🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

DJI 企業解説

← ドローン・ロボティクスの解説一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

DJI
― 空撮から産業・物流まで機体を作る大手。米国では、製造地を基準にした規制と訴訟のさなかにある

DJIは中国・深圳に本社を置く非上場のドローン製造会社で、空撮用の小型機から、点検用の産業機、無人格納庫(ドック)、重い荷物を運ぶ配送機までを自社で作っています。 本稿は、会社の公式資料で確認できる製品の仕様と、米国での規制上の扱い(連邦通信委員会=FCC の「カバードリスト」、国防総省のリスト、裁判所の記録)を、日付と対象の範囲をつけて、中立に整理します。 特定の国や企業を評価・非難するものではありません。会社の財務は非公表のため、数字は扱いません。確認日は2026年10月25日です。

構成:FCC の公式文書・米国の法律・連邦控訴裁判所の判決・連邦官報・DJI の公式ページを一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるDJIと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集
  13. 出典
  14. 主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるDJIと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称SZ DJI Technology Co., Ltd.連邦官報では Shenzhen DJI Technology Co., Ltd.。日本法人は DJI JAPAN 株式会社
本社中国・深圳公式ページの記載。米国・ドイツ・日本などにも拠点
創業2006年フランク・ワン氏が創業(公式ページ)
上場非上場財務は非公表のため本稿では扱わない
この分野での区分ドローン・eVTOL
(主たる類型)
従たる類型:部品・基盤ソフト(開発者向けSDKなど)
従業員12,000人以上
(世界全体)
日本法人の会社概要表の記載。同じ頁の沿革文は「11,000人超」
主な製品群空撮機/産業機/
ドック/配送機
本稿の第10章に、公式の仕様ページで確認した4製品
米国での扱いFCC カバードリスト
2025年12月22日〜
新機種は機器認証を受けられない。既に認証済みの機種は継続して輸入・販売できる(FCC)
まず押さえるべき1点

DJIの記事を読むときは、「機体の性能の話」と「米国の規制の話」を分けて読む必要があります。 前者は公式の仕様ページで条件つきの数字が確認できます(第10章)。 後者は、FCC のカバードリストへの掲載が「外国で製造された機体・重要部品」全体を対象にしており、DJI に限った措置ではない点が重要です 事実。 同時に、2024年12月成立の国防授権法(FY2025)第1709条が DJI と Autel Robotics を法律の本文で名指ししており、 その部分は「第1709条の機器・サービス」として別に掲載されています 事実。 本稿では、どの措置が誰を、どの範囲で対象にし、いつ・どの段階(法律・最終・提案・訴訟中)にあるかを区別して書きます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社名は DJI。米国の裁判記録では「SZ DJI Technology Co., Ltd.」と子会社「SZ DJI Baiwang Technology Co., Ltd.」、 連邦官報では「Shenzhen DJI Technology Co., Ltd.」、国防授権法の本文では「Shenzhen Da-Jiang Innovations Sciences and Technologies Company Limited(commonly known as DJI Technologies)」と書かれており、文書によって表記が違います。 日本では DJI JAPAN 株式会社(2013年8月設立)が販売・サポートを担当しています。ロゴは公式サイトの画像(白色。暗い背景に置いて表示)です。

公式サイト:https://www.dji.com/jp/company

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 DJIは「ドローン・eVTOL」の類型にいて、機体を自社で開発・製造し販売している 米国では、機体の性能とは別に「製造地」を基準にした規制の対象になっている(第6章・第11章)
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、DJIの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。DJIは主に「ドローン・eVTOL」で、開発者向けSDKなど一部は「部品・基盤ソフト」にもまたがります。

この分野の企業を「何を作って誰に売るか」で分けると、DJIは空を飛ぶ機体を、個人(空撮)、事業者(点検・測量・農業・配送)、公共機関に売る会社です。 ここでいうドローン(無人航空機)は、人が乗らずに遠隔操作または自動で飛ぶ機体のことです。 一方で、機体に載せる雲台(ジンバル)やカメラ、ソフトウェア開発キット(SDK)を提供しており、他社が作る機器やアプリとつなぐための仕組みも持っています。 このため本稿は、主たる類型を「ドローン・eVTOL」、従たる類型を「部品・基盤ソフト」としました。
なお、eVTOL(電動の垂直離着陸機)は人を乗せる機体で、DJI の公式資料では本稿で確認した範囲に該当する製品はありません。

