TECHNOLOGY EXPLAINER
核酸医薬
― 20塩基の「配列」の裏に、50万通りの分子がある
核酸医薬は、DNAやRNAの短い鎖(オリゴヌクレオチド)を化学合成してつくる薬です。 標的は塩基配列で決まり、体内での振る舞いは化学修飾で決まります。 そして骨格の酸素を硫黄に替えるだけで、20塩基の鎖は219通りの立体異性体の混合物になります。
- 核酸医薬とは何か(3行でつかむ)
- 4つの型 ― アンチセンス、siRNA、アプタマー
- 化学修飾 ― 骨格の硫黄と、糖の2′位
- 本稿の計算:ホスホロチオエートは何通りの分子を生むか
- 素材技術者の視点①:「単一化合物」ではなく「管理された混合物」
- GalNAc ― 糖3つで肝臓に届ける
- オフターゲット効果 ― 7塩基の偶然の一致
- 固相合成と精製 ― 1塩基ずつ、4段の反応を繰り返す
- 素材技術者の視点②:製品1 kgに、原材料4 t
- 承認例(規制当局の公表資料で確認できたもの)
- 用語集/参考資料/出典対応表
事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・目標であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料・プロセス設計上の読み取りは「解説」として区別しています。
本記事は化学・材料・製造技術の解説です。治療の効果や安全性を評価するものではなく、 医療上の助言でもありません。特定の薬や治療を勧めたり、薬どうしの優劣を論じたりするものでもありません。 承認の有無や製品の組成は、規制当局(FDA・PMDA・厚生労働省)の公表資料に記載があるものだけを引用しています。
1. 核酸医薬とは何か(3行でつかむ)
- 何でできているか:Robertsらは、オリゴヌクレオチドを「核酸のポリマー」とし、一本鎖のアンチセンスは約4〜10 kDa、二本鎖のsiRNAは約14 kDaの「大きく親水性のポリアニオン」で、そのため「細胞膜を容易には通過しない」と述べています事実。低分子薬(数百Da)と抗体(約150 kDa)の中間の大きさです
- 何が特徴か:KhvorovaとWattsは、核酸医薬の鍵となる利点を「送達と効力の性質が主としてオリゴヌクレオチドの化学構造から生じ、一方で標的は塩基配列によって規定される」ことだとしています事実。「どこに効くか」と「どこへ届くか」を別々に設計できるということです
- 何が難しいか:Robertsらは、「とくに肝臓以外の組織への効率的な送達を達成すること」が依然として大きな制約だとしています事実。核酸は膜を通りにくく、細胞外で分解され、腎臓から排出されるからです
核酸医薬は「配列」だけ見ていると半分しか分かりません。 配列が同じでも、骨格の酸素を硫黄に替えるか、糖の2′位に何を付けるか、末端に何を結ぶかで、 分解のされ方も、たどり着く臓器も、製造と品質管理の難しさも変わります。 Khvorova と Watts は、組織分布と代謝を決める分子の特徴を「ダイアノフォア(dianophore)」と名づけ、 核酸医薬ではそれが「糖・塩基・リン酸骨格の化学修飾、一本鎖か二重鎖かという構造、標的化リガンドの有無」によって大きく規定されると述べています事実。
2. 4つの型 ― アンチセンス、siRNA、アプタマー
承認されている核酸医薬は、働き方で大きく4つに分けられます。 最初の3つは塩基配列の相補性で標的のRNAをとらえ、4つめのアプタマーは立体構造でタンパク質に結合します。
| 型 | 論文の記述(Roberts ら 2020) |
|---|---|
| ギャップマー型 アンチセンス | DNAを主体とする内側の「ギャップ」と、2′-OMe や LNA で修飾したRNA様の両翼からなり、標的転写産物に高い親和性で結合する。生じたRNA‐DNA二重鎖がRNASEH1の基質となり、標的が分解される |
| 立体障害型 アンチセンス | mRNA前駆体のスプライシング信号を標的とし、標的とする信号の種類によってエクソンの読み飛ばし(スキッピング)または取り込みを促す |
| siRNA | 古典的には「19+2」構造、すなわち19塩基が相補的で3′末端に2塩基の突出をもつ21塩基のRNA 2本の二重鎖。ガイド鎖がRISCの一部であるAGO2を標的へ導き、完全に相補的な場合はガイド鎖の10〜11番目に向かい合う位置で標的が切断される |
| アプタマー | 一般に約20〜100塩基の一本鎖で、決まった二次構造に折りたたまれ、立体構造と適応的なフィットによって標的タンパク質と相互作用するリガンドとして働く。合理設計ではなく、SELEXという試験管内進化の手法で得られる |
すべて事実(Roberts ら 2020[参考資料1])。同論文は、アプタマーが主に細胞外の標的(受容体など)に用いられてきたため送達の問題が多少なりとも単純になるとも述べています事実。
3. 化学修飾 ― 骨格の硫黄と、糖の2′位
天然のままのDNAやRNAは、体内ですぐに分解されます。 KhvorovaとWattsは「すべてのアンチセンスは、生体内で十分な活性をもつために化学修飾を必要とする」と書いています事実。 修飾をかける場所は、大きく骨格(リン酸)・糖の2′位・末端の3つです。
(1) 骨格 ― ホスホロチオエート(PS)
Robertsらは「ヌクレオチド間リン酸基の非架橋酸素原子のひとつを硫黄で置き換えたホスホロチオエート(PS)結合の導入が、治療用オリゴヌクレオチドで広く用いられている」と述べています事実。
KhvorovaとWattsは「アンチセンス技術に最初に適用された化学修飾は、いまなお最も広く使われている。すなわちホスホロチオエート骨格である」とし、 「もともとはヌクレアーゼ安定性を与えるために導入されたが、ホスホロチオエート修飾の主要な影響は、オリゴヌクレオチドの体内動態と取り込みに現れてきた」と整理しています事実。
PS化には、はっきりした二面性があります。Robertsらの記述をまとめると次のようになります事実。
- 利点:「ヌクレアーゼ耐性を与えると同時に、血漿中および細胞内のタンパク質への結合を促す」という二重の効果がある。アルブミンなどとの結合は循環時間を延ばし、腎排泄を減らす
- 利点:細胞内タンパク質(ヌクレオリンなど)との相互作用も増え、核への蓄積を促すと考えられている。核はスプライシングを変えるアンチセンスの作用部位である
- 欠点:「標的への結合親和性を下げる」。これは別種の修飾を組み合わせて補う
- siRNAでは事情が違う:「すべての結合をPS修飾したsiRNAは、同等のホスホジエステル(PO)siRNAより活性が低い」ため、PSは末端だけに入れるのが通例
(2) 糖の2′位
Robertsらは、2′-O-メチル(2′-OMe)、2′-O-メトキシエチル(2′-MOE)、2′-フルオロ(2′-F)が最も一般的な2′置換基だとし、これらが 「未修飾RNAの求核的な2′水酸基を置き換えることでヌクレアーゼ耐性を高め、血漿中の安定性、組織中の半減期、ひいては薬効の持続を改善する」と述べています事実。
さらに「これらの修飾は、リボースの3′-エンド型パッカー(RNA様)の配座を促すことで、相補的RNAへの結合親和性も高める」としています事実。 ただし「これらの2′-リボース修飾はRNase H活性と両立しない」ため、立体障害型に使われるか、ギャップマーの両翼に置かれます事実。
親和性がどれだけ上がるかについて、KhvorovaとWattsは修飾1塩基あたりの二重鎖融解温度(Tm)の上昇幅を示しています事実。
| 修飾 | 1塩基あたりのΔTm | 論文の記述 |
|---|---|---|
| 2′-MOE | 0.9〜1.7℃ | 数十の2′-O-アルキル置換基を試したなかで「最も有用な類似体のひとつとして浮上した」。ヌクレアーゼ耐性をさらに高める。承認済みのミポメルセンや多くの臨床試験中の薬剤がこの修飾をもつ |
| 2′-F | 約2.5℃ | RNAの2′-フルオロ修飾でも親和性を高められる |
| LNA | 4〜8℃ | リボースの2′酸素と4′炭素を架橋したもの。RNAへの結合で「前例のない親和性の増大」を示す。メチル化類似体はcEt(constrained ethyl)と呼ばれる |
