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ハーモニック・ドライブ・システムズ 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

ハーモニック・ドライブ・システムズ
― ロボットの関節に入る「波動歯車減速機」。産業用ロボット向けは売上の約3割、AIロボットの立ち上がりは「想定より遅い」

ハーモニック・ドライブ・システムズは、ロボットの関節で回転を遅くして力を大きくする減速機の会社です。主力の「ハーモニックドライブ®」は、薄い金属のたわみを使う波動歯車装置で、有価証券報告書は産業用ロボットの関節部に組み込まれていると書いています。2026年3月期の連結売上高は595億円で、産業用ロボット向けの比率は有価証券報告書に記載がありません。決算説明資料のグラフからは約3割と読み取れます(本稿の計算)。会社は、AIロボット向けの需要の立ち上がりが想定より遅いとして、中期経営計画を見直し、航空・宇宙・防衛、eモビリティも成長領域に加えました。本稿は、何を売り、どこまで数字が開示され、AIロボット向けの話のうち何が会社の記載で何が未確定かを、有価証券報告書と公式資料の範囲で整理します。確認日は2026年10月25日です。

構成:株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズの有価証券報告書(第38期。EDINET)と、2027年3月期第1四半期の決算説明資料、公式サイトの事業・研究開発のページを一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるハーモニック・ドライブ・システムズと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(ロボット向けに絞って)
  5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるハーモニック・ドライブ・システムズと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ英文名 Harmonic Drive Systems Inc.
本社日本・東京都品川区主要部門は長野県安曇野市に集中
上場東京証券取引所
プライム市場
2026年2月にスタンダード市場から移行(有価証券報告書)
この分野での区分部品・基盤ソフト波動歯車減速機などの精密部品。区分は本稿による
連結売上高595億円2026年3月期。前期比7.0%増
減速装置の比率77.8%製品群別(減速装置463億円、メカトロニクス製品132億円)
産業用ロボット向けの比率有価証券報告書では非公表決算説明資料のグラフでは約3割(本稿の読み取りと計算)
従業員1,419人連結。ほか臨時従業員342人
まず押さえるべき1点

ハーモニック・ドライブ・システムズは、ロボットそのものではなく、ロボットの関節の中に入る「減速機」の会社です。減速機は、モータの速い回転を、ゆっくりで力強い回転に変える部品です。同社の「ハーモニックドライブ®」は、薄い金属がたわむ性質を使う波動歯車装置で、小さく、軽く、位置決めの精度が高いのが特長だと会社は説明しています 事実。有価証券報告書は、これが「産業用ロボットの関節部に組み込まれ、世界市場で高いシェアを獲得している」と書いています(会社の主張で、シェアの数値は確認できない)。

重要なのは、産業用ロボット向けの売上の割合が、有価証券報告書には書かれていないことです。決算説明資料の用途別グラフを読むと約3割と分かりますが、これは本稿の読み取りと計算です 本稿の計算。会社は、人型・AIロボット向けの需要の立ち上がりが「想定より遅い」とも記載しており、新しい中期経営計画ではロボット以外(航空・宇宙・防衛、eモビリティ)も成長領域に加えています 事実。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ」、英文名は Harmonic Drive Systems Inc. です。「ハーモニックドライブ®」「アキュドライブ®」「ハーモニックプラネタリ®」は、同社の製品(減速機)の登録商標名で、会社名ではありません。ドイツの Harmonic Drive SE(旧Harmonic Drive AG)は連結子会社、米国の Harmonic Drive LLC も連結子会社で、本体とは別の法人です。本稿では有価証券報告書の会社名に従って書きます。

ロゴ画像の取得元:https://www.hds.co.jp/Portals/0/files/common/images/logo_blue.png

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

この分野の会社は、何を作って誰に売るかで4つに分けると分かりやすくなります。ハーモニック・ドライブ・システムズは「部品・基盤ソフト」、つまりロボットの関節を作る部品を、ロボットメーカーや装置メーカーに売る会社です。最終製品は自社では作りません。

