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ASCO|創薬・DDS 機関解説

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INSTITUTION PROFILE / 創薬・DDS

ASCO
― 抗がん剤の第III相試験の結果が「世界に同時に」公開される臨床腫瘍学会

ASCO(米国臨床腫瘍学会)は、がんの患者を診る医師や医療者が中心の学会です。 薬を承認する権限はありませんが、毎年6月前後にシカゴで開く年次総会は、 抗がん剤の後期臨床試験の結果が初めて公開される場として、製薬企業の開発発表の日程を左右します。 さらにASCOは、承認された薬や検査をどう使うかを示す診療ガイドラインも作っています。 本稿では、ASCOが創薬・DDSにどこまで影響を持つのかを、年次総会・学術誌・診療ガイドラインの3つの経路から整理します。

構成:ASCOの公式サイト(概要、会員、年次総会、Late-Breaking抄録の規定、抄録の公開規定、診療ガイドラインとその方法論、学術誌)と2026年年次総会のニュースリリースを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるASCO
  2. どんな機関か ― 影響力の「型」
  3. 創薬・DDSで何をしているか
  4. 影響力の範囲(権限と地域)
  5. 関わっている企業・組織
  6. 今後の見通し
  7. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるASCO

正式名称American Society of Clinical Oncology日本語では米国臨床腫瘍学会
国米国ニュースリリースの発信地はバージニア州アレクサンドリア
機関の種類学術・教育団体(非営利)米国の税法上の公益慈善団体
設立1964年関連財団Conquer Cancerが研究を助成
人数規模会員5万人超約3分の1が米国外の会員
年次総会の規模参加者4万4,000人超2025年、166の国から。2026年は抄録7,000件超
創薬・DDSへの関与臨床データの発表の場+診療指針Late-Breaking抄録、JCO、ガイドライン
影響が及ぶ範囲世界の腫瘍内科医と企業承認や規制の権限はない
まず押さえるべき1点

ASCOに提出された抄録は、ASCOが公開するまで秘密扱い(エンバーゴ)で、 研究の依頼者(企業)を含む関係者は、公開前にその情報を明かすことも、証券取引に使うことも禁じられています 事実。 つまり、抗がん剤を開発する企業にとってASCOは、重要な試験結果をいつ・どの形で世界に出すかを決める節目です。 ただし、承認するかどうかを決めるのは各国の規制当局で、ASCO自身は承認に直接の権限を持ちません。

2. どんな機関か ― 影響力の「型」

創薬・DDSの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では薬を売りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。

創薬・DDSを動かす「機関」の4つの型 機関は自分では薬を売らない。どの経路で業界に影響を与えるかで4つに分かれる 資金を出す 政策・規制を決める 標準を決める 場をつくる 研究開発に予算を配る 承認審査・ガイダンス 技術ガイドラインの調和 学会・臨床データ発表 NIH FDA/EMA/PMDA/NMPA ICH AACR/ASCO 何を研究させるか 何を売ってよいか どう試験し、どう申請するか どのデータを誰が見るか 届く範囲=自国の予算 届く範囲=自国の市場 届く範囲=加盟当局 届く範囲=参加者 ASCOは右端の「場をつくる」型。後期臨床試験の結果と、薬の使い方の指針が集まる AACRが基礎から臨床までを扱うのに対し、ASCOは患者を診る医師の側に軸足がある
図1 創薬・DDSに関わる機関の4つの型と、ASCOの位置。区分は本稿によるもので、機関名は本シリーズで扱う8機関から例示しています 本稿の計算。ASCOの診療ガイドラインは医師向けの推奨で、規制当局の技術基準とは性格が違うため「標準」の型には入れていません。

3. 創薬・DDSで何をしているか

ASCOの創薬への関わり方は、年次総会、学術誌、診療ガイドラインの3つに分けられます 事実。

活動規模中身創薬・DDSとの関係
年次総会(2026年)5月29日〜6月2日、シカゴとオンライン
抄録7,000件超
通常の抄録は5月21日に公開。Late-Breaking抄録(LBA)は発表当日の朝7時(米中部時間)に公開プレナリーのLBA5件(LBA1〜5)はいずれも第III相試験で、アパルタミド、アベマシクリブ、セルペルカチニブ、イボネスシマブ、RAS(ON)阻害薬ダラキソンラシブの結果
Late-Breaking抄録の制度2026年は、枠の申請期限1月27日、データの提出期限3月9日締切時点で予備データがない無作為化第II相・第III相試験などが対象。まず結果欄のない抄録で枠を確保し、あとからデータを出す企業は試験の解析日程を、この締切に合わせて組むことができる
学術誌Journal of Clinical Oncology(JCO)とJCO系の各誌JCO Precision Oncology、JCO Global Oncology、JCO Oncology Practice など第III相試験の本論文の掲載先の一つ。学会発表と論文の同時掲載は、著者が雑誌と調整する
診療ガイドライン病気別・治療手段別の推奨患者支援団体を含む多職種の専門家委員会が作成。GRADEで根拠を評価し、企業との利益相反に上限を設ける。ASCO主導の作成費用はASCOが負担承認された薬や検査をどう使うかを医師に示す。2022年にはがん領域のバイオシミラーの使用に関する報告書も公表
創薬の視点:LBAは「承認」ではなく「最初の公開」

