COMPANY PROFILE / AI・機械学習
ブロードコム
― 顧客の仕様で作るAIチップ(XPU)とEthernetの網を握り、AIラックの金融まで手がけ始めたチップ企業
BroadcomはAI専業ではなく、半導体とインフラ向けソフトウェア(VMware)の2本立ての会社です。 そのうちAIに関わるのは、顧客(巨大クラウド事業者やフロンティアAIの開発会社)が自社の仕様で設計するカスタムAIアクセラレータ(XPU)と、データセンターをつなぐEthernetスイッチ・NIC・光接続の部分です。 会社は2026年度第3四半期(2026年8月2日終了)に、AI半導体の売上が167億US$(前年同期比221%増)と述べました。ただしこの数字は、10-Kなどの区分ではなく決算発表での経営陣の発言に現れるものです。 2026年6月以降は、AIラックの購入・リースを金融パートナーに引き受けてもらい、Broadcomが顧客の債務を保証する仕組み(AI XPVプラットフォーム)も始まりました。 本稿では、何を売っているか、売上がどこに偏っているか、新しい資金の仕組みが何を意味するかを、会社の提出書類と公式発表の範囲で整理します。確認日は2026年10月15日です。
- 30秒でわかるBroadcomと、AI・機械学習での立ち位置
- ロゴと社名の表記について
- AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか
- 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)
- AI・機械学習にかけているリソース
- これまでの取り組み
- 今後の計画
- この会社はAI・機械学習で何を目指しているか
- AI・機械学習分野の提携マッピング
- 提供している技術・製品・サービス
- この企業が抱えるリスク
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるブロードコムと、AI・機械学習での立ち位置
パロアルトファブレス。製造は外部に委託
Tomahawk 6ほかにEthernet NIC、PHY、光部品、PCIeスイッチ
Broadcomの「AI売上」は、10-Kや10-Qの決まった区分ではなく、決算発表での経営陣の発言として四半期ごとに示される数字です 事実。 10-K・10-Qには「カスタムAIアクセラレータとAIネットワーキングが半導体ソリューションの売上増を主導した」という記述はありますが、AI売上の金額や定義は書かれていません。 また、半導体ソリューションの売上のうち、FY2026第3四半期は1社の流通業者への直接販売が全社売上の50%を占め、最終顧客の上位5社で約55%に達しました 事実。 本稿では、数字がどこに書かれているかを区別しながら読みます。
2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は Broadcom Inc.、通称はBroadcomです(日本語では「ブロードコム」と書かれることもあります)。 過去に買収したBroadcom Corporationの技術・製品も統合されており、10-Kは自社の歴史をAT&T/ベル研究所、Lucent、Hewlett-Packardにさかのぼると説明しています。 Tomahawk(Ethernetスイッチ)、Thor(NIC)、Jericho(ルーター用チップ)、Davisson(共パッケージ光学)は製品名で、社名ではありません。
公式サイト:https://www.broadcom.com/3. AI・機械学習の世界で、この会社はどこにいるか
4. 会社の規模(AIに関わる部分に絞る)
BroadcomはAIに関わらない事業(無線、ブロードバンド、産業用、VMwareなどのインフラ向けソフトウェア)も大きいため、半導体ソリューション部門の数字を中心に示します。会計年度は10月末に最も近い日曜日に終わり、FY2025は2024年11月4日から2025年11月2日まで、FY2026は2026年11月1日に終わる予定です。数値は10-K・10-Qの記載です 事実。
| 指標(百万US$) | FY2024(〜2024年11月3日) | FY2025(〜2025年11月2日) |
|---|---|---|
| 売上高(全社) | 51,574 | 63,887 |
| 半導体ソリューション | 30,096 | 36,858 |
| インフラ向けソフトウェア | 21,478 | 27,029 |
| 半導体ソリューションの営業利益 | 16,759 | 21,232 |
| 研究開発費(全社) | 9,310 | 10,977 |
| 営業利益(全社) | 13,463 | 25,484 |
| FY2026(直近)の指標(百万US$) | 第3四半期(〜2026年8月2日) | 前年同期(〜2025年8月3日) | 3四半期累計 |
|---|---|---|---|
| 売上高(全社) | 29,591 | 15,952 | 71,089 |
| 半導体ソリューション | 20,839 | 9,166 | 48,363 |
| インフラ向けソフトウェア | 8,752 | 6,786 | 22,726 |
| 研究開発費(全社) | 2,895 | 3,050 | 8,855 |
| 営業利益(全社) | 15,955 | 5,887 | 35,306 |
