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アジボット(智元機器人) 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

アジボット(智元機器人)
― 2023年設立、人型から四足・清掃ロボットまで一気に製品化した上海の非上場企業

AgiBot(智元創新、智元機器人、上海)は、2023年2月に設立された非上場の会社です。人型の「遠征(A)」、小型人型の「霊犀(X)」、車輪型の「精霊(G)」、四足の「D1」、業務用清掃の「絶塵(C5)」を、公式サイトに仕様つきで掲載しています。会社は、通用具身ロボットの累計の生産台数(生産ラインを離れた台数)が2026年9月に2万台に達したと発表しました(会社の主張)。一方、売上・利益・資金調達額・従業員数は、公式資料にも取引所の文書にも見当たらず、本稿では「非公表」と書きます。もう1つの注意点として、AgiBotの関係者が出資した持株会社が、2025年に上海証券取引所の科創板に上場する上緯新材(材料会社)の支配権を取得しました。上緯新材はAgiBotとは別の会社で、その財務はAgiBotのものではありません。本稿は、公式サイトと取引所の文書の範囲で整理し、出荷台数の「世界一」は会社の主張として扱います。確認日は2026年10月25日です。

構成:AgiBot(智元創新)の公式サイトの会社概要・製品ページと、上緯新材(上海証券取引所 688585)の半年度報告書・取引所の公告・財務顧問の報告を一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるAgiBotと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(非公表の項目を含む)
  5. ロボット・ドローンにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるアジボットと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称智元創新(上海)科技股份有限公司通称は智元機器人、英語表記はAGIBOT。2023年2月に設立(公式の沿革)。株式会社への改組の時期は確認できなかった
本社中国・上海市浦東新区公式サイトの住所は康橋鎮の「智元ビル」。北京、深圳にも拠点。データ収集センターは上海浦東
上場非上場関連する上場会社として上緯新材(688585、科創板)がある。AgiBot関係者の持株会社が支配するが、別の会社
この分野での区分ヒューマノイド・物理AI(主)
産業・専門ロボット(従)
人型・車輪型が主力。四足・清掃・産業向けの精霊G2が従たる類型。区分は本稿による
売上・利益・資金調達額非公表公式サイトと取引所の文書で確認できなかった。報道ベースの数字は使わない
累計の生産台数(会社の主張)20,000台(2026年9月)「生産ラインを離れた台数」。2025年1月に1,000台、2026年3月に10,000台、同年6月に15,000台と公表
主な製品人型:A2・A3
小型人型:X2
車輪型:G1・G2
四足:D1 清掃:C5
研究・展示・商業・産業・清掃向け。仕様は公式サイトに掲載(会社の公称)
従業員非公表公式資料で確認できなかった
まず押さえるべき1点

AgiBotは、設立から約3年半で、人型・車輪型・四足・清掃のロボットと、AIモデル・開発基盤・データ収集まで一気に手を広げた会社です。公式サイトは製品ごとに仕様表を載せ、累計の生産台数を節目ごとに公表しています 事実。ただし、売上・利益・資金調達は非公表で、「2025年の人型出荷が世界一」などは根拠の資料が示されない会社の主張です。もう1つ、混同しやすい点があります。AgiBot関係者の持株会社は、2025年に上緯新材の株式を取得して支配しましたが、上緯新材は風力ブレード用などの材料の会社で、AgiBotの子会社ではありません 事実。上緯新材は、自社名義でも消費者向けロボット(啓元)を開発していますが、2026年6月末時点で売上はありません。本稿はこの2社を分けて読みます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:会社名は智元創新(上海)科技股份有限公司、日本語では「智元機器人」「智元ロボティクス」「AgiBot(アギボット)」などと書かれ、英語表記はAGIBOTです(名称はAGI=汎用人工知能とBOT=ロボットから)。製品のシリーズ名は、遠征(A)、霊犀(X)、精霊(G)、D1、絶塵(C)で、社名ではありません。また、上緯新材(SWANCOR、科創板688585)は別の上場会社で、AgiBot関係者の持株会社「智元恒岳」が支配しています。

公式サイト:https://www.zhiyuan-robot.com/(ロゴは公式サイトのヘッダー画像。白抜きのため暗い背景に置いています。画像の中に社名の漢字を含みます)

