種類[参考資料23]事実文献から収集。測定条件、成形方法、原料モノマー、重合方法などを関連づけて収録[参考資料23]2026年9月30日の公開データ:ホモポリマー 16,064、ポリマーサンプル 112,771、コポリマー 5,638、物性ポイント 357,812、ポリマーブレンド 1,978、文献 15,365、コンポジット 2,153[参考資料23]利用にユーザー登録とサービス利用申請が必要。ウェブスクレイピングと大量取得は禁止。著作権は NIMS にあり、無断の転載・複製・第三者への配布は禁止。未公開データを含むデータセットの有償提供あり[参考資料23]事実
MDR(NIMS)NIMS の材料データのリポジトリ。論文や研究データを登録して公開する[参考資料25]事実データセットごとに異なる公式ページに件数の記載はなく、確認できなかった「データセットは、各ページに記載されたライセンスで利用できる」と記載[参考資料25]事実

表の整理は本記事による解説です。規模と利用条件は変わります。使うときは、必ず公式サイトで最新の記載を確認してください。NOMAD の件数は、公開 API に問い合わせた値です(確認日 2026年10月22日)。

つまずきやすいところ:「エントリ数」と「材料の数」は別です

NOMAD の1,942万件は、計算1件ごとの記録(エントリ)の数です。同じ材料を別の設定で計算した記録が何件もあれば、その数だけ数えられます。また、PoLyInfo の「ポリマーサンプル数」と「物性ポイント数」も、材料の種類の数ではありません。データベースの規模を比べるときは、何を1件と数えているかを確かめてください(本記事による解説)。

素材技術者の視点①:どのデータベースが「自分の材料」に近いか

無機結晶(電池材料、セラミックス、触媒の担体など)の計算値なら、DFT の計算データベース(MP、AFLOW、OQMD、JARVIS、NOMAD)が候補です。高分子の実測データなら、PoLyInfo のような、文献から集めたデータベースが候補です。ただし、高分子の鎖の長さの分布、添加剤、成形条件のように、実際の製品の性能を左右する条件は、データベースの項目に十分入っていないことがあります(本記事による解説)。データベースは、傾向をつかむ道具で、自社の材料・自社の条件の値の代わりにはなりません。

3. 利用条件(ライセンス)の読み方

データベースの値を使う前に、いちばん先に確認することは、利用条件です。条件に合わないデータは、どんなに良くても使えません。確認できた記載を、4つの型に整理します(事実)。

型どう書かれているか(確認できた記載)意味するところ(解説)
出典を示せば自由に使える型CC BY 4.0:「いかなる目的でも、商用でも、素材の複製と再配布、改変ができる」。ただし出典の表示(帰属)が必要[参考資料28]。Materials Project の旧利用規約は、これを記載[参考資料7]社内の研究開発にも使いやすい。出典(データベース名・版・引用論文)を残す必要がある
非商用に限る型CC BY-NC 4.0:「商用目的で素材を使ってはならない」[参考資料29]。Materials Project の GNoME 由来データは BY-NC[参考資料5]。AFLOW の REST ページは「科学・学術・非商用の目的に限り無料」[参考資料13]企業の製品開発に使えるかは、条件の文言と使い方による。判断は知財・法務の担当部署に確認する
登録制・取得方法を制限する型PoLyInfo:登録とサービス利用申請が必要。スクレイピングと大量取得は禁止[参考資料23]。JARVIS:登録は無料で、利用に認証が必要[参考資料21]プログラムで一括取得してよいか、個別に確認する。禁止されている方法で集めると、アカウント停止などの対象になりうる(PoLyInfo の注意書き)
データごとに条件が違う型MDR:「データセットは、各ページに記載されたライセンスで利用できる」[参考資料25]。Materials Project:データ製品ごとに利用条件が異なる[参考資料6]データベース全体ではなく、使うデータ1件ごとに条件を確認する

表の左2列は公式の記載の紹介で、右の列は本記事による解説です。法的な助言ではありません。

よくある誤解:「公開されているデータは、自由に使える」

誤りです。公開されていることと、自由に使えることは別です。上の表のとおり、非商用に限るもの、登録が要るもの、大量取得が禁止のもの、データごとに条件が違うものがあります。また、同じデータベースの中でも、データの出どころによって条件が違うことがあります(Materials Project の GNoME 由来データなど)。使うデータの条件を確かめて、出典・版・取得日を記録するのが基本です(第7章)。

4. データベースの値は、どれくらい信じてよいか

次に、値の質です。データベースの値の多くは、計算で作られています。計算値は、条件が違えば値が変わり、実測とも一致するとは限りません。3つの事実を見ます。

(1) 同じ材料でも、データベースが違うと値が違う

Hegde らは、AFLOW、Materials Project、OQMD の3つの DFT データベースを統合し、同じ初期の結晶構造から計算した材料について、2つずつ値を比べました。生成エネルギーと体積は、バンドギャップと磁化に比べて、再現しやすい傾向でした。それでも、金属か否かの判定が分かれる材料が最大7%、磁性の有無が分かれる材料が最大15%ありました。値の差は、生成エネルギーで最大0.105 eV/原子(差の中央値は6%)、体積で最大0.65 Å3/原子(4%)、バンドギャップで最大0.21 eV(9%)、磁化で最大0.15 μB/式単位(8%)です。これらは、DFT と実験の差と同程度でした事実[参考資料26]。差の原因として、擬ポテンシャル(内殻電子を簡略化する近似)、DFT+U(強く相関した電子への補正)、元素の基準状態の選び方が挙げられています[参考資料26]。