10-Kは、半導体ソリューションの売上増の理由を「ネットワーキング製品、主にカスタムAIアクセラレータとAIネットワーキング製品の強い需要」と説明しています。AI関連の売上は、経営陣が決算発表で次のように述べています(経営陣の発言であり、10-K・10-Qの区分ではありません)。
| 決算発表(日付) | AI半導体売上の発言 | 前年同期比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| FY2025第4四半期(2025年12月11日) | 金額の記載なし | 74%増 | 第1四半期の見通しは82億US$(会社の見通し) |
| FY2026第1四半期(2026年3月4日) | 84億US$ | 106%増 | 第2四半期の見通しは107億US$ |
| FY2026第2四半期(2026年6月3日) | 108億US$ | 143%増 | 第3四半期の見通しは160億US$ |
| FY2026第3四半期(2026年9月2日) | 167億US$ | 221%増(前期比54%増) | 第4四半期の見通しは217億US$(236%増) |
上の「AI半導体売上」は経営陣の発言で、決算発表の本文や10-K・10-Qには、金額の定義(どの製品を含むか)の説明が確認できませんでした 事実。四捨五入された値でもあります。 参考として、第3四半期のAI半導体売上167億US$は、同四半期の半導体ソリューションの売上208億US$の約80%、全社売上296億US$の約56%にあたります(本稿の計算。四捨五入した値からの概算)本稿の計算。 なお、各「見通し」は会社の見通しで、未確定です(FY2026第4四半期は2026年11月1日に終わります)。今期の売上見通しは約348億US$、AI半導体売上は約217億US$と会社は述べています 未確定/将来。
5. AI・機械学習にかけているリソース
4点(人・金・外部への出資や買収・大学や公的機関との連携)について、10-K・10-Q・8-K・公式発表で確認できたかを表にします。
| リソースの種類 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 人 | 約33,000人(2025年11月2日)のうち約57%が研究開発職。地域は北米49%、アジア36%、欧州・中東・アフリカ15%。AI専任の人数は開示されていない | 事実 |
| 金:研究開発費 | FY2025は109.77億US$(売上の17%)、前年は93.10億US$。FY2026の3四半期累計は88.55億US$ | 事実 |
| 金:設備投資 | FY2025の有形固定資産の購入は6.23億US$(前年5.48億US$)。10-Kは、FY2026は増える見込みと記載(見込みは未確定) | 事実 |
| 金:購買コミットメント | 強制力のある無条件の購入コミットメントは、FY2025末の約1.3億US$から、2026年8月2日時点で約1,268億US$(主に在庫。残り期間1年以内のものは除く)へ。FY2027分が約527億US$、FY2028分が約730億US$ | 事実 |
| 金:負債 | FY2025末の借入残高は671.2億US$(10-K)。2026年度第3四半期に56.4億US$の社債を買い戻したと10-Qが記載 | 事実 |
| 外部への出資・買収 | FY2025にAI関連の事業買収は確認できなかった(キャッシュ・フロー計算書の事業買収は0)。過去にVMware(2023年)などを買収したが、AI専用の買収ではない | 確認できなかった |
| 顧客の債務の保証 | 2026年度第3四半期に、AIラックの購入と顧客へのリースを金融パートナーに引き受けてもらい、顧客のリース債務を5年間保証(バックストップ)。最大の負担額はラック全台の導入時で約290億US$。顧客は最大420億US$の転換社債を発行してBroadcomに渡せる権利があるが、2026年8月2日時点で発行はない | 事実 |
| AI XPVプラットフォーム | 金融パートナー(Apollo、Blackstoneのクレジット・保険部門が最初の出資者)と、2028年までに20ギガワット超の計算能力を可能にする枠組み。初回は350億US$で、Anthropicの1ギガワット超の拡張(Fluidstack系の施設で2026年半ばから)を支援(2026年6月9日) | 事実 |
| 大学・公的機関との連携 | 10-K・10-Q・公式発表で、大学との共同研究や公的資金(補助金)の受領は確認できなかった。業界団体(OCP、Ultra Ethernet Consortium)への関与は公式発表に記載がある | 確認できなかった |
主要な製品・契約の状況を、会社の資料で確認できた範囲で整理します(確認日 2026年10月15日)。
| 製品・契約 | 規模・内容 | 段階 | 日付 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| Tomahawk 6(Ethernetスイッチ) | 102.4Tbps。100G・200GのSerDes。スケールアップで512個のXPU、2段のスケールアウトで10万個超のXPU(Broadcom公称) | 量産出荷(会社の発表) | 2026年3月12日 | 出典14・15 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-now-shipping-worlds-first-1024-tbps-switch-production |
