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Recursion Pharmaceuticals|創薬・DDS 企業解説

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COMPANY PROFILE / 創薬・DDS

リカージョン
― 自動化ラボで細胞の画像を大量に撮り、AIで薬の手がかりを探す「TechBio」

Recursion(リカージョン)は、米国ユタ州ソルトレイクシティに本社を置く臨床段階のAI創薬会社です。 自動化された実験室で週200万件を超える実験を回し、細胞の画像などの大量データをAIで解析して、薬の標的と候補化合物を探します。 2024年11月には英国のAI創薬会社Exscientiaと統合しました。 承認品はなく、2025年12月期は6億4,480万ドルの純損失ですが、 Roche・Genentech、Sanofiなどとの提携で累計5億ドル超の前払い金・マイルストーンを受け取っており、 自社で最も進んだREC-4881(家族性大腸腺腫症)は米FDAと承認申請への道筋を協議しています。 本稿では、この会社がAI創薬に何を投じ、誰と組み、何を目指しているかを、米国SECへの法定開示だけを使って整理します。

構成:2025年12月期 Form 10-K(2026年2月25日提出)、2026年6月期 Form 10-Q(2026年8月5日提出)、Form 8-K(2026年3月・4月・8月・9月提出)、ClinicalTrials.govを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるリカージョンと、創薬・DDSでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(売上は提携収入のみ。現金で見る)
  5. 創薬・DDSにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか
  9. 創薬・DDS分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるリカージョンと、創薬・DDSでの立ち位置

正式名称Recursion
Pharmaceuticals, Inc.
2013年11月設立。ブランド名は Recursion
本社米国ユタ州
ソルトレイクシティ
41 S Rio Grande Street
上場Nasdaq: RXRXクラスA普通株
この分野での区分創薬バイオテック
(AI創薬)
承認済みの製品はない
中心のモダリティ経口の低分子タンパク質分解誘導型(RBM39)も含む
最も進んだ自社品REC-4881
(第1b/2相)
家族性大腸腺腫症。FDAと登録への道筋を協議中
手元資金5億5,680万ドル現金・同等物・拘束性預金(2026年6月末)
人員600人弱2025年12月期10-K。同年6月に約20%削減
まず押さえるべき1点

創薬・DDSに関わる企業は、大きく製薬企業・創薬バイオテック・受託開発製造(CDMO・CRO)の3種類に分かれます。 Recursionは創薬バイオテックで、AI創薬を看板にする会社ですが、特徴は自前の実験設備でデータを「作る」ことにあります 事実。 10-Kによれば、自動化された高スループットの実験室で週200万件を超える実験を行い、細胞の顕微鏡画像(フェノミクス)、転写産物、タンパク質、化合物の合成データなどを蓄積しています。 このデータでAIを学習させるために、NVIDIAと協力して自社のスーパーコンピュータBioHive-2も構築しました。 「AIソフトを作る会社」でも「CROに実験を任せる会社」でもなく、実験工場と計算機の両方を自分で持つのがこの会社の立ち位置です。

2. ロゴと社名の表記について

Recursionのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトに掲載されている画像を img/recursion_logo.svg として設置しています。

表記の注意:法定開示上の会社名は Recursion Pharmaceuticals, Inc. ですが、会社自身は発表で単に Recursion と名乗り、 自らを「TechBio(テックバイオ)企業」と呼んでいます。日本語では「リカージョン」と表記します。 2024年に統合したExscientiaは現在Recursionの一部で、独立した会社としては存在しません。

公式サイト:https://www.recursion.com/

3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか

創薬・DDSに関わる企業の3つの類型 同じ「薬の会社」でも、薬づくりのどこを担うかがまったく違う 製薬企業 創薬バイオテック 受託開発製造・研究 探索から承認・販売まで自社で担う 新しいモダリティや手法で候補を作る 他社の薬の開発・製造を請け負う Eli Lilly/Novo Nordisk 第一三共/Pfizer ほか Alnylam/Arvinas Moderna/Insilico ほか Lonza/Samsung Biologics WuXi AppTec ほか 後期臨床と販売網の資金力 特定の技術基盤の深さ 設備と規制対応の量産力 特許切れで売上が急減しうる 後期開発の資金を提携に頼る 顧客の開発中止・政策の影響 Recursionは中央のAI創薬バイオテックで、自前の自動化ラボでデータを作っている 自社品は経口の低分子で、がんと希少疾患が中心。大手4社と組み、発見の段階から提携している
図1 創薬・DDSに関わる企業の3類型と、Recursionの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。Recursionが自動化ラボと自社スーパーコンピュータを持ち、自社品をがん・希少疾患に置くことは、2025年12月期 Form 10-K の記載に基づきます。