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 ハーモニック・ドライブは「部品・基盤ソフト」。ロボット関節用の減速機を、ロボットメーカー等へ供給(本稿の整理) 産業用ロボット向けは売上の約3割(決算説明資料から本稿が算出)。有価証券報告書に比率の記載はない
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、ハーモニック・ドライブの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。ハーモニック・ドライブの分類は本稿の整理です。「弱点」の行は類型全体の一般的な傾向であり、同社個社の評価ではありません。
産業用ロボット向けの売上(四半期、億円) 決算説明資料のグラフ(会社の用途分類)から本稿が読み取った値。有価証券報告書の記載ではない 41.3億円 2025年4〜6月 44.7億円 2025年7〜9月 46.3億円 2025年10〜12月 63.8億円 2026年1〜3月 49.2億円 2026年4〜6月 連結売上高に占める割合:30.6%/31.2%/32.2%/36.7%/29.5%(本稿の計算)
図解 産業用ロボット向けの売上は、2026年1〜3月期に63.8億円と最も大きくなりました(決算説明資料のグラフ)。用途の区分は会社の分類で、最終製品の分類は顧客の申告などによると考えられますが、方法は確認できませんでした。

4. 会社の規模(ロボット向けに絞って)

同社は「精密減速機事業」の単一セグメントで、ロボット向けだけの損益は開示されていません。会社全体の規模は次のとおりです(単位:百万円)事実。

指標(単位:百万円)2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高55,79655,64659,558
営業利益確認していない62,567
経常利益5701512,540
親会社株主に帰属する当期純損益△24,8073,4741,609
受注高(連結)確認していない確認していない61,613
区分(2026年3月期)売上高(百万円)構成比・前期比
減速装置(ハーモニックドライブ®など)46,33377.8%(前期比9.5%増)
メカトロニクス製品(アクチュエーターなど)13,22422.2%(前期比0.9%減)
日本(セグメント)26,626前期比22.5%増
北米12,107前期比4.1%増
欧州16,776前期比0.7%増
中国4,046前期比28.0%減(産業用ロボット向けの減少)
研究開発・投資・人員内容
研究開発費3,950百万円(2026年3月期)。研究開発要員151人
設備投資総額4,796百万円。北米2,261百万円(生産能力13%増)、日本1,421百万円、中国108百万円
従業員(連結)1,419人(ほか臨時従業員342人)。ロボット向け専任の人数は非公表
ここで注意

上の数値は会社全体のものです。ロボット向けだけの売上・利益・研究開発費・人員は有価証券報告書に記載がなく、非公表です 未確定/将来。次の「産業用ロボット向けの売上」は、決算説明資料のグラフを本稿が読み取った参考値で、会社が示した割合ではありません。

産業用ロボット向けの売上(決算説明資料のグラフからの読み取り)

期間連結売上高(百万円)産業用ロボット向け(百万円)割合(本稿の計算)
2025年4〜6月13,4964,12630.6%
2025年7〜9月14,3424,47131.2%
2025年10〜12月14,3454,62632.2%
2026年1〜3月17,3746,38436.7%
小計(2026年3月期)59,55719,60732.9%
2026年4〜6月16,6814,92029.5%

決算説明資料のグラフ「連結用途別売上高【四半期】」で、凡例の先頭(産業用ロボット)にあたる最下段の数値を読み取りました。グラフには半導体製造装置・工作機械・医療・AIロボット・航空・宇宙・防衛・車載・その他の区分もあります。AIロボット向けの区分は金額が小さく、読み取りの精度が低いため、本稿では数値を採用しません。割合は「用途別金額 ÷ 四半期の連結売上高」の本稿の計算です 本稿の計算。

