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CDMO|創薬・DDS 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

CDMO(医薬品の開発・製造受託機関)
― 作るのは受託先、承認を持つのは製薬会社。では、材料を決めるのは誰か

医薬品の製造は、製薬会社が自社で行うとは限りません。工程の開発から商用製造までを請け負うCDMOが、とくに細胞・遺伝子治療の分野で存在感を増しています。 半導体後工程のOSATと似た「受託」の業態ですが、材料の採用の決まり方は大きく違います。

構成:米国FDAのガイダンス、欧州委員会のGMPガイドライン、ICHガイドライン、日本の省令、企業の公式情報を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

ガラス越しに同じ形の小さな製造室がいくつも並んでいる、人のいない清浄な建物内部の概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。複数の顧客の製品を、区切られた部屋で作り分ける受託製造施設の雰囲気を表現したものです。特定の企業の施設や実際の設備配置を描いたものではありません。
この記事の構成
  1. CDMOとは何か(3行でつかむ)
  2. CRO・CMO・CDMOの違い
  3. なぜ製薬会社は製造を外に出すのか
  4. 外に出しても、責任は移らない
  5. 細胞・遺伝子治療でCDMOが特に重要な理由
  6. 素材技術者の視点①:CDMOの「標準工程」に入るということ
  7. OSATとの対比 ― 採用の窓口はどこにあるか
  8. 素材技術者の視点②:窓口は2つあり、窓は承認で閉じる
  9. 公式情報で業態を確認できた企業の例
  10. 課題と、まだ決まっていないこと
  11. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=法令・ガイドライン・企業の公式情報に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値(本記事では使用していません)
未確定/将来=計画・案など、確定していない事項
このほか、業界構造の整理や材料供給側からの読み取りは「解説」として区別しています。 市場規模・シェア・売上順位の推計値は使っていません。企業名は、その企業の公式情報で業態を確認できたものに限って挙げています。

1. CDMOとは何か(3行でつかむ)

CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)とは、「医薬品の工程開発と製造を、製薬会社などから受託する企業」です。 日本語では「医薬品開発製造受託機関」などと呼ばれます。 CDMOという言葉を定義した法令やICHガイドラインは本稿の調査範囲では確認できず、業界での呼び名です(解説)。

  • 何を請け負うか:培養・精製などの工程を開発し、治験薬から商用品まで製造する。AGC Biologicsは自社を「グローバルなCDMO」とし、タンパク質系の生物製剤、細胞・遺伝子治療、メッセンジャーRNAの開発・製造サービスを提供するとしています事実
  • 誰から請け負うか:承認を取得して製品を市場に出す製薬会社やバイオベンチャー。規制上は、承認を持つ側と作る側が分かれていても成り立つ仕組みになっています(第4章)
  • 何が違うか:製造だけを受ける企業(CMO)と比べ、工程の開発段階から関わる点が特徴です(解説)
この記事でいちばん大事な一行

FDAの品質取決めに関するガイダンスは、こう書いています—— 「依頼者(owner)が受託施設を使う場合、受託施設が製造した医薬品を、最終出荷を含めて承認または不承認とする法的な責任は、依頼者の品質部門にある」事実。

作るのはCDMOでも、製品に責任を負い、承認を持つのは製薬会社です。 そして同じガイダンスは、品質取決めに「どちらが部材の規格を定め、どちらが部材の供給者を監査・適格性評価・監視するか」を書くよう求めています事実。 材料を誰が決めるかは、契約ごとに決まる——これが本記事の出発点です(解説)。

