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フィジカル・インテリジェンス 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

フィジカル・インテリジェンス
― ロボットの「頭脳」にあたるAIモデルだけを作り、さまざまなロボットに載せることを目指す会社

ロボットは、腕や指といった体(ハードウェア)と、それを動かす頭脳(ソフトウェア)でできています。 Physical Intelligence(フィジカル・インテリジェンス、以下PI)は、このうち頭脳だけを作る会社です。 公式サイトは、自社を「あらゆるロボットを、あらゆる作業のために制御するモデルを作るための、学習アルゴリズムを開発する集団」と説明しています。 本稿では、どんなモデルを出し、何が公開され、誰が使い、何がまだ確認できないかを、会社自身の公式ブログ・モデルカード・論文・GitHubだけを根拠に整理します。

構成:公式ブログ・モデルカード・arXiv論文・GitHub を一次情報として使用/確認日 2026年10月25日/非上場のため財務は「非公表」と記載

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるPhysical Intelligenceと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模
  5. ロボットにかけているリソース(人・金・出資・大学連携、モデルの状況)
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるフィジカル・インテリジェンスと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称Physical Intelligence公式サイトの表記は「Physical Intelligence (π)」。法人格の表記は公式資料で確認できなかった
拠点米国サンフランシスコ採用ページに「ミッション地区のオフィス」とある
上場非上場公式資料に上場の記載なし。財務は非公表
この分野での区分主:ヒューマノイド・物理AI
従:部品・基盤ソフト
ロボット本体ではなく、動かすモデルを作る
主なモデルπ0 → π0.5 → π0.6 → π0.7π0.7は2026年4月16日の発表
公開しているものπ0・π0-FAST・π0.5の重みとコードGitHubのopenpi。リポジトリはApache License 2.0
外部への提供Pi API(ベータ)2026年10月13日に発表。申し込み制
売上・調達額非公表公式資料に金額の記載なし
まず押さえるべき1点

ロボットの会社と聞くと「人型ロボットを作って売る会社」を思い浮かべがちですが、PIは違います。 公式の説明では、目標はあらゆるロボットを、あらゆる作業のために制御するモデル(ロボット基盤モデル)を作ることです。ロボット本体の製造・販売は、公式資料で確認できませんでした 事実。 基盤モデルとは、ChatGPTのような大規模AIのように、大量のデータで一度学習しておき、あとから少ないデータで目的に合わせて調整して使える土台のAIのことです。 PIのモデルは、言葉と画像を理解したうえで、ロボットの関節への指令(動作)まで出力します(こうしたモデルをVLA〔Vision-Language-Action model、視覚・言語・行動モデル〕と呼びます)。 つまり同社は、「AIの頭脳」を、他社のロボットに使ってもらう立場を取ろうとしています。 本稿では、会社の説明を事実として扱うのは、公式資料に書かれている範囲だけにとどめます。

2. ロゴと社名の表記について

Physical Intelligence

表記の注意:社名は英文で Physical Intelligence。公式サイトの題名には「(π)」が付き、モデル名の頭文字「π」(パイ)に由来する表記と考えられますが、由来の説明は確認できませんでした。 モデル名は π0(パイ・ゼロ)、π0.5、π0.6、π*0.6(星付き)、π0.7 と書き、会社名とは別のものです。 公式サイトで確認できた画像は、ブラウザのタブに出る小さなアイコン(48×48ピクセル)だけでした。ロゴとして十分な画像は見つからなかったため、ここでは文字表記にしています。

公式サイト:https://www.pi.website/

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 Physical Intelligence は左端と右端にまたがる:ロボットを動かすAIモデルを作る会社 ロボット本体の製造・販売は確認できず、モデルを公開(openpi)と API(ベータ)で外部に提供している
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、Physical Intelligenceの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。主たる類型は左端(物理AI)、従たる類型は右端(基盤ソフト)です。同社が自社でロボットを製造・販売していることは、公式資料では確認できませんでした。