| Tomahawk 6 - Davisson(共パッケージ光学のスイッチ) | 102.4Tbps。6.4Tbpsの光エンジン16個。光接続の電力を従来のプラガブルより70%削減(Broadcom公称) | 出荷と発表。サンプルは先行顧客に提供中と記載 | 2025年10月8日。2026年10月のOCPで第3世代を展示予定 | 出典15・16 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-announces-tomahawkr-6-davisson-industrys-first-1024 |
| OpenAI向けカスタムAIアクセラレータ(10ギガワット) | OpenAIが設計し、Broadcomと共同開発・導入。ラックの導入は2026年後半に開始、2029年末までに完了を目標 | 基本合意書(term sheet)を締結。既存の共同開発・供給契約あり | 2025年10月13日 | 出典10 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/openai-and-broadcom-announce-strategic-collaboration-deploy-10 |
| Jalapeño(OpenAI初のAIチップ) | エンジニアリング・サンプルが研究所で稼働。多世代の計算基盤の最初の製品。初回の導入は2026年末までを予定 | サンプル稼働(会社の発表)。導入は計画 | 2026年6月24日 | 出典11 https://www.globenewswire.com/news-release/2026/06/24/3316887/19933/en/openai-and-broadcom-unveil-llm-optimized-intelligence-processor.html |
| Googleとのカスタムのテンソル処理ユニット(TPU) | 将来の世代のTPUの開発・供給の長期契約と、次世代のAIラック用のネットワーキング等の供給保証契約(2031年まで) | 契約 | 2026年4月6日 | 出典7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526144028/d87999d8k.htm |
| Metaとのカスタムシリコン(MTIA) | 初回のコミットは1ギガワット超で、複数ギガワットの展開の第1段階。2029年までの計画 | 契約(展開は予定) | 2026年4月14日 | 出典12 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-announces-extended-partnership-meta-deploy-technology |
| Anthropicへの計算能力の提供 | 2027年から、Google・Broadcom経由で約3.5ギガワットのTPU系の計算能力を利用。利用はAnthropicの事業の継続的な成功に左右される | 協業の拡大(8-K)。運営・金融パートナーと協議中 | 2026年4月6日 | 出典7 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526144028/d87999d8k.htm |
| Appleとのカスタム ASIC | 複数世代のApple製品向けに2031年まで開発・供給。AI用途とは明記されていない | 契約 | 2026年7月6日 | 出典9 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526295589/d84378d8k.htm |
ギガワットはデータセンターの電力規模で、チップの個数や売上額ではありません。「基本合意書」「計画」は、購入量や金額が確定したことを意味しません。
6. これまでの取り組み
| 時期 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 2023年11月 | VMwareの買収を完了(10-Kが記載) | インフラ向けソフトウェアを大きく拡大(AI専用ではない) |
| 2025年10月8日 | Tomahawk 6 - Davisson(共パッケージ光学)を発表 | 光接続を電力の面から見直す製品 |
| 2025年10月13日 | OpenAIと10ギガワットのカスタムAIアクセラレータの協業を発表 | ラックを含む導入計画。基本合意書の段階 |
| 2025年12月11日 | FY2025第4四半期の決算。AI半導体売上は前年同期比74%増と発言 | AI売上の伸びが全社の売上増を主導 |
| 2026年3月12日 | Tomahawk 6が量産出荷に入ったと発表 | サンプルから3四半期未満での量産と会社が説明 |
| 2026年4月6日 | Googleとの長期契約(2031年まで)とAnthropic向けの協業拡大を8-Kで開示 | 顧客名つきの大型契約の開示 |
| 2026年4月14日 | Metaとの協業の拡大を発表(MTIA、1ギガワット超) | 「業界初の2nm AIアクセラレータ」とBroadcomが主張 |