ASCOはLBAの対象を、診療を変えうる(practice-changing)重要な結果に絞っています。 ただし、学会での発表は規制当局の審査を経たものではなく、承認申請は企業が別に行います。 流れとしては、(1) 年次総会で結果を初公開し、(2) 論文として査読を受け、(3) 規制当局が承認を判断し、 (4) 承認された使い方をASCOなどの診療ガイドラインが取り込む、という順番になります 本稿の計算。 個々のLBAがその後どの国でいつ承認されたかは、本稿では追跡していません 未確定/将来。

4. 影響力の範囲(権限と地域)

観点ASCOが持っているもの持っていないもの
権限年次総会の演題の採否、LBAの認定、公開の日時(エンバーゴ)を決める権限。診療ガイドラインの推奨を決める権限薬の承認・安全対策・保険償還を決める権限。ガイドラインを医師に強制する権限
地域本拠は米国。会員の約3分の1は米国外で、2025年の年次総会は166の国から参加。資源の違いを考慮した「Global Guidelines」も作成各国の診療ガイドラインや保険制度を直接変える権限
対象腫瘍内科医など医療者、臨床試験を行う企業・研究グループ、報道機関(認定記者向けの事前説明会)がん以外の分野
規模会員5万人超、理事20人、常設委員会 約30職員数と財務の数値は本稿では確認していない
数字の読み方の注意

「参加者4万4,000人超・166の国」は2025年の年次総会の数字で、ASCOの年次総会の頁に掲載されています。 2026年の参加者数は、本稿で確認した公式ページには載っていませんでした 未確定/将来。 また、会員が住む国の数は、概要の頁では150以上、会員の頁では170以上と書かれていて一致しません 事実。

5. 関わっている企業・組織

抗がん剤の臨床データはASCOでどう公開されるか 企業・研究グループが抄録を出し、ASCOが採否と公開日時を決め、指針に取り込む 発表する側:企業・研究グループ 公開まで秘密扱い・証券取引への利用も禁止 支える側:2026年のPlatinum協賛者 Daiichi Sankyo/Genentech/J&J/Novartis ASCO(米国臨床腫瘍学会) 演題の採否・LBAの認定・公開日時の管理 年次総会2026 5月29日〜6月2日・シカゴ 学術誌(JCO系) 査読を経た本論文 診療ガイドライン 承認された薬・検査の使い方 2026年の発表 抄録 7,000件超 プレナリーLBA 5件(第III相) LBAは発表当日の朝に公開 主な学術誌 Journal of Clinical Oncology JCO Precision Oncology 同時掲載は著者が雑誌と調整 作り方 GRADEで根拠を評価 企業との利益相反に上限 作成費用はASCOが負担
図2 ASCOを通じた抗がん剤の臨床データの公開の流れ。出典:2026年年次総会のニュースリリース、抄録の公開規定、年次総会の頁(協賛者)、学術誌の頁、ガイドラインの方法論の頁。協賛者はPlatinumの区分の4社を示しました 本稿の計算。年次総会はASCOの関連財団Conquer Cancerを通じた寄付で運営されています。

2026年年次総会の協賛者(本シリーズの企業解説の候補にあたるもの)

協賛の区分(ASCOの表記)企業読み方の注意
Sponsorship Donors(Platinum)Daiichi Sankyo、Novartis(ほかにGenentech、Johnson & Johnson)最上位の区分。金額は公表されていない
Sponsorship Donors(Gold・Silver)Bristol Myers Squibb(Gold)、Gilead and Kite・Lilly(Silver)Silverには他にHELSINN
Annual Meeting Track DonorsMerck & Co.(Conqueror)、AstraZeneca・BioNTech・Daiichi Sankyo・Lilly・Novartis(Visionary)分野別の枠への寄付

※協賛は学会の運営を支えるもので、演題の採否とは別の手続きです。ASCOのガイドライン作成では、委員が企業と持てる金銭的関係に上限が設けられています。

6. 今後の見通し

読み取れること根拠となる一次情報区分
抗がん剤を開発する企業は、重要な第III相試験の解析と公表の日程をASCOの締切とエンバーゴに合わせて組み続ける2027年の年次総会は6月4〜8日(シカゴ)。抄録の締切は2027年1月26日、LBAの締切は3月8日。抄録は公開まで秘密扱いで証券取引への利用も禁止推測
新しい作用の仕組みの薬の第III相データが、今後もプレナリーLBAの中心になる2026年のプレナリーLBA5件はすべて第III相試験で、RAS(ON)阻害薬などを含む推測
ASCOの診療ガイドラインの影響は、資源の限られた国にもGlobal Guidelinesを通じて広がるASCOは資源の違いを考慮したGlobal Guidelinesを作成している推測