ここで言う「ヒューマノイド・物理AI」は、人型ロボットや、ロボットを学習で動かすAIを作る会社の区分です。 物理AI(フィジカルAI)とは、画面の中だけでなく、現実の物を動かす(物理世界で働く)AIのことです。 PIはこの区分の中でも、体を作らず頭脳に専念する点が、人型ロボットを作る会社(本シリーズの Figure AI など)と違います。 同時に、モデルを他社に提供する点では「部品・基盤ソフト」の性格もあります。本稿はこの2つを主・従として分けています 本稿の計算。

4. 会社の規模

非上場のため、売上や従業員数を法的に開示する義務はなく、公式資料にも載っていません。確認できたことと、できなかったことを分けて示します 事実。

項目確認できた内容区分
拠点サンフランシスコのミッション地区にオフィスがある(採用ページの記載)事実
従業員数非公表。参考として、π0.7のブログの著者欄には87人の名前が並ぶが、これは従業員数ではない(外部の協力者を含むかどうかも書かれていない)事実
設立年公式資料で確認できなかった確認できず
売上非公表事実
資金調達額公式資料に金額の記載なし。公式サイトは、Bond、Jeff Bezos、Khosla Ventures、Lux Capital、OpenAI、Redpoint Ventures、Sequoia Capital、CapitalG、Thrive Capital への謝辞を掲げている(出資の額・時期は書かれていない)事実
米国SECへの提出書類EDGAR全文検索(Form D)に、同社自身の提出は見つからなかった。ただし社名の表記違いや別名義の可能性があるため、「存在しない」とは断定しない確認できず
ここで注意

報道では資金調達額や会社の評価額が語られることがありますが、本稿は会社の公式発表または規制当局への提出書類で確認できたものだけを扱う方針のため、採用していません。 また本稿は、会社の価値や将来性についての投資判断を述べるものではありません。

5. ロボットにかけているリソース

「人・金・外部への出資・大学や公的機関との連携」の4点を、一次情報で確認できたかどうかで整理します。「記載なし」も調査の成果です。

リソースの種類内容区分
人サンフランシスコの拠点で、研究・ハードウェア・機械学習・ソフトウェア・事業・運営などの職種を募集している(採用ページ)。人数は非公表事実
金研究開発費・設備投資・資金調達額は非公表。支援者として名前を挙げているのは公式サイトの謝辞のみ事実
外部への出資・買収・合弁公式資料に記載なし確認できず
大学・研究機関・公的機関との連携組織としての共同研究契約や、NASA・DARPA・NSFなど公的機関のプログラムへの参加は、公式資料に記載なし。openpi公開時のブログには、外部の研究者がカナダ・モントリオール大学、ワシントン大学、KAISTなどの環境でモデルを動かした例が載っている(個人の協力で、組織間の契約かは書かれていない)確認できず(個別の協力例は事実)
ロボット(ハードウェア)自社の実験用ロボットのほか、UR5e、Franka、ALOHAなど市販・研究用のロボットでモデルを評価している。ロボット自体の製造・販売は確認できなかった事実

主要なモデル・サービスの状況(確認日 2026年10月25日)

