COMPANY PROFILE / マテリアルインフォマティクス
SES AI
― 電池メーカーが「材料探索のAI」を自社で作り、ソフトと材料として外にも売りはじめた
SES AIは、リチウムメタル電池の開発から出発した米国の会社で、いまは蓄電システム(ESS)・ドローン用セル・電解液などの電池材料と、 電池材料の探索に使うAIプラットフォーム「Molecular Universe」の4つを事業にしています。 マテリアルインフォマティクス(MI:データと計算を使って材料の候補を絞り込む手法)の視点で見るときの要点は、 「電池の製品の状況」と「AIの話」は別物だということです。 本稿は2つを分けて書き、AIが見つけたとされる電解液は会社の主張として、確認できる範囲と確認できない範囲を示します。
- 30秒でわかるSES AIと、マテリアルインフォマティクスでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- マテリアルインフォマティクスの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模
- マテリアルインフォマティクスにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はマテリアルインフォマティクスで何を目指しているか
- マテリアルインフォマティクス分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるSES AIと、マテリアルインフォマティクスでの立ち位置
ウォーバーン化学・材料・アルゴリズムの研究拠点を兼ねる
従:MIソフト・材料AIAIを自社開発と外販の両方に使う
40社超が評価中会社の主張。性能値は非公表(2025年12月期10-K)
2026年中に公開予定会社の予定であり、未確定
SES AIの記事を読むときは、電池の製品の状況とAIの関わりを分けて考える必要があります。 電池の側では、会社自身が「当初はEV向けに注力していたが、1年以上前にESSとドローン用途へ重点を移した」と書いており、 2026年4〜6月期の最大の売上源はESSです 事実。 一方でAIの側(Molecular Universe)は、電池の材料を探すためのソフトであり、同時に外部へ売る商品でもあります。 AIが関わる程度は事業ごとに違います。電解液は「AIで探した」と会社が説明する部分、ESSは「AIによる電池の健全性管理ソフトを組み込む」部分、 ドローン用セルは「AIを使った研究で改良している」と会社が書く部分、というように、直接の度合いが異なる点に注意してください。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は SES AI Corporation(デラウェア州法人。2022年2月の合併前は Ivanhoe Capital Acquisition Corp.)。 子会社に Molecular Universe Pte. Ltd.(シンガポール)があり、AIプラットフォーム名の「Molecular Universe」と同じ綴りです。 またHisunとの合弁会社は Molecular Universe Materials Pte. Ltd. で、これも別の法人です。 本稿は、会社全体を「SES AI」、AIプラットフォームを「Molecular Universe(略称 MU)」と呼び分けます。 ロゴは公式サイトのヘッダーに掲載されているものです。
公式サイト:https://www.ses.ai/3. マテリアルインフォマティクスの世界で、この会社はどこにいるか
マテリアルインフォマティクス(MI)は、過去のデータと計算から「有望そうな材料の候補」を絞り込み、実験で確かめる流れです (シリーズの技術解説「マテリアルインフォマティクス概論」を参照)。 MIに関わる会社は、この流れのどこを担うかで4つに分かれます。
SES AIは応用する側(電池)が主で、MIのソフトを売る側面を併せ持つ珍しい構成です。 自社が電池を作って売り、その開発に使うAIも商品にしています。MIの流れでいえば、 「データ(分子データベース・自社の実験データ)→予測・設計(シミュレーションと機械学習)→実験で確かめる(自動実験ラボとセル試験)」を 一社の中でひとまとまりに持とうとしているのが特徴です。
4. 会社の規模
会社全体の規模を簡潔に示します 事実。MIだけを切り出した数字は開示されていません。
| 指標(US$百万) | 2024年12月期 | 2025年12月期 |
|---|---|---|
| 売上(顧客からの収益) | 2.0 | 21.0 |
| うちサービス収益(顧客仕様の材料探索・開発の受託) | 2.0 | 13.6 |
| うち製品収益(ESS・ドローン用セル・電解液など) | 0.1 | 7.4 |
| 研究開発費 | 72.1 | 67.0 |
| 純損失 | 100.2 | 73.0 |
| その他の指標 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
| 従業員(常勤) | 約215名(約68%が研究開発関連、約35%が米国) | 2025年12月31日 |