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 AgiBotは「ヒューマノイド・物理AI」を主、四足・清掃などの「産業・専門ロボット」を従とする会社(本稿) 人型・車輪型・四足・清掃ロボットと開発基盤を自社で設計し販売する(公式資料の記載)
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、AgiBotの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。AgiBotが人型・車輪型・四足・清掃ロボットを自社ブランドで掲載していることは、公式サイトの記載に基づきます。

本シリーズの技術解説「ヒューマノイドロボット」「ロボット基盤モデルとVLA」「ロボットの視覚と認識」も参照してください。AgiBotの製品は、人型(展示・商業・研究向けの遠征A2・A3、小型の霊犀X2)、車輪型の作業ロボット(精霊G1・G2)、四足(D1)、業務用清掃(絶塵C5)、そして手・データ収集・AI開発基盤に分かれます。区分は本稿によるもので、会社が自らこの類型に分けているわけではありません 本稿の計算。

4. 会社の規模(非公表の項目を含む)

AgiBotは非上場で、財務の開示義務がなく、公式サイトにも売上や利益の記載は確認できませんでした。確認できた規模の情報は、会社の公式沿革にある累計の生産台数です 事実。

時点累計の生産台数(会社の主張)会社の記載
2025年1月1,000台を突破「通用ロボットの下線が1,000台を突破」
2026年3月10,000台「通用具身智能ロボット累計下線10,000台」
2026年6月15,000台同上
2026年9月20,000台同上

「下線」は生産ラインを離れたことを指し、顧客への納入台数や稼働台数ではありません。会社は、A2が「千台超の規模で納入された」とも記載しますが、台数の内訳(製品別・用途別)は公式資料にありません。2025年12月の沿革にある「人型ロボットの出荷が世界一」は、根拠の資料が示されていない会社の主張で、本稿は採用しません。

項目状況
売上高・利益非公表(確認できなかった)
資金調達額・評価額非公表(確認できなかった)。報道の数字は使わない
従業員数非公表(確認できなかった)
拠点上海浦東の本社ビル、北京、深圳。上海浦東にデータ収集センター(自建の3,000㎡の収集工場は2024年9月)
上場非上場。関連会社の上緯新材(688585)は別会社

参考として、関連の上場会社である上緯新材の2026年上期の数字を示します。これはAgiBotの数字ではありません。売上は80,273.09万元(前年同期比+2.42%)、親会社株主に帰属する純損失は16,653.69万元、研究開発費は18,025.43万元で、うち消費者向けの具身ロボット事業の研究開発が16,389.50万元です。同社は、この事業についてすでに2.1億元の前受金があるが売上は未計上、と記載しています 事実。

ここで注意

上緯新材の財務は、AgiBotの財務ではありません。上緯新材の2026年上期の損失や研究開発費は、同社が自社名義で開発する消費者向けロボット(啓元Q1・T1)を含む、上緯新材グループの数字です。同社自身が「智元創新は間接株主の1つで、経営は互いに独立している。関連取引は他にない」と説明しています 事実。また、「累計の生産台数」と「納入台数」「売上」は別の指標です。本稿は、会社の記載をそのまま並べ、AgiBotの規模を推計しません。

5. ロボット・ドローンにかけているリソース

4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、確認できたかを表にします。「確認できなかった」も成果として書きます。

リソースの種類内容区分
人従業員数・研究開発人員は公式資料で確認できなかった。董事長兼CEOは鄧泰華氏(元・華為技術の副総裁)。上緯新材の公告は、共同創業者の彭志輝氏が上緯新材の董事長を務め、同時にAgiBotでも役職を持つと記載事実(人員数は確認できず)
金:研究開発費・設備投資研究開発費・設備投資の額は確認できなかった。公式の沿革は、上海の智能製造基地(2024年1月)、自建の3,000㎡のデータ収集工場(2024年9月)を記載事実(金額は確認できず)
金:資金調達AgiBot自身の調達額は確認できなかった。取引所の文書で確認できたのは、AgiBotが保証人になった買収融資:上緯新材の要約収購の資金として、智元恒岳が浦発銀行・招商銀行と最大13.9億元の銀団融資契約(期間120か月)を結び、智元創新が連帯保証事実(調達額は確認できず)
外部への出資・買収2025年7月8日の契約で、智元恒岳が上緯新材の24.99%、一致行動人の致遠新創合伙が計5.00%を協議譲渡で取得。続く部分要約収購(2025年9月29日〜10月28日、最大37.00%)に135,663,336株(33.6332%)が応募し、収購人と一致行動人の持株は合計63.6232%に。収購に必要な最大資金は11.611億元。収購人は智元創新と中核の経営陣・産業の出資者が共同出資した持株会社事実
大学・研究機関・公的機関との連携公式サイトに「学術研究」の案内と、AGIBOT Worldなどのオープンソース公開がある。特定の大学や公的機関との共同研究の取り決めは、確認できなかった事実(共同の取り決めは確認できず)