2. CRO・CMO・CDMOの違い

医薬品開発の段階と、受託の守備範囲(本記事による整理) 研究 非臨床 臨床試験 工程開発 商用製造 出荷の判定 CRO CMO CDMO:工程開発・治験薬の製造・商用製造 製薬会社(スポンサー/製造販売業者)が、全段階の最終責任を負う 試験の実施を受託 製造を受託 ※ CROはICH E6(R3)[出典5]、CMOはICH Q12[出典4]、CDMOは企業の自己規定[出典11・12]によります。 ※ 非臨床試験を受託する企業もCROと呼ばれることがあります。守備範囲は企業・契約ごとに異なり、この図は典型を単純化したものです。 ※ 最終責任が依頼者にあることはICH E6(R3)[出典5]、FDA品質取決めガイダンス[出典1]、ICH Q10[出典3]によります。
図1 概念図(ベクター作図)。各業態の位置づけはICH E6(R3)[出典5]、ICH Q12[出典4]、企業の公式情報[出典11・12]、最終責任についてはFDAガイダンス[出典1]とICH Q10[出典3]によります。段階の区切りと守備範囲の帯は本記事による単純化で、実際の契約範囲は企業ごとに異なります。
呼び名公表資料での扱い主な守備範囲(解説)
CROICH E6(R3)は「CRO」を「サービス提供者」の項に統合し、「治験依頼者または治験責任医師が治験関連の活動を行うために用いるサービスを提供する者または組織(営利・学術その他)」と定義臨床試験の運営・モニタリング・データ管理など
CMOICH Q12は、サプライチェーンの関係者として製造販売承認取得者、研究開発組織、製造業者、受託製造機関(Contract Manufacturing Organisations)、供給者を挙げる決められた工程での製造
CDMO法令・ICHでの定義は確認できず。企業が「グローバルなCDMO」(AGC Biologics)、「前臨床から商用製造まで、幅広いモダリティでエンドツーエンドのサービス」(FUJIFILM Biotechnologiesの細胞治療CDMOページ)と自己規定工程開発から治験薬・商用製造まで

「公表資料での扱い」は事実(ICH E6(R3)[出典5]、ICH Q12[出典4]、AGC Biologics[出典11]、FUJIFILM Biotechnologies[出典12])。右端の列は本記事による解説です。

3. なぜ製薬会社は製造を外に出すのか

FDAの品質取決めガイダンスは、受託製造の利点を1文で書いています—— 「受託は、スピードと効率を高め、技術的な専門性を提供し、生産能力を拡大しうる」事実。 同ガイダンスは、受託施設が担う作業の例として製剤化、充塡・仕上げ、化学合成、生物製剤を含む細胞培養と発酵、分析試験、包装・表示、滅菌を挙げています事実。

理由FDAガイダンスの言葉製薬会社の側から見た意味(解説)
スピードspeed and efficiency自社で工場を建てるより早く、治験薬や商用品を用意できる
専門性technological expertiseウイルスベクター、細胞加工など、自社にない技術と経験を使える
能力expand capacity需要の読めない段階で、固定費を抱えずに生産量を確保できる

中央の列は事実(FDA品質取決めガイダンス[出典1])。右端の列は本記事による解説です。

とくに開発段階では、承認されるかどうか分からない製品のために専用工場を建てるのは大きな賭けになります。 工程の開発から治験薬の製造までを受託先に任せ、成功した製品だけ商用製造に進む——というのが、CDMOを使う合理性の中心にある考え方です(解説)。

