主要成果
中国科学院・物質構造研究センター(FJIRSM)のWEN Zhenhai教授およびHUANG Junheng教授らによる研究チームは、フッ素化グラフェン(FG)を用いた新しい電極触媒を開発し、亜鉛空気電池(ZABs)の性能を大幅に向上させました。特に、最適化された「FG-3」触媒を用いた充電式亜鉛空気電池は、2 mA cm-2において98.0%という高い往復効率(round-trip efficiency)を達成し、1500サイクル後も97.6%の効率を維持することに成功しました。また、外気条件下で820時間以上の安定動作を確認しており、一次電池としての構成では569 mW cm-2のピーク電力密度を記録しています。
技術・詳細
本研究では、市販の高フッ素化グラフェンを前駆体とし、不活性雰囲気下での段階的な熱脱フッ素化戦略を採用しています。これにより、絶縁性のsp3-C-F結合から導電性のsp2-C-F結合へと精密に調整し、共役sp2炭素ネットワークを回復させました。フッ素含有量が約3.1 at.%である「FG-3」は、電気伝導性と触媒活性の最適なバランスを実現しており、均一なフッ素分布、高い比表面積、および向上した濡れ性を備えています。
電気化学的な評価において、FG-3は2電子(2e-)経路の酸素還元反応(ORR)および過酸化水素酸化反応(POR)に対して優れた二機能性活性を示しました。具体的には、H2O2選択率97.4%、ファラデー効率98.0%という極めて高い数値を達成しています。オペランド分光法と第一原理シミュレーションを用いたメカニズム解析により、sp2-C-F結合が隣接する炭素部位に局所的な静電分極を誘起し、重要な中間体である*OOHを安定化させることで、反応の速度論的障壁を下げていることが明らかになりました。
背景・業界の文脈
充電式亜鉛空気電池は、理論的なエネルギー密度が非常に高く、本質的な安全性と亜鉛資源の豊富さから、次世代のエネルギー貯蔵技術として期待されています。しかし、実用化への大きな壁となっていたのが、放電時のORRおよび充電時のOER(酸素発生反応)における「4電子(4e-)反応」の遅さです。この多段階のプロトン結合電子移動はエネルギー障壁が高く、電圧分極の増大や往復効率の低下、触媒の劣化を招いていました。
代替案として、より高速な反応速度と高い可逆性を持つ「2電子(2e-)経路」による酸素-過酸化水素相互変換が注目されてきました。しかし、金属ベースの触媒ではフェントン様副反応による性能劣化が起こりやすく、一方で従来の非金属炭素触媒では「導電性と選択性のトレードオフ」という固有の課題がありました。
今後の展望
本研究は、フッ素化炭素電極触媒における構造と特性の明確な関係を確立したものであり、炭素材料エンジニアリングにおける汎用的な戦略を提供します。この成果は、耐久性の高い金属-空気電池の開発だけでなく、オンサイトでの過酸化水素(H2O2)電解合成への道を開くものと期待されています。
元記事: https://english.cas.cn/newsroom/research-news/202610/t20261015_1203726.shtml
毎週の技術動向レポートを無料でお届け
各分野の分析レポートを読む価値があるかどうか一目で判断できるインフォグラフィックをメールで受け取れます。
📢 メールマガジンに無料登録(週刊・技術動向レポート)
ご登録いただくと、Troy-Technical から週刊で技術動向レポート(メールマガジン)をお届けします。
- 取得したメールアドレス・選択分野は配信目的にのみ使用します。
- 第三者へ提供することはありません。
- 配信はいつでも解除できます(各メール下部のリンクから)。
詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
登録は1分・いつでも解除できます



