TECHNOLOGY EXPLAINER
米国・中国・日本のAI政策
― 「法律」「規則」「指針」「計画」の段階と日付を、公式文書で区別する
AI政策は、国ごとに文書の種類が違います。米国は大統領令・州法・輸出管理規則が中心で、連邦の包括的なAI法は確認できません。中国は部門規章(生成式AI、アルゴリズム推薦、深層合成、標識、擬人化インタラクション)を積み重ね、2026年1月1日施行の改正サイバーセキュリティ法に初めてAIの条文が入りました。日本はAI法(令和7年法律第53号)と基本計画・指針で、推進と適正性の確保を組み合わせています。 この記事は、2026年10月15日時点で、連邦官報、ホワイトハウス、中国のCAC(国家インターネット情報弁公室)、e-Gov、内閣府などの原文を確認し、提案・採択・施行・計画の段階と日付を区別して整理します。各国の優劣は書きません。法的助言ではありません。
- 三か国のAI政策とは何か(3行でつかむ)
- 文書の種類と段階の読み方
- 米国:大統領令の流れ
- 米国:用語の変更 ― 大統領令14434と「Super Intelligence」
- 米国:連邦法、州法、議会の動き
- 米国:輸出管理
- 米国:NISTのAI評価部署の名称
- 中国:生成式AI、標識、サイバーセキュリティ法
- 日本:AI法、基本計画、指針
- 素材・製造業にとっての接点
- 限界と、確認できなかったこと
- 評価・標準の読み方
- 用語集
- 参考資料(一次情報)
- 主張と出典の対応表(監査)
事実=法令・官報・政府の公式文書に記載のある内容(出典リンクあり)
本稿の計算=明示した前提をもとに本記事が算出した値
未確定/将来=計画・期日・提案であり、実施の実績が確認できていない事項
このほか、読み取りは「解説」として区別しています。推測は太字で示します。規制や政策の日付は確認日(2026年10月15日)時点の公式文書によります。
この記事は公式文書の整理で、特定の企業・製品に各国の法令が適用されるかを判断するものではありません。係属中の訴訟や今後の立法の結論は推測しません。特定の国・政権・企業を支持または批判するものでもありません。実際の義務は、原文と専門家の助言で確認してください。
1. 三か国のAI政策とは何か(3行でつかむ)
- 米国:2023年の大統領令14110は2025年1月に撤回され、その後は大統領令(2025年1月の14179、12月の14365、2026年6月の14409、9月の14434など)と州法(カリフォルニア、テキサス、コロラド、ニューヨーク)、輸出管理が動いています事実[参考資料1〜12]。
- 中国:2022年以降、部門規章(アルゴリズム推薦、深層合成、生成式AI、標識、擬人化インタラクション)が順に施行され、2026年1月1日に改正サイバーセキュリティ法が施行されました事実[参考資料32〜39]。
- 日本:AI法は2025年6月4日に公布、9月1日に全面施行され、AI戦略本部が基本計画(2025年12月23日、第Ⅱ期は2026年7月14日)を定めます。事業者向けにはAI事業者ガイドライン(第1.2版、2026年3月31日)があります事実[参考資料40〜48]。
同じ「AI規制」という言葉でも、法律、行政命令、部門規章、指針、計画は、拘束力も、変わるときの手続きも、日付の意味も違います。三か国を並べるときは、国の優劣ではなく、それぞれの文書がどの段階にあるかを見てください。
2. 文書の種類と段階の読み方
次の図は、三か国の文書を「法律」「命令・規章」「指針・計画」「州・地方」に分けて並べたものです。段階が違う文書どうしを比べて、強さや優劣を示すものではありません。
| 段階 | 意味 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| 法律 | 議会(米国)、全国人民代表大会常務委員会(中国)、国会(日本)が定めたもの | 公布日と施行日が違う。日本のAI法は一部が公布日、残りが2025年9月1日に施行 |
| 大統領令・規章 | 米国の大統領令は行政府の内部への指示。中国の部門規章は国家網信弁などの共同の令 | 大統領令は「法律に許される最大限」などの限定が付き、私人に権利を与えない旨が通常の条項にある。部門規章は事業者に義務を課す |
| 指針・計画 | 日本の指針・基本計画、米国のAI行動計画、中国の国務院の意見 | 法的拘束力がない、または政策の方向を示すもの。日本のAI事業者ガイドラインは「非拘束的なソフトロー」と自称 |
| 標準 | 米国のNIST AI RMF(任意)、中国の強制性国家標準、国際規格 | 強制性国家標準は中国では強制。NISTの枠組みは任意 |
段階の整理は解説です。各文書の拘束力の詳細は、本文の各章と原文で確認してください。
3. 米国:大統領令の流れ
米国では、AIに関する連邦の動きの多くが大統領令(Executive Order)で示されています。連邦官報で署名日を確認できる主な大統領令を、時系列に並べます事実[参考資料1〜12]。
| 文書 | 内容(原文の要旨) | 注記 |
|---|---|---|
| EO 14148 (2025年1月20日) | 「Initial Rescissions of Harmful Executive Orders and Actions」。撤回の対象にEO 14110(2023年10月30日、AIの安全・確実・信頼できる開発と利用)を列挙[参考資料1] | 14110に基づく連邦政府の行動の見直しは、EO 14179の第5条が指示 |
| EO 14179 (2025年1月23日) | 「Removing Barriers to American Leadership in AI」。AIの米国の支配力を維持・強化する政策を掲げ、180日以内の行動計画の作成を指示。AIの定義は15 U.S.C. 9401(3)[参考資料2] | 14110に基づく政策・指令・規則・行動の見直しと、必要に応じた停止・改正・撤回を指示 |
| AI行動計画 (2025年7月) | 「America's AI Action Plan」。三本柱:AIイノベーションの加速、米国のAIインフラの構築、国際的なAI外交と安全保障[参考資料3] | 計画文書で、法的義務を課すものではない(本文に法令の形式はない) |
| EO 14318・14319・14320 (2025年7月23日) | 14318:データセンターのインフラの連邦許認可の迅速化。14319:連邦政府が調達する大規模言語モデルに「真実を追求する」「イデオロギー的中立」の原則を求める。14320:AIハード、モデル、セキュリティ、アプリケーションをまとめた「米国AI技術一式」の輸出を促進する輸出プログラム[参考資料4〜6] | 14319の調達原則は、OMBのガイダンス(120日以内)で実施 |
| EO 14363 (2025年11月24日) | Genesis Mission。エネルギー省が連邦の科学データを使うAIプラットフォームを構築し、科学の基盤モデルやAIエージェントで研究を加速[参考資料7] | 素材・化学の研究に関わる点は第10章 |
| EO 14365 (2025年12月11日) | 「Ensuring a National Policy Framework for AI」。司法長官にAI訴訟タスクフォース(30日以内)、商務長官に州のAI法の評価(90日以内)を指示。連邦の包括的な枠組みを議会とともに作る方針[参考資料8] | タスクフォースは2026年1月9日の司法長官の覚書で設置[参考資料9]。商務省の評価の公表は確認できなかった |
| EO 14409 (2026年6月2日) | 「Promoting Advanced AI Innovation and Security」。国家安全保障システム等のサイバー防御、AIサイバーセキュリティの情報共有拠点、先進AIモデルのサイバー能力を評価する機密のベンチマーク、「covered frontier model」の任意の枠組み(公開前の最大30日の政府アクセス)など[参考資料10] | 新たなAIモデルの許可・事前承認の義務を認める趣旨ではない、と明記(第3条(c))。NSPM-11が6月5日に出た |