4. 外に出しても、責任は移らない

日米欧のいずれの制度でも、作業を外に出すことはできるが、製品への責任は依頼者に残るという形になっています事実。 両者の間は、文書による取決めで結ばれます。

委託する側と受託する側 ― 日米欧の呼び方と取決め(本記事による整理) 日本 米国 欧州 製造販売業者 承認を持ち、市場への出荷を管理 依頼者(owner) 品質部門が最終出荷を判定 委託者(contract giver) QPがバッチ認証の全責任を負う 取決め GQP省令 第7条 品質取決め FDAガイダンス 書面の契約 EU GMP 第7章 製造業者 製造管理・品質管理を行う 受託施設(contract facility) 自らの作業のCGMPに責任 受託者(contract acceptor) 契約で定めた業務を行う ※ 日本はGCTP省令 第3条[出典6]とGQP省令 第7条[出典7]、米国はFDA品質取決めガイダンス[出典1]、欧州はEU GMP 第7章[出典2]によります。 ※ 左=委託する側、右=受託する側。各制度の用語と責任範囲は同一ではなく、3段に並べたのは本記事による整理です。
図2 概念図(ベクター作図)。各地域の用語と取決めの根拠はGCTP省令[出典6]、GQP省令[出典7]、FDAガイダンス[出典1]、EU GMP 第7章[出典2]によります。3地域を同じ形で並べたのは本記事による単純化で、制度上の責任範囲は同一ではありません。
  • 日本:GCTP省令第3条は、製造販売業者が製造業者に製造所における製造管理・品質管理を「行わせなければならない」としています事実。GQP省令第7条は、製造販売業者が製造業者と取り決める事項として、製造業務の範囲、製造方法・試験検査方法等の技術的条件、定期的な確認、そして「製造方法、試験検査方法等についての変更が当該製品の品質に影響を及ぼすと思われる場合の製造販売業者に対しての事前連絡の方法及び責任者」を挙げています事実
  • 米国:各当事者は自らが行う製造活動のCGMP遵守に責任を持ち、依頼者の品質部門は受託施設が製造した医薬品の最終出荷を含む承認・不承認に法的責任を負います事実
  • 欧州:EU GMP第7章は、外部委託する活動を適切に定義し、合意し、管理すること、委託者と受託者の間に書面の契約を置くこと、委託者の品質マネジメントシステムに各バッチを認証するQP(出荷責任者)がどう全責任を果たすかを明記することを求めています事実
  • ICH Q10:品質システムは外部委託活動と購入材料の品質の管理に及び、「製薬企業は最終的に責任を負う」としています事実

5. 細胞・遺伝子治療でCDMOが特に重要な理由

FDAは2026年5月のガイダンスで、細胞・遺伝子治療製品の開発の課題として次のものを挙げています事実。

  • 製品の複雑さ、患者ごとの製造
  • 高度な工程と先端技術
  • 限られた患者数、少ない製造回数
  • 製品の特性評価と分析試験
  • 製造から投与までの時間枠が狭い、短い有効期間

欧州のATMP向けGMP(Part IV)は、先端医療医薬品が「学術機関や病院の環境で、従来の医薬品の製造に通常求められるものとは異なる品質システムのもとで開発されることが多い」と述べています事実。

必要なもの公表資料の記載CDMOに頼る理由(解説)
区切られた設備異なるATMP/バッチを同じ区域で同時に製造することは認められない。閉鎖系のアイソレーターなどで分ければ可(EU GMP Part IV 4.18〜4.19)事実複数の製品・患者分を並行して作るには、部屋や閉鎖系を多数そろえる必要がある。1社で持つと稼働率が下がりやすい
GMPの品質システム学術・病院の環境は、従来の医薬品とは異なる品質システムで開発されることが多い(2.11)事実研究室の工程を、GMPで運用できる工程に作り直す経験が要る
自動化装置の理解自動化装置を使う場合、CEマークだけでは適合性の証明に十分でない。製造業者は装置の機能を十分に理解し、品質に重要な工程を特定できるだけの情報を装置メーカーから得るべき(17章)事実装置の評価と適格性確認を、製品ごとに一からやり直さずに済む
対応するモダリティFUJIFILM Biotechnologiesの細胞治療CDMOページは、自家・同種の幹細胞・免疫細胞(CTL、NK、CAR-T、TCR-T)と、グループ会社との協業によるiPS細胞を挙げる事実製品の種類ごとに異なる工程の経験を、1か所で持てる

「公表資料の記載」は事実(EU GMP Part IV[出典10]、FUJIFILM Biotechnologies[出典12])。右端の列は本記事による解説です。

6. 素材技術者の視点①:CDMOの「標準工程」に入るということ

素材技術者の読みどころ:CDMOは、採用を「掛け算」にする場所です

FDAの2026年5月のガイダンスは、細胞・遺伝子治療製品の開発で、類似の製品の間でCMCの知識を活用する提案を検討しうるとし、 その対象に分析法、分析法バリデーション、出荷規格、安定性データ、比較可能性データ、工程開発・プロセスバリデーションのデータを挙げています事実。 例として、「プラットフォーム分析法」の利用が挙げられています事実。

CDMOから見ると、これは自社の標準的な工程(プラットフォーム)を、複数の顧客の製品に繰り返し使えることの裏づけになります(解説)。 そして素材メーカーから見ると、次の意味を持ちます(解説)。

