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ファナック 企業解説

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COMPANY PROFILE / ドローン・ロボティクス

ファナック
― 工場の産業用ロボットで売上の4割強を占め、「オープンな物理AI」へ舵を切る

工場で溶接・搬送・組立をする腕型のロボットは、FANUCの主力商品の1つです。2026年3月期の有価証券報告書によると、ロボット部門の連結売上高は3,786億円で、連結売上高の44.1%でした。会社は2025年12月に、ロボットをROS 2やPythonでAIとつなげられるようにするオープン化と、NVIDIAとの協力を発表しています。本稿は、会社全体の事業ではなくロボットに関わる部分に絞り、何を売り、どこまで数字が開示され、物理AIへの取り組みのうち何が会社の説明で何が未確定かを、有価証券報告書と公式資料の範囲で整理します。製品・提携の状況は変化が速いため、確認日(2026年10月25日)を明記しています。

構成:ファナック株式会社の有価証券報告書(第55〜57期)と、公式サイトのロボット製品ページ・Open Platformページ・沿革を一次情報として使用/確認日 2026年10月25日

この記事でわかること
  1. 30秒でわかるFANUCと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置
  2. ロゴと社名の表記について
  3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか
  4. 会社の規模(ロボット事業に絞って)
  5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース
  6. これまでの取り組み
  7. 今後の計画
  8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか
  9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング
  10. 提供している技術・製品・サービス
  11. この企業が抱えるリスク
  12. 用語集/出典/主張と出典の対応表

1. 30秒でわかるファナックと、ドローン・ロボティクスでの立ち位置

正式名称ファナック株式会社英文名 FANUC CORPORATION(有価証券報告書の英訳名)
本社日本・山梨県
南都留郡忍野村
研究開発と工場を本社地区に集中
上場東京証券取引所
プライム市場
有価証券報告書の記載
この分野での区分産業・専門ロボット区分は本稿による。ロボット事業に絞って解説
ロボット部門の売上3,786億円2026年3月期。連結売上高の44.1%
累計出荷台数100万台会社の沿革の記載(2023年)。会社の公称値
2025年の新機種CRX-3iA
R-2000/E ほか
公式発表(2025年12月ほか)
物理AIへの取り組みオープン化+
NVIDIA・Google
会社の取り組み。成果の売上への寄与は非公表
まず押さえるべき1点

FANUCは、工場で溶接・搬送・組立などをする腕型の産業用ロボットの会社です(人型ロボットの会社ではありません)。有価証券報告書によると、会社全体は「CNC(工作機械の制御装置)・サーボ」を土台に、ロボットと小型の工作機械「ロボマシン」へ広げた構成で、事業は単一セグメントです 事実。ロボット部門だけの売上(2026年3月期 3,786億円、連結売上高の44.1%)は開示されていますが、ロボット部門の利益・人員・研究開発費・投資額は開示されていません。

もう1つの注目点は、ロボットに「AIの頭脳」をつなぐためのオープン化です。ROS 2(ロボット開発用の共通ソフトの土台)に対応したドライバを公開し、Pythonをロボット制御装置の中で動かせるようにしたと、会社は説明しています 事実。本稿では「何を売っているか/どこまで開示されているか/物理AIへの取り組みは何が会社の説明で、何が未確定か」を軸に読みます。

2. ロゴと社名の表記について

表記の注意:法人名は「ファナック株式会社」、英文名は FANUC CORPORATIONです(有価証券報告書の英訳名)。ロボットの販売・保守は、米国の FANUC America Corporation、欧州の FANUC Europe Corporation など、本体が出資する連結子会社が担っています。一方、中国の SHANGHAI-FANUC Robotics CO., LTD. は、50%出資の持分法適用関連会社(連結子会社ではない別法人)です。本稿ではこの区別を保って書きます。

公式サイトのロゴ画像:https://www.fanuc.co.jp/en/image/logo-ci.svg

3. ドローン・ロボティクスの世界で、この会社はどこにいるか

この分野の会社は、何を作って誰に売るかで4つに分けると分かりやすくなります。FANUCは「産業・専門ロボット」、つまり工場で毎日働く腕型ロボットを主力にしています。