主要な製品の状況を、公式サイトの製品ページで確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月25日)。性能値はいずれも会社の公称で、条件や型番により違います。

製品種別主な仕様(会社公称)段階出典
遠征A2(旗艦版・青春版)全身サイズの人型旗艦版:身長169cm・体重69kg・全40自由度・最大1.2m/s・膝のピークトルク270N·m・バッテリー14.4Ah(立ち作業3時間)。青春版は23自由度・0.8m/s。5,100時間の歩行試験(最長1,300時間連続)と92項目の全数検査を実施と記載製品ページに仕様を掲載(購入窓口あり)出典2 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A2_Ultra
遠征A3全身サイズの人型身長173cm・体重55kg・総合の稼働10時間・バッテリー1,152Wh(2パック)・熱交換の電池交換10秒・UWB測位・100台超の群制御。構造部品の90%がマグネシウム合金製品ページに仕様を掲載出典3 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A3
霊犀X2(青春版・旗艦版)小型の人型身長約1.31m・体重約35〜39kg・25〜30自由度・日常の歩行最大1.8m/s(0.8m/s以下が日常)・バッテリー約500Wh・連続歩行約2時間製品ページに仕様を掲載出典4 https://www.zhiyuan-robot.com/products/X2
精霊G1車輪型の作業ロボット身長130〜180cm(昇降)・体重150kg・腕の自由度20・稼働4時間超・演算はJetson AGX Orin 64GB。VRや全身モーションキャプチャでの遠隔操作とデータ収集に対応製品ページに仕様を掲載(購入意向の受付)出典5 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G1
精霊G2産業向けの作業ロボット部品は100%車載級・全体の防護IP42・サブミリ精度の組立。力制御で作業製品ページに特徴を掲載出典6 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G2
D1 Pro/Edu四足ロボット重さ15.5kg・最大3.5m/s・定格荷重5kg・16cmの階段・40度の斜面・稼働1〜2時間。材料はアルミ合金と高強度の工学樹脂製品ページに仕様を掲載出典7 https://www.zhiyuan-robot.com/products/D1_Pro
絶塵C5業務用の清掃ロボット水タンク90L・洗浄幅550mm・最大効率1,980㎡/h・洗浄の稼働3時間。商業施設・駅・病院などが対象製品ページに仕様を掲載(購入意向の受付)出典8 https://www.zhiyuan-robot.com/products/C5

「業内首個」「全球首個」「ギネス世界記録」などは会社の記載です。A2のページは、106.286kmの歩行でギネス世界記録を認定されたと記載しますが、本稿は認定機関の文書を確認しておらず、独立した検証は確認できていません。A2が「中・米・欧の認証(CR・CE-MD・CE-RED・FCC)を持つ」とする記載も会社の主張で、認証の範囲(対象の機種・条件)は公式ページでは詳しく確認できませんでした。

導入と実演の主張も整理します。A2のページは、展示場の案内役、放送局や映画祭などのイベントへの出演、世界人形ロボット運動会での群舞の金賞を挙げています。2025年7月の沿革には「世界初の人形ロボットの工場での常態的作業」、2026年2月には「実機の強化学習の産業ラインへの導入」とあります。いずれも、自律か遠隔操作か、台数・時間・独立した検証が確認できません。会社の主張として読んでください 事実。

