INSTITUTION PROFILE / ドローン・ロボティクス
IFR(国際ロボット連盟)
― ロボットの「世界の数字」を毎年まとめる業界団体
IFRは、ロボットメーカー、各国の業界団体、研究機関が集まる非営利の国際団体です。 毎年秋に統計報告書「World Robotics」を公表し、「世界で何台のロボットが導入されたか」の基準データとして広く引用されます。 ただしIFRは規制や規格を決める機関ではありません。数字は、メーカーなどの報告をIFRが集計した団体の公表値です。 また、IFRのサービスロボット統計はドローンを原則として対象にしていません。 本稿では、IFRの数字をどこまで信頼でき、何を表していないかに絞って整理します。
- 30秒でわかるIFR
- どんな機関か ― 影響力の「型」
- ドローン・ロボティクスで何をしているか
- 影響力の範囲(権限と地域)
- 関わっている組織 ― 数字ができるまで
- 今後の見通し
- 用語集/出典/主張と出典の対応表
1. 30秒でわかるIFR
(20か国超)IFR自身の説明。事務局の職員数は確認できなかった
IFRの数字は「ロボットの普及の勢いを知るための基準データ」ですが、「事実そのもの」ではなく「団体の集計値」です。 産業用ロボットの統計は、世界のほぼすべての主要サプライヤーからの報告と、各国の業界団体のデータを集めたものです 事実。 IFRは、メーカーや業界団体の集まりであり、ロボットの普及を促す立場(政策を後押しする「アドボカシー」を活動に挙げている)でもあります 事実。 数字の大きさだけでなく、何を数えているか(設置台数か出荷台数か、どの種類のロボットか)を見て読む必要があります。
2. どんな機関か ― 影響力の「型」
ドローン・ロボティクスの記事に出てくる「機関」は、企業と違って自分では機体やロボットを作りません。 その代わりに、どういう経路で業界に影響を与えるかで4つの型に分けられます。
IFRは「場をつくる」型です。会員が集まって情報を交換し、統計を公表し、業界としての意見を発表します 事実。 ロボットの定義は、産業用ロボットについてはISOの定義にならっています(IFRのサイト)。 ISO/TC 299には、IFRが連絡組織(カテゴリーA)として載っていますが、規格を決めるのはISOの手続きです 事実。
3. ドローン・ロボティクスで何をしているか
IFRの主な仕事は、毎年の統計報告書「World Robotics」と、その公表です。2026年版は産業用ロボットが9月24日、サービスロボットが9月30日にプレスリリースで公表されました 事実。
| 項目 | IFRが公表した数字(World Robotics 2026) | 数字の意味・注意 |
|---|---|---|
| 産業用ロボット 2025年の設置台数 | 603,000台(前年比+11%)。年末の稼働台数は5.079百万台(+9%)で、初めて5百万台を超えた | 「稼働台数」は、世界で動いているロボットの推計。設置台数と稼働台数は別の指標 |
| 国別 | 中国354,000台(+20%、世界の設置の59%)、米国約38,500台(+12%)、日本36,219台(−19%)、韓国30,000台(−1%)、ドイツ25,000台未満(−8%) | 米国が日本を抜いて世界2位に。日本は3位 |
| 協働ロボット | 66,000台(産業用ロボット全体の11%)。伸び率は+7%で、統計を始めて初めて産業用ロボット全体の伸びを下回った | 協働ロボットは、人の近くで使うよう設計されたロボット |
| サービスロボット (専門用) | 約250,000台(+24%、IFRの標本の範囲)。うち運搬・物流が117,500台(47%) | 「IFRの標本」とある通り、世界の全数ではない |
| ヒューマノイド | 2025年にフルサイズ(140cm超)で約7,000台が販売された。IFRは「現在の用途の多くは限定的で、人の遠隔操作を要することが多い」と説明 | 販売台数は、自律して働いている台数ではない。IFR自身が安全規格や事業性の課題を挙げる |
| 医療・家庭用 | 手術ロボット8,400台(+57%)。家庭用などの消費者向けは約3,420万台(+37%) | 家庭用は掃除ロボットなどが中心で、産業用・専門用とは桁が違う |
※数字はすべてIFRの公表値(プレスリリースと会長報告)です。報告書本体は有料で、本稿は確認していません。中国以外の設置台数は約249,000台です(603,000−354,000。本稿の計算 本稿の計算)。