4. 会社の規模

DJIは非上場で、売上・利益・研究開発費などの財務は公式ページで確認できませんでした。確認できたのは、従業員数と沿革だけです 事実。

項目内容出典・注記
創業2006年(フランク・ワン氏)公式ページ(日本)の記載
本社中国・深圳。米国、ドイツ、日本、北京、上海、香港にも拠点公式ページ(日本)の記載
従業員世界全体で12,000人以上(会社概要表)/日本法人200名同じ頁の沿革文には「11,000人を超える」とあり、頁の中で数字が一致しない。日付の記載もない
事業内容マルチコプター・ドローンの企画、研究、製造、販売、輸入/撮影設備とその部品の企画、研究、製造、販売、輸入など日本法人(DJI JAPAN)の会社概要としての記載
売上・利益・研究開発費非公表公式ページで確認できず。本稿では推計しない
ここで注意:公式ページの「世界シェア7割」について

日本の公式ページには「民生用ドローン市場で世界シェアの7割」という記載がありますが、 算出の根拠・年・対象が頁に示されていません。調査会社の市場推計や、根拠の示されない占有率は本稿の方針で採用しないため、数字としては使いません 未確定/将来。

5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース

DJIは非上場なので、人・金・外部への出資・研究機関との連携のうち、一次情報で確認できたのは「人」の一部だけです。確認できなかった項目も、そのまま表に載せます。

リソースの種類内容区分
人世界全体で12,000人以上(日本法人の会社概要表)。研究開発に携わる人数、拠点ごとの人数は公式ページで確認できず事実(一部は非公表)
金研究開発費、設備投資、資金調達額非公表(確認できず)
外部への出資・買収・合弁・事業売却本稿で確認した公式ページには記載なし確認できず
大学・研究機関・公的機関との連携本稿で確認した公式の仕様ページ・会社概要には記載なし。開発者向けにSDK(Payload SDK、Mobile SDK、Cloud API)の公開はある(公式サイトの製品一覧)確認できず(SDKは事実)
外部の評価機関への委託2026年5月28日の公式ブログで、米国のセキュリティ会社 OnDefend に、2つの機体システムの評価を委託したと説明(会社の説明)事実(会社の説明)

主要な機体・製品の状況を、公式の仕様ページで確認できた範囲で表にします。数値はすべてメーカー公称で、条件がそれぞれ異なるため機体どうしの数字を比べて優劣をつけることはしません。 確認日は2026年10月25日です。

名称種別主要な仕様(メーカー公称・条件つき)導入・運用の実績規制上の承認(範囲)段階
Mavic 4 Pro空撮用(個人・クリエイター向け)離陸重量 約1063 g。最大飛行時間 51分(無風・海抜0 m相当の管理された風洞で、32.4 km/h の定速前進、障害物回避を「停止」、写真モードで測定)。最大ホバリング時間 45分(同条件で静止)台数・時期は確認できず機種ごとの承認は本稿で確認できず提供
Matrice 4E/4T産業用(点検・測量・公共安全)離陸重量 1219 g(標準プロペラ)。最大飛行時間 49分(無風、ペイロードなし、約9 m/s で電池0%まで)。最大風圧抵抗 12 m/s(離着陸時)。4T は熱画像センサー(640×512、非冷却)を搭載台数・時期は確認できず機種ごとの承認は本稿で確認できず提供
Dock 3ドック(機体の自動離着陸・充電用)総重量 55 kg(機体を除く)。保護等級 IP56。動作温度 -30〜50℃。収容できる機体は1機。充電時間 27分(25℃、電池15%から95%まで)台数・期間は確認できず機種ごとの承認は本稿で確認できず提供
FlyCart 100配送用(重い荷物の輸送)最大離陸重量 149.9 kg(機体の性能仕様。公式ページは、日本などでは法令で最大離陸重量が149.9 kgに制限される旨を注記)。最大飛行時間 14分(デュアル電池、最大離陸重量、海面25℃・無風)。保護等級 IP55台数・時期は確認できず機種ごとの承認は本稿で確認できず提供