6. これまでの取り組み

時期できごと(公式の沿革と取引所の文書)意味
2023年2月・8月智元機器人が設立され、8月に最初の人型「遠征A1」を発表設立から半年で人型を公開
2024年1月〜12月上海の智能製造基地が決定(1月)、遠征A2・霊犀X1を発表(8月)、自建のデータ収集工場(9月)、百万件規模の実機データセットを公開(12月)製品とデータの両方を内製する体制
2025年1月〜8月累計下線1,000台(1月)、基盤モデルGO-1を発表(3月)、中・米・欧の認証を取得と会社が記載(5月)、ロボット用OS「霊渠」と世界モデルの公開(7〜8月)モデル・OS・認証を整備
2025年7月8日〜11月7日智元恒岳が上緯新材の株式を取得(協議譲渡24.99%など)し、部分要約収購(9月29日〜10月28日)を実施。収購人と一致行動人の持株は63.6232%。株式の引渡しは11月7日に完了関連の上場会社の支配権を取得
2025年10月〜12月零コード創作基盤「霊創」(10月)と「霊心」(11月)を公開。12月に「2025年人型出荷が世界一」と会社が記載開発者・消費者向けの基盤を拡大
2026年2月〜6月ロボットの夜(番組、2月)、累計下線1万台(3月)、パートナー会議APC2026(4月)、累計1.5万台(6月)量産の節目を公表
2026年7月〜9月全系の中核製品が国際最高水準の安全認証を取得と会社が記載(7月)、ロボット運動会で金メダル・メダル総数が首位と会社が記載(8月)、累計下線2万台(9月)規模と認証の発信

7. 今後の計画

AgiBot本体の計画数値の計画は確認できず公式サイトは「APC2026で産業のXYZ成長曲線を発表」と記載するが、台数・売上・時期の目標は確認できなかった
上緯新材の消費者向けロボット研究・検証の段階2026年8月の公告は、量産には時間を要し、上市の時期と販売は不確実と記載。売上は2026年6月末までなし
収購人の約束資産再編・借殻上場を行わない収購人は、上緯新材について、資産の再編や借殻上場を行わないと約束と、公告が記載
開発者向けの基盤オープンソースの拡大Genie Studio、AimRT、Link-U OS、AGIBOT Worldを公開(GitHub)。拡大の目標値は確認できなかった

AgiBot自身の数値の計画(年産台数・売上・上場の予定)は、公式資料と取引所の文書で確認できませんでした。上場の計画は、報道に頼らず「確認できなかった」とします 未確定/将来。

確認できなかったこと

次はいずれも公式サイトと取引所の文書で確認できませんでした 未確定/将来。AgiBotの売上・利益・資金調達額・評価額/従業員数/納入台数(累計の生産台数との差)と顧客の名前/人型が工場で行った作業の内容・台数・時間・自律か遠隔操作か/各認証の対象の範囲/AgiBot自身の上場の計画/FCCの新措置(2026年7月28日)への対応。「世界一」「世界初」は会社の主張で、本稿は検証していません。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
総合メーカー(本体・AI・データ・開発基盤)を狙っている人型・車輪型・四足・清掃の製品、基盤モデルGO-1、ロボット用OS、百万件のデータセット、データ収集工場、開発者プラットフォームを公式サイトが掲載推測
規模の実績を、節目ごとに公表して示すことを重視している累計下線台数を2025年1月(1,000台)、2026年3月(1万台)、6月(1.5万台)、9月(2万台)と公表推測
消費者向けは別会社(上緯新材の啓元)で、AgiBot本体は産業・商業・研究向けに分担上緯新材の公告は、関連会社とは応用の場面が異なり、実質的な競合はないと説明事実(会社の説明)
関連の上場会社を通じ、A株市場との接点を持とうとしている収購の目的として、A株市場の科学技術産業への機能を挙げる。収購人は智元創新・経営陣・産業の出資者の持株会社推測
安全・認証を営業上の強みにしているA2のページに中・米・欧の認証、2026年7月の沿革に全系の安全認証を記載推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

AgiBotは、累計の生産台数を「1,000台(2025年1月)→10,000台(2026年3月)→20,000台(2026年9月)」と公表し、A2のページでも「千台超の規模で納入」と書きます 事実。一方で、売上・納入台数・顧客の名前は出していません。ここから本稿は、「会社は、財務を出さない代わりに、生産台数と製品の種類という物差しで規模を示している」と読みます。ただし、生産台数は顧客への納入や売上と同じではないため、事業の実態は確認できません 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

