COMPANY PROFILE / 創薬・DDS
米国メルク(MSD)
― 世界最大の抗体医薬を「皮下注射」に作り替え、ADCと経口ペプチドで次の柱を探す製薬企業
米国メルク(Merck & Co., Inc.、米国・カナダ以外ではMSD)は、探索から承認・販売までを自社で担う製薬企業です。 2025年の売上の49%を、抗PD-1抗体キイトルーダ(Keytruda)1品目が占めています。 創薬・DDSの観点で見ると、同社はその抗体を点滴から皮下注射に変える製剤技術(Keytruda Qlex)を2025年に実用化し、 あわせて抗体薬物複合体(ADC)、経口で飲める環状ペプチド、mRNAによる個別化がんワクチン、薬物とFc断片の複合体へと手を広げています。 本稿では会社全体の規模は簡潔にとどめ、どのモダリティに何を投じ、誰と組み、何を目指しているかに絞ります。
- 30秒でわかる米国メルクと、創薬・DDSでの立ち位置
- ロゴと社名の表記について(ドイツのMerck KGaAとは別会社)
- 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(簡潔に)
- 創薬・DDSにかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社は創薬・DDSで何を目指しているか
- 創薬・DDS分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかる米国メルクと、創薬・DDSでの立ち位置
低分子キイトルーダ、ガーダシルなど
経口の環状ペプチドKeytruda Qlex(2025年)、Lipfendra(2026年)
創薬・DDSの企業は、大きく製薬企業・創薬バイオテック・受託開発製造(CDMO・CRO)の3種類に分かれます。 米国メルクは製薬企業で、10-Kには「治療領域やモダリティにかかわらず新しい機会を追求する」と書かれています 事実。 ただし同社の現状を決めているのは、キイトルーダ1品目への依存(2025年の売上の49%)と、その米国の基本特許が2028年に満了することです。 皮下注射版のKeytruda Qlexは、同じ有効成分を別の投与経路・製剤で出す取り組みで、DDSの技術がそのまま事業戦略になっている例です。 本シリーズの技術解説「DDSと標的化」「抗体医薬とADC」「免疫チェックポイント阻害薬」とあわせて読むと位置づけが分かりやすくなります。
2. ロゴと社名の表記について

米国メルクのロゴは同社の商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、
公式サイト(merck.com)から取得した画像を img/merck_logo.svg として設置しています。
表記の注意:法人名は Merck & Co., Inc.(ニュージャージー州法人、本社ローウェイ)です。 同社は決算発表で自らを「米国・カナダ以外ではMSDとして知られる」と記しています。 ドイツ・ダルムシュタットのMerck KGaAとは資本関係のない別の会社です。 Merck KGaAの側は、米国・カナダでは子会社がEMDというブランドで事業を行うと公式サイトに記しています。 本稿では混同を避けるため「米国メルク」と表記します。
公式サイト:https://www.merck.com/3. 創薬・DDSの世界で、この会社はどこにいるか
モダリティ別に見ると、米国メルクの手札は次のとおりです 事実。 売上の中心は抗体(キイトルーダ)とワクチン(ガーダシル、ニューモコッカル系など)で、 開発ではADC(第一三共の3品目、Kelun-Biotech由来のsac-TMT)、経口の環状ペプチド(Lipfendra)、 mRNA(Modernaと共同の個別化ネオアンチゲン療法V940)、薬物-Fc複合体(Cidara由来のMK-1406)、 アクチビンシグナル阻害薬(Winrevair)、吸入剤(Verona Pharma由来のOhtuvayre)が加わります。 がん領域では「免疫腫瘍、精密分子標的、組織標的」の3本柱を掲げ、ADCは3本目の「組織標的」に位置づけられています。
4. 会社の規模(簡潔に)
会社全体の規模は1つの表にとどめます 事実。金額は米ドル、会計年度は12月期です。
| 指標(US$百万) | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高(Sales) | 60,115 | 64,168 | 65,011 | 32,893 |
| 研究開発費(導入・資産取得の費用を含む) | 30,531 | 17,938 | 15,789 | 22,333 |
| 設備投資(Capital expenditures) | 3,863 | 3,372 | 4,112 | ― |
| うちキイトルーダ/Keytruda Qlexの売上 | 25,011 | 29,482 | 31,680 | ― |
従業員は約75,000人(うち米国・プエルトリコ約30,000人、2025年12月31日)。2026年1〜6月は10-Qの未監査値。