5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース

4つの観点(人・金・外部との関係・研究機関との連携)を、有価証券報告書と公式資料で確認できたか/できなかったかで整理します。「記載なし」も確認の結果です。

観点確認できた内容区分
人連結従業員1,419人。研究開発要員151人。米国シリコンバレーに調査・研究のオフィスを設置。ロボット向けの専任人員は非公表事実/非公表
金研究開発費39億50百万円、設備投資47億96百万円(いずれも会社全体、2026年3月期)。北米の生産設備の導入で現地の生産能力が13%増加(2025年12月)。ロボット向けだけの金額は非公表事実/非公表
工場日本:穂高工場(長野県安曇野市)など。減速装置ユニットの主要部品のクロスローラーベアリングは子会社のハーモニックプレシジョン(長野県松本市)。米国はマサチューセッツ州、ドイツにも拠点事実
外部への出資・買収・合弁ドイツのHarmonic Drive SE:2002年に25%、2008年に35%、2017年3月に産業革新機構(現INCJ)と共同で追加取得して子会社化(所有比率74.7%)、2021年7月に完全子会社化。米国のHarmonic Drive LLCも2021年2月に完全子会社化。青梅鋳造(持分法適用の非連結子会社)に2008年に49.2%を出資事実
大学・研究機関東京大学の石川研究室とロボットハンド向けの超小型減速機を開発(2000年に要望を受け、2001年に外径13mmの減速機を納入)。連携例として秋田大学、大阪大学、産業技術総合研究所、信州大学、東京大学、東北大学、名古屋工業大学ほか。国の研究補助金などの公的資金は、今回確認した資料に記載を確認できなかった事実/確認できず

主要な製品の状況(会社の公式資料で確認できた範囲)

性能値は会社の公称値で、他社製品との比較や優劣はつけません。確認日は2026年10月25日です。

名称(種別)主な仕様(会社の説明・条件)導入・運用の実績段階と日付出典
ハーモニックドライブ®(波動歯車減速機)部品は3点。標準品の減速比は1/30〜1/320。歯の噛み合い部分に隙間がなく、高精度な位置決めができる(会社の説明)産業用ロボット、半導体製造装置、人工衛星、先進医療機器などに採用(会社の記載)。台数・顧客名は非公表提供中(1970年に製造を開始)出典1・3
アキュドライブ®/ハーモニックプラネタリ®(遊星減速機)減速比1/3〜1/45。独自のバックラッシ(歯車の遊び)除去機構(会社の説明)産業用ロボットや工作機械など。台数は非公表提供中。2026年3月期にFPAシリーズ(遊星ギヤ採用のACサーボアクチュエーター)を追加出典1・3
CSF-mini(小型ユニットタイプ)同社の注力分野の小型ユニット。2026年3月期に型番を追加(有価証券報告書)台数は非公表提供中(型番追加)出典1
CSF-3(外形13mm)2001年に東京大学の研究室へ納品したとされる小型の波動歯車装置。会社は「世界最小」と説明(会社の主張)ロボットハンドの研究用。のちに標準製品化し、2007年の「今年のロボット大賞」中小企業基盤整備機構理事長賞を受賞(会社の記載)標準製品として提供(時期は確認できず)出典4
ACサーボアクチュエーター(FHA-Cminiシリーズ等)減速機にモーター・センサーを組み合わせた駆動ユニット。LWタイプは軽量・全長短縮(会社の説明)台数は非公表提供中(2026年3月期に追加)出典1・3
この表で確認できなかったこと

顧客名(ロボットメーカーなど)、出荷台数、各製品の価格、独立した第三者による性能の検証は、今回の資料に記載がありませんでした 未確定/将来。「高いシェア」「世界最小」は会社の記載であり、本稿では数値で裏付けられません。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1970年長谷川歯車と米国USM社の合弁で設立。松本工場でハーモニックドライブの製造を開始USM社との技術提携にもとづくハーモニックドライブ機構の事業化(有価証券報告書の沿革)
1977年FA機器(現メカトロニクス製品)の製造・販売を開始減速機から駆動ユニットへ
1990年穂高工場(長野県安曇野市)を竣工し、生産拠点を移転現在も主要部門が集中する地域
2000〜2001年東京大学の石川研究室の要望を受け、外径13mmの小型減速機と超小型サーボモーターを開発・納入指の大きさのロボットハンド向け
2017年3月ドイツのHarmonic Drive AG(現SE)をINCJと共同で追加取得し、子会社化欧州の事業を取り込む
2021年米国のHarmonic Drive LLC(2月)、ドイツのHarmonic Drive SE(7月)を完全子会社化北米・欧州の完全な傘下化
2024年3月期親会社株主に帰属する当期純損益は248億円の損失(5年間の経営指標)原因は、本稿で参照した有価証券報告書では確認していない(決算期の記載のみ)
2024年5月13日中期経営計画(2024〜2026年度)を公表(2026年度の連結売上高900億円などを目標)AIロボット市場の立ち上がりの想定が、現在の状況と差が出ている(会社の記載)
2026年2月東京証券取引所のプライム市場へ移行市場区分の変更(有価証券報告書)
2026年6月16日第38期の有価証券報告書を提出。新しい中期経営計画(2026〜2030年度)を策定注力領域をAIロボット・航空宇宙防衛・eモビリティへ