| tcDNA | 約2℃ | 三環性骨格にもとづく別の配座固定型。親和性はLNAより小さいが、スプライシングを変える用途で有望とされる |
すべて事実(Khvorova と Watts 2017[参考資料2])。LNAの原著としては Koshkin ら(1998)、および 2′-O,4′-C-メチレン架橋型(小比賀ら、1998)が同論文に引用されています事実。
Robertsらは、PMO(ホスホロジアミデート・モルフォリノオリゴヌクレオチド)を 「5員環のリボース複素環が置き換えられた、電荷的に中性の核酸化学」と説明しています事実。 糖と骨格の両方を作り替えてしまう設計です。
日本で承認されたビルトラルセン(ビルテプソ点滴静注250 mg)は、PMDA審査報告書で 「モルフォリノ骨格を有する合成オリゴヌクレオチド」、原薬は「21残基のヌクレオチドからなる合成オリゴヌクレオチドであり、白色の粉末」「原薬は非晶質である」と記載されています事実。
4. 本稿の計算:ホスホロチオエートは何通りの分子を生むか
ここが、材料の技術者にとっていちばん意外に感じるところかもしれません。 PS結合を1個つくると、そのリン原子は不斉中心になります。
Robertsらは「PS結合に硫黄原子がひとつ加わることで、修飾された各リン原子に不斉中心が生じ、Sp と Rp と呼ばれる2つの立体異性体の形がとりうる」とし、 「したがって、骨格が完全にPS化された20塩基のオリゴヌクレオチドは、実際には 219 通りの順列のラセミ混合物である(すなわち50万を超える異なる分子である)」と述べています事実。
さらに「各立体中心の物理化学的性質は、疎水性/イオン性、ヌクレアーゼ耐性、標的親和性、RNase H活性の点で異なる」としています事実。
論文の記述にしたがって数え直し、鎖長を変えた場合も計算します本稿の計算。
- 前提:n塩基の鎖にはヌクレオチド間結合が n−1 個ある
- 前提:各PS結合が Sp と Rp の2通りをとり、位置ごとに独立とする
計算
- 20塩基(全PS):219 = 524,288通り(論文の「50万を超える」と一致します)
- 18塩基(全PS):217 = 131,072通り
- 21塩基(全PS):220 = 1,048,576通り。塩基を1つ足すと、異性体の数は2倍になります
- 末端だけPS化した場合(siRNAで一般的な設計):PSが6か所なら 26 = 64通り
前提と限界:これは組合せの数え上げであり、実際に各異性体が等量できることを示すものではありません。 また、異性体の数が多いこと自体が品質や安全性の問題を意味するものでもありません。 この数は、次章で見る「単一の化合物として管理できない」という状況を桁で理解するためのものです。
オリゴヌクレオチドは1塩基ずつ伸ばします。 各段のカップリングが完璧でないと、短い鎖(欠落体)が残ります。 1段あたりの収率を変えて、20塩基まで伸びる割合を計算します本稿の計算。
- 前提:20塩基を得るにはカップリングを19回行う
- 前提:各段の収率は等しく、失敗した鎖はその後伸びない(実際には失敗末端はキャップされます)
計算
- 各段 98%:0.9819 = 約68%
- 各段 99%:0.9919 = 約83%
- 各段 99.5%:0.99519 = 約91%
- 40塩基で各段99%なら:0.9939 = 約68%。同じ収率でも、鎖を倍にすると粗製品の純度は20塩基の98%相当まで落ちます
Andrewsらは実際の製造について「80%を超える粗純度は珍しくない」と記しており事実、 上の「各段99%」に近い水準です(本記事による対照)。 前提と限界:この計算は等収率という単純化にもとづくもので、実際の不純物プロファイルを示すものではありません。
5. 素材技術者の視点①:「単一化合物」ではなく「管理された混合物」
前章の50万通りという数字は、品質管理の現場では「分離して定量できない」という意味になります。 厚生労働省の通知「核酸医薬品の品質の担保と評価において考慮すべき事項」は、この状況を正面から扱っています。
「多数の立体異性体の混合物となるホスホロチオアート修飾が施されたオリゴヌクレオチド(非架橋酸素原子が硫黄原子によって置換されている場合)やモルフォリノ核酸において、有効成分の立体異性体の分布を評価することが技術的に困難である場合には、リン原子の立体化学に影響を与える製造工程やパラメータを明らかにした上で、当該製造工程及びパラメータを的確に規定し、有効成分の立体異性体分布の恒常性を説明すべきである」事実
ここで起きている転換は、材料技術者にはおなじみのものです(本記事による解説)。 最終製品の分析で規格を保証できないなら、工程の条件で保証する—— 分子量分布をもつ高分子や、粒度分布をもつ粉体で、ずっと行われてきた考え方です。
同通知は不純物についても同じ姿勢をとっています。 「オリゴヌクレオチド類縁物質は、類似した物理的化学的性質を示し、すべてのオリゴヌクレオチド類縁物質を分離する分析方法を開発することはしばしば困難である」としたうえで、 適切な場合には「一群のオリゴヌクレオチド類縁物質を一つのオリゴヌクレオチド類縁物質群として管理することができる」と記しています事実。
さらに「オリゴヌクレオチドの特性等を踏まえると、オリゴヌクレオチド類縁物質について、ICH ガイドライン M7 を適用する意義は乏しいと考えられる」、 「ICH ガイドライン Q3A(R2)で示されている報告、構造決定及び安全性確認の閾値をオリゴヌクレオチド類縁物質に対して適用することは現実的ではない」とも述べています事実。 低分子薬のために作られた不純物管理の枠組みが、そのままでは効かないということです。
PMDAの審査報告書は、ビルトラルセンの原薬について 「原薬は、モルフォリン環上の炭素原子及び20個のリン原子上に不斉中心を有するジアステレオ混合物である」と記載しています事実。
そして類縁物質の扱いについて、申請者の説明としてこう記されています。 「オリゴヌクレオチド類縁物質は相互に類似した化学的性質を有しているため、個々に分離して分析することが困難である。そのため……ロット間の不純物プロファイルは一貫していることから、純度試験で用いる HPLC 分析において……検出される不純物群として管理することが適切と考える」事実。
原薬の規格には含量、性状、確認試験(UV/VIS、IR、MS)、pH、純度試験[溶状、類縁物質(HPLC)、残留溶媒(GC)]、水分、エンドトキシン、微生物限度、定量法(HPLC)が設定され、 重要工程として合成・精製の複数工程が指定されています事実(具体的な工程名やパラメータは審査報告書で非公開部分となっています)。
もうひとつ、同じ通知に調達側から読むべき一文があります。
「原薬に組み込まれるような出発物質に含まれる不純物はリスクが高いと考えられることから、出発物質の不純物プロファイルについては十分な検討が必要である。その上で出発物質の管理は、低分子量の化学合成医薬品と比較してオリゴヌクレオチドの製造において精製の機会が限られていること、及び最終製品においてオリゴヌクレオチド類縁物質の分離・検出に限界があることを踏まえた上で、不純物の管理戦略の中で適切に位置づけられる必要がある」事実
「精製の機会が限られている」という指摘が、この分野の本質を突いています(本記事による解説)。 低分子の合成では、中間体ごとに晶析や抽出で純度を上げ直せます。 ところがオリゴヌクレオチドは担体上で最後まで伸ばしきってから、一度だけクロマトグラフィーにかけるのが基本です。 つまり途中で品質を作り直せない。 だから原料(ホスホロアミダイトなど)の不純物が、そのまま製品の不純物プロファイルに反映されます。
材料を供給する側から見れば、これは「monomerの純度仕様が、最終製品の規格に直結する」という構図です。 高分子重合用モノマーや、半導体用の高純度薬液に近い立場だと言えます(本記事による解説)。
6. GalNAc ― 糖3つで肝臓に届ける
核酸医薬の送達で、いま最もはっきり成功しているのが肝臓です。 その主役がGalNAc(N-アセチルガラクトサミン)という糖の修飾です。
