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血液脳関門|創薬・DDS 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

血液脳関門(BBB)
― 通さない壁を、受容体の「乗り物」で越える

脳の毛細血管の内皮細胞は、タイトジャンクションで隙間を塞いでいます。そこを越える方法として実用化されたのが、 トランスフェリン受容体に結合させて細胞の中を通り抜けるという設計です。 日本では2021年、米国では2026年に、同じ受容体を使いながら構造の違う2つの製品が承認されました。

構成:FDA承認添付文書、Drugs@FDA、PMDA添付文書、ClinicalTrials.gov、査読論文(Neurobiology of Disease/Science Translational Medicine/Neuron ほか)を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

暗い空間を仕切る、継ぎ目のない極めて細かな格子状の面が、片側からの光をわずかに透かしている抽象的な概念イメージ
概念図(AI生成イメージ)。「隙間なく仕切られていて、ごく限られたものだけが通る」という状況を雰囲気として表現したものです。実際の組織・細胞・顕微鏡像・製品を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 血液脳関門とは何か(3行でつかむ)
  2. 壁の実体 ― タイトジャンクションと、細胞まわりの助っ人たち
  3. 通り道は2種類しかない ― 物理的な壁と、輸送の壁
  4. 受容体介在性トランスサイトーシス(RMT)という抜け道
  5. 親和性を「下げる」と、よく入る ― 2011年の逆説
  6. 素材技術者の視点①:接着でも吸着でもなく、「渡して離す」設計
  7. 受容体の選択肢を広げる ― タンパク質の量で選ぶ
  8. 承認された2つの製品 ― 同じ受容体、違う構造
  9. 本稿の計算:運ぶ側の質量と、担体の大きさを比べる
  10. 素材技術者の視点②:凍結乾燥品の中身は、ほとんどが糖である
  11. そもそも越えない、という選択 ― 髄腔内・脳室内投与
  12. どう評価するか ― 細胞モデルから、承認の判断材料まで
  13. 課題と、確定していないこと
  14. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=研究段階・計画であり、実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料・プロセス設計上の読み取りは「解説」として区別しています。

医療についてのお断り

本記事は材料技術・製剤技術の解説です。個々の薬の効果や安全性を評価したり、製品どうしを比較して優劣をつけたりするものではなく、医療上の助言でもありません。 製品の構造・組成・承認の内容は、規制当局(FDA・PMDA)の公表資料に記載があるものだけを引用しています。 動物実験の結果は、そのままヒトに当てはまるとは限りません。

1. 血液脳関門とは何か(3行でつかむ)

  • 何のための仕組みか:Abbottらは、「中枢神経系(CNS)における神経シグナル伝達には、高度に制御された微小環境が必要である」とし、血液とCNSの間には3つの界面——血液脳関門(BBB)、血液脳脊髄液関門、クモ膜関門——が壁をつくっていると整理しています事実
  • どこにあるのか:同論文は「脳微小血管の内皮のレベルにあるBBBが、血液とCNSの交換の主要な場である」と述べています事実
  • なぜ創薬で問題になるのか:Yuらは「モノクローナル抗体は中枢神経系の疾患を治療する可能性をもつが、脳への集積は血液脳関門によって制限されている」と述べています事実。Abbottらも「CNSを標的とする、あるいは避けるための創薬・送達のプログラムはどれも、BBBの特殊性を考慮する必要がある」と結んでいます事実
この記事でいちばん大事な一行

BBBを越える設計で効いたのは、「強くつかむ」ことではなく「ほどよく離す」ことでした。 Yuらは、トランスフェリン受容体(TfR)への親和性を下げた抗体のほうが、脳内へよく移行することを示しています事実。 高い親和性でTfRに結合する抗体はBBBに留まったままで、親和性の低い変異体はBBBから脳へ放出された—— 結合の強さを上げるほど良い、という設計指針が通用しない領域です(本記事による解説)。

2. 壁の実体 ― タイトジャンクションと、細胞まわりの助っ人たち

論文の記述(Abbott ら 2010)

同論文は、BBBの構造と機能を「内皮細胞のタイトジャンクションによって形成される物理的な壁」と「膜輸送体と小胞による機構から生じる輸送の壁」に分けて整理しています事実。

さらに、関わる細胞として「アストロサイト(グリア細胞)の足突起(endfeet)、ペリサイト、ミクログリア」の役割を挙げています事実。

また、BBBは「短期的にも長期的にも調節を受けており、その調節は病態では乱れうる」とも述べています事実。

Abbottらは別の総説で、「脳微小血管、アストロサイト、ニューロンが連携して機能的な『神経血管ユニット』を形成する」という捉え方と、 「このモジュール的な組織化における脳内皮細胞の重要性」が注目されていると述べています事実。

血液脳関門をつくっているもの(概念図) 左=血液側/右=脳の側。断面を模式的に示したもの 血液 内皮細胞 脳(実質) 血中のタンパク質 栄養・薬 細胞どうしが タイトジャンクションで 隙間なく塞がれている 膜輸送体と小胞が 出入りを選別する 基底膜 アストロサイトの足突起 ペリサイト ミクログリア・ニューロン これらが連携して「神経血管ユニット」を形づくるという捉え方がある ※ 物理的な壁(タイトジャンクション)と輸送の壁(膜輸送体・小胞機構)の区別、アストロサイト足突起・ペリサイト・ミクログリアの関与は   Abbott ら(2010)[参考資料1]、神経血管ユニットという捉え方は Abbott ら(2006)[参考資料2]によります。 ※ 図は模式で、細胞の形・大きさの比・配置・基底膜の厚さを示すものではありません。
図1 概念図(ベクター作図)。構造の区分と関与する細胞は Abbott ら(2010)[参考資料1]、神経血管ユニットという捉え方は Abbott ら(2006)[参考資料2]によります。図は模式で、細胞の形・大きさの比・配置を示すものではありません。実際の組織像ではありません。