7. 今後の計画

会社は新しい中期経営計画(2026〜2030年度)と、2027年3月期の通期予想を示しています。目標・予想は会社のもので、達成の事実ではありません 未確定/将来。

2030年度の目標連結売上高1,000億円以上営業利益率15%以上、ROE・ROIC 10%以上(会社の目標)
注力する成長領域AIロボット・航空宇宙防衛・eモビリティ新中期経営計画の記載
2027年3月期の予想売上高745億円2026年8月7日に上方修正(従来680億円)。営業利益85億円
以前の目標2026年度に売上高900億円2024年5月公表の旧計画。見直した

旧計画の前提と実際の差について、会社は「AIロボット市場は中長期的な成長期待に変わりはないが、現時点では創成期にあり、社会実装の進展ペースが想定と差異が生じつつある」と書いています 事実。2026年8月の予想の上方修正の理由は、産業用ロボット向け・半導体製造装置向けを中心とする主要用途全般での減速装置・メカトロニクス製品の需要増加です(決算説明資料)。

確認できなかったこと

AIロボット・人型ロボット向けの売上、顧客名、量産規模、生産能力の増強計画の詳細は、今回の資料に記載がありませんでした 未確定/将来。有価証券報告書は「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注を獲得」「北米のAIロボット向け受注が増加」と書くにとどまります。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここには会社が直接は述べていない部分が含まれます。一次資料から読み取れる範囲の推測を、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次資料区分
売上の約3割が産業用ロボット向けで、ロボット需要の変動を直接受ける決算説明資料のグラフ(本稿の計算で32.9%)。有価証券報告書のリスク:製品の大半が産業用ロボット・半導体製造装置などの部品で、設備投資動向の影響を受ける事実/本稿の計算
AIロボットはまだ売上への寄与が小さく、立ち上がりが想定より遅い有価証券報告書:創成期にあり、進展ペースが想定と差異。決算説明資料のAIロボットの金額は小さい事実
新しい中期経営計画は、ロボット以外にも売上の柱を広げる狙い注力領域に航空・宇宙・防衛、eモビリティを追加。減速機の用途として人工衛星・先進医療機器・車載も挙げている推測
北米でのAIロボット向けの需要を見込んで増産している北米のAIロボット向けの受注が増加(有価証券報告書)、北米の生産設備で生産能力が13%増(2025年12月)。顧客名は非公表のため、両者の関係は推測推測
売上の増加で採算が改善している営業利益は6百万円から2,567百万円へ。会社は工場稼働率の上昇による製造原価率の改善を理由に挙げる事実
推測の根拠を1つだけ詳しく

有価証券報告書は、北米で「防衛用途向けの受注高が減少したものの、AIロボット向けの受注高が増加し、売上高は前期比4.1%増」と書き、設備投資の説明で北米の生産用機械の導入により「同社の生産能力は13%増加した」と書いています 事実。この2つを並べると、北米のAIロボット向けの需要を取り込むために、現地の生産能力を増やしている可能性があります 推測。ただし、増設の目的や顧客は記載がなく、設備投資は産業用ロボットを含む他の用途向けにも使われるはずです。会社の記載にあるのは「AIロボット向けのお客様の量産移行に伴う受注」までで、実際の量産規模は確認できませんでした 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