名称種別主要な仕様(会社の公表)導入・運用の実績規制上の承認段階・日付
π0VLAモデル約30億パラメータのVLMを土台に、フローマッチングで動作を出力。自社の複数ロボットのデータとOpen X-Embodiment等で学習(出典:ブログ・論文)洗濯物たたみ、机の片づけ、箱の組み立てなどを自社環境で評価該当なし(ソフトウェア。承認の記載は確認できず)発表・重みを公開。2024年10月31日/公開は2025年2月4日
π0-FASTVLAモデル動作を離散的な記号に変換する「FASTトークナイザー」を使う方式。ブログは、学習が従来の約5倍速いとし、推論の費用はπ0の約4〜5倍と述べている(会社の経験値)公開チェックポイントあり該当なし2025年1月16日(方式)/2月4日(公開)
π0.5VLAモデル多様なデータの共同学習で、見たことのない家での片づけを行う。openpiの基礎モデルは10,000時間超のロボットデータで事前学習(README)新しい家のキッチン・寝室での片づけを評価(自社評価)該当なし発表2025年4月22日/重みの公開は2025年9月(README)
π0.6VLAモデルGemma 3 4B と SigLIP(約4億)から開始、アクションエキスパートは約8.6億パラメータ。H100 1枚で動作チャンク1つに63ミリ秒(除去5ステップ、カメラ3台)評価は微調整なしの「そのまま」の条件(モデルカード)該当なし発表。2025年11月17日。openpiのREADMEが挙げる公開モデルには含まれていない
π*0.6π0.6を強化学習で改善したモデル経験から学ぶ方式「Recap」。一部の難しい作業でスループットが2倍超、失敗率が2分の1以下になったと会社が説明エスプレッソ作り(午前5:30〜午後11:30と説明)、洗濯物50点、工場での箱59個の組み立て(会社の実演)該当なし発表。2025年11月17日
π0.7VLAモデル多様な指示(言葉、目標画像、戦略など)に従う。微調整した専門モデルと同程度の性能を1つのモデルで出せたと会社が説明UR5eの2本腕で、その機体の学習データがない洗濯たたみを実施。成功率は、初めて同じ作業をする熟練の遠隔操作者(経験は平均375時間)と同程度と会社が説明該当なし発表。2026年4月16日。論文PDFあり
Pi APIクラウドサービスデータのアップロード、微調整(会社が運用する計算資源)、微調整後のモデルのホスト型推論早期利用企業の例が公式ブログに掲載(下の第9章)該当なしベータ。2026年10月13日発表。参加は申し込み制

この表の数値は、会社が自社のロボット・自社の課題で評価した結果です。ロボットの種類、作業、評価の方法が行ごとに違うため、行どうしの数字を並べて優劣を判断することはできません。 「実演」の動画や説明は会社の主張で、第三者が同じ条件で再現した結果は、公式資料では確認できませんでした。

素材技術者の視点:PIの「素材」はデータと、洗濯物という柔らかい素材

PIはモデルを作る会社で、ロボット部品の材料は自社の製品ではありません。ただ、材料の目で公式資料を読むと、扱う対象に「柔らかく形が変わる素材」が多いことに気づきます 事実。 協力企業Weaveの文章には、洗濯物は「変形しやすく、サイズ・生地・色・形がばらばら」で、少しでも角がずれると仕上がりが変わる、と書かれています。 布の摩擦、厚み、伸びやすさといった素材の性質の違いは、ロボットの手先(指の表面材料や触覚センサー)とモデルの両方の難しさになります。 本シリーズの技術解説「ロボットハンドと把持」「触覚センサーと電子皮膚」も合わせて読むと、体と頭脳の分担が見えてきます。

逆に、PIの資料にはグリッパーの素材や指先の材料の説明がありません(確認できませんでした)。モデルの性能は、手先の素材設計とセットで決まるはずですが、その分担は公開資料からは分かりません 未確定/将来。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
2024年10月31日π0を発表。VLMにフローマッチングの動作出力を加えた汎用ロボットモデル同社の最初の汎用モデル
2025年1月16日動作を記号化する方式「FAST」を発表学習を速くする工夫
2025年2月4日π0とπ0-FASTの重みとコードを公開(openpi)外部の研究者が自分のロボットで試せる状態にした。会社は「うまくいかない場合もある実験」と注意書きを付けている
2025年4月22日π0.5を発表。見たことのない家で片づけを行う特定の環境ではなく、新しい環境への一般化が焦点
2025年5月28日〜6月9日VLM部分の知識を壊さず動作を学ぶ方法(Knowledge Insulation)と、遅延の中でも動作をなめらかにつなぐ方法(Real-Time Chunking)を公開学習と実行の工夫
2025年9月openpiにπ0.5とPyTorch版を追加(README)公開範囲の拡大
2025年11月17日π0.6のモデルカードとπ*0.6(強化学習のRecap)を発表成功率と作業速度を上げる段階へ
2025年12月16日・22日人の動画からロボットへの知識の移りを分析。外部の研究者が提案した「Robot Olympics」の課題をπ0.6の微調整で試し、5分野中3分野で「金」、2分野で「銀」の初期的な解決と報告平均の成功率52%、作業の進み具合72%と会社は説明。課題ごとにばらつきがある
2026年2月24日WeaveとUltraの導入事例を掲載他社のロボットで動いている例の提示
2026年3月3日・19日10分を超える作業のための記憶の仕組み(MEM)と、短時間で精密作業を上達させるRL Tokenを公開長い作業と精密な作業への対応
2026年4月16日π0.7を発表新しい指示への組み合わせ能力を強調
2026年10月13日Pi APIのベータを発表モデルを外部に提供する形に踏み出した