データベースの間で、同じ材料の値はどれくらい違うか(論文の数字を作図) 0 4 8 12 16 差の大きさ(%) 生成エネルギー:差の中央値 6% 最大0.105 eV/原子 体積:差の中央値 4% 最大0.65 ų/原子 バンドギャップ:差の中央値 9% 最大0.21 eV 磁化:差の中央値 8% 最大0.15 μB/式単位 金属か否かの判定が分かれる割合 7% 磁性の有無の判定が分かれる割合 15% 青:同じ初期の結晶構造で計算した材料について、2つのデータベースの値を比べたときの「相対的な差の中央値」(MRAD)。 赤:判定が分かれる割合の最大値。右の文字は、差の最大値の例(論文の記載)。 出典:Hegde ら(2023)。3つのデータベースを統合して比べた結果。差の原因として、擬ポテンシャル、+U、基準状態の選び方が挙げられている。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。同じ材料でも、データベースが違うと、計算値は一致しません。生成エネルギーと体積は比較的そろい、バンドギャップと磁化は差が大きめです。数字は論文の記載で、図は本稿の作図です。

(2) 計算値は、実測と同じではない

Materials Project の公式ドキュメントは、DFT で計算したバンドギャップについて、237個の化合物での社内の試験で、計算値が実験値より平均で1.6倍小さく見積もられ、この偏りを補正した後でも、平均絶対誤差(MAE)は0.6 eV と有意に残る、と記しています事実[参考資料8]。また、OQMD の論文は、DFT で計算した生成エネルギーと、実測値の差が、1,670個の化合物で平均0.096 eV/原子で、実験どうしの差も0.082 eV/原子あった、と報告しています事実[参考資料16]。

(3) 違う基準のデータを足すと、悪くなることがある

データが少ないときは、複数のデータベースを合わせて学習したくなります。しかし、Hutchinson らは、同じ名前の特性でも、データの出どころによって測り方・計算の仕方が違うことがあり、この「隠れた違い」が、避けられない誤差をもたらす、と指摘しています。この問題への対策の一つが、転移学習(ある出どころのデータで得た情報を、別の出どころのモデルに生かす方法)です事実[参考資料27]。

小さな数値実験で、仕組みを確かめます(本稿の計算)。真の関係は共通で、出どころAは基準が正しく、出どころBは基準が 0.10 高く出るとします(計算設定の違いを模した値)。Aは40点、Bは200点あります。Aの基準での予測誤差を測ります。

基準の違うデータを足すと、どうなるか(本稿の計算) 0.00 0.03 0.06 0.09 0.12 予測の誤差(RMSE):小さいほど良い Aだけ(40点) 0.061 AとBを、そのまま合わせる(240点) 0.097 AとBを合わせ、出どころの列を付ける 0.051 Bだけ(200点)で、Aを予測 0.112 Aの基準で評価。Bの値は、Aの基準より 0.10 だけ高く出る(計算の設定の違いを模した)。雑音は 0.03。100回の平均。 真の関係は同じ曲線(4次の多項式で当てはめ)。合成データで、実在の材料の結果ではない。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。データ数が6倍になっても、基準の違うデータをそのまま混ぜると、誤差は増えました。出どころを示す列を付けると、最も良くなりました。合成データでの数値実験です。

結果は、図4のとおりです。Aだけで学習すると、誤差は0.061です。データを6倍に増やすつもりで、AとBをそのまま合わせると、誤差は0.097と悪化しました。Bだけで学習してAを予測すると、さらに悪く0.112です。ところが、出どころを示す列(AかBか)を付けて合わせると、誤差は0.051と、最も良くなりました。

本稿の計算。合成データ(共通の曲線 + 雑音0.03、Bに +0.10 のずれ)。4次の多項式で当てはめ。100回の平均。実在のデータベースの値ではありません。

つまずきやすいところ:同じ名前の量でも、同じ条件で作られていない

「生成エネルギー」という名前が同じでも、どの汎関数(DFTの近似の種類)で、どの擬ポテンシャルで、どの補正をかけて計算したかが違えば、別の量として扱うべき場合があります。たとえば、Materials Project は、2022年10月版から r2SCAN の計算を加え、GGA、GGA+U、r2SCAN の結果を混ぜて使うための補正の仕組みを用意しています[参考資料10]。混ぜるときは、出どころの列を付けるのが、簡単で効果的な対策です(本記事による解説)。

素材技術者の視点②:計算値は「傾向のものさし」、実測で校正する

データベースの値は、材料どうしの順位や傾向を見るのには便利ですが、絶対値は、実測と差があります。そこで、自社の手元にある少数の実測値と、データベースの値を並べて、「どれくらいずれているか」を先に調べてください。ずれが一定の向きなら、補正できることがあります(たとえば、バンドギャップが一貫して小さく出るなど)。ずれがばらばらなら、その特性は、データベースの値だけでは頼りません(本記事による解説)。

5. FAIR原則 ― データを見つけやすく、再利用しやすくする

データを共有・再利用しやすくするための国際的な考え方が、FAIR原則です。FAIR は、Findable(見つけやすい)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(他のデータや道具とつなげられる)、Reusable(再利用できる)の頭文字です。2016年に、Wilkinson らが Scientific Data で最初に正式に発表しました。学術界、産業界、研究資金の提供機関、出版社が、データ資産の再利用を高めるための簡潔で測定可能な指針として、共同で支持したものです。人間の研究者だけでなく、機械が自動でデータを見つけて使えるようにすることにも重点を置いています事実[参考資料1]。

