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培地|細胞培養技術 技術解説

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TECHNOLOGY EXPLAINER

培地(細胞培養培地)
― 細胞のための「液体の配合設計」を、種類から総ざらいする

培地は、細胞を育てるための液体です。1950年代の「最小限の栄養」から始まり、 血清を減らし、成分をすべて特定する方向へ、70年かけて進んできました。 目的・細胞・培養方式ごとに数えきれないほどの種類があります。 本稿では、原著論文と規制当局の資料をもとに、その種類を6つの切り口で整理します。

構成:原著論文(Science、PNAS、J Exp Med、Nature Methods ほか)、査読付き総説、EMA・FDA の公表資料を一次情報として使用/最終更新 2026年9月

ヒーロー画像:淡い色の液体が入った無地のガラス瓶が並ぶ
概念図(AI生成イメージ)。「細胞のための液体」という題材を雰囲気として表現したものです。実在の製品・容器・培地の色を示すものではありません。
この記事の構成
  1. 培地とは何か(3行でつかむ)
  2. 何が入っているのか ― 成分と役割
  3. 基礎培地の系譜 ― 1950年から1980年まで
  4. 本稿の計算:重炭酸とCO2の関係
  5. 血清をどう扱うか ― 5つの段階
  6. 素材技術者の視点①:アルブミンは「吸着剤」として効いていた
  7. 目的別の培地 ― 抗体、ウイルスベクター、昆虫、T細胞、iPS細胞、分化、オルガノイド
  8. 培地の種類 総覧(一覧表)
  9. 培養方式別 ― フィード培地と灌流培地
  10. 素材技術者の視点②:溶けない・壊れる成分をどう入れるか
  11. 形態と製造 ― 粉末・液体・濃縮液、ろ過滅菌
  12. 細胞培養肉の培地 ― コストの壁
  13. 素材技術者の視点③:「医薬品の配合」を「食品の値段」で作る
  14. 課題と、本稿で確認できなかったこと
  15. 用語集/参考資料/出典対応表
本記事の表記ルール

事実=公表資料・論文に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・見通し・研究段階であり、実用上の実績が確認できていない事項
このほか、構造の整理や材料設計上の読み取りは「解説」として区別しています。 本記事は技術の解説であり、医療上の助言や、特定の製品の推奨ではありません。

1. 培地とは何か(3行でつかむ)

培地とは、「細胞が体の外で生き、増え、働くために浸かっている液体」です。 体の中なら血液や組織液が運んでくれる栄養・塩類・ホルモンを、 人工的に配合して再現したものと考えると分かりやすいでしょう(本記事による解説)。

  • 骨格:水に、無機塩・糖・アミノ酸・ビタミン・緩衝剤を溶かした「基礎培地」が土台です。1955年にイーグルがマウスL細胞とヒトHeLa細胞に必要な最小限の成分を特定したのが、現在の多くの基礎培地の出発点とされています事実
  • 足すもの:基礎培地だけでは多くの細胞は増えません。かつては血清(胎児牛血清など)を加えて補っていましたが、成分が未定義でロット差が大きいため、必要な因子を個別に足す無血清培地への置き換えが進んできました事実
  • 種類が多い理由:細胞の種類(抗体を作るCHO細胞、iPS細胞、T細胞、昆虫細胞…)、目的(増やす・分化させる・ものを作らせる)、培養方式(バッチ・流加・灌流)ごとに、最適な配合が違うからです(本記事による解説)
この記事でいちばん大事な一行

培地の歴史は、「中身の分からない液体(血清)」を「中身の分かる配合」に置き換えてきた歴史です。 2011年に報告された E8 培地は、基礎培地にわずか7種類の成分を足しただけで、 ヒトiPS細胞を培養できることを示しました事実。 材料の言葉でいえば、「天然物の混合物」から「組成を規定した配合品」への移行です。

2. 何が入っているのか ― 成分と役割

まず、培地の中身を「土台(基礎培地)」と「目的に応じて足すもの」に分けて見ます。

培地の中身 ― 土台と、目的に応じて足すもの(本記事による整理) 左=どの培地にもほぼ共通する「基礎培地」/右=細胞や目的によって変わる添加物 基礎培地(ベース) 無機塩:浸透圧と電解質を整える 糖(グルコース):エネルギー源 アミノ酸:タンパク質の材料 ビタミン:酵素反応を助ける 緩衝系:重炭酸+CO2、HEPES pH指示薬:フェノールレッド + 足すもの(目的で変わる) 血清(胎児牛血清=FBS など) 成分は未定義・ロット差が大きい または 必要な因子を個別に足す(無血清) インスリン・トランスフェリン・セレン(ITS) アルブミン・脂質・微量元素 成長因子・サイトカイン(FGF2 など) ※ 成分の役割は Yao・Asayama(2017)の総説[参考資料9]ほかの記述をもとに、本記事が2つに分けて整理したものです。 ※ 箱の大きさは量の比を表しません。HEPES やフェノールレッドを含まない培地もあります。
図1 概念図(ベクター作図)。成分の役割は Yao・Asayama の総説[参考資料9]、Barnes・Sato[参考資料8]などの記述によります。「土台」と「足すもの」の2つに分けたのは本記事の整理で、箱の大きさは量を表しません。
成分役割文献の記述・注意点
アミノ酸タンパク質の材料。細胞が自分で作れない「必須アミノ酸」が要るイーグルの BME は13種のアミノ酸と8種のビタミンからなる事実。グルタミンは他のアミノ酸の約3〜40倍の量が必要とされる事実
糖(グルコース)エネルギー源DMEM は、要求量の多い細胞向けにグルコースを25 mmol/L に高めた事実。25 mmol/L = 約4.5 g/L本稿の計算
ビタミン酵素反応を助ける補酵素の材料α-MEM はアスコルビン酸・ビオチン・シアノコバラミンなどを追加事実
無機塩浸透圧・電解質のバランスRPMI-1640 はカルシウム・マグネシウムが少なく、リン酸が多いのが特徴事実
緩衝系(重炭酸/CO2)pH を保つ。インキュベーターの CO2 と対で働く重炭酸の濃度で、必要な CO2 濃度が変わる(第4章)事実
緩衝系(HEPES)CO2 インキュベーターの外でも pH を保ちやすい生物研究用の緩衝剤については、1966年にグッドらが「生物研究用の水素イオン緩衝剤」を報告している事実。HEPES を含む培地は可視光にさらされると過酸化水素などの細胞毒性物質が増えるとの報告がある事実
成長因子・サイトカイン増殖や分化の「合図」E8 培地では FGF2 を 100 µg/L、TGFβ1 を 2 µg/L 配合事実
インスリン・トランスフェリン・セレン(ITS)インスリンは糖の取り込み、トランスフェリンは鉄の運搬、セレンは抗酸化酵素に使われる多くの細胞がこの3つを必要とすることから、ITS として市販されている事実
アルブミン脂質などの運び役、保護市販品は100種類を超える血清タンパクを微量に含み、フタル酸エステル(可塑剤)やエンドトキシンを結合しうる事実(第6章)
微量元素酵素の活性中心などHam's F-12 を CHO 細胞以外でタンパク質なしで使うには、亜鉛濃度を下げるなどの修正が要るとされる事実
pH指示薬(フェノールレッド)色で pH の変化を見る培地中の濃度(15〜45 µM)で弱いエストロゲン作用を示す事実。15〜45 µM = 約5.3〜16 mg/L本稿の計算