  • 1社の採用が、複数の製品の採用になる:CDMOの標準工程に組み込まれた培地・バッグ・フィルターは、その工程を使う顧客の製品すべてに入っていく
  • 評価データも使い回される:一度CDMOで溶出物評価や適格性確認を済ませた部材は、次の顧客にとっても「確認済み」の選択肢になる
  • 逆に、入れなければ締め出される:標準工程が固まった後に別の材料を提案するのは、CDMOにとっても顧客にとっても手間が増える

つまり、CDMOは採用の「掛け算」が起きる場所です。 素材メーカーにとっての営業先は、個々の製薬会社だけでなく、CDMOの工程開発部門でもある——ということになります(解説)。

7. OSATとの対比 ― 採用の窓口はどこにあるか

本シリーズ「OSAT」編では、半導体後工程を請け負うOSATについて、後工程を誰が担うかで材料の採用を決める主体が変わることを見ました。 医薬品のCDMOも「受託」という点では似ていますが、材料の採用の決まり方には大きな違いがあります(解説)。

材料の採用の窓口 ― 半導体後工程(OSAT)と医薬品(CDMO)(本記事による整理) 半導体後工程 医薬品 設計会社など OSAT 材料メーカー 製薬会社 承認を持つ CDMO 材料メーカー 後工程の担い手や設計会社が 材料を選ぶ 規格・供給者の 承認と申請 工程開発で 評価・提案 変更は顧客の再評価で決まる 承認事項なら規制手続きが要る ※ 左は本シリーズ「OSAT」編の整理にもとづく本記事の要約です。右の「どちらが部材の規格と供給者管理を担うか」は品質取決めで定める   とするFDAガイダンス[出典1]、承認事項と変更の関係はICH Q12[出典4]によります。 ※ 実際の採用経路は製品・契約ごとに異なり、この図は典型を単純化したものです。
図3 概念図(ベクター作図)。医薬品側の関係はFDA品質取決めガイダンス[出典1]とICH Q12[出典4]にもとづく本記事の整理、半導体側は本シリーズ「OSAT」編の内容の要約です。2つの業界を同じ形で並べたのは本記事による単純化であり、業界で確立された分類ではありません。
観点OSAT(半導体後工程)CDMO(医薬品)
受託する範囲組立・テスト。顧客ごとに範囲は異なる工程開発・治験薬・商用製造。顧客ごとに範囲は異なる
製品の責任契約による依頼者(製薬会社)の品質部門が最終出荷を判定する法的責任を負う事実
材料を決める主体後工程の担い手(OSAT・ファウンドリ)や設計会社。担い手が変われば主体も動く品質取決めで、どちらが部材の規格と供給者管理を担うかを定める事実
受託先が材料を変えられるか顧客との取り決めと再評価によるFDAの事例では、受託施設は取決め上依頼者の承認なしに工程や部材の変更を実施できなかった事実
変更の重さ顧客の再評価(信頼性試験など)承認事項(EC)に当たれば規制当局への提出が必要事実

CDMO欄の事実はFDA品質取決めガイダンス[出典1]とICH Q12[出典4]によります。OSAT欄と、印の無いCDMO欄は本記事による解説(OSAT欄は本シリーズ「OSAT」編の整理にもとづく要約)です。

8. 素材技術者の視点②:窓口は2つあり、窓は承認で閉じる

素材技術者の読みどころ:CDMOに気に入られても、それだけでは決まらない

FDAの品質取決めガイダンスには、印象的な事例があります。受託施設が工程の問題を見つけ、工程の再設計と部材の変更が必要だと判断した。 しかし取決め上、受託施設は依頼者の承認なしにその変更を実施できず、依頼者は推奨された変更を承認しなかった。 ガイダンスは、「依頼者は、CGMPに適合して製造を続けるために必要な変更であっても、受託施設が推奨する変更の承認をためらうことがある」と書いています事実。

ここから、医薬品の受託製造における材料の採用には、2つの窓口があることが読み取れます(解説)。

  • 窓口①:CDMOの工程開発部門。標準工程や顧客の工程を作る段階で、材料を評価し、提案する
  • 窓口②:製薬会社(承認を持つ側)。部材の規格や供給者を承認し、申請書(CMC)に書く