これらの日付は、会社のブログの公開日です。ブログ上の説明は、会社自身が選んだ作業・条件での結果であり、独立した第三者による検証ではない点にご注意ください。

モデルの世代と、各世代で会社が強調した点 π0 π0.5 π0.6 / π*0.6 π0.7 2024年10月発表 2025年4月発表 2025年11月発表 2026年4月発表 複数のロボットで 器用な作業を行う 最初の汎用モデル 見たことのない家で 片づけを行う 新環境への一般化 実際にやって 経験から学ぶ 速さと成功率 技能を組み合わせて 新しい指示に応える 指示の出し方の拡張 各世代の説明は、会社のブログと論文の要約です。評価の条件がそれぞれ違うため、世代間の数字の比較はしていません。 発表日は会社のブログの公開日です(確認日 2026年10月25日)。
図解 モデルの世代と、各世代の焦点。会社のブログの要約 本稿の計算

7. 今後の計画

Pi APIベータ中一般提供の時期・料金は確認できず
最新モデルの提供順次提供する計画「最新のモデルへのアクセスを提供し続ける計画」と会社が記載
π0.6・π0.7の重み公開の予定は確認できずopenpiのREADMEの対象はπ0・π0-FAST・π0.5
研究の方向推論して計画を修正するモデルπ0.7のブログが「将来の可能性」として記述

会社は、APIについて「PIはAPIを支えるモデルを素早く更新でき、最新で最も高性能なモデルへのアクセスを提供し続ける計画だ」と書いています 未確定/将来。 またπ0.7のブログの末尾では、将来、モデルが可能な方法を「考え抜き」、結果を振り返って計画を直す、という方向の可能性に触れています 未確定/将来。 いずれも計画や展望であり、達成された事実ではありません。

確認できなかったこと

次はいずれも公式資料に記載がありません 未確定/将来。

APIの料金/一般提供の日程/API利用企業の数や売上/自社ロボットの製造や販売の計画/π0.6以降の重みの公開予定/資金調達の額と時期。「いつまでに何台」といった数字は報道ベースのものがあっても本稿では採用しません。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここは会社が直接には述べていない部分を含みます。一次情報から読み取れる範囲の推測として、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次情報区分
目標はロボットの販売ではなく、ロボットに載せる「知能の層」の提供「The Physical Intelligence Layer」の記事が、基盤モデルを「誰でも使える準備済みの知能の層」と位置づけ、APIで提供する構想を述べている。自社ロボットの販売の記載はない事実(会社の説明)
当面の外部提供の柱はAPIになる可能性が高い2026年10月13日にAPIのベータを発表し、アップロード→微調整→推論までの流れをまとめて提供するとしている。料金や収益の記載はない推測
導入先での運用が、次のモデルのデータ源にもなっているUltraの節に「人による介入が、次のモデルを改善するデータを生み続ける」とある。WeaveやUltraの自社データを事前学習に加えた比較も載る推測
関心は「何でもできる」から「実用の品質(速さ・成功率)」へ広がっているπ0.5は新環境への一般化、π*0.6は速度と成功率、π0.7は1つのモデルでその両方を狙う、という各ブログの記述の順序推測
ネットワークに頼るクラウド推論には、現場での課題があるAPIのブログが、一部の利用者でネットワーク接続の課題があったと明記している事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

