EntroMatの高エントロピー材料|ハードクロム代替材の性能と導入手法

FineEngineering Magazine イギリス
概要
オーストラリアのEntroMat社が、環境規制で制限されるハードクロムに代わる「高エントロピー材料(HEMs)」を開発した。この材料は既存の溶射やレーザークラッディング設備にそのまま導入可能な粉末フィードストックとして提供され、ハードクロム比で最大10倍の耐摩耗性と最大70倍の耐食性を実現した。有害な六価クロムへの依存を排除しつつ、設備投資なしで高性能な表面処理への移行を可能にする。
詳細

主要成果

EntroMat社が開発した高エントロピー材料(HEMs)は、産業用コンポーネントの表面処理において、従来のハードクロムを代替する高い性能を示した。内部の比較試験において、特定の組成はハードクロムに対し、摺動摩耗耐性が最大約10倍、耐食性が最大約70倍に達することが確認されている。また、ドイツのFraunhofer ILTとの共同研究では、プロセス最適化後、700〜800 HVの硬度を持つ、緻密で結合力の強いコーティングの形成に成功した。

技術・詳細

本技術の核心は、単一の主元素に基づいた従来の合金とは異なり、複数の主要元素を組み合わせる「高エントロピー材料(HEMs)」の設計にある。計算材料工学とAI支援による合金開発プラットフォームを用いることで、硬度、靭性、耐摩耗性、耐食性といった特性を同時に最適化している。

導入面における最大の特徴は、既存の熱噴霧(サーマルスプレー)やレーザークラッディングのインフラでそのまま利用できる「ドロップイン」形式の金属粉末として提供される点である。これにより、ユーザーは設備を刷新することなく、材料のみを切り替えることで性能向上を図ることができる。主な対象アプリケーションは、油圧シリンダーロッド、大型ローラー、シャフト、ピン、ブッシングなど、摺動摩耗や化学物質、研磨剤にさらされる部品である。

背景・業界の文脈

産業界では数十年にわたり、耐摩耗・耐食保護のためにハードクロムが広く利用されてきた。しかし、その製造工程で使用される三酸化クロムなどの六価クロム(Cr(VI))は、労働者の健康や環境への深刻なリスクを伴う。特に欧州ではREACH規則に基づき、電気めっきや表面処理における六価クロムの使用制限が強化されており、業界は安全かつ実用的で、コスト競争力のある代替策を急いでいる。技術的に優れた代替材であっても、多額の設備投資や生産フローの変更を強いるものであれば、普及は困難であるという課題があった。

今後の展望

EntroMat社は、単なる粉末価格ではなく、適用コストとライフタイムコスト全体での競争力を追求している。コスト低減策として、技術的に適切な場合にはリサイクルされた特殊合金フィードストックを活用し、高価なバージン元素への依存を減らす戦略を採っている。現在は、メンテナンス・修理・オーバーホール(MRO)分野における小規模な産業試験に向けて準備を進めており、個別のアプリケーションに応じた検証を行う段階にある。

元記事: https://fineeng.eu/entromat-high-entropy-materials-hard-chrome-replacement/

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