OSATなら、OSATが採用を決めればそれで材料は使われうる。医薬品では、CDMOが採用したい材料でも、製薬会社が承認し、申請書に載せなければ使われない。 そして承認された後に材料を変えるのは、規制手続きを伴う重い作業になります(本シリーズ「QbDとCMC」編)。

だから、材料の採用の窓は開発の初期に開き、承認のころにはほぼ閉じていると考えるべきです(解説)。 CDMOの工程開発の段階で入り込むこと、そしてその段階から製薬会社が承認できるだけの書類(規格、変更の事前連絡の体制、供給の継続性)を用意しておくことが、この市場での要点です。

材料を選び直せる余地は、開発が進むほど狭まる(概念図) 工程開発 初期の治験 後期の治験 承認申請 承認後 CDMOが材料を 評価・提案する 第1相の治験薬は Part 211の適用外 工程を固め データを積む 原材料の管理を 申請書に書く ECの変更には 当局への提出 材料を選び直せる余地 採用の窓は開発の初期に開き、承認のころにはほぼ閉じている(解説) ※ 第1相治験薬の製造がPart 211の遵守を一般に免除されることはFDAガイダンス(2026年5月)[出典9]、ECとその変更はICH Q12[出典4]によります。 ※ 帯の幅は余地の大きさを模式的に示したもので、数量や期間の比例ではありません。
図4 概念図(ベクター作図)。各段階の記述はFDAガイダンス[出典9]とICH Q12[出典4]によります。帯の幅と「窓が閉じる」という見方は本記事による解説で、数量的な関係を示すものではありません。

付け加えると、開発初期の治験薬は米国で一般に21 CFR Part 211の遵守が免除されるため事実、 研究用グレードの材料で工程が組まれることもあります。欧州のATMP向けGMPは、研究用グレードの材料しか入手できない場合があることを認めつつ、 「より多くの製品を製造するときの供給継続のリスクを含めて」そのリスクを理解するよう求めています事実。 初期に研究用グレードで入った材料を、承認までにGMP対応のグレードへ移すのは、それ自体が「変更」になりえます。 最初からGMP対応のグレードと書類を用意して窓口①に入ることが、素材メーカーにとっての実務的な答えになります(解説)。

9. 公式情報で業態を確認できた企業の例

以下は、各社の公式サイトでCDMOとしての業態を確認できた例です。 市場での順位や規模を示すものではなく、網羅的な一覧でもありません。

企業公式情報で確認できた内容
AGC Biologics米国ワシントン州シアトル近郊に本社を置くグローバルなCDMO。タンパク質系の生物製剤、細胞・遺伝子治療、メッセンジャーRNAの医薬品開発・製造サービスを提供。AGC株式会社の一員。拠点はボセル(米国)、コペンハーゲン(デンマーク)、ハイデルベルク(ドイツ)、ミラノ(イタリア)、千葉、横浜
FUJIFILM Biotechnologies細胞治療のCDMOとして、前臨床から商用製造まで幅広いモダリティでエンドツーエンドのサービスを提供するとする。工程開発と製造科学技術(MSAT)のチーム、電子バッチ記録を備えたcGMP製造スペース。自家・同種の幹細胞・免疫細胞(CTL、NK、CAR-T、TCR-T)、FUJIFILM Cellular Dynamicsとの協業によるiPS細胞を挙げる

すべて事実(AGC Biologics「About Us」[出典11]、FUJIFILM Biotechnologies 細胞治療CDMOページ[出典12])。

素材・化学でも知られる企業グループがCDMOを持つということ(解説)

上の2社は、いずれも日本の企業グループに属しています(AGC Biologicsは「AGC株式会社の一員」と公表し事実、FUJIFILM Biotechnologiesは富士フイルムのグループ内のCDMOとして事業を紹介しています事実)。両グループとも、素材・化学の分野でも知られる企業です(解説)。 第8章で見た「採用の窓口」の構造から見ると、これは材料の企業グループが、採用を決める側(受託製造)に自ら回っている例として読むこともできます。 ただし、各社がそうした意図でCDMO事業を持っているかどうかは、本稿で確認した公式情報には書かれていません(解説)。