ドローン・ロボティクスに関わる企業の4つの類型 同じ「ロボットの会社」でも、何を作って誰に売るかで、強みと課題が違う ヒューマノイド・物理AI 産業・専門ロボット ドローン・eVTOL 部品・基盤ソフト 人型と学習するロボット 工場・医療・点検で働く 空を飛ぶ機体と運航 ロボットを支える部品とAI Figure AI/Boston Dynamics Unitree/UBTech FANUC/Yaskawa Universal Robots/Intuitive DJI/Skydio Zipline/Joby Harmonic Drive NVIDIA 学習と汎用性への期待 実績と信頼性 空の用途と規制対応 供給網での存在感 量産と実用の実績が途上 変化への対応と価格 規制と安全認証 需要が出荷次第 FANUCは「産業・専門ロボット」。工場の自動化で働く腕型ロボットが主力(本稿の整理) ロボット部門は連結売上高の44.1%(2026年3月期)。物理AIでは外部のAI企業と組む(会社の説明)
図1 ドローン・ロボティクスに関わる企業の4類型と、FANUCの位置づけ。区分は本稿によるもので、企業名は本シリーズで扱う企業から例示しています 本稿の計算。FANUCの分類は本稿の整理で、ロボット部門の売上構成比は有価証券報告書の記載に基づきます。「弱点」の行は類型全体の一般的な傾向であり、FANUC個社の評価ではありません。
FANUCのロボット部門の連結売上高(億円) 有価証券報告書の部門別売上。2024年3月期〜2026年3月期。ロボット以外の部門はこの図に含めない 3,809億円 2024年3月期 3,296億円 2025年3月期 3,786億円 2026年3月期 構成比:47.9%/41.3%/44.1%(連結売上高に対する割合)。部門別の利益・人員は非公表
図解 2026年3月期のロボット部門売上は前期比14.9%増(有価証券報告書の記載)。売上は同社の公表値で、市場全体の統計や調査会社の推計ではありません。

4. 会社の規模(ロボット事業に絞って)

FANUCは会社全体としてはFA(CNC・サーボ・レーザ)、ロボット、ロボマシン、サービスを手がけますが、本稿ではロボットに絞ります。会社全体の規模は次のとおりです 事実。

指標(単位:百万円)2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高795,274797,129857,831
ロボット部門の連結売上高380,944329,566378,610
ロボット部門の構成比47.9%41.3%44.1%
研究開発費(会社全体)49,81346,66644,959
設備投資総額(会社全体)52,46440,13621,990
従業員(2026年3月31日現在)人数備考
連結会社10,040臨時従業員は別に1,682人(年間平均)
提出会社(ファナック株式会社)4,842臨時従業員は別に1,160人。平均年齢40.0歳
ロボット部門の従業員非公表「事業の部門別に区分することは困難」と有価証券報告書に記載
ここで注意

上の研究開発費と設備投資額は会社全体の数字で、ロボット事業だけの金額ではありません。会社は単一セグメントのため、ロボット部門の利益・研究開発費・設備投資・人員は開示されていません 未確定/将来。本稿はそれらを推計しません。また、ロボット部門の売上は「ファナックのロボット販売」であり、「世界のロボット市場におけるシェア」ではありません(会社のサステナビリティページには会社推計のシェアの記載がありますが、推計の根拠を確認できないため採用しません)。

