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ユービーテック・ロボティクス 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

ユービーテック・ロボティクス
― 教育ロボットで育ち、工場向けの全身サイズの人型ロボットへ軸足を移した香港上場の会社

UBTech Robotics(優必選、深圳)は、2012年に設立され、2023年12月29日に香港取引所のメインボードへ上場した会社です。もとは教育用ロボットや家庭向けの機器が中心でしたが、2025年から工場向けの全身サイズの人型ロボット(Walker S2など)を売上の柱に育てています。会社は、全身サイズの人型ロボットの販売台数を2025年に1,079台、2026年上期に921台と開示しました。2026年上期(未監査)の売上は12.69億元で前年同期の2.04倍、うち全身サイズ人型が46.5%です。一方、損失は続いており(2025年7.90億元、2026年上期3.39億元)、2026年3月には園芸機械・自動車部品の上場会社を取得して、売上の構成が変わりました。本稿は、これらを香港取引所(HKEXnews)への開示の範囲で整理します。受注額や「世界初」は会社の主張として扱い、調査会社の推計は使いません。確認日は2026年10月25日です。

構成:UBTECH ROBOTICS CORP LTDが香港取引所(HKEXnews)に提出した2026年中間決算発表(8月28日)・中間報告書(9月24日)・2025年通期決算発表(2026年3月31日)・取得の公告(2025年12月24日)・任意開示(2025年4月27日)を一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるUBTechと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(ロボットに関わる部分に絞る)
  5. ロボット・ドローンにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるUBTechと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称UBTECH ROBOTICS CORP LTD
(深圳市優必選科技股份有限公司)
2012年3月31日に中国で設立。株式会社化したのち、2023年に香港上場。最大株主は創業者の周剣氏(23.5%、2025年末)で、最終的な支配株主はいない
本社中国・広東省深圳市2025年末の拠点は深圳の本社のほか、柳州・北京・厦門・九江・石家荘・杭州など
上場香港取引所メインボード 9880
(2023年12月29日)
IPOの純手取りは9.3121億香港ドル(使途は全額消化)。2025年には3回の第三者割当で追加の資金を調達
この分野での区分ヒューマノイド・物理AI(主)
産業・専門ロボット(従)
全身サイズの人型が2025年売上の41%(本稿の計算)。物流・教育のロボットが従たる類型。区分は本稿による
2025年の売上20.01億元前年比53.3%増(2024年は13.05億元)。損失は7.90億元(2024年は11.60億元)
2026年上期の売上(未監査)12.69億元前年同期の2.04倍。全身サイズの人型は5.90億元(売上の46.5%)。損失は3.39億元
全身サイズ人型の販売台数(会社の数字)2025年 1,079台
2026年上期 921台
製品とサービスの合計の収益に対応する台数。第三者の推計は使わない
従業員2,744人(2026年6月末)2025年末は2,550人(うち中国本土2,545人)。2025年の人件費総額は9.146億元
まず押さえるべき1点

UBTechは、教育・家庭向けの機器で育った会社が、2025年に工場向けの全身サイズの人型ロボットを売上の柱にした会社です。全身サイズの人型は2024年の売上の約3%(0.36億元)から、2025年は41%(8.21億元)、2026年上期は46.5%(5.90億元)になりました 事実。ただし、会社は赤字が続き、2026年上期は買収の支払いで現金が48.9億元から23.3億元に減りました。また、取引所への開示には、受注の金額や買い手の名前がありません(2025年4月の任意開示は、自動車工場向けの調達契約を「金額・相手非開示」で伝えた) 事実。工場での作業は、会社自身が「遠隔操作の検証・データ収集・モデルの訓練」を組み合わせた枠組みで進めていると説明しています。本稿は「人型の量産が急に立ち上がった事実」と「その中身(自律か遠隔か、受注の金額)が開示の外にある部分」を分けて読みます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:英語名はUBTECH ROBOTICS CORP LTD、中国語名は「深圳市優必選科技股份有限公司」で、日本語では「優必選(ユービーテック)」「UBTech」と書かれます。人型ロボットの製品名はWalker(二足歩行の工場・商業向け)、Cruzr(車輪型)、U1(超精巧な人型)などで、社名ではありません。会社は、人型ロボットを「全身サイズの具身知能の人型」と「非具身知能の人型(おしゃべりや教育向けの小型)」に分けて売上を開示します。「具身知能」は、体を持つロボットが現実の世界で動いて学ぶAIを指します。