ハーモニック・ドライブ・システムズを中心とした関係 有価証券報告書・公式サイトに記載のある関係のみ。顧客名は非公表のため含めない(確認日 2026年10月25日) ハーモニック 減速機メーカー 東京大学(石川研究室) 指サイズの減速機を共同開発 産総研・各大学 共同研究の連携先(例) INCJ(旧産業革新機構) ドイツ社の取得を共同で実施 Harmonic Drive SE(独) 完全子会社(2021年7月) Harmonic Drive LLC(米) 完全子会社(2021年2月) 青梅鋳造 49.2%出資(2008年)。持分法適用 共同開発・共同研究 出資・買収・合弁
図2 出典:有価証券報告書(第38期)、公式サイトの「産官学との共同研究」。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけです。同社の主な顧客(ロボットメーカー等)は、有価証券報告書・公式資料では名前を確認できなかったため、含めていません。

同社は部品メーカーのため、最も重要な「顧客との関係」が図に出ません。有価証券報告書は、顧客を「多様な顧客」と書き、個別の取引先名はほとんど開示していません 未確定/将来。産業用ロボットメーカーが同社の減速機を使っているかどうかは、本稿では個社名をあげて断定しません。

10. 提供している技術・製品・サービス

同社の製品は2つに分かれます。減速装置(ハーモニックドライブ®、遊星減速機)と、減速機にモーター・センサーなどを組み合わせたメカトロニクス製品(アクチュエーターとコントローラー)です。

波動歯車装置(ハーモニックドライブ)のしくみ 会社の説明(金属の弾性・部品3点・隙間のない噛み合い)と、一般的な説明にもとづく本稿の図解 1. 楕円形のカム モータの回転を受けて 回る(入力側) 2. 薄い金属のカップ カムに押されて楕円に たわみ、外側の歯と噛む (金属の弾性を利用) 3. 内側に歯のある輪 カップとの歯数の差で 少しずつずれ、ゆっくり 大きな力で回る 会社の説明:部品はわずか3点で、標準品の減速比は1/30〜1/320。歯の噛み合い部分に隙間がない 部品の名称(波動発生器・フレクスプライン・サーキュラスプライン)は一般的な呼び方で、本稿の簡略化した説明
図解 ハーモニックドライブは、薄い金属のカップをカムでたわませて外側の歯と噛み合わせることで、少ない部品で大きな減速比を得ます。
区分内容(会社の説明)用語の説明
減速装置ハーモニックドライブ®(波動歯車装置)、アキュドライブ®・ハーモニックプラネタリ®(遊星減速機)減速機:回転を遅くして力を大きくする部品
メカトロニクス製品減速機・モーター・センサー・ドライバー・コントローラーを組み合わせたアクチュエーターなど。主に半導体製造装置などで使われるアクチュエーター:動きを生み出す駆動ユニット
クロスローラーベアリング減速装置ユニットの主要部品。子会社のハーモニックプレシジョンが製造・加工軸受(ベアリング):回転を支える部品
コア技術精密切削、薄肉金属部品加工、小モジュール歯車加工、精密研削、精密計測小モジュール歯車:非常に小さな歯の歯車
素材技術者の視点:たわむ金属を、何億回も繰り返し使う

波動歯車装置は、薄い金属の部品が回るたびにたわみ(弾性変形)、元に戻ることを繰り返します 事実。ロボットの関節で長期間使われるため、金属の疲労(繰り返しの力で壊れやすくなること)に強く、加工しても形が狂わない金属が必要になります(一般論)。会社は、コア技術として「薄肉金属部品加工」「小モジュール歯車加工」「精密研削」「精密計測」を挙げていますが、どの合金や熱処理を使うかは公表していません 未確定/将来。