類型でいえば創薬バイオテック(AI創薬)で、自社品のモダリティは経口の低分子です 事実。 ただしRBM39を標的とするREC-1245は「分解誘導剤(degrader)」と位置づけられており、低分子でタンパク質を分解させる標的タンパク質分解の考え方も取り入れています。 自社の重点はがんと希少疾患、提携ではがん・神経・免疫などに広がります。 関連する基礎は、本シリーズの技術解説「AI創薬とスクリーニング」「標的タンパク質分解」で扱っています。

4. 会社の規模(売上は提携収入のみ。現金で見る)

数字は米国SECに提出された10-K・10-Q・決算リリース(8-K)によります(単位:千ドル) 事実。

指標(千ドル)2023年12月期2024年12月期2025年12月期2026年1〜6月
売上(提携収入と助成金)44,57558,83974,68114,143
研究開発費241,226314,421475,271177,510
一般管理費110,822178,184176,58976,124
純損失328,066463,661644,759四半期(4〜6月)で131,000
営業活動によるキャッシュ流出287,780359,174371,808―
項目2025年12月31日2026年6月30日
現金・同等物・拘束性預金7億5,390万ドル5億5,680万ドル
累積赤字―23億ドル
2026年の現金ベース営業費用の見通し3億7,500万ドル未満(2026年8月に3億9,000万ドル未満から引き下げ)
資金が続く見込み追加調達なしで2028年初めまで(会社の見通し)
ここで注意

2025年の研究開発費が前年から約1.5倍に増えたのは、2024年11月のExscientia統合で組織が大きくなった影響を含みます。 その後、会社は2025年6月に人員の約20%を削減し、臨床段階の3品目の開発を打ち切るなどの絞り込みを行いました 事実。 売上は製品の販売ではなく提携先からの研究収入で、10-Kは「収益の計上時期は現金の受け取り時期と直接対応しない」と書いています。 売上の増減よりも、手元資金と現金の減り方のほうが、この会社の実力を読む手がかりになります。

5. 創薬・DDSにかけているリソース

リソースの種類内容区分
人(人員)600人弱。生命科学者(化学者・生物学者など)が約35%、データ科学者やソフトウエア技術者などが約43%(2025年12月期10-K)事実
人(実験拠点)ソルトレイクシティ(本社。自動化された生物学の実験室。フェノミクス・転写産物のデータを生成)と、英国ミルトンパーク(約2万平方フィート。化学合成の自動化スタジオ)事実
人(その他の拠点)ロンドン・キングスクロス、ニューヨーク、モントリオール(子会社Valence Labs)事実
金(研究開発費)2025年12月期 4億7,527万ドル。2026年上期 1億7,751万ドル事実
金(設備投資)有形固定資産の取得 2025年 647万ドル(2024年 1,370万ドル)。統合後は旧Exscientiaの拠点を整理事実
計算資源NVIDIAと協力して構築した自社スーパーコンピュータ BioHive-2事実
買収・出資Exscientiaを統合(2024年11月、約1億210万株を発行)。ENPP1阻害薬の合弁の残り50%をRallyBioから取得(2025年7月)事実
導入(ライセンス)REC-4881は武田薬品の化合物TAK-733を導入したもの(2020年5月)。Tempusから患者の多層データのライセンスを受ける(2023年11月、2026年9月に改定)事実
大学・公的資金一部の知的財産は米国政府の資金による研究から生まれた可能性があると10-Kがリスクとして記載。英国の研究開発税額控除として2025年に2,860万ドルを受領(第2四半期)。個別の大学との共同研究契約は本稿の出典に記載なし事実
素材技術者の視点:AI創薬の「作る」工程を自動化する

10-Kは、ミルトンパークの化学自動化スタジオについて「1,000を超える化合物を合成・試験した」「2025年に自動化で実行できる反応の種類が4倍になり、通常は自動化されない14種類の反応も含む」と書いています 事実。 また設計の段階で原料(ビルディングブロック)の入手性と、複数のCROの物流まで考慮し、最も安く早い合成ルートを提案する「合成を意識した設計」をうたっています。 材料の立場から見ると、これはAI創薬の律速が計算ではなく合成と精製にあることを、会社自身が認めて手を打っているということです。 自動化しにくい反応(不均一系の反応、厳密な水分管理が必要な反応、固体の取り扱いなど)をどこまで機械に任せられるかが、設計から試験までの周期を決めます。