FAIR原則の15項目(要点を言い換えた整理) Findable:見つけやすい F1 世界で一意で 永続するID F2 豊富なメタデータ F3 メタデータに データのIDを書く F4 検索できる場所に登録 Accessible:アクセスできる A1 標準の通信手順で IDから取得 A1.1 手順は公開・無料 ・誰でも実装可 A1.2 必要なら認証・認可 A2 データが消えても メタデータは残る Interoperable:つなげられる I1 共有された形式的な 言語で表す I2 FAIRな語彙を使う I3 他のデータへの 参照を明記 Reusable:再利用できる R1 正確で関連の深い 属性で記述 R1.1 明確な利用ライセンス R1.2 詳しい来歴(出どころ) R1.3 分野の標準に従う F=見つけやすさ、A=アクセス、I=相互運用、R=再利用。原文は Wilkinson ら(2016)と GO FAIR の一覧。
図5 概念図(ベクター作図)。FAIR原則の15項目を、4つの柱に分けて言い換えた整理です。項目名の番号(F1など)は原文のもので、文言は本稿の言い換えです。

原則は全部で15項目です(図5)。項目の正式な文言は、原論文と GO FAIR のページに載っています[参考資料1・2]。たとえば、F1 は「(メタ)データに、世界で一意で永続するIDを付ける」で、論文の公開に使われる DOI がその代表です。NOMAD の論文は、アップロードされたデータには永続的な識別子が付き、利用者は、データを引用できるように DOI も要求できる、と述べています事実[参考資料17]。DOI のシステムは、国際規格 ISO 26324 として定められ、2025年3月に第3版が発行されています[参考資料32]事実。Materials Project のドキュメントも、AWS の公開データ(Open Data)に、データを置く目的を、「データをできるだけ利用しやすくする(FAIR原則)」ためと説明しています[参考資料37]事実。

よくある誤解:「FAIR=オープン(公開)」

FAIR原則は、データを公開せよ、という原則ではありません。A1.2 は、「必要な場合は、認証と認可の手続きを許す」ことを定めています[参考資料2]。つまり、社内限りのデータベースでも、ID、メタデータ、来歴、利用条件がそろっていれば、FAIR に近いといえます(図6の左上)。逆に、公開されていても、図の画像だけで、条件もライセンスもなければ、再利用しにくく、FAIR とはいえません(右下)。公開と FAIR は、別の軸です(本記事による解説)。

「FAIR」と「オープン(公開)」は別の軸(概念図) FAIR度が高く、公開は限定 社内の整ったデータベース ID・メタデータ・来歴・利用条件がそろう 社外には出さない(認証が必要) FAIR度が高く、公開 だれでも見つけ、条件を知り、再利用できる 論文のデータが、ID付きで登録されている形 FAIR度が低く、公開は限定 個人のノート、バラバラのファイル 本人にしか分からない FAIR度が低く、公開 公開はされているが、図の画像だけ 条件も利用ライセンスもなく、再利用しにくい 横軸:公開の度合い(左=限定、右=公開)/縦軸:FAIRの度合い(上=高い、下=低い)
図6 概念図(ベクター作図)。FAIR原則は、データを公開することを求める原則ではありません。アクセスに認証が必要な場合(A1.2)も想定しています。例は説明用で、特定のデータベースの評価ではありません。
つまずきやすいところ:FAIR原則は「規格」ではなく「原則」です

FAIR原則は、法的な拘束力のある規格ではなく、考え方の指針です。「FAIR に準拠」と書かれていても、15項目のどれを、どの程度満たしているかを確認する必要があります。なお、FAIR の評価の標準的な方法は、本稿では確認できませんでした。

6. 自社のデータを、FAIRに近づける

FAIR原則は、公開データベースを運営する人だけのものではありません。自社のデータを整えるときの考え方としても使えます。図7は、データが生まれてから再利用されるまでの流れと、素材技術者が各段階で整えることを示しています。

①試料、②生データ、③確認した記録、④再利用するデータをつなぎます。アクセス権とデータの由来も、値と一緒に管理します。
図7 概念画像(ImageGen生成)。①試料、②生データ、③確認した記録、④再利用するデータをつなぎます。アクセス権とデータの由来も、値と一緒に管理します。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。
元のSVG・数値・出典を確認する
データが生まれてから再利用されるまで ①実験・計算 試料と条件 を決める ②記録 条件・単位・ 装置・版を残す ③ID付与 試料ID・ ロットIDを付ける ④利用条件 社内限り/ 公開/期限 ⑤登録・保管 社内DB・ リポジトリ ⑥検索・取得 検索・API で取り出す ⑦再利用 ・引用 出典・版を 記録する 素材技術者が整えること: 再利用の結果(引用・訂正・追加)は、次の実験・計算にもどる ※ FAIR原則の F(見つけやすさ)は②③⑤に、A(アクセス)は⑤⑥に、R(再利用)は②④⑦に、特に関わる(本稿の整理)。 ※ ④で「公開」を選ぶかどうかは、社内の規則・契約・知的財産の判断に従う。

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。データの一生と、各段階で素材技術者が整えることの整理です。FAIR原則との対応は本稿の整理で、原則自体の定める手順ではありません。