5. ドローン・ロボティクスにかけているリソース

4つの観点(人・金・外部との関係・研究機関との連携)を、有価証券報告書と公式資料で確認できたか/できなかったかで整理します。「記載なし」も確認の結果です。

観点確認できた内容区分
人連結従業員10,040人(全社)。研究開発組織に「ロボット機構」「ロボットソフト」「ロボットアプリケーション技術」の研究開発本部がある。ロボット専任の人数は非公表事実/非公表
金研究開発費449億59百万円・設備投資219億90百万円(いずれも全社、2026年3月期)。当期の所要資金は全て自己資金で、外部調達はなし。ロボット分の金額は非公表事実/非公表
工場ロボット専用の工場として、本社地区に新ロボット工場(2011年)、筑波地区に新ロボット工場(2018年)を建設(有価証券報告書の沿革)。生産能力は記載なし事実
外部への出資・合弁中国の合弁会社 SHANGHAI-FANUC Robotics(議決権50%、持分法適用関連会社)。2026年3月期は同社向けの売上が連結売上高の10.4%(896億39百万円)。過去には米国GMとの合弁(1982年設立、1992年に完全子会社化)。新たなロボット関連の出資・買収は有価証券報告書に記載なし事実/確認できず
特許・技術の相互供与ドイツのシーメンス社と、CNCシステム・CNC自動プログラミング装置・ロボットの特許実施権を相互に供与。契約期間は1983年4月19日から2026年12月31日まで(満了後の扱いは記載なし)事実
大学・研究機関山梨大学の研究チームが、FANUCのオープンプラットフォームを使ってブドウの摘粒の自動化を研究(農業分野の公的な委託研究事業の枠内)。FANUC公式ページの事例紹介であり、FANUCの資金・人員の関与は記載なし。NEDO・経済産業省などとの連携は今回の資料では確認できなかった事実/確認できず

主要なロボット・製品の状況(会社の公式資料で確認できた範囲)

性能値はすべてFANUCの公称値で、比較対象は多くの場合「前の機種」です。他社の機体との比較や優劣はつけません。確認日は2026年10月25日です。

名称(種別)主な仕様(メーカー公称・条件)実績・承認の状況段階と日付出典
CRX-3iA(協働ロボット)可搬質量3kg、リーチ692mm、機構部の重量11kg。磁石のベースで設置でき、設置角度を自動検出(公式の説明)導入実績の台数は確認できなかった。承認・認証の記載は確認できなかった2025年12月発表。量産開始は2026年1月と予告(開始の確認はできなかった)出典10
CRXシリーズ全体6機種(CRX-3iA〜CRX-30iA)。可搬質量3〜30kg、リーチ692〜1,756mm2019年12月に発表(会社の説明)。シリーズ全体の出荷台数は確認できなかった提供中(公式の製品一覧)出典10・15
R-2000/Eシリーズ(大型産業用ロボット)8機種。従来のR-2000比で動作速度最大20%向上、可搬質量・リーチ最大10%向上、消費電力15%削減(いずれも会社の比較)。バッテリーレスのエンコーダ旧R-2000シリーズは累計35万台以上の出荷(会社の公称)。新型の出荷台数は確認できなかった2025年12月発表。量産開始は2026年3月と予告(開始の確認はできなかった)出典1・11
M-810(機械加工ロボット)有価証券報告書の記載:M-810/190-20Bは可搬質量190kg、リーチ2m。公式ページ:IP67相当の保護、M-800比で加工荷重3.4倍(会社の比較)公式ページで「出荷開始 2025年6月(M-810/270-27B)」と記載。台数は確認できなかった提供(2025年6月出荷開始)出典1・12
SR-9iA/R(棚置き型SCARAロボット)可搬質量9kg、リーチ620mm。条件付きの往復動作0.7秒(荷重2.5kg、水平500mm、垂直100mm)。会社は「世界最高の処理能力」と主張(独立した検証は確認できなかった)太陽光パネルのセル搬送が主な想定用途。導入台数は確認できなかった提供(2025年4月出荷開始)出典13
ROS 2ドライバ・Python対応・ストリームモーション可搬質量3kg〜2,300kgのロボットをROS 2から制御できる。位置指令を1ミリ秒周期で実行利用実績・利用者数は確認できなかった。ドライバのソースはGitHubで公開提供(2025年12月に公式発表)出典5・6・17
ROBOGUIDE連携(NVIDIA Isaac Sim)会社のロボットシミュレータとNVIDIAのシミュレーション基盤を連携。FANUCのロボットが「OpenUSD SimReadyアセット」として利用可能導入実績は確認できなかった提供(公式ページに2026年1月20日のお知らせ)出典4・9
この表で確認できなかったこと