もう1つの素材は細胞です。Roche・Genentechとの提携で作った神経の地図は、社内で製造した1兆個を超えるiPS細胞由来の神経細胞の一部から作られ、ミクログリアの地図は1,000億個超のiPS細胞由来ミクログリアから作られたと会社は説明しています。 培地や培養容器などの消耗材を工業規模で安定して使いこなすことが、データの質を左右します。 使っている培地や資材の具体名は開示されていません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2013年11月設立細胞画像とAIによる創薬を掲げて出発
2020年5月武田薬品からTAK-733(のちのREC-4881)を導入。武田との共同研究の中で、APC遺伝子の機能を落とした細胞の表現型を戻す化合物として見つけた自社プラットフォーム発の「使い道」の発見
2022年1月Roche・Genentechと提携(前払い1億5,000万ドル)。Sanofiとも提携大手との発見段階からの共同研究
2023年11月Tempusとデータのライセンス契約患者の多層データを臨床開発に使う
2024年9月Roche・Genentechが神経細胞の地図を受け入れ(3,000万ドル)データそのものが収入になった
2024年11月Exscientiaと統合化合物設計と化学自動化の能力を取り込んだ
2025年5〜6月臨床品3つ(REC-2282、REC-994、REC-3964)の開発打ち切りまたは提携先探し。人員の約20%を削減選択と集中
2025年10月ミクログリアの地図をRoche・Genentechが受け入れ(3,000万ドル)―
2025年12月REC-4881の第1b/2相(TUPELO)の拡大データを公表会社は「Recursion OSの初の臨床での検証」と位置づけ
2026年3〜4月最高医療責任者にヴィッキー・グッドマン医師(元FDA審査官の経験を持つ)。創業者クリス・ギブソン氏は取締役を退任し顧問に(CEOはナジャット・カーン氏)経営陣の世代交代
2026年8月Genentechが神経領域の最初の標的のオプションを行使し、低分子の初期探索へ。REC-7735の治験許可(IND)を取得地図から標的が生まれた最初の例
2026年9月Tempusとの契約を改定し、自社のRNA基盤モデル(TxFM)をTempusにがん領域で非独占ライセンス(1,200万ドル)AIモデル自体を外部に出す初の例

主要な臨床試験

試験フェーズ・対象主要評価項目公表された結果(比較対照・評価時点)
TUPELO(REC-4881、NCT05552755)第1b/2相。家族性大腸腺腫症(FAP)第1部は体内動態、第2部は安全性とポリープ量の変化率比較対照のない単群試験。12週投与+12週休薬の集団で、ポリープ量の中央値の減少は13週時点43%、休薬後の25週時点53%。有害事象は主に軽度で、中止は4人。解析対象の人数は10-Kに記載なし
ELUCIDATE(REC-617)第1/2相。進行固形がん(CDK7阻害薬)用量漸増既治療の29人の単剤投与で、卵巣がんの1人に確定した部分奏効(2025年11月)。比較対照なし

上の結果は会社の開示を記したもので、本稿は治療の選択を勧めるものではありません。 いずれも承認されていない開発中の品目で、単群の初期試験の結果です 未確定/将来。 なお会社はFAPについて「市場規模は100億ドル超」と説明していますが、これは市場推計の数字であり、本稿では採用しません。

7. 今後の計画

REC-4881登録への道筋を
2026年下期に更新
FDAとの協議は2026年上期に開始
REC-7735第1/2相を
2026年下期に開始
PI3Kα H1047R変異を狙う。IND取得済み
資金の見通し2028年初めまで追加調達なしの場合(会社の見通し)
2026年の費用現金営業費用
3億7,500万ドル未満
2026年8月に引き下げ
品目標的・特徴段階(2026年9月時点)会社が示す次の節目
REC-4881MEK1/2阻害(経口、アロステリック)。FDAの希少疾病用医薬品・ファストトラック指定開発中(第1b/2相)追加データを2026年11月の学会で発表予定 未確定/将来
REC-7735PI3Kα H1047R変異体に100倍超の選択性IND取得、第1/2相(ZINNIA)準備中2026年下期に試験開始 未確定/将来
REC-1245RBM39の分解誘導剤開発中(第1相)用量漸増データを2026年下期 未確定/将来
REC-617CDK7阻害(非共有結合型)開発中(第1/2相)併用の安全性・体内動態データ 未確定/将来
REC-3565/REC-4539MALT1阻害/LSD1阻害開発中(第1相)2027年に初期データ 未確定/将来
提携(Sanofi)免疫・がんの低分子探索段階今後6〜12か月で開発候補のマイルストーンの可能性 未確定/将来
確認できなかったこと