「文献の記述・注意点」欄の出典:Yao・Asayama[参考資料9]、Eagle[参考資料1]、Good ら[参考資料32]、Chen ら[参考資料14]、Berthois ら[参考資料31]。「役割」欄は本記事による一般的な説明です。換算は本稿の計算(グルコース 180.16 g/mol、フェノールレッド 354.4 g/mol)。

3. 基礎培地の系譜 ― 1950年から1980年まで

いま使われている基礎培地の多くは、1950〜1980年の約30年間に生まれています。 それぞれ、特定の細胞を育てるために作られたものです。

基礎培地の系譜(原著論文の発表年で配置) 上段と下段は重なりを避けるための配置で、意味の違いはありません 199(1950) ニワトリ胚細胞 MEM(1959) アミノ酸を約2倍に F-12(1965) CHO細胞をクローン増殖 α-MEM(1971) 雑種細胞の研究用 DMEM/F-12(1980) 無血清培養の土台 BME(1955) HeLa・L細胞 DMEM(1959) 濃度を約4倍に L-15(1963) CO2なしで緩衝 RPMI-1640(1967) 白血球(リンパ球) IMDM(1978) B細胞・無血清 最小限(BME・MEM)→ 濃く豊かに(DMEM・IMDM)→ 血清を減らす(F-12・DMEM/F-12) ※ 発表年は各原著論文(PubMed 収載情報)による。DMEM/F-12 は Barnes・Sato(1980)の無血清培養の方法論文を代表として置いた。 ※ 各培地の対象細胞・特徴は Yao・Asayama(2017)の総説による。下段の流れの3区分は本記事による整理です。
図2 概念図(ベクター作図)。発表年は各原著論文[参考資料1〜8・10・11]、対象細胞と特徴は Yao・Asayama の総説[参考資料9]によります。DMEM/F-12 の年は、無血清培養の方法をまとめた Barnes・Sato(1980)を代表として置いたもので、この混合培地の「初出」を特定したものではありません。流れの3区分は本記事の整理です。
基礎培地開発者・原著(年)当初の対象組成の特徴
Medium 199モーガン、モートン、パーカー(1950)ニワトリ胚細胞をタンパク質なしで培養アミノ酸・ビタミン(脂溶性を含む)・核酸前駆体など。理論上必要とされた成分まで入れた非常に複雑な配合。器官培養によく使われる
BME(イーグル基礎培地)イーグル(1955)マウスL細胞、ヒトHeLa細胞必要最小限の成分。13種のアミノ酸と8種のビタミン。成分が単純なため、多くの成分を要求する細胞には不向き
MEM(イーグル最小必須培地)イーグル(1959)BME の改良大半のアミノ酸を BME の約2倍に。非必須アミノ酸を足して細胞の合成負担を減らす使い方もある
DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)ダルベッコ、フリーマン(1959)ポリオーマウイルスのプラーク形成を調べるためのマウス胚細胞アミノ酸とビタミンを BME の約4倍に。のちにグリシン・セリン・鉄・ピルビン酸を追加し、グルコースを 25 mmol/L に高めた版が広まった
L-15(ライボヴィッツ)ライボヴィッツ(1963)大気と自由にガス交換する条件での培養重炭酸ではなくリン酸と塩基性アミノ酸で緩衝。CO2 インキュベーターなしで pH を保てる。エネルギー源はグルコースではなくピルビン酸(とガラクトース)
Ham's F-12ハム(1965)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞「世界初の化学組成既知培地」とよく引用される。単一の CHO 細胞がタンパク質なしでコロニーを作れた。血清タンパクの代わりにリノール酸とプトレシンを使用
RPMI-1640ムーア、ゲルナー、フランクリン(1967)ヒト末梢血の白血球(リンパ球)の長期培養リンパ球・白血球・ハイブリドーマに広く使われる。カルシウムとマグネシウムが少なく、リン酸が多い
α-MEMスタナーズ、エリセイリ、グリーン(1971)マウスとハムスターの雑種細胞の研究MEM に非必須アミノ酸、ビタミン(アスコルビン酸・ビオチン・シアノコバラミン)、ピルビン酸、リポ酸、ヌクレオシドを追加
IMDM(イスコフ変法ダルベッコ培地)イスコフ、メルヒャース(1978)リポ多糖に反応するマウスB細胞DMEM を濃くした改良版。原著では「M-DMEM」と呼ばれ、アミノ酸・ビタミン B12・ビオチン・亜セレン酸・ピルビン酸などを追加。血清をアルブミン・トランスフェリン・大豆脂質で完全に置き換えられた
DMEM/F-12バーンズ、サトウ(1980)ほかさまざまな細胞の無血清培養成分の多い F-12 と、栄養の濃い DMEM を 50:50 で混ぜたもの。無血清培養の基礎培地として最もよく使われる

すべて事実。開発者・年は各原著論文[参考資料1〜8・10・11]、対象と特徴は Yao・Asayama の総説[参考資料9]、IMDM の詳細はイスコフらの原著[参考資料7]によります。原著論文の本文を本稿で読めたのは IMDM(イスコフら)のみで、他は PubMed の収載情報と総説の記述で確認しました。

4. 本稿の計算:重炭酸とCO2の関係

多くの培地は、炭酸水素ナトリウム(重炭酸)と、インキュベーター内の CO2 の組み合わせで pH を保ちます。 Yao・Asayama の総説は、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式を使って、 MEM(重炭酸 26 mmol/L)は CO2 5%、Ham's F-12(14 mmol/L)は 2%、DMEM(44 mmol/L)は 10% が必要だと示しています事実。 同時に「これは理論値で、実際には平衡後の pH を測って CO2 濃度を微調整するほうがよい」としています事実。

本稿の計算:pH 7.4 を狙うと、CO2 は何%要るか

同じ式で、本記事が検算してみます本稿の計算。

  • 式:pH = 6.1 + log10([HCO3⁻] ÷(0.03 × pCO2))。[HCO3⁻] は mmol/L、pCO2 は mmHg
  • 前提:目標 pH 7.4、大気圧 760 mmHg、水蒸気圧は無視、温度による係数の違いも無視
  • 計算:必要な pCO2 = [HCO3⁻] ÷(0.03 × 10^1.3)= [HCO3⁻] ÷ 0.599
  • MEM:26 ÷ 0.599 = 43.4 mmHg → 43.4 ÷ 760 = 約5.7%
  • F-12:14 ÷ 0.599 = 23.4 mmHg → 約3.1%
  • DMEM:44 ÷ 0.599 = 73.5 mmHg → 約9.7%

前提と限界:総説の値(5%・2%・10%)とは F-12 で差があります。 目標 pH をいくつに置くか、係数や気圧の扱いで結果は変わります。 大事なのは値そのものではなく、「重炭酸の多い培地ほど、高い CO2 が要る」という比例関係です。 DMEM を CO2 5% で使うと、同じ式では pH 約7.7 と計算されます本稿の計算。

pH 7.4 を保つのに必要な CO2 濃度(本稿の計算と総説の値) 棒=本稿の計算/赤い縦線=Yao・Asayama(2017)の総説に示された値 MEM(重炭酸 26 mM) F-12(重炭酸 14 mM) DMEM(重炭酸 44 mM) 計算 約5.7%/総説 5% 計算 約3.1%/総説 2% 計算 約9.7%/総説 10% 0% 2% 4% 6% 8% 10% 重炭酸が多い培地ほど、インキュベーターの CO2 を高くする必要がある ※ 前提:pH=6.1+log10([HCO3⁻]÷(0.03×pCO2))、目標 pH 7.4、大気圧 760 mmHg、水蒸気圧と温度補正は無視(本記事の計算)。 ※ 重炭酸濃度と総説の CO2 値は Yao・Asayama(2017)[参考資料9]による。実際の運用では平衡後の pH を測って調整します。 ※ 棒の長さは1%=36 px で描画。総説の値との差は、目標 pH や係数の置き方の違いによると考えられます。
図3 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。重炭酸濃度と総説の CO2 値(5%・2%・10%)は Yao・Asayama[参考資料9]によります。棒の値(約5.7%・約3.1%・約9.7%)は本記事が算出したもので、公表値ではありません。目標 pH・係数・気圧の扱いで結果は変わります。