3. 通り道は2種類しかない ― 物理的な壁と、輸送の壁

Abbottらの整理にしたがうと、BBBの「通しにくさ」は2つの要素からできています事実。

壁の種類実体(論文の記述)そこを越えるには(本記事による整理)
物理的な壁内皮細胞のタイトジャンクションによって形成される細胞と細胞の隙間は使えない。細胞の中を通るしかない
輸送の壁膜輸送体と小胞による機構から生じるすでにある輸送の仕組みに相乗りする

左2列は事実(Abbott ら 2010[参考資料1])。右列は本記事による整理です。

「細胞の中を通るしかない」——ここがDDSの出発点になります。 そして「小胞による機構」のうち、薬を運ぶために実際に使われてきたのが、次章の受容体介在性トランスサイトーシスです。

4. 受容体介在性トランスサイトーシス(RMT)という抜け道

トランスサイトーシスとは、細胞の片側から小胞で取り込み、細胞の中を通り抜けて、反対側へ放出する仕組みです。 受容体に結合するものを使えば、それに便乗できます。承認された製品の添付文書に、その説明が書かれています。

FDA添付文書の記述(AVLAYAH、2026年)

「チビデノフスプ アルファ-eknm の Fc(結晶化可能フラグメント)部分は、トランスフェリン受容体(TfR)の頂端ドメインに結合し、受容体介在性トランスサイトーシスによって血液脳関門を越えて、IDS を末梢組織と中枢神経系へ送達する」事実

さらに、「TfRは普遍的に発現しているため、本剤とTfRとの相互作用が、脳および末梢組織の細胞への取り込みに寄与すると期待される」とも記載されています事実。

PMDA添付文書の記述(イズカーゴ、2021年)

「本剤は、末梢組織・臓器では、主にカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体とトランスフェリン受容体1(TfR)を介して細胞内に取り込まれた後、ライソゾームへ運ばれ、蓄積したGAGを分解する。また、TfRを介したトランスサイトーシスによって血液脳関門(BBB)を通過し、脳実質の細胞についても、末梢組織と同様にカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体とTfRを介して取り込まれた後、蓄積したGAGを分解する」事実

どちらもトランスフェリン受容体を使っています。 本来この受容体は鉄を運ぶタンパク質(トランスフェリン)を細胞に取り込むためのもので、薬のために用意されたものではありません。 もともとある物流路に、荷物を載せてもらう——これがRMTの考え方です(本記事による解説)。

継ぎ目のない細かな格子状の面のうち、一か所だけが小さく開き、そこから淡い光が漏れている抽象的な概念イメージ
図2 概念図(AI生成イメージ)。「隙間なく塞がれた面に、限られた通り道だけがある」という考え方を雰囲気として表現したものです。実際の組織・細胞・受容体・製品を示すものではありません。

5. 親和性を「下げる」と、よく入る ― 2011年の逆説

RMTを使うと決めたあと、設計者は次の問いにぶつかります。受容体への結合は、強いほうがよいのか。 Yuらの2011年の報告は、この直感に反する答えを示しました事実。

論文の記述(Yu ら 2011, Science Translational Medicine)

「抗体のトランスフェリン受容体(TfR)に対する親和性を下げることが、抗TfR抗体の血液脳関門を越えるマウス脳内への受容体介在性トランスサイトーシスを高め、治療上意味のある濃度に達することを示す」事実

「TfRに高い親和性で結合する抗TfR抗体はBBBに結合したままであるのに対し、親和性の低い抗TfR抗体変異体はBBBから脳へ放出され、投与24時間後に広い分布を示す」事実

同論文はこの知見をもとに、TfRに低い親和性で、酵素BACE1に高い親和性で結合する二重特異性抗体を設計し、 単一特異性の抗BACE1抗体と比べて、全身投与1回後にマウス脳へより多く集積し、脳内アミロイドβの減少が大きかったと報告しています事実。

受容体への親和性が高いほうがよい、とは限らない(概念図) Yu ら(2011)のマウス実験の要旨を模式化したもの TfRへの親和性が高い抗体 TfRへの親和性を下げた変異体 BBB BBB BBBに結合した ままとどまる 脳の側へ出ていかない BBBから脳へ放出される 24時間後に広く分布 ← 血液側  脳側 → ← 血液側  脳側 → つかむ力を弱めたほうが、渡したあとに離れてくれる ※ 記述は Yu ら(2011)[参考資料3]の要旨によります。マウスでの結果です。下段の一文は本記事による要約で、図は模式です。
図3 概念図(ベクター作図)。左右の記述は Yu ら(2011)[参考資料3]の要旨によります。粒の数や配置は模式で、実際の分布や量を示すものではありません。下段の一文は本記事による要約です。マウスでの結果であり、ヒトで同じことが起きるとは限りません。

6. 素材技術者の視点①:接着でも吸着でもなく、「渡して離す」設計

素材技術者の読みどころ:結合定数を上げにいく癖が、ここでは裏目に出る

表面処理やカップリング剤を扱っていると、「相手にどれだけ強く結合するか」を性能指標にしがちです。 ところがBBBを越えるRMTでは、結合は「入口」でしか使わず、出口では離れてもらわなければならない(本記事による解説)。 Yuらの結果は、まさにそれを示しています。高親和性の抗体はBBBに留まり、低親和性の変異体は脳へ放出される事実。

