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ロボットとドローンの電源 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

ロボットとドローンの電源
― 「エネルギー」と「出力」を、何の重さで買うか

ロボットやドローンの電源というと、「電池の Wh/kg が上がれば、もっと飛べる・動ける」と考えがちです。しかし電源には、エネルギー(どれだけ長く)と出力(どれだけ強く)の2つのものさしがあります。電池は、この2つが同じセルの中に同居しています。燃料電池は、出力を決める部分(スタック)と、エネルギーを決める部分(水素タンク)が別です。この記事では、メーカーのデータシートと論文の数字、小さな計算で、電池を増やしても飛行時間が頭打ちになる理由、水素が有利になる飛行時間の目安、人型ロボットの電池の大きさ、太陽光の限界を整理します。電池の化学や安全は、本シリーズの別の編に任せ、ここは機体に載せる電源の見方に絞ります。

構成:メーカーのデータシート(Molicel、DJI、Intelligent Energy、Heven AeroTech、Unitree、Boston Dynamics)、米国エネルギー省(DOE)の記録、論文、IEC・ISO の公式ページを使用/計算は本稿/確認日 2026年10月25日

①電池、②水素タンクと燃料電池・補助電池、③太陽電池と蓄電の構成例です。電源はエネルギー源だけでなく、変換器や容器、制御などの質量も含めて考えます。
図1 ImageGen生成の概念画像。①電池、②水素タンクと燃料電池・補助電池、③太陽電池と蓄電の構成例です。電源はエネルギー源だけでなく、変換器や容器、制御などの質量も含めて考えます。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。
この記事の構成
  1. 電源の2つのものさし(3行でわかる)
  2. セルを選ぶ:エネルギー型と高出力型
  3. 機体にすると:質量の内訳と、平均の電力
  4. 電池を増やすと、どこまで飛べるか
  5. 燃料電池と水素:エネルギーと出力を別々に買う
  6. 人型ロボットの電源:1 kWh 級と質量
  7. 太陽光:面積が出力を決める
  8. 限界と、確認できなかったこと/まとめ
  9. 評価・標準の読み方
  10. 用語集
  11. 参考資料(一次情報)
  12. 主張と出典の対応表(監査)
本記事の表記ルール

事実=公表資料に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=公表された数値を使って、本稿が計算・整理した内容(仮定は明記)
未確定/将来=計画・目標・改訂中で、確定していない内容
推測は太字で示します。出典のない読み取りは「解説」と書きます。

この記事の数値の読み方

性能値(エネルギー密度、飛行時間、稼働時間)は、メーカー公称で、条件(荷物の重さ、速度、温度、電池の状態)つきの値です。実測や第三者の検証ではありません。異なる機体・電池の数字を並べて、優劣をつけることはしません。企業の発表は、企業の主張として書きます。この分野は変化が速いため、機体・仕様は確認日(2026年10月25日)時点です。安全についての個別の助言は書きません。

1. 電源の2つのものさし(3行でわかる)

  • 電源は「エネルギー」と「出力」で見る:エネルギー(Wh)は「どれだけ長く動けるか」、出力(W)は「どれだけ強く出せるか」です。電池は両方が同じセルに入っていて、燃料電池は別々に増減できます(図2)
  • ドローンは、電池を増やしても途中で頭打ち:重さが増えると、ホバリングの電力は質量の1.5乗で増えます。理想の計算では、電池が全質量の約2/3のとき、飛行時間が最大になります本稿の計算
  • 水素は、長い飛行で軽くなる:燃料電池は、出力のぶんの固定の重さがかかります。本稿の試算(仮定つき)では、1.2 kW を出し続ける場合、飛行時間が約1時間より長くなると、水素のほうが軽くなります本稿の計算。短い飛行では、電池が軽いままです
この記事を読む前に知っておくこと

本シリーズでは、ロボットを「感じる(センサー)・考える(制御と知能)・動く(アクチュエータ)」の3つの組合せとして説明します。ドローンも同じです。この記事の主役は、そのすべてに力を送る電源です。W(ワット)は、1秒あたりの仕事で、出力の単位です。Wh(ワット時)は、W に時間をかけたエネルギーの単位です。1 W を1時間出せば 1 Wh です。C(Cレート)は、電池の容量を1時間で使い切る電流を 1 C とした、放電の速さの単位です。5 Ah の電池を 15 A で放電すると 3 C です。

シリーズの中での位置:電池の仕組みは「リチウムイオン電池の基本」編、安全は「熱暴走と電池の安全」編、燃料電池のしくみは「燃料電池車と固体高分子形燃料電池」編、水素タンクは水素エネルギー分野の「高圧水素タンク」編、機体の軽量化は「ロボット・ドローンの構造材料」編、長時間飛行の機体の型は「固定翼・VTOLと長時間飛行」編、飛行の力学は「マルチコプターの原理と設計」編に詳しくあります。ここでは重ならないよう、電源を機体に載せるときの見方に絞ります。

電池は内部にエネルギーを蓄え、水素方式はタンクと燃料電池の役割を分け、太陽光方式は日射と蓄電を組み合わせます。搭載する周辺機器まで含めて考えます。
図2 ImageGen生成の概念画像。電池は内部にエネルギーを蓄え、水素方式はタンクと燃料電池の役割を分け、太陽光方式は日射と蓄電を組み合わせます。搭載する周辺機器まで含めて考えます。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。
元のSVG・補足説明・出典を確認
電源の2つのものさし:出力(どれだけ強く)とエネルギー(どれだけ長く) 電池(リチウムイオン) 出力 [kW] を決めるもの セルの数と、電極の作り方 (高出力型は電流を流しやすく) エネルギー [kWh] を決めるもの セルの中の活物質の量 (出力と同じ重さに同居) 弱点・注意 同じ大きさのセルでも、連続出力が 約4倍違う(図3)。エネルギー密度が 高くても、出力が足りないことがある 燃料電池+水素タンク 出力 [kW] を決めるもの 燃料電池のスタックの大きさ エネルギー [kWh] を決めるもの タンクの水素の量 (タンクを替えれば増える) 弱点・注意 ピーク出力は電池で補う例がある (IE-SOAR は電池と併用)。 短い飛行では、電池のほうが軽い 太陽光 出力 [kW] を決めるもの 受ける面積 × 日射 × 効率 エネルギー [kWh] を決めるもの 日射のある時間 (夜や曇りは、電池が必要) 弱点・注意 機体の面積が小さいと、出力が足りない。 ホバリング中心の機体では、 出力の一部を補う程度(図9)