外径13mmの小型品の開発では、「部品や歯車があまりに小さく、加工も測定も未知の領域の技術と技能が求められた」と会社は述べています(会社の説明)。材料側では、鋳造(青梅鋳造への出資)や、軸受用の鋼などが関わりますが、具体的な調達先・材料名は今回確認できませんでした。本シリーズの技術解説「減速機とギア」「関節アクチュエータ」「ロボット・ドローンの構造材料」とあわせて読むと分かりやすくなります。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
需要変動製品の大半が産業用ロボット・半導体製造装置・フラットパネル製造装置などの部品。設備投資動向と市況の影響を受ける(発生可能性「高」、影響度「大」と会社が評価)事実
個別受注多くの製品が顧客ごとの個別仕様の受注生産。納期が長くなると機会損失のリスク事実
AIロボット市場の立ち上がり社会実装の進展ペースが想定と差異。旧計画(2026年度に売上高900億円)を見直した事実
中国向けの減少2026年3月期は産業用ロボット向けの減少で、中国の売上が28.0%減事実
欧州子会社の無形資産Harmonic Drive SEの顧客関係資産(9,187百万円)と技術資産(2,454百万円)。計画が未達になれば減損の可能性(前期末は減損の兆候ありと判断したが、損失は認識していない)事実
財務制限条項借入契約に純資産の維持(直近決算期末または2024年3月期末の大きい方の70%以上)と、経常損益の2期連続赤字の禁止の条件がある事実
関税・為替・調達米国の追加関税の影響、為替変動、中東情勢によるエネルギー・物流コストの上昇などを記載事実
品質予期せぬ製品の不具合が起こる可能性(発生可能性「高」と会社が評価)事実
航空・宇宙・防衛向け成長領域に位置づける。具体的な製品・顧客は確認できず、本稿では扱わない(攻撃用兵器は扱わない方針)未確定/将来

12. 用語集

減速機
モータの速い回転を、ゆっくりで力強い回転に変える部品。
波動歯車装置(ハーモニックドライブ)
薄い金属のたわみを使い、少ない部品で大きな減速比を得る減速機。
遊星減速機
中心の歯車の周りを複数の歯車が回る形の減速機。
減速比
入力の回転が何分の1の速さの出力になるか。1/100なら100分の1。
バックラッシ
歯車の噛み合いの隙間(遊び)。小さいほど位置決めの精度が上がる。
アクチュエーター
動きを生み出す駆動ユニット。ロボットの関節の中核。
ACサーボモーター
位置や速度を正確に制御できる交流モータ。
クロスローラーベアリング
回転する軸を支える軸受の一種。
産業用ロボット
工場で溶接・搬送・組立などを行う腕型のロボット。
AIロボット
会社の用語。AI技術を使って状況に応じて動くロボット。
メカトロニクス
機械(メカ)と電子制御(エレクトロニクス)を組み合わせた技術。
持分法適用
出資先の利益を、出資比率に応じて自社の業績に取り込む会計の方法。
INCJ
旧・産業革新機構。政府系のファンド。
ROE/ROIC
資本や投下資本に対する利益の割合。
有価証券報告書
日本の上場会社が国に提出する年次報告書。EDINETで公開される。
関節用の減速機を検査する場面と、その内部を説明する模型です。精度、伝達する力、摩耗・寿命を考える部品であり、図は特定製品の歯形や性能を示しません。
図3 ImageGen生成の概念画像。関節用の減速機を検査する場面と、その内部を説明する模型です。精度、伝達する力、摩耗・寿命を考える部品であり、図は特定製品の歯形や性能を示しません。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 有価証券報告書 第38期(2025年4月1日〜2026年3月31日)。関東財務局提出(2026年6月16日)。EDINETの公開PDF。会社概要・沿革・事業内容・業績・用途と地域別の動向・研究開発・設備投資・従業員・リスク・中期経営計画。 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
  2. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 2027年3月期 第1四半期 決算説明資料(2026年8月7日公表)。連結用途別売上高(四半期)のグラフ、通期業績予想の修正。公式サイトのIR資料ページに掲載。 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06879/b045fd4d/ec48/4539/8d39/4b66e7a74f0a/140120260807515115.pdf
  3. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 事業領域/ビジネスモデル(公式サイト。確認日 2026年10月25日)。製品群、波動歯車装置の説明(部品3点、減速比1/30〜1/320)。 https://www.hds.co.jp/company/business/model/
  4. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 産官学との共同研究(公式サイト。確認日 2026年10月25日)。東京大学石川研究室との事例、連携先の例。 https://www.hds.co.jp/development/structure/university/
  5. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ コア技術(公式サイト。確認日 2026年10月25日)。精密切削・薄肉金属部品加工・小モジュール歯車加工などの加工技術。 https://www.hds.co.jp/development/hd_skill/core/
  6. 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ 公式サイトのロゴ画像(logo_blue.png。ロゴ画像の取得元。確認日 2026年10月25日)。 https://www.hds.co.jp/Portals/0/files/common/images/logo_blue.png