| EO 14434 (2026年9月29日) | 「Inaugurating the Era of Super Intelligence」。第4章 | 連邦官報掲載は2026年10月2日[参考資料11] |
すべて連邦官報またはホワイトハウスの原文の記載(事実)の要旨です。大統領令の定める期限の履行状況は、本稿では確認していません。
日付の算術です本稿の計算。
- EO 14365(2025年12月11日):30日以内=2026年1月10日、90日以内=2026年3月11日。
- EO 14409(2026年6月2日):30日以内=2026年7月2日、60日以内=2026年8月1日。
- EO 14434(2026年9月29日):60日以内=2026年11月28日(確認日の時点で期日が到来していない)。
前提と限界:署名日から暦日で数えた計算で、履行の有無は確認していません。EO 14365 の司法長官のタスクフォースは、2026年1月9日の覚書で設置されています(期日は1月10日)[参考資料9]。
4. 米国:用語の変更 ― 大統領令14434と「Super Intelligence」
2026年9月29日の大統領令14434「Inaugurating the Era of Super Intelligence」は、行政府が公式の文書で「Artificial Intelligence」「AI」の代わりに「Super Intelligence」「SI」を使うことを政策としました。原文の要点は次のとおりです事実[参考資料11・12]。
- 政策(第1条):法律に許される最大限、行政府は「Super Intelligence」「SI」を「Artificial Intelligence」「AI」の代わりに用い、該当する場面で「Artificial Intelligence」「AI」の使用を認めない、とする。
- 実施(第2条):各省庁は、公式の書簡、広報、ウェブサイト、報告書、政策文書その他法律以外の文書で、「Super Intelligence」「SI」を使う。以前に出した規則、大統領の行為、契約、補助金、過去の文書の変更は求めない。
- 定義(第3条):この令における「Super Intelligence」「SI」は、15 U.S.C. 9401(3) で定義される「人工知能」が包含する技術・システムを指す。60日以内に、大統領補佐官(科学技術担当)が、連邦の定義の法案文を大統領に提出する。提出物には、既存の法律上の「人工知能」の定義を変更・拡張・置換するか、法律中の語句の整合的な改正案を含む。
- 一般規定(第4条):法律で与えられた省庁の権限を損なわない。私人が執行できる権利や利益を創設しない。
この大統領令は、既存の法律・規則・契約の文言を変えません(第2条(b))。また、定義は既存の「人工知能」と同じ技術を指します(第3条(a))。そのため、本稿は、法令や公式文書の題名・条文を引用するときは原題のまま(例:「NIST AI Risk Management Framework」「Regulation (EU) 2024/1689」「Executive Order 14179」)とし、解説の文では「AI」を使います。「SI」は「AI」と別の技術を指す語として使っていません。将来、連邦法の定義が変更された場合に何が変わるかは、第3条(b)の提案が出た後の話であり、本稿では推測しません未確定/将来。
確認日の時点で、米国の政府サイトの一部に新しい語が現れています。たとえば、ホワイトハウスの一覧ページでこの令は「Inaugurating The Era Of Super Intelligence」として掲載され、NISTのサイトの上部メニューには「Super intelligence」の項目があります[参考資料12・30]。商務省産業安全保障局(BIS)の2025年5月13日付の報道発表のページも、確認日の時点の本文に「SI」の語が使われています[参考資料21]。過去の発表の本文が掲載後に改められたのか、当初からの表記かは、本稿では確認していません。
5. 米国:連邦法、州法、議会の動き
連邦法
確認できた連邦のAIに特化した法律として、TAKE IT DOWN法(Public Law 119-12、2025年5月19日)があります。同意のない親密な視覚的描写(AI等で作られた「デジタル偽造」を含む)の意図的な公開を刑事罰の対象とし、「対象プラットフォーム」には、公布から1年以内に通知・削除の手続きを整え、削除の要請を受けてから48時間以内に削除し、既知の同一の複製の削除に合理的な努力をすることを求めます。連邦取引委員会(FTC)が執行します事実[参考資料14]。 一方、AIの包括的な連邦法や、州のAI法を一般的に先占する連邦法の成立は、本稿の調査では確認できませんでした。ホワイトハウスは2026年3月20日に、議会向けの立法に向けた勧告を公表しています。勧告は、子どもの保護、地域とエネルギー、知的財産、言論、イノベーション、労働力、連邦の枠組みと州法の先占を挙げ、「AIの開発を州が規制すべきでない」とし、AIの学習における著作物の利用が著作権法に反しないという政権の見解を述べつつ、この問題の判断を裁判所に委ねる、としています事実[参考資料13]。勧告は議会に求める内容で、法的拘束力はありません。
州法
EO 14365 は州法との関係を政策の課題にしましたが、州法自体が連邦の命令で無効になるわけではありません(先占には連邦法または有効な連邦規則が要ります)(解説)。確認できた主な州法は次のとおりです。
| 州・法 | 確認した公式記録 | 内容(要旨) | 段階 |
|---|---|---|---|
| カリフォルニア SB 53 Transparency in Frontier AI Act | 2025年9月29日に知事が承認、Chapter 138, Statutes of 2025(議会の法案ページ)[参考資料15] | 「フロンティアモデル」(1026 FLOP超の計算量で学習した基盤モデル)と「大規模フロンティア開発者」(直前の暦年の年間総収入5億ドル超)を定義。大規模開発者に、フロンティアAIの枠組みの公開、モデル公開時の透明性報告、重大な安全インシデントの報告(15日以内、差し迫った危険は24時間以内)を求め、違反の民事罰は1件あたり100万ドル以下、司法長官のみが訴える[参考資料16] | 緊急条項のない法律(通常は翌年1月1日に施行。解説) |
| テキサス HB 149 TRAIGA | 2025年6月22日に知事が署名、2026年1月1日施行(議会の記録)[参考資料17] | 人に自傷・他害・犯罪を意図的に促すAIの開発・提供の禁止、政府機関によるソーシャルスコアの禁止、憲法上の権利を侵害する意図のみのAIの禁止など。司法長官のみが執行し、私人の訴権はない。民事罰は、是正できる違反で1万〜1.2万ドル、是正できない違反で8万〜20万ドル、継続違反で1日あたり2,000〜4万ドル。規制サンドボックスの制度 | 施行済み |
| コロラド SB 26-189 | 2026年5月14日に署名(議会の法案ページ)[参考資料18] | 2024年のSB 24-205 の条項を廃止して再制定し、「自動意思決定技術(ADMT)」を使う「重大な決定」(教育、雇用、住宅、金融、保険、医療、公共サービスなど)に関する開発者の技術文書の提供(2027年1月1日から)、導入者の消費者への通知、不利な結果から30日以内の説明、人による再検討の要請権などを定める。司法長官が執行 | 主な義務は2027年1月1日から(未確定/将来) |
| ニューヨーク RAISE法 | S6953B:2025年12月19日署名(Chapter 699)[参考資料19]。S8828(修正法):2026年3月27日署名(Chapter 96)[参考資料20] | フロンティアモデルの開発者に、安全計画の透明性と重大インシデントの報告を求める。修正法は、基の法律の施行を2027年1月1日にする | 2027年1月1日から(未確定/将来) |