| 現金・現金同等物+短期投資 | 29.5+170.1=199.6(本稿の合計) | 2025年12月31日 |
| 同上 | 64.1+98.9=163.0(本稿の合計) | 2026年6月30日 |
| 4〜6月期の売上・純損失 | 5.07・17.9 | 2026年4〜6月期 |
| 顧客の集中 | 上位3社が売上の48%・15%・12% | 2025年12月期 |
上の数字は会社全体のものです。Molecular Universeやその材料探索だけの売上・費用は開示されていません 未確定/将来。サービス収益(13.6百万)には「顧客仕様の材料の探索・設計・開発の受託」が含まれますが、 そのうちAIを使った分の内訳は書類にありません。また、2025年12月期の純損失は財務諸表では73.0百万ドルですが、 同じ10-Kの経営者の分析の節には74.9百万ドルという記載もあり、書類内で一致していません。本稿は財務諸表の73.0百万ドルを使います。
5. マテリアルインフォマティクスにかけているリソース
人・金・外部への出資・大学や公的機関との連携を、一次情報で確認できたか/できなかったかで示します。「記載なし」も成果です。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 常勤約215名のうち約68%が研究開発関連で、材料科学・化学・工学・機械学習・ソフトウェアの専門性を持つと説明。ウォーバーンの本社近くに、新規電解液分子の探索と合成経路の開発に集中する別の施設がある。中国・韓国の人員は主に製造ラインの作業者 | 事実 |
| 人(MI専任) | Molecular Universeに専任する人員数 | 非公表 |
| 金 | 研究開発費は2025年に67.0百万ドル。GPUの賃借費用とMolecular Universeの開発費で9.1百万ドル増えたと説明。計算資源は購入ではなく、GPUを借りて使う形 | 事実 |
| 金(MI専任) | Molecular Universeの投資額・計算設備の規模 | 非公表 |
| 合弁・買収・事業の組み替え | Hisunとの合弁(Molecular Universe Materials Pte. Ltd.)を2026年4月に設立。SESが90%・Hisunが10%で、資本は5.0百万ドルの予定(2026年6月30日までにSESが3.0百万ドルを出資済み)。SESが全面的に連結し、3年後以降に時価でHisun持分を買い取る選択権を持つ。10-Qは「一部の電池材料の自社製造から離れる」と説明。UZ Energy(ESS製造)は2025年9月に買収したが、MIとは別の事業 | 事実 |
| 民間の計算・ソフト | NVIDIAのALCHEMI(機械学習とDFT計算の高速化)・cuML・NeMo・DGX Cloud を利用(NVIDIAの技術ブログ。SES AIの研究者との共著) | 事実 |
| 大学・研究機関・公的資金との連携 | MIに関する大学・公的機関との共同研究は、10-K・10-Qに記載なし。政府補助金は韓国政府機関から2022年12月に受けたもので、施設関連費用に使うと説明されており、MI向けとは書かれていない | 確認できず |
主要なモデル・製品の状況
会社の公式資料で確認できた範囲の表です(日付は確認日 2026年10月22日時点で入手できた資料の日付)。
| 名称 | 種別 | 主な仕様(公表された範囲) | 公開の形・ライセンス | 段階 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| MU-0 | 初期ツール | 1.21億個の分子の物性を計算。そのうち約1,400万個をUMAPで地図化し、電解液の制約を満たす約14,000個を抽出(NVIDIAブログ、2025年5月8日) | 確認できなかった | 公開(2025年5月のブログに記載) | NVIDIAブログ |
| MU-3.0 | エージェント型のワークフロー | ナトリウム系・リチウム系の両方に対応し、自動実験ラボと連携。完全に社内ネットワーク内(オンプレミス)で動くと説明 | クラウド版/オンプレミス版の定額利用。モデル・データのライセンス条件は確認できなかった | 公開(2026年4〜6月期) | 株主レター・公式サイト |
| Search-in-a-Box | 材料の高速絞り込みモジュール | 世界最大級の電池メーカー1社へ最初の注文を納入(社名・価格は非公表) | 顧客の環境に納入 | 提供(2026年4〜6月期) | 株主レター・公式サイト |
| MU-4.0 | 次の版 | 望む特性から新しい分子を生成する機能を持たせ、自動実験ハードと統合する計画 | 確認できなかった | 未確定/将来(2026年中の予定) | 株主レター |
| 電解液6製品 | 材料 | 名称(SES-H2.32など)・セル化学・用途・改善項目は公式ページに掲載。数値は掲載なし(第10章の表) | 顧客へ供給する材料 | 評価中〜一部パイロット導入。量産供給は未確定/将来 | 10-K・株主レター・公式サイト |