ガラスの仕切りで区切られた同じ大きさの小さな製造室が、廊下に沿って並んでいる、人のいない建物内部の概念イメージ
図5 概念図(AI生成イメージ)。複数の製品・バッチを同じ区域で同時に作らないよう、部屋ごとに分けて製造する考え方を雰囲気として表現したものです。特定の企業の施設や、実際の清浄度区分・設備配置を示すものではありません。

10. 課題と、まだ決まっていないこと

(1) 変更の主導権のずれ

第8章で見たとおり、受託施設が必要と判断した変更を、依頼者が承認しないことがあるとFDA自身が指摘しています事実。 材料の供給終了や改良が起きたとき、CDMOと製薬会社のどちらがいつ判断するかを、取決めで先に決めておく必要があります(解説)。

(2) 標準工程への依存

CDMOの標準工程に組み込まれた材料は多くの製品に広がる一方、その材料が止まれば多くの製品が同時に影響を受けうることにもなります(解説)。 供給の継続性は、個々の顧客への約束であると同時に、CDMOの工程全体への約束になります。

(3) 分散製造など、新しい製造の形

EU GMP Part IVは、自家製品の課題に対応して分散製造などの新しい製造モデルが現れているとしています事実。 こうしたモデルでCDMOの役割がどう変わるかは、本稿の調査時点(2026年9月)で一次情報から確定的に言えることはありません未確定/将来。

(4) ガイダンスの適用範囲

FDAの品質取決めガイダンスは商用製造を対象とし、治験薬の製造には明示的には適用されないとしつつ、その原則は商用化前の段階にも適用しうるとしています。 また、公衆衛生サービス法第361条のみで規制されるヒト細胞・組織製品は対象外です事実。

この記事のまとめ
  • CDMOは工程開発から製造までを受託する業態です。法令上の定義は確認できず、企業の自己規定として使われています事実
  • 受託は「スピードと効率、技術的な専門性、生産能力」をもたらしうるとFDAは書いています事実
  • 作業を外に出しても、製品への最終責任は依頼者に残ります事実
  • 細胞・遺伝子治療は、患者ごとの製造・高度な工程・同時製造の制限などから、専門の設備と人材を要します事実
  • 材料の採用の窓口は、CDMOの工程開発と製薬会社の承認の2つです(解説)
  • 採用の窓は開発初期に開き、承認のころにはほぼ閉じています(解説)

11. 用語集

CDMO
Contract Development and Manufacturing Organization。医薬品の工程開発と製造を受託する企業。
CMO
Contract Manufacturing Organization。医薬品の製造を受託する企業。
CRO
Contract Research Organization。臨床試験などの業務を受託する企業。ICH E6(R3)ではサービス提供者に統合。
OSAT
Outsourced Semiconductor Assembly and Test。半導体の組立とテストを受託する企業。
依頼者(owner)
FDAガイダンスの用語。受託施設に製造を委託し、製品の出荷判定に責任を負う者。
受託施設(contract facility)
FDAガイダンスの用語。契約にもとづき製造作業を行う施設。
品質取決め
委託者と受託者の品質に関する役割・責任を定めた文書。
製造販売業者
日本で承認を受け、製品を市場に出す責任を負う者。
QP
Qualified Person。欧州で各バッチの出荷を認証する責任者。
プラットフォーム
複数の製品に共通して使える標準的な工程や分析法。
モダリティ
医薬品の種類・形態(低分子、抗体、細胞、遺伝子など)。
MSAT
Manufacturing Science and Technology。製造の技術的な課題を扱う部門。
分散製造
製造を1か所に集めず、患者の近くなど複数の場所で行う製造の形。

12. 参考資料(一次情報)