公式サイト:https://www.ubtrobot.com/en/(ロゴは公式サイトのヘッダー画像。白抜きのため暗い背景に置いています)

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 UBTechは「ヒューマノイド・物理AI」を主、物流・教育向けの「産業・専門ロボット」を従とする会社(本稿) 工場向けの全身サイズの人型ロボットを量産しつつ、教育・物流・家庭向けの機器も販売する(取引所開示の記載)
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、UBTechの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。UBTechが全身サイズの人型ロボットを主力とし、物流・教育・家庭向けの機器も販売することは、決算発表の記載に基づきます。

本シリーズの技術解説「ヒューマノイドロボット」「倉庫・物流ロボット」「遠隔操作とデータ収集」も参照してください。UBTechの売上は、全身サイズの人型(工場・商業・研究向け)、非具身の人型(小型・教育・家庭向け)、教育・物流などのロボット、家庭向け機器(ペット用品・掃除機など)、そして2026年4月から園芸機械・自動車・油圧部品の5つに分かれます。区分は本稿によるもので、会社が自らこの類型に分けているわけではありません 本稿の計算。

4. 会社の規模(ロボットに関わる部分に絞る)

金額の単位は百万元(人民元)です。2024〜2025年は通期決算発表の数字、2026年上期は未監査の中間決算の数字です 事実。

指標(百万元)2024年2025年
売上高1,305.42,001.0(+53.3%)
 うち全身サイズの人型の製品・サービス35.6820.6(+2,203.7%)
 うち非具身の人型41.648.0
 うちその他のロボットの製品・サービス756.6628.7
 うちその他のスマート機器469.0499.2
売上総利益(率)374.0(28.7%)753.8(37.7%)
研究開発費(売上比)478.1(36.6%)507.5(25.4%)
当期の損失(1,159.9)(789.8)
設備投資400.4613.5
指標(百万元)2025年上期2026年上期(未監査)
売上高621.51,269.1(+104.2%)
 全身サイズの人型38.2(6.1%)590.3(46.5%)
 非具身の人型26.8(4.4%)32.7(2.6%)
 その他のロボット302.8(48.7%)245.8(19.4%)
 その他のスマート機器252.0(40.5%)259.4(20.4%)
 園芸機械・自動車・油圧部品—139.2(11.0%)
売上総利益(率)217.3(35.0%)566.9(44.7%)
研究開発費(売上比)218.3(35.1%)303.1(23.9%)
当期の損失(440.0)(338.8)
調整後EBITDA(会社の非GAAP指標)(321.8)(174.1)
信用減損損失1.391.1

2026年6月末の現金は2,325.6百万元で、2025年末の4,887.9百万元から減りました。会社は、1,665.3百万元の買収の支払いが主な理由と説明しています。借入は997.3百万元、売掛金は総額2,225.1百万元(貸倒引当金545.5百万元を除く純額は1,679.6百万元)です。売掛金のうち1年を超えるものは767.9百万元(2年超は542.5百万元)です 事実。

ここで注意

「全身サイズの人型の台数」は、製品とサービスの収益に対応する台数です。会社は、全身サイズの人型の収益を「製品とサービス」の合計で開示し、販売台数(2025年1,079台、2026年上期921台)を併記しますが、台数あたりの価格や、サービス(運用・データ収集など)と機体の内訳は開示していません。また、2026年上期の信用減損損失が91.1百万元と前年同期の70倍になったのは、予想信用損失率の算定方法を変えたためと会社は説明しています 事実。本稿は、台数の「質」(実運用か、試験・研究用か)を判断せず、会社の記載を並べるにとどめます。