公式の仕様ページはいずれも「実際の数値は環境・使い方・ファームウェアで異なる」と注記しています。最大離陸重量、飛行時間の測定条件(荷物の有無、速度、風)が機体ごとに違うため、数字を並べた比較は意味を持ちません。

素材技術者の視点:仕様ページから読める「素材・部品が効く場所」

DJIの仕様ページから、素材・部品の視点で読み取れる点を3つ挙げます。 1つ目は重さと飛行時間の関係です。Mavic 4 Pro は離陸重量が約1063 g、最大飛行時間が51分と公称されています(条件は上の表)。 ドローンは「持ち上げる重さ」がそのまま電池の消費に直結するため、機体の軽量構造材と、電池の重さあたりの蓄えられる電力の両方が効きます。 ただし電池の化学種や機体の材料は、本稿で確認した仕様ページには書かれていません 未確定/将来。 2つ目は熱画像センサーです。Matrice 4T の仕様には「非冷却のVOxマイクロボロメーター、640×512、画素ピッチ12 µm」とあります。 VOxは酸化バナジウムという材料の名前で、温度が変わると電気抵抗が変わる性質を利用して、赤外線(熱)の強さを読み取る素子です。冷却装置が要らないので小型の機体に載せやすい、という位置づけの部品です。 3つ目は屋外で使うための保護です。FlyCart 100 は IP55、Dock 3 は IP56 と公称されています。IPは「防塵・防水の等級」で、どちらも数字が大きいほど水やほこりに強いことを示します。 Dock 3 は圧縮機式の空調と鉛蓄電池のバックアップ電池(12 V、12 Ah)を備える、と仕様ページに書かれており、屋外に置いた箱の中の温度と電力を守る設計だと読めます。

6. これまでの取り組み

米国での規制の経過は流れが複雑なので、まず図解で全体を示し、そのあとで表にします。

DJIに関わる米国の規制・司法の動き(2022〜2026年) 上段:FCC のカバードリスト/下段:国防総省の「中国軍事企業」リストと裁判 2024年12月 国防授権法 第1709条が成立 2025年12月22日 外国製UASを カバードリストへ 2026年1月7日 Blue UAS等を 期限つきで除外 2026年2月20日 DJIが第9巡回区に 審査を申立て 2026年7月 輸入・販売の 禁止案(提案) 2022年10月 国防総省のリストに 初めて掲載 2025年9月26日 地裁が国防総省に 有利な判決 2026年6月10日 新しいリストに 理由つきで再掲載 2026年8月14日 控訴裁が一部破棄・ 差し戻し
図解 DJIに関わる米国の規制・司法の動き。出典:FCC の公開文書、連邦官報、連邦控訴裁判所の判決、国防授権法の本文。上下は別の制度で、互いに独立しています。
時期できごと意味・範囲
2006年DJI創業公式ページの記載
2009〜2016年最初の製品(XP3.1フライトコントローラー、2009年)、Phantom 2 Vision(2013年)、農業用 Agras MG-1(2015年)、Phantom 4(2016年)などを発表公式ページの沿革。空撮から農業用へ広げた経過
2013年8月DJI JAPAN 株式会社を設立日本法人の会社概要の記載
2022年10月/2024年1月/2025年1月国防総省が、第1260H条に基づく「中国軍事企業」のリストにDJIを掲載(2022年10月)、再掲載(2024年1月)、2025年1月のリストにも掲載この掲載の結果、掲載企業は国防総省・国土安全保障省との契約ができない、などの扱いになる(判決文の説明)
2024年12月23日FY2025国防授権法(Public Law 118-159)が成立。第1709条は、DJI Technologies と Autel Robotics が製造する通信・映像監視機器等について、国家安全保障機関が1年以内に「許容できないリスク」かを判断すること、判断がなければ FCC がカバードリストへ追加することを定める法律の本文。DJIを名指ししているのはこの法律
2025年9月26日地方裁判所が国防総省に有利な略式判決を出す判決文(控訴審)の記載
2025年12月22日FCC の公安・国土安全保障局が、外国で製造されたUASとUAS重要部品と、第1709条の機器・サービスをカバードリストに追加(前日の12月21日に、ホワイトハウスが招集した省庁間の組織による「国家安全保障判断」を受領)前者は「製造地」で対象を決める(企業の国籍は無関係とFCCは説明)。後者が第1709条の名指し部分
2026年1月7日国防総省の判断を受け、FCC が、DCMA の Blue UAS Cleared List 掲載機と、Buy American 基準の「国内最終製品」をリストから除外(期限つき)。第1709条の機器には適用しない旨の注記除外期限は2028年1月1日(2026年7月21日に2027年1月1日から延長。FCC公示DA 26-761。カバードリスト本体の2026年10月23日更新の表示も同じ)。2027年の記載は延長前の古い記述
例外の期限が2027年1月1日から2028年1月1日へ延長されたこと事実出典18 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-761A1.pdf
2026年2月20日DJIらが、第9巡回区連邦控訴裁判所に、FCC の措置の審査を求める申立て(No. 26-1029)裁判所の記録で番号と日付を確認。主張の中身は本稿では書面を確認していない
2026年6月10日国防総省が新しいリストを連邦官報で公表。DJIを再び掲載し、掲載の理由を明記新しい理由(「Single Champion」への選定など)を含む(判決文の説明)
2026年7月17日・21日FCC が、認証済みの一部の外国製UAS・部品の輸入・販売を禁じる案に意見募集(2件)提案の段階。確定の有無は確認できず
2026年8月14日コロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所が、国防総省の決定を一部は支持、一部は破棄し、地裁に差し戻し第8章・第11章で説明