導入先・台数・稼働時間、安全規格や防爆などの認証の範囲、各機種の価格は、今回確認した公式資料に記載がありませんでした 未確定/将来。なお、公式サイトは「防爆規格に適合した世界初の協働ロボット」を持つと述べていますが、適合する規格名・範囲はそのページでは確認できなかったため、本稿では詳細を書きません(会社の主張)。

6. これまでの取り組み

時期できごと意味
1974年ロボットを開発し、自社工場に設置会社の沿革の記載
1977年ロボットの商業生産・出荷を開始(ROBOT-MODEL 1)。米国に現地法人を設立工作機械の制御装置の会社としてのロボット事業の出発点
1982年米国ゼネラルモーターズとの合弁でGMFanuc Roboticsを設立米国での自動車工場向けの展開。1992年に完全子会社化し FANUC Robotics に改称
1997年中国に合弁会社 SHANGHAI-FANUC Robotics を設立現在は持分法適用関連会社(50%)
2002年ロボットセルで連続720時間の無人運転を実用化(会社の説明)長時間の無人運転の実績
2015年協働ロボットCR-35iAを開発。ロボット累計出荷40万台。Preferred Networksとの提携を発表AI分野との提携の始まり(提携の詳細は今回確認できなかった)
2017年ロボット累計出荷50万台会社の公称値
2018年筑波地区に新ロボット工場を建設有価証券報告書の沿革
2019年12月協働ロボットCRXシリーズを発表軽く、手で動かして教えられるシリーズ(会社の説明)
2023年ロボット累計出荷100万台会社の公称値
2025年12月ROS 2ドライバの公開、Python対応、NVIDIAとの協力を発表。R-2000/E・CRX-3iAを発表物理AIに向けた「オープン化」の発表
2026年1月20日ROBOGUIDEとNVIDIA Isaac Simの連携が利用可能になった旨のお知らせ公式ページの掲載
2026年6月2026年3月期の有価証券報告書。ロボット部門売上は前期比14.9%増国内の自動車向けは低迷、中国のEV関連・一般産業向けが好調(会社の説明)

7. 今後の計画

有価証券報告書には、ロボットの売上目標・台数目標・投資額の計画は書かれていません。書かれているのは方針です 事実。

経営方針FA・ロボット・ロボマシンと
サービスを一体で提供
「one FANUC」。有価証券報告書の記載
研究開発の方向FA・ロボット・ロボマシンの
全商品群にAIを適用
生成AIの商品への応用も検討(会社の記載)
供給体制生産・サービス拠点の複数化、
部品調達先の複数化
自然災害・調達リスクへの対応方針
数値目標開示なしロボットの売上・台数・投資額の目標は確認できなかった
確認できなかったこと

次はいずれも今回の資料に記載がありませんでした 未確定/将来。ロボットの売上・出荷台数の目標/増産投資の額と時期/物理AI関連の売上や導入台数/CRX-3iA・R-2000/Eの量産開始の確認。物理AIは、公式ページの事例(音声で指示するロボット、人を避けるロボット、模倣学習でシャツをたたむロボットなど)が会社の発表した実証・展示の段階で、実用の規模は確認できません。

8. この会社はドローン・ロボティクスで何を目指しているか

ここには会社が直接は述べていない部分が含まれます。一次資料から読み取れる範囲の推測を、根拠とともに書きます。

読み取れること根拠となる一次資料区分
ロボット単体ではなくFA全体(制御装置・サーボ・ロボット・保守)の一体供給が強みと考えている有価証券報告書:「one FANUC」、すべての商品にCNC・サーボモータを使う単一セグメント、保守サービスを続けるという方針推測
物理AIでは、自社で巨大なAIモデルを作るのではなく、外部のAI企業と組み、ロボットを「開く」方針ROS 2・Python・ストリームモーションの公開、NVIDIA・Googleとの取り組みの公式ページ。自社のAI基盤モデルの記載は確認できなかった推測
ロボットの稼働を止めない(予防保全)ことを、AIの活用より前に置いている有価証券報告書:「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」商品を開発。公式のZDT機能事実
2026年3月期の増収は中国の需要に支えられた有価証券報告書:中国ではEV関連向け・一般産業向けが好調で売上が大きく増加。中国の関連会社向け売上は10.4%事実
人型ロボットは主力ではない今回確認した有価証券報告書・公式ロボットページに、人型ロボットの開発・販売の記載は確認できなかった(ないことの証明ではない)確認できず
推測の根拠を1つだけ詳しく

