🌐 This site is also available in English Visit English Site →
🌐 English

Allogene Therapeutics|細胞培養技術 企業解説

技術・機関・企業解説の一覧へ戻る

COMPANY PROFILE / 細胞培養技術

Allogene Therapeutics
― 「誰にでも使える作り置きのCAR-T」に8年余り。自社工場を持つ開発企業の、最初の承認への距離

Allogene Therapeuticsは、健康なドナーの細胞から他人に投与できるCAR-T細胞(同種CAR-T)を開発している米国ナスダック上場の臨床段階の企業です。 患者本人の細胞を使う既存のCAR-Tと違い、あらかじめ作って保管しておける「オフ・ザ・シェルフ(作り置き)」を目指しています。 カリフォルニア州ニューアークに自社のcGMP製造工場「Cell Forge 1」を持ちますが、 2026年9月時点で承認された製品はなく、売上もありません 事実。 本稿では、米国SECへの法定開示(10-K・10-Q・8-K)だけを一次情報として、 細胞を「製品にする」側の会社が細胞培養と製造に何を投じ、どこへ向かっているかを整理します。

構成:Allogene Therapeuticsが米国SECに提出した2025年12月期 Form 10-K(2026年3月12日提出)、2026年6月期 Form 10-Q(2026年8月12日提出)、2025〜2026年の各Form 8-Kを一次情報として使用/最終更新 2026年9月

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるAllogeneと、細胞培養技術での立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. 細胞培養技術の世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(売上のない開発企業)
  5. 細胞培養にかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社は細胞培養技術で何を目指しているか
  9. 細胞培養分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品候補
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるAllogeneと、細胞培養技術での立ち位置

正式名称Allogene Therapeutics, Inc.2017年11月デラウェア州で設立
本社米国カリフォルニア州
サウスサンフランシスコ
210 East Grand Avenue
上場Nasdaq: ALLO米国ナスダック
この分野での区分細胞治療の開発企業自社工場を持つがCDMOではない
関わる「細胞培養」細胞そのものが製品
(同種CAR-T)
抗体生産などの培養事業はない
承認された製品なし最有力候補cema-celはピボタル第2相試験中
従業員152人2026年3月2日時点。うち研究開発・技術運営59人
手元資金4億2,360万ドル2026年6月末。2029年1〜3月期までもつと会社は説明
まず押さえるべき1点

細胞培養に関わる企業は、大きく受託開発製造(CDMO)・装置/消耗品/培地のサプライヤー・細胞治療/再生医療の開発企業の3種類に分かれます。 Allogeneは細胞治療の開発企業で、培養した細胞そのものを医薬品にしようとしています。 他社の薬を受託して作ることはせず、自社工場Cell Forge 1は自社の治験薬の製造専用です 事実。 最大の特徴は、患者ごとに細胞を採って作る自家(autologous)ではなく、健康なドナーの細胞から多数の患者分をまとめて作る同種(allogeneic)である点で、 これは細胞培養の立場から見れば「1回の培養で何人分を作れるか」という製造の問題そのものです。

2. ロゴと社名の表記について

Allogene Therapeuticsのロゴは同社の登録商標です。本稿では生成画像による再現を行わず、 公式サイトのヘッダーで使われているロゴ画像を img/allogene_therapeutics_logo.png として設置しています。

表記の注意:社名の「Allogene」は、他人由来を意味する「allogeneic(同種)」に由来すると読めます(会社の説明ではなく本稿の解釈です)。 製品候補の名前はcema-cel(cemacabtagene ansegedleucel、旧名ALLO-501A)、ALLO-316、ALLO-329のように付けられています。 経営陣は2026年7月1日に交代し、社長兼CEOはDavid Chang氏からZachary Roberts氏に代わりました。

https://allogene.com/

3. 細胞培養技術の世界で、この会社はどこにいるか

細胞培養技術に関わる企業の3つの類型 同じ「細胞を培養する会社」でも、何を売っているかがまったく違う 受託開発製造(CDMO) 装置・消耗品・培地 細胞治療・再生医療 他社の薬を受託して培養・製造 培養に使う道具と材料を売る 細胞そのものを製品にする Lonza/Samsung Biologics AGC Biologics/WuXi ほか Thermo Fisher/Cytiva/Sartorius Merck/味の素/Corning ほか 住友ファーマ/タカラバイオ Allogene/ReproCELL ほか 設備と実績で受注を集める どの薬が成功しても売れる 承認されれば独自の製品になる 設備が埋まらないと赤字 顧客の投資が冷えると落ちる 承認と製造コストの壁が高い Allogeneは右の「細胞治療・再生医療」。健康なドナーの細胞から、誰にでも使えるCAR-Tを作る 自社工場Cell Forge 1で製造するが受託製造(CDMO)ではなく、承認された製品はまだない
図1 細胞培養技術に関わる企業の3類型と、Allogeneの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う20社から例示しています 本稿の計算。Allogeneが臨床段階の同種CAR-T開発企業で、自社工場で治験薬を製造していることは、2025年12月期のForm 10-Kの記載に基づきます。