NVIDIAブログの「1.21億個の分子」「約1,400万個の地図化」「約14,000個の候補」は、電解液の候補空間を計算で広く見渡したという話であり、 実験で確かめた材料の数ではありません 事実。 同じブログは、約14,000個を「候補」と呼んでおり、確認済みの新材料を報告していません。 電解液の候補が計算上で見つかっても、実際の電池では、電極との相性、サイクル寿命、高温での保存、低温での出力など、 セルに組んで測らないと分からない性質が決め手になります。公式ページの6製品の改善項目が 「室温サイクル寿命」「60℃保存」「低温レート」といったセル試験の言葉で書かれているのは、その事情を反映していると読めます 未確定/将来。自社の材料系で使うときは、この種の数値を自社セルで再現できるかを、まず確かめてください。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2012年 | 前身の SolidEnergy Systems Corp が設立される | 電池メーカーとしての出発点(10-K) |
| 2022年2月3日 | Ivanhoe Capital Acquisition Corp. とのビジネス・コンビネーションが完了し、SES AI Corporation として上場 | 資金調達の基盤 |
| 2022年9月 | シンガポールに Molecular Universe Pte. Ltd. が設立される | AI事業の法人(10-K) |
| 2025年5月8日 | NVIDIAの技術ブログ:分子データベースと初期ツール MU-0 を紹介 | MIの「データと計算」の規模が公になる |
| 2025年9月 | UZ Energy(ESSメーカー)の買収を完了 | 電池側の事業の重点がESSへ |
| 2025年10月29日(契約) | Hisunと合弁契約。同年11月に発表(10-K) | AIが見つけた材料の量産を外部に任せる体制 |
| 2026年3月4日 | 2025年12月期の決算:「新規電解液6種を発見、40社超が評価中」と記載 | 会社の主張の中心 |
| 2026年4月 | Hisun合弁の法人を設立(SESが初回3.0百万ドルを出資) | 出資の実行(10-Q) |
| 2026年4〜6月期 | MU-3.0を公開。最初のSearch-in-a-Boxを納入。一部の材料が試験を終え初期のパイロット導入へ | AIの外販と材料の初期導入(株主レター、2026年8月公表) |
7. 今後の計画
次はいずれも会社の計画・見通しです。達成した事実ではありません 未確定/将来。
成立させたい約6社が2段階目の試験に進んだ段階(会社の説明)
会社はさらに、「今後3〜5年で、Molecular Universeが特にエネルギー貯蔵の製品開発の大半を支え、その後は複雑な流体などへ広がる」という見通しを述べています 未確定/将来。これは会社の期待であり、実績ではありません。
Molecular Universe の契約済みの有償顧客数、サブスクリプションの売上、モデルの予測精度(データセット・分割・指標つき)、 電解液6製品の性能値と試験条件、第三者による独立した検証は、10-K・10-Q・株主レター・公式サイトのいずれにも記載がありません。 本稿では推計せず、報道ベースの数字も採用しません。
8. この会社はマテリアルインフォマティクスで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| AIを電池の開発手段から、売れる商品へ広げようとしている | 10-Kが、MUで「ESS・ドローン・材料という複数の事業機会」を見込むと書き、MU自体も定額利用として売っている。10-QもMUの商用化を重要な課題に挙げる | 推測 |
| 材料は自社で作らず、探索と設計に集中する方向 | 10-Qが「一部の電池材料の自社製造から離れ、Hisunとの合弁で量産する」と書く。10-KもHisun合弁での供給を述べる | 推測 |
| 顧客のデータを外に出さない形(オンプレミス)を差別化の軸にしている | 株主レターが「企業の顧客は専有データを社外に出さない。完全なオンプレミス統合が必要」と書く | 事実(会社の主張) |
| 流れ全体(データ→計算→自動実験→セル評価)を閉じたループにしたい | MU-4.0を「分子を生成し、合成し、全デバイスで確かめ、結果を学習に戻す」と説明している | 推測 |
10-Qは、事業環境の説明で「一部の電池材料の自社製造から離れる」と書き、その理由を「資本集約度を下げ、市場投入を早めるため」としています 事実。同時に、委託先への依存と品質管理のリスクも自ら挙げています。 ここから、「AIで候補を絞る部分を自社の強みとして残し、工場を持つ負担は外部と分ける」という方針が読み取れます 未確定/将来。ただしこれは本稿の解釈で、会社が戦略として明言したものではありません。
9. マテリアルインフォマティクス分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
SES AIの現在の4つの事業と、重点を移したEV向けを、電池の製品の状況とAIとの関係に分けて示します(2026年10月22日確認)。
| 事業 | 電池・材料の製品の状況 | AIとの関係(会社の説明) |
|---|---|---|
| ESS(蓄電システム) | UZ Energy(2025年9月買収)が製造。2026年4〜6月期の最大の売上源。米国向けでは認証パートナーの取得などを進める | 電池の健全性・安全管理ソフトを組み込む。自社が使うセルで学習した「エッジボックス」で管理すると説明 |