5. 血清をどう扱うか ― 5つの段階

「無血清」「動物由来成分不含」「ゼノフリー」「化学組成既知」—— 培地のカタログにはこうした言葉が並びます。どれも「血清という中身の分からない液体から、どこまで離れたか」を表す言葉です。

血清は何をしていたのか

Yao・Asayama の総説は、胎児牛血清(FBS)の働きを次のようにまとめています事実。

  • アミノ酸・タンパク質・ビタミン・糖・脂質・ホルモン・成長因子・無機塩・微量元素の供給源
  • 培地の pH 緩衝能を高める
  • ピペット操作や撹拌によるせん断応力(物理的な損傷)を減らす
  • 培養面の状態を変え、接着する細胞が増えやすくする

それでも血清をやめたい理由

理由一次情報の記述
ロット差血清は組成が未定義で、ロット間のばらつきが大きい(Yao・Asayama)事実
感染因子のリスクウイルスなどによる汚染リスクが高い(Yao・Asayama)事実。EMA のガイドラインは、牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)について「特定の管理された群や BVDV のない地域の牛の血清を除き、存在を完全には避けられない」とし、使用前の検査を求めている事実
反芻動物由来であることEMA のガイドラインは、TSE(伝達性海綿状脳症)に関する指針が「反芻動物由来と非反芻動物由来を選べるなら、非反芻動物由来が望ましい」としていることを前提に置いている事実
精製の負担バイオ医薬品の製造では、血清が製品の精製工程を難しくする(Yao・Asayama)事実
再現性・倫理・流通FBS にはデータの品質と再現性の問題、動物福祉上の懸念、近年の不正表示の事例があり、代替と無血清培地の開発が世界的に注目されている(van der Valk ら)事実

出典:Yao・Asayama[参考資料9]、EMA ガイドライン EMA/CHMP/BWP/457920/2012 rev 1[参考資料13]、van der Valk ら[参考資料12]。EMA ガイドラインは2013年5月30日採択、同年12月1日発効です。

なお EMA のガイドラインは、血清のウイルス不活化について「ガンマ線照射が最もよく使われる方法」とし、ほかの検証済みの方法も認めています事実。 血清を使う場合も、使わない方向へ進む場合も、「原料の液体の中身をどう保証するか」が問われていることが分かります(本記事による解説)。

血清の扱いで見た培地の5段階(本記事による整理) 右へ行くほど、中身が特定され、由来の管理が厳しくなる ① 血清添加 FBSなどの血清を 加えて使う 成分は未定義 ロット差が大きい ② 無血清 血清は入れない 代わりに因子を足す 牛アルブミンなど 動物由来を含みうる ③ 動物由来 成分不含(ADCF) 動物由来の原料を 使わない 組換え体などで代替 ④ ゼノフリー ヒト細胞に対して ヒト以外の動物に 由来する成分を 含まない ⑤ 化学組成既知 (chemically defined) すべての成分と 濃度が特定されている 例:E8 培地 中身の特定・由来の管理が厳しくなる方向 ※ 用語の定義は文献や企業によって揺れがあり、③と④は包含関係が一定ではありません(例:ヒト血清アルブミンを含むゼノフリー培地は③に当たりません)。 ※ 5段階に並べたのは本記事による整理で、規格や公的な定義ではありません。
図4 概念図(ベクター作図)。各用語の使用例は、化学組成既知=E8(Chen ら[参考資料14])、ゼノフリー=StemFit(Nakagawa ら[参考資料18])、動物由来成分不含=HEK293 の浮遊培養(Grieger ら[参考資料22])によります。5段階の並びと各段の説明は本記事の整理であり、公的な定義ではありません。

6. 素材技術者の視点①:アルブミンは「吸着剤」として効いていた

素材技術者の読みどころ:「栄養」だと思っていた成分が、実は「掃除役」だった

無血清培地では、血清の代わりにアルブミン(牛血清アルブミン=BSA など)を高濃度で入れることが長く行われてきました。 ところが2011年、E8 培地を報告した Chen らは、こう書いています。

「アルブミンのロット差は特に問題が大きい。培地中の他のタンパク質と比べて濃度が非常に高いうえ、脂質やその他の不純物を結合する性質があるからだ」(本記事による訳)事実

さらに彼らは、ヒトES細胞が「β-メルカプトエタノールも同時に除けば、BSA なしで生き残る」ことを見つけ、 「TeSR 培地における BSA の主な役割は、β-メルカプトエタノールの毒性を防ぐことだ」と結論しています事実。

Yao・Asayama の総説も、市販のアルブミンが100種類を超える血清タンパクを微量に含み、 フタル酸エステル(一般的な可塑剤)やエンドトキシンを結合しうることを指摘しています事実。

材料の言葉に置き換えると、アルブミンは培地の中で「疎水性の小分子を抱え込む吸着剤」として働いていた、と読めます。 これは二つのことを意味します(本記事による解説)。

  • アルブミンを抜くと、それまで吸着されていたものが細胞に届く。培地成分の毒性だけでなく、容器・チューブ・フィルターなどから溶け出す微量成分の影響が、見えやすくなる可能性があります
  • アルブミンの「ロット差」は、吸着している不純物の差でもある。精製度や由来だけでなく、何を抱えて出荷されたかが品質に効きます

樹脂や可塑剤、接液部材を扱う素材技術者にとって、無血清化は「自社材料の溶出物が、緩衝材なしで細胞に当たる時代」を意味します。 シングルユース部材の溶出物評価が重視される流れとも、同じ根を持つ話です(本記事による解説)。

7. 目的別の培地 ― 抗体、ウイルスベクター、昆虫、T細胞、iPS細胞、分化、オルガノイド

基礎培地をベースに、何の細胞に、何をさせたいかで配合が分かれます。 ここでは一次情報で確認できた代表例を挙げます。

(1) 抗体などのタンパク質生産用(CHO細胞)

Ritacco らの総説は、CHO 細胞による組換えタンパク質生産の培地が、 動物由来成分や複雑な成分を含む初期の配合から、無血清培地、化学組成既知(CD)培地へと進み、 さらに流加培養・灌流培養で栄養の供給を最適化し、老廃物の蓄積を抑える方向へ発展してきたとまとめています事実。 中外製薬のグループは2015年、抗体を作る CHO 細胞の流加培養で、「化学組成既知の培地が現在使われている」と述べたうえで、フィード培地の最適化を報告しています事実。

(2) ウイルスベクター生産用(HEK293細胞)

遺伝子治療に使うアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの製造では、ヒト胎児腎由来の HEK293 細胞がよく使われます。 Grieger らは2016年、臨床用マスターセルバンク由来の接着型 HEK293 細胞を、動物由来成分を含まない浮遊培養条件に適応させ、 振とうフラスコとバッグ型バイオリアクターで AAV ベクターを作ったと報告しています事実。 その際、「増殖とトランスフェクション(遺伝子導入)の両方を支える無血清浮遊培地の選定」が最適化項目の一つだったとしています事実。 増やすための培地と、遺伝子を入れるための培地で、求められる性質が違うことが分かります(本記事による解説)。