段階やること(解説)関係するFAIRの項目(本稿の整理)
② 記録条件・単位・装置・ソフトの版・日付を、表の列に残す。失敗や測定下限未満も、理由つきで記録するR1(正確で関連の深い属性による記述)、R1.2(来歴)
③ ID付与試料ID・ロットIDを付け、1つのデータに1つのIDを対応させる。ファイル名に条件を詰め込まず、IDで管理するF1(一意で永続するID)、F3(メタデータにデータのIDを書く)
④ 利用条件社内限り、取引先に限る、公開、期限つき、などの範囲を決め、記録する。公開するかは、社内の規則・契約・知的財産の判断に従うR1.1(明確な利用条件)、A1.2(必要なら認証・認可)
⑤ 登録・保管社内のデータベースや共有のリポジトリに、決まった形式で保管する。検索できるようにしておくF2(豊富なメタデータ)、F4(検索できる場所に登録)、A2(データが消えてもメタデータは残る)
⑥ 検索・取得決まった方法(検索や API)で取り出せるようにする。取り出す人の権限を管理するA1、A1.1、A1.2
⑦ 再利用・引用使った人が、データの出どころと版を記録できるようにする。訂正や追加の履歴を残すI3(他のデータへの参照)、R1.2、R1.3

対応づけは、FAIR原則の15項目の文言[参考資料2]にもとづく本記事による整理で、原則自体が定める手順ではありません。

試料から元の測定にさかのぼれるようにします。FAIRは、見つけて再利用しやすくする考え方で、すべてを無制限公開する意味ではありません。
図8 概念画像(ImageGen生成)。試料から元の測定にさかのぼれるようにします。FAIRは、見つけて再利用しやすくする考え方で、すべてを無制限公開する意味ではありません。実在の製品・施設・測定結果ではありません。拡大模型、線・矢印・色は説明用です。
素材技術者の視点③:公開データは「止まる」「変わる」ことがある

公開データベースは、止まったり、版が変わったりします。確認日に、Crystallography Open Database(COD)のトップページは、サーバーの更新のため一時的に利用できないと表示していました[参考資料36]。OQMD のサイトも、確認日にサーバーエラーを返しました。Materials Project は、版の履歴に、データの訂正を公表しています(たとえば、混合スキームの熱力学データの不整合の修正[参考資料5])。

そこで、使ったデータの版と取得日を記録し、利用条件が許す範囲で、使ったデータを自分の手元にも保存しておくと、後で結果を再現できます。再現できない解析は、他の人に説明できません(本記事による解説)。

7. 公開データベースを使う前の6つの確認

図9は、公開データベースの値を、自社の検討に使う前に確認することを、6つにまとめたものです(本記事による解説)。

データベースの値を使う前の6つの確認 ① 目的に合うか 対象の材料・特性は含まれるか ② 何の値か 計算か実測か。方法・汎関数・版・日付 ③ 使ってよいか ライセンス・登録・大量取得の禁止 ④ 値の信頼度 実測との差、データベース間の差 ⑤ 自社データと比べる 手元の少数の実測と突き合わせる ⑥ 出どころを記録 名称・版・取得日・ID・条件 ※ 順番は目安。③は最初に確認するのも良い(使えないデータに時間をかけないため)。
図9 概念図(ベクター作図)。公開データベースの値を、自社の検討に使うときの確認事項(本稿の整理)。どのデータベースにも共通する、考え方の枠です。
  1. 目的に合うか:対象の材料と特性が、データベースに含まれているかを確かめます。含まれていない範囲は、予測できません
  2. 何の値か:計算か実測か。計算なら、方法(汎関数、補正)、版、計算日。MP のように、版が更新されるものは、版を確認します
  3. 使ってよいか:第3章のとおり、利用条件を確認します。非商用、登録制、大量取得の禁止などです
  4. 値の信頼度:実測との差(第4章)、データベース間の差を確認します。バンドギャップのように、系統的にずれる特性には注意します
  5. 自社データと比べる:手元の少数の実測と突き合わせ、ずれの大きさと向きを調べます
  6. 出どころを記録:データベース名、版、取得日、ID、引用論文を記録します(再現と引用のため)

8. 限界と、確認できなかったこと/まとめ

(1) 確認できなかったこと

  • Materials Project の現行利用規約:利用規約ページが、確認日に自動アクセスの確認画面を表示し、開けませんでした(確認画面を回避する操作はしていません)。そのため、現行の条件(商用利用の可否を含む)は確認できていません。旧利用規約ページの記載(CC BY 4.0)と、公式ドキュメントの記載(データ製品ごとに条件が異なる、GNoME 由来は BY-NC)を紹介するにとどめています
  • 各データベースの規模:Materials Project、AFLOW、OQMD の現在の件数は確認できていません。NOMAD の件数は「エントリ」の数で、材料の数ではありません
  • AFLOW の計算条件と最新のライセンス:確認できていません。REST ページの記載の日付も不明です
  • OQMD の現在の利用条件:確認日にサイトが応答せず(サーバーエラー)、確認できませんでした。論文の記述(制限なしで公開)の紹介にとどめています
  • NOMAD、JARVIS のデータのライセンス:確認できていません(JARVIS-tools はソフトウェアの条項のみ確認)
  • FAIR の評価の標準的な方法:確認できませんでした。各データベースが FAIR 原則を満たすかの判定は、本稿では行いません
  • 他のデータベース:Open Catalyst、OMat24、Materials Cloud などは、本稿では扱っていません。有料のデータベース(ICSD など)の中身は引用していません
  • 法的な解釈:ライセンスの意味は、公式の記載の紹介です。法的な助言ではありません
この記事のまとめ
  • 公開データベースは、MIの燃料です。ただし、計算の条件、利用条件、規模の数え方が、データベースごとに違います事実
  • 利用条件を最初に確認します。CC BY 4.0(商用を含め可、出典表示が必要)、BY-NC(非商用)、登録制・大量取得禁止、データごとの条件、の4つの型があります事実
  • 値は、そのまま実測値としては使えません。同じ材料でも、データベースの間で、生成エネルギーに最大0.105 eV/原子、バンドギャップに最大0.21 eV の差があり、バンドギャップの計算値は、ある試験で平均1.6倍小さく出ました事実
  • 基準の違うデータを混ぜると悪化します。合成データで、誤差が0.061から0.097に悪化し、出どころの列を付けると0.051に改善しました本稿の計算
  • FAIR原則は、見つけやすさ・アクセス・つなぎやすさ・再利用しやすさの15の原則です。公開を求める原則ではなく、自社データの整え方にも使えます事実