10-Kによると、同社の同種CAR-Tの製造は(1) 採取と遺伝子導入、(2) 遺伝子編集、(3) 精製・製剤化・保管の3段階です。 健康なドナーの白血球を採取し、増殖を刺激してウイルスベクターでCAR遺伝子を入れ、 遺伝子編集でT細胞受容体(TCRα)を壊して、患者の体を攻撃する移植片対宿主病(GvHD)を防ぎます 事実。 がん向けの候補はCellectis社のTALEN、自己免疫疾患向けのALLO-329はArbor Biotechnologies社のCRISPRで編集しています。

4. 会社の規模(売上のない開発企業)

売上で規模を測れない理由

Allogeneは製品を販売しておらず、売上高はゼロです(2025年の提携収益もゼロ)事実。 そのため、規模は研究開発費・損失・手元資金・人員で見ます。

百万ドル2021年2022年2023年2024年2025年
収益(提携による収益)114.10.20.10.00
研究開発費220.2256.4242.9192.3150.2
一般管理費74.179.371.765.256.8
純損失182.1340.4327.3257.6190.9
設備投資(有形固定資産の取得)21.45.21.50.70.4

出典:SEC EDGAR XBRL(各年の10-K)。2021年の収益1億1,410万ドルの内訳は、本稿が参照した開示では確認していません。製品の販売による売上ではありません。

直近の指標値時点
手元資金(現金・現金同等物・投資)4億2,360万ドル2026年6月30日
累積損失約21億ドル(20億9,600万ドル)2026年6月30日
2026年1〜6月の研究開発費/純損失6,270万ドル/8,530万ドル前年同期は9,040万ドル/1億1,070万ドル
従業員(うち研究開発・技術運営)152人(59人)2026年3月2日
会社が示す資金の持続期間2029年1〜3月期まで2026年4月の公募増資の手取りを含む

研究開発費は2022年のピーク2億5,640万ドルから2025年の1億5,020万ドルへ約41%減、 設備投資はCell Forge 1を建設していた2020年の6,600万ドルから2025年には40万ドルまで減っています 本稿の計算。 2026年1〜6月の純損失8,530万ドルを2倍した年換算約1億7,000万ドルで手元資金を割ると約2.5年分となり、 会社が示す「2029年1〜3月期まで」とおおむね整合します 本稿の計算(損失には現金支出を伴わない費用も含まれるため目安です)。

5. 細胞培養にかけているリソース

手順どおり、人・金・外部への出資/買収・大学や研究機関との連携の4点を、一次情報で確認できたかどうかで整理します。

観点一次情報で確認できたこと確認状況
人(専任組織・拠点・人員)従業員152人のうち研究開発・技術運営が59人(2026年3月)。2025年5月に製造部門を中心に約28%(61人)を削減。2026年4月の中間解析と増資の後、製造・臨床開発・BLA準備のための採用を増やしたと10-Qに記載。製造専任の人数は非公表一部確認
金(設備投資・研究開発費)研究開発費1億5,020万ドル(2025年、うち社内7,550万ドル・社外7,460万ドル、社外のうちcema-cel分2,340万ドル)。製造工場Cell Forge 1は約118,000平方フィートの賃借施設(初期契約15年8か月)。工場建設の総額は10-Kに記載なし研究開発費は確認/工場総額は確認できず
外部への出資・買収2018年 Pfizerから同種CAR-T関連資産を取得(会社の出発点)。2023年 Antion Biosciencesの優先株に200万ドル出資(追加300万ドル分のワラントも取得)。Overland Therapeutics(旧合弁)の持分は2026年5月に一部を無償で返上し、約3%に確認
大学・研究機関との連携MD Andersonがんセンターと5年間の戦略提携(2020年10月、2025年8月に1年延長、最大1,500万ドルの拠出枠)。カリフォルニア再生医療機構(CIRM)からALLO-316の臨床開発に最大920万ドル(当初1,500万ドルから変更)の助成確認
素材技術者の視点:工場を建てた後に「製造を縮める」という選択