(3) 昆虫細胞用

昆虫細胞は、バキュロウイルスを使ったタンパク質生産などに使われます。 グレースは1962年、昆虫の組織から4つの細胞株を樹立したと Nature に報告しました事実。 1977年には Vaughn らが、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)の蛹組織から2つの細胞株を樹立し、 一方(IPLB-SF 21)は昆虫の体液(血リンパ)を加えた培地で、もう一方(IPLB-SF-1254)は脊椎動物の血清と血リンパを組み合わせた培地で作ったと報告しています事実。 昆虫細胞の培地は、哺乳類とは別の系譜を持っています(本記事による解説)。

(4) T細胞・NK細胞などの免疫細胞用

T細胞を増やす培地には、ヒト血清を加えたものも使われてきました(Medvec らの論文は、ヒト血清添加培地を比較対象にしています)。 Medvec らは2018年、ヒト血清なしで T細胞のすべてのサブセットを増やせる化学組成既知の培地を開発したと報告しています事実。 ヒト化マウスモデルでは、血清なしで増やした T細胞のほうが腫瘍を長く抑えたとしています事実。 ただしこれはマウスでの実験結果であり、ヒトでの治療効果を示すものではありません。 NK細胞用の培地については、本稿の調査範囲で原著論文を確認できなかったため、個別には記載していません。

(5) 多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)の維持用

培地一次情報の内容
TeSR(Ludwig ら、2006年)ウィスコンシン大学の Ludwig らが、組換え体またはヒト由来の精製タンパク質だけを使い、フィーダー細胞なしでヒトES細胞を樹立・培養できる条件を報告事実。のちの E8 論文によれば、TeSR には BSA、TGFβ、LiCl、GABA、ピペコリン酸、脂質、微量元素、グルタチオンなどが含まれていた事実
mTeSR™1STEMCELL Technologies 社の製品。同社は「ヒトES・iPS細胞用の cGMP・フィーダーフリー維持培地」で無血清とし、WiCell Research Institute の知的財産のライセンスのもとで開発されたと記載事実
E8(Essential 8、Chen ら、2011年)TeSR の成分を一つずつ見直し、DMEM/F-12 に7成分を足しただけの化学組成既知培地。血清アルブミンを含まないことが大きな改良点とされる。足場にはビトロネクチンを使う事実
StemFit™(Nakagawa ら、2014年)京都大学 CiRA・大阪大学・味の素の共同研究。完全にゼノフリーの培地 StemFit と、組換えラミニン511 E8 断片を組み合わせ、単一細胞にばらして継代しても長期に安定して培養できたと報告事実
B8(Kuo ら、2020年)成分と濃度を徹底的に最適化した培地。試薬費は市販培地の3%で、大腸菌で作った FGF2・TGFβ3・ニューレグリン1 を研究室で調製したことが主な理由。100継代以上の維持と、週末の培地交換が不要な運用を報告事実

出典:Ludwig ら[参考資料15・16]、STEMCELL Technologies 製品ページ[参考資料17]、Chen ら[参考資料14]、Nakagawa ら[参考資料18]、Kuo ら[参考資料35]。

E8 培地の中身 ― 基礎培地 DMEM/F-12 に足す7成分(対数目盛) 濃度は mg/L。横軸は1目盛で10倍。最も多い成分と少ない成分で、約27万倍の差がある 炭酸水素ナトリウム L-アスコルビン酸2-リン酸Mg インスリン トランスフェリン FGF2(成長因子) 亜セレン酸ナトリウム TGFβ1(成長因子) 543 64 19.4 10.7 0.1 0.014 0.002 0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000 ※ 濃度は Chen ら(2011)[参考資料14]の記載値。TGFβ1 の代わりに NODAL 100 µg/L を使う処方もある。対数目盛の作図と倍率は本記事による。 ※ 倍率の計算:543 ÷ 0.002 = 約27万倍、インスリン 19.4 ÷ TGFβ1 0.002 = 9,700倍(本稿の計算)。
図5 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。成分と濃度は Chen ら[参考資料14]の記載値です。対数目盛での作図と、濃度の倍率(約27万倍・9,700倍)は本記事によるもので、公表値ではありません。緑は成長因子、青はタンパク質性の添加物、灰は低分子の添加物を表します(本記事の色分け)。

図5で分かるのは、成長因子は「ごく微量」でも欠かせないということです。 TGFβ1 は 2 µg/L——1リットルに100万分の2グラムです。 こうした微量のタンパク質が、培地の性能とコストの両方を左右します(第12章)(本記事による解説)。

(6) 分化誘導用

多能性幹細胞を特定の細胞に変える段階では、別の培地を使います。 Burridge らは2014年、ヒトiPS細胞から心筋細胞を作る工程を、RPMI 1640・L-アスコルビン酸2-リン酸・イネ由来の組換えヒトアルブミンの3成分だけからなる化学組成既知の培地で行い、 最大95%が心筋マーカー陽性の細胞シートを得たと報告しています事実。 神経細胞の培養では、Brewer らが1993年に報告した「B27 を加えた Neurobasal」という無血清の組み合わせが知られています事実。 B-27 は ITS に加えてプロゲステロン、プトレシン、トリヨードチロニン、脂肪酸、ビタミンE、BSA、グルタチオンを含むと Yao・Asayama の総説は記しています事実。 1967年に報告された RPMI-1640 が、2010年代の心筋分化の基礎培地になっている点は興味深いところです(本記事による解説)。

(7) オルガノイド用

オルガノイド(幹細胞から自己組織化した小さな臓器様構造)の培地は、体内の「幹細胞のすみか(ニッチ)」の信号を再現するように組まれます。 佐藤俊朗らは2009年、マウス小腸の Lgr5 陽性幹細胞1個から、陰窩・絨毛構造をもつオルガノイドを作れることを報告しました事実。 Clevers らの総説によれば、この培養は細胞外マトリックスの中で、EGF、BMP の阻害因子 Noggin、R-spondin からなる成長因子カクテルを使うものでした事実。 さらに2011年の報告では、ヒトの小腸・大腸の長期培養にはWnt3A の追加に加え、ニコチンアミド、Alk 阻害剤、p38 阻害剤が必要だったとされています事実。 オルガノイドの詳細は、本シリーズ「オルガノイドとスフェロイド」編で扱います。

8. 培地の種類 総覧(一覧表)

ここまでの内容を、6つの切り口で一覧にします。同じ培地が複数の切り口に現れることもあります (たとえば E8 は「多能性幹細胞用」であり「化学組成既知」でもあります)。