Robertsらは「GalNAcは、肝臓で高発現するアシアロ糖タンパク受容体1(ASGR1)に高い親和性(Kd = 2.5 nM)で結合する糖部分であり、エンドサイトーシスによってアンチセンスやsiRNAを肝細胞へ取り込ませることを促す」と説明しています事実。
受容体の性質も要点です。「ASGR1は肝臓で非常に高く発現しており、細胞膜へ速やかにリサイクルされるため、肝臓を標的とする効果的な送達にとって理想的な受容体となっている」事実。
外れ方も設計されています。「GalNAcとASGR1の相互作用はpH感受性であり、エンドソームの酸性化の過程で受容体とオリゴヌクレオチド複合体の解離が起こる。続いてGalNAc部分が酵素的に分解され、オリゴヌクレオチドが遊離する」事実。
同論文は、GalNAc結合が現在の主要な戦略になっている理由を 「高い肝サイレンシング能、ナノ粒子複合体に比べた小ささ、明確に定まった化学組成、低い合成コスト」と列挙しています事実。
効力の向上幅についても数値が示されています。 「GalNAc結合はマウスにおいてアンチセンスの効力を約7倍高め、それは肝臓に特異的であった。ヒトの患者では約30倍であった」事実。 また「GalNAc結合アンチセンスは生体内で肝細胞に優先的に送達され、一方で未結合のアンチセンスは主に肝臓の非実質細胞で検出される」とされています事実。
GalNAc結合の原著のひとつ、Nairらの2014年の論文(JACS)の要旨に、 材料・プロセス側から見て決定的な一文があります。
「GalNAcから誘導されたリガンドは、固相オリゴヌクレオチド合成および脱保護の条件と両立し、合成収率は標準的なオリゴヌクレオチドと同等である」事実
つまりこのリガンドは、既存の合成装置と工程をそのまま使えるという理由で実用に乗っています(本記事による解説)。 新しい官能基を導入するとき、既存ラインの保護基戦略と脱保護条件に収まるかどうかが採否を分ける—— これは、既存の重合プロセスに乗る単量体だけが実用化されていく構図とよく似ています。
同論文は、皮下投与で肝臓のRNAi活性が得られたこと、化学修飾の最適化で 「in vivo で親設計に対して5倍の効力向上を達成し、単回投与後の50%有効量(ED50)は 1 mg/kg であった」こと、 さらに「これにより、治療上意味のある用量で、かつ1 mL以下の投与容量での皮下投与が可能になった」ことを報告しています事実 (げっ歯類での前臨床データです。ヒトでの用量や効果を示すものではありません)。
「1 mL以下」という条件が明示されているところが重要です(本記事による解説)。 皮下注射で1回に入れられる容量には現実的な上限があります。 効力を上げることは、そのまま「注射できる製剤にできるかどうか」の問題でもある—— 製剤の側から見ると、効力向上は溶解度と容量の制約を解くための手段でもあります。
7. オフターゲット効果 ― 7塩基の偶然の一致
「配列で標的を決められる」ことは核酸医薬の強みですが、 短い一致でも作用してしまうという弱点と裏表です。 これは2003年に、遺伝子発現プロファイルの解析で示されました。
「RNA干渉は、siRNAとその同族mRNAとの間にほぼ同一の配列を要求すると考えられてきた」——ところが結果は違いました事実。
「転写産物のプロファイルは、標的に特異的なシグネチャーではなく、siRNAに特異的なシグネチャーを示し、siRNAとわずか11塩基の連続した一致をもつ非標的遺伝子の直接的なサイレンシングを含んでいた」事実
結論は「siRNAが、限られた配列類似性しかもたない標的と交差反応しうることを示している」というものでした事実。
その後、どの部分の一致が効いているかが絞り込まれました。 Janasらの2018年の論文(Nature Communications)は、 RNAi によるオフターゲット効果が「主としてアンチセンス鎖のシード領域(2〜8番目のヌクレオチド)が3′UTRの相補的部位に結合すること」によって駆動されると整理しています事実。
同論文は、GalNAc結合siRNAでラットに見られた肝毒性について、要旨でこう述べています。
「過剰な曝露量で観察されるげっ歯類での肝毒性は、化学修飾やRNAi経路の撹乱ではなく、主としてRNAiを介したオフターゲット効果に帰属できることを示す」事実
そして対策が化学修飾でした。 「これらのオフターゲット効果は、熱的に不安定化する化学修飾を用いてシード対合を調節することによって緩和でき、これはラットにおいてGalNAc-siRNAの安全性プロファイルを有意に改善する」事実。 具体的にはグリコール核酸(GNA)のヌクレオチドを、アンチセンス鎖の7番目に置く方法が示されています事実。
「7塩基の一致」や「11塩基の一致」がどれほどありふれたことなのか、確率で確かめます本稿の計算。
- 前提:4種類の塩基が等確率でランダムに並ぶ配列を考える(実際の配列はランダムではありません)
計算
- 7塩基が偶然一致する確率:1 ÷ 47 = 1 ÷ 16,384。約1万6千塩基ごとに1回現れる計算になります
- 10万塩基ぶんの配列を調べたら:100,000 ÷ 16,384 = 期待値で約6か所
- 11塩基が偶然一致する確率:1 ÷ 411 = 1 ÷ 約419万
- 19塩基すべてが偶然一致する確率:1 ÷ 419 = 1 ÷ 約2,750億。完全一致はまず偶然には起こりません
この対比が、オフターゲットという問題の性質を示しています(本記事による解説)。 「配列を全長で合わせる」設計は十分に特異的なのに、実際に作用してしまうのは短い部分一致である—— だから特異性は、全長の長さでは担保できません。
前提と限界:実際のゲノムや転写産物の塩基はランダムに並んでいないため、この計算は桁の感覚をつかむための概算です。 特定の配列について実際に何か所一致するかを示すものではなく、毒性を評価するものでもありません。
2020年3月30日付けの「核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドライン」は、オフターゲット毒性を2つに分けています事実。
- ハイブリダイゼーションに起因するオフターゲット毒性:「標的以外の類似した塩基配列にハイブリダイズすることによる毒性」
- ハイブリダイゼーションに起因しないオフターゲット毒性:「ハイブリダイズを介さずに核酸医薬品の構造及び物理的・化学的性質によって惹起される毒性」
そして評価の方法まで書き分けています。前者については 「ヒトと動物ではゲノム配列が異なることから、ヒトでの安全性を動物試験で追究するのではなく、ヒトのゲノムDNAやRNA情報を用いた in silico 解析、あるいはヒト細胞を用いた in vitro 遺伝子発現解析などを用いて評価することが推奨される」事実。 後者については「核酸医薬品の物性(化学修飾など)によって惹起されることから、化成品の非臨床安全性評価が参考になると考えられる」としています事実。
いま引いたガイドラインの一節は、開発の順番そのものを変えています(本記事による解説)。 配列に由来する毒性は、種が違えばゲノムが違うので、動物では確かめられません。 だから計算(in silico)とヒト細胞での試験が正規の評価手段として位置づけられている。
一方、化学修飾に由来する毒性は「化成品と同じように」評価するとされています事実。 つまり核酸医薬の安全性評価は、 「配列の話」と「材料の話」に分けて、別の方法で進む構造になっています。
材料技術者の関わりは、はっきり後者側です(本記事による解説)。 骨格修飾の種類、末端リガンド、塩の形、不純物—— 配列とは独立に、化学として評価される部分が担当領域になります。 同ガイドラインは、動物種も「化成品と同様にげっ歯類と非げっ歯類を用いるべきである」としています事実。
8. 固相合成と精製 ― 1塩基ずつ、4段の反応を繰り返す
核酸医薬の製造には、細胞培養も発酵も出てきません。 装置の中でひたすら化学反応を繰り返します。 Andrewsら(複数の製薬企業の化学プロセス担当者による共同報告)は、その姿をこう整理しています。