5. ロボット・ドローンにかけているリソース

4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、決算資料などで確認できたかを表にします。

リソースの種類内容区分
人2025年末に2,550人(うち2,545人が中国本土、主に深圳の本社)、2026年6月末に2,744人。2025年の人件費総額は914.6百万元(前年は940.7百万元、株式報酬の減少が主な理由)、2026年上期の従業員給付費は484.9百万元。研究開発の人員数は確認できず事実(研究開発人員は確認できず)
金:研究開発費・設備投資研究開発費は2025年に507.5百万元(売上の25.4%)、2026年上期に303.1百万元(23.9%)。設備投資は2025年に613.5百万元(深圳の本社ビル、杭州臨安のプロジェクト、九江の産業園、無錫のUQI PARKなど)事実
金:資金調達2023年のIPOの純手取りは9.3121億香港ドル(全額使用済み)。2025年に3回の第三者割当(H株)を実施し、純手取りは2月8.7632億・7月24.1026億・11月30.5571億香港ドル(合計約63.4億香港ドル、本稿の計算)。11月分のうち22.9178億香港ドルは、上流・下流企業への投資や買収に充てる計画で、2026年6月末までに17.565億香港ドルを使用事実
外部への出資・買収浙江鋒龍電気(深圳上場、園芸機械・油圧制御・自動車部品)の株式29.99%を2026年3月に取得し、4月にさらに13.02%を追加して計43.01%に。総額は1,665.3百万元(現金)で、2026年4月から連結。会社は、人型ロボットの量産・コスト・販路を強める狙いと説明。2026年1月には、柳州の産業ファンドと共同のパートナーシップ(総額660百万元、会社の出資は300百万元)の設立を取り決め事実
大学・研究機関・公的機関との連携教育部傘下の中国職業技術教育学会と共同で、人型ロボットの「生産工程のデータ収集センター」を設置(28機関が参加、2026年上期)。深圳職業技術大学と、職業系の本科大学として国内初の具身知能の産業研究院を設立。開発者コミュニティ「Thinker Cosmos」を香港中文大学・北京航空航天大学・武漢大学などが支援。国の人型ロボットの標準づくりに参加(「人型ロボットの技術要件」第5〜7部の取りまとめ)と、会社は記載事実(会社の記載)

主要な製品・設備の状況を、会社の決算資料で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月25日)。仕様と能力はいずれも会社の公称です。

製品・設備種別主な仕様・実績(会社の記載)段階出典
Walker S2工場向けの二足の人型(第3世代)バッテリーの自動交換(3分)と24時間連続稼働、胴体52自由度、15kgの荷物の取り扱い。2025年に量産・納入を開始し、「千台規模の小規模量産」を実現と記載提供(2025年に量産開始)出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
第4世代の工場向け人型二足の人型航空宇宙グレードの軽量材料で全体の重さを15%以上減らし、バッテリー交換を2分に短縮。2026年上期に開発と記載開発(2026年上期)出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
Cruzr S2/Cruzr Y1車輪型の人型(工場向け)腰を折り曲げる機構、15kgの荷物。Cruzr Y1は国産の演算チップを採用し、混載の環境で知覚から把持・配置までを自律で実行できると会社は記載提供(Y1は2026年上期に展開)出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf 出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
Walker C1商業向けの二足の人型3Dプリントの格子構造を「筋肉」に使い、53自由度。案内・受付・教育・研究向け提供(2026年上期に発表)出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
U1シリーズ超精巧な人型男女2種類、全身88自由度、顔に19の能動自由度。商業・家庭の話し相手向け発表(2026年上期)出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
無人物流車 Chitu、Waliシリーズ物流ロボットChituは鴻海の鄭州工場で量産を開始し、世界での予約販売を開始。車輪型の人型で、OPmobility・Jabil・鴻海・本田技研などへのプロジェクトを納入と会社が記載提供(2026年上期)出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
Thinker、Thinker-WM、Thinker-VLA具身AIのモデルThinker 1.0を2026年上期に公開、9つの評価で首位と会社が記載。モデルの重みはGitHubとHugging Faceで公開。VLAによる積み降ろしの成功率は実験室で75%公開(Thinker)/改良中出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
器用な手(第4・5世代)部品第4世代は11自由度・ウォームギアで指先12.5N。第5世代は19自由度で触覚と視覚のセンサーを搭載開発・搭載出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf

「世界初」「世界一」「受注量で首位」はいずれも会社の記載です。2025年末の年換算の生産能力は全身サイズの人型で6,000台超(会社の記載)、2026年上期の決算発表は「年間1万台の生産目標」の達成に言及しています。いずれも会社の能力・目標で、独立した検証は確認できていません。