米国メルクの研究開発費には、導入の一時金や、資産取得として処理した買収の費用が含まれます 事実。 2023年のUS$30,531百万には、第一三共との提携の一時金など(計US$5.5 billionの費用)やPrometheusの買収(US$10.2 billionの費用)が入っています。 2026年1〜6月のUS$22,333百万も、Cidara(2026年1月)とTerns(2026年5月)の買収に伴う「研究開発の資産取得費用」US$13,811百万を含みます。 社内の研究部門(MRL)が直接使った費用は、2025年US$10.8 billion、2024年US$10.1 billionです。 モダリティ別の研究開発費は開示されていません 未確定/将来。
5. 創薬・DDSにかけているリソース
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人(研究人員) | 研究活動に従事する人員は約24,700人(2025年12月31日) | 事実 |
| 人(研究拠点) | 米国の主要研究拠点はニュージャージー州ローウェイ、ペンシルベニア州ウェストポイント、マサチューセッツ州ボストン・ケンブリッジ、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ。米国外は英国・スイス・中国 | 事実 |
| 金(研究開発費) | 2025年US$15,789百万(うちMRLの直接費US$10.8 billion)。モダリティ別の内訳は記載なし | 事実(内訳は確認できず) |
| 金(製造設備) | 2025年の設備投資US$4.1 billion。2025〜2029年に設備案件へ約US$20 billionを投じる計画で、うちUS$12 billion超が米国 | 事実 |
| 製造網の組み替え | 2024年の構造改革計画は「将来のパイプラインが新しいモダリティへ移る」ことを理由に製造網を最適化する内容。2025年3月にはWuXi Vaccines(WuXi Biologics子会社)のアイルランド・ダンドーク工場を取得 | 事実 |
| 買収 | Verona Pharma(2025年10月、US$10.4 billion、吸入剤)、Cidara(2026年1月、US$9.2 billion、薬物-Fc複合体)、Terns(2026年5月、US$6.8 billion、経口低分子) | 事実 |
| 導入(ライセンス) | 第一三共のADC 3品目(2023年、支払い計US$4.0 billion+継続一時金US$750百万×2)、Kelun-BiotechのADC(2023年、一時金US$175百万)、Alteogenの酵素(2024年に独占ライセンスへ変更)、Hengruiの経口Lp(a)阻害薬(2025年) | 事実 |
| 外部の開発資金 | Blackstone Life Sciencesがsac-TMTの開発費の一部としてUS$700百万を2026年第4四半期に支払う契約(2025年10月) | 事実 |
| 大学・公的機関との連携 | 米国国立がん研究所(NCI)などと、HPVワクチン1回接種の有効性を調べるコスタリカの臨床試験を延長。創薬・DDSの技術開発に関する大学連携は10-K・10-Qに具体的な記載なし | 事実(DDSは確認できず) |
2025年の研究開発費US$15,789百万のうち、MRLの直接費はUS$10.8 billionで、残りの約US$5.0 billionは動物用医薬品の研究費、導入の一時金、資産取得の費用、他部門の支援費などです 本稿の計算。 さらに2026年は上期だけで資産取得の費用がUS$13,811百万に達しており、社内研究の年間予算を上回る額を半年で外部の候補の獲得に使った計算になります 本稿の計算。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 創薬・DDSでの意味 |
|---|---|---|
| 2022年 | Modernaとの既存契約に基づき、個別化ネオアンチゲン療法V940(mRNA-4157)の共同開発・共同販売の権利を行使 | mRNAを使ったがん治療への参加 |
| 2023年2月 | Kelun-Biotechと最大7つの前臨床ADCのライセンス契約(一時金US$175百万)。のちに一部を解約 | ADCの候補を中国のバイオテックから獲得 |
| 2023年10月 | 第一三共と、DXd ADC 3品目の世界的な共同開発・販売契約。製造と供給は第一三共が担う | ADCの大型導入。製造は自社で持たない形 |
| 2024年1月 | 「将来のパイプラインが新しいモダリティへ移る」ことを踏まえた製造網の再編計画を承認 | 低分子中心の工場から組み替える |
| 2024年2月 | Alteogenとの契約を、皮下注用ペムブロリズマブ向けberahyaluronidase alfaの独占ライセンスに変更 | 皮下注製剤の鍵となる酵素を確保 |
