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安川電機 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

安川電機(YASKAWA)
― モータからロボットまでを自社で作り、自律型AIロボット「MOTOMAN NEXT」でフィジカルAIに挑む

安川電機は、溶接・塗装・搬送をする産業用ロボット「MOTOMAN」と、その関節を動かすサーボモータを作る会社です。2026年2月期の有価証券報告書によると、ロボットセグメントの売上は2,470億円(連結売上収益の45.6%、本稿の計算)、営業利益は204億円で、前期より増収・減益でした。会社は新しい中期経営計画「Dash 35」で、フィジカルAI市場の開拓を第一の基本方針に掲げ、自律型のAIロボット「MOTOMAN NEXT」と、人型ロボット向けの部品(アクチュエータ)の開発に取り組んでいます。本稿は、会社全体ではなくロボットに関わる部分に絞り、何を売り、どこまで数字が開示され、フィジカルAIの取り組みのうち何が会社の説明で何が未確定かを整理します。安川電機の公式サイトは本稿の作成時に停止中のため、EDINETの有価証券報告書と米国子会社のサイトを中心にしています。確認日は2026年10月25日です。

構成:株式会社安川電機の有価証券報告書(第108期・第110期。EDINET)と、米国子会社Yaskawa Americaの公式ページを一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかる安川電機と、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(ロボット事業に絞って)
  5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかる安川電機と、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称株式会社安川電機英文名 YASKAWA Electric Corporation
本社日本・福岡県
北九州市
八幡西区黒崎城石2番1号
上場東京証券取引所プライム市場
福岡証券取引所
有価証券報告書の記載。決算期は2月
この分野での区分産業・専門ロボット(主)
部品・基盤ソフト(従)
従はサーボモータなどの基幹部品。区分は本稿による
ロボットの売上2,470億円2026年2月期。連結売上収益の45.6%(本稿の計算)
ロボットの営業利益204億円2026年2月期。前期比14.0%減(会社の説明では大口案件の影響)
ロボットの従業員4,728人2026年2月28日現在。連結従業員の37.9%(本稿の計算)
物理AIの中心製品MOTOMAN NEXT自律型のAIロボット。会社の説明
まず押さえるべき1点

安川電機は、工場で溶接・塗装・搬送をする産業用ロボット「MOTOMAN(モートマン)」の会社で、同じ会社がロボットの関節を動かすサーボモータ(正確に回すモータ)なども作っています。有価証券報告書は、会社を「モーションコントロール」「ロボット」「システムエンジニアリング」「その他」の4つのセグメントに分けて開示しており、ロボットだけの売上・営業利益・研究開発費・設備投資・従業員数が分かる点が特徴です 事実。

もう1つの注目点は、自律型のAIロボット「MOTOMAN NEXT」です。会社は中期経営計画「Dash 35」で「フィジカルAI市場の開拓」を第一の基本方針に掲げています 事実。人型ロボット(ヒューマノイド)については、完成した人型ロボットを売る記載は確認できず、関節の部品である「アクチュエータ」の開発に着手したという記載です。本稿では、何を売り、どこまで数字が開示され、AIロボットの取り組みのうち何が会社の説明で何が未確定かを読みます。

本稿の確認方法について

安川電機の公式サイト(日本・グローバル)は、2026年10月21日夜からPHPの脆弱性対応のために停止しており、本稿の作成時(確認日 2026年10月25日)は製品ページ・IRページを参照できませんでした 事実。そのため本稿は、EDINETの有価証券報告書(国の開示システムの公開PDF)と、安川グループの米国子会社(Yaskawa America)の公式サイトで確認できた範囲で書いています。日本の公式サイトの発表だけに載っている内容は、確認できていません。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「株式会社安川電機」、英文名は YASKAWA Electric Corporationです。ロボットのブランド名は MOTOMAN(モートマン)で、米国の子会社 Yaskawa America, Inc.(ブランドサイト motoman.com を運営)と、欧州の Yaskawa Europe は本体の子会社です(有価証券報告書では「米国安川」「欧州安川」)。ソフトバンク、JA全農(全国農業協同組合連合会)、アステラス製薬などの提携先は、別の会社・組織です。