運用の主張も整理します。会社は、全身サイズの人型の「サービス」を、需要評価・ソリューション設計・遠隔操作での検証・データ収集・モデル訓練を一巡させる枠組みで進めると説明し、遠隔操作のテストを無線の回線で地域をまたいで実施した、と記載しています。工場での複数台の協調作業(箱の運搬、仕分け、部品の組立、品質検査)は「現場試験」と書かれ、VLAによる積み降ろしの成功率は実験室で75%でした。2025年の大阪万博で中国館の案内役を務め、190万人超に対応した、との記載もあります。台数・時間・独立した検証は、いずれも確認できません。会社の主張として読んでください 事実。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2012年3月深圳で設立(有限責任会社)。のち株式会社へ教育・消費者向けのロボットから事業を始めた
2023年12月29日香港取引所メインボードへ上場IPOの純手取りは9.3121億香港ドル
2025年2月・7月・11月H株の第三者割当を3回。純手取りは合計約63.4億香港ドル(本稿の計算)人型の量産・買収の資金を確保
2025年4月27日自動車工場向けの人型(Walker S1・Walker C)の調達契約を結び、前払金を受領と任意開示(金額・相手は非開示)工場向けの最初の調達契約として開示
2025年Walker S2を発表し量産・納入を開始。全身サイズの人型の売上は8.21億元(前年の23倍)、販売は1,079台売上の柱が教育・消費者向けから人型へ移り始めた
2025年12月〜2026年4月浙江鋒龍電気の株式を取得(2025年12月に契約、2026年3月に29.99%、4月に13.02%を追加して43.01%)園芸機械・油圧・自動車部品の製造基盤を取り込んだ
2026年1月22日柳州の産業ファンドと共同のパートナーシップの設立を取り決め(総額660百万元、会社の出資300百万元)ロボット産業チェーンへの投資
2026年上期Cruzr Y1・Walker C1・U1シリーズ・第4世代の工場向け人型を発表。Thinker 1.0を公開。全身サイズの人型の販売は921台製品の種類を広げた
2026年7月国内株(内資株)5,453,931株をH株へ転換して上場(H株の全流通)株式の流通の整理
2026年8月28日中間決算を発表。売上12.69億元(+104.2%)、損失3.39億元売上は倍増、損失は縮小

7. 今後の計画

生産の目標年間1万台の生産目標2026年上期の発表が言及。対象の年・条件は記載なし。2025年末の年換算能力は6,000台超(会社の記載)
AIモデルThinker-WM 2.0を
2026年下期に公開予定
世界モデルの強化。Thinker-VLAは長期の作業と実機での推論を強化する計画
製品工場向けの新型・商業向け・家庭向けWalker Sの新型、Walker C、U1の改良。プール清掃ロボPC30は2026年末までに量産開始の計画
データ年間1,000万件超を収集工場の希少なデータを複数のセンターで収集する期待(2025年の通期決算の記載)

以上は会社が述べた計画・目標で、達成が確定したことではありません 未確定/将来。2026年8月26日の臨時株主総会では、2025年11月の第三者割当の手取りの使途の調整が承認されました(詳細は同社の通達による)。

確認できなかったこと

次はいずれも決算発表・中間報告書・任意開示で確認できませんでした 未確定/将来。全身サイズの人型の受注金額と買い手の名前(2025年4月の調達契約も金額・相手は非開示)/台数あたりの価格/人型ロボットが自律で行った作業の割合(遠隔操作との比率)/工場での稼働台数・稼働時間・独立した検証/研究開発の人員数/鋒龍電気の今後の経営方針。「世界初」「受注量で首位」は会社の主張で、本稿は検証していません。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
売上の中心が教育・消費者向けから、工場向けの人型へ移っている全身サイズの人型は2024年の2.7%→2025年41.0%(本稿の計算)→2026年上期46.5%。教育ロボットの製品・サービスは2025年上期の38.6%から2026年上期の9.6%へ(旧区分)事実
現在の実用は、遠隔操作とデータ収集に支えられた段階会社は、導入の枠組みに「遠隔操作での検証・データ収集・モデル訓練」を含めると説明。VLAの成功率は実験室で75%推測
買収で、量産とコストの力を外から取り込む鋒龍電気の取得理由として、製造力・供給網・顧客基盤の統合による競争力とコスト構造の改善を挙げる(取締役会の説明)。売上の11%を占める事業が加わった推測
増資に依存した先行投資の段階2025年の第三者割当の純手取りは合計約63.4億香港ドル。損失は続き、2026年上期に現金が減った推測
人型を工場・商業・家庭の3用途へ広げようとしている2026年上期の発表は、工場(Walker S・Cruzr)、商業(Walker C)、商業・家庭(U1)の3つへの展開を記載事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