| 2025年3月 | WuXi Vaccinesのアイルランド・ダンドーク工場を取得 | ワクチン製造拠点を委託先から自社へ |
| 2025年9月 | Keytruda Qlexが米国FDAで承認(キイトルーダの固形がん適応で皮下投与)。11月には欧州委員会がキイトルーダの皮下投与経路・注射液剤形を承認 | 同じ抗体を点滴から皮下注射へ |
| 2025年10月 | Verona Pharmaを買収(US$10.4 billion)。吸入のPDE3/PDE4阻害薬Ohtuvayreを取得 | 吸入という投与経路の製品を獲得 |
| 2026年1月 | Cidaraを買収(US$9.2 billion)。低分子のノイラミニダーゼ阻害薬をヒト抗体のFc断片に結合したMK-1406(フェーズ3)を取得 | 「薬物-Fc複合体」で低分子を長く効かせる |
| 2026年5月 | Terns Pharmaceuticalsを買収(US$6.8 billion)。経口のアロステリックBCR::ABL1阻害薬MK-4208(フェーズ1/2)を取得 | 経口低分子の補強 |
| 2026年7月 | Lipfendra(enlicitide)が米国FDAで承認。1日1回の経口PCSK9阻害薬で、会社は「新規の環状ペプチド」と説明 | 抗体と同じ標的を、飲めるペプチドで狙う |
臨床試験の例:LipfendraのCORALreef試験
Lipfendraの米国承認は、CORALreef LipidsとCORALreef HeFHの2つのフェーズ3に基づきます。 会社の発表では、24週時点のLDLコレステロールの低下率は、プラセボとの差でそれぞれ56%と59%でした 事実。 ClinicalTrials.govには、MK-0616の無作為化・二重盲検・プラセボ対照フェーズ3として、成人の高コレステロール血症(NCT05952856)とヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(NCT05952869)の試験が登録されており、 いずれも主要評価項目は「24週時点のLDLコレステロールのベースラインからの変化率」です 事実。 本稿はこれらの数値で他の治療薬との優劣を論じるものではありません。
7. 今後の計画
| 候補(モダリティ) | 開発段階・予定 | 区分 |
|---|---|---|
| ifinatamab deruxtecan/MK-2400(ADC、B7-H3) | 既治療の進展型小細胞肺がんで米国に申請、優先審査。フェーズ2のIDeate-Lung01に基づく | 未確定/将来 |
| sacituzumab tirumotecan/MK-2870(ADC、TROP2) | 乳がん・子宮頸がん・子宮体がん・胃がん・肺がん・卵巣がんで開発中(フェーズ3を含む) | 未確定/将来 |
| patritumab deruxtecan、raludotatug deruxtecan(ADC) | 第一三共と開発中(フェーズ3を含む) | 未確定/将来 |
| V940(mRNA個別化ネオアンチゲン療法) | キイトルーダとの併用で、メラノーマと非小細胞肺がんの術後療法を評価中 | 未確定/将来 |
| MK-1406(薬物-Fc複合体) | インフルエンザ予防でフェーズ3 | 未確定/将来 |
| MK-8591D(islatravir+Gileadのlenacapavir、週1回経口) | HIV-1感染症でフェーズ3。islatravirの高用量試験には部分的な臨床保留が残る | 未確定/将来 |
| Lipfendra(経口環状ペプチド) | EUと中国で審査中。心血管アウトカム試験も進行 | 未確定/将来 |
次はいずれも10-K・10-Qに記載がありません 未確定/将来。
モダリティ別の研究開発費/約US$20 billionの設備投資計画のうちどのモダリティ向けがいくらか/ Keytruda Qlexへの切り替え率の目標/Lipfendraの製造方法と生産能力/ADCを自社で製造する計画の有無。 報道ベースの売上予測や切り替え率は採用しません。
8. この会社は創薬・DDSで何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| 皮下注製剤で、2028年の米国特許満了後もキイトルーダ系の売上を保とうとしている | キイトルーダの米国の基本特許は2028年満了(10-K)。Keytruda Qlexは別の配合成分(berahyaluronidase alfa)を含む製剤として承認された | 推測 |
| ADCは自社で製造せず、提携先に作ってもらう形で拡大する | 第一三共の3品目は「第一三共が製造と供給を単独で担う」と10-Kに明記 | 推測 |
| 注射で使われてきた標的を、飲める分子で狙う方向を重視している | PCSK9(従来は抗体)を経口の環状ペプチドで狙うLipfendra、週1回・月1回の経口HIV薬候補 | 推測 |
| 低分子を抗体の部品と組み合わせて長く効かせる技術にも賭けている | Cidaraの買収に約US$9.2 billionを投じ、薬物-Fc複合体MK-1406を取得 | 事実(評価は推測) |