ロゴ画像の取得元:https://www.motoman.com/getmedia/5e47d6cf-7f6f-4672-a051-970568a8379d/YASKAWA-Logo-Blue.svg.aspx

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

この分野の会社は、何を作って誰に売るかで4つに分けると分かりやすくなります。安川電機は「産業・専門ロボット」(工場の腕型ロボット)を主力にし、ロボットの中のモータや制御装置などの部品も自社で作って売る点で、「部品・基盤ソフト」にも足がかかっています。

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 安川電機は「産業・専門ロボット」が主、サーボなどの「部品」が従(本稿の整理) ロボットは連結売上収益の45.6%(2026年2月期)。モータからロボットまでの一貫生産を進める(会社の説明)
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、安川電機の位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。安川電機の分類は本稿の整理で、ロボットの売上は有価証券報告書の記載に基づきます。「弱点」の行は類型全体の一般的な傾向であり、安川電機個社の評価ではありません。
安川電機のロボットセグメントの売上収益(億円) 有価証券報告書のセグメント情報(外部顧客への売上収益)。2024年2月期〜2026年2月期。他のセグメントは含めない 2,347億円 2024年2月期 2,374億円 2025年2月期 2,470億円 2026年2月期 営業利益(セグメント):251億円/238億円/204億円。2026年2月期は前期比14.0%減(有価証券報告書)
図解 2026年2月期のロボットセグメントは増収(前期比4.0%増)・減益(営業利益は14.0%減)でした(有価証券報告書の記載)。売上は同社の公表値で、市場全体の統計や調査会社の推計ではありません。

4. 会社の規模(ロボット事業に絞って)

安川電機はロボットのほか、サーボやインバータなどの「モーションコントロール」、鉄鋼プラント向けの「システムエンジニアリング」も手がけますが、本稿ではロボットに絞ります。数値は有価証券報告書のとおりです(単位:百万円)事実。

指標(単位:百万円)2024年2月期2025年2月期2026年2月期
連結売上収益(全社)575,658537,682542,122
連結営業利益(全社)66,22550,15647,307
ロボットセグメントの売上収益(外部顧客)234,680237,413247,012
ロボットセグメントの営業利益25,14923,75120,418
ロボットの売上の構成比(本稿の計算)40.8%44.2%45.6%
ロボットの営業利益率(本稿の計算)10.7%10.0%8.3%
ロボット分野の研究開発費4,661確認していない6,522
ロボットの設備投資額15,428確認していない19,799

ロボットの構成比は「ロボットセグメントの外部顧客への売上収益 ÷ 連結売上収益」、営業利益率は「セグメント営業利益 ÷ 外部顧客への売上収益」で、いずれも本稿の計算です 本稿の計算。2025年2月期の研究開発費・設備投資額は、本稿で参照した2期分の有価証券報告書に含まれないため確認していません。

従業員(2026年2月28日現在)人数備考
ロボットセグメント4,728臨時従業員は別に335人(年間平均)。前年度末比157人減(事業の効率化と会社が説明)
連結全体12,483臨時従業員は別に1,879人
提出会社(安川電機本体)のロボット909提出会社全体は3,114人
ここで注意

ロボットの数字はセグメント情報で、会社が割り振った区分です。ロボットのための部品(サーボモータなど)がモーションコントロールの売上に入っている可能性があり、「ロボットに関わる売上」の全体ではありません(割り振りの詳細は確認できなかった) 未確定/将来。また、これは安川電機自身のロボット販売額で、世界のロボット市場におけるシェアではありません。

