主要成果
研究チームは、鏡像対称性を持つマジック角三層グラフェン(MATTG)において、ノード(ギャップがゼロになる点)を持つ二回回転対称性のネマティック超伝導ペアリング対称性を確認しました。特に、超伝導状態の深部において、面内磁場を印加した際のゼロバイアス・トンネルコンダクタンスに顕著な二回対称性の異方性が観測されました。この異方性の主軸は、超伝導ドーム内で最大90度回転することが判明しており、低エネルギー励起の対称性が磁場や密度によって制御可能な固有のものであることが示されました。
技術・詳細
本研究では、ファンデルワール(vdW)ヘテロ構造におけるバルク測定の限界を克服するため、輸送測定とトンネル分光法を同一デバイス内に統合した新しいプラットフォームを開発しました。これにより、超伝導の開始を独立して追跡しながら、状態密度(DOS)に基づいた回転対称性の直接的な特性評価が可能となりました。
観測された異方性は、温度の上昇や垂直磁場の増加に伴って超伝導とともに強く抑制される挙動を示しました。これらの結果は、MATTGにおける超伝導状態が、モアレ超格子の六回回転対称性を自発的に破るノード付き超伝導状態であることを示唆しています。
背景・業界の文脈
超伝導において、電子相互作用が非従来型のギャップを持つペアリング状態を安定化させる例は限られています。代表的な例として、ギャップにノードを持つ銅酸化物超伝導体や、異なるフェルミ面で符号が反転するノードレスギャップを持つ鉄系超伝導体が知られています。また、格子構造の回転対称性を自発的に破る「ネマティック超伝導」という概念がありますが、これは「すでにネマティックな常伝導状態にある中でペアリングが生じるケース」と、「超伝導状態自体が固有に回転対称性を破るケース」に分かれます。後者の固有ネマティック超伝導はマルチコンポーネント・ペアリングを必要とするため極めて稀であり、これまで銅ドープセレン化ビスマスなどが候補として議論されてきました。
今後の展望
ノードを持つ超伝導準粒子とネマティック性の相互作用は、理論的にユニークな量子臨界挙動やトポロジカル挙動に関連していることが示されています。今回のMATTGにおける固有のノード付きネマティック超伝導の実現は、こうしたエキゾチックな現象を実現するための新たな経路を開くものです。モアレグラフェンはゲート電圧やツイスト角による制御性が極めて高く、バルク材料で課題となる曖昧さを排除できるため、二次元材料における非従来型対称性破れ超伝導状態を探索する汎用的なプラットフォームになると期待されます。
元記事: https://arxiv.org/html/2610.20605v1
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