各州の議会の公式ページ・条文にもとづく要旨(事実)です。法律の全文と最新の改正は各議会のページで確認してください。
司法長官は2026年1月9日の覚書でAI訴訟タスクフォースを設置し、州のAI法を「州際通商を違憲に規制する」「連邦の規則に先占される」「その他違法」といった理由で争うこと、ホワイトハウスの関係者と協議することを定めています[参考資料9]。州法をめぐる個別の訴訟の結論は、係属中の手続きであり、本稿では推測しません。
6. 米国:輸出管理
AIチップの輸出管理は、商務省産業安全保障局(BIS)が輸出管理規則(EAR)で定めます。連邦官報で確認できる主な動きを時系列に並べます事実。
| 日付 | 文書 | 内容(要旨) |
|---|---|---|
| 2025年1月15日 | 「Framework for Artificial Intelligence Diffusion」(90 FR 4544)[参考資料22] | AI拡散規則。先進コンピューティング品目の世界的な許可要件などを新設。遵守要件の適用は2025年5月15日の予定だった[参考資料21] |
| 2025年5月13日 | BISの報道発表「Department of Commerce Announces Rescission of Biden-Era AI Diffusion Rule…」[参考資料21] | AI拡散規則の撤回を発表し、BIS職員に同規則の不執行を指示。規則を正式に撤回する規制の公表と、代替の規則を将来出す、と述べた |
| 2026年1月15日 | 「Revision to License Review Policy for Advanced Computing Commodities」(91 FR 1684、同日施行)[参考資料23] | 中国・マカオ向けの一部の半導体(TPPが21,000未満で、DRAM帯域幅が6,500 GB/s未満のもの。例として NVIDIA H200、AMD MI325X)の許可の審査方針を、原則不許可から個別審査に変更。条件:米国内で商業的に入手可能であること、米国内の供給が十分であること、米国向けの製造能力を転用しないこと、受領者が十分なセキュリティ手順をもつこと、米国内での第三者の性能試験を受けること、など |
| 2026年5月31日 | BISのガイダンス[参考資料24] | 国別グループD:5またはマカオに本社を置く(または最終親会社が置く)事業者向けの先進コンピューティング品目には、事業者が域外にあっても、2023年11月17日に導入された許可要件が引き続き適用される、と明確化。2025年5月にAI拡散規則の新たな遵守要件を執行しないと発表した経緯を説明 |
| 2026年7月14日(7月10日施行) | 「Enhanced Favorable Treatment for the United Arab Emirates Under the EAR」(91 FR 43034)[参考資料25] | UAEを国別グループD:3・D:4から外し、A:5に追加。UAE政府と承認された商業主体に、先進コンピューティング品目へのライセンス不要のアクセスを認める(2025年5月の米・UAEのAI協力の枠組みに沿う) |
すべて連邦官報またはBISの公式文書の記載(事実)の要旨です。許可の要否は、品目の分類(ECCN)、仕向け地、最終用途・最終需要者で決まり、個別の判断は原文と専門家で確認してください。
7. 米国:NISTのAI評価部署の名称
NISTのAI評価の部署は、名称が変わってきました。NISTの公開ページにもとづく経緯が次の図です。NIST AI RMF や NIST AI 600-1 などの文書名は変わっていません(本稿でも原題のまま記します)。
- 2024年8月:NISTは、「U.S. AI Safety Institute」がAnthropicおよびOpenAIと研究・試験・評価に関する協定を結んだと発表しました[参考資料27]。
- 2025年6月:NISTの2025年6月の資料は、商務長官が大統領の指示のもと、U.S. AI Safety Institute を「Center for AI Standards and Innovation(CAISI)」に改組する計画を発表し、CAISIは商業AIの試験と共同研究に関する産業界の主な政府窓口になり、NIST内で運営される、と記しています[参考資料26]。
- 確認日の時点:NISTのサイト(nist.gov/caissi)は「Center for Advancing Innovation and Standards for Super Intelligence(CAISSI)」と表記し、役割として、産業界の主な窓口、自主協定にもとづく国家安全保障上のリスク(サイバー、バイオ、化学兵器)の機密でない評価、米国および敵対国のSIシステムの評価・分析、国際標準への関与などを挙げています[参考資料29]。AIに関するNISTのハブのページ(nist.gov/super-intelligence)も新しい語を使っています[参考資料30]。
- NISTは2026年2月17日にCAISIの名で「AI Agent Standards Initiative」(業界主導のエージェント標準、オープンソースのプロトコル、エージェントのセキュリティ・アイデンティティの研究の三本柱)を発表しました[参考資料28]。
名称の変更を知らせる発表文は、本稿の調査では確認できませんでした。そのため、新旧どちらの名称が使われた文書にも出会う可能性があります。この記事は、日付の時点の名称(CAISI)と、現行ページの名称(CAISSI)を併記します。評価機関の役割は、本シリーズ「AIの安全性評価とリスク管理」編で扱います。
8. 中国:生成式AI、標識、サイバーセキュリティ法
中国のAI規制は、国家インターネット情報弁公室(CAC)などが共同で定める部門規章を重ねる形で進んでいます。AIに関する主な文書を、施行日の順に整理します。原文はCACの公式サイトで確認しました事実[参考資料32〜39]。
| 文書(番号) | 日付 | 内容(原文の要旨) |
|---|---|---|
| 互联网信息服务算法推荐管理规定 (令第9号) | 2021年12月31日署名、2022年3月1日施行[参考資料34] | アルゴリズム推薦技術を使うインターネット情報サービスの規定。共同で発したのはCAC、工業情報化部、公安部、国家市場監督管理総局 |
| 互联网信息服务深度合成管理规定 (令第12号) | 2022年11月25日署名、2023年1月10日施行[参考資料33] | 深層合成技術を使う情報サービスの規定。CAC、工業情報化部、公安部の共同 |
| 生成式人工智能服务管理暂行办法 (令第15号) | 2023年7月10日署名、2023年8月15日施行[参考資料32] | 境内の公衆に生成式AIサービス(文章・画像・音声・動画の生成)を提供する場合に適用。研究機関や企業などが開発・応用しても、境内の公衆に提供しない場合は適用されない(第2条)。訓練データは合法な出所のデータと基盤モデルを使い、知的財産権を侵害せず、個人情報は同意等の根拠があること、データの質の向上(第7条)。世論属性または社会動員能力のあるサービスは安全評価とアルゴリズム届出(第17条)。法令に定めのない場合は警告、通報批評、期限付きの是正、サービスの一時停止(第21条) |
| 人工智能生成合成内容标识办法 (国信办通字〔2025〕2号) | 2025年3月7日付、2025年9月1日施行[参考資料35] | 生成合成内容の明示的標識(利用者が明らかに知覚できる文字・音声・図形)と黙示的標識(ファイルのメタデータに生成合成の属性、提供者の名称または符号、内容番号を入れる。電子透かしの使用は奨励)。配信プラットフォームはメタデータを確認し、生成合成と明示された場合などは周囲に目立つ表示を付ける。利用者への明示標識のない内容の提供には、利用契約で義務を明示し、ログを6か月以上保存。標識の悪意の削除・改ざん・偽造・隠蔽の禁止。強制性国家標準への適合(第11条) |
