人工葉デバイス|海水から水素製造と猛毒ヒドラジンの浄化を同時に行う性能

New Atlas シンガポール
概要
シンガポール南洋理工大学(NTU)の研究チームが、太陽光を用いて海水から水素を生成しながら、同時に工業廃水汚染物質である猛毒のヒドラジンを分解するデバイスを開発しました。このデバイスは外部電源なしで動作し、約30時間でヒドラジン濃度を0.5 Mから米国環境保護庁(EPA)の許容限界である10 ppbを大幅に下回る0.5 ppbまで低減させました。エネルギー効率の向上と環境浄化を同時に実現することで、エネルギー問題と汚染問題の双方を解決する画期的なアプローチとなります。
詳細

主要成果

南洋理工大学(NTU)の研究チームは、小型太陽電池、電解槽、および廃水処理システムを一体化した「人工葉」デバイスを開発しました。このデバイスは、太陽光を利用して海水からクリーンな燃料である水素を生成すると同時に、極めて毒性の高い工業汚染物質であるヒドラジンを分解・除去することが可能です。実証実験では、1平方センチメートルあたり毎時466 μmolの速度で水素を生成し、72時間以上にわたって安定した動作を維持しました。

技術・詳細

本デバイスの核心は、アノード(陽極)とカソード(陰極)の両方における革新的な設計にあります。

  • アノード(陽極): 従来の電解ではアノードで酸素が発生しますが、これには多大なエネルギーを要し、生成された酸素は廃棄される傾向にありました。本研究では、鉄、コバルト、クロムを含む特殊な触媒をアノードに採用し、酸素の代わりにヒドラジンを窒素ガスに分解させる設計としました。これにより、エネルギー消費を大幅に抑制しつつ、水素生成効率を向上させています。また、この触媒組成は耐食性に優れ、海水中の塩化物による電極の腐食や、有害な塩素化合物の生成を抑制します。
  • カソード(陰極): 外部電源を不要にするため、光を吸収して電気エネルギーに変換する半導体材料「鉛ハライドペロブスカイト」を採用しました。ペロブスカイトは水分や過酷な化学環境に弱いため、銀と銅の粒子を含む導電性エポキシ層とチタン箔で保護し、さらに水素生成を促進させるために薄い白金層でコーティングしています。

性能試験では、模擬海水および実際の海水にヒドラジンを添加し、晴天時の太陽光に相当する人工光を照射しました。その結果、外部電力なしで約25 mA/cm²という、鉛ベースのペロブスカイト光カソードとして最高水準の光電流密度を記録しました。また、光カソード面積を0.56から6.25平方センチメートルに拡大した大型モデルを用いた試験では、約30時間でヒドラジン濃度を0.5 M(重量比約1.6%)から0.5 ppbまで減少させました。

背景・業界の文脈

水素は工業原料やクリーン燃料として需要が高まっており、一般的に水電解によって製造されます。淡水は世界的に不足しているため、豊富な海水が代替原料として期待されていますが、海水に含まれる高濃度の塩化物が電極を腐蚀させ、有害な塩素化合物を生成することが大きな課題となっていました。本研究は、この腐食問題を回避しながら、同時に有害物質の除去という付加価値を付け加えた点に独創性があります。

今後の展望

本デバイスは、エネルギー生成と環境浄化という二つの課題を一つのシステムで解決するものです。研究チームは屋外でのテストも実施しており、工業廃水処理とクリーンエネルギー生産を統合した環境技術としての実用化が期待されます。

元記事: https://newatlas.com/energy/artificial-leaf-generates-hydrogen-removes-pollutants-seawater/

毎週の技術動向レポートを無料でお届け

各分野の分析レポートを読む価値があるかどうか一目で判断できるインフォグラフィックをメールで受け取れます。

📢 メールマガジンに無料登録(週刊・技術動向レポート)

ご登録いただくと、Troy-Technical から週刊で技術動向レポート(メールマガジン)をお届けします。

  • 取得したメールアドレス・選択分野は配信目的にのみ使用します。
  • 第三者へ提供することはありません。
  • 配信はいつでも解除できます(各メール下部のリンクから)。

詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。

登録は1分・いつでも解除できます

この記事は Troy-Technical が公開しています。素材メーカーで技術開発に携わってきた技術者が、個人で運営しているサイトです。
運営者について / お問い合わせ info@troy-technical.jp
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次