| 2026年6月9日 | Apollo、BlackstoneとAI XPVプラットフォームを設立(初回350億US$) | チップ会社が顧客の資金調達の仕組みに関与 |
| 2026年6月24日 | OpenAIとJalapeñoを発表(設計から製造用データの確定(テープアウト)まで9か月と説明) | 顧客設計のチップのサンプル稼働 |
| 2026年7月6日 | Appleとの長期契約(2031年まで)を8-Kで開示 | AI以外も含むカスタムASICの長期化 |
| 2026年9月2日 | FY2026第3四半期の決算。AI半導体売上は167億US$ | 第4四半期の見通しは217億US$ |
7. 今後の計画
会社はこれらを「見通し」「目標」として述べており、達成の事実ではありません 未確定/将来。10-Qは、AIラックの販売・リースのような新しい事業モデルが需要や利益率に影響しうること、顧客がデータセンターの電力や水の容量を過小評価すると納入に影響しうることを述べています。
次はいずれも会社の10-K・10-Q・8-K・公式発表で確認できませんでした 未確定/将来。 AI半導体売上の定義と製品別の内訳/顧客別のAI売上(10-Qの流通業者50%、最終顧客上位5社55%は匿名)/XPU・ネットワーク製品の価格と出荷個数/OpenAI・Meta・Anthropicとの契約金額/AI XPVプラットフォームの2回目以降の規模と時期。 報道で語られる顧客別の金額は本稿では採用しません。
8. この会社はAI・機械学習で何を目指しているか
ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| チップの供給にとどまらず、顧客の資金調達・導入の仕組みまで関与し始めている | AI XPVプラットフォーム(金融パートナーがラックを購入し、Broadcomが顧客のリース債務を保証)。10-Kは、XPUを使ったAIラックやシステムの販売・リースを新しい事業モデルとして挙げている | 推測 |
| 数社の大口顧客への依存が深まっている(顧客の偏りは本稿で確認できる事実) | FY2026第3四半期は流通業者1社が全社売上の50%、最終顧客上位5社が約55%(FY2025は約40%) | 事実 |
| AIの接続はEthernetを軸にする考え | OpenAIとの発表が「カスタム・アクセラレータとEthernetの組み合わせ」を強調。製品もスケールアップ用(Tomahawk Ultra)から光接続(Davisson)まで揃える | 推測 |
| 2029〜2031年までの長期契約で、複数世代の供給を確保しようとしている | Google(2031年まで)、Apple(2031年まで)、Meta(2029年まで)、OpenAI(2029年末まで)の契約・計画。契約の金額や条件は開示されていない | 推測 |
| 製造は外部委託に依存し続ける | 10-Kは、顧客のウェハーの約95%をTSMCが製造したと記載(2026年度の3四半期累計も約95%) | 事実 |
10-Qの「最近の動向」は、AI向けの需要は強いが、顧客が大きな資本を調達する必要があると述べ、続けてAI XPVプラットフォームで金融パートナーが資金を出し、必要な場合はBroadcomが残存価値保証を提供すると説明しています 事実。 実際に、顧客のリース債務への保証(最大約290億US$)と、顧客が発行できる転換社債(最大420億US$)が結ばれています。 本稿は、これを「AIの顧客の資金力が、チップの売上の速さを左右しうる、と会社が見ている」と読みます。ただし、会社はこれらの偶発債務を「発生の可能性が低い」と見ていると書いており、実際の損失の見通しは10-Qからは判断できません 未確定/将来。
9. AI・機械学習分野の提携マッピング
10. 提供している技術・製品・サービス
| 層 | 主な製品 | 10-K・公式資料の記述 |
|---|---|---|
| カスタムAIアクセラレータ(XPU) | 顧客の仕様のASIC。ロジック、HBM、SerDes、各種IPコアを先端パッケージで統合 | 10-Kは、ASICは顧客の仕様に合わせて作る製品で、巨大クラウド・フロンティアAI開発会社・システム統合会社向けと記載。ラックやシステムの形で提供する場合もある |
| Ethernetスイッチ | Tomahawk 6、Tomahawk Ultra、Jericho 4 | スケールアップ・スケールアウト・スケールアクロスの接続用(OCP発表) |
| NIC・PHY | Thor Ultra(800G)、Thor 2(400G)、DSPを使ったEthernetトランシーバー用チップ | AI向けのEthernet NIC。10-Kは、PHYは独自のDSP方式と説明 |
| 光接続 | 共パッケージ光学(TH6-Davisson)、光部品、レーザー | 光エンジンをスイッチと同じパッケージに載せる。TSMCのCOUPE技術を使用(Broadcom発表) |
| PCIeスイッチ | AI・非AI用 | サーバー内の接続(10-K) |
| AIラック・システム | XPUをもとにしたラック(OpenAI向けなど) | 販売・リースは新しい事業モデルと10-Kが位置づけ |
ネットワーク製品について、Broadcomの発表に載っている開発元の公称を整理します(確認日 2026年10月15日)。