| 製造網を新しいモダリティ向けに組み替える途中にある | 2024年の構造改革の理由として「将来のパイプラインが新しいモダリティへ移る」と明記 | 事実 |
10-Kの特許一覧で、キイトルーダの米国の基本特許満了は2028年です(化合物特許群には2029年満了の特許も2件あり、会社は将来の訴訟を予想) 事実。 一方、Keytruda Qlexはpembrolizumabにberahyaluronidase alfa(皮下組織での拡散と透過性を高める酵素)を配合した製剤で、 米国では別ブランドとして承認されています。米国メルクはこの酵素についてAlteogenと独占ライセンスを結び、承認・売上に応じた支払い(規制上のマイルストン最大US$51百万、売上マイルストン最大US$1.0 billion)を約束しています 事実。 本稿は、点滴版に後発のバイオシミラーが出た後も、皮下注版には別の保護が残る可能性を会社が見込んでいると読みます 未確定/将来。ただし会社はこの意図を明言しておらず、Halozymeとの特許紛争の結果によっては前提が変わります。
9. 創薬・DDS分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
創薬・DDSに関係する主な製品を、モダリティ別に示します 事実(US$百万)。
| 製品 | モダリティ・剤形 | 主な対象(会社の記載) | 2025年売上 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|---|
| Keytruda/Keytruda Qlex | 抗PD-1抗体(点滴/皮下注) | 多くのがん | 31,680 | Qlex単独で590 |
| Gardasil/Gardasil 9 | 組換えワクチン | HPV感染の予防 | 5,233 | ― |
| Winrevair | アクチビンシグナル阻害薬 | 肺動脈性肺高血圧症 | 1,443 | 1,114 |
| Ohtuvayre | 吸入のPDE3/PDE4阻害薬 | COPDの維持療法 | 2025年10月の買収で取得 | ― |
| Lipfendra | 経口の環状ペプチド(PCSK9阻害) | 高コレステロール血症 | 2026年7月に米国承認 | ― |
| Idvynso | 経口低分子2剤の配合錠 | HIV-1感染症(切り替え) | 2026年4月に米国承認 | ― |
Keytruda Qlexの2026年4〜6月の売上はUS$463百万で、キイトルーダ系全体(US$8,367百万)の約5.5%です(本稿の計算)。
抗体を皮下注射で大量に入れるには、皮下の組織に数mL以上の液体を短時間で広げる必要があります。 Keytruda Qlexに配合されたberahyaluronidase alfaは、会社の説明では「拡散と透過性を高めて皮下投与を可能にする」成分で 事実、 皮下組織の主要な構成成分であるヒアルロン酸を分解する酵素(ヒアルロニダーゼ)の一種です。 ここで競合するのがHalozymeの「改変ヒアルロニダーゼ(MDASE)」特許群で、同社は2025年4月に15件の特許の侵害を主張して提訴しています 事実。 製剤の添加剤である酵素1つが、世界最大の医薬品の投与形態を左右していることになります。
Lipfendraは会社が「新規の環状ペプチド(macrocyclic peptide)」と説明する経口薬です 事実。 ペプチドは通常、胃で分解され腸から吸収されにくいため注射が基本です。 環状にすると消化酵素に切られにくく、形が固定されて標的への結合も強くなる、というのが一般的な設計の考え方ですが、 Lipfendraでどのような吸収促進の工夫(添加剤など)を使っているかは、本稿が確認した一次情報には書かれていません 未確定/将来。技術の背景は本シリーズの技術解説「ペプチド医薬とGLP-1」「薬物動態と前臨床試験」を参照してください。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 1品目への依存 | 2025年はキイトルーダが売上の49%。米国の基本特許は2028年満了 | 事実 |
| 皮下注製剤の特許紛争 | Halozymeが改変ヒアルロニダーゼの特許15件の侵害を主張して提訴(2025年4月)。欧州の一部の国での発売時期は訴訟の結果にも左右されると会社が記載 | 事実 |
| Keytruda Qlexの利用が伸びない可能性 | 10-Kがリスク要因として「Keytruda Qlexの利用が想定を下回ること」を挙げている | 事実 |
| ワクチン需要の変動 | ガーダシルの売上は2024年US$8,583百万から2025年US$5,233百万へ減少。中国での需要低下を会社が記載 | 事実 |
| 買収費用の一括計上 | 資産取得として処理した買収は研究開発費に一括計上され、四半期の損益が赤字になりうる(2026年4〜6月期は純損失) | 事実 |