「導入先の運用が次のデータ源にもなる」という読みの根拠は、Ultraが自社で書いた節にあります。 Ultraは倉庫の梱包ロボットについて、「モデルが失敗したときは人による介入の仕組みが入り、正しさを保つ。同時にそれが次のモデルを改善する新しいデータを生み続ける」と述べています 事実。 さらに「Ultraのデータを事前学習に加えた」条件では、梱包のスループット(1時間あたりの個数)がさらに上がったと報告されています。 このことから、PIにとって導入先は顧客であると同時にデータの提供元でもある可能性がある、と本稿は読みます。 ただしPIがどの契約でデータを受け取っているかは、公式資料では確認できませんでした 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

Physical Intelligence を中心とした提携・提供の関係 同社の公式ブログに名前が出ている関係のみ。報道ベースの関係は含まない(2026年10月25日時点) Physical Intelligence Weave 洗濯物たたみのロボット Ultra 倉庫の梱包ロボット Actor 自律ホイールローダー Hugging Face openpiのPyTorch版 API早期利用企業 Almond、Chef Roboticsほか 外部の研究者 openpiの重みとコード 公式サイトが謝辞を述べている支援者(Sequoia Capital ほか) 共同開発・導入 部品・技術の供給 出資・買収
図2 Physical Intelligence を中心とした提携・提供の関係。出典:同社の公式ブログ(The Physical Intelligence Layer、Open Sourcing π0、Pi APIベータ)。図に含めたのは公式ブログに名前がある関係だけで、報道で語られる取引先は含めていません。「API早期利用企業」は、ブログに早期利用企業として列挙された企業の一部(Almond、Chef Robotics など)で、各社の関係の深さは同じではありません。
相手関係の内容(公式ブログの記載)注意
Weave家庭向けロボットの会社。サンフランシスコのコインランドリーで洗濯物をたたむ。π0.5 → π0.6 で自律の割合が上がり、Weaveのデータを事前学習に加えると、つかみ損ねが42%、介入が50%減ったと説明Weave自身が書いた節。遠隔の専門家が介入する運用
Ultra倉庫の梱包ロボット。π0.6で、1シフト分の梱包を自律96.4%で行ったと説明Ultra自身が書いた節。人の介入の仕組みを併用
Actor自律の重機。商用の現場で、運転席に人が乗らない自律ホイールローダーが土砂をダンプトラックに積み込む例APIのブログに掲載。動画での紹介で、台数・時間は書かれていない
Hugging FaceopenpiのPyTorch版を用意したopenpi公開時のブログの記載
API早期利用企業Almond、Argon Robotics、Chef Robotics ほか、ブログに列挙された企業が、少数に限ったAPIの早期利用に参加。AlmondはAxolで、4日間の反復で得たモデルで部品のバリ取りを実演ブログに列挙された名前。各社の使い方は同じではなく、会社の紹介の範囲
外部の研究者openpiの重みとコードで自分のロボットを動かした研究者のデモが掲載された個人の協力で、契約関係は書かれていない