ROS 2とPythonに対応した狙いは、ロボットを使う開発者の裾野を広げることだと読めます 推測。公式ページは「多くの企業・スタートアップ・大学・研究機関がROSとPythonで物理AIを探究している」と書き、そこに自社ロボットを接続できるようにしたと説明しています 事実。一方で、有価証券報告書は「AI技術に関する取り組みにより、競合他社との差別化を図る」と書いており、オープン化は差別化の手段の1つと位置づけられていると考えられます。ただし、これが売上にどう結びつくかは、いずれの資料でも確認できませんでした 未確定/将来。

9. ドローン・ロボティクス分野の提携マッピング

FANUCを中心としたロボット分野の関係 公式資料・有価証券報告書に記載のある関係のみ。報道だけの関係は含まない(確認日 2026年10月25日) FANUC ロボット事業 NVIDIA Jetson Thor・Isaac Sim・GR00T検証 Google(DeepMindなど) Gemini・Flowstate・試験プログラム 山梨大学 ブドウ摘粒の自動化研究(事例) SHANGHAI-FANUC Robotics 中国の合弁会社(50%出資) J.Schmalz GmbH 柔らかいグリッパー mGrip シーメンス 特許の相互実施権(〜2026年12月) 共同開発・導入・利用の関係 部品・周辺機器の供給元 出資・合弁 特許の相互実施
図2 出典:有価証券報告書(第57期)、FANUC公式のOpen Platformページ。図に含めたのは公式資料に記載がある関係だけで、報道で語られる関係は含めていません。提携の範囲(開発の段階、契約の金額、期間)の多くは公式資料に記載がなく、確認できませんでした。

NVIDIAとGoogleについては、公式ページに「協力」「取り組み」「試験プログラムへの参加」などの説明がありますが、契約の形態・金額・期間は記載がありません 未確定/将来。また、公式サイトのGoogleのページには、GoogleのAIエージェント「Gemini Enterprise」を使ったシステム、Googleのロボット開発ソフトFlowstate(Intrinsic)への対応、Google DeepMindの「Gemini Robotics Trusted Tester」プログラムへの参加が書かれていますが、日付は明記されていません。

10. 提供している技術・製品・サービス

FANUCは、可搬質量(持てる重さ)が500グラムの小型から2.3トンの大型まで、用途別の産業用ロボットを揃えています(公式の説明)。

FANUCが「物理AI」のために開いた3つの入口 公式ページの説明をもとにした本稿の図解(会社の説明であり、独立した検証ではない) AIとパソコン ROS 2・クラウド・エッジ計算機 (AIが動作を考える側) ロボット制御装置 Pythonを装置内で実行できる (確実に動かす側) ロボット本体 可搬質量3kg〜2,300kg (公式資料の記載) 柱1:ROS 2ドライバ 柱3:ストリームモーション 柱2:Python対応 ストリームモーション:PCから送る位置指令を1ミリ秒周期で実行する機能(公式資料の記載)
図解 FANUCのオープンプラットフォームは、AIが考える側(PC・クラウド)とロボットを動かす側(制御装置)を、3つの入口でつなぐ仕組みだと会社は説明しています。
区分内容(会社の説明)用語の説明
産業用ロボット溶接、機械加工、搬送(マテリアルハンドリング)、組立、塗装向け。自動車、電子部品、物流、食品、医薬品、化粧品、農業など腕のような機構で、決められた作業を繰り返す機械
協働ロボット(CRX)人のそばで働く。人に触れると自動で止まる。手で動かして教えるダイレクトティーチ、タブレットで操作安全柵なしで使える場合がある(使う場所の安全評価は別途必要)
塗装ロボット防爆規格に適合した機種を提供(会社の説明。規格名・範囲はこのページでは確認できなかった)可燃性の溶剤がある場所でも使える設計
ソフトウェア・保守ROBOGUIDE(シミュレータ)、ZDT(故障予測・保守通知)、CRXプラグイン実機を動かす前に画面で動作を確かめる/故障の兆候を知らせる
外部製品との連携J.Schmalz GmbHの柔らかいグリッパー mGrip(空気圧で開閉するゴム製の指)を、CRX専用の画面から操作ロボットの「手」にあたる部品
素材技術者の視点:ロボットの「消耗する部分」をなくす設計