IFRの「サービスロボット」の統計は、空を飛ぶタイプ(ドローン)を原則として含めません。報告書の方法の説明に 「泳ぐ・潜るロボットは含むが、空中を移動するもの、つまりドローンは概して避ける。完全な自律などの特別な場合は考慮する」 という趣旨の記載があります 事実。 ドローンの機数や市場規模は、IFRではなく、各国の航空当局の登録数など別の一次情報を見る必要があります。 ロボット(地上・水中・手術・物流)の数字と、ドローンの数字を、同じ表に並べて比べないでください。
そのほかの活動は、次のとおりです(IFRの説明)事実。
- 国際シンポジウムISR(International Symposium on Robotics)の後援。1970年から続く産業用・サービスロボットの会議
- 研究を促す賞(IERA Award)、立場表明の文書(Position Papers)、記者会見とラウンドテーブル
- ロボットの普及を後押しする政策への働きかけ(アドボカシー)
4. 影響力の範囲(権限と地域)
| 観点 | IFRが持っているもの | 持っていないもの |
|---|---|---|
| 権限 | 統計の収集・集計・公表。統計に使う定義と分類の整備。業界としての意見(位置づけ文書)の発表 | 規制をつくる権限。規格を発行する権限(規格はISOなど)。ロボットやドローンの認証・許可 |
| 地域 | 産業用ロボットは約40か国のデータ。会員は20か国超にいる | 報告のない企業・国の完全な把握。ドローンの統計(原則対象外) |
| 強制力 | 会員のサプライヤーと各国の団体は、統計の提出が義務(IFR憲章)。ただし団体内部の義務で、法的拘束力ではない | 報告を出さない企業への強制。政府や企業に数字の利用を義務づける力 |
| 規模 | 直接の会員90超。企業別の数字は公表せず、国・産業・用途ごとの集計値だけを出す。4件未満の数字は非公開 | 事務局の職員数・予算額(本稿の確認範囲では公表を確認できなかった) |
(1) 設置か出荷か。報告書は「設置(installation)」を中心に数えますが、一部の企業・団体は「出荷(shipment)」で報告します。 (2) 報告に基づく数字。サプライヤーの自己申告と、各国団体のデータで突き合わせたものです。 (3) 小さな市場の欠落。4件未満の数字は非公開で「その他」にまとめられるため、表の合計が合わないことがあります。 (4) 中国のデータ。中国の統計は業界団体(CRIA)が、会員の統計だけを法的な要件の範囲で報告しています。 (5) 改訂。過去の数字は新しい情報で更新されることがあります。2026年版では地域の分類も改められ、全データが再処理されました。 事実
5. 関わっている組織 ― 数字ができるまで
World Roboticsの数字がどうつくられ、誰に使われるかを、IFRの公式資料に書かれている関係だけで描きます。
| 組織 | IFRの公式資料に書かれた関係 |
|---|---|
| 各国のロボット団体 | 2026年版の産業用ロボット統計は、北米のA3、スペインのAER、英国のBARA、中国のCRIA、デンマークのDIRA、日本のJARA、韓国のKAR、イタリアのSIRI、スウェーデンのSWIRA、台湾のTAIROAの支援を受ける |
| VDMA(ドイツ機械工業連盟) | World Roboticsの制作元はVDMA Services GmbH(フランクフルト)。販売はVDMA Verlagの通販サイト。IFRの役員にもVDMAの担当者が載る |
| Fraunhofer IPA | サービスロボットの報告書をIFR統計部門と共同で作成。IFRのサービスロボット委員会の議長(Werner Kraus)の所属 |
| ロボットメーカー | 役員のページに、ABB、FANUC、YASKAWA Europe、Teradyne Robotics、Stäubli、Schunk、COMAU、Estun、EFORT、PAL Roboticsなどの担当者が載る。個人の所属であり、各社の立場とは限らない |
| ISO/TC 299 | ISO側のページに、IFRが連絡組織(カテゴリーA)として載る(ISO解説を参照) |
6. 今後の見通し
| 読み取れること | 根拠となる一次情報 | 区分 |
|---|---|---|
| IFRの予測:産業用ロボットの設置台数は2026年に655,000台(+9%)、2029年に806,000台 | IFRのプレスリリース(2026年9月24日)。予測は団体のもので、実績ではない | 未確定/将来 |
| サービス・移動ロボット・ヒューマノイドの統計を扱うウェビナーが2026年10月30日に予定されている | IFR会長報告(2026年9月24日)。内容は未公表 | 未確定/将来 |
| 来年のWorld Roboticsも、秋(9月ごろ)に公表される可能性が高い | 2026年版が9月24日・30日に公表。「毎年公表される」とIFRが説明 | 推測 |