7. 用語集

LBA(Late-Breaking抄録)
通常の抄録の締切に間に合わない重要な結果を、枠だけ先に確保して後からデータを出す仕組み。発表当日の朝に公開される。
エンバーゴ
決められた日時まで内容の公開を禁じる取り決め。ASCOでは公開前の証券取引への利用も禁じている。
プレナリー
全参加者向けの全体会。年次総会で最も注目度の高い演題が選ばれる。
GRADE
研究の根拠の確かさと推奨の強さを評価する国際的な枠組み。ASCOのガイドライン作成で使われる。
無作為化試験
患者をくじ引きのように治療群に割り付けて比べる臨床試験。偏りの少ない比較ができる。

8. 出典

  1. ASCO About ASCO(1964年の設立)。 https://www.asco.org/about-asco
  2. ASCO ASCO Overview(会員5万人超、約3分の1が米国外で150以上の国、理事20人、常設委員会約30、Conquer Cancer、501(c)(3))。 https://www.asco.org/about-asco/asco-overview
  3. ASCO Membership(会員5万人超、約3分の1が米国外で170以上の国)。 https://www.asco.org/get-involved/membership
  4. ASCO ASCO Annual Meeting(2025年の参加者4万4,000人超・166の国、2027年の会期、2026年の協賛者の区分)。 https://www.asco.org/annual-meeting
  5. ASCO ニュースリリース「New Research Highlights Role of Lifestyle Factors, New Treatment Strategies in Cancer Care」(2026年4月30日。会期、抄録7,000件超、抄録とLBAの公開日時、プレナリーLBA1〜5)。 https://www.asco.org/about-asco/press-center/news-releases/new-research-highlights-lifestyle-treatment-strategies-2026-annual-meeting
  6. ASCO Late-Breaking Data Submission Guidelines(2026年の対象・締切・手順)。 https://www.asco.org/annual-meeting/abstracts-presentations/submission-details/late-breaking-data-submission-guidelines
  7. ASCO Abstract Policies - Frequently Asked Questions(秘密保持とエンバーゴ、証券取引への利用の禁止、企業の報道発表、同時掲載の調整)。 https://www.asco.org/annual-meeting/abstracts-presentations/abstract-policies-embargoes-exceptions/faqs
  8. ASCO Dates to Know(2027年の抄録とLBAの締切、2027年6月4〜8日の会期)。 https://www.asco.org/annual-meeting/dates-know
  9. ASCO Journal Articles(JCOとJCO系各誌の最新論文の一覧)。 https://www.asco.org/journals
  10. ASCO Guidelines(病気別・治療手段別の推奨、承認された医療製品の使い方、多職種の専門家委員会)。 https://www.asco.org/practice-patients/guidelines
  11. ASCO Guideline Methodology(GRADE、利益相反の上限、作成費用のASCO負担、Global Guidelines、2022年のバイオシミラー報告書)。 https://www.asco.org/practice-patients/guidelines/guideline-methodology

9. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
1964年の設立事実出典1 https://www.asco.org/about-asco
会員5万人超・約3分の1が米国外(150以上の国)、理事20人、常設委員会約30、Conquer Cancer、公益慈善団体事実出典2 https://www.asco.org/about-asco/asco-overview
会員の国の数を170以上とする記載事実出典3 https://www.asco.org/get-involved/membership
2025年の参加者4万4,000人超・166の国、2026年の協賛者の区分と企業事実出典4 https://www.asco.org/annual-meeting
2026年の会期、抄録7,000件超、抄録とLBAの公開日時、プレナリーLBA1〜5の内容、発信地事実出典5 https://www.asco.org/about-asco/press-center/news-releases/new-research-highlights-lifestyle-treatment-strategies-2026-annual-meeting
LBAの対象(無作為化第II相・第III相など)と2026年の締切事実出典6 https://www.asco.org/annual-meeting/abstracts-presentations/submission-details/late-breaking-data-submission-guidelines
抄録の秘密保持・エンバーゴ、証券取引への利用の禁止、同時掲載の調整事実出典7 https://www.asco.org/annual-meeting/abstracts-presentations/abstract-policies-embargoes-exceptions/faqs
2027年の会期と締切事実出典8 https://www.asco.org/annual-meeting/dates-know
JCOとJCO系各誌事実出典9 https://www.asco.org/journals
診療ガイドラインが承認された医療製品の使い方などを扱い、多職種の委員会が作成事実出典10 https://www.asco.org/practice-patients/guidelines
GRADE、利益相反の上限、作成費用のASCO負担、Global Guidelines、バイオシミラー報告書事実出典11 https://www.asco.org/practice-patients/guidelines/guideline-methodology
機関の4つの型の区分、発表から承認・指針までの流れの整理、図2の協賛者の抜粋本稿の計算本稿による整理
2026年の参加者数、個々のLBAのその後の承認状況、ASCOの職員数と財務の数値未確定/将来本稿で確認した公式ページに記載なし。本稿では推計しない
第6章の見通し3項目推測出典5・7・8・11からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はASCOの公式サイトとニュースリリースに基づきます。学会で発表された臨床試験の結果は、承認や診療での使用を意味するものではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。本稿は医療上の助言ではありません。