「一本鎖の治療用オリゴヌクレオチドの製造は、典型的には4つの主要な要素からなる。(1) 固相担体上でのオリゴヌクレオチド合成、(2) 担体からの切り出しと保護基の除去、(3) 分取クロマトグラフィーによる精製、(4) 凍結乾燥による単離である」事実
「オリゴヌクレオチドは、およそ40年にわたってオリゴヌクレオチド合成の主流であり続けてきた固相担体を用いるホスホロアミダイト法によって合成される」事実。 出発物質は「保護されたヌクレオシドから誘導されたホスホロアミダイトのモノマー」です事実。
担体については「歴史的には最初のヌクレオチドを予め担持させた多孔質ガラス(CPG)、より最近ではUnyLinker分子を結合させたポリスチレン」が使われるとされ、 「合成はコンピュータ制御で完全に自動化され、試薬がカラムに順次流される」と記されています事実。
| 工程 | 論文の記述(Andrews ら 2021) |
|---|---|
| ① 脱トリチル化 | 「5′水酸基上のジメトキシトリチル(DMT)保護基を、有機酸の溶液、典型的にはトルエン中のジクロロ酢酸(DCA)で除去する」 |
| ② カップリング | 「配列中の次のヌクレオシド・ホスホロアミダイトを酸性の活性化剤で活性化し、伸長中のオリゴヌクレオチドの5′水酸基とカップリングさせる」 |
| ③ 酸化/硫化 | 「ヨウ素または硫化剤を用いてリン原子に酸素または硫黄を付加し、リン酸ジエステル基またはホスホロチオエート基のいずれかを与える」。PS結合を入れるかどうかは、この段で決まります |
| ④ キャッピング | 「未反応の5′水酸基を無水酢酸でキャップし、カップリング失敗鎖のさらなる伸長を防ぎ、N−1不純物を最小化する」 |
| 合成の最後 | 「アミン溶液で洗浄して、リン酸ジエステル/ホスホロチオエート骨格からシアノエチル保護基を除去する」 |
| 切り出し・脱保護 | 「完全長生成物を固相担体から切り出し、塩基に不安定な保護基を、典型的にはアンモニア水を加熱することで除去する」。RNAを含む場合は2′-O-シリル保護基の除去にフッ化物処理が必要 |
| 精製 | 「逆相およびアニオン交換クロマトグラフィー」が最も一般的。「最後の5′-DMT保護基は、その疎水性をクロマトグラフィーの分離に活かせるため、しばしば付けたままにされる」 |
| 単離 | 凍結乾燥。「エネルギー集約的な操作(2 kWh/kg超)」であり、「主要な工程のボトルネックのひとつ」とされる |
すべて事実(Andrews ら 2021[参考資料3])。同論文は、この工程全体を「分子の大きさと複雑さ、および関与する化学変換の数(約80)を考えれば、優れた収率(約50%)と純度(約90%)で合成・精製・単離できる、目を見張る達成である」と評価しています事実。
同論文は、原料の原子効率についてこう述べています。 「出発物質の原子効率は低い(たとえば4種のデオキシリボヌクレオシド・ホスホロアミダイトで平均36%)。保護基が広範に使われるためであり、その結果、これらの原料の原子の大部分は原薬に取り込まれず、廃棄物として捨てられる」事実
とくにDMT基について「DMT基は、デオキシ体のホスホロアミダイトの質量のおよそ3分の1に相当する」と指摘し、 より分子量の小さい代替保護基の検討を挙げています。ただし「精製のハンドルとして使うため、最終サイクルではDMT保護されたホスホロアミダイトを使うことが依然として有利であろう」とも述べています事実。
9. 素材技術者の視点②:製品1 kgに、原材料4 t
Andrewsらの報告がとくに貴重なのは、5社が実際のプロセスの物質収支を持ち寄って公開している点です。 指標はPMI(Process Mass Intensity、工程質量強度)—— 「単離された原薬1キログラムを製造するために必要な原材料の量の尺度」です事実。
対象はアンチセンスとsiRNAを含む8プロセス(MOE、LNA、cEt などの修飾を含み、開発フェーズも異なる)です事実。
「PMIは 3,035〜7,023 の範囲で得られ、平均は 4,299 であった。これらの値は、低分子(中央値 168〜308)とバイオ医薬品(約8,300)の原薬について算出されたPMIの数値の間に位置する」事実
鎖長で割った値も示されています。「1ヌクレオチドあたりのPMIは 152〜251 の範囲で、平均は 199 である」事実。
| 内訳の切り口 | 論文の記述(Andrews ら 2021) |
|---|---|
| 材料の種類で見る | 有機材料と水がほぼ同量。洗浄溶媒が有機材料の半分を占める。水の比率はオリゴヌクレオチド工程で51%、低分子工程では28%——「水系の精製技術を用いることの結果であろう」 |
| 工程段階で見る | 合成段階と精製段階がPMIに最も大きく寄与する。合成段階が材料のおよそ半分 |
| 合成の段で見る | 脱トリチル化の段が最大の寄与で、合成段階で使う材料のほぼ半分を占める |
| 洗浄溶媒 | 有機材料の半分を占め、総PMIの25%に寄与する |
| 開発段階との関係 | 低分子で通常見られるような時間とともにPMIが下がる傾向は見られない。「オリゴヌクレオチドの製造がプラットフォーム的なアプローチであり、以前のプロジェクトの現時点でのベストプラクティス条件が新規化合物に適用されるため、開発の過程でPMIを下げる機会が少ない」ためと考察されている |
すべて事実(Andrews ら 2021[参考資料3])。ホスホロアミダイト自体の合成に使う材料、およびGalNAc中間体などリガンドの合成材料は、この集計に含まれていません事実。
PMIの平均値と、承認済み製品の含量から換算します本稿の計算。
- 前提:PMIを4,299(Andrewsらの8品目平均)とする事実
- 前提:ギブラーリ(ギボシラン)は1バイアル1 mL中に189 mgを含む事実
- 前提:レクビオ(インクリシラン)は1シリンジ1.5 mL中に284 mgを含む事実
計算
- 原薬1 kgあたり:4,299 kg = 約4.3トンの原材料
- 189 mg(1バイアル相当):0.189 g × 4,299 = 約813 g。指先に乗る量の原薬に、800 g超の原材料が対応します
- 284 mg(1シリンジ相当):0.284 g × 4,299 = 約1.2 kg
- 水の量:PMIの51%が水なら、原薬1 kgあたり 約2.2トンが水になります
- 洗浄溶媒の量:総PMIの25%なら、原薬1 kgあたり 約1.1トン
前提と限界:PMIの平均値を個別製品に当てはめた概算で、これらの製品の実際のPMIではありません。 Andrewsらのデータは開発中の8品目についてのもので、製品名は公表されていません。 ホスホロアミダイトやリガンドの合成分も含まれていません。
この内訳がいちばん面白いところです(本記事による解説)。 合成そのものは速い。Andrewsらは「サイクル中の反応はすべて速い」と書いています事実。 ところが物質の消費で見ると、 洗浄溶媒が有機材料の半分・総PMIの25%を占め、 脱トリチル化の段だけで合成段階の材料のほぼ半分を使います事実。
固相合成は「反応工程」ではなく「洗浄工程」だと考えたほうが実態に合います(本記事による解説)。 各段のあとに必ず洗浄が入り、それが19回繰り返されるからです。 同論文が挙げる改善案も、そこに集中しています事実。
- 洗浄の削減:カップリング後や硫化後のように重要度の低い洗浄を最小化する
- 窒素圧で試薬を押し出す:カラムから試薬を除くのに溶媒を使わない
- 洗浄液の再利用:洗浄の終わり側のきれいな溶媒を、次の同じ洗浄の入口側で使う
- カラムの空隙をなくす:合成の進行に合わせてカラム高さを変える動的軸圧縮カラムを使い、ヘッドスペースを消して脱トリチル化の洗浄量を減らす
- キャッピング段の省略:「硫化反応の副生成物がカップリング失敗鎖のキャッピング剤として働きうることが最近示され、キャッピング段の除去と、合成段階のPMIの14%削減が可能になった」
これはプロセス設計の典型的な気づきです(本記事による解説)。 収率や反応速度を見ているだけでは、材料効率の半分は改善できません。 「副生成物を試薬として使い、工程をひとつ消す」という最後の例は、 材料プロセスの改善としてそのまま応用が効く考え方だと言えます。
