主要成果
ペンシルベニア大学のKiran Musunuru氏とフィラデルフィア小児病院のBecca Ahrens-Nicholas氏らによるチームが、CPS1欠損症という重篤な尿素サイクル異常症を患う乳幼児(KJ)に対し、個別化されたCRISPR治療を設計・製造し、投与した。特筆すべきは、診断から投与までを6カ月という短期間で完結させた点である。また、FDAは速度を優先するチームの要望を認め、IND(新薬臨床試験開始届)をわずか1週間で承認した。その結果、本来であれば生存率が50%以下とされる疾患でありながら、KJは投与から2年後も生存し、病状を管理できている。
技術・詳細
本治療の核心は、モジュール型の配送システムにある。脂質ナノ粒子(LNP)を「石鹸の泡」のような運搬体として利用し、内部に2つのRNA分子を搭載している。一つは遺伝子編集を行うエディターをコードするRNAであり、もう一つはゲノム上の正確な配列へ誘導する20塩基長のガイドRNA(分子GPS)である。このLNPを静脈投与すると、異物をろ過する肝臓の機能により、ほぼ100%の肝細胞に到達することが可能となる。
このシステムの戦略的な利点は、薬剤本体は変更せず、ガイドRNA(GPS)のみを差し替えることで、異なる標的に対応できる点にある。自然に存在する保護的変異を持つ遺伝子を無効化して疾患を防ぐことも、病原性変異を持つ遺伝子を正常なバージョンに修正することも可能である。KJの場合、出生後約1週間(8月8日頃)に全ゲノム解析結果が得られた後、ゼロから薬剤を開発するのではなく、個別の変異に合わせたガイドRNAを設計することで、迅速な投与を実現した。
背景・業界の文脈
Musunuru氏はもともと循環器内科医であり、心筋梗塞や脳卒中で毎年1,800万人が死亡する心血管疾患を標的としていた。既存の治療法は日々の服用や生涯にわたる注射が必要だが、これを「一度限りの治療」に変えることが世界的な普及には不可欠だと考えている。特にPCSK9などの遺伝子には、人口の2〜3%に自然な機能喪失変異が存在し、それらの保持者が健康であることから、この遺伝子をオフにすることが安全であるという「自然の実験」によるエビデンスが得られている。この知見はVerve Therapeutics社へと展開され、肝臓標的のベース編集が心疾患患者に有効であるという初期臨床データにつながった。現在、PCSK9などの脂質遺伝子を標的としたプログラムは、少なくとも13社で16〜17件発表されている。
今後の展望
心血管疾患での成功を受け、チームは希少疾患への応用を開始した。まずPKU(フェニルケトン尿症)のヒト化マウスモデルにおいて、ベース編集により48時間以内にフェニルアラニン値を正常化させ、数週間で神経学的転帰を改善させた。この成果を背景に、より深刻な尿素サイクル異常症への挑戦に至った。尿素サイクル異常症は再発性の変異が少なく、症例ごとに個別治療が必要な上、出生後24〜48時間以内に発症するため、極めて厳しい時間制限がある。チームは長年、理論的なタイムトライアルを繰り返し、プロセスの効率化を追求してきた。Musunuru氏は、複数の企業による治療法が2030年代初頭までには利用可能になると予測している。
元記事: https://finance.biggo.com/news/095ffb5e6b1a108d
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