Allogeneは2019年に約118,000平方フィート(約11,000m²、本稿の計算)の建物を借りてCell Forge 1を建設し、 2020年には設備投資が6,600万ドルに達しました。ところが2025年5月、製造活動を絞り込み、製造関連の人員を削減しています 事実。 10-Kは、進行中の3つの臨床試験を終えるのに十分な治験薬の在庫を持っていると説明しています。 同種CAR-Tでは、1回の培養で多数の患者分を作って凍結保存できるため、在庫を先に作っておけば工場を止めても試験は続けられるという、 自家CAR-Tにはない性質があります。 逆にいえば、承認されて商業生産に移るときには、止めた製造体制をもう一度立ち上げる必要があります。 会社自身も、商業生産のコストはまだ見積もれないと書いています。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2017年11月デラウェア州で設立。Kite Pharma(現Gilead)でCAR-T「Yescarta」の開発・承認を率いた経営陣が創業自家CAR-Tの経験者による同種への挑戦
2018年4月Pfizerから同種CAR-T関連資産を取得(Cellectis・Servierとの契約を含む)TALEN遺伝子編集とCD19の権利を手に入れる
2019年2月ニューアークに製造工場用の建物(約118,000平方フィート)を賃借自社製造への投資
2019年11月Notch Therapeutics(現Roche)とiPS細胞由来T細胞・NK細胞の技術で提携2024年1月に大半の対象を返上
2020年10月MD Andersonと5年間の戦略提携臨床・前臨床の共同研究
2020年12月中国などを対象にした合弁(のちのOverland Therapeutics)にライセンス2026年5月にライセンスを解消
2022年1月Antion BiosciencesとmiRNAによる遺伝子抑制技術(miCAR)で提携次世代の細胞設計
2024年6月cema-celのピボタル第2相試験ALPHA3を開始(大細胞型B細胞リンパ腫の1次治療後の地固め)MRD陽性の患者だけを選ぶ新しい試験設計
2024年10月ALLO-316(腎細胞がん)がFDAのRMAT指定固形がんでの前進
2025年1〜4月ALLO-329(自己免疫疾患)の治験申請がFDAに認められ、3つの疾患でFast Track指定がん以外への展開
2025年5月製造活動を縮小し、従業員の約28%を削減資金を臨床試験に集中
2025年8月ALPHA3で抗CD52抗体ALLO-647を使う群を閉鎖(死亡例1件がALLO-647に起因とされた)。標準のFC前処置のみに前処置の設計変更
2026年4月ALPHA3の中間無益性解析:MRD陰性化率 cema-cel群58.3%(7/12)対 経過観察群16.7%(2/12)。直後に公募増資(手取り約1億8,790万ドル)試験は継続。資金の持続期間が延びる
2026年7月cema-celがALPHA3の開発プログラムでFDAのRMATとFast Trackの指定。CEOがZachary Roberts氏に交代承認申請に向けた審査の優遇措置

7. 今後の計画

ALPHA3の登録完了2027年末約220人の無作為化を予定
EFSの中間解析2027年半ば主要評価項目は無イベント生存期間
EFSの主解析2028年半ば良好ならBLA(承認申請)を支える可能性
ALLO-316登録試験の設計で
FDAと合意と説明
提携先を探索中

会社は、ALPHA3の結果が良好であればcema-celの承認申請(BLA)を目指すとしています。 また試験の施設は米国・カナダ・韓国・オーストラリアの80超で、欧州連合への拡大も準備中です 事実。 製造については、2026年4月以降「製造、臨床開発、BLA準備のための採用を増やした」と10-Qに書かれています。

確認できなかったこと

次はいずれも10-K・10-Q・8-Kに記載がありません 未確定/将来。

Cell Forge 1の年間生産能力(何人分作れるか)/1回の製造で何人分の治験薬ができるか/ 商業生産のコスト(会社自身が「まだ見積もれない」と記載)/商業化の時期と価格/ ALLO-316の提携先と登録試験の開始時期。報道や調査会社の推計値は本稿では採用しません。