| 網絡安全法の改正決定 | 2025年10月28日採択(第14期全国人民代表大会常務委員会第18回会議)、2026年1月1日施行[参考資料37] | CACの専門家解説は、新設の第20条がAIの安全と発展を定め、国がAIの基礎理論研究と重要技術の研究開発を支援し、訓練データ資源や算力などの基盤を整え、倫理規範を整え、リスクの監視評価と安全監督を強める、と説明する。最終審議の段階でAIの条文が加わった、とされる(条文の原文は本稿では確認していない) |
| 人工智能拟人化互动服务管理暂行办法 (令第21号) | 2026年4月10日公布、2026年7月15日施行[参考資料36] | 人格特性・思考様式・コミュニケーションの型を模した持続的な情感的インタラクションのサービス(感情ケア、相手になるサービスなど)に適用。知的カスタマーサービス、知識Q&A、仕事の助手、学習教育、科学研究で、持続的な情感的インタラクションを伴わないものは適用外(第2条)。禁止事項に、過度な迎合・情感への依存の誘導、感情操作による不合理な判断の誘導などを含む(第8条) |
各文書の原文(CAC)の記載の要旨(事実)です。条文の全文と最新の改正は原文で確認してください。
標識の技術的な詳細は、強制性国家標準 GB 45438-2025「網絡安全技術 人工智能生成合成内容標識方法」(国家市場監督管理総局・国家標準化管理委員会が2025年2月28日に発行、2025年9月1日実施)にあります。標準の本文(法律事務所のサイトに掲載された複写で確認)には、たとえば、明示的標識の文字の高さは画面の短辺の5%以上、動画の標識は通常再生で2秒以上、メタデータの黙示的標識は「AIGC」を含む拡張フィールドに、標識の種別(1=生成合成、2=可能性がある、3=疑いがある)、提供者の名称または符号、内容番号、配信者の名称または符号、配信番号を記録する、などの規定があります。電子透かしなどの内容に埋め込む黙示的標識は、この標準では要求されていません(付録A)事実[参考資料39]。標準の公式の掲載ページは、本稿では確認できませんでした。
GB 45438-2025 の規定(画像・動画の明示的標識の文字の高さは画面の最短辺の5%以上、動画は通常の再生速度で2秒以上)に、画面の大きさを当てはめます本稿の計算。
- 1,920×1,080画素の画像・動画:最短辺1,080画素の5%=54画素以上。
- 4,000×3,000画素の画像:最短辺3,000画素の5%=150画素以上。
- 動画の2秒間:24コマ/秒なら48コマ、30コマ/秒なら60コマ以上に標識が表示される(コマ数は仮定)。
前提と限界:画面の大きさとコマ数は例示の仮定です。標準の付録は、表示の位置(辺または角)、字体の判読性などの条件も定めています。
国務院は2025年8月21日付で「人工知能+」行動の意見(国発〔2025〕11号、同月26日公表)を出しました。2027年までに新世代のスマート端末とエージェントなどの応用の普及率を70%超、2030年までに90%超、2035年までに知能経済・知能社会の新しい段階に入る、という目標を掲げ、科学技術、産業、消費、民生、治理、国際協力の分野の行動を挙げます未確定/将来[参考資料38]。これらは政策の目標であり、実績ではありません。
9. 日本:AI法、基本計画、指針
日本のAI政策の中心は、2025年に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号、通称AI法)です。e-Govの法令データによれば、2025年6月4日に公布され、第三章(人工知能基本計画)・第四章(人工知能戦略本部)などを除く部分は公布日から、残りは2025年9月1日に施行されました(現行の版の施行日は2025年9月1日)事実[参考資料40・41]。
| 条 | 内容(条文の要旨) |
|---|---|
| 第1条・第2条 | 目的は、AI関連技術が経済社会の発展の基盤となる技術であることに鑑み、研究開発と活用の推進に関する施策の基本理念、基本計画、AI戦略本部の設置を定め、国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与すること。「人工知能関連技術」は、人工的な方法により人間の認知、推論、判断に係る知的な能力を代替する機能を実現するために必要な技術などをいう |
| 第3条 | 基本理念。AIの活用による行政・事業活動の効率化・高度化と新産業の創出、安全保障の観点、国際競争力の向上、基礎研究から活用まで総合的・計画的に推進すること。不正な目的または不適切な方法で行われた場合には、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などを助長するおそれがあるため、研究開発・活用の過程の透明性の確保などの施策を講じなければならない(第4項)。国際協調(第5項) |
| 第4〜8条 | 国、地方公共団体、研究開発機関、活用事業者、国民の責務。活用事業者は、基本理念にのっとり、AIの積極的な活用による事業活動の効率化・高度化と新産業の創出に努め、国・地方公共団体の施策に協力しなければならない(第7条) |
| 第13条 | 国は、研究開発・活用の適正な実施を図るため、国際的な規範の趣旨に即した指針の整備その他の必要な施策を講ずる |
| 第16条 | 国は、動向の調査に加え、不正な目的または不適切な方法によるAIの研究開発・活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析と対策の検討を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者などに対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずる |
| 第18条 | 政府は人工知能基本計画を定める。AI戦略本部が案を作り、閣議決定を経て公表する |
| 第19条〜 | 内閣にAI戦略本部を置く(第四章) |
| 附則第2条 | 政府は、国際的動向などを勘案しつつ施行状況を検討し、必要があると認めるときは所要の措置を講ずる |
条文(e-Gov)の要旨(事実。AI法の章立ては、総則、基本的施策、人工知能基本計画、人工知能戦略本部で、罰則の章はありません。事業者への直接の規制ではなく、推進と適正性確保のための枠組みです(解説)。
基本計画と指針
- 人工知能基本計画:2025年12月23日に初の計画が閣議決定され、2026年7月14日に第Ⅱ期(「日本AX、より強く、より豊かに」)が閣議決定されました[参考資料42〜44]。第Ⅱ期の計画は、エージェント型AIの急速な伸長を踏まえ、施策を「AI利活用の加速的推進」「AI開発力の戦略的強化」「AIガバナンスの主導」「AI社会に向けた継続的変革」の四つの節で示します。AIガバナンスでは、「責任あるアジャイル・ガバナンス」、AIセーフティ・インスティテュート(AISI)の機能の抜本的な強化、広島AIプロセスや国際標準への関与、AI生成コンテンツを判別する技術(電子透かしなど)の開発支援、AI法を含む制度の能動的な見直しなどを挙げます[参考資料43]。計画の施策や目標は未確定/将来であり、実績ではありません。
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針:AI法第13条にもとづき、2025年12月19日にAI戦略本部が決定しました。全ての主体の自主的かつ能動的な取り組みを促すもので、適正性の「一義的な定義や絶対的な水準を定めるものではない」とし、人間中心、公平性、安全性、透明性、アカウンタビリティ、セキュリティ、プライバシーなどの要素を示します。研究開発機関と活用事業者には、AIガバナンスによる俯瞰的な適正性の確保、透明性の確保、十分な安全性の確保、事業継続性の確保、データの重要性を踏まえた配慮を挙げます[参考資料45]。
- AI事業者ガイドライン(第1.2版):総務省と経済産業省が2026年3月31日に公表した、非拘束的なソフトローです(本シリーズ「企業へのAI導入」編)[参考資料47・48]。