9. 評価・標準の読み方

データベースとデータ共有の良し悪しは、どんな「ものさし」で測るかで決まります。たとえば、データベースの値の誤差(実測との差、データベース間の差)、データの再利用のしやすさ(FAIR原則)、利用条件の明確さ(ライセンス)、データの品質管理(データ品質の国際規格)、機械学習モデルを共通の課題で比べるベンチマークです。それぞれ、測っていることと、測っていないことが違います。たとえば、FAIR原則は、データが使いやすい形で整っているかを扱いますが、値が正しいかは扱いません。確認できた範囲を、表にします(確認日 2026年10月22日)。材料データベースに特化した国際標準は、確認できませんでした。

評価項目代表的なベンチマーク・評価手法(名称・出典)標準・指針(ISO/IEC・NIST・国際的な原則など)読み方の注意
データの共有・再利用—(評価ではなく原則)FAIR原則(Wilkinson ら、2016):15の原則。見つけやすさ(F)、アクセス(A)、相互運用(I)、再利用(R)[参考資料1・2]事実推奨される原則で、法的な拘束力はない。公開を求めるものでもない。FAIR を評価する標準的な方法は確認できなかった
データベースの値の信頼度Hegde ら(2023):AFLOW・MP・OQMD の値を、同じ初期構造で比較[参考資料26]。OQMD:DFT−実測の平均絶対誤差 0.096 eV/原子[参考資料16]事実確認できなかった(材料データベースの値の質を定める国際標準は確認できず)データベース間の差は、DFT と実験の差と同程度になりうる。自社の実測と比べて確かめる
永続的な識別子—ISO 26324:2025(デジタルオブジェクト識別子 DOI のシステム。第3版、2025年3月)[参考資料32]事実DOI は F1(永続するID)の代表例。DOI が付いていることは、値が正しいことを保証しない。規格本文は未確認
利用条件(ライセンス)—Creative Commons の CC BY 4.0[参考資料28]、CC BY-NC 4.0[参考資料29](公開ライセンスの文書で、ISO/IEC の標準規格ではない)事実データごとに条件が違う。商用利用の可否は、条件の文言と使い方による。判断は知財・法務の担当部署に確認する
データの品質管理確認できなかった(材料データの品質を測る共通ベンチマークは確認していない)ISO/IEC 5259-1:2024(データ品質の概要・用語・例)[参考資料30]、ISO/IEC 5259-3:2024(データ品質マネジメントの要求事項と指針)[参考資料31](いずれも2024年7月)事実分析・機械学習一般のデータ品質の規格。材料分野の具体的な基準は定めていない。本文は未確認
モデルの性能比較(共通課題)Matbench(Dunn ら、2020)[参考資料33]、Matbench Discovery(Riebesell ら、2025)[参考資料35]、JARVIS-Leaderboard(Choudhary ら、2024)[参考資料34]事実確認できなかったこれらは、データベースのデータを使ってモデルを比べる課題。順位は、自社の材料での実力と別。分割とデータ漏れに注意(本シリーズ「機械学習とニューラルネットワークの基礎」編)

表の整理は本稿の計算(整理)。ISO/IEC・ISO の番号・題名・発行年月は ISO の公式ページで確認(確認日 2026年10月22日)。規格本文は有料のため、題名と発行年月の確認にとどめ、要求事項は書いていません。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • FAIR は「使いやすさ」で、「正しさ」ではありません:FAIR原則を満たすデータでも、値が正しいとは限りません。値の質は、第4章の確認で別に調べます
  • データベースの順位や規模は、自社の材料での実力と別です:規模が大きいことは、自分の材料が含まれていることを意味しません
  • 原則・ライセンスは、条件の文言を読みます:FAIR は推奨、ライセンスは法的な契約や権利に関わります。「オープン」と書かれていても、条件を確認してください
  • 計画と実際は別です:データベースの新機能や新しいデータの追加は、版の履歴で確認します