元SVGの説明:概念図(ベクター作図)。電池、燃料電池+水素タンク、太陽光で、出力とエネルギーを何が決めるかを並べた本稿の整理です。実在の機体の構成ではありません。個々の数字は、以降の章の出典を参照してください。

2. セルを選ぶ:エネルギー型と高出力型

電池のパックは、小さな円筒形のセルを何本もつないで作ります。同じ大きさ(21700:直径21 mm、長さ70 mm)のセルでも、エネルギー型(容量を大きくした型)と高出力型(大きな電流を流しやすくした型)があります。Molicel(E-One Moli Energy)のデータシートで、3つのセルを比べます[参考資料1・2・3]。

セル(メーカー公称)容量(標準)質量あたりのエネルギー連続放電電流質量(最大)
INR-21700-M50A[2]5000 mAh(18.0 Wh)269 Wh/kg15 A(3 C)70 g
INR-21700-P45B[1]4500 mAh(16.2 Wh)242 Wh/kg45 A(10 C)(電池の温度80℃で打ち切り)70 g
INR-21700-P50B[3]5000 mAh(18.0 Wh)260 Wh/kg60 A(12 C)(電池の温度80℃で打ち切り)71 g

各値はデータシートの記載事実。C は電流 ÷ 容量で本稿が計算本稿の計算(15 ÷ 5 = 3、45 ÷ 4.5 = 10、60 ÷ 5 = 12)。データシートは参考用で、性能の保証ではないと断っています。

表のとおり、質量あたりのエネルギーは、242〜269 Wh/kg で約1割しか違いません。ところが、連続して流せる電流は、15 A から60 A まで4倍違います。公称の電圧 3.6 V をかけて、質量で割ると、連続出力の目安は、M50A が約771 W/kg、P45B が約2,314 W/kg、P50B が約3,042 W/kg です本稿の計算(図3)。電流を流すと電圧は下がるので、実際の出力はこれより小さくなります。

同じメーカー・同じ大きさのセルでも、連続出力は大きく違う(データシートと本稿の計算) 質量あたりのエネルギー [Wh/kg](データシート) 連続出力の目安 [W/kg](本稿の計算) M50A 容量型・連続 15 A(3 C) 269 771 P45B 高出力型・連続 45 A(10 C) 242 2314 P50B 高出力型・連続 60 A(12 C) 260 3042 出典:Molicel(E-One Moli Energy)の21700セルのデータシート。連続出力の目安 = 公称3.6 V × 連続放電電流 ÷ 質量の上限。 電流を流すと電圧は下がるので、実際の出力はこれより小さい。連続電流の条件:P45B と P50B は「電池の温度が80℃に達するまで」、M50A は条件の記載なし。 メーカー公称値で、試験条件が違う。他社のセルや、組み上げたパックの値ではない。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。Molicel のデータシート[参考資料1・2・3]の数値から、質量あたりのエネルギー(左)と、連続出力の目安(右)を並べました。同じメーカー・同じ大きさのセルの比較で、他社のセルやパックの優劣を示すものではありません。
よくある誤解:「Wh/kg が大きい電池ほど、ドローンに良い」

Wh/kg は「どれだけ長く」の指標です。ドローンやロボットには、「どれだけ強く」の指標(連続して出せる W/kg、C レート)も要ります。図3のとおり、エネルギーが1割違うだけの3つのセルで、連続出力は4倍違います。正しくは:使う機体の平均の電力と、離陸などのピークの電力を計算して、必要な C レートを満たすセルから、Wh/kg の大きいものを選ぶ、という順番になります(本稿の解説)。

素材技術者の視点①:出力型は、「電極の作り方」で作り分けている

同じ大きさのセルで、容量型と高出力型を作り分けられるのは、主に電極の作り方(塗る層の厚さ、気孔の割合、導電助剤の量、集電体の数)の違いのためです(解説。電極製造は、本シリーズの「電極製造」編と「導電助剤とバインダー」編に詳しくあります)。電流を流しやすくするほど、活物質を詰める量が減るので、エネルギーは少し下がります。図3でも、出力型 P45B は M50A よりエネルギーが約10%低めです。データシートの内部抵抗は、M50A が「DC(10 A、10秒)25 mΩ」、P50B が「DC(50% 充電状態)12.8 mΩ」と書かれていて、測り方が違うため、直接は比べられません[参考資料2・3]事実。素材側の改良は、「同じエネルギーで、より速く出し入れできる」電極に向かう、と読めます(解説)。

3. 機体にすると:質量の内訳と、平均の電力

セルをつないで、保護回路と筐体を付けると、パックになります。DJI の業務用ドローン Matrice 350 RTK の仕様では、飛行用の電池 TB65 は、容量 5880 mAh、電圧 44.76 V、エネルギー 263.2 Wh、質量約 1.35 kg(メーカー公称)です[参考資料4]事実。これを割ると、約195 Wh/kg本稿の計算で、図3のセル単体(242〜269 Wh/kg)より低い値です。筐体、保護回路、低温時の自己発熱の仕組み(仕様に記載)などが加わるためと考えられます(解説)。

機体全体では、電池なしで約3.77 kg、TB65 を2個載せて約6.47 kg です[参考資料4]事実。電池の質量は 2 × 1.35 = 2.70 kg で、全質量の約42%本稿の計算です(図4)。最大飛行時間は55分で、荷物なし、無風、約8 m/s で飛んで、電池残量0%まで測った参考値と、メーカーは書いています[参考資料4]事実。

ある業務用ドローンの質量と電池(メーカー公称値と本稿の計算) 全質量 6.47 kg(電池2個を載せた状態) 機体(電池なし)3.77 kg 電池 TB65 1.35 kg 電池 TB65 1.35 kg 3.77 kg (58%) 2.70 kg (42%) 526.4 Wh 電池2個の合計(263.2 Wh × 2) 約574 W 平均電力 = 526.4 Wh ÷ 55分 約1.1 C 平均の放電の速さ(12.8 A ÷ 2 ÷ 5.88 Ah) 出典:DJI Matrice 350 RTK の仕様(質量、TB65:5880 mAh、44.76 V、263.2 Wh、約1.35 kg)。最大飛行時間55分は、荷物なし・無風・約8 m/s で電池残量0%まで飛んで測った参考値(メーカー公称)。平均電力・C は本稿の計算で、電池を2個並列とし、0%まで使い切ると仮定。
図4 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。DJI Matrice 350 RTK の仕様[参考資料4]から、質量の内訳と、本稿が計算した平均電力・放電の速さを示しました。メーカー公称値で、他の機体との優劣を示すものではありません。電池2個を並列、0%まで使い切ると仮定しており、実際の使い方とは異なります。