AgiBotを中心としたドローン・ロボティクス分野の関係 公式サイトと取引所の文書に記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない(確認日 2026年10月25日) AgiBot 智元機器人 展示場・放送局・催事 A2の登場先(会社の記載) 開発者・研究者 Genie StudioやAimRTなどを公開 上緯新材(688585) 持株会社が63.62%を保有 智元恒岳(収購の持株会社) 智元創新・経営陣・産業の出資者 NVIDIA 演算ボードJetson Orinを採用 浦発銀行・招商銀行 収購の銀団融資(智元創新が保証) 比亜迪・上汽金控ほか 一致行動人の持株会社の出資者 車載級の部品メーカー G2の部品は全て車載級(社名なし) 導入・共同の取り組み 部品・技術の供給元 出資・支配・融資
図2 出典:公式サイトの製品ページ、上緯新材の公告、財務顧問の報告。上緯新材は別の上場会社で、智元恒岳(AgiBot関係者の持株会社)が支配します。NVIDIAはA2・G1の仕様表にある演算ボードの記載で、契約の内容は確認できません。比亜迪・上汽金控などは、一致行動人の致遠新創合伙の出資者であり、AgiBotの株主かどうかは確認できません。点線の関係は出資・支配・融資で、共同開発を意味しません。

10. 提供している技術・製品・サービス

層主な製品公式資料の記述
本体人型:遠征A2・A3、霊犀X1・X2/車輪型:精霊G1・G1 Max・G2/四足:D1/清掃:絶塵C4・C5展示・商業・研究・産業・清掃向け。ソフトを数か月ごとに更新(OTA)できると記載
AIモデル・OS基盤モデルGO-1、世界モデル、ロボット用OS「霊渠 Link-U OS」、ミドルウェアAimRT2025年3月にGO-1、同年7月にOS、同年8月に世界モデルを公開と沿革に記載。GitHubで公開
データAGIBOT Worldデータセット、データ収集工場、データ収集サービス百万件規模の実機データを2024年12月に公開。自建の3,000㎡のデータ収集工場
開発基盤Genie Studio、霊創、霊心コード不要で動作を作る基盤(霊創)と、ロボットの性格を設定する基盤(霊心)
手・部品OmniHand、OmniPicker(AGILINKブランド)人型・車輪型に装着する手とグリッパー。仕様の詳細は本稿では確認していない
素材技術者の視点:軽く、熱に強く、長く動く人型

マグネシウム合金で軽くする:A3は、構造部品の90%にマグネシウム合金を使い、チタン合金とTPU(柔らかい熱可塑性ポリウレタン)の被覆を組み合わせて、体重55kgに抑えたと会社は説明します 事実。マグネシウムはアルミより軽い金属ですが、燃えやすく腐食しやすいため、表面処理が要ります(本シリーズの「ロボット・ドローンの構造材料」を参照)。

熱とバッテリー:A3は、放熱の改良で冷却ファンを半分に減らし、45℃を超える環境でも動くと説明します。バッテリーは全極耳(電極の取り出し口を多くして内部抵抗を下げる方式)の電池セルを使い、2パックで1,152Wh、稼働約10時間、電池交換は10秒、と記載します 事実。電池の仕組みは、本シリーズの「ロボットとドローンの電源」を参照してください。