10. 用語集

材料データベース
材料の組成・構造・特性などを集めて、検索や取得ができるようにしたもの。
DFT(密度汎関数理論)
電子の振る舞いから材料の性質を計算する物理シミュレーション。近似を含む。
汎関数
DFT の近似の種類。種類が違うと、計算値が変わる。
擬ポテンシャル
内殻電子を簡略化して計算を軽くする近似。種類で値が変わる。
DFT+U
強く相関した電子(遷移金属の d 電子など)への補正を加えた DFT。
生成エネルギー
化合物が単体から生じるときのエネルギーの変化。安定性の目安。
バンドギャップ
電子が占めるエネルギー帯と空の帯の間の幅。DFT では小さく出る傾向がある。
エントリ
データベースの1件の記録。材料の種類の数とは限らない。
API
プログラムからデータを取り出すための窓口。
ライセンス
データを、どんな条件で使ってよいかを示す取り決め。
CC BY 4.0
出典を示せば、商用を含め、複製・改変できる公開ライセンス。
CC BY-NC 4.0
出典を示せば使えるが、商用目的の利用は認められない公開ライセンス。
メタデータ
データについてのデータ。条件、単位、出どころ、利用条件など。
永続的な識別子(DOI など)
データに付ける、変わらない固有のID。引用や検索に使う。
来歴(プロベナンス)
データが、いつ、誰に、どう作られ、どう変えられたかの記録。
FAIR原則
データを、見つけやすく、アクセスでき、つなげられ、再利用できるようにする15の原則。
オープンデータ
誰でも自由に使えるよう公開されたデータ。FAIR とは別の概念。
転移学習
ある出どころのデータで得た情報を、別の出どころのモデルに生かす方法。
ベンチマーク
手法を比べるための共通の課題とデータ、指標。
ロット
同じ条件・同じ時期に作られた原料や試料のまとまり。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Wilkinson M. D. ほか "The FAIR Guiding Principles for scientific data management and stewardship", Sci. Data 3, 160018 (2016), DOI 10.1038/sdata.2016.18(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/sdata.2016.18
  2. GO FAIR Foundation "FAIR Principles"(15の原則の一覧) — go-fair.org/fair-principles/
  3. Jain A. ほか "Commentary: The Materials Project: A materials genome approach to accelerating materials innovation", APL Mater. 1, 011002 (2013), DOI 10.1063/1.4812323 — doi.org/10.1063/1.4812323
  4. Materials Project "Materials Project Documentation"(導入ページ) — docs.materialsproject.org/
  5. Materials Project "Database Versions"(データベース版の履歴) — docs.materialsproject.org/changes/database-versions
  6. Materials Project "Access-controlled Data"(データ製品ごとの利用条件、GNoME) — docs.materialsproject.org/materials-project-data-lakehouse/access-controlled-data
  7. Materials Project "Terms of Use & Privacy Policy"(旧サイト legacy.materialsproject.org の利用規約ページ) — legacy.materialsproject.org/terms
  8. Materials Project "Electronic Structure"(バンドギャップの計算値と実験値の比較) — docs.materialsproject.org/methodology/materials-methodology/electronic-structure
  9. Materials Project "GGA/GGA+U Calculations: Parameters and Convergence" — docs.materialsproject.org/…/gga+u-calculations/parameters-and-convergence
  10. Materials Project "r2SCAN Calculations" — docs.materialsproject.org/…/calculation-details/r2scan-calculations
  11. Curtarolo S. ほか "AFLOW: An automatic framework for high-throughput materials discovery", Comput. Mater. Sci. 58, 218–226 (2012), DOI 10.1016/j.commatsci.2012.02.005 — doi.org/10.1016/j.commatsci.2012.02.005
  12. Curtarolo S. ほか "AFLOWLIB.ORG: A distributed materials properties repository from high-throughput ab initio calculations", Comput. Mater. Sci. 58, 227–235 (2012), DOI 10.1016/j.commatsci.2012.02.002 — doi.org/10.1016/j.commatsci.2012.02.002
  13. AFLOW REST API のページ(リポジトリの利用条件の記載) — aflowlib.duke.edu/AFLOWDATA/LIB2_WEB/Ge_hLi_sv/121
  14. Eckert H. ほか "The AFLOW library of crystallographic prototypes: Part 4", Comput. Mater. Sci. 240, 112988 (2024), arXiv:2401.06875 — arxiv.org/abs/2401.06875
  15. Saal J. E. ほか "Materials Design and Discovery with High-Throughput Density Functional Theory: The Open Quantum Materials Database (OQMD)", JOM 65, 1501–1509 (2013), DOI 10.1007/s11837-013-0755-4 — doi.org/10.1007/s11837-013-0755-4
  16. Kirklin S. ほか "The Open Quantum Materials Database (OQMD): assessing the accuracy of DFT formation energies", npj Comput. Mater. 1, 15010 (2015), DOI 10.1038/npjcompumats.2015.10(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/npjcompumats.2015.10
  17. Draxl C., Scheffler M. "The NOMAD laboratory: from data sharing to artificial intelligence", J. Phys. Mater. 2, 036001 (2019), DOI 10.1088/2515-7639/ab13bb — doi.org/10.1088/2515-7639/ab13bb
  18. NOMAD "NOMAD Documentation"(導入ページ) — nomad-lab.eu/prod/v1/docs/
  19. NOMAD API 文書(公開エントリ数の問い合わせに使用。確認日 2026年10月22日) — nomad-lab.eu/prod/v1/api/v1/extensions/docs
  20. Choudhary K. ほか "The joint automated repository for various integrated simulations (JARVIS) for data-driven materials design", npj Comput. Mater. 6, 173 (2020), DOI 10.1038/s41524-020-00440-1 — doi.org/10.1038/s41524-020-00440-1
  21. NIST "NIST-JARVIS"(公式サイト) — jarvis.nist.gov/
  22. NIST JARVIS-Tools の利用条項(GitHub、LICENSE.rst) — github.com/usnistgov/jarvis/blob/master/LICENSE.rst
  23. NIMS "高分子データベース(PoLyInfo)"(公式ページ。公開データ数は2026年9月30日) — polymer.nims.go.jp/
  24. Ishii M. ほか "NIMS polymer database PoLyInfo (I): an overarching view of half a million data points", Sci. Technol. Adv. Mater.: Methods 4, 2354649 (2024), DOI 10.1080/27660400.2024.2354649 — doi.org/10.1080/27660400.2024.2354649
  25. NIMS "MDR: NIMS Materials Data Repository"(公式ページ) — mdr.nims.go.jp/
  26. Hegde V. I. ほか "Quantifying uncertainty in high-throughput density functional theory: A comparison of AFLOW, Materials Project, and OQMD", Phys. Rev. Mater. 7, 053805 (2023), DOI 10.1103/PhysRevMaterials.7.053805(要旨は arXiv:2007.01988 で確認) — doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.7.053805
  27. Hutchinson M. L. ほか "Overcoming data scarcity with transfer learning", arXiv:1711.05099 — arxiv.org/abs/1711.05099
  28. Creative Commons "Attribution 4.0 International (CC BY 4.0)" — creativecommons.org/licenses/by/4.0/
  29. Creative Commons "Attribution-NonCommercial 4.0 International (CC BY-NC 4.0)" — creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/
  30. ISO/IEC "ISO/IEC 5259-1:2024 Artificial intelligence — Data quality for analytics and machine learning (ML) — Part 1: Overview, terminology, and examples"(ISO のページ) — iso.org/standard/81088.html
  31. ISO/IEC "ISO/IEC 5259-3:2024 Artificial intelligence — Data quality for analytics and machine learning (ML) — Part 3: Data quality management requirements and guidelines"(ISO のページ) — iso.org/standard/81092.html
  32. ISO "ISO 26324:2025 Information and documentation — Digital object identifier system"(ISO のページ) — iso.org/standard/88862.html
  33. Dunn A. ほか "Benchmarking materials property prediction methods: the Matbench test set and Automatminer reference algorithm", npj Comput. Mater. 6, 138 (2020), DOI 10.1038/s41524-020-00406-3(オープンアクセス) — doi.org/10.1038/s41524-020-00406-3
  34. Choudhary K. ほか "JARVIS-Leaderboard: a large scale benchmark of materials design methods", npj Comput. Mater. 10, 93 (2024), DOI 10.1038/s41524-024-01259-w — doi.org/10.1038/s41524-024-01259-w
  35. Riebesell J. ほか "A framework to evaluate machine learning crystal stability predictions", Nat. Mach. Intell. 7, 836–847 (2025), DOI 10.1038/s42256-025-01055-1 — doi.org/10.1038/s42256-025-01055-1
  36. Crystallography Open Database トップページ(確認日に保守の通知を表示) — crystallography.net/cod/
  37. Materials Project "AWS Open Data"(公開データの置き場の説明) — docs.materialsproject.org/downloading-data/aws-opendata