適正性確保指針は、日本が2023年のG7広島サミットで立ち上げた「広島AIプロセス」に触れ、2024年5月に立ち上がった「広島AIプロセス・フレンズグループ」に60の国・地域が参加し(2025年12月時点)、国際行動規範の遵守状況を開発者が自主的に報告する「報告枠組み」に24組織が回答を提出した(同)、と記しています[参考資料45]。AI戦略本部は、内閣総理大臣を本部長とし、全国務大臣が本部員となる体制です[参考資料46]。
10. 素材・製造業にとっての接点
三か国の政策は、AIを作る会社だけでなく、AIを使う素材・製造の企業にも接点があります(本稿の解説)。条文と計画の記載から読み取れる点を整理します。
米国のEO 14363(Genesis Mission)は、エネルギー省が連邦の科学データを統合したAIプラットフォームを作り、科学の基盤モデルやAIエージェントで研究のワークフローを自動化・加速する構想を示しました[参考資料7]。中国の「人工知能+」の意見は、「科学技術」の分野で、AI駆動の新しい研究のあり方と、高品質な科学データセットの整備を挙げます[参考資料38]。日本の基本計画(第Ⅱ期)も、「AI for Science」を先導する研究開発や、製造業などでのバーティカルAI・フィジカルAIの導入を挙げ、組織を越えたデータの共有を促す一方で、営業秘密等の機微情報の国外流出リスクへの対応を含めてデータの安全性を確保する、と記します[参考資料43]。 素材・化学の研究では、データの条件(試験法、試験片、温度)が揃った公的データが使えるようになるかが、実際の効果を左右します(解説)。ただし、これらは構想・目標の段階の記述で、素材分野での具体的な成果や、データの利用条件は、本稿では確認していません未確定/将来。AIによる材料探索そのものは、本シリーズ「マテリアルインフォマティクス」編で扱います。
BISのガイダンス(2026年5月31日)は、国別グループD:5またはマカオに本社を置く(または最終親会社が置く)事業者向けの先進コンピューティング品目には、事業者が域外にあっても許可要件が適用される、と明確化しました[参考資料24]。AIチップの輸出は、品目の分類、仕向け地、最終需要者の組み合わせで決まります(第6章)。 素材・部品・製造装置の企業は、AIチップを直接輸出しない場合でも、顧客のデータセンターや製造設備の計画が輸出管理の影響を受けることがあります。これは推測で、個別の取引への適用は専門家に確認してください。
中国では、標識办法(2025年9月1日施行)が、生成合成サービスの提供者に明示的・黙示的な標識を求めます[参考資料35]。EU AI法第50条の透明性義務も2026年8月2日から適用されています(本シリーズ「EU AI法」編)。一方、日本のAI法は事業者への直接の表示義務を定めておらず、適正性確保指針は透明性の確保を自主的な取り組みとして示します[参考資料40・45]。米国では、TAKE IT DOWN法が同意のない親密な描写の削除に対象を絞っています[参考資料14]。 自社の技術資料やカタログの画像を生成AIで作る場合、どの国の市場に出すかで、表示の社内ルールの要否が変わります(解説)。社内では、生成AIを使った図や文章に、使用したツールと版を記録することが、国をまたいで説明できる最低限の備えです。
11. 限界と、確認できなかったこと
(1) 比較の限界
三か国の文書は、法的な性格も、変わる手続きも違います。本稿は段階と日付を並べるにとどめ、強さや優劣は評価していません。
(2) 履行状況・係属中の手続き
大統領令が定める期限の履行(商務省の州法の評価の公表、BEADに関する通知、EO 14409・14434の期限内の成果物など)は確認できませんでした。州法をめぐる訴訟や、議会の先占に関する法案(草案を含む)の結論は推測していません。
(3) 条文の原文を確認できなかったもの
中国の改正サイバーセキュリティ法は、CACの解説で内容を確認し、改正決定の条文の原文は確認していません。GB 45438-2025 は、標準の本文の複写(法律事務所のサイト)で確認し、公式の標準のページは確認できませんでした。商務省の2025年6月の発表文(Lutnick長官の声明)は、サイトに接続できず、NISTの資料で確認しました。
(4) 名称の経緯
NISTの部署名がCAISSIになった日付と経緯を示す発表文は、確認できませんでした。大統領令14434が「米国のAI」の語を変える範囲は、第3条(b)の定義の提案が出た後にさらに変わりうるため、本稿は現在の原文の記載にとどめます。
(5) 取り扱っていない国・分野
EU は本シリーズ「EU AI法」編で扱います。英国、韓国、インドなどの政策は扱いません。軍事分野のAI政策も扱いません。
- 米国は大統領令と州法、輸出管理が中心です。連邦の包括的なAI法は確認できず、2026年9月29日の大統領令14434は、行政府の文書で「Super Intelligence」を使うよう求めますが、既存の法令・契約の文言は変えません事実
- 中国は部門規章を重ね、2026年1月1日に改正サイバーセキュリティ法が施行されました。生成合成内容の標識は2025年9月1日から、擬人化インタラクションは2026年7月15日から施行されています事実
- 日本はAI法(2025年9月1日全面施行)、基本計画(第Ⅱ期は2026年7月14日)、指針で推進と適正性を組み合わせます。AI法の条文に罰則の章はありません事実
- NISTのAI評価部署は、AI安全性研究所からCAISI、現行のページではCAISSIの表記になっています。変更の発表文は確認できませんでした事実
- 文書の段階を区別して読みます。法律、命令・規章、指針・計画で、拘束力と変わり方が違います(解説)
12. 評価・標準の読み方
政策文書には、数値で測るベンチマークは多くありません。代わりに、規制の対象を決める閾値(計算量、性能)、事業者や政府が行う評価、準拠を示す標準・指針があります。次の表は、確認できた範囲で並べたものです。確認できなかった欄はそのように書いています。
| 評価項目 | 代表的な評価手法・閾値(名称・出典) | 標準・指針(NIST・ISO/IEC・各国) | 読み方の注意 |
|---|---|---|---|
| 米国:AIのリスク管理事実 | 確認できなかった(ベンチマークではなく、枠組みと実践の文書) | NIST AI RMF 1.0(NIST AI 100-1、2023年1月)。NISTのページは、AI RMF 1.0 がAI行動計画の一環として改訂中と記す[参考資料31]。NISTの文書名は変わっていない | 任意利用の枠組み。改訂の内容と時期は未確定(未確定/将来) |
| 米国:先進モデルの能力評価事実 | EO 14409:サイバー能力を評価する機密のベンチマークと「covered frontier model」の閾値(国家安全保障局長官が判断)[参考資料10]。NISTのCAISI/CAISSIは、中国企業のオープンウェイトモデルの評価などを公開[参考資料29] | NISTの部署名はCAISI→CAISSI(図4)。EO 14409は許可制の創設を認めない旨を明記 | 機密のベンチマークの内容は公開されていない。政府評価の結果は、評価の方法と限界とあわせて読む |
| 米国州法:適用の閾値事実 | カリフォルニアSB 53:1026 FLOP超(微調整等の計算量を含む)のモデル、大規模開発者は年間総収入5億ドル超[参考資料16] | 確認できなかった(州法の閾値に対応するISO/IEC・NISTの規格は確認できなかった) | 計算量は推定値。EUの10^25 FLOP(推定)とは別の制度の閾値で、優劣を示さない |
| 米国:輸出管理の閾値事実 | BISの2026年1月15日の規則:TPP 21,000未満かつDRAM帯域幅 6,500 GB/s未満の品目を個別審査の対象に[参考資料23] | 輸出管理規則(EAR)のECCN 3A090等。TPPの定義はEARの技術注 | TPPは性能の指標で、実際の許可は仕向け地・最終用途で決まる。条件や閾値は改正で変わる |