四足と部品の材料:D1は、アルミ合金と高強度の工学樹脂を使い、15.5kgです。G2は、部品の100%を車載級にして、防護はIP42と記載します 事実。

関連の材料会社:上緯新材は、自社の高性能複合材料の技術を、ロボットの靴や構造部品に応用し、試作品を納めて試験中と、半年度報告書に記載します。これは上緯新材の事業で、AgiBotの製品への採用は確認できません 未確定/将来。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
財務が見えない売上・利益・資金調達・従業員数が非公表で、事業の持続性や価格競争力を、公開された資料から確認できない事実(開示の範囲)
台数の指標が限られる公表される台数は「累計の生産台数」で、納入台数・稼働台数・顧客の内訳は確認できない。「出荷世界一」は根拠の資料が示されない会社の主張事実
実演の検証工場での「常態的作業」などは、自律か遠隔操作か、台数・時間・独立した検証が確認できない事実
米国の規制2026年7月28日、FCCが海外生産の先進ロボット機器を新たにCovered Listへ追加(公式文書)。AgiBotのA2は、FCCの認証を持つと会社が記載。新型機への影響と会社の対応は確認できない事実(会社の対応は確認できず)
買収融資の保証智元創新は、智元恒岳の最大13.9億元の銀団融資(期間120か月)の連帯保証人。融資は収購の対価の最大71.44%事実
関連会社の混同上緯新材の財務(2026年上期は純損失1.67億元)はAgiBotのものではなく、同社の消費者向けロボットは売上がない。同社は、外部の流通株が約16%と少ないと自ら記載事実
家庭向けの安全・データ上緯新材の公告は、家庭向けロボットについて、衝突の安全と、音声・映像データの保存・権限分離の課題を挙げる。AgiBot本体について同種の記載は確認できない事実(上緯新材の記載)

12. 用語集

具身智能
体(ロボット本体)を持ち、現実の世界で動きながら学ぶAI。
下線(累計の生産台数)
生産ラインを離れた台数。顧客への納入や売上の台数とは別の指標。
基盤モデルGO-1
AgiBotが2025年3月に発表したと沿革に書かれた、汎用の具身基盤モデル。
OTA
通信でロボットのソフトを更新すること。
要約収購(部分要約)
上場会社の株主に、価格を示して一部の株式を買う申し出をすること。上緯新材では最大37%。
一致行動人
収購人と協調して議決権などを行使する関係者。
科創板(STAR Market)
上海証券取引所の、科学技術企業向けの市場。
銀団融資
複数の銀行が共同で出す融資。
全極耳(タブレス)
電池の電極の取り出し口を多くして、内部抵抗と発熱を下げる構造。
IP42
防塵防水の等級。IP42は4mm超の異物と、垂直に落ちる水滴に対する保護を示す。
人型ロボットの段差試験と、関節・足元の拡大例です。作業をこなすには、認識だけでなく姿勢の安定と駆動部の性能も必要になります。
図3 ImageGen生成の概念画像。人型ロボットの段差試験と、関節・足元の拡大例です。作業をこなすには、認識だけでなく姿勢の安定と駆動部の性能も必要になります。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. 智元創新(上海)科技股份有限公司(AgiBot) 公式サイト「会社概要・発展の歩み」(確認日 2026年10月25日)。設立、累計の生産台数のマイルストーン、拠点、認証や記録に関する会社の記載。 https://www.zhiyuan-robot.com/company/profile
  2. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「遠征A2」(A2旗艦版・青春版の仕様表、5,100時間の歩行試験、認証、導入の記載)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A2_Ultra
  3. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「遠征A3」(身長173cm・体重55kg・バッテリー・材料の記載)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A3
  4. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「霊犀X2」(青春版・旗艦版の仕様表)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/X2
  5. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「精霊G1」(車輪型の汎用具身ロボットの仕様)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G1
  6. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「精霊G2」(産業向けの作業ロボットの特徴)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G2
  7. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「D1 Pro/Edu」(四足ロボットの仕様表)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/D1_Pro
  8. 智元創新(AgiBot) 公式サイト 製品ページ「絶塵C5」(業務用清掃ロボットの仕様)。 https://www.zhiyuan-robot.com/products/C5
  9. 上緯新材料科技股份有限公司(688585) 2026年半年度報告書(2026年8月15日、上海証券取引所の科創板)。同社の消費者向け具身ロボット事業(啓元Q1・T1)、研究開発費、前受金、財務。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-15/1225475850.PDF
  10. 華泰聯合証券(財務顧問) 上海智元恒岳科技合伙企業(有限合伙)による上緯新材料科技股份有限公司の要約収購に関する財務顧問報告(2025年9月25日)。収購人の構成・資金・融資契約・実質的な支配者。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-09-25/1224679292.PDF
  11. 上緯新材料科技股份有限公司(688585) 智元恒岳の要約収購の結果と株式の再開に関する公告(2025年10月30日)。応募株数と収購後の持株比率。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-10-30/1224762958.PDF
  12. 上緯新材料科技股份有限公司(688585) 株式取引リスク提示公告(2026年8月15日)。智元創新が間接株主であること、会社の独立性、消費者向けロボットが研究・検証の段階にあること。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-15/1225475855.PDF
  13. 上海智元恒岳科技合伙企業(有限合伙) 上緯新材 詳式権益変動報告書(修訂稿、2025年8月16日)。智元創新(智元機器人)の設立時期、製品ファミリー、収購の経緯。 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-08-16/1224500213.PDF
  14. Federal Communications Commission(米国連邦通信委員会) Public Notice DA 26-786(2026年7月28日)。海外で生産された先進ロボット機器を Covered List に追加。 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-786A1.pdf