公式発表のR-2000/Eは、バッテリーレスのエンコーダ(関節の角度を測る部品)を採用し、「電池交換・グリース交換・ケーブル交換が不要」と説明しています(会社の公称、条件・年数は記載なし) 事実。関節の油脂と配線は、ロボットの保守で最も手間がかかる消耗部分です。これを減らすには、摩耗しにくい材料と、動き続けても切れにくい配線材料が必要になります(一般論)。具体的な材料は公式資料に書かれていません 未確定/将来。

もう1つは、柔らかいゴムの指を持つ mGrip です。公式ページは、食品に触れる用途の規則(米国FDA 21 CFR、EU規則 EC 1935/2004、日本の食品衛生法)に適合していると記載しています(J.Schmalz社の製品。適合の根拠となる試験は確認できなかった)。CRX-3iAは機構部の重さが11kgで、磁石のベースで固定できます。軽さと磁石の吸着を両立する構造は、本シリーズの技術解説「ロボット・ドローンの構造材料」「永久磁石とレアアース」とあわせて読むと分かりやすくなります。どの減速機・モーターを使っているかは、今回の資料では確認できませんでした(本シリーズの「減速機とギア」「関節アクチュエータ」を参照)。

11. この企業が抱えるリスク

リスク内容区分
景気変動の影響有価証券報告書は、商品は生産財で景気変動の影響を受けやすいと記載事実
自動車向けの低迷2026年3月期は、国内で自動車産業向けが復調せず売上が減少したと記載事実
関税・保護主義・安全保障貿易管理各国の政策・法規制(関税、アンチダンピング課税、輸出管理)の変更が販売に影響する可能性。海外売上が連結売上高の大きな部分を占める事実
新興国企業等の競争力向上新興国企業等の技術力・競争力の急速な向上を、競争力低下のリスクとして記載事実
部品調達部品等の調達に不足や遅れが生じた場合に生産が遅延する可能性事実
拠点の集中研究開発・工場を本社地区に集中。大地震などが起きると被害が甚大になる可能性があるとし、壬生・筑波など生産拠点の複数化を進めている事実
中国関連会社への売上集中SHANGHAI-FANUC Robotics向けの売上が連結売上高の10.4%事実
オープン化に伴うセキュリティ有価証券報告書はサイバーセキュリティのリスクと製品の事故対応体制(PSIRT)を記載。外部のAIや計算機とつなぐ範囲が広がるほど重要になる可能性推測
物理AIの収益化事例・展示の段階で、売上・導入台数は非公表未確定/将来
シーメンスとの契約期間特許の相互実施契約の期間が2026年12月31日までで、満了後の扱いは記載なし未確定/将来