溶媒選定についても、同論文はCHEM21溶媒ガイドに照らして ジクロロメタン(DCM)は脱トリチル化の溶媒として使われてきたが、大規模製造ではおおむねトルエンに置き換えられていること、 ピリジンとトリエチルアミンは酸化・硫化・キャッピング・骨格脱保護で塩基として働くが、職業曝露限界値が低く「有害」に分類されることを挙げ、代替の検討を促しています事実。
10. 承認例(規制当局の公表資料で確認できたもの)
以下は、FDAのDrugs@FDAに初回承認(ORIG-1)の日付があり、かつ添付文書または査読総説で化学構成を確認できたものだけを並べたものです。 効能・効果や臨床成績、用法・用量は扱いません。化学としての構成と承認年月日だけを記載します。
| 製品名(一般名) | 型・化学 | 初回承認(FDA) | 備考 |
|---|---|---|---|
| VITRAVENE (フォミビルセン) | 21塩基の全PS DNA(第一世代アンチセンス)/硝子体内注射 | 1998年8月26日 (NDA 020961) | Robertsらは「最初に承認された核酸医薬」とし、「臨床的な必要性の低下により使用されなくなった」と記載 |
| MACUGEN (ペガプタニブ ナトリウム) | 27塩基の2′-F/2′-OMe修飾・PEG化アプタマー/硝子体内注射 | 2004年 (NDA 021756) | Robertsらは「最初に承認されたアプタマー」と記載。Drugs@FDAは現在販売中止(Discontinued)と記載 |
| EXONDYS 51 (エテプリルセン) | 30塩基のPMO(立体障害型アンチセンス) | 2016年9月19日 (NDA 206488) | 型はRobertsらの表による |
| SPINRAZA (ヌシネルセン) | 添付文書に「2′水酸基が2′-O-2-メトキシエチル基に置き換えられ、リン酸結合がホスホロチオエート結合に置き換えられた修飾アンチセンス」と記載。分子量 7,501.0/髄腔内投与 | 2016年12月23日 (NDA 209531) | 2〜8℃で保存し凍結させないこと、遮光することが記載されている |
| ONPATTRO (パチシラン) | siRNAの脂質ナノ粒子製剤/点滴静注 | 2018年8月10日 (NDA 210922) | Robertsらは「最初に承認されたRNAi医薬」と記載。LNPは本シリーズ「脂質ナノ粒子」「mRNA」編で扱います |
| GIVLAARI (ギボシラン) | 三分岐GalNAcリガンドを共有結合したsiRNA(2′-F/2′-OMe)/皮下注射。分子量 17,245.56(ナトリウム塩)、遊離酸で16,300.34 | 2019年11月20日 (NDA 212194) | 1バイアル1 mLに189 mg。2〜25℃で保存と記載 |
| VILTEPSO (ビルトラルセン) | 21サブユニットのPMO。五員環リボフラノシル環が六員環モルフォリノ環に置き換わり、電荷をもたないホスホロジアミデートで連結。分子量 6,924.82/点滴静注 | 2020年8月12日 (NDA 212154、迅速承認) | 日本では2020年(令和2年)3月25日に承認(承認番号 30200AMX00428000)。条件付き早期承認制度の適用対象 |
| LEQVIO (インクリシラン) | 三分岐GalNAc結合siRNA。「1か所を除き2′リボース部分は2′-Fまたは2′-OMe」で、末端の6か所のホスホジエステル骨格がホスホロチオエート。分子量 17,284.72/皮下注射 | 2021年12月22日 (NDA 214012) | 1シリンジ1.5 mLに284 mg。20〜25℃の室温保存と記載 |
| AMVUTTRA (ブトリシラン) | 三分岐GalNAc結合siRNA/皮下注射。分子量 17,290(ナトリウム塩)、遊離酸で16,345 | 2022年6月13日 (NDA 215515) | 0.5 mLに25 mg |
| IZERVAY (アバシンカプタド ペゴル) | RNAアプタマーに約43 kDaの分岐PEGを共有結合したもの。分子量 約56 kDa/硝子体内投与 | 2023年8月4日 (NDA 217225) | 0.1 mLに2 mg(オリゴヌクレオチド換算)。2〜8℃で保存、凍結・振とう不可と記載 |
承認日はFDA Drugs@FDA[参考資料8]、化学構成と保存条件は各製品の添付文書[参考資料7]、EXONDYS 51・ONPATTRO・VITRAVENE・MACUGENの型と位置づけは Roberts ら(2020)[参考資料1]によります事実。ビルトラルセンの日本での承認は厚生労働省の事務連絡[参考資料12]とPMDA審査報告書[参考資料11]によります事実。MACUGENについては、Drugs@FDAがORIG-1の作用日を2004年9月17日と記載する一方、同申請の承認通知書PDFには2004年12月17日付けの電子署名があり、Robertsらの表は「2004年12月」としています。日付が一致しないため、本表では「2004年」とだけ記載しています。
- 投与経路は「局所」か「肝臓」に偏っています。眼(硝子体内)、髄腔内、そして皮下・静脈から肝臓へ——Robertsらが「肝臓以外の組織への送達が依然として大きな目標である」とする状況が、承認品の並びにそのまま現れています事実
- siRNAの承認品は、分子量がそろっています。ギボシラン 17,245.56、インクリシラン 17,284.72、ブトリシラン 17,290——いずれも三分岐GalNAc結合siRNAで、質量がほぼ同じです事実。同じ骨格に別の配列を載せていることが数値からうかがえます(本記事による解説)
- アンチセンスは化学の系統が分かれています。2′-MOE・全PS型(ヌシネルセン)と、電荷をもたないPMO型(エテプリルセン、ビルトラルセン)事実
- 保存条件が製品でまったく違います。2〜8℃で凍結不可のもの、2〜25℃のもの、20〜25℃の室温のもの事実。核酸医薬に一律の低温輸送が必要とは言えません(本記事による解説)
- アプタマーは2例です。ペガプタニブとアバシンカプタド ペゴルで、いずれもPEG化され、いずれも眼への局所投与です事実
- 核酸医薬は、標的を配列で決め、届き方を化学修飾で決めます。Khvorovaらはこの分離を核酸医薬の鍵となる利点としています事実
- 全PS化した20塩基の鎖は、524,288通りの立体異性体の混合物になります本稿の計算。厚生労働省の通知は、分布の評価が困難な場合に工程パラメータで恒常性を説明すべきとしています事実
- GalNAcは糖3つで肝細胞に届けます。Kd=2.5 nMで結合し、エンドソームの酸性化で外れる設計です事実
- オフターゲットは短い部分一致で起こります。7塩基の一致は約1万6千塩基ごとに現れる計算です本稿の計算
- 製造は1塩基あたり4段の反応の繰り返しです。20塩基なら19サイクル・76回の反応、時間にして約14時間本稿の計算
- 材料効率の律速は洗浄です。原薬1 kgに約4.3トンの原材料本稿の計算、うち洗浄溶媒が総PMIの25%を占めます事実
11. 用語集
- オリゴヌクレオチド
- 短い核酸の鎖。治療用は20塩基前後のものが多い。
- アンチセンス(ASO)
- 標的RNAに相補的な一本鎖の核酸。分解型と立体障害型がある。
- ギャップマー
- 中央がDNA、両翼が修飾RNA型のアンチセンス。RNase Hを使う。
- RNase H
- RNA‐DNA二重鎖のRNA側を切る酵素。ギャップマーの働き手。
- siRNA
- 21塩基×2本の二重鎖。AGO2を含むRISCに載って標的mRNAを切る。
- RISC/AGO2
- RNA誘導サイレンシング複合体と、その中心の切断酵素。
- ガイド鎖/パッセンジャー鎖
- siRNAの2本。標的に相補的な側がガイド鎖。
- シード領域
- ガイド鎖の2〜8番目。ここの部分一致がオフターゲットを生む。
- アプタマー
- 立体構造でタンパク質に結合する一本鎖核酸。SELEXで得る。