5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース

4つの観点(人・金・外部との関係・研究機関との連携)を、有価証券報告書と公式資料で確認できたか/できなかったかで整理します。「記載なし」も確認の結果です。

観点確認できた内容区分
人ロボットセグメントの従業員4,728人(2026年2月末)、2024年2月末は4,808人。国内外のロボット製造拠点は、国内(北九州市八幡西区・福岡県中間市など)、米国オハイオ州、ドイツ・バイエルン州事実
金ロボット分野の研究開発費65億22百万円、ロボットの設備投資額197億99百万円(2026年2月期)。中期経営計画「Dash 35」は2026〜2029年度の累計で2,500億円の投資計画(全社。ロボット分は非公表)事実/非公表
工場・拠点モータとロボットの一貫生産を行う「ロボット第5工場」(八幡西事業所)が竣工し、2026年度に稼働予定。米国では、本社・技術開発拠点・産業用ロボットの生産工場等を集約する新キャンパスを発表事実/未確定/将来
外部への出資・買収・合弁東京ロボティクス株式会社の株式を100%取得(取得時期・金額は有価証券報告書では確認できなかった)。アステラス製薬との合弁でセラファ・バイオサイエンス株式会社を設立(再生医療等製品の製造プラットフォーム)。磁性材料メーカーの煙台東星磁性材料(中国)は2024年10月に一部を譲渡し、議決権比率29.9%から19.9%へ(持分法適用から除外)事実/確認できず
大学・研究機関東京科学大学の「YASKAWA未来技術共同研究講座」(超軽量アクチュエータ)、九州工業大学(次世代ロボットの共同開発)、九州大学(広い範囲の連携)。JA全農とスマート農業。NEDO・経済産業省などの公的プログラムは、今回確認した資料では記載を確認できなかった事実/確認できず
研究開発拠点安川テクノロジーセンタ(YTC)で、基礎技術から量産試作までを集約。YTC内のローカル5Gを使った産業用ロボットの遠隔制御の研究事実

主要なロボット・製品の状況(会社の公式資料で確認できた範囲)

性能値は安川電機の公称値です。他社の機体との比較や優劣はつけません。日本の公式サイトの製品ページは確認できなかったため、有価証券報告書の記載と米国子会社のページに基づきます。確認日は2026年10月25日です。

名称(種別)主な仕様・内容(会社の説明)実績・承認の状況段階と日付出典
MOTOMAN NEXT(自律型AIロボットのシリーズ)ロボット自身が環境を認識・判断して作業を実行する。サービス(経路計画、力制御、画像処理、AI推論)をACUで実行。シミュレータ「YNX」、開発キットを提供自律人協働ロボット「MOTOMAN NEXT-NHC12」が日刊工業新聞社の「2025年第68回十大新製品賞」を受賞(会社の記載)。導入台数・導入先は確認できなかった提供(米国サイトに製品ページ)。2025年12月の国際ロボット展で展示出典1・3
MOTOMAN-GP280L/GP360(大型ロボット)可搬質量280kg・360kg、ロングリーチ。自動車の製造工程の省スペース化を目的とする導入実績は確認できなかった開発(2026年2月期に開発と記載)出典1
MOTOMAN-GP10(小型ロボット)可搬質量10kg。省スペースと軽量さを保ちつつ動作領域と可搬重量を拡大導入実績は確認できなかった開発(2026年2月期に開発と記載)出典1
まほろ(バイオ向け双腕ロボット)バイオ分野の実験を自動化する双腕ロボット。会社は「プラットフォーマーとしての導入拡大」を2026年度の方針に記載導入台数は確認できなかった提供中(導入を拡大する方針)出典1
きゅうり収穫作業ロボットJA全農との協業開発。葉かき作業に加え、収穫機能を備える農業現場での稼働を開始(2025年度、会社の記載)。台数・面積は確認できなかった稼働開始(2025年度)出典1
ヒューマノイド向けアクチュエータ東京ロボティクス(100%取得)の知見を活用し、新しいアクチュエータの開発に着手完成した人型ロボットの販売の記載は確認できなかった開発着手(2026年2月期)出典1
この表で確認できなかったこと

ロボットの累計出荷台数、シェア、各機種の価格、導入先・稼働時間、安全規格の認証の範囲は、今回確認した資料には記載がありませんでした 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1994年米国のモートマン社と欧州のロボテック社に追加出資し、経営権を取得ロボットの海外販売・システム製造の拠点を確保
2010年6月米国安川とモートマン社、欧州安川とモートマンロボテック社をそれぞれ統合米国・欧州でのロボット事業を本体の子会社に一本化
2024年10月31日煙台東星磁性材料の株式の一部を譲渡(議決権29.9%→19.9%)前期に株式売却益と再評価益267億77百万円を計上(会社の記載)
2025年度(2025年3月〜2026年2月)ロボット第5工場が竣工。米国の新キャンパス構想を発表。JA全農との「きゅうり収穫作業ロボット」が農業現場で稼働開始。アステラス製薬との合弁会社を設立有価証券報告書の「2025年度の主な取り組み」
2025年12月国際ロボット展(iREX)でMOTOMAN NEXTの活用事例を提案。ソフトバンクとのAI-RANを使ったフィジカルAIの協業を開始し、オフィス向けロボットのユースケースを共同開発・実演会社の記載。共同開発の範囲・金額は確認できなかった
2026年5月25日第110期の有価証券報告書を提出。中期経営計画「Dash 35」(2026〜2029年度)を開始前の計画「Realize 25」の総括