8. この会社は細胞培養技術で何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
CAR-Tを「病院で患者ごとに作る薬」から「在庫から出す薬」に変えること10-Kの「オフ・ザ・シェルフ」「より速く、確実に、大きな規模で」という記述。ALPHA3で10-K・8-Kが強調する地域のがん診療施設での外来投与事実
製造は外部に頼らず自社で持つ方針を維持「CDMOへの依存を抑えるために自社の製造体制を持つ」という10-Kの戦略記述。縮小後も工場は保持推測
最初の承認は1本(cema-cel)に集中して狙う2025年の社外研究開発費のうち、プログラム別で名前が出るのはcema-cel(2,340万ドル)。ALLO-316は提携先を探している推測
将来は前処置(抗がん剤)なしで投与できる細胞を目指すDagger技術は標準的な前処置の必要を減らす、またはなくすよう設計されていると説明。ALLO-329では前処置なしの群を試験中事実
自己免疫疾患を市場規模の大きい第2の柱とみているALLO-329を「拡張性」と「市場の需要に応える」ことと結びつけて説明推測
推測の根拠を1つだけ詳しく

ALPHA3の患者は、1次治療で寛解したように見えても血液中にがんのDNA(MRD)が残っている人たちです。 この人たちに「再発を待たずに」CAR-Tを入れるには、MRDが見つかった時点ですぐ投与できる必要があります。 自家CAR-Tは患者の細胞を採ってから製造するまで時間がかかりますが、同種の作り置きなら在庫からすぐ出せます。 2026年4月の8-Kでは、cema-celを投与した12人のうち10人が投与後ずっと外来で管理されたと報告されています 事実。 本稿はここから、同社が狙っているのは「効き目の上乗せ」だけでなく、 大学病院でなくても使える、在庫型の細胞医薬という流通のかたちだと読みます 未確定/将来。

9. 細胞培養分野の提携マッピング

Allogene Therapeuticsを中心とした提携関係 2025年12月期10-K・2026年6月期10-Q・8-Kに記載のある関係のみ。報道ベースの関係は含まない 技術のライセンス 診断薬の共同開発 研究機関・公的助成 資産取得・出資・旧合弁 Allogene 同種CAR-T開発 Cellectis(仏) TALEN遺伝子編集(がん) Servier(仏) cema-celのCD19ライセンス Arbor Biotechnologies CRISPR(自己免疫) Roche(旧Notch) iPS細胞由来T・NK細胞 Foresight(Natera傘下) MRD検査で患者を選ぶ MD Anderson 戦略提携(2020〜) CIRM ALLO-316に最大920万ドル Overland Therapeutics 旧合弁。2026年に解消 Pfizer(2018年) 同種CAR-T資産を取得 Cell Forge 1(自社) ニューアークの製造工場 Antion Biosciences miCAR提携+200万ドル出資
図2 Allogene Therapeuticsを中心とした提携関係。出典:2025年12月期 Form 10-K、2026年6月期 Form 10-Q、2025年2月・2026年5月のForm 8-K。Cell Forge 1は提携先ではなく自社工場で、位置関係を示すために置いています(線は引いていません)。Foresight DiagnosticsはNateraに2025年12月に買収され、子会社として事業を続けています。報道で語られる関係は含めていません。

10. 提供している技術・製品候補

製品候補標的・対象段階(2026年6月期10-Q時点)規制上の指定
cema-cel(旧ALLO-501A)CD19/大細胞型B細胞リンパ腫の1次治療後の地固め(MRD陽性)ピボタル第2相ALPHA3。登録中(80超の施設)RMAT・Fast Track(2026年7月、ALPHA3の開発プログラム)。10-Kにもcema-celのRMAT指定の記載あり
ALLO-316CD70/進行・転移性の淡明細胞型腎細胞がん第1b相TRAVERSEの拡大コホート(20人)完了。確定奏効率25.0%(CD70高発現では31.3%)RMAT(2024年10月)
ALLO-329CD19+CD70/全身性エリテマトーデス、特発性炎症性筋疾患、全身性強皮症第1相RESOLUTION(用量漸増)。前処置なしの群を含むFast Track×3(2025年4月)
その他BCMA、DLL3 など前臨床―

ALLO-329のFast Track指定の日付は、10-Kでは「2025年4月27日」、10-Qでは「2025年4月7日」と記載が食い違っています。本稿では「2025年4月」とだけ書きます。 承認されたものはなく、10-Kは「同種T細胞製品はまだFDAの承認を受けていない」と業界全体についても述べています 事実。