次はいずれも10-K・10-Q・8-Kに記載がありません 未確定/将来。

REC-4881の承認申請の時期と、FDAが求める登録試験の設計/TUPELOの解析対象の人数(2025年12月の拡大データ)/ BayerとMerck KGaAとの提携の金額条件と進捗の数字/自動化ラボの処理能力の内訳。 また10-Kは「業界平均より約90%少ない化合物数で候補に到達」と述べていますが、比較の基準となる業界平均の出所は示されておらず、本稿では採用しません。

8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
まず1品目で臨床の実証を得ることを最優先にしているREC-4881を「Recursion OSの初の臨床での検証」と呼び、FDAとの協議と登録への道筋を最初の節目に置いている事実
データそのものを売れる資産として扱い始めたRoche・Genentechが細胞の地図を受け入れるたびに3,000万ドルを支払い、2026年9月にはRNA基盤モデルをTempusにライセンスした推測
実験室の役割を「データを作る場」から「AIの予測を確かめる場」へ移そうとしている10-Kが「ウェットラボの役割を、主にデータを生む場から、モデルが導いた洞察の大規模な検証へ移す」と記述事実
自社の販売網は当面持たず、後期開発や販売は提携を選ぶ可能性が高い10-Kが「販売・マーケティング・流通の能力はない」とし、「単独または提携先と商業化する可能性がある」と書く。資金の見通しは2028年初めまで推測
分子の設計で「効かせたい変異体だけに効く」ことを重視しているREC-7735は変異体に100倍超の選択性を持たせ、正常型を避けて高血糖に伴う再活性化を回避する狙いと説明推測
推測の根拠を1つだけ詳しく:「データ」が収入になった瞬間

Roche・Genentechとの提携で、Recursionは化合物ではなく細胞の地図(Phenomap)を納品して対価を得ています。 神経細胞の地図の受け入れで3,000万ドル(2024年9月)、ミクログリアの地図で3,000万ドル(2025年10月)が支払われ、 提携全体の受取額は2026年8月時点で2億1,600万ドルに達しました 事実。 さらに2026年8月には、その地図から見つかった神経領域の標的をGenentechが初めてオプション行使し、低分子の探索が始まりました。 2026年9月にはTempusに自社のRNA基盤モデルを1,200万ドルでライセンスしています。 本稿は、Recursionが「薬の候補」だけでなく「データとモデル」も商品にする二本立てに移りつつあると読みます 未確定/将来。 ただし、データやモデルの対価は薬の承認に比べれば小さく、会社の将来を決めるのは依然として臨床品の成否です。

9. 創薬・DDS分野の提携マッピング

Recursionを中心とした創薬・DDSの提携関係 SEC提出書類に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 共同研究・導入(実線・濃紺) データ・計算基盤(実線・橙) 統合・買収(点線) Recursion AI創薬 Roche・Genentech 神経・がん 受取2.16億ドル Sanofi(仏) 免疫・がん 受取1.34億ドル Bayer(独) 精密がん治療のプログラム Merck KGaA(独) がん・免疫の標的探索 武田薬品(日本) REC-4881を導入(2020年) Tempus AI 患者データ導入・RNAモデル導出 NVIDIA BioHive-2を共同で構築 Exscientia 2024年11月に統合
図2 Recursionを中心とした創薬・DDSの提携関係。出典:2025年12月期 Form 10-K、2026年6月期の決算リリース(Form 8-K)、Form 8-K(2026年9月21日提出)。実線の濃紺が共同研究・導入、橙がデータ・計算基盤、点線が統合・買収です。受取額は2026年8月時点の前払い金とマイルストーンの累計で、Roche・Genentechは最大40の低分子プログラム、Sanofiは最大15プログラムの枠を持ちます。BayerとMerck KGaAの金額条件は10-Kに記載がありません。Tempusとはデータを受け取る契約と、自社のRNA基盤モデル(TxFM)を渡す契約の両方があるため、橙の線にまとめました。