7. 今後の計画

安川電機は有価証券報告書で、中期経営計画「Dash 35」と2026年度の重点項目を示しています。目標・計画は会社のもので、達成の事実ではありません 未確定/将来。

中期経営計画Dash 35
(2026〜2029年度)
営業利益1,000億円(過去最高)を目指す。会社全体の目標
投資計画累計2,500億円2026〜2029年度。工場再編・内製化・自動化など。全社
基本方針1フィジカルAI市場の開拓MOTOMAN NEXTの適用拡大と、進化型アクチュエータによるヒューマノイド市場の開拓
ロボット第5工場2026年度に稼働予定モータからロボットまでの一貫生産。稼働の確認はできなかった

2026年度は、AI・半導体関連分野の旺盛な需要を背景に、増収増益を計画しています(会社の計画)。ロボットでは、自動車でOEMとTier(供給網の階層)の投資を確実に取り込むこと、食品・医療など、これまでロボットの導入が限られていた分野への展開が示されています。フィジカルAIを、会社は「当社製品とAIを融合させることで、これまで自動化が困難であった領域でのユースケースを具現化するもの」と定義しています。

確認できなかったこと

ロボットだけの売上目標・台数目標・利益目標、第5工場の生産能力、米国新キャンパスの時期・投資額、ヒューマノイド向けアクチュエータの量産時期・販売先は、今回の資料に記載がありませんでした 未確定/将来。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここには会社が直接は述べていない部分が含まれます。一次資料から読み取れる範囲の推測を、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次資料区分
強みを、モータ・制御装置などの基幹部品から自社で持つ一貫体制に置いている有価証券報告書:モータとロボットの一貫生産を行うロボット第5工場、主要部品の内製化を進める方針、AIロボットでも基幹部品のラインナップ強化を掲げる推測
フィジカルAIを、ロボット本体だけでなく、エッジAI計算機とソフトを含む「プラットフォーム」として提供しようとしている米国サイト:ACU、サービス群、開発キット(Docker・gRPC)、シミュレータを提供し、第三者のモデルも動かせると説明推測
自動車向けへの依存を下げ、一般産業・食品・医療・農業へ広げようとしている有価証券報告書:2026年2月期は自動車向けの設備投資が日本・米州・欧州で軟調。食品・医療など導入が限定的だった分野への取組みを方針に記載事実/推測
人型ロボットへは、完成機ではなく関節部品(アクチュエータ)の側から入ろうとしている有価証券報告書:「進化型アクチュエータをはじめとする基幹部品を通じて」ヒューマノイドを含む市場を開拓、新しいアクチュエータの開発に着手。完成した人型ロボットの販売の記載は確認できなかった推測
2026年2月期のロボットは、大口案件の影響で売上が増えても利益が減った有価証券報告書:中国・アジアで大口案件の売上があった一方、営業利益は大口案件の付加価値の影響で減益事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

有価証券報告書は、ヒューマノイドロボットについて、東京ロボティクスの知見を使って「新しいアクチュエータの開発に着手した」と書き、計画では「進化型アクチュエータ…を通じて、ヒューマノイドロボットを含む多様なフィジカルAI市場の開拓に取り組む」としています 事実。ここから、安川電機が人型ロボット本体ではなく、人型ロボットの関節に使う部品を売る立場も視野に入れていると読めます 推測。同社は、サーボモータとロボットを一貫して作る会社であり、関節を動かす小型・軽量・高出力のアクチュエータは、その延長にあるからです。ただし、販売先・量産時期・価格は記載がなく、確認できませんでした 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