- SELEX
- 試験管内で選択と増幅を繰り返し、目的のアプタマーを選び出す方法。
- ホスホロチオエート(PS)
- リン酸の非架橋酸素1個を硫黄に置き換えた骨格修飾。
- 2′-MOE
- 糖の2′位に2-メトキシエチル基を入れた修飾。耐性と親和性が上がる。
- LNA/cEt
- 糖の2′と4′を架橋して配座を固定した核酸。親和性が大きく上がる。
- PMO
- モルフォリノ核酸。六員環と電荷をもたない骨格からなる。
- GalNAc
- N-アセチルガラクトサミン。肝細胞のASGR1に結合する糖。
- ASGR1
- アシアロ糖タンパク受容体1。肝臓で高発現し速やかにリサイクルされる。
- ホスホロアミダイト法
- 固相担体上で1塩基ずつ鎖を伸ばす、40年来の合成法。
- DMT基
- 5′水酸基の保護基。各サイクルの最初に酸で外す。精製の目印にも使う。
- キャッピング
- 未反応の5′水酸基を塞ぎ、失敗鎖がそれ以上伸びないようにする操作。
- N−1不純物
- 目的より1塩基短い副生成物。カップリング失敗から生じる。
- PMI
- 工程質量強度。原薬1 kgを得るのに必要な原材料の質量。
- オフターゲット
- 意図しない標的への作用。配列由来のものと化学由来のものがある。
12. 参考資料(一次情報)
- Roberts, T.C., Langer, R., Wood, M.J.A.「Advances in oligonucleotide drug delivery」Nature Reviews Drug Discovery 19(10), 673–694 (2020). doi:10.1038/s41573-020-0075-7 — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Khvorova, A., Watts, J.K.「The chemical evolution of oligonucleotide therapies of clinical utility」Nature Biotechnology 35(3), 238–248 (2017). doi:10.1038/nbt.3765 — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Andrews, B.I. ほか(ACS GCI Pharmaceutical Roundtable オリゴヌクレオチド分科会)「Sustainability Challenges and Opportunities in Oligonucleotide Manufacturing」The Journal of Organic Chemistry 86(1), 49–61 (2021). doi:10.1021/acs.joc.0c02291 — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Nair, J.K. ほか「Multivalent N-acetylgalactosamine-conjugated siRNA localizes in hepatocytes and elicits robust RNAi-mediated gene silencing」Journal of the American Chemical Society 136(49), 16958–16961 (2014). doi:10.1021/ja505986a — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Jackson, A.L. ほか「Expression profiling reveals off-target gene regulation by RNAi」Nature Biotechnology 21(6), 635–637 (2003). doi:10.1038/nbt831 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Janas, M.M. ほか「Selection of GalNAc-conjugated siRNAs with limited off-target-driven rat hepatotoxicity」Nature Communications 9, 723 (2018). doi:10.1038/s41467-018-02989-4 — pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- DailyMed(U.S. National Library of Medicine)「FDA承認添付文書(GIVLAARI/LEQVIO/SPINRAZA/IZERVAY/AMVUTTRA/VILTEPSO)」 — dailymed.nlm.nih.gov
- FDA「Drugs@FDA: FDA-Approved Drugs」(各NDAの初回承認日・販売状況) — accessdata.fda.gov
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課「核酸医薬品の品質の担保と評価において考慮すべき事項について」薬生薬審発0927第3号、平成30年9月27日(PDF) — pmda.go.jp
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課「核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドラインについて」薬生薬審発0330第1号、令和2年3月30日(PDF) — pmda.go.jp
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ビルテプソ点滴静注250 mg 審議結果報告書・審査報告書」令和2年(2020年)(PDF) — pmda.go.jp
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課「新医薬品として承認された医薬品について」令和2年3月25日 事務連絡 — mhlw.go.jp
13. 主張と出典の対応表(監査)
| 本文の主張 | 根拠 | 区分 |
|---|---|---|
| オリゴヌクレオチドが核酸のポリマーであり、一本鎖アンチセンスが約4〜10 kDa、二本鎖siRNAが約14 kDaの大きく親水性のポリアニオンで細胞膜を容易に通過しないこと。肝臓以外の組織への効率的な送達が依然として大きな制約であること。ギャップマー型・立体障害型・siRNA・アプタマーの各機序(RNASEH1による分解、スプライシング信号への作用、19+2構造とAGO2・RISC、ガイド鎖10〜11番目に対応する位置での切断、アプタマーが約20〜100塩基でSELEXにより得られること、アプタマーが主に細胞外標的に用いられること)。ホスホロチオエート(PS)が非架橋酸素1個を硫黄で置換したものであり、ヌクレアーゼ耐性とタンパク質結合を与え、アルブミン結合により循環時間が延び腎クリアランスが減ること、ヌクレオリンなどとの相互作用が核への蓄積を促すと考えられること、標的親和性を下げること、全結合PS化siRNAが同等のPO siRNAより活性が低く末端のみの修飾が通例であること。2′-OMe・2′-MOE・2′-Fが最も一般的な2′置換基で、求核的な2′水酸基を置き換えて耐性・血漿安定性・組織半減期・薬効持続を改善し、3′-エンド型パッカーを促して親和性を高めるが、RNase H活性と両立しないこと。PMOが電荷的に中性で五員環リボースが置き換えられた化学であること。全PS化20塩基が2の19乗通りのラセミ混合物(50万を超える異なる分子)であり、各立体中心の物理化学的性質が疎水性・イオン性・ヌクレアーゼ耐性・標的親和性・RNase H活性の点で異なること。GalNAcがASGR1にKd=2.5 nMで結合すること、ASGR1が肝臓で高発現し膜へ速やかにリサイクルされること、相互作用がpH感受性でエンドソーム酸性化により解離し、GalNAcが酵素的に分解されてオリゴヌクレオチドが遊離すること、三分岐GalNAcが典型であること、GalNAc結合がマウスで約7倍・ヒト患者で約30倍の効力向上を与えたこと、未結合アンチセンスが主に非実質細胞で検出されること、GalNAcが選ばれる理由(高い肝サイレンシング能、小ささ、明確な化学組成、低い合成コスト) | Roberts ら(2020)[参考資料 1]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7419031/ | 事実 |