| 製品(Broadcom公称) | 主な数値・特徴 | 発表日・段階 |
|---|---|---|
| Tomahawk 6 | スイッチ容量 102.4Tbps。100G・200GのSerDes。1チップで512個の200G、または1,024個の100GのSerDes。スケールアップで512個のXPU、2段のスケールアウトで10万個超(200Gbps/リンク) | 2026年3月12日に量産出荷 |
| Tomahawk 6 - Davisson | 第3世代の共パッケージ光学。6.4Tbpsの光エンジン16個、200Gbps/リンク。光接続の電力を従来のプラガブル光学より70%削減(3.5倍超の低減)と主張。IEEE 802.3に準拠 | 2025年10月8日。サンプルは先行顧客に提供中 |
| Meta向けMTIA | 「業界初の2nm AIアクセラレータ」とBroadcomが主張。初回のコミットは1ギガワット超 | 2026年4月14日。展開は計画 |
出典:Broadcomのプレスリリース。数値は開発元の公称で、測定条件・比較対象は各発表の記載によります。本稿は他社製品との比較や優劣を述べません。「業界初」「70%削減」はBroadcomの主張で、第三者による検証は本稿では確認していません。2025年10月8日の発表は、本文の冒頭で「出荷中」と書き、提供の節では「先行顧客へサンプル提供中」と書いており、記載が一致しない点があります。
カスタムチップの中身:10-Kは、カスタムシリコンの基盤として「ロジック、高帯域メモリ(HBM)、SerDes、各種IPコア、プロセッサコアを先端パッケージで統合する」と説明しています 事実。顧客の仕様で、チップの演算部分、メモリ、入出力をどう組み合わせるかが設計の中心になる、と読めます(本シリーズの「HBM」「チップレット」「CoWoS」「異種統合」を参照)。
製造の集中:製造委託したウェハーの約95%をTSMCが作ったと10-Kと10-Qに書かれています 事実。10-Qは、TSMCが他社を優先したり、価格を上げたりする可能性を述べています。材料の面では、メモリチップ、シリコンやガリウム砒素・リン化インジウムのウェハー、銅リードフレーム、貴金属・レアアースなどに依存すると10-Qが列挙しています。
光でつなぐ:TH6-Davissonは、光エンジンを基板上でスイッチチップと同じパッケージに載せ、TSMCのCOUPE技術で統合する構成とBroadcomは説明しています 事実。目的は、信号の損失と、プラガブル光学の製造・試験のばらつきを減らし、電力を下げることです。「電力を70%削減」はBroadcomの主張で、比較の条件は本稿では確認できていません(本シリーズの「Co-packaged Optics」「光トランシーバー」「光インターコネクトとSerDes」を参照)。
電力の単位で見る:BroadcomはXPUの導入を「ギガワット」で語り、AI XPVプラットフォームも「20ギガワット超」と表現します。AIの計算では、チップの数よりも、データセンターが受け入れられる電力が導入量の単位になっていることがうかがえます(本シリーズの「AIデータセンターの電力と冷却」を参照)。
11. この企業が抱えるリスク
| リスク | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 顧客の集中 | FY2026第3四半期は流通業者1社が売上の50%(3四半期累計46%、前年同期は32%・30%)。最終顧客の上位5社は約55%(3四半期累計約50%、前年同期は約40%)。10-Qは、上位5社のいずれかを失うか需要が大きく減ると重大な影響がありうるとする | 事実 |
| 新しい資金の仕組み | 顧客のリース債務の保証は最大約290億US$。顧客が最大420億US$の転換社債を発行できる。残存価値保証を提供する場合がある。10-Qは、これらは発生の可能性が低いと見ていると記載(会社の見方) | 事実 |
| 購買コミットメントの急増 | 無条件の購入コミットメントが約1,268億US$(FY2025末は約1.3億US$)。需要が想定より減れば在庫・費用に影響しうる | 事実 |
| 製造の集中 | ウェハーの約95%がTSMC。価格上昇や優先順位の変更の可能性を10-K・10-Qが記載 | 事実 |
| 設計案件のタイミング | カスタムAIアクセラレータなど、大型の設計案件の立ち上げが重なると、資源が逼迫する可能性(10-Q)。AIラックの販売・リースのような新しい事業モデルが、需要や利益率に影響しうる | 事実 |
| 規制・輸出管理 | 10-Qは、米国の輸出管理規則(EAR)や禁輸リストの追加が、売上・供給網・製造販売に影響を与えてきた/与えうると一般的に記載。FY2025の売上の17%は中国(香港を含む)への出荷・納入先。特定製品の規制による費用の計上は、本稿で確認した範囲では記載がない | 事実 |
| 調査・照会 | 10-Qは、韓国・日本・EUの規制当局による契約・事業慣行の調査・照会に関与してきたと記載。結論や金額は書かれていない。本稿は結果を推測しない | 事実 |
| 負債 | FY2025末の借入残高は671.2億US$。2026年6月に社債の公開買付け(キャッシュ・テンダーオファー)を実施したと8-Kが開示 | 事実 |
12. 用語集
- XPU
- GPU以外を含む、カスタムのAI処理チップの総称。Broadcomはこの設計・製造支援を行う。