この数字から、平均の電力は 526.4 Wh ÷(55 ÷ 60 時間)= 約574 W本稿の計算です。機体の質量あたりでは、約89 W/kg本稿の計算です。電池の電圧 44.76 V で割ると、約12.8 A、電池2個で分けると約6.4 A です。電池1個の容量 5.88 Ah に対して、約1.1 C本稿の計算です。図3のセルが出せる 3〜12 C と比べると、この飛び方の平均は、ずっと穏やかです。ただし、離陸や上昇のピークの電流は、もっと大きいはずです(解説。ピークの値は、確認できなかった)。

4. 電池を増やすと、どこまで飛べるか

「電池をもっと載せれば、もっと飛べる」は、半分だけ正しいです。電池を増やすと、飛行時間の元になるエネルギーは増えますが、機体が重くなって、ホバリングの電力も増えるからです。ホバリングの電力は質量の1.5乗に比例します(Bauersfeld と Scaramuzza[参考資料5]。「ロボット・ドローンの構造材料」編でも使いました)。

電池以外の質量を一定として、電池の質量を変えたときの、ホバリングの飛行時間を計算します。飛行時間は、エネルギー(電池の質量に比例)÷ 電力(全質量の1.5乗に比例)です。電池の質量を mb、電池以外の質量を m0 とすると、飛行時間 ∝ mb ÷ (m0 + mb)1.5 です本稿の計算。この式は、mb = 2 m0、つまり電池が全質量の約67%のときに最大になります本稿の計算(微分で確かめられます。下の「もっと詳しく」)。

電池を増やすと、飛行時間は途中で頭打ちになる(理想の計算) 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 0% 20% 40% 60% 80% 電池が20% → 0.46 業務用機の例(42%)→ 0.83 最大(約67%)→ 1.0 電池が全質量に占める割合 飛行時間(最大を1とした比) 電池のエネルギー密度が基準 エネルギー密度が20%高い場合(比例して20%増) 条件:ホバリング電力は質量の1.5乗に比例(Bauersfeld と Scaramuzza)、電池のエネルギーは電池の質量に比例、電池以外の質量は一定と仮定 した本稿の計算。 モーターの出力の限界、効率の変化、荷物と余裕は含まない。実機の最適点は、これより電池の割合が小さい側にずれる(推測)。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。電池の割合と、ホバリングの理論上の飛行時間(最大を1とした比)の関係を、本稿の式で描いた図です。点は、電池が全質量の20%の場合、前章の業務用機の電池の割合(42%)、最大の点(67%)です。理想の計算で、実機の値ではありません。

図5のとおり、電池の割合が20%のとき、飛行時間は最大の約0.46倍本稿の計算です。前章の業務用機のように42%まで増やすと、約0.83倍本稿の計算に達します。そこから最大の67%まで増やしても、飛行時間は約21%しか伸びません本稿の計算(1 ÷ 0.83)。その一方で、全質量は、6.47 kg から約11.3 kg(3.77 kg の3倍)に増えます本稿の計算。つまり、電池を増やすだけの方法は、途中から効きにくくなります。

効き続けるのは、電池のエネルギー密度を上げることです。同じ質量なら、エネルギー密度が20%高い電池で、飛行時間は20%伸びます(図5の破線)本稿の計算。ここに、材料の改良の価値があります。

もっと詳しく:なぜ「電池が全質量の2/3」で最大になるのか

飛行時間 t = e·mb ÷ P。e は電池の質量あたりのエネルギー、P はホバリング電力で、P = k·m1.5(m = m0 + mb、k は定数)です。すると t = (e/k)·mb ÷ (m0 + mb)1.5。mb で微分して 0 とおくと、(m0 + mb) − 1.5·mb = 0 から、mb = 2·m0 が出ます。全質量に占める電池は 2 ÷ 3 ≒ 67% です。

この計算は、電池の質量だけが変わり、モーターやプロペラの効率、電池の出力の限界、荷物と安全余裕が変わらない、という単純化です。実機では、電池を増やすと、モーターの大型化や構造の補強も必要になり、最適点は電池の割合が小さい側にずれます(推測)。本稿の解説です。

つまずきやすいところ:「1.5乗」と「頭打ち」の関係

質量が増えるほど、電力は急に増える(1.5乗)ので、電池を足したぶんの効果が、だんだん薄れます。たとえば、重い荷物を背負って山を登るとき、荷物(食料)を増やすほど長く歩けますが、荷物が重すぎて歩く速さが落ち、1日に進める距離が伸びなくなる、という感覚に近いです(たとえの限界:ドローンは、浮くために、重さに応じた力を出し続ける必要があります)。

5. 燃料電池と水素:エネルギーと出力を別々に買う

燃料電池は、水素と空気中の酸素から電気を作る装置です(しくみは、本シリーズの「燃料電池車と固体高分子形燃料電池」編を参照)。ドローンでは、出力は燃料電池(スタック)、エネルギーは水素タンクが受け持ちます。出力を決めるスタックの質量は、飛行時間によらず一定で、飛行時間を延ばすには、タンクの水素を増やします。電池との違いは、エネルギーを増やす重さの増え方が小さいことです。

燃料電池モジュールの実例(メーカーのデータシート)

Intelligent Energy の IE-SOAR 1.2 kW のデータシート(2023年5月)には、連続出力1200 W、ピーク出力は最大8000 W、燃料電池モジュールの質量2700 g、水素の調圧器315 g、タンクの最大圧力350 bar と書かれています[参考資料6]事実。既定の構成には、ハイブリッド用の電池(6S を2個直列、1個あたり535 g、3300 mAh、ピーク出力4800 W)が含まれます[参考資料6]事実。燃料電池は、電池の代わりに電圧を一定にして電力を出し続け、離陸などのピークは電池が助ける、という分担です(解説)。モジュールだけでは、1200 W ÷ 2.7 kg = 約444 W/kg本稿の計算、調圧器とハイブリッド電池まで含めると、1200 W ÷ 約4.085 kg = 約294 W/kg本稿の計算です(タンクは含まない)。