  1. U.S. FDA(CDER・CBER・CVM)「Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreements — Guidance for Industry」2016年11月 https://www.fda.gov/media/86193/download
  2. European Commission「EudraLex Volume 4, Chapter 7: Outsourced Activities」2013年1月31日適用 https://health.ec.europa.eu/system/files/2016-11/vol4-chap7_2012-06_en_0.pdf
  3. ICH「Q10 Pharmaceutical Quality System」2008年6月 https://database.ich.org/sites/default/files/Q10%20Guideline.pdf
  4. ICH「Q12 Technical and Regulatory Considerations for Pharmaceutical Product Lifecycle Management」2019年11月 https://database.ich.org/sites/default/files/Q12_Guideline_Step4_2019_1119.pdf
  5. ICH「E6(R3) Guideline for Good Clinical Practice」2025年1月 https://database.ich.org/sites/default/files/ICH_E6%28R3%29_Step4_FinalGuideline_2025_0106.pdf
  6. 厚生労働省(e-Gov 法令検索)「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」平成26年厚生労働省令第93号 https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000100093
  7. 厚生労働省(e-Gov 法令検索)「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」平成16年厚生労働省令第136号 https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100136
  8. 厚生労働省(e-Gov 法令検索)「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」平成16年厚生労働省令第179号 https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100179
  9. U.S. FDA(CBER)「Chemistry, Manufacturing, and Controls Flexibilities for Developing Human Cellular and Gene Therapy Products for a Biologics License Application」2026年5月 https://www.fda.gov/media/192321/download
  10. European Commission「Guidelines on Good Manufacturing Practice specific to Advanced Therapy Medicinal Products」2017年11月22日 https://health.ec.europa.eu/system/files/2017-11/2017_11_22_guidelines_gmp_for_atmps_0.pdf
  11. AGC Biologics「About Us」 https://www.agcbio.com/about
  12. FUJIFILM Biotechnologies「Your Cell Therapy CDMO Partner」 https://fujifilmbiotechnologies.fujifilm.com/capabilities/advanced-therapies/cell-therapy-cdmo/

13. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
依頼者の品質部門が受託施設製造品の最終出荷を含む承認・不承認に法的責任を負うこと。各当事者が自らの製造活動のCGMP遵守に責任を負うこと。品質取決めにどちらが部材の規格を定め供給者を監査・適格性評価・監視するかを記載すること。受託が「speed and efficiency」「technological expertise」「expand capacity」をもたらしうること。受託作業の例(製剤化、充塡・仕上げ、化学合成、生物製剤を含む細胞培養と発酵、分析試験、包装・表示、滅菌)。事例5(受託施設が工程再設計と部材変更を要すると判断したが、依頼者の承認なしに実施できず、依頼者が承認しなかった)と、依頼者が変更の承認をためらうことがあるという記述。商用製造を対象とし治験薬製造には明示的に適用されないが原則は応用しうること、361条のみで規制されるHCT/Pが対象外であること。2016年11月付であることFDA品質取決めガイダンス 出典1 https://www.fda.gov/media/86193/download事実
外部委託活動を定義・合意・管理すること、委託者と受託者の書面の契約、委託者の品質マネジメントシステムにQPが全責任を果たす方法を明記すること。2013年1月31日適用EU GMP 第7章 出典2 https://health.ec.europa.eu/system/files/2016-11/vol4-chap7_2012-06_en_0.pdf事実
品質システムが外部委託活動と購入材料の品質の管理に及び、製薬企業が最終的に責任を負うことICH Q10 2.7 出典3 https://database.ich.org/sites/default/files/Q10%20Guideline.pdf事実
サプライチェーンの関係者に受託製造機関(Contract Manufacturing Organisations)と供給者が含まれること。ECが法的拘束力のある情報でその変更に提出が必要なことICH Q12 出典4 https://database.ich.org/sites/default/files/Q12_Guideline_Step4_2019_1119.pdf事実
CROがサービス提供者の項に統合され、サービス提供者が治験関連活動のためのサービスを提供する者または組織と定義されていること。治験依頼者の活動の最終責任が治験依頼者にあることICH E6(R3) 出典5 https://database.ich.org/sites/default/files/ICH_E6%28R3%29_Step4_FinalGuideline_2025_0106.pdf事実
製造販売業者が製造業者に製造管理・品質管理を行わせなければならないこと(第3条)GCTP省令 出典6 https://laws.e-gov.go.jp/law/426M60000100093事実
製造販売業者と製造業者の取決め事項(製造業務の範囲、技術的条件、定期的確認、品質に影響する変更の事前連絡の方法及び責任者など、第7条)GQP省令 出典7 https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100136事実
外部委託業者との文書による取決めと、適性・能力の確認(第11条の5)。日本のGMPの枠組みとして参照GMP省令 出典8 https://laws.e-gov.go.jp/law/416M60000100179事実
CGT製品開発の課題(製品の複雑さ、患者ごとの製造、高度な工程と先端技術、限られた患者数、少ない製造回数、特性評価と分析試験、短い有効期間と製造から投与までの狭い時間枠)。類似製品間でCMCの知識を活用する提案とその対象、プラットフォーム分析法の例。第1相治験薬の製造が一般にPart 211の遵守を免除されることFDA ガイダンス(2026年5月) 出典9 https://www.fda.gov/media/192321/download事実
ATMPが学術機関・病院の環境で異なる品質システムのもとで開発されることが多いこと、分散製造(2.11)。異なるATMP/バッチの同一区域での同時製造の不可と閉鎖系による分離(4.18〜4.19)。研究用グレードの材料と供給継続のリスク(7.13)。自動化装置でCEマークだけでは不十分で、装置メーカーから十分な情報を得るべきこと(17章)EU GMP Part IV(ATMP) 出典10 https://health.ec.europa.eu/system/files/2017-11/2017_11_22_guidelines_gmp_for_atmps_0.pdf事実
AGC Biologicsがシアトル近郊に本社を置くグローバルなCDMOで、タンパク質系の生物製剤・細胞遺伝子治療・メッセンジャーRNAの開発・製造サービスを提供し、AGC株式会社の一員であること。拠点(ボセル、コペンハーゲン、ハイデルベルク、ミラノ、千葉、横浜)AGC Biologics 公式サイト 出典11 https://www.agcbio.com/about事実
FUJIFILM Biotechnologiesの細胞治療CDMOサービス(前臨床から商用までのエンドツーエンド、工程開発・MSAT、電子バッチ記録を備えたcGMP製造スペース、自家・同種の幹細胞・免疫細胞、FUJIFILM Cellular Dynamicsとの協業によるiPS細胞)FUJIFILM Biotechnologies 公式サイト 出典12 https://fujifilmbiotechnologies.fujifilm.com/capabilities/advanced-therapies/cell-therapy-cdmo/事実
分散製造などの新しいモデルでCDMOの役割がどう変わるか本稿の調査時点(2026年9月)で一次情報から確定的に言えることはない未確定/将来
CDMOが法令・ICHで定義されていない業界の呼び名であるという記述(本稿の調査範囲で定義を確認できなかったことによる)。CRO・CMO・CDMOの守備範囲の整理。外部委託の理由の製薬会社側の意味づけ。専用工場を建てる賭けという説明。CDMOに頼る理由の読み取り。CDMOが採用の「掛け算」の場になるという整理。OSATとの対比(OSAT欄は本シリーズ「OSAT」編の整理の要約)。採用の窓口が2つあること、窓が開発初期に開き承認でほぼ閉じるという見方。GMP対応グレードで窓口①に入るべきという示唆。材料・化学の企業グループがCDMOを持つことの読み取り。変更の主導権のずれと標準工程への依存の指摘。図1〜図4の段組み・帯・流れ公表資料にもとづく本記事の整理・解説。規制当局や各社が表明した見解ではない解説
市場規模・シェア・売上順位推計値を含むため本記事では使用していない(解説)解説
図1〜図4が説明用の作図であること。ヒーロー画像と図5がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年9月23日/出典は一次情報(FDAのガイダンス、欧州委員会のGMPガイドライン、ICHガイドライン、日本の省令、企業の公式サイト)に限定しています。 業界構造の整理や材料供給側からの読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 市場規模・シェア・売上順位の推計値は使用しておらず、企業の例は公式情報で業態を確認できたものに限っています。 OSATとの対比のうちOSAT側は、本シリーズ「OSAT」編の整理にもとづく要約です。 図1〜図4はベクター作図、ヒーロー画像と図5はAI生成イメージであり、いずれも実在の企業の施設や契約を描いたものではありません。