| 中国:生成式AIの安全評価・届出事実 | 世論属性・社会動員能力のあるサービスは、安全評価とアルゴリズム届出(生成式AI暫行办法第17条)[参考資料32] | 強制性国家標準 GB 45438-2025(標識方法。2025年9月1日実施)[参考資料39] | 標準は強制。電子透かしは要求されていない。標準の公式ページは確認できなかった |
| 日本:技術的評価と指針事実 | AIセーフティ・インスティテュート(AISI)によるAIモデルの技術的評価の強化が基本計画に記載(第Ⅱ期)[参考資料43] | 適正性確保指針(2025年12月19日)[参考資料45]。AI事業者ガイドライン第1.2版(2026年3月31日。非拘束的なソフトロー)[参考資料47]。ISO/IEC JTC 1 でのAI分野の国際標準化への参画が計画に記載 | 指針は任意の取り組みを促すもので、AI法に罰則はない。計画の施策は将来の目標 |
法令、官報、政府の公式ページ、標準本文で確認した事実(確認日 2026年10月15日)。この表の整理は本稿の計算(本記事による並べ替え)、「読み方の注意」の列は解説です。
読み方の注意
- 閾値は制度ごとに意味が違います。カリフォルニアの1026 FLOP、EUの1025 FLOPの推定、米国の輸出管理のTPP、中国の安全評価の対象は、それぞれ別の目的の制度の基準で、並べて「厳しさ」を比べるものではありません。
- 強制か任意かを見ます。中国の強制性国家標準は強制、NIST AI RMFは任意、日本のAI事業者ガイドラインは非拘束的、米国の大統領令は行政府内部への指示です。
- 名称と日付は変わります。NISTの部署名、AI関連の用語(大統領令14434)、基本計画の版は変わっています。引用するときは、文書の題名は原題のまま、確認日と版を添えます。
13. 用語集
- 大統領令(Executive Order)
- 米国の大統領が行政府に出す指示。議会が定める法律ではなく、連邦官報に署名日と番号が掲載される。
- 連邦官報
- 米国政府の公式の公報。大統領令や規則が掲載される。
- 先占(preemption)
- 連邦法が州法に優先し、州法の効力を排除すること。連邦法または有効な連邦規則が必要。
- BIS
- 米国商務省の産業安全保障局。輸出管理規則(EAR)を所管する。
- EAR
- 輸出管理規則。品目の分類(ECCN)、仕向け地、最終用途・最終需要者で許可の要否が決まる。
- TPP
- EARの先進コンピューティング品目の性能を表す指標(総処理性能)。EARの技術注で定義される。
- CAISI/CAISSI
- NISTのAI評価部署。2025年6月にCAISIへの改組が発表され、確認日の現行ページではCAISSIと表記される。
- 部門規章
- 中国で、国務院の部門(国家インターネット情報弁公室など)が定める規則。令の番号で公布される。
- 明示的標識/黙示的標識
- 中国の標識办法で、利用者が明らかに知覚できる標識と、ファイルのメタデータ等に入れる標識。
- 強制性国家標準(GB)
- 中国で、遵守が強制される国家標準。
- AI法(日本)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律。推進と適正性確保の枠組みを定める。
- 人工知能基本計画
- AI法第18条にもとづき政府が定める基本計画。閣議決定で公表される。
- AISI(日本)
- AIセーフティ・インスティテュート。AIモデルの技術的評価などを担う。
- 広島AIプロセス
- 2023年のG7広島サミットで立ち上げられたAIガバナンスの国際的な枠組み。
- ソフトロー
- 法的拘束力のない指針・ガイドライン。
14. 参考資料(一次情報)
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14148 "Initial Rescissions of Harmful Executive Orders and Actions"(2025年1月20日署名、90 FR、2025年1月28日。撤回の対象にEO 14110を列挙) — www.federalregister.gov/documents/2025/01/28/2025-01901/initial-rescissions-of-harmful-executive-orders-and-actions
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14179 "Removing Barriers to American Leadership in Artificial Intelligence"(2025年1月23日署名、2025年1月31日掲載) — www.federalregister.gov/documents/2025/01/31/2025-02172/removing-barriers-to-american-leadership-in-artificial-intelligence
- ホワイトハウス "America's AI Action Plan"(2025年7月) — www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2025/07/Americas-AI-Action-Plan.pdf
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14318 "Accelerating Federal Permitting of Data Center Infrastructure"(2025年7月23日署名) — www.federalregister.gov/documents/2025/07/28/2025-14212/accelerating-federal-permitting-of-data-center-infrastructure
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14319 "Preventing Woke AI in the Federal Government"(2025年7月23日署名) — www.federalregister.gov/documents/2025/07/28/2025-14217/preventing-woke-ai-in-the-federal-government
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14320 "Promoting the Export of the American AI Technology Stack"(2025年7月23日署名) — www.federalregister.gov/documents/2025/07/28/2025-14218/promoting-the-export-of-the-american-ai-technology-stack
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14363 "Launching the Genesis Mission"(2025年11月24日署名、2025年11月28日掲載) — www.federalregister.gov/documents/2025/11/28/2025-21665/launching-the-genesis-mission
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14365 "Ensuring a National Policy Framework for Artificial Intelligence"(2025年12月11日署名、2025年12月16日掲載) — www.federalregister.gov/documents/2025/12/16/2025-23092/ensuring-a-national-policy-framework-for-artificial-intelligence