会社は、全身サイズの人型の「サービス」について、「需要評価→ソリューション設計→遠隔操作での検証→データ収集→モデル訓練」の閉じた枠組みで大規模導入を進めると説明します。同じ資料で、VLAによる積み降ろしの成功率は実験室で75%、遠隔操作のテストは地域をまたいで無線の回線で実施、と述べています 事実。これらから本稿は、「現場の作業は、人が遠隔で操作する工程と、AIの自律の工程が混ざった段階にあり、データを集めて自律の割合を高めようとしている」と読みます。ただし、その割合は開示されておらず、確認できません 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

UBTechを中心としたドローン・ロボティクス分野の関係 決算資料・公告に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない(確認日 2026年10月25日) UBTech 人型ロボ 鴻海・本田技研・Jabilなど 物流ロボットの納入先(会社記載) 中国職業技術教育学会 人型のデータ収集センター(28機関) 深圳職業技術大学ほか 産業研究院・開発者コミュニティ 柳州の産業ファンド 共同のパートナーシップ(660百万元) 鴻海(鄭州工場) 無人物流車Chituの生産 浙江鋒龍電気 43.01%を取得し連結(2026年4月) 国産の演算チップの供給元 Cruzr Y1に採用(社名は非開示) Xsens・Picoなどの機器 遠隔操作とデータ収集の仕組み 導入・共同の取り組み 生産・部品・技術の供給元 出資・買収(確定前を含む)
図2 出典:中間決算発表、中間報告書、取得の公告。左は導入先と共同の取り組み、右は生産・部品・技術の供給元と出資・買収です。納入先の名前は2026年上期の会社の記載で、台数・金額は開示されていません。鋒龍電気は2026年4月から連結子会社、柳州のパートナーシップは2026年1月に取り決めた枠組みです。点線の関係は出資・買収で、共同開発を意味しません。

10. 提供している技術・製品・サービス

層主な製品決算資料・公式資料の記述
本体全身サイズの人型:Walker S/S1/S2、Walker C1、Cruzr S2・Y1、U1。小型:Yanshee、AI Wukong など工場・商業・家庭の3用途に展開。会社は「具身知能のエコシステム・プラットフォームと物理AI端末の会社」と自らを位置づけ
AI・ソフトThinker(基盤モデル)、Thinker-WM(世界モデル)、Thinker-VLA、BrainNet 2.0・Co-Agent(複数台の協調)、ROSA(自社のロボット用ソフト)「身体の脳・小脳・高性能な体・群知能」の4つの技術群。モデルの重みと訓練の道具を公開し、開発者を集める
サービス・データ運用サービス、データ収集センター、遠隔操作の検証運搬・仕分け・積み降ろし・デパレタイズなどの工場作業。データ収集の拠点を複数の地域に設置
教育・物流教育:Yanshee、UGOT、UDECA。物流:Waliシリーズ、Chitu2025年の物流ロボットの出荷は約3,000台(60超の都市・地域、6か国、会社の記載)
家庭向け機器・部品スマートペット用品、掃除・プール清掃のロボット/園芸機械・自動車・油圧部品(鋒龍電気)2026年上期は、その他のスマート機器が売上の20.4%、園芸機械等が11.0%
素材技術者の視点:人型を「軽く、速く、壊れにくく」する部品

軽量化の主張:会社は第4世代の工場向け人型で、「航空宇宙グレードの軽量材料」により全体の重さを15%以上減らし、バッテリー交換を2分に縮めたと説明します。材料の種類(アルミ合金・マグネシウム合金・炭素繊維など)は記載がなく、確認できません 事実。重いほど、歩行に必要な電力と、転倒時の衝撃が大きくなります(本シリーズの「ロボット・ドローンの構造材料」「ロボットとドローンの電源」を参照)。

3Dプリントの格子構造:Walker C1は、3Dプリントで作った格子(ラティス)構造を「筋肉の構造」として使うと説明します。格子は、材料を網目状に配置して、軽さと衝撃吸収を両立させる考え方です 事実。

関節の部品:Cruzr Y1は「一体化した波動歯車(ハーモニック)関節」を使うと説明します。波動歯車は、薄い金属の歯車を変形させて回転を減らす減速機で、小型で背隙(がたつき)が小さいのが特徴です(本シリーズの「減速機とギア」を参照)。手の第4世代はウォームギア(ねじ状の歯車)で指先12.5Nを出し、第5世代は19自由度、触覚と視覚のセンサーを備えます 事実。