- ASIC
- 特定の用途のために顧客の仕様で作る専用チップ。
- Ethernet
- データセンターで広く使われる通信方式。BroadcomはAIの接続にもEthernetを推す。
- スケールアップ/スケールアウト
- ラック内でチップをつなぐのがスケールアップ、ラック間・施設間でつなぐのがスケールアウト・スケールアクロス。
- SerDes
- チップ間で高速にデータを送るための入出力回路。
- 共パッケージ光学(CPO)
- 光の送受信部品を、スイッチチップと同じパッケージに載せる方式。
- バックストップ
- 顧客が支払いを滞らせたときに、Broadcomが一部を肩代わりする保証。
- ギガワット(GW)
- データセンターの電力規模の単位。チップの個数や売上額ではない。
- 基本合意書(term sheet)
- 主要な条件を書いた、法的に最終ではない合意書。
- 10-K/10-Q/8-K
- 米国SECに提出する年次報告書/四半期報告書/臨時報告書。
13. 出典
- Broadcom Form 10-K for the fiscal year ended November 2, 2025(米国SEC提出、2025年12月18日)。事業内容、セグメント別売上、顧客集中、従業員数、研究開発費、設備投資、製造委託、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000121/avgo-20251102.htm
- Broadcom Form 10-Q for the quarterly period ended August 2, 2026(米国SEC提出、2026年9月10日)。2026年度第3四半期と3四半期累計の売上、顧客集中、AI XPVプラットフォーム、AIラックに関する保証、コミットメント、リスク要因。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000080/avgo-20260802.htm
- Broadcom Broadcom Inc. Announces Third Quarter Fiscal Year 2026 Financial Results and Quarterly Dividend(Form 8-K 添付のプレスリリース、2026年9月2日)。第3四半期のAI半導体売上と第4四半期の見通し。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000076/avgo-08022026x8kxex99.htm
- Broadcom Broadcom Inc. Announces Second Quarter Fiscal Year 2026 Financial Results and Quarterly Dividend(Form 8-K 添付、2026年6月3日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000051/avgo-05032026x8kxex99.htm
- Broadcom Broadcom Inc. Announces First Quarter Fiscal Year 2026 Financial Results and Quarterly Dividend(Form 8-K 添付、2026年3月4日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016826000011/avgo-02012026x8kxex99.htm
- Broadcom Broadcom Inc. Announces Fourth Quarter and Fiscal Year 2025 Financial Results and Quarterly Dividend(Form 8-K 添付、2025年12月11日)。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000173016825000116/avgo-11022025x8kxex99.htm
- Broadcom Form 8-K(2026年4月6日提出)。Googleとのカスタムのテンソル処理ユニット(TPU)の長期契約と供給保証契約、Anthropicとの協業の拡大。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526144028/d87999d8k.htm
- Broadcom Form 8-K(2026年6月18日提出)。社債の現金公開買付け(テンダーオファー)の結果。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526275077/d149683d8k.htm
- Broadcom Form 8-K(2026年7月6日提出)。Appleとの、カスタムASICの開発・供給を2031年まで拡大する長期契約。 https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1730168/000119312526295589/d84378d8k.htm
