畳み込み分光計|ケンブリッジ大が開発した10ドルのチップ、非侵襲血糖値測定の性能

ScienceDaily (Nature Photonics) イギリス
概要
ケンブリッジ大学とGlitterinTechの研究チームが、コストわずか10ドルでラボレベルの精度を実現する小型光学分光計を開発した。畳み込み定理を用いた新しい解析手法により、従来の小型分光計の課題であった解像度や精度の低下を克服し、1200-1700 nmの近赤外線領域で動作する。この技術により、針を使わない非侵襲的な血糖値モニタリングや、食品・環境のリアルタイム分析をウェアラブルデバイスで実現できる可能性がある。
詳細

主要成果

ケンブリッジ大学とスタートアップのGlitterinTechは、極めて小型かつ低コストでありながら、高い精度を持つ新しい光学分光計を開発した。このセンサーの製造コストはわずか10ドルであり、数センチメートルというサイズから、ウェアラブルヘルスモニターや携帯型電子機器への組み込みが可能となる。実証実験では、プラスチック、医薬品、コーヒー、小麦粉、茶の識別において100%の分類成功率を達成したほか、水溶性および有機溶液の濃度測定において、商用のベンチトップ分光計を上回る約0.01%の精度を記録した。

技術・詳細

本デバイスは「畳み込み分光計(convolutional spectrometer)」と呼ばれ、数学的な畳み込み定理を光学領域で直接適用することで、光の解析手法を根本的に変えている。具体的には、不均衡マッハツェンダー干渉計やマイクロリング共振器などの光学コンポーネントを、繰り返しのスペクトル応答を持つようにシーケンス状に配置している。これにより、制御された線形的な方法で異なる波長への応答をシフトさせ、最終的に高速フーリエ変換(FFT)を用いて光スペクトルを正確に復元する。

ハードウェア面では、窒化シリコンフォトニックプラットフォームを採用し、オンボード電子回路と統合されている。動作波長は1200-1700 nmの近赤外線領域と広く、測定から処理まで1秒未満で完了する。また、光学コンポーネントを直列に追加することで、理論上はスペクトル帯域をほぼ無制限に拡張でき、解像度を指数関数的に向上させることが可能だという。

背景・業界の文脈

分光計は光を分析して物質の情報を明らかにする装置であり、医療、製造、化学分析、環境研究において不可欠なツールである。しかし、従来の小型分光計は、サイズを小さくすると測定範囲の制限や解像度の低下、精度の悪化といった性能面での妥協が避けられず、精密測定よりも物質の簡易的な特定に留まる傾向があった。今回の設計は、計算負荷を抑えつつ、ノイズ耐性と高精度を両立させることで、これらの制約を克服している。

今後の展望

ヘルスケア分野への応用が特に期待されており、皮膚の水分量、血中アルコール濃度、血中乳酸、および血糖値などのバイオマーカーの正確な測定が実証された。特に、被験者を用いた長期的な非侵襲的血糖値トラッキングに成功しており、将来的に針で皮膚を刺すことなく血糖値を監視できる道が開かれた。また、-20°Cから80°Cという広範な温度範囲で安定して動作することが確認されており、屋外センサーや工場設備、ウェアラブルデバイスなど、過酷な環境下での実用展開に向けた技術的準備が整っている。

元記事: https://www.sciencedaily.com/releases/2026/10/261022081312.htm

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