7. 今後の計画

DJIは、本稿で確認した公式ページに製品や事業の将来計画を示していません(新製品の予定、生産目標など)。 以下は、他者の手続きの予定で、いずれも会社の目標ではありません 未確定/将来。

FCC の禁止案(2件)意見募集(提案)2026年7月17日・21日。コメント期限は連邦官報掲載の30日後。確定の有無は確認できず
FCC の除外期限2028年1月1日2026年7月に2027年から延長(FCC公示DA 26-761)
国防総省リストの訴訟地裁への差し戻し機密記録の審査などを地裁が判断(判決文)。結果は未確定
第9巡回区の審査申立て審理中No. 26-1029。最新の記録は確認できず

2026年8月7日付の DJI の公式ブログは、FCC の禁止案が、熱画像やLiDARを持つ機体、農業用機体、ドックなどにも及びうるという会社の見方を述べ、コメントの提出を呼びかけています 事実(会社の見解)。 これに対し、FCC の提案の文書(DA 26-758)は、「軍用等級」を、離陸重量55ポンド以上、農薬などを散布できる機体、熱画像センサー・LiDARを持つ機体、ドック、などと定義して案を示しています(これも提案の段階)。

確認できなかったこと

次は、本稿で確認した一次資料に記載がありません 未確定/将来。

DJI の新製品の計画/生産目標/売上・研究開発費/米国での販売台数/ 第9巡回区の事件の2026年10月時点の審理状況(報道には「国側が却下を求めている」との記事があるが、裁判所の記録を確認できていないため採用しない)。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
空撮にとどまらず、産業・物流向けの機体と、運用の仕組み(ドック、SDK)に広げている公式の製品一覧に、Matrice 4、Dock 3、FlyCart 100、Payload SDK、Cloud API が並ぶ。仕様ページで具体的な性能と条件が公開されている事実
米国では、「機体は問題ない」ことを証拠で示す方針を強めている2026年5月28日の公式ブログで、外部会社 OnDefend に評価を委託したと説明。同年8月7日の公式ブログで、FCC の提案へのコメントを呼びかけ推測
新機種の米国向け投入より、既に認証済みの機種の販売継続に依存している可能性FCC のFAQは、新機種は認証不可、認証済みの機種は輸入・販売・使用が可能と説明。DJIのブログも「認証済みの機種は引き続き輸入・販売できた」と述べている推測
規制と訴訟を複数の場で並行して争う姿勢第9巡回区への申立て(2026年2月)、D.C. 巡回区の控訴(国防総省リスト)、FCC への意見提出の呼びかけ事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