- Broadcom/OpenAI OpenAI and Broadcom announce strategic collaboration to deploy 10 gigawatts of OpenAI-designed AI accelerators(共同プレスリリース、2025年10月13日。確認はブラウザで実施)。 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/openai-and-broadcom-announce-strategic-collaboration-deploy-10
- Broadcom/OpenAI OpenAI and Broadcom Unveil LLM-Optimized Intelligence Processor(共同プレスリリース、2026年6月24日。確認はブラウザで実施)。 https://www.globenewswire.com/news-release/2026/06/24/3316887/19933/en/openai-and-broadcom-unveil-llm-optimized-intelligence-processor.html
- Broadcom/Meta Broadcom Announces Extended Partnership with Meta to Deploy Technology to Support Multi-Gigawatts of Meta's Custom Silicon, MTIA(共同プレスリリース、2026年4月14日。確認はブラウザで実施)。 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-announces-extended-partnership-meta-deploy-technology
- Broadcom/Apollo/Blackstone Broadcom, Apollo, and Blackstone Establish Landmark Strategic Platform to Accelerate More Than 20 Gigawatts of Global AI Deployments(共同プレスリリース、2026年6月9日。Apolloのサイトに掲載された同文)。 https://www.apollo.com/insights-news/pressreleases/2026/06/broadcom--apollo--and-blackstone-establish-landmark-strategic-pl
- Broadcom Broadcom Now Shipping World's First 102.4 Tbps Switch in Production Volume(プレスリリース、2026年3月12日。確認はブラウザで実施)。 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-now-shipping-worlds-first-1024-tbps-switch-production
- Broadcom Broadcom Announces Tomahawk 6 - Davisson, the Industry's First 102.4-Tbps Ethernet Switch with Co-Packaged Optics(プレスリリース、2025年10月8日。確認はブラウザで実施)。 https://investors.broadcom.com/news-releases/news-release-details/broadcom-announces-tomahawkr-6-davisson-industrys-first-1024
- Broadcom Broadcom Redefines AI Infrastructure with Industry-Leading Networking Innovations at 2026 OCP Global Summit(プレスリリース、2026年10月8日。確認はブラウザで実施)。 https://www.globenewswire.com/news-release/2026/10/08/3377533/19933/en/broadcom-redefines-ai-infrastructure-with-industry-leading-networking-innovations-at-2026-ocp-global-summit.html
- Broadcom 公式サイト(ロゴ画像の取得元:https://www.broadcom.com/img/broadcom-logo.svg。確認日 2026年10月15日)。 https://www.broadcom.com/
14. 主張と出典の対応表
最終更新:2026年10月15日/Troy Technical
本稿の数値は、Broadcomが米国証券取引委員会(SEC)に提出した法定開示書類(10-K、10-Q、8-K、決算発表)と、同社および共同発表者の公式プレスリリースに基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。「AI半導体売上」は経営陣の発言で、10-K・10-Qの区分ではありません。製品の性能値はBroadcomの公称で、他社製品との優劣は述べていません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。