| 核酸医薬の鍵となる利点が、送達と効力が主に化学構造から生じ標的は塩基配列で規定されることであること。組織分布と代謝を決める特徴を「ダイアノフォア」と呼び、それが糖・塩基・リン酸骨格の化学修飾、一本鎖か二重鎖か、標的化リガンドの有無で大きく規定されること。すべてのアンチセンスが生体内で活性をもつために化学修飾を必要とすること。最初に適用された修飾がホスホロチオエート骨格であり、当初はヌクレアーゼ安定性のためだったが主要な影響は体内動態と取り込みに現れたこと。1塩基あたりのΔTmが2′-MOEで0.9〜1.7℃、2′-Fで約2.5℃、LNAで4〜8℃、tcDNAで約2℃であること、2′-MOEが数十の候補のなかで最も有用な類似体のひとつとして浮上しミポメルセンなどが採用していること、LNAが2′酸素と4′炭素を架橋したものでメチル化類似体がcEtと呼ばれること | Khvorova と Watts(2017)[参考資料 2]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5517098/ | 事実 |
| 一本鎖治療用オリゴヌクレオチドの製造が4つの主要要素(固相合成、切り出しと脱保護、分取クロマトグラフィーによる精製、凍結乾燥による単離)からなること。固相担体を用いるホスホロアミダイト法が約40年の主流であること、出発物質が保護ヌクレオシド由来のホスホロアミダイトであること、担体がCPGからUnyLinker付きポリスチレンへ移ってきたこと、合成が完全自動化され試薬が順次流されること。3′→5′方向の4段サイクル(脱トリチル化:トルエン中ジクロロ酢酸、カップリング:酸性活性化剤、酸化/硫化:ヨウ素または硫化剤、キャッピング:無水酢酸によりN−1不純物を最小化)と各段後の洗浄、1サイクル約45分、20塩基が24時間以内に完了すること、最後にアミン溶液でシアノエチル保護基を除くこと。アンモニア水加熱による切り出しと脱保護、RNA含有の場合のフッ化物処理、80%を超える粗純度が珍しくないこと。逆相およびアニオン交換クロマトグラフィーが一般的で5′-DMTを分離に活かすこと。凍結乾燥が2 kWh/kg超のエネルギー集約的操作でボトルネックのひとつであること。全体として約80の化学変換、収率約50%、純度約90%であること。デオキシリボヌクレオシド・ホスホロアミダイト4種の原子効率が平均36%であること、DMT基がデオキシ体の質量の約3分の1に相当すること、最終サイクルではDMT保護体が有利であること。PMIの定義と8品目の値(3,035〜7,023、平均4,299、1ヌクレオチドあたり152〜251・平均199)、低分子の中央値168〜308およびバイオ医薬品の約8,300との対比、水51%(低分子は28%)、洗浄溶媒が有機材料の半分・総PMIの25%、合成段階が材料の約半分、脱トリチル化が合成段階の材料のほぼ半分、開発段階とともにPMIが下がる傾向が見られずプラットフォーム的アプローチによると考察されていること、ホスホロアミダイトとリガンドの合成材料が集計外であること。改善案(洗浄の削減、窒素圧による試薬の押し出し、洗浄液の再利用、動的軸圧縮カラム、硫化副生成物によるキャッピング段の省略とPMI 14%削減)。DCMがトルエンに置き換えられてきたこと、ピリジンとトリエチルアミンが職業曝露限界値の低さから有害に分類されること | Andrews ら(2021)[参考資料 3]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8154579/ | 事実 |
| GalNAc由来リガンドが固相オリゴヌクレオチド合成および脱保護の条件と両立し合成収率が標準的なオリゴヌクレオチドと同等であること。皮下投与で肝臓のRNAiによる遺伝子サイレンシングが得られたこと。化学修飾の最適化により in vivo で親設計に対し5倍の効力向上と単回投与後のED50 1 mg/kgを達成したこと、それにより1 mL以下の投与容量での皮下投与が可能になったこと(いずれもげっ歯類を含む前臨床の報告) | Nair ら(2014)要旨[参考資料 4]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25434769/ | 事実 |
| RNA干渉がほぼ同一の配列を要求すると考えられてきたこと、転写産物プロファイルが標的特異的ではなくsiRNA特異的なシグネチャーを示し、わずか11塩基の連続一致をもつ非標的遺伝子の直接的サイレンシングを含んでいたこと、siRNAが限られた配列類似性しかもたない標的と交差反応しうること | Jackson ら(2003)要旨[参考資料 5]https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12754523/ | 事実 |
| RNAiを介したオフターゲット効果が主にアンチセンス鎖のシード領域(2〜8番目)と3′UTRの相補的部位との結合により駆動されること。GalNAc-siRNAで過剰曝露時に観察されたげっ歯類の肝毒性が、化学修飾やRNAi経路の撹乱ではなく主にRNAiを介したオフターゲット効果に帰属できること。熱的に不安定化する化学修飾でシード対合を調節することによりオフターゲット効果が緩和され、ラットでの安全性プロファイルが有意に改善すること。グリコール核酸(GNA)ヌクレオチドをアンチセンス鎖7番目に配置した例 | Janas ら(2018)[参考資料 6]https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5818625/ | 事実 |
| 第10章の表に記載した各製品の化学構成・分子量・含量・保存条件(ヌシネルセンの2′-O-2-メトキシエチル基とホスホロチオエート結合、分子量7,501.0、2〜8℃・凍結不可・遮光。ギボシランの三分岐GalNAc結合siRNAと2′-F/2′-OMe、分子量17,245.56/遊離酸16,300.34、1 mLに189 mg、2〜25℃保存。インクリシランの「1か所を除き2′-Fまたは2′-OMe」および末端6か所のホスホロチオエート、分子量17,284.72、1.5 mLに284 mg、20〜25℃保存。ブトリシランの分子量17,290/遊離酸16,345、0.5 mLに25 mg。アバシンカプタド ペゴルが約43 kDaの分岐PEGを結合したRNAアプタマーで分子量約56 kDa、0.1 mLに2 mg、2〜8℃保存・凍結振とう不可。ビルトラルセンが21サブユニットのPMOで六員環モルフォリノ環と電荷をもたないホスホロジアミデート連結をもち分子量6,924.82、1バイアル5 mLに250 mg、迅速承認に基づく承認である旨の記載) | DailyMed 掲載のFDA承認添付文書[参考資料 7]https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/ | 事実 |