- 米国司法省 Attorney General memorandum "Artificial Intelligence Litigation Task Force"(2026年1月9日) — justice.gov/ag/media/1422986/dl
- ホワイトハウス Executive Order 14409 "Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security"(2026年6月2日署名。連邦官報の文書番号 2026-11415) — www.whitehouse.gov/presidential-actions/2026/06/promoting-advanced-artificial-intelligence-innovation-and-security/
- 米国大統領/連邦官報 Executive Order 14434 "Inaugurating the Era of Super Intelligence"(2026年9月29日署名、2026年10月2日掲載) — www.federalregister.gov/documents/2026/10/02/2026-20321/inaugurating-the-era-of-super-intelligence
- ホワイトハウス "Inaugurating The Era Of Super Intelligence"(大統領令14434の掲載ページ、2026年9月29日。大統領令の一覧ページにも掲載) — www.whitehouse.gov/presidential-actions/2026/09/inaugurating-the-era-of-super-intelligence/
- ホワイトハウス "National Policy Framework for Artificial Intelligence: Legislative Recommendations"(2026年3月20日) — www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2026/03/03.20.26-National-Policy-Framework-for-Artificial-Intelligence-Legislative-Recommendations.pdf
- 米国議会/政府出版局 Public Law 119-12 "TAKE IT DOWN Act"(S. 146、2025年5月19日) — www.govinfo.gov/content/pkg/PLAW-119publ12/html/PLAW-119publ12.htm
- カリフォルニア州議会 SB-53 "Artificial intelligence models: large developers"(法案ページ。2025年9月29日に知事承認、Chapter 138, Statutes of 2025) — leginfo.legislature.ca.gov/faces/billStatusClient.xhtml?bill_id=202520260SB53
- カリフォルニア州議会 SB-53 法案の条文(Chaptered) — leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=202520260SB53
- テキサス州議会 89(R) HB 149 "Texas Responsible Artificial Intelligence Governance Act"(法案履歴ページ)。条文:capitol.texas.gov/tlodocs/89R/billtext/html/HB00149F.htm — capitol.texas.gov/BillLookup/History.aspx?LegSess=89R&Bill=HB149
- コロラド州議会 SB26-189 "Automated Decision-Making Technology"(法案ページ。2026年5月14日 Signed Act) — leg.colorado.gov/bills/sb26-189
- ニューヨーク州議会 S6953B "Relates to the training and use of artificial intelligence frontier models"(2025年12月19日署名、Chapter 699) — www.nysenate.gov/legislation/bills/2025/S6953
- ニューヨーク州議会 S8828(修正法。2026年3月27日署名、Chapter 96) — www.nysenate.gov/legislation/bills/2025/S8828
- 米国商務省 BIS "Department of Commerce Announces Rescission of Biden-Era Artificial Intelligence Diffusion Rule, Strengthens Chip-Related Export Controls"(2025年5月13日付の報道発表。確認日の本文は「SI」の語を使用) — www.bis.gov/press-release/department-commerce-announces-rescission-biden-era-artificial-intelligence-diffusion-rule-strengthens
- 米国商務省 BIS/連邦官報 "Framework for Artificial Intelligence Diffusion", 90 FR 4544(2025年1月15日) — www.federalregister.gov/documents/2025/01/15/2025-00636/framework-for-artificial-intelligence-diffusion
- 米国商務省 BIS/連邦官報 "Revision to License Review Policy for Advanced Computing Commodities", 91 FR 1684(2026年1月15日) — www.federalregister.gov/documents/2026/01/15/2026-00789/revision-to-license-review-policy-for-advanced-computing-commodities
- 米国商務省 BIS "Guidance Regarding Enforcement of License Requirements for Advanced Computing Items for Entities Headquartered in Country Group D:5 and Macau"(2026年5月31日) — www.bis.gov/media/documents/bis-guidance-may-31-2026.pdf
- 米国商務省 BIS/連邦官報 "Enhanced Favorable Treatment for the United Arab Emirates Under the Export Administration Regulations", 91 FR 43034(2026年7月14日、7月10日施行) — www.federalregister.gov/documents/2026/07/14/2026-14132/enhanced-favorable-treatment-for-the-united-arab-emirates-under-the-export-administration
- NIST "NIST Announcements"(2025年6月。U.S. AI Safety Institute の CAISI への改組計画の記載) — www.nist.gov/document/nist-announcements-june-2025