| ドローン用セル | 高エネルギー密度のLi-Metal・Li-ionセル。韓国の工場で米国国防権限法(NDAA)に適合したセルの生産能力を、年20万個から100万個へ拡大する計画(未確定/将来) | 「MUを使った研究で定期的に改良されている」と会社が説明。AIがセル性能にどれだけ効いたかの数値は確認できなかった |
| 材料(電解液) | 6製品。40社超が評価中で、一部は初期のパイロット導入。量産はHisun合弁で2026年後半の予定 | MUで見つけた材料と説明。これが最も直接的なAIの成果の主張 |
| Molecular Universe | 製品ではなくソフト・サービス。クラウド版・オンプレミス版の定額利用、サービス(受託)、材料の供給の3形態 | ここが「AI そのもの」の事業 |
| EV向けLi-Metal電池 | EVの試作ラインのうち2本をドローン・UAM用に転用。会社は重点をESSとドローンへ移したと説明 | EV向けの量産の状況は確認できなかった |
AIが見つけたとされる電解液6製品(会社の公表)
公式サイトの「Materials」ページが掲載する6製品です。改善項目は会社の表記で、数値・試験条件・比較対象の記載はありません 未確定/将来。 同ページは「量産に向けて準備できている」と書きますが、10-Kは「40社超の見込み顧客が評価中」と記しており、 2026年4〜6月期の株主レターでも「一部が試験を終え、初期のパイロット導入に入った」段階です。
| 製品名 | セル化学 | 用途(会社の表記) | 会社の挙げる改善項目 |
|---|---|---|---|
| SES-H2.32 | 低Si負極/NCM811 | EV | 室温サイクル寿命、60℃保存 |
| SES-S8.62 | 高Si負極/NCM811 | ドローン | 室温サイクル寿命、Cレート |
| SES-K3.1 | 黒鉛負極/LFP | 大型トラック | 低温サイクル寿命、Cレート |
| SES-I3/J1 | Si/黒鉛負極/LCOまたはNCM | 民生機器、EV | 室温・45℃のサイクル寿命 |
| SES-K3/4/11 | 黒鉛負極/LFP | ESSまたはEV | 室温サイクル寿命、60℃保存、−20℃のCレート |
| SES-G6-Gel | 黒鉛負極/LCO | 民生機器 | 室温サイクル寿命、45℃保存 |
Molecular Universeが外部に売るものは、大きく3つあります(公式ページ、事実)。 ①ソフトの利用(クラウド版またはオンプレミス版)、②サービス(顧客の目的に合わせた高速な材料絞り込みなど)、③材料の供給です。 電解液を開発する立場からは、②が分かりやすい使い方です。たとえば、溶媒・添加剤・塩(アニオン)の組み合わせという広い候補から、 試験する順番を決める部分にAIを使い、最後の評価は自社のセルで行う、という分担です。 ここで注意したいのは、会社の予測モデルの精度が公表されていないことです。 導入を検討するときは、自社の既知の電解液データ(良い例も悪い例も)を使って、予測が当たるかを小さく試す設計にすると、 会社の主張に頼らず判断できます。また、データを社外に出さない形(オンプレミス)が選べる点は、自社の配合データを守りたい場合に関わります。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| AI市場そのものがまだ新しい | 10-Kが「AIサービスの市場はまだ出現段階で、期待する成長に届かない可能性がある」と書く | 事実 |
| AIの出力が誤る可能性 | アルゴリズムの欠陥、データの不足・偏り、検証の不足を、10-Kがリスクとして挙げる | 事実 |
| 成果の外部検証が乏しい | 電解液6製品の性能値や試験条件が公表されておらず、第三者の検証も確認できない | 未確定/将来 |
| 顧客・収益の集中と赤字 | 2025年は上位3社で売上の約75%(48%・15%・12%の合計)。純損失が続いており、収益で費用を賄えない状態が数年続くと10-Kが書く | 事実 |
| 材料の量産を委託先に頼る | 10-Qが「生産の遅れ、品質管理の課題、委託先への依存」を挙げる | 事実 |
| 計算資源のコスト | GPUの賃借費用が研究開発費を押し上げており、AIモデルの学習には大きな計算能力が必要と10-Kが述べる | 事実 |
| 競合との差 | 10-Kは、MUのソフトの競合として C3.ai・Natrion・Intecells・Zeta Energy・Innoviz Technologies を、電池材料の競合として Enovix や Solid Power など多くの会社を挙げる。MUの優位性は会社の主張で、比較の数値は確認できなかった | 推測 |
12. 用語集
- マテリアルインフォマティクス(MI)
- データと計算を使って、有望な材料の候補を絞り込み、実験で確かめる手法。
- Molecular Universe(MU)
- SES AIが電池材料の探索用に作ったAIプラットフォーム。ソフトとして外にも売っている。
- AI4Science