顔の表現:U1は顔に19の能動自由度を持ち、「多材料プロセスの最適化」で人の表情に近づけたと説明しますが、使う材料(シリコーンなど)は記載がありません 未確定/将来。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
赤字の継続2025年の損失は7.90億元、2026年上期は3.39億元(前年同期の4.40億元から縮小)。調整後EBITDAも2026年上期に1.74億元の赤字事実
開示されない受注の中身受注額・買い手・台数あたりの価格・稼働状況は決算資料に記載がなく、「受注量で首位」は会社の主張。2025年4月の調達契約も金額・相手は非開示事実
売掛金と信用リスク2026年6月末の売掛金の総額は2,225.1百万元で、貸倒引当金が545.5百万元。1年を超える売掛金は767.9百万元。2026年上期の信用減損損失は91.1百万元(算定方法を変更)事実
在庫の増加在庫は2025年末の576.5百万元から2026年6月末の985.5百万元へ事実
現金の減少と借入現金は4,887.9百万元(2025年末)から2,325.6百万元(2026年6月末)へ。借入は997.3百万元。子会社の株式の全部と不動産、一部の特許が銀行借入の担保事実
買収した事業の統合園芸機械・自動車・油圧部品の事業が売上の11%を占める(2026年上期)。人型ロボットとの相乗効果は会社の説明で、実績は確認できない事実
技術の成熟度VLAによる積み降ろしの成功率は実験室で75%。工場での作業は遠隔操作の検証を含む枠組みで進めると会社が説明事実
支配株主がいない構造最大株主の周剣氏は23.5%(2025年末)で、最終的な支配株主はいない。会長と最高経営責任者を兼務(会社が企業統治コードからの逸脱として開示)事実