安川電機を中心としたロボット分野の関係 有価証券報告書・公式ページに記載のある関係のみ。報道だけの関係は含まない(確認日 2026年10月25日) 安川電機 ロボット事業 ソフトバンク AI-RANを使うフィジカルAI協業 JA全農 きゅうり収穫ロボットを協業開発 アステラス製薬 再生医療の製造基盤の合弁 NVIDIA(互換性) Isaac Sim・cuMotionに対応 東京ロボティクス 100%取得。関節部品の開発 煙台東星磁性材料 磁性材料メーカー。議決権19.9% 大学(東京科学大・九工大ほか) 超軽量アクチュエータ等の共同研究 共同開発・共同研究 出資・買収・合弁 ツールの互換性
図2 出典:有価証券報告書(第110期)、米国子会社の公式ページ。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけで、報道で語られる関係は含めていません。NVIDIAは、米国子会社のページがシミュレータの対応ツールとして挙げているもので、共同開発や取引の契約は確認できませんでした。提携の範囲(金額・期間・役割)の多くは記載がありません。

ソフトバンクとの協業は、有価証券報告書に「2025年12月に協業を開始し、オフィス向けロボットのユースケースを共同開発して国際ロボット展で実演した」とあります 事実。契約の形態・金額・期間は記載がありません 未確定/将来。東京ロボティクスは、有価証券報告書に「当社が株式の100%を取得した」とある会社で、取得の時期は確認できませんでした 未確定/将来。

10. 提供している技術・製品・サービス

有価証券報告書が挙げるロボットの製品は、アーク溶接、スポット溶接、塗装、ハンドリング、シーリング・切断、バリ取り・研磨、半導体・液晶製造装置用のクリーン・真空搬送の各ロボット、AIロボット、人協働ロボット、バイオメディカル用途のロボット、周辺機器、ロボット応用のFAシステム、セルシミュレータです 事実。

自律型AIロボット「MOTOMAN NEXT」の構成 米国子会社の公式ページの説明をもとにした本稿の図解(会社の説明であり、独立した検証ではない) 利用者のアプリ Dockerコンテナで動く ROS 2・OpenCVなど の部品も使える ACU(自律制御ユニット) 経路計画・力制御・画像処理 ・AI推論の各サービスを ロボット側で実行 ロボット本体(NEX) 高慣性のサーボモータを 使うと会社は説明 (条件は記載なし) gRPCで各サービスを呼ぶ 動作指令を実行 ACU:Autonomous Control Unit。AI処理を外部のPCに頼らず、ロボット側(エッジ)で行う(会社の説明)
図解 「MOTOMAN NEXT」は、ロボットの中で考える部分(ACU)と動く部分を一体にして、AIの処理をロボット側で行う構成だと会社は説明しています。
区分内容(会社の説明)用語の説明
産業用ロボット(MOTOMAN)溶接・塗装・搬送・組立など。米国サイトの製品一覧では、可搬質量・リーチ・用途で機種を検索できる決められた作業を繰り返す腕型の機械
自律型AIロボット(MOTOMAN NEXT)ロボット自身が環境を認識・判断。ACU上で経路計画・力制御・画像処理・AI推論のサービスを実行力制御:触った感覚に近い力の調整をする機能
シミュレータ(YNX)仮想の作業セルをつくり、AIの動作を事前に検証。NVIDIA Isaac Simなどのツールとも併用できると説明デジタルツイン:現実の機械を仮想空間に再現して試す技術
開発キット(ACU SDK)利用者がDockerコンテナのアプリをACU上で動かせる。ROS 2・OpenCV・TensorFlowなどの部品も使えると説明オープン化の入口。旧来の独自環境(MotoPlus)に代わるものとの説明
国際規格の案内米国サイトは、産業用ロボットの安全規格(ISO 10218: 2025にもとづく米国規格 ANSI/A3 R15.06-2025)を2027年3月31日以降の設置システムに使うべきと案内安全規格は製品ごとの認証とは別。認証の範囲は今回確認できなかった
素材技術者の視点:モータの磁石と、軽くて強いアクチュエータ

ロボットの関節を動かすサーボモータは、強い磁石を使うのが一般的です(一般論)。安川電機は、磁性材料メーカーの煙台東星磁性材料に出資しており(議決権19.9%、2026年2月末の帳簿価額305億49百万円)、有価証券報告書は「グローバルにおけるレアアース関連規制に対しては、国内サプライヤーとの長期的な関係性構築を通じ、調達リスクの低減に取り組む」と書いています 事実。ただし、同社の磁性材料がどのモータに使われているかは、有価証券報告書では確認できませんでした 未確定/将来。