| ADCの供給を提携先に依存 | 第一三共の3品目は第一三共が製造・供給を担う。供給側の制約がそのまま米国メルクの制約になる | 推測 |
| 外部調達の比重の高まり | 2026年上期の資産取得費用が社内研究の年間直接費を上回る。候補の成否が買収額の回収を左右する | 推測 |
12. 用語集
- 皮下注射(SC)
- 皮膚と筋肉の間の組織に薬を注射する方法。点滴(静脈内投与)より短時間で済むことが多い。
- ヒアルロニダーゼ
- 皮下組織のヒアルロン酸を一時的に分解する酵素。注射した液体を広げやすくする。
- ADC(抗体薬物複合体)
- 抗体にリンカーを介して強い薬物(ペイロード)をつないだ薬。DXdは第一三共のペイロードの名称。
- 環状ペプチド
- アミノ酸の鎖の両端などをつないで輪にしたペプチド。分解されにくく、形が安定する。
- PCSK9
- 肝臓のLDL受容体の分解を促すタンパク質。阻害するとLDLコレステロールが下がる。
- 薬物-Fc複合体(DFC)
- 低分子の薬を抗体のFc断片に結合させ、血中に長くとどまるようにした分子。
- 個別化ネオアンチゲン療法
- 患者ごとのがんに特有の変異から作る抗原をmRNAで投与し、免疫にがんを認識させる考え方。
- 資産取得
- 買収した会社の価値がほぼ1つの開発品に集中する場合の会計処理。対価の多くを研究開発費として一括計上する。
AI生成による概念図13. 出典
- Merck & Co., Inc. Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年2月24日)。売上・研究開発費・設備投資・人員・研究拠点、製品別売上、キイトルーダの特許満了年、Keytruda Qlex、第一三共・Kelun-Biotech・Alteogen・Moderna・Blackstoneとの契約、Verona Pharma買収、Cidara買収合意、Halozymeとの紛争、構造改革計画、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/310158/000031015826000063/mrk-20251231.htm
- Merck & Co., Inc. Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月7日)。2026年上期の売上・研究開発費、Cidara・Terns買収、Lipfendra・Idvynsoの承認、I-DXdの優先審査、Halozymeとの紛争の経過、NCIとの試験延長。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/310158/000031015826000212/mrk-20260630.htm
- Merck & Co., Inc. Second-Quarter 2026 Financial Results(Form 8-K Exhibit 99.1、2026年8月4日)。「米国・カナダ以外ではMSD」という社名表記、Lipfendraの承認とCORALreef試験の24週時点の結果、Keytruda Qlexの売上。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/0000310158/000110465926090045/tm2621496d1_ex99-1.htm
- ClinicalTrials.gov NCT05952856(MK-0616、成人の高コレステロール血症、フェーズ3)。試験デザインと主要評価項目。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05952856
- ClinicalTrials.gov NCT05952869(MK-0616、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症、フェーズ3)。試験デザインと主要評価項目。 https://clinicaltrials.gov/study/NCT05952869
- Merck KGaA 公式サイト。ドイツ・ダルムシュタットのMerck KGaAの子会社が米国・カナダではEMDブランドで事業を行う旨の記載。 https://www.merckgroup.com/en
- Merck & Co., Inc. 公式サイト(ロゴ画像の取得元、社名表記の確認用)。 https://www.merck.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年9月26日/Troy Technical
本稿の数値はすべて米国メルク(Merck & Co., Inc.)が米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類と、ClinicalTrials.govの登録情報に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は特定の医薬品の使用を勧めるものではなく、医療上の判断は必ず医師・薬剤師にご相談ください。