水素のエネルギーと、タンクの重さ

水素自体のエネルギーは大きいのですが(低位発熱量 33.33 kWh/kg[本シリーズの「高圧水素タンク」編])、高圧に詰めるタンクの重さが効きます。米国エネルギー省(DOE)の記録では、車用の700 bar タイプ4タンク(使える水素 5.6 kg、システム質量 109 kg)の試算で、1.71 kWh/kg(システムの質量あたり)です[参考資料9]事実。水素の質量の割合は 5.6 ÷ 109 = 約5.1%本稿の計算です。ドローン用の小さなタンクの値は、確認できませんでした。小さいタンクほど、質量の割合は悪くなると考えられます(推測)。

試算:電池と水素の、質量の逆転点

以上の数字を使って、1.2 kW を連続で出すときの、電源の質量を試算します(図6)。電池だけの場合は、TB65 のパック値 195 Wh/kg[参考資料4]で、質量 = 1.2 kW × 時間 ÷ 0.195 kWh/kg です。燃料電池の場合は、固定の約4.085 kg に、タンクの質量を足します。タンクの質量は、必要な電気のエネルギーを、1.71 kWh/kg × 燃料電池の効率50%(本稿の仮定)= 0.855 kWh/kg で割ったものです。

電源の質量:電池 と 燃料電池+水素(1.2 kW を連続で出す場合の試算) 0 5 10 15 20 25 0 1 2 3 4 約0.86 時間で逆転 約1.22 時間で逆転 電池だけ(195 Wh/kg) 同(タンクの値が半分の場合) 燃料電池+水素(タンクのエネルギー 0.855 kWh/kg) 飛行時間 [時間] 電源の質量 [kg] 仮定:連続1.2 kW。燃料電池側の固定の質量は、IE-SOAR 1.2 kW のモジュール2.7 kg + 調圧器0.315 kg + 既定のハイブリッド電池2個1.07 kg = 約4.085 kg。 電池側は DJI の TB65 のパック値195 Wh/kg。水素側のタンクは、DOE の車載700 bar タイプ4の試算 1.71 kWh/kg(水素の発熱量)に、燃料電 池の効率50%(本稿の仮定)を掛けた値。 小さなドローン用のタンクは、車載の大きなタンクより重くなりうる(確認できなかった)ため、半分の場合も示した。他の負荷・余裕は含まない。
図6 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。連続1.2 kW を出す場合の、飛行時間と電源の質量の関係の試算です。燃料電池の固定の質量は IE-SOAR 1.2 kW のデータシート[参考資料6]、電池は DJI TB65 のパック値[参考資料4]、タンクは DOE の記録[参考資料9]を使い、燃料電池の効率は本稿の仮定です。メーカーの性能保証ではなく、実機の値でもありません。

この仮定では、電池と燃料電池の質量は、約0.86時間(約52分)で逆転します本稿の計算(6.154 t = 4.085 + 1.404 t)。飛行時間が4時間なら、電池だけだと約24.6 kg、燃料電池+水素だと約9.7 kg本稿の計算です。タンクのエネルギー密度が半分(小さなタンクを想定)なら、逆転点は約1.22時間本稿の計算、4時間での質量は約15.3 kg本稿の計算になります。飛行時間が短いうちは、電池のほうが軽いのです。

メーカーの発表(企業の主張)

Heven AeroTech は、水素燃料電池で飛ぶドローンを発表している米国の会社です。同社の H2D55(マルチローター)のページは、飛行時間「最大4時間」(荷物あり)、最大離陸質量 65ポンド(29 kg)、荷物 10ポンド(約4.5 kg)、巡航速度22 mph、水素タンクの交換は5分未満と書いています[参考資料7]事実(企業の公称で、条件の詳細・第三者の検証は確認できなかった)。2023年11月の発表では、H2D200 が荷物4.5 kg・航続510 km・飛行時間最大4時間、H2D250 が荷物10 kg・航続750 km・最大8時間(ホバリング能力を保つ)とされています[参考資料8]事実(企業の発表)。同社のサイトは、防衛・国境監視・公共安全の用途を掲げています。本稿は、水素を動力にする観点だけを扱います。燃料電池の出力、タンクの質量、水素の量は、公開ページでは確認できませんでした。

停止・隔離した機体と、取り外して保護した水素容器・燃料電池の概念です。圧力が残った接続部を外す作業や、充填手順を示すものではありません。
図7 ImageGen生成の概念画像。停止・隔離した機体と、取り外して保護した水素容器・燃料電池の概念です。圧力が残った接続部を外す作業や、充填手順を示すものではありません。 [参考資料7]実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。
よくある誤解:「水素は電池の何倍もエネルギーがあるから、ドローンは何倍も飛べる」

水素そのものの質量あたりのエネルギーは大きい(33.33 kWh/kg)のですが、機体に載せるときは、タンク、調圧器、燃料電池本体、ピーク用の電池の質量が加わります。DOE の車載タンクの試算でも、システム全体では 1.71 kWh/kg です[参考資料9]。図6のとおり、飛行が短いと、固定の質量のぶん、電池のほうが軽くなります。正しくは:「長い飛行で、水素が有利になる条件がある」で、「いつでも何倍も飛べる」ではありません。また、同じ「4時間」でも、荷物、速度、機体の質量が違えば、別の数字です。

素材技術者の視点②:水素ドローンは、「軽い圧力容器」と「膜」の勝負になる

水素側の重さを決めるのは、高圧タンクの壁です。DOE の車載タンクの試算では、タンクの壁は炭素繊維の複合材が主役で、コストも炭素繊維に支配されるとされます(本シリーズの「高圧水素タンク」編)。ドローンでは、さらに軽さが問われるため、炭素繊維の使い方(積層、樹脂)が効きます(解説)。燃料電池の側では、プロトンを通す高分子膜と触媒が、劣化と寿命を決めます(「燃料電池車と固体高分子形燃料電池」編)。IE-SOAR の保証は1000時間(メーカー公称)[参考資料6]事実で、車用に比べて短い時間です。材料の耐久が、小型の燃料電池の課題の一つだと読めます(推測)。