切り口種類一言でいうと代表例・由来(一次情報)
基礎培地最小限の配合必須成分だけの出発点BME(イーグル 1955)、MEM(イーグル 1959)
基礎培地高濃度・高栄養の配合濃く、多く、速く増やすDMEM(ダルベッコ 1959)、IMDM(イスコフ 1978)、α-MEM(スタナーズ 1971)
基礎培地特定細胞向けの配合対象細胞に合わせた塩・成分バランスRPMI-1640(ムーア 1967、リンパ球)、Ham's F-12(ハム 1965、CHO細胞)、199(モーガン 1950、ニワトリ胚)
基礎培地CO2 不要の配合大気中で pH を保つL-15(ライボヴィッツ 1963)
基礎培地混合培地2つの長所を合わせるDMEM/F-12(50:50、無血清培養の土台)
血清の扱い血清添加培地血清で不足分を補う胎児牛血清(FBS)など。EMA は牛血清の品質・ウイルス安全性の管理を指針で規定
血清の扱い無血清培地血清の代わりに因子を個別に足すIMDM+アルブミン・トランスフェリン・大豆脂質(イスコフ 1978)、ITS 添加
血清の扱い動物由来成分不含(ADCF)動物由来の原料を使わないHEK293 の動物由来成分不含の浮遊培養(Grieger 2016)
血清の扱いゼノフリーヒト細胞に異種動物成分を使わないStemFit(Nakagawa 2014)
血清の扱い化学組成既知全成分と濃度が特定されているHam's F-12(「世界初」とよく引用)、E8(Chen 2011)、心筋分化用3成分培地(Burridge 2014)
目的別抗体などタンパク質生産用CHO 細胞を高密度に保ち、作らせる化学組成既知培地+フィード培地(Ritacco 2018、Kishishita 2015)
目的別ウイルスベクター生産用増殖と遺伝子導入の両方を支えるHEK293 用の無血清浮遊培地(Grieger 2016)
目的別昆虫細胞用哺乳類とは別系譜グレース(1962)、Sf 細胞株の樹立(Vaughn 1977)
目的別T細胞用ヒト血清なしで免疫細胞を増やす化学組成既知の T細胞用培地(Medvec 2018)
目的別多能性幹細胞の維持用未分化のまま増やすTeSR(Ludwig 2006)、mTeSR™1、E8(Chen 2011)、StemFit(Nakagawa 2014)、B8(Kuo 2020)
目的別分化誘導用狙った細胞へ変えるRPMI 1640 ベースの3成分培地(Burridge 2014、心筋)、Neurobasal+B27(Brewer 1993、神経)
目的別オルガノイド用幹細胞ニッチの信号を再現EGF・Noggin・R-spondin(Sato 2009)、ヒト腸では Wnt3A・ニコチンアミドなどを追加(Sato 2011)
培養方式別基本培地(バッチ)最初に入れた培地だけで育てる—(第9章)
培養方式別フィード培地(流加)途中で濃縮栄養を足す溶けにくいチロシンをペプチド化して配合(Kishishita 2015)
培養方式別灌流培地連続的に入れ替える比灌流速度を下げる「プッシュ・トゥ・ロー」(Konstantinov 2006)
形態粉末・液体・濃縮液輸送・保管と、使う手間のバランス粉末と液体の調製の一貫性・スケール性が課題(Ritacco 2018)
形態ろ過滅菌熱をかけずに無菌にするFDA 指針:0.2 µm 定格フィルター、1 cm² あたり10⁷個以上の菌で検証
その他培養肉用食品価格で大量に作るBeefy-9(Stout 2022)、コスト分析(Humbird 2021)

すべて事実(各行の出典は参考資料一覧を参照)。ただし「切り口」「一言でいうと」の分類は本記事による整理で、業界で定まった分類ではありません。

9. 培養方式別 ― フィード培地と灌流培地

同じ細胞・同じ目的でも、培地をどう入れるかで必要な培地が変わります。

培養方式で変わる「培地の入れ方」(概念図) 容器の形・液量・矢印の太さは模式です バッチ(回分) 流加(フェドバッチ) 灌流(パーフュージョン) 濃縮フィード 新しい培地 使用済み培地 最初の培地だけで育てる 栄養が尽き、老廃物が たまると終わる 途中で濃縮した栄養を足す フィード培地は 「溶かせる濃さ」が勝負 細胞は残し、培地を 連続的に入れ替える 使う培地の量が多い ※ 各方式の考え方は Ritacco ら(2018)[参考資料19]、Konstantinov ら(2006)[参考資料21]によります。 ※ 3方式に分けた図は本記事による整理です。実際には途中で方式を組み合わせる運用もあります。
図6 概念図(ベクター作図)。流加・灌流の考え方は Ritacco らの総説[参考資料19]と Konstantinov らの論文[参考資料21]によります。容器・液量・矢印は模式で、実際の装置構成を示すものではありません。

フィード培地(流加培養)

流加培養では、培養の途中で濃縮した栄養(フィード培地)を足します。 Kishishita らは、対照培養で大量に消費されたアミノ酸をフィード培地に追加し、 乳酸やアンモニアといった老廃物がたまりすぎないよう添加を制御したと報告しています事実。 また、溶解度の低いチロシンを、ジペプチドやトリペプチドの形で加えて溶けやすくしたとしています事実。

灌流培地(灌流培養)

灌流培養では、細胞を容器の中に保ったまま、新しい培地を入れ、使い終わった培地を抜き続けます。 Konstantinov らは2006年、流加と灌流を比べる共通の尺度として「等価比灌流速度」を導入し、 灌流で経済的に競争力を持つには「高い細胞密度を保ったまま、希釈率(培地を入れ替える速さ)を大きく下げること」が鍵だと示しました事実。 その最適化の手順を「プッシュ・トゥ・ロー」——比灌流速度を段階的に下げていく方法——と名づけ、TNF に対する抗体の生産で力価を数倍に高めたと報告しています事実。 灌流用の培地は、「少ない量で、より多くの細胞を支えられる濃さ」を求められるということです(本記事による解説)。

10. 素材技術者の視点②:溶けない・壊れる成分をどう入れるか

素材技術者の読みどころ:培地は「濃縮配合の安定性」の問題でもある

流加培養のフィード培地や灌流培地は、濃くしたい培地です。 ところが、アミノ酸の中には濃くできないものがあります。

  • チロシンは溶けにくい。Kishishita らは、これをジペプチド・トリペプチドにして溶解度を上げたと報告しています事実
  • グルタミンは壊れやすい。Yao・Asayama の総説は、グルタミンが培地中で容易に分解して細胞毒性のあるアンモニアを生じるとし、対策として使用直前に加えるか、分解しにくい L-アラニル-L-グルタミンやグリシル-L-グルタミンを使うことを挙げています事実

どちらも、「目的の分子を、そのまま入れずに、別の形にして入れる」という発想です。 細胞の中や表面で酵素によって切られ、もとのアミノ酸として使われる——いわばプロドラッグ型の成分設計です(本記事による解説)。

材料の世界では、溶けにくい成分を塩や誘導体に変えて配合したり、 保存中に劣化する成分を安定な前駆体として入れたりするのは、よく使われる手です。 培地の開発も、突き詰めると「高濃度の水系配合で、沈殿も分解もさせずに保つ」という配合設計の問題です。 pH、温度、光(HEPES で過酸化水素が増える話)、保存期間—— 評価の軸は、塗料や電解液の配合開発とかなり似ています(本記事による解説)。

11. 形態と製造 ― 粉末・液体・濃縮液、ろ過滅菌

培地は、粉末・そのまま使える液体・濃縮液の形で供給されます。 Ritacco らの総説は、産業用途では粉末培地と液体培地の調製の一貫性とスケール性が重要な論点だとしています事実。 粉末は軽く保管しやすい一方、使う側で溶解・pH 調整・滅菌を行う必要があります。 液体は手間がかからない一方、水を運ぶことになり、保存中の成分の安定性が問題になります(本記事による解説)。