| ヒューマノイドは、今後も統計の独立した項目として扱われる可能性がある | 2026年版のサービスロボット報告書に、ヒューマノイドの特別章がある | 推測 |
7. 用語集
- 設置台数/稼働台数
- 設置台数はその年に新しく導入されたロボットの台数。稼働台数は年末時点で動いているロボットの推計。
- ロボット密度
- 製造業の従業員1万人あたりのロボットの稼働台数。自動化の度合いを比べる指標。
- 産業用ロボット(IFRの定義)
- ISOの定義に基づく「自動制御され、再プログラムでき、3軸以上で動かせる多目的のマニピュレーター」。
- サービスロボット(IFRの定義)
- 人や機器のために有用な作業をする、2軸以上で動くロボット。製造などの産業の自動化を除く。専門用(訓練を受けた人が使う)と消費者用に分かれる。
- 協働ロボット
- 人と同じ空間で働くよう設計されたロボット。
- RaaS(Robotics as a Service)
- ロボットを買うのではなく、サービスとして利用料で使う契約形態。
8. 出典
- IFR About IFR(1987年に非営利団体として設立、直接の会員90超・20か国超、目的と活動)。確認日2026年10月25日。 https://ifr.org/association
- IFR Key People(会長・副会長・各委員会の議長・各国団体の代表と所属)。 https://ifr.org/executive-board
- IFR About World Robotics(統計の収集方法、「政策担当者や報道が引用する」との説明)。 https://ifr.org/about-world-robotics/
- IFR World Robotics – Industrial Robots(対象国約40か国、データ収集、ロボット密度)。 https://ifr.org/wr-industrial-robots/
- IFR World Robotics – Service Robots(サービスロボットの定義、Fraunhofer IPAとの共同作成)。 https://ifr.org/wr-service-robots/
- IFR Five Million Robots now Operate in Factories Globally(2026年9月24日。産業用ロボットの国別の設置台数、予測)。 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/five-million-robots-now-operate-in-factories-globally
- IFR Global Sales of Professional Service Robots Surge 24%(2026年9月30日。サービスロボット、ヒューマノイド、医療、消費者向け)。 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/global-sales-of-professional-service-robots-surge-24-percent
- IFR President’s Report by Jane Heffner(2026年9月24日。設置台数603,000台、稼働台数5.079百万台、協働ロボット、2026年10月30日のウェビナー)。 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/presidents-report-by-jane-heffner-3-2026
- IFR World Robotics 2026 Industrial Robots – Sources & Methods(データの出どころ、統計提出の義務、品質、非公開の規則、中国のデータ、データの改訂)。 https://ifr.org/img/worldrobotics/Sources___Methods_WR_2026_-_Industrial_Robots.pdf
- IFR World Robotics 2026 Service Robots – Sources & Methods(サービスロボットの定義、ドローンを原則避けるとの記載)。 https://ifr.org/img/worldrobotics/Sources___Methods_WR_2026_-_Service_Robots.pdf
- IFR Compliance(企業別データの非公開、4件未満の非公開)。 https://ifr.org/compliance
- IFR IFRのトップページ(産業用・サービスロボットの定義、シンポジウムISR、位置づけ文書)。 https://ifr.org/