6. 人型ロボットの電源:1 kWh 級と質量

人型ロボットは、電池を機体の中に収めます。Unitree の H2 のページは、質量約70 kg(電池を含む)、31自由度、電池は15 Ah(0.972 kWh)、最大電圧75.6 V としています[参考資料10]事実(メーカー公称)。Boston Dynamics の Atlas の仕様書(2026年10月15日版)は、質量90 kg、56自由度、電池寿命4時間(重い荷物を持つ運転で2時間)、自動の電池交換3分、充電1.5時間としています[参考資料11]事実。Atlas の電池の容量は、仕様書では確認できませんでした。

「4時間」が「2時間」になるのは、電力が増えるためです。同じ電池の容量なら、平均の電力が約2倍になった計算です本稿の計算。「ロボットが何をするか」で、必要な電力が変わります。重い荷物を持つ、遠くまで手を伸ばす、といった動作が、電池を速く減らします(解説)。

H2 の数字を、ドローンと比べます。電池のエネルギーを機体の全質量で割ると、H2 は 972 Wh ÷ 70 kg = 約13.9 Wh/kg本稿の計算、前章の業務用ドローンは 526.4 Wh ÷ 6.47 kg = 約81.4 Wh/kg本稿の計算です(図8)。ドローンは機体の質量の約4割を電池が占めますが、人型ロボットは電池が小さな部分にとどまります。これは、設計の特徴を見る指標で、性能の優劣ではありません。

人型ロボットの電源:1 kWh 級の電池と、質量の関係(メーカー公称値と本稿の計算) 電池のエネルギー ÷ 機体の全質量 [Wh/kg](設計の特徴を見る指標。優劣ではない) 業務用ドローン(M350 RTK) 81.4 Wh/kg 人型ロボット(Unitree H2) 13.9 Wh/kg H2 の電池の中身を、21700セルで試算(本稿の計算。実際の構成は確認できなかった) H2:最大75.6 V、15 Ah(0.972 kWh)と書かれている。75.6 ÷ 4.2 = 18 なので、18直列と仮定する。 公称3.6 V × 18 = 64.8 V、64.8 V × 15 Ah = 972 Wh で、数字は整合する。 5 Ah(18 Wh)の21700セルなら、18直列 × 3並列 = 54本で、54 × 18 Wh = 972 Wh。 54本 × 70 g = 3.8 kg(セルだけ)。70 kg の約5.4%。 出典:DJI の仕様、Unitree H2 の製品ページ(2026年10月25日確認)。異なる機体の値で、性能の優劣を示すものではない。 Atlas(Boston Dynamics)は電池4時間(重い荷物で2時間)、自動交換3分、充電1.5時間と書かれているが、電池の容量は確認できなかった。
図8 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。電池のエネルギーを機体の質量で割った値の比較(上)と、H2 の電池の構成の試算(下)。メーカー公称値と本稿の計算で、異なる機体の優劣を示すものではありません。H2 の電池の実際の構成(セルの種類・並べ方)は、確認できませんでした。
つまずきやすいところ:なぜ、ロボットの電池は大きくできないのか

電池を大きくすると、それを運ぶ脚と腕の力(トルク)が増え、さらに電力が増えます。前章までのドローンと同じ「重さの連鎖」です。人型ロボットでは、電池が重いと、バランスと安全も難しくなります(解説)。そこで、Atlas のように電池を3分で自動交換する、という運用上の工夫も使われます[参考資料11]。電池の質量の増減を、機体の設計と運用で吸収する、という考え方です(推測)。

素材技術者の視点③:「1 kWh の箱」は、セルの数と温度で決まる

H2 の 0.972 kWh を、5 Ah の21700セルで作ると54本になる、というのが図8の試算です。セルの質量だけでも約3.8 kg で、その周りに、保護回路、配線、筐体が付きます。胴体の限られた空間に、これを収めて、モーターの熱と一緒に冷やす必要があります(解説)。電池の熱暴走の対策(「熱暴走と電池の安全」編)は、人の近くで動くロボットでは、特に重要です。

7. 太陽光:面積が出力を決める

太陽電池は、受ける面積に比例した電力を出します。小さなマルチコプターで、太陽光だけで飛べるか、数字で確かめます。1 kg の4ローター機(10インチのプロペラ)の理想のホバリング電力は、(mg)1.5 ÷(η√(2ρπN)·r)で、約72.7 W本稿の計算です(η=0.6、Bauersfeld と Scaramuzza の式と値[参考資料5])。これはモーターや電池の損失を含まない、機械的な理想の電力です。

一方、30 cm 角(0.09 m²)の太陽電池は、真昼の最大の想定(1000 W/m²、効率20%、いずれも本稿の仮定)で、約18 W本稿の計算です。50 cm 角でも約50 W本稿の計算です(図9)。つまり、小さなマルチコプターの機体の面積では、ホバリングの電力に届きません。太陽光は、巡航の電力が小さい固定翼機(本シリーズ「固定翼・VTOLと長時間飛行」編)の、電池を補う役に向きます(解説)。

太陽光で、ホバリングは賄えるか(本稿の計算。理想・最大の条件) ホバリングの機械的な理想電力(1 kg、4ローター) 72.7 W 太陽電池 0.09 m²(30 cm角)の最大出力 18.0 W 太陽電池 0.25 m²(50 cm角)の最大出力 50.0 W ホバリング電力:(mg)^1.5 ÷(η√(2ρπN)·r)、m=1 kg、ρ=1.225 kg/m³、N=4、r=0.127 m(10インチ)、η=0.6(Bauersfeld と Scaramuzza の式と値)。 太陽電池:面積 × 1000 W/m²(真昼・真上・晴天の最大の想定)× 効率20%(想定)。値は本稿の仮定で、出典で確認していない。 モーターや電池の損失は含まない(実際の電力は、理想より大きい)。太陽電池の質量も含まない。 結論:小さなマルチコプターでは、機体の面積だけでは、ホバリングの電力に届かない(理想の計算)。
図9 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。1 kg の4ローター機の理想のホバリング電力と、太陽電池の最大出力の例を比べました。日射と効率は本稿の仮定で、出典で確認していません。モーターの損失・太陽電池の質量は含みません。