- 科学の研究(ここでは材料探索)にAIを使うこと。会社が自社の事業を説明する言葉。
- 電解液
- 電池の中でイオンを運ぶ液体。溶媒・塩・添加剤の組み合わせで性質が決まる。
- Li-Metal(リチウムメタル)電池
- 負極にリチウム金属を使う電池。エネルギー密度を高くできるとされる。
- ESS
- Energy Storage System。電力をためて必要なときに使う蓄電システム。
- DFT
- 密度汎関数理論。物質の電子状態を計算する標準的な方法。精度は高いが計算に時間がかかる。
- MD(分子動力学)
- 原子や分子の動きを時間を追って計算する方法。
- エージェント型LLM
- 質問に答えるだけでなく、道具やデータベースを呼び出して作業を進める大規模言語モデル。
- オンプレミス
- クラウドではなく、顧客の社内のコンピュータ環境で動かす方式。データを外に出さずに済む。
- UMAP
- 多数の分子の特徴を2次元の地図に落として眺める手法。近い分子が近くに並ぶ。
- VIE(変動持分事業体)
- 議決権の持分だけでは支配が決まらない会社。SESはHisun合弁を、役員を選ぶ権利を持つため連結している。
- NDAA適合セル
- 米国の国防権限法の調達規則に合う電池セル。ドローン向けで求められる。
- Form 10-K/10-Q/8-K
- 米国SECに提出する年次報告書/四半期報告書/臨時報告書。
13. 出典
- SES AI Corporation Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年3月4日)。事業の概要・Molecular Universe・新規電解液6種・Hisunとの合弁・UZ Energy買収・従業員数・売上・研究開発費・純損失・リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1819142/000181914226000010/ses-20251231x10k.htm
- SES AI Corporation Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月11日)。Hisun合弁(Molecular Universe Materials Pte. Ltd.)の出資・会計処理、2026年4〜6月期・上半期の業績、事業環境の説明。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1819142/000181914226000045/ses-20260630x10q.htm
- SES AI Corporation Letter to Our Shareholders Q2 2026(Form 8-K の Exhibit 99.1、2026年8月)。MU-3.0・Search-in-a-Box・パイロット導入・MU-4.0の予定・2026年の売上見通し。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1819142/000181914226000044/ses-20260806xex99d1.htm
- SES AI Corporation 公式サイト「Molecular Universe」ページ。プラットフォームの構成要素(エージェント型LLM・電池データベース・自動実験ラボ連携・シミュレーションエンジン・性能予測)と提供形態。 https://www.ses.ai/mu
- SES AI Corporation 公式サイト「Materials」ページ。電解液6製品の名称・セル化学・用途・改善項目(会社の表記)。 https://www.ses.ai/materials
- NVIDIA Technical Blog “Spotlight: Accelerating the Discovery of New Battery Materials with SES AI's Molecular Universe”(2025年5月8日、SES AIの研究者らとの共著)。分子データベースの規模、NVIDIAのソフト・計算基盤の利用。 https://developer.nvidia.com/blog/spotlight-accelerating-the-discovery-of-new-battery-materials-with-ses-ais-molecular-universe
- 米国SEC EDGAR XBRL company facts API(CIK 0001819142)。売上・研究開発費・純損失の数値の照合。 https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001819142.json
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月22日/Troy Technical
本稿の数値はすべて米国証券取引委員会(SEC)への提出書類と、会社・NVIDIAの公式の発信に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。電解液の性能や「AIが発見した」とする記述は会社の主張であり、第三者による検証を確認できていません。