粉末培地から使うまでの工程(本記事による整理) 熱に弱い成分が多いため、培地は加熱ではなくろ過で滅菌するのが一般的です ① 粉末培地 成分を混合した 乾燥粉末 軽く保管しやすい ② 溶解 製造用の水に 溶かす 溶け残りに注意 ③ pH調整 重炭酸などを 加えて合わせる 浸透圧も確認 ④ 滅菌ろ過 0.2 µm 定格の フィルターを通す ウイルスは対象外 ⑤ 充填・保管 無菌の容器や バッグに詰める 光を避ける ⑥ 直前に添加 グルタミン 成長因子など 壊れやすい成分 液体培地・濃縮液は、①〜⑤を供給側で済ませた形 ※ ④は FDA の無菌操作指針(2004年)[参考資料33]、⑤の遮光と⑥のグルタミンは Yao・Asayama[参考資料9]の記述によります。 ※ 6段階の区切りは本記事による整理で、実際の工程や順序は製品・施設によって異なります。
図7 概念図(ベクター作図)。ろ過滅菌の基準は FDA の無菌操作指針[参考資料33]、遮光(HEPES)とグルタミンの扱いは Yao・Asayama[参考資料9]によります。工程の区切りと順序は本記事の整理で、特定の製品や施設の工程を示すものではありません。
ろ過滅菌:FDA の指針に書かれていること
  • 0.2 µm 定格のフィルターの試験菌として、平均直径0.3 µm と小さい Brevundimonas diminuta(ATCC 19146)が一般的に使われる事実
  • フィルターには公称より大きい孔が含まれうるため、有効ろ過面積 1 cm² あたり少なくとも10⁷個の菌で試験し、通過がないことを確かめるのが一般的事実
  • 0.22 µm と 0.2 µm は互換の公称孔径表示として扱われる事実
  • この指針はウイルスの除去を扱っていないと明記している事実

つまり「滅菌ろ過した培地」は「ウイルスがいない培地」を意味しません。 だからこそ、血清のような生物由来原料には、ガンマ線照射などの別の手段が求められるのです(第5章)(本記事による解説)。

図8:白い微粉末と、淡い色の液体が入った無地のガラス容器
図8 概念図(AI生成イメージ)。「粉末で届き、使う側で液体にする」という培地の形態を雰囲気として表現したものです。実際の製品・容器・粉末の色や粒径を示すものではありません。

12. 細胞培養肉の培地 ― コストの壁

培地のコストが最も厳しく問われるのが、細胞培養肉です。 UC Davis の O'Neill らは2021年の総説で、動物細胞培養の最大の産業用途である治療用モノクローナル抗体は、肉より桁違いに高く売れること、 そして培養肉には「食品グレードで、最小限のコストで、大規模な増殖と分化を制御でき、官能的に許容でき、動物成分を含まない」培地が要ることを指摘しています事実。

Humbird は2021年、培養肉の大規模生産を工業発酵とバイオ医薬品の技術経済分析の手法で評価しました事実。 年産10万トン(100 kTA)という世界市場規模のシナリオで、流加培養の生産コストを湿細胞重量1 kg あたり37ドル、灌流培養を51ドルと見積もり、 そのうちアミノ酸が19ドル/kg、成長因子が3〜4ドル/kg、グルコースは約0.24ドル/kgとしています事実。 結論として、このような設備の経済性は、食品として手の届く価格を妨げる可能性が高いと述べています未確定/将来。

培養肉 1 kg の生産コストに占める培地成分(流加培養・年産10万トンの試算) Humbird(2021)の試算値を、本記事が割合に換算して帯グラフにしたもの アミノ酸 19ドル 残り(設備・運転ほか) 成長因子 3〜4ドル グルコース 約0.24ドル(細い線) 0 合計 37ドル/kg 約51% アミノ酸の割合(19÷37) 本稿の計算 約8〜11% 成長因子の割合(3〜4÷37) 本稿の計算 約0.6% グルコースの割合(0.24÷37) 本稿の計算 ※ 37ドル・19ドル・3〜4ドル・0.24ドル(いずれも湿細胞重量1 kg あたり)は Humbird(2021)[参考資料34]の試算値。成長因子は帯では3.5ドルで描画。 ※ 割合と「残り」は本記事の差し引き。「残り」の内訳は本稿では分解していません。いずれも将来の仮想的な設備の試算で、実績ではありません。 ※ 帯の長さは1ドル=16.2 px で描画しています。
図9 本稿の計算を含む作図(ベクター作図)。各金額は Humbird の試算[参考資料34]によります。割合(約51%・約8〜11%・約0.6%)は本記事が算出したもので、公表値ではありません。元の数字自体が、年産10万トン規模を想定した将来の仮想的な設備の試算です。

コストを下げる研究も進んでいます。 先に触れた B8 培地は試薬費を市販培地の3%に抑えました事実。 Tufts 大学の Stout らは2022年、この B8 に組換えアルブミンを1成分足しただけの「Beefy-9」で、 牛の筋サテライト細胞を7継代にわたり平均倍加時間39時間で増やせたと報告しています事実。 ただし、これらは研究段階の成果で、食品としての量産に使われた実績は本稿の調査範囲で確認できませんでした未確定/将来。

13. 素材技術者の視点③:「医薬品の配合」を「食品の値段」で作る

素材技術者の読みどころ:コストを決めるのは「高価な微量成分」ではなく「安い大量成分」かもしれない

培地のコストというと、成長因子のような高価なタンパク質を思い浮かべがちです。 ところが Humbird の試算では、年産10万トン規模では、アミノ酸が19ドル/kg と最大の項目で、 成長因子は3〜4ドル/kg にとどまります事実。 割合にすると、アミノ酸が約51%、成長因子が約8〜11%です本稿の計算。

理由は、試算が生産量が増えるほど単価が下がる関係を価格に織り込んでいるからです。 成長因子は大量生産で大きく下がる前提ですが、アミノ酸は「医薬品向けに十分純度の高いもの」を大量に要します。 Humbird はここで、大豆の加水分解物で混合アミノ酸を 2ドル/kg 程度にする案を検討し、「さらなる研究が必要」としています事実。

もう一つ気づくことがあります。Humbird が成長因子の濃度として置いた値—— インスリン 19.4 mg/L、トランスフェリン 10.7 mg/L、FGF 0.1 mg/L、TGF-β 0.002 mg/L——は事実、 図5で見た E8 培地の配合値と一致しています(本記事による照合)。 ヒトiPS細胞のために最小化された配合が、食品の試算の出発点になっているわけです。

素材技術者の目で見ると、培養肉の培地は「純度をどこまで落とせるか」「天然物の分解物で合成品を置き換えられるか」という、 化学品・食品素材の世界でおなじみの問いに行き着きます。 医薬品の培地が「中身を特定する」方向に70年進んできたのに対し、 培養肉は「特定しすぎない安い原料で、どこまで再現性を保てるか」という逆向きの挑戦をしている—— そう読むこともできます(本記事による解説)。

14. 課題と、本稿で確認できなかったこと

(1) 用語の定義が揃っていない

「無血清」「動物由来成分不含」「ゼノフリー」「化学組成既知」は、文献や企業によって指す範囲が微妙に異なります。 本稿の調査範囲では、これらを統一的に定義した公的な規格を確認できなかったため、図4の5段階は本記事の整理として示しています。

(2) 市販培地の組成の多くは非公開

CHO 細胞用・HEK293 用・T細胞用などの市販培地の多くは、組成が公開されていません。 本稿では、原著論文で組成が確認できたもの(E8、IMDM の原型、心筋分化用3成分培地など)に限って具体的な成分を記載しています。

(3) 培養肉の培地コストは試算段階

Humbird の数字は、年産10万トンという仮想的な規模での試算です未確定/将来。 実際の商業生産で培地コストがいくらになっているかを示す一次情報は、本稿の調査範囲では確認できませんでした。