DJIの公式ブログ(2026年8月7日)は、リスト掲載後も認証済みの製品は引き続き輸入・販売できたと書き、FCC が新たに認証済み機種にも制限を広げることを問題にしています 事実(会社の見解)。 FCC の文書(DA 26-742、DA 26-758)は、2025年12月の措置では認証済みの機器の輸入・販売を止めておらず、今回の2件はそれを止める手続きの提案だと位置づけています 事実。 この二つを合わせると、DJIの米国向けの事業は「認証済みの機種を売り続けられるか」が一つの焦点になっている、と本稿は読みます 未確定/将来。 どの機種が認証済みで、どの機種が提案の対象になるかは、本稿では確認していません。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

DJIを中心とした関係図 公式ページ・FCC・裁判所の記録に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない DJI ドローン DJI JAPAN 日本法人(2013年8月設立) OnDefend 評価を委託(2026年5月) FCC カバードリスト(2025年12月) 米国防総省 第1260H条のリスト 開発者向けSDK(外部の機器・アプリ) 同社グループ 外部への委託・外部との接続 規制当局(提携ではなく、規制の対象となる関係)
図2 DJIを中心とした関係図。出典:DJIの公式ページ、FCC の文書、連邦官報。灰色の点線は提携ではなく、規制の対象になっている関係です。裁判所は、この図には含めていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

分野公式資料で確認できた製品何をするものか
空撮(個人・クリエイター)Mavic 4 Pro など折りたたみ式の小型機に高性能カメラを載せ、景色や映像を撮る
産業用(点検・測量・公共安全)Matrice 4E(4/3型CMOSの広角カメラ、メカニカルシャッター付き)、Matrice 4T(熱画像センサー搭載)建物・設備の点検、地図づくり、捜索など。機体にカメラや計測機器を載せて使う
ドック(無人運用)Dock 3屋外に置く格納庫。機体の離着陸、充電、データの受け渡しを遠隔から行う
配送FlyCart 100重い荷物を運ぶ大型の機体。最大離陸重量は149.9 kg(機体の性能仕様)
農業Agras MG-1(2015年)。現行機の仕様は本稿で確認できず農地への散布など。公式ページの沿革に初代の記載のみ
開発者向けPayload SDK、Mobile SDK、Cloud API第三者の機器・アプリを DJI の機体と連携させるための開発キット

「ドローン」と一口に言っても、空撮用の小型機、点検用の機体、無人格納庫のドック、物流用の大型機は使う場面も、規制上の扱いも違います。 たとえば FCC の「軍用等級」の提案案(DA 26-758)は、機体の重量、散布機能、熱画像、LiDAR、ドックといった機能で対象を分ける案を示しています(提案の段階)。 どの機体が該当するかの判断は、本稿では行いません。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
米国での新機種の投入カバードリストにより、新機種は FCC の機器認証を受けられない(FCC のFAQ)。例外には Blue UAS、国内最終製品、条件付き承認、おもちゃドローンがある。条件付き承認の一覧にはDJIの記載がない(2026年10月23日更新の表示で確認)。Blue UAS 等への該当は本稿では確認していない事実
認証済み機種への制限の可能性FCC が、認証済みの一部の機器の輸入・販売を禁じる案に意見を募集中(2026年7月)。提案の段階で、対象範囲と確定の有無は未確定未確定/将来
国防総省リストの訴訟控訴裁は、DJI の適正手続きなどの主張を退け、「国防産業基盤に貢献する」との判断の根拠が公開記録に示されていない点について差し戻した。地裁が機密記録を審査して判断する。2026年6月の新リストは、新しい理由づけで再掲載している事実
セキュリティ評価の位置づけDJIが公表した OnDefend の評価は、DJIが委託したもので、対象は2つの機体システム(Air 3S と Matrice 4E)。米国の政府機関が同じ結論を出したかは、本稿で確認できなかった事実(会社の説明)
規制の定義が変わりうるFCC の除外期限の記載が文書によって異なる(2027年と2028年)。「軍用等級」の定義も提案段階で、変更されうる未確定/将来
財務情報の非公表売上や研究開発費が確認できず、規制の影響の大きさを外部から測れない推測