8. 限界と、確認できなかったこと/まとめ

確認できなかったこと

  • ドローン用の小さな水素タンクの質量の割合:DOE の車載タンクの試算のみ確認しました。小形タンクの値は確認できませんでした
  • Heven AeroTech の燃料電池の出力、タンクの質量、水素の量:公開ページでは確認できませんでした。飛行時間などは、企業の主張で、第三者の検証は確認できませんでした
  • DJI の電池のセルの種類と、離陸時のピーク電流:仕様に記載がなく、確認できませんでした
  • Atlas の電池の容量:仕様書に記載がなく、確認できませんでした。Unitree H2 の電池の実際の構成も確認できませんでした
  • 太陽光の日射と太陽電池の効率:出典で確認できなかったため、本稿の仮定として明記しました
  • UN 試験・基準マニュアル 38.3 の原文:UNECE のサイトがボット確認の画面を出したため、確認していません(画面の確認は迂回していません)。セルの試験結果の要約のみ確認しました
  • ASTM 規格:ASTM International のサイトは AI 利用を禁じる旨を表示しているため、開いていません

まとめ

  • 電源は、エネルギー(Wh)と出力(W)の2つで見る。同じ大きさのセルで、エネルギーは1割しか違わなくても、連続出力は4倍違う本稿の計算
  • 電池を増やすと、ホバリングの飛行時間は途中で頭打ちになる(理想では電池が約67%で最大)。伸ばし続けるのは、エネルギー密度の向上本稿の計算
  • 水素は、出力ぶんの固定の質量があるため、飛行が短いうちは電池より重い。本稿の仮定では、約1時間前後で逆転する本稿の計算
  • 人型ロボットの電池は、1 kWh 級で、機体質量の割合は小さい。運用(自動交換)で吸収する工夫がある事実
  • 太陽光は、小さなマルチコプターのホバリングには足りない(理想の計算)本稿の計算

9. 評価・標準の読み方

電源の性能は、エネルギー(Wh、Wh/kg)、出力(W、W/kg、C レート)、寿命、安全のものさしで測ります。どれも、「セルか、パックか、システムか」「どんな条件で測ったか」で値が変わります。たとえば、Wh/kg は、セルで約240〜270、パックで約195(図3・本文)と、基準が変わるだけで数字が下がります。ここでは、確認できた範囲を表にします(確認日 2026年10月25日)。

評価項目代表的な試験・データの出どころ(名称・出典)標準・規則・指針(IEC・ISO・UN など)読み方の注意
セルの性能(容量、Wh/kg、連続放電)メーカーのデータシート(Molicel の3セル)[1〜3]事実確認できなかった(共通の C レートの定義は確認していない)連続電流の打ち切り条件(温度80℃など)が、セルごとに書き方が違う。メーカー公称
携帯機器用セルの安全メーカーが公開する認証書:INR-21700-P45B に IEC 62133-2:2017+A1 の証明書(TÜV Rheinland Japan、2021年12月13日付、報告書番号 JPTUV-130578)[14]事実IEC 62133-2:2017 “Secondary cells and batteries containing alkaline or other non-acid electrolytes — Safety requirements for portable sealed secondary cells, and for batteries made from them, for use in portable applications — Part 2: Lithium systems”(IEC Webstore。AMD1:2021 もある)[12]事実セル単体の証明で、機体に組んだパック・機器の安全とは別。証明書は、その型式・その日付のもの
産業用の電池の安全(AGV など)—IEC 62619:2022(産業用途のリチウム電池の安全。フォークリフト・AGV などの移動用途を含み、道路車両は除く。第2版、2022年5月24日)[13]事実倉庫の搬送ロボットなどで参照される可能性があるが、個々のロボットへの適用は確認していない(解説)
輸送の試験(UN 38.3)メーカーが公開する試験結果の要約:P45B は T1〜T8(高度模擬、熱試験、振動、衝撃、外部短絡、インパクト、過充電、強制放電)の項目を掲載(2020年9月15日付の報告)[15]事実UN 試験・基準マニュアル 38.3:原文は確認できなかった要約の「N/A」の項目(過充電、圧壊)は、その報告での記載。意味は原文で確認が要る
パック・機体の飛行時間DJI:最大飛行時間55分(荷物なし、無風、約8 m/s、残量0%まで)[4]事実。Heven:最大4時間(荷物あり)[7]事実確認できなかった(飛行時間の共通の測り方は確認していない)測り方・荷物・速度が違う数字を並べて比べない
燃料電池モジュールIntelligent Energy のデータシート(連続出力、質量、保証1000時間)[6]事実確認できなかったメーカー公称。耐久は保証時間の範囲
水素タンクDOE Program Record 24006(車載700 bar タイプ4の試算:1.71 kWh/kg)[9]事実DOE の記録は標準ではなく試算。車載の規格は本シリーズの「高圧水素タンク」編車用の大きなタンクの値で、ドローン用の値ではない
人型ロボットの稼働時間Atlas:電池寿命4時間(重い荷物で2時間)[11]事実。H2:電池 0.972 kWh[10]事実確認できなかった動作の内容で変わる。メーカー公称

規格の番号・題名・状態は IEC Webstore で確認(確認日 2026年10月25日)。規格の本文は有料のため、適用範囲の記載にとどめています。表の整理は本稿の計算。ASTM 規格の番号は、AI 利用を禁じる旨の表示があるため、本稿では扱いません。

読み方の注意(素材技術者向け)

  • セルの値と、パックの値は別です:195 Wh/kg(TB65)は、セル単体(242〜269 Wh/kg)より低い。「Wh/kg」を見たら、セルか、パックか、システムかを確かめます
  • メーカー公称と、第三者の検証は別です:飛行時間や稼働時間は、条件つきの公称値です。Heven の「4時間」も企業の主張で、第三者の検証は確認できませんでした
  • 標準は、多くが任意の採用です:IEC・ISO の規格は、一般に、法令や契約で引用されて初めて拘束力を持ちます(解説)。証明書は、型式と日付を確認します
  • 試算は、仮定で決まります:図6の逆転点(約0.86〜1.22時間)は、燃料電池の効率・タンクの値の仮定で動きます。実機の結論ではありません