東京科学大学との共同研究は、超軽量人協働ロボットの実現を目標にした超軽量アクチュエータです。軽くするには、構造材料と減速機(回転の速さを落として力を増やす機構)の両方を見直す必要があります(一般論)。米国サイトは、NEXシリーズのロボットが高慣性のサーボモータを使うと説明していますが、具体的な材料・方式は記載がありません。本シリーズの技術解説「永久磁石とレアアース」「関節アクチュエータ」「減速機とギア」「ロボット・ドローンの構造材料」とあわせて読むと分かりやすくなります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
自動車向けの投資の弱さ2026年2月期は、日本・米州・欧州で自動車関連の設備投資が軟調。ロボットの主力市場として自動車を挙げており、OEMとTierの投資の動向に左右される事実
利益率の低下ロボットの営業利益は前期比14.0%減。営業利益率は10.0%から8.3%(本稿の計算)。会社は大口案件の付加価値の影響と説明事実
地政学・輸出規制・関税各国の輸出規制の拡大、技術移転制限、関税の引き上げなどが、開発・生産・物流・営業を制限する可能性事実
原材料・部品の調達鋼材などの原材料や部品を多数の取引先からグローバルに調達。国際情勢の変化で必要量の確保が難しくなる可能性。レアアース関連規制への対応も記載事実
為替米ドル・ユーロ・人民元などでの販売・調達。想定以上の為替変動が競争力と業績に影響する可能性事実
工場・OTのサイバーリスク工場の制御環境を重要な経営資産とし、サイバー攻撃や設備の不正操作への備えを進めている事実
物理AIの収益化導入台数・売上は非公表。ヒューマノイド向けアクチュエータは開発着手の段階未確定/将来
外部サイトの停止2026年10月21日夜から公式サイトが停止中(PHPの脆弱性対応)。被害は確認されていないと会社は発表。製品情報の入手性に影響事実

12. 用語集

産業用ロボット
工場で溶接・塗装・搬送などを自動で行う腕型のロボット。
MOTOMAN(モートマン)
安川電機のロボットのブランド名。
サーボモータ
位置や速度を正確に制御できるモータ。ロボットの関節を動かす。
可搬質量(ペイロード)
ロボットの手先が持てる最大の重さ。
アクチュエータ
電気などのエネルギーを動きに変える部品。ロボットの関節の中核。
ヒューマノイド
人の形をしたロボット。
フィジカルAI
AIが現実の物を見て判断し、動かす技術。会社は独自の定義を示している。
エッジAI
クラウドではなく、現場の機器の近くでAIの処理をすること。
ACU
Autonomous Control Unit。MOTOMAN NEXTの自律制御ユニット。
Docker
アプリを他の環境と分けて動かすための仕組み(コンテナ)。
gRPC
プログラム同士が通信するための方式。
AI-RAN
携帯電話の基地局とAIの計算を組み合わせる通信の考え方。
セグメント
会社が事業を分けて業績を開示する区分。
持分法適用関連会社
出資比率が20〜50%前後で影響力のある会社。利益を持分に応じて取り込む。
有価証券報告書
日本の上場会社が国に提出する年次報告書。EDINETで公開される。
上方のカメラが箱内の部品を捉え、アームがつかむ用途の概念です。認識した位置を動作へ変換し、つかめたかを確認するまでが一連の作業になります。
図3 ImageGen生成の概念画像。上方のカメラが箱内の部品を捉え、アームがつかむ用途の概念です。認識した位置を動作へ変換し、つかめたかを確認するまでが一連の作業になります。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. 株式会社安川電機 有価証券報告書 第110期(2025年3月1日〜2026年2月28日)。関東財務局提出(2026年5月25日)。EDINETの公開PDF。セグメント別の売上・利益・研究開発費・設備投資・従業員、中期経営計画、研究開発、リスク、関連会社。 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
  2. 株式会社安川電機 有価証券報告書 第108期(2023年3月1日〜2024年2月29日)。関東財務局提出(2024年5月30日)。EDINETの公開PDF。ロボットセグメントの前々期の数値。 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TJ0G.pdf
  3. Yaskawa America, Inc. Physical AI(Motoman NEXTの製品ページ、英語。安川グループの米国子会社の公式サイト。確認日 2026年10月25日)。NEXT のサービス、ACU、シミュレータ、開発キット。 https://www.motoman.com/en-us/products/physical-ai
  4. Yaskawa America, Inc. Industrial Robots(産業用ロボットの製品一覧、英語。確認日 2026年10月25日)。 https://www.motoman.com/en-us/products/robots/industrial
  5. 株式会社安川電機 公式サイト(www.yaskawa.co.jp)に掲示された「ウェブサイト停止のお知らせ」(2026年10月22日掲載)。PHPの脆弱性対応のため2026年10月21日夜から停止。本稿の作成時、日本の公式サイトの製品ページ・IRページは参照できなかった。 https://www.yaskawa.co.jp/
  6. Yaskawa America, Inc. 公式ロゴ画像(YASKAWA-Logo-Blue.svg。ロゴ画像の取得元。確認日 2026年10月25日)。 https://www.motoman.com/getmedia/5e47d6cf-7f6f-4672-a051-970568a8379d/YASKAWA-Logo-Blue.svg.aspx