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
FAIR原則が2016年に Scientific Data で最初に正式に公表されたこと。学術界・産業界・資金提供機関・出版社が共同で支持した簡潔で測定可能な指針であること。人間だけでなく機械がデータを自動で見つけて使えることを重視していることWilkinson ら(2016)の要旨
出典1 https://doi.org/10.1038/sdata.2016.18
事実
FAIR原則の15項目(F1–F4、A1、A1.1、A1.2、A2、I1–I3、R1–R1.3)の文言。A1.2 が必要な場合の認証・認可を許すこと。R1.1 が明確なライセンスを求めることGO FAIR の一覧
出典2 https://www.go-fair.org/fair-principles/
事実
Materials Project が、特性を事前に計算して公開する米国エネルギー省の取り組みであること(公式ドキュメントの導入)、およびその論文MP のドキュメントと Jain ら(2013)
出典3 https://doi.org/10.1063/1.4812323
出典4 https://docs.materialsproject.org/
事実
2026年4月版で GNoME 由来の r2SCAN データを7.4万件追加し累計11.7万件としたこと。最新版 v2026.09.28 が2026年10月19日に公開されたこと。混合スキームの熱力学データの不整合を修正したことMP の版履歴
出典5 https://docs.materialsproject.org/changes/database-versions
事実
全データ製品が同じ条件ではないこと。GNoME 由来のデータは BY-NC(非商用)で、明示的な同意が必要なことMP のドキュメント
出典6 https://docs.materialsproject.org/materials-project-data-lakehouse/access-controlled-data
事実
旧利用規約ページが、ダウンロードによって CC BY 4.0 の条件に同意したことになると記載していること。現行規約は未確認MP 旧サイトの利用規約ページ
出典7 https://legacy.materialsproject.org/terms
事実
237個の化合物の社内試験で、バンドギャップの計算値が平均で1.6倍小さく、補正後も MAE 0.6 eV であることMP のドキュメント(図の説明)
出典8 https://docs.materialsproject.org/methodology/materials-methodology/electronic-structure
事実
MP の GGA/GGA+U の計算条件(PAW、520 eV、k点 1000/逆格子原子)。2022年10月版から r2SCAN を追加し、PBEsol で構造最適化してから r2SCAN で最適化することMP のドキュメント
出典9 https://docs.materialsproject.org/methodology/materials-methodology/calculation-details/gga+u-calculations/parameters-and-convergence
出典10 https://docs.materialsproject.org/methodology/materials-methodology/calculation-details/r2scan-calculations
事実
AFLOW の枠組みと AFLOWLIB.ORG(リポジトリ)の論文。プロトタイプのライブラリが1,783種に拡張されたこと。REST ページが、データは科学・学術・非商用に限り無料と記載していることCurtarolo ら(2012)2本、AFLOW のプロトタイプ論文、AFLOW REST ページ
出典11 https://doi.org/10.1016/j.commatsci.2012.02.005
出典12 https://doi.org/10.1016/j.commatsci.2012.02.002
出典13 https://aflowlib.duke.edu/AFLOWDATA/LIB2_WEB/Ge_hLi_sv/121
出典14 https://arxiv.org/abs/2401.06875
事実
OQMD が DFT の全エネルギー計算を集めたデータベースで、2015年の論文時点で約30万件。論文がデータベース全体を制限なしに公開すると記すこと。DFT−実測の平均絶対誤差 0.096 eV/原子(1,670化合物)、実験どうし 0.082 eV/原子Saal ら(2013)、Kirklin ら(2015)の要旨
出典15 https://doi.org/10.1007/s11837-013-0755-4
出典16 https://doi.org/10.1038/npjcompumats.2015.10
事実
NOMAD が計算材料科学のデータを共有・活用するプラットフォームで、コード非依存の正規化された形で保管すること。アップロードされたデータに永続的な識別子が付き、DOI も要求できること。公開エントリ19,419,360件Draxl と Scheffler(2019)の要旨、NOMAD のドキュメント、NOMAD の API(確認日 2026年10月22日)
出典17 https://doi.org/10.1088/2515-7639/ab13bb
出典18 https://nomad-lab.eu/prod/v1/docs/
出典19 https://nomad-lab.eu/prod/v1/api/v1/extensions/docs
事実
JARVIS の内容(2020年論文:JARVIS-DFT に約4万材料・約100万特性)。公式サイトの記載(JARVIS-DFT は80,000以上の材料、OptB88vdW と TBmBJ、登録は無料でデータベースと Web アプリの利用に認証が必要)。JARVIS-Tools が NIST の利用条項(ソフトウェア)であることChoudhary ら(2020)、JARVIS の公式サイト、GitHub の LICENSE