これは、材料の世界で言えば転写フィルムや離型剤の設計に近い構図です。 途中までしっかり保持し、所定の場所で確実に離れる。 保持力だけを上げると、剥がれずに製品にならない——同じ失敗の型です(本記事による解説)。

設計変数が「結合の強さ」という連続量ひとつに集約されている点も特徴的です。 抗体の配列を変えて親和性を段階的に振り、最適点を探す——本シリーズ「脂質ナノ粒子」編で見た、 イオン化脂質のpKaを振って最適範囲を探すという作業と、方法論としてはよく似ています(本記事による解説)。

7. 受容体の選択肢を広げる ― タンパク質の量で選ぶ

TfR以外に使える受容体はないのか。Zucheroらは、網羅的にタンパク質の量を測って探すという方法をとりました事実。

論文の記述(Zuchero ら 2016, Neuron)

「トランスクリプトームとプロテオームのプロファイリングを用いて、抗体をBBBを越えて輸送するために利用しうるマウス脳内皮細胞(BEC)のタンパク質を探索した」事実

結果はまず否定的でした。「タンパク質の存在量が限られているため、文献で挙げられてきた標的に対する抗体も、マイクロアレイで同定されたBBB濃縮タンパク質に対する抗体も、抗体の脳への取り込みを有意には促進しなかった」事実。

そのうえで、単離したマウスBECのプロテオーム解析から、ベイシジン、Glut1、CD98hcを含む高発現タンパク質を同定。 これらを標的とする抗体はいずれも、生体内投与後に脳で有意に濃縮されたとし、 とくにCD98hcに対する抗体は、全身投与後に脳へ確かな蓄積を示し、脳内アミロイドβの減少として測定される有意な薬力学的応答を示したと報告しています事実。

素材技術者の読みどころ:効く/効かないを分けたのは「量」だった

この論文でいちばん示唆的なのは、失敗の理由が「タンパク質の存在量が限られていたから」だった点です事実。

どれだけ親和性が高くても、相手の数が足りなければ輸送量は出ない。 触媒でいう活性点密度、接着でいう官能基密度と同じ話です(本記事による解説)。 だから探索の方法が、「機能から探す」から「発現量から探す」へ切り替わりました。 転写産物(マイクロアレイ)ではなくタンパク質(プロテオーム)で測ったことも、 実際にそこにある量を見ようとしたという点で、材料分析の発想に通じます(本記事による解説)。

8. 承認された2つの製品 ― 同じ受容体、違う構造

TfRを使う設計は、実際に承認されています。日本と米国で、構造の違う2つの製品が、同じ疾患(ムコ多糖症Ⅱ型)に対して承認されました。 以下は構造と承認の事実のみを記載します。効果や安全性を比較するものではありません。

項目イズカーゴ点滴静注用10mg(日本)AVLAYAH(米国)
一般名パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)tividenofusp alfa-eknm
構造ヒト化抗ヒトトランスフェリン受容体モノクローナル抗体+ヒトイズロン酸-2-スルファターゼからなる遺伝子組換え融合糖タンパク質。A鎖(219アミノ酸)2本とB鎖(975アミノ酸)2本。B鎖は抗体H鎖(γ1)+リンカー+酵素酵素(IDS)を IgG1 の Fc の N末端に融合させた融合タンパク質
分子量約300,000約110 kDa
生産チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞組換えDNA技術によりCHO細胞で生産
BBB通過の記載TfRを介したトランスサイトーシスによりBBBを通過するFcがTfRの頂端ドメインに結合し、受容体介在性トランスサイトーシスでBBBを越える
剤形凍結乾燥製剤(白色の塊又は粉末)、点滴静注凍結乾燥粉末、溶解・希釈して点滴静注
承認ムコ多糖症Ⅱ型。承認番号 30300AMX00260000(添付文書の引用文献に2021年3月23日承認と記載)BLA 761485、2026年3月24日に承認(優先審査、新有効成分)。迅速承認(accelerated approval)

イズカーゴの記載は事実(PMDA添付文書[参考資料6])、AVLAYAHの記載は事実(FDA添付文書[参考資料5]、承認日と審査区分は Drugs@FDA[参考資料7])。効能・効果の範囲、用法・用量、臨床成績、安全性は製品ごとに異なり、本記事では比較しません。

迅速承認とは何か(AVLAYAHの添付文書の記載)

添付文書には、「この効能は、脳脊髄液中のヘパラン硫酸の減少にもとづき、迅速承認のもとで承認された。この効能に対する承認の継続は、検証試験における臨床的有用性の検証と記述に依存する可能性がある」と記載されています事実。

根拠となった試験(Trial 1、NCT04251026)は、47人の小児患者を対象とした第1/2相の多施設・多コホート・単群・非盲検試験で、 24週時点に測定のあった44人で、脳脊髄液中ヘパラン硫酸のベースラインからの平均減少率は91%(95%信頼区間 89%〜92%)でした事実。 対照群のない単群試験であること、代替指標(バイオマーカー)による評価であることに留意してください。

同じ受容体を使い、同じ酵素を運ぶのに、担体の構造が違う。 一方は抗体まるごと、もう一方はFcだけを使っています事実。 運ぶ部分をどこまで削るかは、設計の選択肢になっているということです(本記事による解説)。