(4) 原著論文の本文を確認できなかったもの

1950〜1970年代の原著論文(イーグル、ダルベッコ、ハム、ムーア、スタナーズ、モーガン、ライボヴィッツ)は、PubMed で書誌情報を確認しましたが、 本文は本稿では読めていません。対象細胞や組成の特徴は、査読付き総説(Yao・Asayama 2017)の記述によっています。

この記事のまとめ
  • 培地は「基礎培地+目的に応じた添加物」でできています。基礎培地の多くは1950〜1980年に、特定の細胞のために作られました事実
  • 血清は、ロット差・感染因子・精製の負担のため、減らす方向にあります。EMA は牛血清の品質・ウイルス安全性の管理を指針で定めています事実
  • E8 培地は、基礎培地に7成分を足しただけでヒトiPS細胞を培養できることを示しました事実
  • アルブミンは、脂質や不純物を結合する「吸着剤」として効いていた面があります事実
  • フィード培地は、溶けにくいチロシンや壊れやすいグルタミンを、ペプチドの形にして入れる工夫をしています事実
  • 滅菌ろ過(0.2 µm)はウイルスを対象にしていません事実
  • 培養肉の試算では、アミノ酸がコストの約51%を占めます本稿の計算。食品として成立するかは未確定です未確定/将来

15. 用語集

培地
細胞を体の外で育てるための液体(または固体)。本稿では液体培地を扱う。
基礎培地
無機塩・糖・アミノ酸・ビタミン・緩衝剤などからなる、培地の土台。
胎児牛血清(FBS)
牛の胎児の血液から得る血清。成長因子などを多く含むが、成分は未定義。
無血清培地
血清を加えない培地。代わりにインスリンなどの因子を個別に加える。
化学組成既知培地
すべての成分と濃度が特定されている培地。chemically defined の訳。
ゼノフリー
ヒト細胞の培養に、ヒト以外の動物に由来する成分を使わないこと。
ITS
インスリン・トランスフェリン・セレンの3成分。無血清培地の定番の添加物。
CHO細胞
チャイニーズハムスター卵巣由来の細胞。抗体医薬の生産に広く使われる。
HEK293細胞
ヒト胎児腎由来の細胞。ウイルスベクターの生産に使われる。
流加培養(フェドバッチ)
培養途中で濃縮した栄養を足していく方式。
灌流培養(パーフュージョン)
細胞を保ったまま培地を連続的に入れ替える方式。
重炭酸緩衝系
炭酸水素ナトリウムと気相の CO2 の平衡で pH を保つしくみ。
HEPES
生物研究用に開発された緩衝剤の一つ。CO2 がなくても pH を保ちやすい。
フェノールレッド
培地の pH 指示薬。弱いエストロゲン作用が報告されている。
オルガノイド
幹細胞から自己組織化してできる、小さな臓器様の構造。
ろ過滅菌
加熱せずに、微生物を通さないフィルターで無菌にする方法。

16. 参考資料(一次情報)

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17. 主張と出典の対応表(監査)