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本店所在地、英文名、上場市場事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
連結売上収益・営業利益(2024〜2026年2月期)事実出典1・2 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TJ0G.pdf
ロボットセグメントの売上・営業利益(2024〜2026年2月期)事実出典1・2 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TJ0G.pdf
ロボット分野の研究開発費、ロボットの設備投資額事実出典1・2 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TJ0G.pdf
従業員数(ロボット4,728人、連結12,483人、提出会社のロボット909人)事実出典1・2 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100TJ0G.pdf
2026年2月期のロボットの動向(自動車向け軟調、中国・アジアで大口案件)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
中期経営計画「Dash 35」(営業利益1,000億円、投資計画累計2,500億円、フィジカルAIの基本方針)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
2026年度の重点項目、増収増益の計画、ロボット第5工場の稼働予定事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
MOTOMAN NEXT-NHC12の受賞、iREX 2025、ソフトバンクとの協業事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
MOTOMAN-GP280L/360・GP10の開発、まほろ、きゅうり収穫作業ロボット事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
東京ロボティクスの100%取得とアクチュエータ開発の着手事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
アステラス製薬との合弁、煙台東星磁性材料の一部譲渡(議決権29.9%→19.9%)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
大学・JA全農との共同研究、YTC、ローカル5Gの研究事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
MOTOMAN NEXTのACU・サービス・シミュレータ・開発キットの説明事実出典3 https://www.motoman.com/en-us/products/physical-ai
産業用ロボット製品一覧と安全規格の案内事実出典4 https://www.motoman.com/en-us/products/robots/industrial
公式サイトの停止(2026年10月21日夜から)事実出典5 https://www.yaskawa.co.jp/
1994年・2010年の海外ロボット子会社の経緯事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
ロボットの累計出荷台数・導入先・認証の範囲・価格未確定/将来今回の資料に記載なし。本稿では推定しない
ソフトバンクとの協業の形態・金額・期間、東京ロボティクスの取得時期・金額未確定/将来出典1 有価証券報告書に記載なし。本稿では推定しない https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
モータ・ロボットの一貫生産体制が強みという読み推測出典1 有価証券報告書の記述からの本稿の解釈 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
フィジカルAIをプラットフォームとして提供するという読み推測出典3 米国サイトの記述からの本稿の解釈 https://www.motoman.com/en-us/products/physical-ai
人型ロボットへは関節部品の側から入るという読み推測出典1 有価証券報告書の記述からの本稿の解釈 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100Y69H.pdf
企業の4類型の区分(産業・専門ロボット、部品・基盤ソフト)、構成比・営業利益率の計算本稿の計算本稿による整理と計算。企業名は本シリーズの企業から例示

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべて株式会社安川電機の有価証券報告書(EDINET)と、安川グループの公式サイトの記載に基づきます。調査会社の市場推計・報道ベースの数値は使用していません。性能値や受賞は会社の記載で、独立した検証ではありません。「推測」と記した箇所は、一次資料から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は投資・購入の助言ではありません。