9. 本稿の計算:運ぶ側の質量と、担体の大きさを比べる

まず、添付文書に書かれている数字

イズカーゴ点滴静注用10mg(1バイアル中)事実

  • 有効成分:パビナフスプ アルファ 12.5 mg(調製時の損失を考慮し、10 mgを注射可能な量として確保するための過量充填)
  • 添加剤:塩化ナトリウム 2.0 mg/精製白糖 187.5 mg/リン酸二水素ナトリウム水和物 5.34 mg/リン酸水素ナトリウム水和物 5.64 mg/ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール 0.8125 mg/水酸化ナトリウム・塩酸 適量

AVLAYAH(1バイアル中)事実

  • 有効成分:tividenofusp alfa-eknm 150 mg
  • 添加剤:リン酸水素二ナトリウム 5 mg/メチオニン 7.5 mg/リン酸二水素ナトリウム 7.7 mg/ポリソルベート20 3 mg/塩化ナトリウム 14.6 mg/スクロース 300 mg
本稿の計算

上の数字から換算します本稿の計算。

  • イズカーゴの添加剤合計:2.0+187.5+5.34+5.64+0.8125 = 201.29 mg(水酸化ナトリウム・塩酸は「適量」のため除く)
  • 添加剤/有効成分:201.29 ÷ 12.5 = 約16倍
  • 精製白糖が添加剤に占める割合:187.5 ÷ 201.29 = 約93%
  • 過量充填の割合:12.5 ÷ 10 = 1.25倍(25%の過量充填)
  • AVLAYAHの添加剤合計:5+7.5+7.7+3+14.6+300 = 337.8 mg。337.8 ÷ 150 = 約2.3倍
  • スクロースが添加剤に占める割合:300 ÷ 337.8 = 約89%
  • 担体の大きさの比:300,000 ÷ 110,000 = 約2.7倍(イズカーゴの分子量はPMDA記載の約300,000、AVLAYAHはFDA記載の約110 kDa)

前提と限界:バイアルあたりの量であり、1回の投与量ではありません。 「適量」とされている成分は合計に含めていません。 分子量はいずれも添付文書の概数で、糖鎖の量によって変わります。 これらは製剤の組成を材料の観点から見るためのもので、効果や安全性、投与量を論じるものではありません。

バイアル1本の中身を質量で見る(本稿の計算) 帯の長さは質量に比例。添加剤のうち糖が占める割合に注目 イズカーゴ点滴静注用10mg(有効成分 12.5 mg/添加剤 201.29 mg) 精製白糖 187.5 mg(添加剤の 約93%) 有効成分 塩・緩衝剤ほか AVLAYAH(有効成分 150 mg/添加剤 337.8 mg) 有効成分 150 mg スクロース 300 mg(添加剤の 約89%) 塩・緩衝剤ほか 添加剤/有効成分 約16倍 と 約2.3倍 どちらも最大の添加剤は糖(本稿の計算) 担体の分子量 約300,000 と 約110 kDa 比は 約2.7倍(本稿の計算) ※ 組成と分子量は PMDA添付文書[参考資料6]および FDA添付文書[参考資料5]の記載値です。 ※ 合計・倍率・百分率は本記事が算出した値で、公表値ではありません。「適量」とされる成分は含めていません。 ※ バイアルあたりの量であり、1回の投与量ではありません。効果や安全性を比べるものでもありません。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。組成と分子量は PMDA添付文書[参考資料6]と FDA添付文書[参考資料5]によります。合計・倍率・百分率は本記事が算出した値で、公表値ではありません。バイアルあたりの量であり、投与量ではありません。効果や安全性の比較ではありません。

10. 素材技術者の視点②:凍結乾燥品の中身は、ほとんどが糖である

素材技術者の読みどころ:賦形剤は「かさ増し」ではなく構造材

第9章の計算で目を引くのは、どちらの製品も、添加剤の約9割が糖だという点です本稿の計算。 イズカーゴは精製白糖 187.5 mg、AVLAYAHはスクロース 300 mg事実。

どちらも凍結乾燥製剤です事実。 イズカーゴの添付文書は性状を「白色の塊又は粉末(凍結乾燥製剤)」、 AVLAYAHの添付文書は「白色〜灰白色の、ケーキ状の外観をもつ凍結乾燥粉末」と記しています事実。

「ケーキ」という表現がそのまま示しているとおり、これは多孔質の固体です。 糖はその骨格をつくる構造材であり、同時に凍結と乾燥の応力からタンパク質を守る保護材でもあります(本記事による解説)。 本シリーズ「mRNA」編では、スクロースが凍結保護剤として最大の質量を占めることを扱いました。 剤形が違っても、糖が最大成分という構図は共通しています。

界面活性剤の量にも注目してください。イズカーゴはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール 0.8125 mg、 AVLAYAHはポリソルベート20 3 mg事実。 いずれも1 mg前後から数mgという微量です。 タンパク質が界面(気液界面・容器壁)で変性・凝集するのを抑えるための量であり、 濡れ性や分散を目的とした量ではない——同じ界面活性剤でも、狙いが違えば桁が違います(本記事による解説)。

さらに、イズカーゴの添付文書には「本剤は、調製時の損失を考慮し、1バイアルからパビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)10mgを注射可能な量として確保するために過量充填されている」と明記されています事実。 25%の過量充填本稿の計算——容器に残る分、移し替えで失われる分を、あらかじめ製造側が見込んでいるということです。 溶液を移し替える工程をもつ製品では、容器・栓・針の設計が歩留まりに直結することの表れです(本記事による解説)。