10. 提供している技術・製品・サービス

PIの「製品」は、ロボットではなくモデルと、その作り方です。公式ブログと論文で確認できる主な要素を、やさしく説明します 事実。

VLA(視覚・言語・行動モデル)の流れ:π0.6 の例 カメラ画像(最大4枚) 言葉の指示 関節の状態 VLM 画像と言葉を理解する SigLIP(約4億)+ Gemma 3 4B から開始 アクションエキスパート 動作の値を作る部分 約8.6億パラメータ フローマッチング方式 動作チャンク 短時間分の動きを まとめて出力 → ロボットの関節へ 単一のH100 GPUで、除去5ステップ・カメラ3台の条件で、動作チャンク1つに63ミリ秒(会社の測定値) π0.6 のモデルカードの概略を、本稿が簡略化した図です。細部(高レベルの副課題予測など)は省いています。
図解 VLAモデルの流れ(π0.6のモデルカードを本稿が簡略化)本稿の計算
要素やさしい説明公式資料での位置づけ
VLA(視覚・言語・行動モデル)カメラ画像と言葉の指示から、ロボットの動きを直接出力するAIπ0以降の基本形。言語モデルの知識を土台にする
アクションエキスパート言語を扱う部分とは別に、動作の連続した値を作る専用の部分π0.6では約8.6億パラメータ(モデルカード)
FAST動きを文字のような記号に変える方式。学習が速くなる論文あり(arXiv 2501.09747)
Knowledge Insulation動作の学習が、言語モデルが持つ知識を壊さないように、勾配の流れを分ける工夫論文あり(arXiv 2505.23705)。π0.6で採用とモデルカードに記載
Real-Time Chunking計算の遅れがあっても、動きをなめらかにつなぐ方法論文あり(arXiv 2506.07339)
Recap(強化学習)デモの模倣に加え、人の修正と自分の試行から学ぶ。「やってみて上達する」π*0.6で適用。論文あり(arXiv 2511.14759)
RL Token・MEM短時間で精密作業を上げる方法/10分を超える作業のための記憶2026年3月に公開。公式の研究ページで説明
よくある誤解:「デモ動画が成功している=実用できる」ではない

PIのブログの動画は印象的ですが、会社自身が示す数字には、成功しない場合も含まれています。 たとえばRobot Olympicsの課題では、平均の成功率は52%、作業の進み具合は72%とされ、会社も「方針が一貫しない場合がある」と書いています。 また導入先の例でも、人による遠隔の介入を併用して品質を保っています。 実用では、成功率の数字、止まったときの対応、人の介入の頻度が大切になります。 動画は「できる場合がある」ことの例で、「いつでもできる」ことの証明ではない、と読んでください。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
評価が会社自身のもの公式資料の評価は、自社のロボット・自社の課題で行われている。独立した第三者の検証は、公式資料では確認できなかった事実
現場での安定性導入先の例でも人の介入を併用している。API利用でもネットワーク接続の課題が起きた例が明記されている事実
最新モデルの入手経路が限られる公開リポジトリの対象はπ0・π0-FAST・π0.5で、π0.6・π0.7の重みは含まれていない。最新モデルを使うにはAPI(ベータ、申し込み制)が前提になる事実
外部から継続性を確かめにくい売上・調達額・人員が非公表で、事業の持続性を外部の資料から確かめる手段がない未確定/将来
データの確保会社自身が、ロボットのデータはウェブ上の文章のようには集まらないと述べている。データの集め方が性能を左右する事実
同種のモデルが他にもあるロボット基盤モデルは他社も開発している(本シリーズの NVIDIA の記事など)。本稿は優劣を比べない推測