素材技術者の視点:「Dagger」は拒絶を細胞の側で解く設計

他人の細胞は、患者の免疫(とくに活性化したT細胞)に異物として排除されます。 これまでは強い抗がん剤の前処置で患者の免疫をいったん落とし、その間にCAR-Tを増やしていました。 AllogeneのDagger技術は、CAR-T細胞にCD70を狙う2つ目のCARを持たせ、自分を排除しに来る活性化T細胞(CD70を出す)を逆に攻撃させるものです 事実。 材料設計にたとえれば、周囲の環境(前処置)を変える代わりに、部材そのものに耐性を組み込む発想です。 ただしCD70は活性化したT細胞に出るため、10-Kは製造中や投与後にCAR-T細胞どうしが攻撃し合う(フラトリサイド)リスクや、技術自体が未実証であることも挙げています。 前処置が不要になれば、投与の負担と入院の必要が下がり、在庫型CAR-Tの利点がさらに生きることになります 未確定/将来。 本シリーズの技術解説『CAR-T細胞』もあわせて参照してください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
承認・売上がない売上はゼロで、累積損失は約21億ドル。資金は2029年1〜3月期までもつと会社は説明するが、承認申請の前提となる主解析は2028年半ば事実
1本の試験への依存最初の承認はALPHA3の結果次第。中間解析は24人の小規模なもので、主要評価項目の無イベント生存期間はまだ盲検のまま事実
遺伝子編集技術の外部依存と特許係争TALENはCellectis・Servierに依存。2025年9月、Factor Bioscience社がCellectisを特許侵害で提訴し、同社のライセンシーとしてAllogeneにも言及(Allogeneは当事者ではない)事実
診断薬への依存ALPHA3の患者選択はForesight(Natera傘下)の研究用MRD検査に依存。検査の承認が遅れると試験や商業化に影響すると会社が記載事実
製造の再立ち上げ2025年に製造を縮小。商業生産のコストはまだ見積もれないと会社自身が記載しており、承認後の製造立ち上げが課題になる推測
株式の希薄化2026年4月に1億株超を発行。資金調達を続ければ既存株主の持分は薄まる未確定/将来
経営陣の交代2026年7月にCEO、同年11月にCFOが交代予定(8-K)事実

12. 用語集

同種(allogeneic)/自家(autologous)
同種は他人(ドナー)の細胞、自家は患者本人の細胞を使う治療。
CAR-T細胞
がんなどを認識する受容体(CAR)の遺伝子を入れたT細胞。本シリーズの技術解説『CAR-T細胞』を参照。
GvHD(移植片対宿主病)
移植した他人の免疫細胞が患者の体を攻撃する病態。同種CAR-TではTCRを壊して防ぐ。
TALEN/CRISPR
狙ったDNAを切って遺伝子を壊したり入れたりする遺伝子編集の道具。
前処置(リンパ球除去)
CAR-T投与の前に抗がん剤などで患者のリンパ球を減らす処置。FCはフルダラビンとシクロホスファミドの組み合わせ。
MRD(微小残存病変)
画像では見えないが血液検査などで検出される、わずかに残ったがん。
RMAT指定
米FDAが再生医療等の先進治療に与える指定。審査中のやり取りなどで優遇を受けられる。承認の基準は変わらない。
cGMP
医薬品の製造管理・品質管理の基準。本シリーズの技術解説『GMP』を参照。
概念図:1人のドナーの細胞から多数の患者分のCAR-T細胞を作り、凍結保存して各地の病院へ届ける流れ
図3 同種(作り置き)CAR-Tの考え方の概念図(AI生成による概念図。実際の設備や製品を写したものではありません)。

13. 出典

  1. Allogene Therapeutics Form 10-K for the fiscal year ended December 31, 2025(米国SEC提出、2026年3月12日)。事業概要・製造工程・Cell Forge 1・提携契約・従業員・物件・研究開発費・純損失・手元資金・リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
  2. Allogene Therapeutics Form 10-Q for the quarterly period ended June 30, 2026(米国SEC提出、2026年8月12日)。パイプラインの進捗、2026年のRMAT・Fast Track指定、手元資金と資金の持続期間、人員削減と採用、CIRM助成、公募増資。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026056213/allo-20260630.htm
  3. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年4月13日)。ALPHA3中間無益性解析の結果と今後の計画。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526151999/d49895d8k.htm
  4. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年4月15日)。公募増資の引受契約。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526157140/d283634d8k.htm
  5. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年5月13日)。Overlandとのライセンス解消と持分の再編。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026034583/allo-20260512.htm
  6. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年5月28日)。CEOの交代。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526245484/d65280d8k.htm
  7. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年9月2日)。CFOの退任予定。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526379423/d522964d8k.htm
  8. Allogene Therapeutics Form 8-K(2025年8月1日)。ALPHA3の前処置をFCに決定、ALLO-647群の閉鎖。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312525171091/d75167d8k.htm
  9. Allogene Therapeutics Form 8-K(2025年10月14日)。Factor BioscienceによるCellectisへの特許侵害訴訟。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828025044828/allo-20250926.htm
  10. Allogene Therapeutics Form 8-K(2025年2月25日)。Foresight Diagnosticsとの提携の拡大(約3,730万ドルの拠出)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312525035162/d926019d8k.htm
  11. Allogene Therapeutics Form 8-K(2026年6月22日)。定時株主総会の結果と発行済株式数。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026044618/allo-20260618.htm
  12. 米国SEC EDGAR XBRL company facts API(CIK 0001737287)。2021〜2025年の研究開発費・一般管理費・純損失・提携収益・設備投資。 https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001737287.json
  13. Allogene Therapeutics 公式サイト(ロゴ画像の取得元)。 https://allogene.com/