10. 用語集

エネルギー(Wh)
どれだけ長く動けるかの量。W × 時間。
出力(W)
1秒あたりに出せる仕事。どれだけ強く出せるか。
Cレート
電池の容量を1時間で使い切る電流を 1 C とした、放電の速さ。
セル
電池の最小の単位。円筒形の21700(直径21 mm、長さ70 mm)などがある。
パック
セルをつなぎ、保護回路と筐体を付けた電池。
質量あたりのエネルギー(Wh/kg)
電池1 kg が持つエネルギー。セルとパックで値が違う。
S(直列)、P(並列)
セルを直列に何個(6S = 6個)、並列に何本つなぐか。
ホバリング
ドローンが空中で止まっている状態。
燃料電池
水素と酸素から電気を作る装置。スタックが出力を決める。
スタック
燃料電池の単セルを重ねた本体。
ハイブリッド電池
燃料電池と併用し、ピークの電力を補う電池。
低位発熱量
燃料が燃えたときに取り出せる熱の量(水蒸気の凝縮熱を含めない)。水素は33.33 kWh/kg。
タイプ4タンク
樹脂のライナーを、炭素繊維の複合材で巻いた高圧の水素タンク。
最大離陸質量(MTOW)
飛べる最大の機体の質量(荷物と電池・燃料を含む)。
自由度(DOF)
関節が動かせる方向の数。
電力量
エネルギーの別名。Wh や kWh で表す。
IEC 62133-2
携帯用のリチウム電池の安全の規格。
UN 38.3
リチウム電池の輸送の前に受ける試験(T1〜T8)。
日射(W/m²)
1 m² あたりに届く太陽のエネルギーの出力。

11. 参考資料(一次情報)

  1. Molicel(E-One Moli Energy) “Product Data Sheet, Model INR-21700-P45B”, Version 1.2 — https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700P45B_1.2_Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P45B-80109.pdf
  2. Molicel(E-One Moli Energy) “Product Data Sheet, Model INR-21700-M50A” — https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700M50A-V3-80097.pdf
  3. Molicel(E-One Moli Energy) “Product Data Sheet, Model INR-21700-P50B”, Version 1.1 — https://www.molicel.com/wp-content/uploads/Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P50B-80122.pdf
  4. DJI Enterprise “Matrice 350 RTK — スペック”(質量、TB65 の仕様、最大飛行時間。確認日 2026年10月25日) — https://enterprise.dji.com/matrice-350-rtk/specs
  5. Bauersfeld L., Scaramuzza D. “Range, Endurance, and Optimal Speed Estimates for Multicopters”, IEEE Robotics and Automation Letters(2022、arXiv:2109.04741。ホバリング電力の式 (5)、FoM 0.5〜0.7 の記述を確認) — https://arxiv.org/abs/2109.04741
  6. Intelligent Energy “IE-SOAR 1.2kW Fuel Cell Power Module Datasheet”(2023年5月) — https://www.intelligent-energy.com/wp-content/uploads/2024/02/IE-SOAR-1.2kW-MAY-2023.pdf
  7. Heven AeroTech “H2D55″(製品ページ。企業の公称。確認日 2026年10月25日) — https://hevenaerotech.com/h2d55/
  8. Heven AeroTech “Introducing our new H2D200 series”(ブログ、2023年11月27日。企業の発表) — https://hevenaerotech.com/introducing-our-new-h2d200-series/
  9. 米国エネルギー省(DOE) Hydrogen Program Record 24006 “Onboard Type IV Compressed Hydrogen Storage System – Cost and Performance Status”(2025年4月28日) — https://www.hydrogen.energy.gov/docs/hydrogenprogramlibraries/pdfs/24006-onboard-storage-cost-performance-status.pdf
  10. Unitree Robotics “Unitree H2″(製品ページ。質量、電池容量、電圧。確認日 2026年10月25日) — https://www.unitree.com/H2/
  11. Boston Dynamics “Atlas Specifications”(仕様書、Rev. 2026年10月15日) — https://bostondynamics.com/wp-content/uploads/2026/01/atlas-spec-sheet.pdf
  12. IEC “IEC 62133-2:2017″(IEC Webstore) — https://webstore.iec.ch/en/publication/32662
  13. IEC “IEC 62619:2022″(IEC Webstore) — https://webstore.iec.ch/en/publication/64073
  14. Molicel(E-One Moli Energy) IEC 62133-2:2017+A1 の証明書(INR-21700-P45B、TÜV Rheinland Japan、2021年12月13日) — https://www.molicel.com/wp-content/uploads/1202-IEC2017-INR21700P45B-S.-001-Cert.pdf
  15. Molicel(E-One Moli Energy) UN 38.3 の試験結果の要約(INR-21700-P45B、報告書番号 EDP210629001-001、2020年9月15日) — https://www.molicel.com/cn/wp-content/uploads/1201-UN-INR21700P45B-Enex.pdf

12. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
Molicel の3セルの容量、Wh、質量あたりのエネルギー(269/242/260 Wh/kg)、連続放電電流(15/45/60 A)、質量の上限(70/70/71 g)、80℃での打ち切り(P45B・P50B)、内部抵抗の記載Molicel(E-One Moli Energy); Molicel(E-One Moli Energy); Molicel(E-One Moli Energy)
出典1 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700P45B_1.2_Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P45B-80109.pdf
出典2 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700M50A-V3-80097.pdf
出典3 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P50B-80122.pdf
事実
C = 電流 ÷ 容量(3 C、10 C、12 C)、連続出力の目安(約771/2,314/3,042 W/kg)本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700P45B_1.2_Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P45B-80109.pdf
出典2 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/INR21700M50A-V3-80097.pdf
出典3 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/Product-Data-Sheet-of-INR-21700-P50B-80122.pdf
本稿の計算
DJI Matrice 350 RTK:電池なし約3.77 kg、TB65 を2個載せて約6.47 kg、TB65 の 5880 mAh・44.76 V・263.2 Wh・約1.35 kg、最大飛行時間55分(荷物なし、無風、約8 m/s、残量0%まで)DJI Enterprise
出典1 https://enterprise.dji.com/matrice-350-rtk/specs
事実
約195 Wh/kg、電池が全質量の約42%、平均電力約574 W、約89 W/kg、約12.8 A、約1.1 C、526.4 Wh本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://enterprise.dji.com/matrice-350-rtk/specs
本稿の計算
ホバリング電力の式 (5):質量の1.5乗に比例、η(FoM)は0.5〜0.7、本稿は0.6を使用Bauersfeld L., Scaramuzza D.
出典1 https://arxiv.org/abs/2109.04741
事実
飛行時間 ∝ m_b/(m_0+m_b)^1.5、電池が約67%(m_b=2m_0)で最大、割合20%で0.46、42%で0.83、最大まで約21%増、全質量約11.3 kg、エネルギー密度+20%で飛行時間+20%本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://arxiv.org/abs/2109.04741
本稿の計算
IE-SOAR 1.2 kW:連続1200 W、ピーク最大8000 W、モジュール2700 g、調圧器315 g、最大圧力350 bar、既定のハイブリッド電池(6S×2直列、535 g、3300 mAh、ピーク4800 W)、保証1000時間Intelligent Energy
出典1 https://www.intelligent-energy.com/wp-content/uploads/2024/02/IE-SOAR-1.2kW-MAY-2023.pdf
事実
約444 W/kg(モジュールのみ)、約294 W/kg(調圧器とハイブリッド電池を含む、約4.085 kg)本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://www.intelligent-energy.com/wp-content/uploads/2024/02/IE-SOAR-1.2kW-MAY-2023.pdf
本稿の計算
DOE の車載700 bar タイプ4タンクの試算:使える水素5.6 kg、システム質量109 kg、1.71 kWh/kg、0.86 kWh/L米国エネルギー省(DOE)
出典1 https://www.hydrogen.energy.gov/docs/hydrogenprogramlibraries/pdfs/24006-onboard-storage-cost-performance-status.pdf
事実
5.6÷109=約5.1%、1.71×50%=0.855 kWh/kg、逆転点約0.86時間(タンクが半分で約1.22時間)、4時間での質量(約24.6/9.7/15.3 kg)本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://enterprise.dji.com/matrice-350-rtk/specs
出典2 https://www.intelligent-energy.com/wp-content/uploads/2024/02/IE-SOAR-1.2kW-MAY-2023.pdf
出典3 https://www.hydrogen.energy.gov/docs/hydrogenprogramlibraries/pdfs/24006-onboard-storage-cost-performance-status.pdf
本稿の計算
Heven AeroTech H2D55:飛行時間最大4時間(荷物あり)、最大離陸質量65ポンド(29 kg)、荷物10ポンド、巡航22 mph、タンク交換5分未満(企業の公称)Heven AeroTech
出典1 https://hevenaerotech.com/h2d55/
事実
H2D200:荷物4.5 kg・航続510 km・最大4時間、H2D250:荷物10 kg・航続750 km・最大8時間(2023年11月の企業の発表)Heven AeroTech
出典1 https://hevenaerotech.com/introducing-our-new-h2d200-series/
事実
Unitree H2:質量約70 kg(電池込み)、31自由度、15 Ah(0.972 kWh)、最大75.6 VUnitree Robotics
出典1 https://www.unitree.com/H2/
事実
Atlas:質量90 kg、56自由度、電池寿命4時間(重い荷物で2時間)、自動交換3分、充電1.5時間(電池容量の記載なし)Boston Dynamics
出典1 https://bostondynamics.com/wp-content/uploads/2026/01/atlas-spec-sheet.pdf
事実
972÷70=約13.9 Wh/kg、526.4÷6.47=約81.4 Wh/kg、4時間→2時間で平均電力が約2倍、18直列×3並列=54本、54×70 g=3.8 kg(約5.4%)本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://enterprise.dji.com/matrice-350-rtk/specs
出典2 https://www.unitree.com/H2/
出典3 https://bostondynamics.com/wp-content/uploads/2026/01/atlas-spec-sheet.pdf
本稿の計算
1 kg の4ローター機の理想ホバリング電力約72.7 W、太陽電池 0.09 m² で約18 W、0.25 m² で約50 W(日射1000 W/m²・効率20%は本稿の仮定)本稿の計算(入力は出典の公表値、または明記した仮定)
出典1 https://arxiv.org/abs/2109.04741
本稿の計算
IEC 62133-2:2017(携帯用リチウム電池の安全、AMD1:2021 あり)IEC
出典1 https://webstore.iec.ch/en/publication/32662
事実
IEC 62619:2022(産業用途、移動用途は AGV 等を含み道路車両を除く、第2版2022年5月24日)IEC
出典1 https://webstore.iec.ch/en/publication/64073
事実
P45B の IEC 62133-2:2017+A1 証明書(TÜV Rheinland Japan、2021年12月13日、JPTUV-130578)Molicel(E-One Moli Energy)
出典1 https://www.molicel.com/wp-content/uploads/1202-IEC2017-INR21700P45B-S.-001-Cert.pdf
事実
P45B の UN 38.3 試験結果の要約(T1〜T8、報告書番号 EDP210629001-001、2020年9月15日)Molicel(E-One Moli Energy)
出典1 https://www.molicel.com/cn/wp-content/uploads/1201-UN-INR21700P45B-Enex.pdf
事実
セルの値とパックの値の違いの理由、出力型が電極の作り方で作り分けられること、人型ロボットの電池を大きくできない理由、水素ドローンの材料の見方、太陽光の位置づけ解説・本稿の整理(出典のない読み取り)。各機関の見解ではない解説
図の作り:図2〜図6・図8・図9が説明用の概念図または本稿の計算を含む作図であること。図1・図7がImageGen生成の概念画像であること解説・本稿の整理(出典のない読み取り)。各機関の見解ではない解説
小形水素タンクの質量の割合、Heven の燃料電池の出力・タンク質量、DJI のセルとピーク電流、Atlas の電池容量、UN 38.3 の原文、日射・太陽電池効率の出典、ASTM 規格本稿の調査範囲では、一次情報で確認できなかったため記載していない解説

最終更新:2026年10月25日/出典は一次情報(メーカーのデータシートと公式ページ、DOE の記録、論文、IEC の公式ページ)に限定しています。 性能値はメーカー公称で、条件つきです。ドローン用の小形水素タンクの質量、Heven AeroTech の燃料電池の出力、DJI の電池のセルとピーク電流、Atlas の電池の容量、UN 38.3 の原文、太陽光の日射・効率の出典については、確認できなかったため記載していません。 図2〜図6・図8・図9は説明用の概念図または本稿の計算を含む作図で、図1と図7はImageGen生成の概念画像です。