主要成果
量子科学技術研究開発機構(QST)、東北大学、および共同パートナーは、水素貯蔵合金の作製、水素吸収処理、組成分析、および性能評価までの一連のプロセスを統合し、自動化した実験システムを開発した。このシステムの導入により、1サンプルあたりの実験時間は従来の2〜3日から、わずか2〜3時間へと短縮された。また、最大10種類の異なる組成を持つサンプルを連続して処理できるため、研究者は各工程を個別に分断することなく、効率的に候補材料をテストすることが可能となった。
技術・詳細
本システムは、基板のロード、薄膜合金の堆積、水素吸収、組成分析、および水素放出試験を行う各チャンバーを、自動搬送ロボットで接続した構成となっている。具体的には、加熱時にサンプルが水素を放出する温度を測定し、水素を吸収したことが確認されたサンプルのみを放出試験に回すことで、不要な評価ステップを排除している。
技術的な最大の課題は、高真空下での合金堆積と、加圧下での水素吸収という相反する環境を組み合わせることだった。研究チームは、水素処理チャンバーの内部に独立した耐圧容器を配置することでこの問題を解決した。外側のチャンバーを高真空に維持したまま、内側の容器のみを加圧して水素処理を行う仕組みを実現している。
背景・業界の文脈
水素貯蔵合金は、構成金属原子の間に水素を吸収・保持し、必要に応じて放出させることで、水素を固体状態でコンパクトに貯蔵できる材料である。しかし、その性能は使用する元素や配合比率によって大きく変動する。また、従来の合金は重量やコストに制約があり、レアアースを含む希少金属に依存している点に課題があった。本開発には、自然科学研究機構の分子科学研究所のほか、R-DEC社およびAVC社が参画しており、JST(科学技術振興機構)のグリーン転換(GX)支援プログラム「GteX」の支援を受けて実施された。
今後の展望
今後は、得られた実験データを人工知能(AI)と連携させ、AIが先行結果に基づいて次の合金組成や実験条件を提案する「自律的な材料開発」への展開を計画している。これにより、レアメタルに依存しない軽量かつ高性能な水素貯蔵合金の探索を加速させる狙いだ。さらに、QSTの放射光研究と連携し、強力なX線を用いて水素の吸収・放出プロセスを直接観察し、その知見を材料設計にフィードバックさせる計画である。なお、本システムはR-DEC社によって商用化されており、2026年10月25日から仙台で開催される第19回材料-水素システム国際シンポジウムにおいて、10月26日に展示される予定となっている。
元記事: https://jp.ibtimes.com/qst-cuts-hydrogen-storage-alloy-experiments-days-2-3-hours-104919
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