10. 提供している技術・製品・サービス

承認済みの医薬品はありません 事実。 会社の中核は、生物学・化学・臨床開発をつなぐRecursion OSと呼ぶ仕組みで、提携先への研究サービスと自社パイプラインの両方に使われています。

要素10-K・決算リリースの記述
データ生成自動化された高スループットの実験室で週200万件超の実験。明視野顕微鏡による細胞のフェノミクス、化学合成、転写産物、タンパク質、ADMET、ゲノム、患者のデータ
細胞の地図(Phenomap)遺伝子を1つずつ働かなくした細胞の画像を網羅的に撮り、遺伝子と表現型の関係を地図にしたもの。神経細胞・ミクログリアの全ゲノムCRISPRノックアウト地図を構築
化学の設計と合成生成AIと能動学習で化合物を設計。独自に調整したBoltz-2などで活性・選択性・ADMETを予測し、分子動力学や量子力学の計算も併用。合成は社内の自動化スタジオか専属のCROへ振り分け
設計の速さの例REC-617は136化合物・11か月未満、REC-7735は最初のヒットから242化合物・10か月で開発候補に到達(いずれも会社の開示)
臨床開発(ClinTech)施設の情報、実臨床の患者データ(約3億人分、分子プロファイル付き約100万人分)、因果推論やシミュレーションで試験の設計と運営を支援
計算基盤NVIDIAと構築したスーパーコンピュータBioHive-2でモデルを学習

DDSの観点では、Recursionの自社品はすべて経口の低分子で、脂質ナノ粒子や抗体のような運び手は使いません。 その代わりに、REC-617では「非共有結合型で、速い吸収のためにADME・体内動態を改善した」と説明しており、 体内での届き方を分子の物性で作り込む設計になっています 事実。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
赤字と資金の減少純損失は2023〜2025年に3.3億・4.6億・6.4億ドル。現金は半年で約2億ドル減り、会社の見通しでは2028年初めまで事実
承認品がない最も進んだREC-4881も単群の第1b/2相。登録試験の設計はFDAと協議中事実
提携への依存10-Kは、Bayer・Roche/Genentech・Merck KGaA・Sanofiとの提携が「現在の期間を超えて続く保証はない」と明記事実
人員削減の影響2025年6月の約20%削減について、10-K自身が「知識と専門性の喪失」を起こしうるとリスクに挙げている事実
統合の後処理旧Exscientiaの拠点(オックスフォード、ウィーン、ボストン)の整理が2026年も続く事実
データ事業の規模地図やモデルの対価(1件3,000万ドル、1,200万ドル)は、年間の研究開発費(4億7,527万ドル)に比べて小さい推測