国防総省リストの訴訟:裁判所が判断した範囲

2026年8月14日の控訴裁の判決(No. 25-5367)は、DJIの主張4点のうち、適正手続き、「政府から支援を受けている」との判断の証拠、他社との扱いの違いの説明の3点を退けました。 残る1点は、国防総省が「DJIは中国の国防産業基盤に貢献している」と結論づけたことについてです。報告書の該当部分が公開記録ではすべて黒塗りで、 地裁は、国防総省の弁護士が法廷で述べた理由などで判断してしまったため、控訴裁は「行政機関が示した理由だけで判断する」という原則に反すると判断し、この点を地裁に差し戻しました 事実。 機密記録を地裁が審査して判断すること、DJI側の弁護士が機密記録の一部に接することができるかも地裁が判断することが、判決に書かれています。 DJIの掲載は、この判決で取り消されたわけではありません。また、この判決は、DJIの製品の安全性やセキュリティについて、いずれかの結論を示したものではありません。

12. 用語集

UAS
Uncrewed Aircraft System。機体だけでなく、操縦装置や通信リンクを含む無人航空機の一式。
カバードリスト
FCC が公表する、「国家安全保障上の許容できないリスク」があると判断された通信機器・サービスの一覧。掲載された機器は新たな機器認証を受けられない。
機器認証
無線機器を米国で輸入・販売するために必要な、FCC の認証。電波が基準を満たすかを確認する。
第1709条
2024年12月成立の国防授権法の条文。DJI と Autel Robotics の機器について、判断がなければカバードリストに追加すると定める。
第1260H条
国防総省が毎年「中国軍事企業」のリストを議会に提出し、官報で公表する法律上の仕組み。
Blue UAS
国防総省の機関(DCMA)が審査して認めた無人機のリスト(Blue UAS Cleared List)。
条件付き承認
国防総省または国土安全保障省が個別に認め、期限つきでカバードリストの対象外にする仕組み。
IP等級
防塵・防水の等級。IP55、IP56のように2桁で表し、数字が大きいほど強い。
ドック
ドローンの離着陸・充電・データ受け渡しを自動で行う、屋外に置く格納庫。
SDK
Software Development Kit。第三者がアプリや機器を作るための開発キット。
VOxマイクロボロメーター
酸化バナジウム(VOx)の電気抵抗の変化で熱(赤外線)を読み取る、冷却不要の画像センサー。
略式判決
事実の争いがないとして、裁判所が証人調べなどをせずに出す判決。
機体の点検、電池の取り外し、ドックへの格納を対応させた概念です。遠隔運用には飛行の自動化に加え、地上での保管・充電・状態確認が関わります。
図3 ImageGen生成の概念画像。機体の点検、電池の取り外し、ドックへの格納を対応させた概念です。遠隔運用には飛行の自動化に加え、地上での保管・充電・状態確認が関わります。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. 米国連邦議会(政府印刷局) Public Law 118-159(FY2025国防授権法、2024年12月23日成立)第1709条。DJI Technologies と Autel Robotics の機器・サービスについて、国家安全保障機関に1年以内の判断を求め、判断がなければ FCC がカバードリストへ追加すると定める。 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-118publ159/html/PLAW-118publ159.htm
  2. FCC Public Notice DA 25-1086(2025年12月22日)。外国で製造されたUAS・UAS重要部品と、第1709条の機器・サービスをカバードリストに追加。付属書Bに国家安全保障判断(2025年12月21日)の全文。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-25-1086A1.pdf
  3. FCC Public Notice DA 26-22(2026年1月7日)。DCMA の Blue UAS Cleared List 掲載機と、米国のBuy American基準の「国内最終製品」を、カバードリストから除外(期限つき)。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-22A1.pdf
  4. FCC Covered List FAQs: UAS and UAS Critical Components(2026年7月21日更新)。既に認証済みの機器の扱い、例外、定義、条件付き承認。 https://www.fcc.gov/covered-list-faqs-uas-and-uas-critical-components
  5. FCC List of Equipment and Services Covered By Section 2 of The Secure Networks Act(カバードリスト本体。2026年10月23日更新の表示)。 https://www.fcc.gov/supplychain/coveredlist