12. 用語集

産業用ロボット
工場で溶接・搬送・組立などを自動で行う腕型のロボット。
協働ロボット
人のそばで働けるよう、人に触れると止まるなどの安全機能をもつロボット。
可搬質量(ペイロード)
ロボットの手先が持てる最大の重さ。
リーチ
ロボットの腕が届く距離。
SCARAロボット
水平方向に素早く動く腕型ロボット。小さな部品の搬送や組立に使う。
CNC
工作機械を数値で制御する装置。FANUCの事業の土台。
サーボモータ
位置や速度を正確に制御できるモータ。ロボットの関節を動かす。
エンコーダ
モータの回転角を測る部品。
ROS 2
ロボット開発で広く使われるオープンソースのソフト基盤。
物理AI
AIが画面の中だけでなく、現実の物を見て動かす技術。
デジタルツイン
現実の機械を仮想空間に再現し、動作を事前に確かめる技術。
ストリームモーション
PCから送る位置指令を1ミリ秒周期でロボットに実行させる機能。
IP67
粉じんが入らず、一時的な水没にも耐える防水・防じんの等級。
持分法適用関連会社
出資比率が50%以下などで、連結せず利益を持分に応じて取り込む会社。
有価証券報告書
日本の上場会社が国に提出する年次報告書。
制御盤、産業用アーム、作業対象を一緒に示しています。AIによる認識を工場の動作へつなぐには、制御・機械・安全設備の統合が必要です。
図3 ImageGen生成の概念画像。制御盤、産業用アーム、作業対象を一緒に示しています。AIによる認識を工場の動作へつなぐには、制御・機械・安全設備の統合が必要です。 実在する製品・施設・実測結果ではありません。断面、色、矢印は理解のための表現で、寸法比は説明用です。

13. 出典

  1. ファナック 有価証券報告書 第57期(2025年4月1日〜2026年3月31日)。関東財務局提出(提出日2026年6月22日)。会社概要・沿革・事業内容・関係会社・部門別売上・研究開発・設備投資・従業員・リスク・重要な契約。 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
  2. ファナック 有価証券報告書 第56期(2024年4月1日〜2025年3月31日)。ロボット部門売上、研究開発費、設備投資額。 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport56_202503.pdf
  3. ファナック 有価証券報告書 第55期(2023年4月1日〜2024年3月31日)。ロボット部門売上、研究開発費、設備投資額。 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport55_202403.pdf
  4. ファナック ROBOT(製品ページ、英語。確認日 2026年10月25日)。ロボットの製品範囲(可搬質量500gから2.3トン)、新製品・お知らせの一覧。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/index.html
  5. ファナック ROBOT New Technology: Open Platforms & Physical AI(2025年12月)。ROS 2ドライバ、Python対応、NVIDIAとの協力。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_physicalai.html
  6. ファナック FANUC Open Platform(英語。確認日 2026年10月25日)。3つの柱(ROS 2、Python、ストリームモーション)と事例。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/index.html
  7. ファナック Initiatives with NVIDIA(FANUC Open Platform内。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-nvidia.html
  8. ファナック Initiatives with Google(FANUC Open Platform内。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-google.html
  9. ファナック ROBOGUIDE and NVIDIA Omniverse(機能紹介ページ。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/function/roboguide_omniverse.html
  10. ファナック ROBOT New product: CRX-3iA(2025年12月)。仕様、量産開始予定。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_crx.html
  11. ファナック ROBOT New product: R-2000/E Series(2025年12月)。仕様、量産開始予定。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_r2000.html
  12. ファナック ROBOT New product: Machining Robot M-810(2025年8月)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202508_robot_m810.html
  13. ファナック ROBOT New product: SR-9iA/R(2025年8月)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202508_robot_sr9iar.html
  14. ファナック FANUC’s History(公式の沿革、英語。確認日 2026年10月25日)。ロボットの出荷開始、累計台数、提携。 https://www.fanuc.co.jp/en/profile/history/index.html
  15. ファナック ROBOT Business(サステナビリティ内の事業紹介、英語。確認日 2026年10月25日)。ロボットの用途と業界、CRXシリーズ。 https://www.fanuc.co.jp/en/sustainability/sdgs/robotbusiness.html
  16. ファナック Automating Grape Berry Thinning(FANUC Open Platform の事例紹介。山梨大学の研究。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/case_study/automation-of-grape-berry-thinning.html
  17. ファナック FANUC公式のROS 2ドライバ(GitHub。リポジトリの存在を確認、確認日 2026年10月25日)。 https://github.com/FANUC-CORPORATION/fanuc_driver
  18. ファナック Soft Gripper mGrip(J.Schmalz GmbH製。機能紹介ページ。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/function/mgrip.html
  19. ファナック FANUC公式サイトのロゴ画像(ロゴ画像の取得元。確認日 2026年10月25日)。 https://www.fanuc.co.jp/en/image/logo-ci.svg