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
設立(2023年2月)、累計の生産台数(1,000・10,000・15,000・20,000台)、沿革の各事項、拠点、認証・記録・実演に関する会社の記載事実出典1 https://www.zhiyuan-robot.com/company/profile
A2の仕様(旗艦版・青春版)、5,100時間の試験、92項目の検査、認証、導入の記載事実出典2 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A2_Ultra
A3の仕様(173cm・55kg・10時間・1,152Wh・マグネシウム合金90%)事実出典3 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A3
X2の仕様(青春版・旗艦版)事実出典4 https://www.zhiyuan-robot.com/products/X2
G1の仕様(車輪型・20自由度・Jetson AGX Orin)事実出典5 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G1
G2の特徴(車載級部品100%・IP42)事実出典6 https://www.zhiyuan-robot.com/products/G2
D1の仕様(15.5kg・3.5m/s・5kg)と材料事実出典7 https://www.zhiyuan-robot.com/products/D1_Pro
C5の仕様(90L・550mm・1,980㎡/h)事実出典8 https://www.zhiyuan-robot.com/products/C5
上緯新材の2026年上期の売上・損失・研究開発費・前受金2.1億元・啓元Q1/T1・研究開発人員180人・特許事実出典9 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-15/1225475850.PDF
収購人の構成、最大資金11.611億元、銀団融資(最大13.9億元・120か月)と智元創新の保証、鄧泰華氏の経歴事実出典10 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-09-25/1224679292.PDF
要約収購の結果(応募135,663,336株、収購人と一致行動人の持株63.6232%)事実出典11 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-10-30/1224762958.PDF
智元創新が間接株主であること、消費者向けロボットが研究・検証段階にあること、彭志輝氏の兼職、外部流通株の比率事実出典12 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2026-08-15/1225475855.PDF
智元創新(智元機器人)の設立時期(2023年2月)と製品ファミリー(遠征・精霊・霊犀)事実出典13 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-08-16/1224500213.PDF
FCCのCovered List追加(2026年7月28日、海外生産の先進ロボット機器)事実出典14 https://docs.fcc.gov/public/attachments/DA-26-786A1.pdf
売上・利益・資金調達額・従業員数・納入台数・顧客名・工場での作業の内容・認証の範囲・上場計画・FCCへの対応未確定/将来出典1 https://www.zhiyuan-robot.com/company/profile 出典13 https://static.cninfo.com.cn/finalpage/2025-08-16/1224500213.PDF
「出荷世界一」「世界初」「ギネス記録」などの主張未確定/将来出典1 https://www.zhiyuan-robot.com/company/profile 出典2 https://www.zhiyuan-robot.com/products/A2_Ultra
下線台数の年表の整理、台数の指標の限界の指摘本稿の計算本稿の整理(公式の沿革の記載から)
ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型の区分とAgiBotの位置づけ本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズで扱う企業から例示
総合メーカーを狙う、節目ごとに規模を公表する、A株市場との接点、安全・認証を強みにするという読み推測本稿の解釈(公式サイトと取引所の文書の記載から)
素材技術者の視点(マグネシウム合金・TPU・全極耳電池・車載級部品)解説解説(一般的な技術説明。数値は会社の公称で、本稿は検証していない)

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の情報は、AgiBot(智元創新)の公式サイトの会社概要・製品ページと、上緯新材(上海証券取引所の科創板 688585)の半年度報告書・公告・財務顧問の報告に基づきます。AgiBotは非上場のため、財務は「非公表」と書きました。調査会社の推計値・報道ベースの数字(出荷台数・評価額・調達額の推計を含む)は使用していません。「世界一」「世界初」などは会社の主張で、本稿では検証していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。株価・評価額・投資判断には触れていません。