本文の主張根拠区分
BME が1955年にイーグルにより報告されたこと出典1 https://doi.org/10.1126/science.122.3168.501事実
MEM が1959年にイーグルにより報告されたこと出典2 https://doi.org/10.1126/science.130.3373.432事実
DMEM の原著がダルベッコ・フリーマン(1959、ポリオーマウイルスのプラーク形成)であること出典3 https://doi.org/10.1016/0042-6822(59)90043-1事実
Ham's F-12 の原著がハム(1965、化学組成既知の合成培地でのクローン増殖)であること出典4 https://doi.org/10.1073/pnas.53.2.288事実
RPMI-1640 の原著がムーアら(1967、正常ヒト白血球の培養)であること出典5 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/4960081/事実
α-MEM の原著がスタナーズら(1971、マウス・ハムスター雑種細胞)であること出典6 https://doi.org/10.1038/newbio230052a0事実
IMDM の原型(M-DMEM)が DMEM を濃くした改良版で、アミノ酸・ビタミンB12・ビオチン・亜セレン酸・ピルビン酸などを追加したこと。血清をアルブミン・トランスフェリン・大豆脂質で完全に置き換えられたこと。対象がリポ多糖に反応するマウスB細胞であること出典7 https://doi.org/10.1084/jem.147.3.923事実
Barnes・Sato(1980)が無血清培地での細胞培養の方法を報告したこと出典8 https://doi.org/10.1016/0003-2697(80)90151-7事実
各基礎培地の対象細胞と特徴(BME:L細胞・HeLa、13アミノ酸・8ビタミン/MEM:アミノ酸約2倍/DMEM:約4倍、グルコース25 mmol/L など/L-15:リン酸と塩基性アミノ酸で緩衝、ピルビン酸/F-12:CHO、世界初の化学組成既知培地と引用、リノール酸・プトレシン、亜鉛の修正/RPMI:リンパ球、Ca・Mg少なくリン酸多い/α-MEM の追加成分/199:ニワトリ胚、複雑、器官培養/DMEM/F-12:50:50、無血清の基礎培地)。血清の働きと問題点。ITS・B-27 の成分。アルブミンの不純物と結合性。グルタミンの分解とジペプチド。重炭酸と CO2(5%・2%・10%、理論値である旨)。HEPES の光による過酸化水素。フェノールレッドのエストロゲン作用出典9 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5661806/事実
Medium 199 の原著がモーガンら(1950)であること出典10 https://doi.org/10.3181/00379727-73-17557事実
L-15 の原著がライボヴィッツ(1963、大気との自由なガス交換下での培養)であること出典11 https://doi.org/10.1093/oxfordjournals.aje.a120336事実
FBS に品質・再現性の問題、動物福祉の懸念、不正表示の事例があり、代替と無血清培地の開発が注目されていること出典12 https://doi.org/10.14573/altex.1705101事実
EMA ガイドライン(2013年5月30日採択、12月1日発効)。反芻動物由来より非反芻動物由来が望ましいとする TSE 指針を前提にしていること。BVDV は管理された群・地域を除き存在を完全には避けられず、使用前に検査すること。ガンマ線照射が最もよく使われる不活化法であること出典13 https://www.ema.europa.eu/en/documents/scientific-guideline/guideline-use-bovine-serum-manufacture-human-biological-medicinal-products-revision-1_en.pdf事実
E8 の7成分と濃度(DMEM/F-12 基礎、L-アスコルビン酸2-リン酸Mg 64 mg/L、亜セレン酸ナトリウム 14 µg/L、FGF2 100 µg/L、インスリン 19.4 mg/L、NaHCO3 543 mg/L、トランスフェリン 10.7 mg/L、TGFβ1 2 µg/L または NODAL 100 µg/L)。血清アルブミンを含まないことが改良点。ビトロネクチンを足場に使うこと。アルブミンのロット差と脂質・不純物の結合。BSA なしでの生存と β-メルカプトエタノールの関係。TeSR の成分出典14 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3084903/事実
Ludwig らが組換え体またはヒト由来精製タンパクのみを使った条件でヒトES細胞を樹立したこと(2006)出典15 https://doi.org/10.1038/nbt1177事実
Ludwig らのフィーダー非依存培養の論文(2006)出典16 https://doi.org/10.1038/nmeth902事実
mTeSR™1 が cGMP・フィーダーフリーの維持培地で無血清であり、WiCell の知的財産のライセンスのもとで開発されたこと出典17 https://www.stemcell.com/products/mtesr1.html事実
StemFit が完全ゼノフリーの培地で、ラミニン511 E8 断片と組み合わせて単一細胞継代で長期安定培養できたこと。CiRA・大阪大学・味の素の共同研究であること出典18 https://doi.org/10.1038/srep03594事実
CHO 培地が無血清・化学組成既知へ進み、流加・灌流で栄養供給を最適化してきたこと。粉末・液体培地の調製の一貫性とスケール性が論点であること出典19 https://doi.org/10.1002/btpr.2706事実
CHO の抗体生産で化学組成既知培地が使われていること。消費の多いアミノ酸を追加し乳酸・アンモニアの蓄積を抑えたこと。溶解度の低いチロシンをジペプチド・トリペプチドで加えたこと出典20 https://doi.org/10.1016/j.jbiosc.2014.11.022事実
等価比灌流速度の導入、高細胞密度のまま希釈率を下げることが鍵であること、プッシュ・トゥ・ローで抗TNF抗体の力価を数倍にしたこと出典21 https://doi.org/10.1007/10_016事実
臨床用マスターセルバンク由来の接着型 HEK293 を動物由来成分不含の浮遊培養に適応させ AAV を製造したこと。増殖とトランスフェクションを支える無血清浮遊培地の選定が最適化項目だったこと出典22 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4817810/事実
グレースが昆虫組織から4つの細胞株を樹立したと報告したこと(1962)出典23 https://doi.org/10.1038/195788a0事実
Spodoptera frugiperda の蛹組織から2株を樹立し、IPLB-SF 21 は血リンパ添加培地、IPLB-SF-1254 は脊椎動物血清と血リンパの培地で作ったこと出典24 https://doi.org/10.1007/BF02615077事実
ヒト血清なしで T細胞の全サブセットを増やす化学組成既知培地を開発したこと。ヒト化マウスモデルで血清なしの T細胞が腫瘍を長く抑えたこと出典25 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5907749/事実
RPMI 1640・L-アスコルビン酸2-リン酸・イネ由来組換えヒトアルブミンの3成分培地で、最大95%が TNNT2 陽性の心筋細胞を得たこと出典26 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4169698/事実
B27 を加えた Neurobasal という無血清培地の組み合わせの報告(1993)出典27 https://doi.org/10.1002/jnr.490350513事実
単一の Lgr5 陽性幹細胞から陰窩・絨毛構造のオルガノイドができたこと(2009)出典28 https://doi.org/10.1038/nature07935事実
Sato ら(2009)の培養が細胞外マトリックス中で EGF・Noggin・R-spondin のカクテルを使うものだったこと出典29 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7683021/事実
ヒト小腸・大腸の長期培養に Wnt3A の追加とニコチンアミド・Alk 阻害剤・p38 阻害剤が必要だったこと出典30 https://doi.org/10.1053/j.gastro.2011.07.050事実
フェノールレッドが培地中の濃度(15〜45 µM)で弱いエストロゲン作用を示すこと出典31 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC323325/事実
グッドらが1966年に生物研究用の水素イオン緩衝剤を報告したこと出典32 https://doi.org/10.1021/bi00866a011事実
B. diminuta(平均直径0.3 µm)が0.2 µm 定格フィルターの一般的な試験菌であること。有効ろ過面積1 cm² あたり10⁷個以上で試験すること。0.22 µm と 0.2 µm が互換の表示であること。指針がウイルス除去を扱わないこと。2004年9月の指針であること出典33 https://www.fda.gov/media/71026/download事実
流加培養で37ドル/kg、灌流で51ドル/kg。アミノ酸19ドル/kg、成長因子3〜4ドル/kg、グルコース約0.24ドル/kg(いずれも年産10万トン、湿細胞重量あたり)。成長因子濃度の前提(インスリン19.4、トランスフェリン10.7、FGF 0.1、TGF-β 0.002 mg/L)。大豆加水分解物で混合アミノ酸2ドル/kg の検討出典34 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8362201/事実
設備の経済性が食品として手の届く価格を妨げる可能性が高いという結論Humbird の試算にもとづく見通しであり、実績ではない https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8362201/未確定/将来
B8 の試薬費が市販培地の3%で、大腸菌発現の FGF2・TGFβ3・ニューレグリン1 を用いたこと。100継代以上、週末交換不要出典35 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7013200/事実
Beefy-9 が B8 に組換えアルブミンを足したもので、牛サテライト細胞を7継代・平均倍加時間39時間で増やしたこと出典36 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9163123/事実
治療用抗体が肉より桁違いに高く売れること。培養肉の培地に求められる条件(食品グレード、最小コスト、増殖・分化の制御、官能、動物成分不含)出典37 https://doi.org/10.1111/1541-4337.12678事実
B8・Beefy-9 などの低コスト培地が食品として量産に使われた実績本稿の調査範囲では確認できなかった。研究段階の成果として扱った未確定/将来
25 mmol/L = 約4.5 g/L、フェノールレッド15〜45 µM = 約5.3〜16 mg/L、pH 7.4 に必要な CO2(約5.7%・約3.1%・約9.7%)、DMEM を CO2 5% で使うと pH 約7.7、E8 成分の倍率(約27万倍・9,700倍)、Humbird の数値の割合(約51%・約8〜11%・約0.6%)本稿の計算。分子量(グルコース180.16、フェノールレッド354.4)、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式の係数(pKa 6.1、0.03)、大気圧760 mmHg は本稿が置いた前提。水蒸気圧と温度補正は無視した本稿の計算
Humbird の成長因子濃度の前提が E8 の配合値と一致していること出典14と出典34の数値を本記事が照合した解説。Humbird 自身が E8 を出典と明記しているかは本稿では確認していない解説
NK細胞用培地、市販の CHO・HEK293・T細胞用培地の具体的な組成、培養肉の実際の商業生産での培地コスト、「無血清」等の用語を統一定義した公的規格本稿の調査範囲では一次情報を確認できなかったため記載していない解説
1950〜1970年代の原著論文の本文内容PubMed で書誌を確認したが本文は読めておらず、対象細胞と特徴は出典9の総説によった旨を本文に明記した(本記事による注記)解説
培地を「土台+足すもの」に分けた整理、系譜の3区分、血清の扱いの5段階、6つの切り口の総覧、アルブミンを吸着剤とみる読み取り、プロドラッグ型の成分設計という見方、配合開発との類似、培養肉を逆向きの挑戦とみる読み取り、目的別の読み取り公表内容にもとづく本記事の整理・解説。各機関・著者が表明した見解ではない解説
図1・図2・図4・図6・図7が説明のための作図であること。図3・図5・図9が本稿の計算を含む作図であること。ヒーロー画像と図8が AI 生成イメージであること本記事による注記解説

最終更新:2026年9月23日/出典は一次情報(原著論文・査読付き総説、EMA・FDA の公表資料、企業の自社製品ページ)に限定しています。 市場規模やシェアの推計は使用していません。構造の整理や材料設計上の読み取りを含むため、それらは「解説」として出典付きの事実と区別しています。 NK細胞用培地、市販培地の具体的な組成、培養肉の商業生産での実コスト、培地用語を統一定義した公的規格については、公開された一次情報で確認できなかったため記載していません。 図はすべて説明用です。図1・図2・図4・図6・図7は概念図、図3・図5・図9は本稿の計算を含む作図、ヒーロー画像と図8はAI生成イメージであり、いずれも実際の製品・装置・培地を写したものではありません。 本記事は技術の解説であり、医療上の助言や特定製品の推奨ではありません。