11. そもそも越えない、という選択 ― 髄腔内・脳室内投与

BBBを越える工夫とは別に、壁の内側に直接入れてしまうという方法もあります。 これも承認された製品があります。以下は投与経路の事実のみを記載します。

製品(一般名)種類投与経路(添付文書の記載)米国での初回承認
SPINRAZA
(nusinersen)
修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(2′-MOE、ホスホロチオエート)髄腔内投与(intrathecal)2016年12月23日(優先審査)
QALSODY
(tofersen)
20塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチド(5-10-5 MOEギャップマー)髄腔内投与2023年4月25日(優先審査)
BRINEURA
(cerliponase alfa)
CHO細胞で生産した組換えヒトトリペプチジルペプチダーゼ-1(544アミノ酸、平均59 kDa)脳室内投与(intraventricular)2017年4月27日(優先審査)

すべて事実(FDA添付文書[参考資料8〜10]、承認日と審査区分は Drugs@FDA[参考資料11〜13])。効能・効果、用法・用量、臨床成績、安全性は本記事では扱いません。核酸医薬そのものは本シリーズ「核酸医薬」編で扱います。

壁に対する3つの向き合い方(本記事による整理) ① そのまま投与する ② 受容体に便乗して越える ③ 壁の内側に直接入れる 大きな分子は通らない 脳への集積が制限される TfRに結合させて トランスサイトーシスで越える 髄腔内投与・脳室内投与 越える工程そのものを省く ※ ①は Yu ら(2011)[参考資料3]、②は FDA添付文書[参考資料5]と PMDA添付文書[参考資料6]、③は FDA添付文書[参考資料8〜10]によります。 ※ 3つに整理したのは本記事によるもので、BBBに対するすべての方法を網羅したものではありません。 ※ 図は模式で、実際の投与方法・分布・粒子の数を示すものではありません。投与経路の選択は本記事の扱う範囲ではありません。
図5 概念図(ベクター作図)。①は Yu ら(2011)[参考資料3]、②は FDA添付文書[参考資料5]と PMDA添付文書[参考資料6]、③は FDA添付文書[参考資料8〜10]によります。3つに整理したのは本記事によるもので、すべての方法を網羅したものではありません。図は模式で、投与方法や分布を示すものではありません。

12. どう評価するか ― 細胞モデルから、承認の判断材料まで

BBBを越えるかどうかを、開発のどの段階で、何を使って測るのか。公表資料から確認できる範囲で整理します。

段階使われているもの出典に書かれていること
細胞モデル初代細胞または不死化脳内皮細胞株にもとづく培養モデルHelmsらは、これらが「脳への薬物輸送の in vitro 研究や、内皮細胞の生物学・病態生理の研究を容易にするために開発されてきた」とし、確立されたBBBの特性に照らした検証(validation)という観点から既存モデルを概観している。そのうえで「理想的なBBBの細胞培養モデルはまだ開発されていない」と述べている
分子の探索脳内皮細胞のトランスクリプトーム・プロテオーム解析Zucheroらは、単離したマウス脳内皮細胞のプロテオーム解析から高発現タンパク質を同定し、それらに対する抗体の脳内濃縮を生体内で確認した
動物での確認マウスでの全身投与後の脳内分布、疾患モデル動物Yuらは投与24時間後の脳内分布を評価。イズカーゴの添付文書は、ムコ多糖症Ⅱ型モデルマウスへの反復静脈内投与で脳脊髄液・脳・血清・心臓・肝臓・脾臓中のGAGの減少が認められたと記載
ヒトでの指標脳脊髄液(CSF)中のバイオマーカーAVLAYAHの迅速承認はCSF中ヘパラン硫酸の減少にもとづく。添付文書は「現在利用可能な生体分析法では、ヒトのCSFまたは尿中の無傷のHSまたはDSの濃度を直接定量することはできない」とし、酵素消化後の特定の二糖の評価にもとづいて相対濃度を推定していると記載。また「生体分析法の違いにより、他の臨床試験の結果との意味のある比較はできない」とも記載

すべて事実(Helms ら 2016[参考資料4]、Zuchero ら 2016[参考資料14]、Yu ら 2011[参考資料3]、PMDA添付文書[参考資料6]、FDA添付文書[参考資料5])。

素材技術者の読みどころ:「直接測れない」ことを、規制文書が明記している

AVLAYAHの添付文書にある「無傷のHSまたはDSの濃度を直接定量することはできない」という一文は、 材料分析に携わる者にとって見逃せません事実。

測っているのは酵素で切ったあとの特定の二糖であり、そこから相対濃度を推定している。 さらに「生体分析法の違いにより、他の臨床試験の結果との意味のある比較はできない」と釘が刺されています事実。

分析法が違えば、同じ名前の指標でも数値は比較できない。 高分子の分子量測定や、表面の官能基定量でも同じことが起きます(本記事による解説)。 その限界を、承認文書の側が明示的に書いているという点が、規制産業に材料を供給するうえで参考になります。

13. 課題と、確定していないこと

(1) 迅速承認は「検証中」の状態である

AVLAYAHの効能はCSF中ヘパラン硫酸の減少にもとづく迅速承認であり、添付文書自身が 「この効能に対する承認の継続は、検証試験における臨床的有用性の検証と記述に依存する可能性がある」と記しています事実未確定/将来。

(2) TfR以外の受容体を使った承認製品は確認できなかった

Zucheroらが示したCD98hc、ベイシジン、Glut1はいずれもマウスでの報告です事実。 これらを利用したヒト用の製品が承認されたことを示す一次情報は、本稿の調査範囲では確認できませんでした未確定/将来。