12. 用語集

全身サイズの人型
人とほぼ同じ大きさの人型ロボット。会社は「具身知能の人型」として別に売上を開示する。
非具身の人型
会話や教育向けの小型の人型。会社の分類で、全身サイズの人型とは別に開示される。
具身知能
体を持つロボットが、現実の世界で動いて学ぶAI。
VLA/世界モデル
VLAは映像・言葉・動作を結ぶモデル。世界モデルは、世界の変化を予測するモデル。
遠隔操作
人が離れた場所からロボットを操作すること。作業のデータを集めるためにも使われる。
BrainNet・Co-Agent
複数台のロボットで作業を分担・協調させるための、会社のソフトの名前。
調整後EBITDA
会社が示す非GAAPの指標。損益に、利息・税・減価償却・減損などを足し戻して計算する。
第三者割当(placing)
新しい株式を特定の投資家に売って資金を調達すること。UBTechは2025年に3回行った。
H株
中国の会社が香港で上場する株式。
主要取引
香港の上場規則で、会社の規模に比べて大きい取引。公告と株主の承認が必要。
工場内の箱の持ち上げ、移動、受け渡しを並べています。繰り返しの作業には、姿勢制御と把持に加え、持続時間や故障時の復旧も関わります。
図3 ImageGen生成の概念画像。工場内の箱の持ち上げ、移動、受け渡しを並べています。繰り返しの作業には、姿勢制御と把持に加え、持続時間や故障時の復旧も関わります。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. UBTECH ROBOTICS CORP LTD(深圳市優必選科技股份有限公司) INTERIM RESULTS ANNOUNCEMENT FOR THE SIX MONTHS ENDED JUNE 30, 2026(中間決算発表、香港取引所のHKEXnews、2026年8月28日、未監査)。2026年上期の売上・損益・製品別売上・全身サイズ人型の販売台数・買収・現金・資金使途。 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
  2. UBTECH ROBOTICS CORP LTD Interim Report 2026(中間報告書、HKEXnews、2026年9月24日)。2026年6月末の従業員数(2,744人)、貸借対照表、売掛金の年齢別内訳、鋒龍電気の取得、H株の配分の経過。 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0924/2026092401451.pdf
  3. UBTECH ROBOTICS CORP LTD ANNUAL RESULTS ANNOUNCEMENT FOR THE YEAR ENDED DECEMBER 31, 2025(2025年通期決算発表、HKEXnews、2026年3月31日)。2025年の売上・損益・販売台数・年換算の生産能力・従業員数・設立と上場の経緯。 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
  4. UBTECH ROBOTICS CORP LTD MAJOR TRANSACTION IN RELATION TO THE ACQUISITION OF 29.99% EQUITY INTEREST IN THE TARGET COMPANY LISTED ON THE SHENZHEN STOCK EXCHANGE(主要取引の公告、HKEXnews、2025年12月24日)。浙江鋒龍電気の取得の条件と理由。 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2025/1224/2025122401520.pdf
  5. UBTECH ROBOTICS CORP LTD VOLUNTARY ANNOUNCEMENT – THE COMPANY’S FIRST OBTAINING OF PROCUREMENT CONTRACT FOR EMBODIED INTELLIGENT HUMANOID ROBOTS(任意開示、HKEXnews、2025年4月27日)。自動車工場向けの人型ロボットの調達契約(金額・相手は非開示)。 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2025/0427/2025042700001.pdf
  6. UBTECH Robotics 公式サイト(ロゴ画像の取得元、会社名・製品名の確認。確認日 2026年10月25日)。 https://www.ubtrobot.com/en/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、設立(2012年3月31日)、上場(2023年12月29日)、最大株主(周剣氏23.5%)、拠点、2025年末の従業員2,550人事実出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
2026年6月末の従業員2,744人、従業員給付費、貸借対照表(売掛金・在庫・現金)事実出典2 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0924/2026092401451.pdf
2025年の売上・損益・製品別売上・研究開発費・設備投資、全身サイズの人型の販売1,079台、非具身人型12,759台、物流ロボット約3,000台、年換算の生産能力6,000台超事実出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
2026年上期の売上・損益・製品別売上・全身サイズの人型の販売921台・調整後EBITDA・現金・借入・特許3,112件事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
2026年上期の製品(Walker C1・U1・Cruzr Y1・第4世代・Chitu・Thinker)、納入先、VLAの成功率75%、遠隔操作のテスト、データ収集センター事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
中国職業技術教育学会・深圳職業技術大学との連携、Thinker Cosmos、標準づくりへの参加事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf 出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
2025年のH株の第三者割当(3回、純手取り8.7632億・24.1026億・30.5571億香港ドル)と使途の進捗事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf
浙江鋒龍電気の取得(29.99%と13.02%、総額1,665.3百万元、取得理由、2026年4月から連結)事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf 出典4 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2025/1224/2025122401520.pdf
柳州の産業ファンドとのパートナーシップ(総額660百万元、会社300百万元、2026年1月22日)事実出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
2025年4月の自動車工場向けの人型の調達契約(金額・相手は非開示、前払金を受領)事実出典5 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2025/0427/2025042700001.pdf
Walker S2の仕様(バッテリー自動交換3分・24時間連続稼働・52自由度)と量産・納入の開始、大阪万博での対応事実出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
売掛金の年齢別内訳、貸倒引当金、担保に供した資産、会長とCEOの兼務事実出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf 出典2 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0924/2026092401451.pdf
ロゴ画像の取得元事実出典6 https://www.ubtrobot.com/en/
全身サイズの人型の売上比率(820.6÷2,001.0=41.0%)、2024年の2.7%、第三者割当の合計(約63.4億香港ドル)、売掛金の1年超の合計本稿の計算本稿の計算(決算資料・中間報告書の数字から)
ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型の区分とUBTechの位置づけ本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
全身サイズの人型の受注金額・買い手・台数あたりの価格、自律と遠隔操作の比率、工場での稼働台数・時間・独立した検証、研究開発の人員数未確定/将来出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf 出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
年間1万台の生産目標、Thinker-WM 2.0(2026年下期)、プール清掃ロボPC30の量産開始(2026年末まで)、年間1,000万件のデータ収集未確定/将来出典1 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0828/2026082801691.pdf 出典3 https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2026/0331/2026033102607.pdf
教育・消費者向けから工場向けへの移行、遠隔操作とデータ収集に支えられた段階、買収で量産とコストの力を取り込む、増資に依存した先行投資という読み推測本稿の解釈(決算資料・公告の数字と記述から)
素材技術者の視点(軽量材料、3Dプリントの格子構造、波動歯車、顔の表現)解説解説(一般的な技術説明。数値は会社の公称で、本稿は検証していない)

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の数値は、UBTECH ROBOTICS CORP LTDが香港取引所(HKEXnews)に提出した中間決算発表・中間報告書・通期決算発表・公告と、同社の公式サイトに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値(出荷台数・受注額の推計を含む)は使用していません。「世界初」「受注量で首位」などは会社の主張で、本稿では検証していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。株価・評価額・投資判断には触れていません。