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本社所在地、英文名、東京証券取引所プライム市場への移行(2026年2月)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
連結売上高・営業利益・経常利益・当期純損益(2024〜2026年3月期)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
製品群別(減速装置77.8%・メカトロニクス製品22.2%)、地域別の売上と前期比事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
研究開発費3,950百万円・研究開発要員151人・設備投資4,796百万円・従業員1,419人事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
産業用ロボット向けの比率が有価証券報告書に記載されていないこと未確定/将来出典1 有価証券報告書に記載なし。本稿では推計しない https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
決算説明資料のグラフからの産業用ロボット向け売上の読み取りと割合の計算本稿の計算出典2 本稿の読み取りと計算。グラフの区分は会社の分類 https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06879/b045fd4d/ec48/4539/8d39/4b66e7a74f0a/140120260807515115.pdf
2027年3月期の通期予想(売上高745億円ほか。2026年8月7日修正)事実出典2 会社の予想であり、達成の事実ではない https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06879/b045fd4d/ec48/4539/8d39/4b66e7a74f0a/140120260807515115.pdf
新中期経営計画(2026〜2030年度)の目標と注力領域、旧計画の見直し事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
AIロボット市場の立ち上がりが想定と差異という会社の記載事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
北米のAIロボット向け受注の増加、北米の生産能力13%増事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
Harmonic Drive SE・LLCの取得と完全子会社化、青梅鋳造への出資、沿革事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
波動歯車装置・遊星減速機の仕様(部品3点、減速比1/30〜1/320、1/3〜1/45)事実出典3 https://www.hds.co.jp/company/business/model/
東京大学石川研究室との開発事例、連携先の例、CSF-3事実出典4 https://www.hds.co.jp/development/structure/university/
コア技術(精密切削・薄肉金属部品加工・小モジュール歯車加工など)事実出典5 https://www.hds.co.jp/development/hd_skill/core/
リスク(需要変動・個別受注・欧州の無形資産・財務制限条項など)事実出典1 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
顧客名、出荷台数、AIロボット・人型ロボット向けの売上、公的研究資金未確定/将来今回の資料に記載なし。本稿では推定しない
「世界市場で高いシェア」「世界最小」という会社の主張の裏付け未確定/将来出典1・4 会社の記載。数値・第三者の検証は確認できなかった https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf https://www.hds.co.jp/development/structure/university/
産業用ロボット需要の変動を直接受けるという読み推測出典1・2 有価証券報告書のリスク記載と本稿の計算からの解釈 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06879/b045fd4d/ec48/4539/8d39/4b66e7a74f0a/140120260807515115.pdf
ロボット以外にも売上の柱を広げる狙いという読み推測出典1 新中期経営計画の注力領域からの本稿の解釈 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
北米のAIロボット向け需要を見込んで増産しているという読み推測出典1 北米の受注と生産能力の記載からの本稿の解釈 https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100YBHC.pdf
企業の4類型の区分(部品・基盤ソフト)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの企業から例示

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の数値は、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズの有価証券報告書(EDINET)と、同社の公式サイトに掲載された決算説明資料などに基づきます。調査会社の市場推計・報道ベースの数値は使用していません。「世界市場で高いシェア」などの表現は会社の記載で、独立した検証ではありません。「推測」と記した箇所は、一次資料から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は投資・購入の助言ではありません。