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
2017年11月設立、本社所在地、臨床段階の同種T細胞製品の開発企業であること事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
Cell Forge 1を自社の治験薬製造に専用で使うこと、約118,000平方フィート・初期15年8か月の賃借事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
製造の3段階、TCRαの不活化、TALEN(がん)とCRISPR(自己免疫)の使い分け事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
従業員152人・研究開発と技術運営59人、2025年5月の削減(61人)事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
2025年の研究開発費の内訳(社内・社外・cema-cel分)、純損失、2025年末の手元資金事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
Pfizer資産の取得、Cellectis・Servier・Arbor・Notch(Roche)・MD Anderson・Antion・Overlandとの契約内容事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
CDMOへの依存を抑える自社製造の戦略、商業生産コストは見積もれないという記載、治験薬の在庫、Daggerの設計とフラトリサイドのリスク、地域のがん診療施設への言及事実出典1 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
ALLO-329のFast Track指定日(10-Kは4月27日、10-Qは4月7日)事実出典1・2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026056213/allo-20260630.htm
2026年6月末の手元資金・累積損失、2026年1〜6月の研究開発費と純損失、資金の持続期間事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026056213/allo-20260630.htm
ALPHA3の施設数と地域、EU拡大の準備、RMAT・Fast Track(2026年7月)、ALLO-316の結果、CIRM助成の変更、BLA準備の採用事実出典2 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026056213/allo-20260630.htm
ALPHA3中間解析の数値、外来管理の患者数、登録完了2027年末・EFS中間解析2027年半ば・主解析2028年半ば事実出典3 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526151999/d49895d8k.htm
公募増資(1株2.00ドル)と手取り約1億8,790万ドル事実出典2・4 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526157140/d283634d8k.htm
Overlandとのライセンス解消と持分約3%事実出典5 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026034583/allo-20260512.htm
CEOの交代(2026年7月1日)事実出典6 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526245484/d65280d8k.htm
CFOの退任予定(2026年11月6日)事実出典7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312526379423/d522964d8k.htm
ALLO-647群の閉鎖と死亡例、FC前処置への一本化事実出典8 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312525171091/d75167d8k.htm
Factor BioscienceによるCellectisへの訴訟事実出典9 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828025044828/allo-20250926.htm
Foresightとの提携拡大と約3,730万ドルの拠出事実出典10 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000119312525035162/d926019d8k.htm
2021〜2025年の研究開発費・一般管理費・純損失・提携収益・設備投資事実出典12 https://data.sec.gov/api/xbrl/companyfacts/CIK0001737287.json
細胞培養の3類型の区分と、Allogeneを細胞治療の開発企業とした整理本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの20社から例示
研究開発費の約41%減、年換算損失と資金の持続期間の概算、約11,000m²への換算本稿の計算本稿の計算(出典1・2・12の数値から算出。1平方フィート=0.0929m²)
Cell Forge 1の生産能力、1回の製造で作れる患者数、商業化の時期と価格、工場建設の総額未確定/将来10-K・10-Q・8-Kに記載なし。推計もしない https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1737287/000162828026017242/allo-20251231.htm
自社製造を維持する方針、cema-celへの集中、自己免疫を第2の柱とみている、在庫型の流通のかたちを狙うという読み推測出典1〜3の記述からの本稿の解釈
製造の再立ち上げが課題になるというリスク、社名の由来推測出典1・2の記述からの本稿の解釈

最終更新:2026年9月24日/Troy Technical
本稿の数値はすべてAllogene Therapeuticsが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類(Form 10-K・10-Q・8-K)とSECのXBRLデータに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。