出典20 https://doi.org/10.1038/s41524-020-00440-1
出典21 https://jarvis.nist.gov/
出典22 https://github.com/usnistgov/jarvis/blob/master/LICENSE.rst
事実
PoLyInfo の内容、公開データ数(2026年9月30日)、登録・利用申請の必要、スクレイピングと大量取得の禁止、NIMS の著作権、有料のデータセット提供PoLyInfo の公式ページ、Ishii ら(2024)
出典23 https://polymer.nims.go.jp/
出典24 https://doi.org/10.1080/27660400.2024.2354649
事実
MDR が NIMS のデータのリポジトリで、データセットは各ページに記載されたライセンスで利用できることMDR の公式ページ
出典25 https://mdr.nims.go.jp/
事実
AFLOW・MP・OQMD の値の比較(生成エネルギー最大0.105 eV/原子〔差の中央値6%〕、体積最大0.65 ų/原子〔4%〕、バンドギャップ最大0.21 eV〔9%〕、磁化最大0.15 μB/式単位〔8%〕。金属か否かの判定の不一致は最大7%、磁性は最大15%。差の原因は擬ポテンシャル、+U、基準状態)Hegde ら(2023)の要旨
出典26 https://doi.org/10.1103/PhysRevMaterials.7.053805
事実
同じ名前の特性でも出どころによって測定・計算の仕方が違い、隠れた違いが避けられない誤差をもたらすこと。転移学習が対策になることHutchinson ら(要旨)
出典27 https://arxiv.org/abs/1711.05099
事実
CC BY 4.0 が商用を含む目的での複製・再配布・改変を認め帰属表示を求めること。CC BY-NC 4.0 が商用目的の利用を認めないことCreative Commons の説明ページ
出典28 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
出典29 https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/
事実
ISO/IEC 5259-1:2024、5259-3:2024(いずれも2024年7月)、ISO 26324:2025(2025年3月、第3版)の番号・題名・発行年月ISO のページ(確認日 2026年10月22日)
出典30 https://www.iso.org/standard/81088.html
出典31 https://www.iso.org/standard/81092.html
出典32 https://www.iso.org/standard/88862.html
事実
Matbench、JARVIS-Leaderboard、Matbench Discovery が、材料のモデルを共通の課題で比べる枠組みであること各論文の要旨
出典33 https://doi.org/10.1038/s41524-020-00406-3
出典34 https://doi.org/10.1038/s41524-024-01259-w
出典35 https://doi.org/10.1038/s42256-025-01055-1
事実
COD のトップページが、確認日にサーバー更新のため一時的に利用できない旨を表示していたことCOD のトップページ(確認日 2026年10月22日)
出典36 https://www.crystallography.net/cod/
事実
MP の公開データ(AWS Open Data)の目的を、データをできるだけ利用しやすくする(FAIR原則)ためと説明していることMP のドキュメント
出典37 https://docs.materialsproject.org/downloading-data/aws-opendata
事実
AとBを合わせたときの誤差(0.061、0.097、0.051、0.112)本稿の計算(Python・NumPy。合成データ、乱数の種を固定、100回の平均)。実在のデータベースの値ではない本稿の計算
MP の現行利用規約、MP・AFLOW・OQMD の現在の件数、AFLOW の計算条件と最新のライセンス、OQMD の現行の利用条件、NOMAD・JARVIS のデータのライセンス、FAIR の評価の標準的な方法本稿の調査範囲でアクセスできた一次情報では確認できなかったため記載していない(MP の規約ページは自動アクセスの確認画面で開けず、OQMD のサイトはサーバーエラー)解説
データベースの3分類、エントリ数と材料数の違い、「素材技術者の視点」の各記述、確認の6項目、自社データの整え方の対応づけ公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関が表明した見解ではない解説
図が実データの観察ではなく、説明のための作図であること。ヒーロー画像と図8がImageGen生成の概念画像であること本記事による注記解説

最終更新:2026年10月22日/出典は一次情報(各データベースの公式サイト・ドキュメント、査読論文、Creative Commons・ISO の公式ページ)に限定しています。ISO の規格の本文は有料のため確認できていません。 データベースの規模と利用条件は変わります。使うときは、公式サイトで最新の記載を確認してください。ライセンスの記載は紹介であり、法的な助言ではありません。 Materials Project の現行利用規約、AFLOW・OQMD の現在の件数や条件、NOMAD・JARVIS のデータのライセンス、FAIR の評価の標準的な方法については、確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、ヒーロー画像と図8はImageGen生成の概念画像です。