- NIST "U.S. AI Safety Institute Signs Agreements Regarding AI Safety Research, Testing and Evaluation With Anthropic and OpenAI"(2024年8月) — www.nist.gov/news-events/news/2024/08/us-ai-safety-institute-signs-agreements-regarding-ai-safety-research
- NIST "Announcing the 'AI Agent Standards Initiative' for Interoperable and Secure Innovation"(2026年2月17日。CAISIの名で発表) — www.nist.gov/news-events/news/2026/02/announcing-ai-agent-standards-initiative-interoperable-and-secure
- NIST "Center for Advancing Innovation and Standards for Super Intelligence (CAISSI)"(確認日 2026年10月15日の現行ページ。同ページのニュース欄にCAISIの名の評価記事を掲載) — www.nist.gov/caissi
- NIST NISTのAI(Super intelligence)のハブのページ(確認日 2026年10月15日) — www.nist.gov/super-intelligence
- NIST "AI Risk Management Framework"(確認日 2026年10月15日。AI RMF 1.0 の改訂中の記載) — www.nist.gov/itl/ai-risk-management-framework
- 国家インターネット情報弁公室ほか(中国) 《生成式人工智能服务管理暂行办法》(令第15号、2023年7月10日署名、2023年8月15日施行) — www.cac.gov.cn/2023-07/13/c_1690898327029107.htm
- 国家インターネット情報弁公室ほか(中国) 《互联网信息服务深度合成管理规定》(令第12号、2022年11月25日署名、2023年1月10日施行) — www.cac.gov.cn/2022-12/11/c_1672221949354811.htm
- 国家インターネット情報弁公室ほか(中国) 《互联网信息服务算法推荐管理规定》(令第9号、2021年12月31日署名、2022年3月1日施行) — www.cac.gov.cn/2022-01/04/c_1642894606364259.htm
- 国家インターネット情報弁公室ほか(中国) 《人工智能生成合成内容标识办法》(国信办通字〔2025〕2号、2025年3月7日付、2025年9月1日施行) — www.cac.gov.cn/2025-03/14/c_1743654684782215.htm
- 国家インターネット情報弁公室ほか(中国) 《人工智能拟人化互动服务管理暂行办法》(令第21号、2026年4月10日公布、2026年7月15日施行) — www.cac.gov.cn/2026-04/10/c_1777558395078289.htm
- 中国網信網(CAC) 専門家解説「《网络安全法》修改,积极应对人工智能治理安全挑战」(2026年1月2日。2025年10月28日採択の改正決定、2026年1月1日施行、新設の第20条を説明) — www.cac.gov.cn/2026-01/02/c_1769093523928606.htm
- 国務院(中国) 《国务院关于深入实施“人工智能+”行动的意见》(国発〔2025〕11号、成文日期 2025年8月21日、公表 8月26日) — www.gov.cn/zhengce/content/202508/content_7037861.htm
- 国家市場監督管理総局・国家標準化管理委員会(中国) GB 45438-2025《网络安全技术 人工智能生成合成内容标识方法》(2025年2月28日発行、2025年9月1日実施)。確認に用いたのは法律事務所のサイトに掲載された標準本文の複写 — sidley.com(GB 45438-2025の複写PDF)
- 日本国(e-Gov法令検索) 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号、2025年6月4日公布、現行版の施行 2025年9月1日) — laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000053
- 内閣府 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)のページ — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_act/ai_act.html
- 内閣府 人工知能基本計画のページ(令和8年7月14日閣議決定、過去の計画:令和7年12月23日閣議決定) — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_plan/ai_plan.html
- 内閣府 『人工知能基本計画 ~日本AX、より強く、より豊かに~』(令和8年7月14日閣議決定) — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_plan/aiplan_20260714.pdf
- 内閣府 『人工知能基本計画』(令和7年12月23日閣議決定) — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_plan/aiplan_20251223.pdf
- 人工知能戦略本部(内閣府) 『人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針』(令和7年12月19日本部決定) — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_guideline/ai_gl_2025.pdf
- 内閣府 人工知能戦略本部のページ(構成) — www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_hq/ai_hq.html
- 総務省・経済産業省 『AI事業者ガイドライン(第1.2版)』(令和8年3月31日) — www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf
- 経済産業省 「AI事業者ガイドライン検討会」のページ(第1.0版〜第1.2版の公表日の一覧) — www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/index.html
15. 主張と出典の対応表(監査)
最終更新:2026年10月15日/出典は一次情報(連邦官報、ホワイトハウス、米国議会・各州議会の公式ページ、BIS・NISTの公式文書、中国のCAC・国務院・中国政府網、e-Gov法令検索、内閣府・総務省・経済産業省)に限定しています。 文書の段階の整理、素材・製造業との接点の読み取りは「解説」または「本稿の計算」として、出典付きの事実と区別しています。 大統領令の期限の履行、商務省の州法の評価の公表、改正サイバーセキュリティ法の条文の原文、NISTの部署名の変更の発表文、GB 45438-2025 の公式掲載ページは、確認できなかったため記載していません。 本記事は法的助言ではなく、特定の国・政権・企業を支持または批判するものではありません。係属中の手続きや今後の立法の結論は推測していません。 図2・3・4はベクター作図、図1・5はAI生成イメージ(未作成の枠)であり、いずれも実在の組織・文書を示すものではありません。