12. 用語集

基盤モデル
大量のデータで事前に学習し、あとから少量のデータで目的に合わせて調整して使う土台のAI。
VLM
画像と言葉を一緒に扱うAI(Vision-Language Model)。
VLA
VLMに「動作の出力」を加えたもの。画像と指示から、ロボットの動きを直接出す。
フローマッチング
ノイズから少しずつ整えて、なめらかな動作の値を作る生成の方式。
動作チャンク
短い時間分の動作を、まとめて出力したひとかたまり。
微調整(ファインチューニング)
事前学習したモデルを、少量の自分のデータで目的の作業に合わせること。
強化学習
やってみた結果の良し悪しから、よい動きを増やしていく学習。
テレオペレーション
人が遠隔でロボットを操作すること。デモの収集や、止まったときの介入に使う。
スループット
単位時間あたりに終えた作業の量(例:1時間あたりの個数)。
ゼロショット
その作業の学習データなしで、そのまま試すこと。
物理AI
画面の中ではなく、現実世界の物体を扱うAI。
openpi
PIが重みとコードを公開しているGitHubのリポジトリ。
両手で衣類を扱う用途の概念です。布は形が変わるため、見た目を読むだけでなく、接触後の状態を見直しながら動作を調整する必要があります。
図3 ImageGen生成の概念画像。両手で衣類を扱う用途の概念です。布は形が変わるため、見た目を読むだけでなく、接触後の状態を見直しながら動作を調整する必要があります。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. Physical Intelligence 公式サイト(トップ)。会社の説明、ニュース一覧、支援者への謝辞。 https://www.pi.website/
  2. Physical Intelligence Frontier Models for Every Robot: Announcing our API beta(2026年10月13日)。Pi API ベータ、早期利用企業、クラウド推論。 https://www.pi.website/blog/api-beta
  3. Physical Intelligence π0.7: a Steerable Model with Emergent Capabilities(2026年4月16日)。 https://www.pi.website/blog/pi07
  4. Physical Intelligence π*0.6: a VLA that Learns from Experience(2025年11月17日)。Recap、評価条件。 https://www.pi.website/blog/pistar06
  5. Physical Intelligence π0.6 Model Card(2025年11月17日)。構成、パラメータ数、推論時間、評価条件。 https://website.pi-asset.com/pi06star/PI06_model_card.pdf
  6. Physical Intelligence π0.5: a VLA with Open-World Generalization(2025年4月22日)。 https://www.pi.website/blog/pi05
  7. Physical Intelligence π0: Our First Generalist Policy(2024年10月31日)。 https://www.pi.website/blog/pi0
  8. Physical Intelligence Open Sourcing π0(2025年2月4日)。openpi の公開内容と注意書き。 https://www.pi.website/blog/openpi
  9. Physical Intelligence GitHub: Physical-Intelligence/openpi。README(公開モデルの範囲、10k+ hours の事前学習、動作要件)とライセンス(Apache License 2.0)。 https://github.com/Physical-Intelligence/openpi
  10. Physical Intelligence The Physical Intelligence Layer(2026年2月24日)。Weave・Ultra の導入事例(各社が執筆した節を含む)。 https://www.pi.website/blog/partner
  11. Physical Intelligence Moravec’s Paradox and the Robot Olympics(2025年12月22日)。 https://www.pi.website/blog/olympics
  12. Physical Intelligence Join Us(採用ページ)。サンフランシスコのオフィス、事業の説明。 https://www.pi.website/join-us
  13. Physical Intelligence Precise Manipulation with Efficient Online RL(RL Token、2026年3月19日)。 https://www.pi.website/research/rlt
  14. Physical Intelligence VLAs with Long and Short-Term Memory(MEM、2026年3月3日)。 https://www.pi.website/research/memory
  15. arXiv π0: A Vision-Language-Action Flow Model for General Robot Control(2410.24164、2024年10月31日)。 https://arxiv.org/abs/2410.24164
  16. arXiv π0.5: a Vision-Language-Action Model with Open-World Generalization(2504.16054、2025年4月22日)。 https://arxiv.org/abs/2504.16054
  17. arXiv π*0.6: a VLA That Learns From Experience(2511.14759、2025年11月18日)。 https://arxiv.org/abs/2511.14759
  18. arXiv FAST: Efficient Action Tokenization for Vision-Language-Action Models(2501.09747)。 https://arxiv.org/abs/2501.09747
  19. arXiv Knowledge Insulating Vision-Language-Action Models: Train Fast, Run Fast, Generalize Better(2505.23705)。 https://arxiv.org/abs/2505.23705
  20. arXiv Real-Time Execution of Action Chunking Flow Policies(2506.07339)。 https://arxiv.org/abs/2506.07339
  21. 米国SEC EDGAR 全文検索(検索語 “Physical Intelligence”、様式 Form D)。同社自身の提出は検索結果に含まれなかった(2026年10月25日)。 https://efts.sec.gov/LATEST/search-index?q=%22Physical%20Intelligence%22&forms=D