12. 用語集

フェノミクス
細胞の形や状態(表現型)を画像などで網羅的に測ること。Recursionは顕微鏡画像を大量に撮って解析する。
Phenomap
Recursionが作る、遺伝子の操作と細胞の表現型の関係を示す地図。
CRISPRノックアウト
ゲノム編集で特定の遺伝子を働かなくすること。全遺伝子を1つずつ試すと「全ゲノム」の地図になる。
iPS細胞由来の細胞
iPS細胞から分化させて作った神経細胞などの細胞。大量に安定して作れる。
分解誘導剤(degrader)
標的のタンパク質を細胞の分解の仕組みに引き渡して壊させる低分子。
家族性大腸腺腫症(FAP)
APC遺伝子の変異により大腸などに多数のポリープができる遺伝性の病気。
ADMET
吸収・分布・代謝・排泄・毒性。薬が体内でどう振る舞うかを示す性質の総称。
Form 10-K/10-Q
米国上場企業が米国SECに提出する年次報告書と四半期報告書。
概念図:自動化された実験室で細胞の画像を大量に撮り、計算機で地図にし、選んだ分子を少数だけ合成して確かめる循環AI生成による概念図
図3 Recursionの「実験とAIの循環」の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や細胞を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Recursion Pharmaceuticals, Inc. Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年2月25日)。事業内容、Recursion OS、パイプライン、TUPELO・ELUCIDATEの結果、提携(Roche/Genentech・Sanofi・Bayer・Merck KGaA)、武田薬品からの導入、Tempus・RallyBio・Exscientia、人員、拠点、売上・研究開発費・純損失・現金、人員削減、リスク。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
  2. Recursion Pharmaceuticals, Inc. Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月5日)。累積赤字、提携の会計処理。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000098/rxrx-20260630.htm
  3. Recursion Pharmaceuticals, Inc. 2026年第2四半期決算リリース(Form 8-K 添付資料 Exhibit 99.1、2026年8月5日提出)。Genentechのオプション行使、提携の受取額、REC-4881とREC-7735の状況、上期の財務、現金の見通し、2026年の費用見通し。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000097/exhibit991-q0226.htm
  4. Recursion Pharmaceuticals, Inc. Form 8-K(米国SEC提出、2026年9月21日。報告事由は2026年9月15日)。Tempusとの契約改定とRNA基盤モデル(TxFM)のライセンス。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000112/rxrx-20260915.htm
  5. Recursion Pharmaceuticals, Inc. プレスリリース「Recursion Announces Vicki Goodman, M.D., as Incoming Chief Medical Officer」(Form 8-K 添付資料、2026年3月25日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000054/exhibit991-pr.htm
  6. Recursion Pharmaceuticals, Inc. プレスリリース「Recursion Announces Board Transition」(Form 8-K 添付資料、2026年4月30日)。創業者の取締役退任とCEO。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000064/exhibit991-pr43026.htm
  7. ClinicalTrials.gov NCT05552755(REC-4881のTUPELO試験、第1/2相)。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05552755
  8. Recursion 公式サイト(社名表記とロゴ画像の取得元)。 https://www.recursion.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、2013年11月の設立、本社所在地、上場市場、拠点事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
2023〜2025年の売上・研究開発費・一般管理費・純損失・営業キャッシュ流出、設備投資、2025年末の現金事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
2026年上期の売上・研究開発費・一般管理費、第2四半期の純損失、6月末の現金、2028年初めまでの見通し、2026年の費用見通し事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000097/exhibit991-q0226.htm
累積赤字23億ドル(2026年6月末)事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000098/rxrx-20260630.htm
人員600人弱と構成、2025年6月の約20%削減、臨床3品目の打ち切り事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
週200万件超の実験、データの種類、BioHive-2、ミルトンパークの化学自動化、合成を意識した設計、Boltz-2の利用、ClinTech事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
Roche・Genentechとの提携(前払い1億5,000万ドル、地図の受け入れ各3,000万ドル)、Sanofi・Bayer・Merck KGaAとの提携事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
Genentechの最初の標的オプション行使、受取額2億1,600万ドル・1億3,400万ドル、最大40・15プログラムの枠、iPS細胞由来の細胞数事実出典3・1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000097/exhibit991-q0226.htm
武田薬品からのTAK-733(REC-4881)導入(2020年5月)、Exscientiaとの統合、RallyBioからの合弁持分取得事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
Tempusとの契約改定とTxFMのライセンス(1,200万ドル)事実出典4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000112/rxrx-20260915.htm
TUPELOの結果(13週43%、25週53%、中止4人)とREC-617の初期データ事実出典1・7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
REC-4881の指定とFDA協議、REC-7735のIND取得と設計(242化合物・10か月)、今後の節目事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000097/exhibit991-q0226.htm
最高医療責任者の交代と創業者の取締役退任事実出典5・6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000064/exhibit991-pr43026.htm
創薬・DDSの3類型の区分(製薬企業/創薬バイオテック/受託開発製造・研究)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
FAPの市場規模(100億ドル超)、業界平均比で約90%少ない化合物数という比較未確定/将来出典1・3の記述だが市場推計・出所不明の比較のため本稿では採用しない
REC-4881の承認申請時期、TUPELOの解析人数、Bayer・Merck KGaAの金額条件、使用資材の具体名未確定/将来出典1〜6に記載なし https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1601830/000160183026000039/rxrx-20251231.htm
データそのものを売れる資産として扱い始めたという読み推測出典1・3・4の地図とモデルの対価からの本稿の解釈
後期開発や販売は提携を選ぶ可能性が高いという読み推測出典1の商業化に関する記述と資金の見通しからの本稿の解釈
変異体選択性を重視しているという読み推測出典3のREC-7735の説明からの本稿の解釈
データ事業の規模が研究開発費に比べて小さいというリスク推測出典1・4の金額を本稿が比べたもの

最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべてRecursion Pharmaceuticals, Inc.が米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類とClinicalTrials.govに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は医療上の助言ではありません。