  6. FCC Public Notice DA 26-742(2026年7月17日)。認証済みの一部の外国製UAS・部品と、第1709条の機器の輸入・販売を禁止する案への意見募集(提案の段階)。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-742A1.pdf
  7. FCC Public Notice DA 26-758(2026年7月21日)。「軍用等級」と定義した外国製UAS・部品の輸入・販売を禁止する案への意見募集(提案の段階)。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-758A1.pdf
  8. 米国連邦控訴裁判所(コロンビア特別区巡回区) SZ DJI Technology Co. v. U.S. Department of Defense, No. 25-5367 判決(2026年8月14日)。 https://media.cadc.uscourts.gov/opinions/docs/2026/08/25-5367-2188259.pdf
  9. 米国連邦官報 Notice of Availability of Designation of Chinese Military Companies, 91 Fed. Reg. 35189(2026年6月10日)。国防総省の「中国軍事企業」リスト(第1260H条)。 https://www.federalregister.gov/documents/2026/06/10/2026-11571/notice-of-availability-of-designation-of-chinese-military-companies
  10. 米国連邦控訴裁判所(第9巡回区) SZ DJI Technology Co., Ltd., et al. v. FCC, No. 26-1029 の提出書類(DktEntry 2.1、2026年2月20日付。FCC の DA 25-1086 の写し)。 https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.ca9.b4c4b372-7c0e-f111-bb47-001dd808eb4a/gov.uscourts.ca9.b4c4b372-7c0e-f111-bb47-001dd808eb4a.2.0.pdf
  11. DJI DJIについて(日本の公式サイト)。創業、本社、従業員数、沿革、事業内容。 https://www.dji.com/jp/company
  12. DJI DJI Mavic 4 Pro 仕様(公式)。重量、飛行時間、測定条件。 https://www.dji.com/jp/mavic-4-pro/specs
  13. DJI DJI Matrice 4シリーズ 仕様(公式)。重量、飛行時間、カメラ、熱画像センサー。 https://enterprise.dji.com/jp/matrice-4-series/specs
  14. DJI DJI Dock 3 仕様(公式)。重量、保護等級、動作温度、充電時間、バックアップ電池。 https://enterprise.dji.com/jp/dock-3/specs
  15. DJI DJI FlyCart 100 仕様(公式)。最大離陸重量、飛行時間・距離、保護等級、測定条件。 https://www.dji.com/jp/flycart-100/specs
  16. DJI DJI Viewpoints「The FCC Could Cut Off Future Access to Popular DJI Drone Models in the U.S.」(2026年8月7日、会社の見解)。 https://viewpoints.dji.com/blog/the-fcc-could-cut-off-future-access-to-popular-dji-drone-models-in-the-u.s.-heres-what-you-can-do-about-it?hsLang=en
  17. DJI DJI Viewpoints「Inside the Most Comprehensive Independent Security Assessment of DJI Drones」(2026年5月28日、会社の見解。OnDefend への評価委託)。 https://viewpoints.dji.com/blog/inside-the-most-comprehensive-independent-security-assessment-of-dji-drones-and-why-it-matters?hsLang=en
  18. FCC 公示DA 26-761(2026年7月21日。ブルーUAS・国内最終製品の例外を2028年1月1日まで延長)。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-761A1.pdf