(3) ナノ粒子によるBBB通過は本稿では扱っていない

リポソームや脂質ナノ粒子を用いて脳へ送達する研究は数多く報告されていますが、 本稿の調査範囲では、BBBを越えて脳実質へ送達することを添付文書に明記した承認済みのナノ粒子製剤を確認できなかったため、記載していません。 ナノ粒子そのものは本シリーズ「DDSと標的化」編と「脂質ナノ粒子」編で扱っています。

この記事のまとめ
  • BBBは、タイトジャンクションによる物理的な壁と、輸送体・小胞による輸送の壁でできています事実
  • 実用化された抜け道は、受容体介在性トランスサイトーシスです。承認された2製品はどちらもトランスフェリン受容体を使っています事実
  • 受容体への親和性は、下げたほうが脳へ移行するというマウスの報告があります事実
  • 受容体の候補は「発現量」で選ばれるようになりました。量が足りなければ輸送量は出ません事実
  • 同じ受容体・同じ酵素でも、担体は抗体まるごととFcだけの2通りがあります。分子量の比は約2.7倍です本稿の計算
  • 凍結乾燥品の添加剤は、約9割が糖です本稿の計算

14. 用語集

血液脳関門(BBB)
脳の毛細血管内皮がつくる、血液と脳の間の壁。物質の出入りを厳しく制限する。
タイトジャンクション
隣り合う細胞どうしを隙間なく密着させる構造。物理的な壁の実体。
内皮細胞
血管の内側を覆う細胞。脳ではこれがBBBの主役になる。
アストロサイト
脳のグリア細胞の一種。足突起が血管を取り巻く。
ペリサイト
毛細血管の外側に張りつく細胞。BBBの機能に関わる。
神経血管ユニット
脳微小血管・アストロサイト・ニューロンが連携して働くという捉え方。
トランスサイトーシス
細胞の片側から小胞で取り込み、反対側へ放出する輸送。
RMT
受容体介在性トランスサイトーシス。受容体に結合させて細胞を通り抜けさせる方法。
トランスフェリン受容体(TfR)
鉄を運ぶタンパク質を取り込む受容体。BBB越えの「乗り物」として使われる。
親和性
結合の強さ。BBB越えでは、強すぎると離れず脳へ出ていかない。
二重特異性抗体
2種類の相手に結合できる抗体。片方で運び、片方で働く設計に使う。
Fc
抗体の定常領域側の断片。受容体との相互作用や体内滞留に関わる。
融合タンパク質
異なるタンパク質を遺伝子レベルでつないで、ひとつの分子として作ったもの。
髄腔内投与
脊髄を包む空間に直接投与する方法。BBBを越える必要がなくなる。
脳室内投与
脳室に直接投与する方法。
迅速承認
代替指標にもとづく米国の承認制度。検証試験での確認が前提となる。
凍結乾燥製剤
凍結して水を昇華させた固形製剤。使用時に溶かす。糖が骨格と保護を担う。

15. 参考資料(一次情報)

  1. Abbott, N.J., Patabendige, A.A.K., Dolman, D.E.M., Yusof, S.R., Begley, D.J.「Structure and function of the blood-brain barrier」Neurobiology of Disease 37(1), 13–25 (2010). doi:10.1016/j.nbd.2009.07.030 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. Abbott, N.J., Rönnbäck, L., Hansson, E.「Astrocyte-endothelial interactions at the blood-brain barrier」Nature Reviews Neuroscience 7(1), 41–53 (2006). doi:10.1038/nrn1824 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. Yu, Y.J. ほか「Boosting brain uptake of a therapeutic antibody by reducing its affinity for a transcytosis target」Science Translational Medicine 3(84), 84ra44 (2011). doi:10.1126/scitranslmed.3002230 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  4. Helms, H.C. ほか「In vitro models of the blood-brain barrier: An overview of commonly used brain endothelial cell culture models and guidelines for their use」Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 36(5), 862–890 (2016). doi:10.1177/0271678X16630991 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  5. FDA/NLM DailyMed「AVLAYAH (tividenofusp alfa-eknm) 添付文書」 — dailymed.nlm.nih.gov
  6. PMDA「イズカーゴ点滴静注用10mg 添付文書」(JCRファーマ、承認番号 30300AMX00260000)(PDF) — pmda.go.jp
  7. FDA Drugs@FDA「BLA 761485 AVLAYAH」承認履歴 — accessdata.fda.gov
  8. FDA/NLM DailyMed「SPINRAZA (nusinersen) 添付文書」 — dailymed.nlm.nih.gov
  9. FDA/NLM DailyMed「QALSODY (tofersen) 添付文書」 — dailymed.nlm.nih.gov
  10. FDA/NLM DailyMed「BRINEURA (cerliponase alfa) 添付文書」 — dailymed.nlm.nih.gov
  11. FDA Drugs@FDA「NDA 209531 SPINRAZA」承認履歴 — accessdata.fda.gov
  12. FDA Drugs@FDA「NDA 215887 QALSODY」承認履歴 — accessdata.fda.gov
  13. FDA Drugs@FDA「BLA 761052 BRINEURA」承認履歴 — accessdata.fda.gov
  14. Zuchero, Y.J.Y. ほか「Discovery of Novel Blood-Brain Barrier Targets to Enhance Brain Uptake of Therapeutic Antibodies」Neuron 89(1), 70–82 (2016). doi:10.1016/j.neuron.2015.11.024 — pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  15. ClinicalTrials.gov「NCT04251026:A Study of Tividenofusp Alfa (DNL310) in Pediatric Participants With Hunter Syndrome」 — clinicaltrials.gov

16. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
CNSにおける神経シグナル伝達には高度に制御された微小環境が必要であること。血液とCNSの間に血液脳関門・血液脳脊髄液関門・クモ膜関門の3つの界面があること。脳微小血管の内皮レベルのBBBが血液とCNSの交換の主要な場であること。内皮細胞のタイトジャンクションによる物理的な壁と、膜輸送体および小胞機構による輸送の壁という区別。アストロサイトの足突起、ペリサイト、ミクログリアの関与。BBBが短期・長期の調節を受け病態で乱れうること。CNSを標的とする/避ける創薬・送達のプログラムがBBBの特殊性を考慮する必要があることAbbott ら(2010)要旨出典1 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19664713/事実
脳微小血管・アストロサイト・ニューロンが連携して機能的な「神経血管ユニット」を形成するという捉え方と、そのモジュール的組織化における脳内皮細胞の重要性Abbott ら(2006)要旨出典2 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16371949/事実
モノクローナル抗体がCNS疾患の治療の可能性をもつが脳への集積がBBBで制限されること。TfRへの親和性を下げることで抗TfR抗体の受容体介在性トランスサイトーシスが高まり、マウス脳内で治療上意味のある濃度に達すること。高親和性の抗TfR抗体はBBBに結合したままで、低親和性の変異体はBBBから脳へ放出され投与24時間後に広い分布を示すこと。TfRに低親和性・BACE1に高親和性の二重特異性抗体を設計し、単一特異性の抗BACE1抗体と比べて全身投与1回後にマウス脳へより多く集積し脳内Aβの減少が大きかったことYu ら(2011)要旨出典3 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21613623/事実
初代細胞または不死化脳内皮細胞株にもとづく培養モデルが、脳への薬物輸送の in vitro 研究や内皮細胞の生物学・病態生理の研究を容易にするために開発されてきたこと。確立されたBBBの特性に照らした検証という観点から既存モデルを概観していること。理想的なBBBの細胞培養モデルがまだ開発されていないことHelms ら(2016)要旨出典4 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26868179/事実
tividenofusp alfa-eknm が、酵素IDSをIgG1のFcのN末端に融合させた融合タンパク質であり、組換えDNA技術によりCHO細胞で生産され、分子量が約110 kDaであること。1バイアルに有効成分150 mgと、リン酸水素二ナトリウム5 mg・メチオニン7.5 mg・リン酸二水素ナトリウム7.7 mg・ポリソルベート20 3 mg・塩化ナトリウム14.6 mg・スクロース300 mgを含むこと。白色〜灰白色のケーキ状の外観をもつ凍結乾燥粉末であること。FcがTfRの頂端ドメインに結合し受容体介在性トランスサイトーシスでBBBを越えてIDSを末梢組織とCNSへ送達すること、TfRが普遍的に発現しているため脳と末梢組織の細胞への取り込みに寄与すると期待されること。効能がCSF中ヘパラン硫酸の減少にもとづく迅速承認であり、承認の継続が検証試験における臨床的有用性の検証と記述に依存する可能性があること。Trial 1(NCT04251026)が47人の小児患者を対象とした第1/2相の多施設・多コホート・単群・非盲検試験であること、24週時点に測定のあった44人でCSF中HSのベースラインからの平均減少率が91%(95%CI 89%〜92%)であったこと。無傷のHS/DSの濃度を直接定量できず、酵素消化後の特定の二糖の評価にもとづいて相対濃度を推定していること、生体分析法の違いにより他の臨床試験の結果との意味のある比較はできないことFDA AVLAYAH 添付文書出典5 https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=014d92c1-b643-4680-8ca6-f0b3307da915事実
パビナフスプ アルファが、ヒト化抗ヒトトランスフェリン受容体モノクローナル抗体とヒトイズロン酸-2-スルファターゼからなる遺伝子組換え融合糖タンパク質(分子量 約300,000)であり、CHO細胞により産生されること。219アミノ酸のA鎖2本と975アミノ酸のB鎖2本からなり、B鎖が抗体H鎖(γ1)・リンカー・酵素から構成されること。末梢ではカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体とTfRを介して取り込まれ、TfRを介したトランスサイトーシスによってBBBを通過し脳実質の細胞にも取り込まれること。ムコ多糖症Ⅱ型モデルマウスへの反復静脈内投与でCSF・脳・血清・心臓・肝臓・脾臓中のGAGの減少が認められたこと。効能又は効果がムコ多糖症Ⅱ型であること。1バイアル中の組成(有効成分12.5 mg、塩化ナトリウム2.0 mg、精製白糖187.5 mg、リン酸二水素ナトリウム水和物5.34 mg、リン酸水素ナトリウム水和物5.64 mg、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール0.8125 mg、水酸化ナトリウム・塩酸 適量)。10 mgを注射可能な量として確保するための過量充填であること。性状が白色の塊又は粉末(凍結乾燥製剤)であること。承認番号が30300AMX00260000であり、引用文献に2021年3月23日承認と記載されていることPMDA イズカーゴ点滴静注用10mg 添付文書出典6 https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530210_3959424D1023_1_03事実
AVLAYAH(BLA 761485、Denali Therapeutics)が2026年3月24日に承認されたこと、優先審査かつ新有効成分(Type 1)であることDrugs@FDA出典7 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=761485事実
nusinersen が2′-O-(2-メトキシエチル)修飾とホスホロチオエート結合をもつアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、髄腔内投与されることFDA SPINRAZA 添付文書出典8 https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=dd70cd5f-b0fc-4ba4-a5ea-89a34778bd94事実