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
会社の説明:あらゆるロボットを制御するモデルを作る学習アルゴリズムを開発事実出典1 https://www.pi.website/
拠点(サンフランシスコのミッション地区)、募集職種事実出典12 https://www.pi.website/join-us
支援者への謝辞(Bond、Jeff Bezos、Khosla Ventures ほか)事実出典1 https://www.pi.website/
π0の発表(2024年10月31日)、約30億パラメータのVLM、複数ロボットのデータ事実出典7 https://www.pi.website/blog/pi0 出典15 https://arxiv.org/abs/2410.24164
π0とπ0-FASTの重み・コード公開(2025年2月4日)、注意書き、FASTの推論費用の記述事実出典8 https://www.pi.website/blog/openpi
openpiの公開範囲(π0・π0-FAST・π0.5)、10k+時間の事前学習、Apache License 2.0事実出典9 https://github.com/Physical-Intelligence/openpi
π0.5の発表(2025年4月22日)と新しい家での片づけ事実出典6 https://www.pi.website/blog/pi05 出典16 https://arxiv.org/abs/2504.16054
π0.6の構成(Gemma 3 4B・SigLIP・約8.6億のアクションエキスパート)と63ミリ秒事実出典5 https://website.pi-asset.com/pi06star/PI06_model_card.pdf
π*0.6の発表と、スループット2倍超・失敗率半減の説明、実演の内容事実出典4 https://www.pi.website/blog/pistar06 出典17 https://arxiv.org/abs/2511.14759
π0.7の発表(2026年4月16日)、UR5eでの洗濯たたみ、著者欄87人事実出典3 https://www.pi.website/blog/pi07
Robot Olympicsの結果(平均成功率52%、進み具合72%、金3・銀2)事実出典11 https://www.pi.website/blog/olympics
FAST、Knowledge Insulation、Real-Time Chunkingの論文事実出典18 https://arxiv.org/abs/2501.09747 出典19 https://arxiv.org/abs/2505.23705 出典20 https://arxiv.org/abs/2506.07339
RL Token(2026年3月19日)、MEM(2026年3月3日)事実出典13 https://www.pi.website/research/rlt 出典14 https://www.pi.website/research/memory
WeaveとUltraの事例(各社が執筆した節)、人の介入の併用事実出典10 https://www.pi.website/blog/partner
Pi APIベータ(2026年10月13日)、早期利用企業、Actorの事例、ネットワーク課題事実出典2 https://www.pi.website/blog/api-beta
Hugging FaceによるopenpiのPyTorch版事実出典8 https://www.pi.website/blog/openpi
Form D:同社自身の提出が検索結果に含まれなかったこと事実出典21 https://efts.sec.gov/LATEST/search-index?q=%22Physical%20Intelligence%22&forms=D
売上・従業員数・資金調達額・設立年未確定/将来公式資料に記載なし。本稿では推計もしない https://www.pi.website/
API料金・一般提供の日程、π0.6以降の重みの公開予定未確定/将来公式資料に記載なし https://www.pi.website/blog/api-beta
最新モデルの提供を続ける計画、将来の研究の方向未確定/将来出典2 https://www.pi.website/blog/api-beta 出典3 https://www.pi.website/blog/pi07
組織としての大学・公的機関との連携、外部への出資・買収未確定/将来公式資料に記載なし。存在しないとも断定しない https://www.pi.website/
4類型の区分(主:ヒューマノイド・物理AI、従:部品・基盤ソフト)本稿の計算本稿による整理
ロボットの販売ではなく知能の層の提供が目標という読み推測本稿の解釈(根拠は出典10 https://www.pi.website/blog/partner)
当面の外部提供の柱はAPIという読み、導入先がデータ源にもなるという読み、関心が実用品質へ広がるという読み推測本稿の解釈(根拠は出典2・10 https://www.pi.website/blog/api-beta)
他社にも同種のモデルがあるというリスク推測本稿の解釈。本シリーズの他社の記事に基づく

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の内容は、Physical Intelligence の公式ブログ・モデルカード・arXiv論文・GitHub に基づきます。調査会社の推計値・報道ベースの数値は使用していません。実演・導入・成功率は、会社(または導入先の企業)自身の主張・報告であり、独立した検証ではありません。「推測」と記した箇所は、一次情報から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。