| 第10章の表に記載したFDA初回承認日(VITRAVENE 1998年8月26日/NDA 020961、MACUGEN NDA 021756、EXONDYS 51 2016年9月19日/NDA 206488、SPINRAZA 2016年12月23日/NDA 209531、ONPATTRO 2018年8月10日/NDA 210922、GIVLAARI 2019年11月20日/NDA 212194、VILTEPSO 2020年8月12日/NDA 212154、LEQVIO 2021年12月22日/NDA 214012、AMVUTTRA 2022年6月13日/NDA 215515、IZERVAY 2023年8月4日/NDA 217225)。MACUGENが販売中止として記載されていること。MACUGENのORIG-1の作用日が2004年9月17日と記載されている一方、承認通知書PDFの電子署名が2004年12月17日付けであるため本記事が日を確定しなかったこと | FDA Drugs@FDA の各NDA概要および承認通知書[参考資料 8]https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm | 事実 |
| 立体異性体の分布の評価が技術的に困難な場合に、リン原子の立体化学に影響する製造工程とパラメータを規定し立体異性体分布の恒常性を説明すべきであること。オリゴヌクレオチド類縁物質をすべて分離する分析法の開発がしばしば困難で、適切な場合には類縁物質群として管理できること。ICH M7を適用する意義が乏しいとされること、ICH Q3A(R2)の閾値をそのまま適用することが現実的でないとされること。出発物質に含まれる不純物のリスクが高く、精製の機会が限られていることおよび分離・検出に限界があることを踏まえて管理戦略に位置づける必要があること | 厚生労働省「核酸医薬品の品質の担保と評価において考慮すべき事項について」[参考資料 9]https://www.pmda.go.jp/files/000228569.pdf | 事実 |
| オフターゲット毒性が「ハイブリダイゼーションに起因するもの」と「起因しないもの」に区分されること。前者についてヒトと動物でゲノム配列が異なるため in silico 解析やヒト細胞を用いた in vitro 遺伝子発現解析による評価が推奨されること。後者について化成品の非臨床安全性評価が参考になるとされること。動物種としてげっ歯類と非げっ歯類を用いるべきとされること | 厚生労働省「核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドライン」[参考資料 10]https://www.pmda.go.jp/files/000234603.pdf | 事実 |
| ビルトラルセンがモルフォリノ骨格を有する合成オリゴヌクレオチドであること、原薬が21残基のヌクレオチドからなる白色の粉末で非晶質であること、モルフォリン環上の炭素原子と20個のリン原子上に不斉中心を有するジアステレオ混合物であること。オリゴヌクレオチド類縁物質を個々に分離して分析することが困難であり不純物群として管理することが適切と申請者が説明したこと、ロット間の不純物プロファイルが一貫していたこと。原薬の規格項目、製剤が1バイアル5 mL中に250 mgを含む水性注射剤であり添加剤が塩化ナトリウム・塩酸・水酸化ナトリウム・注射用水であること。条件付き早期承認制度の適用対象、希少疾病用医薬品および先駆け審査指定医薬品であること、審議結果報告書が令和2年3月6日、審査報告書が令和2年2月19日付けであること | PMDA ビルテプソ点滴静注250 mg 審議結果報告書・審査報告書[参考資料 11]https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20200408002/530263000_30200AMX00428_A100_1.pdf | 事実 |
| 日本において「ビルテプソ点滴静注250mg」(日本新薬株式会社、承認番号 30200AMX00428000)が令和2年3月25日付けで新医薬品として承認されたこと | 厚生労働省 事務連絡(令和2年3月25日)別表[参考資料 12]https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4855&dataType=1&pageNo=1 | 事実 |
| 全PS化20塩基で524,288通り、18塩基で131,072通り、21塩基で1,048,576通り、PS 6か所で64通りとしたこと。0.98・0.99・0.995の19乗をそれぞれ約68%・約83%・約91%、0.99の39乗を約68%としたこと。7塩基の偶然一致を1/16,384、10万塩基あたり期待値約6か所、11塩基を1/約419万、19塩基を1/約2,750億としたこと。19サイクル×4段=76回、45分×19=約14時間としたこと。PMI 4,299から原薬1 kgあたり約4.3トン、189 mgで約813 g、284 mgで約1.2 kg、水を約2.2トン、洗浄溶媒を約1.1トンとしたこと | 本稿の計算。各段の収率が等しいこと、塩基がランダムに等確率で並ぶこと、PMIの平均値を個別製品に当てはめることは、いずれも本稿が置いた前提である。組合せや確率の数え上げは実際の不純物比率や毒性を示すものではなく、治療上の意味を論じるものでもない | 本稿の計算 |
| 各製品の製造原価、製造規模、実際のPMI、ホスホロアミダイトの価格や供給体制 | 本稿の調査範囲では公開された一次情報に確認できなかったため記載していない | 解説 |
| 各製品の効能・効果、臨床成績、安全性の評価、用法・用量、製品どうしの優劣 | 本記事は化学・材料・製造技術の解説であり、治療の効果や安全性の評価は行っていない。承認済み製品については規制当局の公表資料に記載のある化学構成・承認日・保存条件のみを引用した。第6章のED50や第7章の肝毒性に関する記述は、いずれも論文が報告した動物試験の内容をそのまま引用したものである | 解説 |
| 肝臓以外の組織への送達が今後どの技術で解かれるか、立体制御されたオリゴヌクレオチドが主流になるか | 本稿の調査時点(2026年9月)において、到達や趨勢を示す一次情報は確認できなかった | 未確定/将来 |
| 立体異性体の管理を「最終製品の分析ではなく工程で保証する」考え方として、分子量分布や粒度分布の管理になぞらえた整理。出発物質の純度が最終製品に残る構図を重合用モノマーや高純度薬液の立場になぞらえたこと。固相合成を「反応工程ではなく洗浄工程」と読み替えた整理。特異性が全長では担保できないという読み取り。配列由来の毒性と化学由来の毒性で評価手段が分かれるという整理。GalNAcリガンドが既存の合成条件に収まることで採用されたという読み取り。効力向上を投与容量の制約を解く手段と位置づけたこと。承認品の分子量がそろっていることから同一骨格の使い回しを読み取ったこと。表から読める傾向の整理 | 公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各論文の著者や規制当局が表明した見解ではない | 解説 |
| 図1〜図4・図6・図7が実際の分子構造・装置・測定像ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図5がAI生成イメージであること | 本記事による注記 | 解説 |
最終更新:2026年9月26日/出典は一次情報(査読論文、FDA承認添付文書とDrugs@FDA、厚生労働省の通知・ガイドライン、PMDA審査報告書)に限定しています。 化学設計やプロセス設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 製造原価、製造規模、製品ごとの実際のPMI、原料の価格や供給体制については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 Andrews ら(2021)のPMIデータは開発中の8品目についてのもので、製品名は公表されていません。 本記事は化学・材料・製造技術の解説であり、治療の効果・安全性を評価するものではなく、医療上の助言でもありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1〜図4・図6・図7はベクター作図、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実際の分子・装置・製品を示すものではありません。