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
創業2006年、本社は深圳、従業員は世界で12,000人以上(会社概要表)/11,000人超(沿革文)、日本法人の設立2013年8月事実出典11 https://www.dji.com/jp/company
公式ページの「世界シェア7割」の記載(根拠の記載なし)事実出典11 https://www.dji.com/jp/company
Public Law 118-159 は2024年12月23日成立、第1709条が DJI Technologies と Autel Robotics を名指し、1年以内の判断がなければ追加事実出典1 https://www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-118publ159/html/PLAW-118publ159.htm
2025年12月22日の FCC のカバードリスト追加(外国製UAS・重要部品、第1709条の機器)、国家安全保障判断は12月21日事実出典2 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-25-1086A1.pdf
重要部品の定義(データ伝送機器、通信、フライトコントローラー、地上局、航法、センサー・カメラ、電池、モーター)事実出典2・4 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-25-1086A1.pdfhttps://www.fcc.gov/covered-list-faqs-uas-and-uas-critical-components
2026年1月7日の除外(Blue UAS、国内最終製品)と、第1709条の機器には適用しない旨の注記事実出典3 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-22A1.pdf
新機種は認証不可、認証済みの機種は輸入・販売・使用可、企業の国籍は無関係、除外期限の記載(FAQ内に2027年と2028年)事実出典4 https://www.fcc.gov/covered-list-faqs-uas-and-uas-critical-components
カバードリスト本体の除外期限(2028年1月1日)、条件付き承認の一覧、2026年10月23日更新の表示事実出典5 https://www.fcc.gov/supplychain/coveredlist
FCC の禁止案(DA 26-742:2026年7月17日)の対象と、提案の段階であること事実出典6 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-742A1.pdf
FCC の禁止案(DA 26-758:2026年7月21日)の「軍用等級」の定義と180日の猶予案事実出典7 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-758A1.pdf
控訴裁判決(2026年8月14日)の判断:3点を退け、1点を破棄・差し戻し。掲載の効果、国防総省・国土安全保障省との契約不可事実出典8 https://media.cadc.uscourts.gov/opinions/docs/2026/08/25-5367-2188259.pdf
国防総省の新リスト(2026年6月10日)でのDJIの掲載理由事実出典9 https://www.federalregister.gov/documents/2026/06/10/2026-11571/notice-of-availability-of-designation-of-chinese-military-companies
第9巡回区への申立て(No. 26-1029、2026年2月20日)事実出典10 https://storage.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.ca9.b4c4b372-7c0e-f111-bb47-001dd808eb4a/gov.uscourts.ca9.b4c4b372-7c0e-f111-bb47-001dd808eb4a.2.0.pdf
Mavic 4 Pro の離陸重量・飛行時間・測定条件事実(メーカー公称)出典12 https://www.dji.com/jp/mavic-4-pro/specs
Matrice 4E/4T の重量・飛行時間・熱画像センサーの仕様事実(メーカー公称)出典13 https://enterprise.dji.com/jp/matrice-4-series/specs
Dock 3 の重量・保護等級・温度・充電時間・バックアップ電池事実(メーカー公称)出典14 https://enterprise.dji.com/jp/dock-3/specs
FlyCart 100 の最大離陸重量・飛行時間・保護等級・日本などでの重量制限の注記事実(メーカー公称)出典15 https://www.dji.com/jp/flycart-100/specs
DJIの見解(FCC の禁止案への意見提出の呼びかけ、2026年8月7日)事実(会社の見解)出典16 https://viewpoints.dji.com/blog/the-fcc-could-cut-off-future-access-to-popular-dji-drone-models-in-the-u.s.-heres-what-you-can-do-about-it?hsLang=en
OnDefend への評価の委託と、対象の2つの機体システム(2026年5月28日)事実(会社の説明)出典17 https://viewpoints.dji.com/blog/inside-the-most-comprehensive-independent-security-assessment-of-dji-drones-and-why-it-matters?hsLang=en
売上・研究開発費・投資額・出資・大学との連携・機種ごとのFCC認証・販売台数未確定/将来本稿で確認した資料に記載なし。推計しない https://www.dji.com/jp/company
新製品の計画・生産目標・第9巡回区の最新の審理状況未確定/将来確認できず。報道ベースの情報は採用しない https://www.fcc.gov/supplychain/coveredlist
4類型の区分(ヒューマノイド/産業・専門ロボット/ドローン・eVTOL/部品・基盤ソフト)と、DJIの位置づけ本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
空撮にとどまらず産業・物流・運用の仕組みへ広げているという読み推測公式の製品一覧と仕様ページの内容からの本稿の解釈 https://enterprise.dji.com/jp/matrice-4-series/specs
米国では証拠を示す方針を強めているという読み推測公式ブログ2件からの本稿の解釈 https://viewpoints.dji.com/blog/inside-the-most-comprehensive-independent-security-assessment-of-dji-drones-and-why-it-matters?hsLang=en
認証済み機種の販売継続が焦点になっているという読み推測FCC の FAQ と禁止案の文書からの本稿の解釈 https://www.fcc.gov/covered-list-faqs-uas-and-uas-critical-components
財務非公表のため規制の影響を外部から測れないというリスク推測本稿の解釈(公式ページに財務の記載がないことから)

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の規制・訴訟に関する記述は、FCC の公式文書、米国の法律、連邦官報、連邦控訴裁判所の判決に基づきます。製品の数値はDJIの公式の仕様ページに基づくメーカー公称で、測定条件が機体ごとに違うため比較はしていません。DJIの見解は「会社の見解」として区別して書いています。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社や当局の公表内容ではありません。本稿は法的助言・投資助言ではありません。