tofersen が20塩基の5-10-5 MOEギャップマー型アンチセンスオリゴヌクレオチドであり、髄腔内投与されることFDA QALSODY 添付文書出典9 https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=81356b45-1cb7-4eef-88ea-e44cc18b47c5事実
cerliponase alfa がCHO細胞で生産された組換えヒトトリペプチジルペプチダーゼ-1(544アミノ酸、平均59 kDa)であり、脳室内投与されることFDA BRINEURA 添付文書出典10 https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=485ab3c5-0359-4878-872f-2fe1e7df4047事実
SPINRAZA(NDA 209531)が2016年12月23日に優先審査で承認されたことDrugs@FDA出典11 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=209531事実
QALSODY(NDA 215887)が2023年4月25日に優先審査で承認されたことDrugs@FDA出典12 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=215887事実
BRINEURA(BLA 761052)が2017年4月27日に優先審査で承認されたことDrugs@FDA出典13 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=761052事実
トランスクリプトームとプロテオームのプロファイリングで、抗体をBBBを越えて輸送するために利用しうるマウス脳内皮細胞のタンパク質を探索したこと。タンパク質の存在量が限られているため、文献で挙げられてきた標的やマイクロアレイで同定されたBBB濃縮タンパク質に対する抗体は脳への取り込みを有意に促進しなかったこと。単離したマウス脳内皮細胞のプロテオーム解析からベイシジン、Glut1、CD98hcを含む高発現タンパク質を同定し、これらに対する抗体が生体内投与後に脳で有意に濃縮されたこと。CD98hcに対する抗体が全身投与後に脳へ確かな蓄積を示し、脳内Aβの減少として測定される有意な薬力学的応答を示したことZuchero ら(2016)要旨出典14 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26687840/事実
NCT04251026 が「A Study of Tividenofusp Alfa (DNL310) in Pediatric Participants With Hunter Syndrome」であり、実登録数47人であることClinicalTrials.gov出典15 https://clinicaltrials.gov/study/NCT04251026事実
イズカーゴの添加剤合計 201.29 mg、添加剤/有効成分 約16倍、精製白糖が添加剤の約93%、過量充填 1.25倍(25%)。AVLAYAHの添加剤合計 337.8 mg、添加剤/有効成分 約2.3倍、スクロースが添加剤の約89%。担体の分子量の比 300,000 ÷ 110,000 = 約2.7倍本稿の計算。添付文書の記載値を単純に合算・除算したもの。「適量」とされる成分は合計に含めていない。バイアルあたりの量であり1回の投与量ではない。分子量は概数で糖鎖の量によって変わる。効果や安全性、投与量を論じるものではない本稿の計算
AVLAYAHの迅速承認が検証試験の結果に依存しうること。CD98hc・ベイシジン・Glut1 を利用したヒト用製品の承認状況添付文書自身が検証試験への依存を記載している。CD98hc等を利用した製品の承認を示す一次情報は、本稿の調査時点(2026年9月)で確認できなかった未確定/将来
BBBを越えて脳実質へ送達することを添付文書に明記した承認済みのナノ粒子製剤本稿の調査範囲では確認できなかったため記載していない解説
「細胞の中を通るしかない」という整理。RMTを「もともとある物流路に荷物を載せてもらう」と表現したこと。親和性の設計を転写フィルムや離型剤になぞらえたこと。受容体探索が「機能から探す」から「発現量から探す」へ切り替わったという読み取りと、活性点密度・官能基密度になぞらえたこと。糖を凍結乾燥品の構造材・保護材と位置づけたこと。界面活性剤の量の桁が目的によって違うという読み取り。過量充填から容器・栓・針の設計が歩留まりに直結すると読んだこと。分析法が違えば同じ指標でも比較できないという整理。壁への向き合い方を3つに整理したこと公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各論文の著者や規制当局が表明した見解ではない解説
各製品の効能・効果、用法・用量、臨床成績、安全性の評価と製品間の比較本記事は材料技術・製剤技術の解説であり、治療の効果や安全性の評価・比較は行っていない。承認製品については規制当局の公表資料に記載のある構造・組成・承認の内容のみを引用した。第8章のCSF中ヘパラン硫酸の数値は、対照群のない単群試験の代替指標としてFDA添付文書に記載されたものである解説
図1・図3〜図5が実際の組織・細胞・分子ではなく説明のための作図であること。ヒーロー画像と図2がAI生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年9月26日/出典は一次情報(FDA承認添付文書、Drugs@FDA、PMDA添付文書、ClinicalTrials.gov、査読論文)に限定しています。 材料・製剤設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 親和性と脳内移行の関係、受容体の探索、疾患モデルでの結果は、いずれも動物実験の値であり、ヒトでの値ではありません。AVLAYAHの効能は代替指標にもとづく迅速承認であり、承認の継続は検証試験に依存する可能性があると添付文書に記載されています。TfR以外の受容体を利用した承認製品、BBB通過を明記した承認済みナノ粒子製剤については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 本記事は材料技術・製剤技術の解説であり、治療の効果・安全性を評価したり製品を比較したりするものではなく、医療上の助言でもありません。 図はすべて説明用の概念図です。図1・図3〜図5はベクター作図、ヒーロー画像と図2はAI生成イメージであり、いずれも実際の組織・細胞・分子・製品の写真ではありません。