- ISO ISO/TC 299 Robotics(連絡組織の一覧にIFRがカテゴリーAとして載る)。 https://www.iso.org/committee/5915511.html
9. 主張と出典の対応表
| 本文の主張 | 区分 | 出典 |
|---|---|---|
| 1987年に非営利団体として設立、直接の会員90超・20か国超、アドボカシーを活動に含む | 事実 | 出典1 https://ifr.org/association |
| 役員・委員会議長の所属(ABB、FANUC、YASKAWA Europe、Teradyne Robotics、Fraunhofer IPA、VDMAなど) | 事実 | 出典2 https://ifr.org/executive-board |
| 統計は政策担当者・報道・研究者が引用するとのIFRの説明、統計の収集方法 | 事実 | 出典3 https://ifr.org/about-world-robotics/ |
| 産業用ロボット統計は約40か国、ほぼすべてのサプライヤーからの報告 | 事実 | 出典4 https://ifr.org/wr-industrial-robots/ |
| サービスロボットの定義、Fraunhofer IPAとの共同作成 | 事実 | 出典5 https://ifr.org/wr-service-robots/ |
| 2025年の国別の設置台数(中国354,000台など)、2026年・2029年の予測 | 事実 | 出典6 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/five-million-robots-now-operate-in-factories-globally |
| 専門用サービスロボット約250,000台、運搬・物流117,500台、ヒューマノイド約7,000台、手術ロボット8,400台、消費者向け約3,420万台 | 事実 | 出典7 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/global-sales-of-professional-service-robots-surge-24-percent |
| 設置台数603,000台、稼働台数5.079百万台、協働ロボット66,000台、サービスロボットが「IFRの標本」であること、10月30日のウェビナー | 事実 | 出典8 https://ifr.org/ifr-press-releases/news/presidents-report-by-jane-heffner-3-2026 |
| データの出どころ(各国団体)、統計提出の義務、設置と出荷の違い、中国のデータ、改訂と分類の変更、制作元VDMA Services | 事実 | 出典9 https://ifr.org/img/worldrobotics/Sources___Methods_WR_2026_-_Industrial_Robots.pdf |
| サービスロボット統計はドローン(空中の移動)を原則避けること | 事実 | 出典10 https://ifr.org/img/worldrobotics/Sources___Methods_WR_2026_-_Service_Robots.pdf |
| 企業別データの非公開、4件未満の非公開 | 事実 | 出典11 https://ifr.org/compliance |
| 産業用・サービスロボットの定義、シンポジウムISR(1970年から)、位置づけ文書 | 事実 | 出典12 https://ifr.org/ |
| IFRがISO/TC 299の連絡組織(カテゴリーA)であること | 事実 | 出典13 https://www.iso.org/committee/5915511.html |
| 機関の4つの型の区分、図2の「使い手」3区分、中国以外の設置台数(603,000−354,000) | 本稿の計算 | 本稿による整理(出典3、6、8に基づく) |
| 事務局の職員数・予算額、ドローンの統計 | 未確定/将来 | 出典1〜12に記載なし。本稿では推定しない |
| 第6章の見通し2項目(次回の公表時期、ヒューマノイドの扱い) | 推測 | 出典3、6、7の公表時期と特別章の記載からの本稿の解釈 |
最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の数値はIFRの公式サイトとプレスリリースに基づくIFRの公表値です。報告書本体(有料)は確認していません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈です。