14. 主張と出典の対応表

本文の主張区分出典
正式名称、本店所在地、英訳名、東京証券取引所プライム市場事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
連結売上高・ロボット部門売上と構成比(2024〜2026年3月期)事実出典1・2・3 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport56_202503.pdf https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport55_202403.pdf
研究開発費・設備投資総額(全社。2024〜2026年3月期)事実出典1・2・3 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport56_202503.pdf https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport55_202403.pdf
従業員数(連結10,040人、提出会社4,842人)。部門別は区分困難と記載事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
ロボット関連の研究開発本部、ロボット専用工場の建設(2011年・2018年)事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
SHANGHAI-FANUC Roboticsの出資比率50%、同社向け売上10.4%事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
シーメンスとの特許実施権の相互供与(〜2026年12月31日)事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
2026年3月期のロボット部門の動向(国内自動車向け低迷、中国EV関連・一般産業向け好調)事実出典1 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
新機種R-2000/E、CRX-3iA、M-810、SR-9iAの開発と仕様事実出典1・10・11・12・13 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_crx.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_r2000.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202508_robot_m810.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202508_robot_sr9iar.html
ROS 2ドライバ公開、Python対応、ストリームモーション(1ms)事実出典1・5・6・17 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_physicalai.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/index.html https://github.com/FANUC-CORPORATION/fanuc_driver
NVIDIAとの取り組み(Jetson Thor、Isaac GR00T検証、ROBOGUIDE連携)事実出典7・9・5 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-nvidia.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/function/roboguide_omniverse.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/new_product/2025/202512_robot_physicalai.html
Googleとの取り組み(Gemini Enterprise、Flowstate、Gemini Robotics Trusted Tester)事実出典8 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-google.html
山梨大学の研究事例(ブドウ摘粒)事実出典16・6 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/case_study/automation-of-grape-berry-thinning.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/index.html
ロボット累計出荷100万台(2023年)、40万台(2015年)、50万台(2017年)、1974・1977年の経緯事実出典14 https://www.fanuc.co.jp/en/profile/history/index.html
用途・業界、CRXシリーズの発表(2019年12月)事実出典15 https://www.fanuc.co.jp/en/sustainability/sdgs/robotbusiness.html
mGrip(J.Schmalz GmbH)と食品接触の適合の記載事実出典18 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/function/mgrip.html
ロボット部門の利益・人員・研究開発費・設備投資、物理AIの売上・台数未確定/将来いずれも非公表。本稿では推計しない
導入先・台数・認証の範囲、量産開始の確認未確定/将来出典4 公式資料に記載なし。本稿では推定しない https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/index.html
NVIDIA・Googleとの契約の形態・金額・期間未確定/将来出典7・8 公式ページに記載なし。本稿では推定しない https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-nvidia.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-google.html
FA全体の一体供給が強みという読み推測出典1 「one FANUC」等の記述からの本稿の解釈 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
外部のAI企業と組みロボットを開く方針という読み推測出典6・7・8 公式ページからの本稿の解釈 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/index.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-nvidia.html https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/fanuc-google.html
ROS 2・Python対応の狙いは開発者の裾野拡大という読み推測出典6 公式ページの記述からの本稿の解釈 https://www.fanuc.co.jp/en/product/robot/academia/index.html
オープン化に伴うセキュリティの重要性の増大推測出典1 リスク記載からの本稿の解釈 https://www.fanuc.co.jp/ja/ir/securitiesreport/pdf/securitiesreport57_202603.pdf
企業の4類型の区分(産業・専門ロボット)本稿の計算本稿による整理。企業名は本シリーズの企業から例示

最終更新:2026年10月25日/Troy Technical
本稿の数値はすべてファナック株式会社の有価証券報告書と、同社の公式サイトの記載に基づきます。調査会社の市場推計・報道ベースの数値は使用していません。性能値は会社の公称値で、独立した検証ではありません。「推測」と記した箇所は、一次資料から本稿が読み取った解釈であり、会社の公表内容ではありません。本稿は投資・購入の助言ではありません。